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■フィリピンへの在沖米軍の移駐策動/アロヨ政権の下で活動家の殺りくも相次ぐ

●1章 在沖米軍中心に再駐留の動きを加速させている

 現在進められている米軍再編の中で、公式に発表されている計画とは別に、在沖米軍のフィリピンへの移駐が進められている。既に〇二年以降、米比合同軍事演習を口実として、在沖米軍を中心に二千人規模の米兵が常駐していると言われているが、米帝は米軍のフィリピン再駐留の動きを更に加速させている。

 アロヨ政権は、米・日帝の財政的・軍事的支援を受けながら、政権の延命を図ろうとしているが、フィリピンの闘う人民は、VFA反対!憲法改悪阻止!アロヨ政権打倒の闘いを前進させている。

●2章 米軍基地の撤去から比米安全保障委員会の設置へ

 一九八六年、民衆闘争の力でマルコス独裁政権は打倒され、そうした闘争を背景にして八七年に制定された新憲法では、非核政策をとり外国軍事基地を認めなかった。米帝−アキノ政権のさまざまな米軍駐留工作にもかかわらず、一九九一年九月、期限切れを迎える米比基地協定の延長を上院は認めなかった。この結果、米軍はスービック海軍基地、クラーク空軍基地など極東における巨大な米軍基地の返還を余儀なくされた。再駐留を目指す米帝は、フィリピンに対するさまざまな働きかけを行い、九八年に訪問米軍地位協定(VFA)を締結(九九年上院批准)し、以降、米比合同軍事演習を繰り返してきた。〇二年十一月には、米比相互兵站支援協定(MLSA)を締結。

 さらに〇六年五月、テロ行為・国境を超えた犯罪・海洋の安全と警備・自然および人為的災害・流行病の発生を含め「非伝統的安全保障問題」について協力する新しい協議機構として、米比安全保障委員会(SEB)を設置することに合意した。フィリピン政府は、米比安全保障委員会の設置は、「国家間の条約ではないので上院での批准は必要ない」として、合意内容の全文そのものを公開していない。このことは逆に、外国軍基地を認めない現憲法に抵触するような内容を含んでいる可能性があることを示している。

●3章 米比合同軍事演習による軍事作戦は住民への襲撃

 〇一年9・11の後、米帝はアフガニスタン攻撃を開始した。そして身代金稼ぎに米国人を含む外国人の誘拐事件を起こしていたアブサヤフをアルカイダと関係があるして、ブッシュはフィリピンを「対テロ戦争」の第二の戦線として位置づけた。〇二年一月から約半年間、米軍はアブサヤフの拠点があったバシラン島を中心に、米比合同軍事演習「バリカタン〇二」を行った。フィリピン兵の訓練という名目であったが、実際には米軍が軍事作戦に参加していた。

 こうした米軍の戦闘参加によってもたらされている事態を明らかにするために、人権団体や米軍再駐留に反対する人々によって〇二年七月に「米国のフィリピンへの軍事介入に反対する国際連帯調査団」(ISM)が組織された。このISMの調査によって、米兵が軍事作戦に参加し、無防備の民間人の家を襲い銃撃していたことや、米軍の支援を得た軍事作戦が展開され住民がコミュニティから追い出されたり、何の罪もない住民たちが百人以上殺されたり、二百人以上逮捕・拘束されたことなどが明らかにされた。

 このバリカタン〇二以後も、米比合同軍事演習は頻繁にミンダナオ島をはじめとしたイスラム系住民の生活する地域で行われており、人権侵害が続いている。フィリピン政府は、モロ・イスラム解放戦線(MILF)との間で和平交渉を進めるその一方で大規模な戦闘も行っている。その結果、ミンダナオでは多くの難民が生み出されているのが現実である。

●4章 在沖米兵のレイプ事件で示されたVFAの問題点

フィリピンでの米軍兵士によるレイプ事件に抗議する行動

 昨年十一月、米軍基地があったフィリピン・スービックで米比合同軍事演習に参加していた沖縄海兵隊員によるレイプ事件が女性の告発によって明らかになった。事件発覚後、海兵隊員らはマニラの米大使館の中で拘束されている。フィリピン捜査当局の身柄引き渡し要請にもかかわらず、米政府はVFAをたてに、身柄引き渡しを拒否した。

 今年一月、横浜で米空母「キティホーク」の乗組員によって女性が殺されたケースでは、日本側の身柄引き渡し要請を米側が短時間で受け入れ、早期に身柄引き渡しが行われた。このことがフィリピンで報道されるや、フィリピンの上下院で構成するVFA立法府監視委員会では、VFAの破棄を求める決議があげられ、フィリピン外務省も米国に引き渡し拒否を抗議せざるを得なくなった(しかし二月に入って、米大使館が容疑者を裁判に出頭させると約束したことで、立法監視委員会はVFA破棄の要求をいったん棚上げにしてしまった)。

 現在、公判が行われているが、VFA協定には「一年の時効」の定めがあり、法的手続きが一年以内に終了しない場合、容疑者は米軍の庇護の下、フィリピン外に逃れることも可能になっている。

