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■『戦旗』1625号(11月20日)3面 介護保険の危機は政府の責任だ! 介護労働者の闘いに連帯しよう 平川 唯 ●1 現場に困難を押し付ける岸田政権 新型コロナウイルスの蔓延は、止まっていない。にもかかわらず、日帝岸田政権は「ウィズコロナ」と強弁して旅行や買い物、飲食を奨励している。だが、こうした中でも病院や介護現場などではコロナとの闘いが続いている。 岸田政権は、昨年「月額九〇〇〇円」の待遇改善策を打ち出した。介護現場で働く労働者の賃金は、全産業平均より月額八・五万円から一〇万円低いにもかかわらず、わずか月額九〇〇〇円とはあまりにも低すぎる。 こうした焼け石に水の政策でさえも、きちんとは行われていなかった。二月から開始と報道されたが、二月三月は、介護職の賃金が上がったと偽装するために「月額一円の賃上げでもいい」と言い出す始末だった。実際に「待遇改善手当て」支給開始が行われたのは六月からだった。これすら、事業所によっては申請事務もままならず、申請ができなかった所もある。 猛暑の中、コロナ罹患者は自宅待機を余儀なくされ、炎天下の中全身防護服を身に着けて自宅に駆け付けたヘルパーもいる。施設介護では、入所者が罹患する中で介護労働者も次々と罹患し、残された人たちは必死で利用者を支え合った。しかし、この「月額六〇〇〇円」は介護職限定で、利用者を支えている調理や清掃の労働者、事務員やケアマネジャーには支給されない。 しかもこの「介護職待遇改善手当て」のための国の補助金は、一〇月で打ち切られ、以降は、地方自治体が四〇歳以上の人から徴収する介護保険料と利用者が支払う利用料に上乗せされる。つまり、介護保険料の値上げを行うという事だ。これでは、倒産する事業所や介護労働者の離職者が増え、利用者の負担が増え、家族は介護のために離職せざるを得ない人が増えているという介護保険制度の崩壊の危機を止められない。 こうした事態に対して、介護労働者たちは、全国一般東京南部(ケアワーカー連絡会)や介護・福祉総がかり行動(大阪)を中心に全国実行委員会が結成し、九月二五日「介護現場を守るみんなの集会」を大阪と東京で開催した。一〇月二四日から二八日には、厚生労働省前で座り込みを行った。 この岸田政権の「やっているふり」政策は、介護現場で働く労働者のみならず全ての労働者市民の問題だと、座り込みには多くの人たちが現場に駆け付けた。通りかかった後期高齢者の方は「岸田政権はお金の使い方を間違えている。高額な兵器を買ったり、安倍国葬に何億円もかけたり。物価は上る一方なのに年金は減らされている。今度は介護保険料も上げようとしているのか」と怒りの声を寄せていた。一一月二二日には財務省・厚生労働省との交渉を行う予定とのことだ。 介護現場で働く全ての労働者に、全額国の負担で、月額一〇万円(全産業なみの賃金にするための差額分)の待遇改善を行えと声を挙げる介護労働者の闘いに連帯して共に闘おう。 ●2 訪問介護ヘルパーの移動時間、待機時間にも賃金を支払え 訪問介護を担う多くの登録ヘルパーには、実際にサービスを提供した時間分の賃金が支払われている。移動時間や待機時間(多くの人はこの時間で事務的な作業をしている)分の賃金はほぼ支払われていない。また、突然のキャンセルによる休業手当も支払われていない。 こうした労働基準法違反に対して、訪問介護ヘルパーは国を訴える裁判を闘っている。国は「未払い賃金の支払いは、事業者の義務」「移動や待機時間の賃金を支払うようにと指導している」というが、事業所が訪問ヘルパーに対して未払い賃金を支払うことができるだけの「介護報酬」を国は設定していない。 裁判では、国=厚生労働省に対して、現在の「介護報酬の根拠」や「未払い賃金を支払えるだけの金額を国が事業所に渡していないのに、指導していると言えるのか」などと質した。しかし、国は答えることなく、裁判所も答えを促す訴訟指揮を行わず、証人申請も認めず結審してしまった。 一一月一日の判決は、介護保険制度の問題点については一切触れることなく「国に違法性はない」という不当判決だった。不当判決を許さず闘い続ける訪問介護ヘルパー労働者に連帯して闘おう。 ●3 介護保険制度の崩壊を食い止めるのは国の責務 また、介護保険を運営している地方自治体からも移動時間や移動に必要なガソリン代などを考慮した制度改善を求める声も上がっている。 山間地域にある熊本県山都町では、利用者の自宅に向かう時間の方が実際に介護作業をしている時間より長い。介護報酬の中に明確に移動時間が位置付けられていない中で、事業者は採算が合わないために、訪問介護を行わなくなっている。一方高齢者は、介護保険料を支払っているのに介護を受けられない。まさに介護保険制度の崩壊の危機の中にあると制度改善の声を挙げている。 さらに移動に必要なバイクや車のガソリン代の補助をしている浜松市は、「訪問介護は限界になっている」と「介護報酬の見直し」の声を挙げている。この他、千葉県、長野県、高知県、京都府、新潟県柏崎市、北海道別海町も国に対して改善を求めている。 国は、介護保険料を上げることやわずかな補助金でごまかすのではなく、介護保険の見直しや社会保険でカバーできない部分を、国庫負担をするべきだ。介護保険制度の崩壊を食い止めるのは国の責務である。 介護を巡る問題は、何らかの形で全ての人が当事者になる。利用者、介護者、家族、事業所、自治体そして全ての労働者市民の力を結集して、さらに闘いを進めていこう。介護労働者の賃上げ・労働条件改善、そのための制度改正要求を23春闘の重要な課題として、全国で取り組もう。 |
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