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 ■フィリピン情勢(08年2〜3月)

  アロヨ政権打倒に立ち上がる人々

沖縄でのフィリピン女性への性暴力に抗議する人たち
                 ▲沖縄でのフィリピン女性・性暴力事件に抗議する人たち


 二月二十九日、フィリピンのマニラ首都圏マカティ市で、アロヨ大統領の退陣を求める大規模集会が開かれた。集会には、一九八六年の「ピープルパワー革命」で大統領に就任したアキノ元大統領や二〇〇一年に「ピープルパワー2」で政権を追われたエストラーダ前大統領も参加した。集会にはその他にも宗教・財界関係者、それにバヤンをはじめとした民族民主主義運動勢力も結集した。この日は、マニラだけでなく、全国各地でアロヨ大統領の退陣を求める集会が行われた。アロヨ政権は、二〇〇五年六月、前年の大統領選挙での不正が発覚した時以来の最大の政治的危機を迎えている。フィリピンのたたかう人民は、腐敗したアロヨ政権打倒にむけたたたかいを強化している。


 ●1 NBN不正疑惑とは


 今回問題となったNBN不正疑惑とは、中国企業・中興通信(ZTE)社が受注した約三億三千万ドル(約三百四十五億円)の政府ブロードバンド網(NBN)事業で、大統領の側近が、中興通信(ZTE)社に政府への仲介料として約一億三千万ドル(約百三十六億円)もの巨額の金を要求し、賄賂の一部はアロヨ大統領夫妻が受け取ったという事件である。賄賂の一部は二〇〇七年五月の中間選挙に使われた。二〇〇七年四月、中国で行われた中興通信(ZTE)社との契約調印にアロヨ大統領が立ち会ったが、この立ち会いも賄賂の見返りのためのものだったという。

 そもそもNBN事業とは、アロヨ大統領が提唱した行政ネットワーキング事業で、フィリピンの地方と中央とをブロードバンドでつなぎ、中央政府の方針や指導を徹底しようというものだったが、不正疑惑の中ですでに契約は解消されている。

 事業については、まず〇七年九月に最高裁で一時差し止めが行われた。同時期に、上院聴聞会で、同事業に参入を目指していたホセ・デベネシア下院議長(当時)の息子が、アロヨ大統領の夫・ホセミゲル・アロヨ氏の不正関与を明らかにした。またネリ前国家経済開発庁(NEDA)長官も、NEDAが契約を承認すれば約二億ペソの賄賂を提供することを示唆されたと証言した。

 アロヨ大統領は、こうした上院での不正疑惑の追及が始まるやいなや直ちにプロジェクトの無期延期を宣言、昨年十月には胡錦濤国家主席に会って、同契約の解消の了承をとりつけた。こうした素早い動きは、アロヨ大統領自身が、追及が自分に及ぶことを避けるためだったに違いない。なぜなら、不正追及運動の高まりの中で、この二月、アロヨ大統領自身が、契約前に不正疑惑があることを知っていたことを明らかにしているのだ。また国民の目を不正疑惑問題からそらすため、十月にはエストラーダ元大統領の特赦、釈放を行った。

 しかし、野党が多数を占める上院は継続してこの問題を追及、聴聞会を継続した。そして本年二月初め、上院聴聞会で、ネリ元NEDA長官のコンサルタント役としてこのNBN問題に深くかかわっていたロドルフォ・ロサダ氏が証言した。ロサダ氏は、聴聞会を避け、国外に避難していたが、帰国したところを、証言を絶対に阻止しようとした大統領府の差し金で、空港で不当に拘束された。こうしたことがロサダ氏に上院聴聞会での証言を決意させるともに、証言の信憑性を高めることになった。

 ロサダ氏は、上院聴聞会でネリ元NEDA長官の言葉を引用し、「国家の汚職の巣の中枢にアロヨ大統領が存在する」と、これまで明らかにされていた大統領の夫の不正関与だけで無く、アロヨ大統領本人の汚職関与を証言した。また、ODAなどの政府事業で経費を20%上乗せし、その分が賄賂または手数料になるとも証言した。一例として、ルソン南部鉄道建設計画で、総額十億ドルの22%にあたる七千万ドルが賄賂分だと証言した。

 この証言を受け、フィリピン政府は計画段階にあるODA事業十一件を凍結せざるをえなくなった。その中にはNBN事業とセットになっていたサイバー教育事業など、中国の事業のほかに、日本のODA事業も含まれていた。

 今回の不正疑惑の追及のきっかけの一つになったデベネシア下院議長の息子の証言は、アロヨ大統領と与党の立役者デベネシア下院議長との不和をもたらし、ついに二月、事態はデベネシア下院議長の解任へと突き進んだ。政権中枢にいたデベネシア下院議長もまた議長職からの引き降しに対して、「この国で起きていることは汚職だらけ」とアロヨ政権を批判した。今後、最大与党ラカスの党首であったデベネシア氏の党首解任と与党内での政党再編が進もうとしている。