 フィリピン人民は、こうしたVFA協定そのものの破棄を求めて闘っている。

●5章 外国基地・駐留禁じる条項を削除する改憲策動

フィリピンにおける憲法改悪阻止闘争

 アロヨ政権は、憲法改正によって大統領制から一院制の議院内閣制へ移行することを目指している。この憲法改正の動きは、〇五年六月、アロヨ大統領が前年五月に行われた大統領選挙で不正を行ったことが明るみになり、そのことで生じた政治的危機を乗り切るための方策として加速されている。米軍の再駐留を進めようとしているアロヨ政権は、大統領府憲法諮問委員会の改憲答申案の中で、外国軍の駐留・基地設置を禁じた現憲法の条項を削除している。フィリピンの闘う人民は、十分な論議を行うことのないまま憲法改正の動きを強めているアロヨ政権を批判するだけでなく、憲法改悪の動きそのものに反対している。外国軍の駐留・基地設置禁止条項の削除に反対していることは言うまでもない。

●6章 活動家の暗殺で民族民主主義運動の壊滅を目指す

 六月末、アロヨ政権は、死刑制度を廃止した。制度としての死刑制度は廃止されたが、法によらない死刑が国軍によって行われている。アロヨ政権を批判している活動家・ジャーナリスト・宗教者らが、国軍によって法によらずに暗殺され続けている。

 人権団体カラパタンによれば、アロヨが大統領に就任した〇一年一月から今年五月末までの五年四カ月の間に、政治的理由で殺害された活動家・記者・宗教者らは六百七十九人にも上っている。そしてこの数字は日ごとに増えていっている。国軍による活動家らの暗殺は、〇二年にアロヨ政権がフィリピン共産党と新人民軍(NPA)への掃討作戦を強化してから目立って増加しているという。〇五年春には、国軍が「汝の敵を知れ」というタイトルの教宣物をつくり、KMUやバヤンなどの人民諸組織、ジャーナリスト、キリスト教関係の団体などを名指しでフィリピン共産党(CPP)の影響下にあり、「国家の敵」であるとする軍隊内教育を行っていたことが明らかになっている。

 この二月に出された非常事態宣言は三月には解除されているが、今も戒厳令が事実上、敷かれている状態と言っても過言ではない。

 ルイシタ農園の労働者、日系企業で労働組合を組織していた労働者、ネスレ労組の委員長など、闘う労働運動活動家が殺されている(『戦旗』一二六三号参照)。また五月には、日系企業や日本国際協力銀行が関わっているダムとダム関連事業に反対していた農民運動のリーダーが殺されている。

 フィリピンで起こっている活動家の暗殺は、アロヨ政権に反対する人々や権利のために闘う人々の虐殺というだけでなく、フィリピンに進出している日系企業の利益を脅かすと思われた活動家の暗殺をも含んでいることを押さえておかなければならない。

 いまアロヨ政権は、民族民主主義運動を壊滅させようと、六月に入り「新人民軍(NPA)を二年で壊滅させる」と宣言、全面戦争に突入しようとしている。内戦が激化し、民間人が戦闘に巻き込まれる事態も予想されているが、アロヨ政権は民間人の犠牲を「不可避な付帯的損害」という言葉で正当化している。このようなアロヨ政権の姿勢は、今後ますます人権侵害・活動家暗殺を引き起こすに違いない。

 フィリピン人民の民族民主主義闘争を支持すると共に、アロヨ政権の人民弾圧を弾劾していかなければならない。

●「対テロ」名目に財政的・軍事介入強める日米帝

 米帝は、米比安全保障委員会(SEB)設置を契機として、テロ対策・ミンダナオ地域の和平支援などの名目で、対フィリピン援助を飛躍的に強化しようとしている。〇一年度の対フィリピン援助額は六千九百三十万ドルだったのが、〇六年度には二・三倍の二億二千八百七十万ドルに引き上げられようとしている。フィリピンは、米帝の言う「不安定の弧」の端に位置しており、米帝はフィリピンに再駐留するために憲法改正を進めるアロヨ政権を積極的に支援していこうとしている。アロヨ政権もまた、対テロ戦争―新人民軍の掃討を掲げて内戦を激化させ、事実上の戒厳体制を作り出すことによって政権維持をはかるとともに、米帝から巨額の援助を引き出そうとしている。

 日帝もまた、フィリピンに対する支援を強化しようとしている。すでに対テロ支援の名目で、〇三年度に、指紋照合作業をコンピュータ化するために約十億円規模の機材供与を行っている。この六月、日本政府は武器輸出三原則を緩和して、インドネシアに対してテロ・海賊対策のためとして、武器に当たる巡視艇を供与したが、同様の援助をフィリピンに対しても検討している。六月末には東京で「日・ASEANテロ対策対話」と称する会議を開催し、〇六年度から始まった政府開発援助(ODA)のテロ対策無償資金協力七十億円や、三月に新設され日本が七十五億円を拠出した日本ASEAN統合基金の活用について検討している。以前から在沖米軍のフィリピン移駐との関係で、ODAによるクラーク空軍基地跡での対テロ訓練センター建設が噂されている。今年は、日本とフィリピンとの国交回復五十年目にあたり、日比友好年と位置づけられ、七月二十三日にはマニラで記念式典が予定されている。テロ対策・ミンダナオ和平支援を名目として、人権弾圧を行うアロヨ政権に対するさまざまな援助が拡大していく可能性がある。

 フィリピンの闘う人々は、七月二十四日のアロヨ大統領の施政演説に対する大規模な抗議闘争を準備している。われわれもフィリピンの闘う人民と連帯して、在沖米軍のフィリピン移駐に反対するとともに、アロヨ政権の人民虐殺を糾弾していかなければならない。

 

 

 

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