共産主義者同盟(統一委員会)






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 ■1642号(2023年9月5日)3面

 
〈翻訳資料〉
 マルコス政権の抑圧と闘う
 フィリピン民衆運動への連帯を
 
施政方針演説は、経済衰退、不処罰、主権蹂躙の状態を示すものだ
        2023年7月24日 新民族主義者同盟(BAYAN)


 




 フィリピンのマルコス大統領は、さる七月二四日、昨年の大統領就任以来二度目となる施政方針演説を行った。これに対して、新民族主義者同盟(BAYAN)を先頭とするフィリピン民衆は当日、施政方針演説が行われる下院議事堂に向けた抗議のデモ行進を行った。以下は、それに際するBAYANの声明である。
 マルコス政権は新自由主義政策を推進すると同時に、二〇年にわたる父フェルディナンド・マルコスの独裁体制を美化し歴史の歪曲を進めようとしてきた。民衆運動への弾圧、活動家への暗殺攻撃も拡大している。マルコス政権はまた、米国との軍事同盟関係を強め、フィリピン国内での米軍の駐留拠点を拡大し、さらに日米帝国主義の意図に沿って日米比三国の新たな安保枠組みの形成に向かおうとしている。
 日米帝国主義の支配・介入を許さず、マルコス政権の抑圧と闘うフィリピン民衆運動への連帯を進めよう。(訳者)
 
施政方針演説は、経済衰退、不処罰、主権蹂躙の状態を示すものだ
                新民族主義者同盟(BAYAN)

                          2023年7月24日

 この一年間、フェルディナンド・マルコス・ジュニア政権は、ドゥテルテ前政権の反人民的政策の多くを継承しつつも、前政権との違いを示そうとし、独裁者(訳注・現大統領の父であるフェルディナンド・マルコスのこと)の「バゴン・リプナン」(新社会)時代の復活を先導しようとしてきた。こうしたイメージづくりは、長年マラカニアンを離れていた自分たちの権力を強固にし、永続させるためのものだ。
 二回目となる施政方針演説で、マルコスは、起工式やテープカットのセレモニー、外遊や世界の指導者との会合などを並べ立て、一年間の業績を誇示しようとするだろう。しかし、マルコス・ジュニア政権のいわゆる業績を、その政策の影響を最も受ける一般庶民の視点から批判的に見ることが重要だ。支配エリートたちは、バタサン・パンバンサ(下院議事堂)でマルコスに何度もスタンディング・オベーションするだろう。しかし、危機の矛先を向けられている一般庶民は、別のことを考えている。
 戒厳令時代のイメージやプログラムを復活させ、「リブランディング」(再構築)しようとする政権の傾向は、それ自体が危険である。大統領に就任して一年になるが、マルコス氏は独裁者だった故マルコス・シニアにまつわるイメージやプログラムを復活させることに長けている。「バゴン・リプナン」は今や「バゴン・ピリピナス」(新しいフィリピン)だ。マルコス・シニアのお気に入りだった「マハルリカ」は、今やマハルリカ投資ファンドとしてある。カディワ・ストア(訳注・公設の移動式市場)も復活した。「マサガナ99」と「緑の革命」は、農業プログラムのスローガンとして使われている。どのプログラムも、マルコス独裁政権と結びつけて美化しようと意識的に取り組んでいるようだ。
 経済状況は、政府が予測しているほど明るいものではない。マルコス政権は、パンデミックから真に回復していない危機的な経済を指揮してきた。フィリピンは東南アジアで最も高いインフレ率を記録し続けている。マニラ首都圏の四〇ペソの賃上げは、現在の最低賃金と一〇〇〇ペソの家族生活賃金基準との間のギャップを実質的に埋めるものではない。全国各地の賃金水準を見ると、さらに悪化している。一方、マルコスは、新たに創出された一〇件の雇用のうち八件がインフォーマル労働やパートタイム労働であったとしても、失業率の数字を下げることを期待している。
 マルコス・ジュニアは、飢餓をなくし、貧困率を一桁台まで下げるつもりだと言う。政府は一人当たりわずか七九ペソという非現実的な貧困基準を設けているため、公式の貧困率は人為的に低くなっている。一方、限られたフードスタンプだけでは飢餓は完全にはなくならない。民衆が必要としているもの、そしてマルコス政権が提供できていないものは、安定した雇用と賃金・給与の増加である。
 マルコス政権が前任者のファシズム的な考え方から脱却していないため、不処罰の状態が続いている。このことは、麻薬戦争による殺害に関する国際刑事裁判所の調査への協力拒否、活動家や革命家に対する反テロリズム法の使用、和平交渉への民族民主戦線(NDFP)の関与の拒否、武力紛争の根源に対する軍事主義的アプローチ、ジャーナリストや弁護士への攻撃、執拗な「赤」や「テロリスト」というレッテル貼り、殺害や拉致をもたらしているコミュニティーの軍事化によって、はっきりと明らかになっている。マルコス政権が批判者や人権擁護活動家、社会の根本的変革を求める人々に対する高圧的なアプローチを放棄する気配はない。年に一度の施政方針演説は、警察の権力を誇示し、反対意見を抑圧する場となっている。
 フィリピンの主権は、米国の軍国主義と中国の拡張主義によって損なわれたままだ。マルコス・ジュニアは、前政権よりも多く米軍による軍事演習とフィリピン領内での米軍施設を許可している。西フィリピン海における中国の行動からフィリピンを「守る」という口実で、フィリピンは米国の戦争マシーンのための軍事的前哨基地に成り下がっている。一方、マルコス・ジュニア政権は、中国と経済的に関与しているが、国際仲裁裁判所におけるフィリピンの法的勝利を主張することなど深刻な前進はしていない。
 月曜日(七月二四日)の施政方針演説に対する抗議行動は正当なものだ、民衆の声を聞くべきであり、公共の場から追い払うべきではない。民衆は、マハルリカ詐欺やバゴン・リプナンの投げ売りではなく、賃上げ、雇用の拡大、手頃な価格の食料、人権の尊重、フィリピンの主権を求めている。
(訳・佐々木涼)





 


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