 また、今回の汚職疑惑の背景に、フィリピン政府が中国と〇七年一月に、南沙(英語名スプラトリー)諸島海域での資源開発に関する覚書を結んでいたこと、その見返りに中国側が大型事業を提供するとの約束があったことが明らかにされている。そうした背景があるがゆえに、アメリカ駐比大使は、NBN契約に対しては、当初から「米国企業の提案を無視し公正な競争の原則に反する」と懸念を表明していたと言われている。従って、今回の不正疑惑を追及する運動に対しても、「抗議行動は健全な民主主義の兆候を示すもの」と評している。

 フィリピン社会に影響力を持つカトリック教会は、アロヨ大統領の直接的な辞任を求めず、現時点では、汚職文化を非難した上で、アロヨ政権に対して、政府高官の国会証言を制限する大統領令四六四号の破棄、汚職疑惑の真相解明を求めている。フィリピン政府高官がアロヨ大統領らの不正を国会で証言するかどうかは、今後のフィリピン人民の不正疑惑追及運動が持続的に高揚するかどうかにかかっている。


 ●2 バリカタン2008


 二月十八日から三月三日までの間、「バリカタン二〇〇八」に六〇〇〇人の米軍が在日米軍を中心に参加し、ミンダナオ島に限らずルソン島をはじめフィリピン全土で展開された。今回、ミンダナオでは戦闘訓練を行わないこと、医療活動などの人道活動を行うことが強調された。これはこの間も米軍と米軍の指揮の下にあるフィリピン国軍による蛮行がフィリピン南部で続いていたが故に、人道活動を強調したにすぎない。

 訪問米軍地位協定(VFA)をテコにして、フィリピン南部には米軍が常駐し、フィリピン国軍に対する支援を行っている。昨年十一月には、スルー州の州立病院に対して、米軍が夜間消灯を命じるなどしたため、病院が事実上閉鎖に追い込まれた。またバリカタン直前の二月初め、同じスルー州で子ども二人を含む民間人七名が国軍の軍事作戦によって虐殺された。この虐殺に対しては、スルー州知事・議会も、国軍の犯罪行為を厳しく指弾しているが、こうした国軍の軍事作戦が米軍の指揮下にあることは周知の事実である。

 ミンダナオでは、バリカタンの開始に先立って各地でバリカタン反対闘争が取り組まれた。そして、バリカタン開始と時を同じくして、沖縄で女子中学生への性的暴行に続いて、フィリピン女性に対する性的暴行事件も明らかになった。この事件は、フィリピン人民にとっては二〇〇六年十一月のスービック・レイプ事件を思い起こさせ、より一層のバリカタン反対・米軍の一掃のたたかいが取り組まれている。

 (フィリピンの女性団体「ガブリエラ」、在日フィリピン人団体「ミグランテジャパン」が発表した声明・参照)


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 フィリピンのたたかう人民は、引き続きアロヨ政権の不正疑惑追及、アロヨ政権打倒の闘いを強化している。また、米兵による沖縄でのレイプに抗議し、米軍そのものの一掃を訴えている。われわれもフィリピンのたたかう人民と連帯し、たたかっていこう。



 ■資料

 在日米軍兵士によるフィリピン女性への
 性暴力事件に対する抗議声明



  ●ガブリエラの緊急声明
       二〇〇八年二月二十三日

  ガブリエラ事務局長 エミ・デ・ヘスス


在日米軍兵士によるフィリピン女性への性的暴行を弾劾しアジアからの米軍総撤収を要求する。

 フィリピン全国女性団体連合ガブリエラは、ふたたびフィリピン女性が米兵によって、今度は沖縄で性的暴行を受けたことに強い憤りを表明する。それに先立って沖縄では十四歳の少女に対する強かん容疑で米海兵隊員が逮捕されている。いまこそ米国政府は軍事的侵略政策を停止し、主権国家から米軍をすべて撤収するべきだ。

 海外の諸国における米軍の駐留は明らかに、世界中で国家の主権を侵害している。とりわけアジアの女性たちは、優越主義的で、性的暴力を平然と振るう米兵たちが徘徊することによって、安全を奪われている。「米国は世界の警察だ」という信仰で武装し、性差別と暴力という軍隊的文化を身につけた米兵が、アジアの女性たちに性暴力を行使するということは意外なことではない。そして加害米兵に対する不処罰がこの事態をさらに悪化させているのである。

 二十二歳の「ニコール」に対する性的暴行事件と、四名の加害米兵に対する彼女の勇気あるたたかいは、米軍の残虐行為のなかでももっとも有名な事件のひとつとなった。マカティ地裁は加害者ダニエル・スミス伍長に対して有罪判決を下した。だがアロヨ大統領はスミスの身柄を米国大使館に引き渡し、これによってニコールが得たはずの正義は奪われた。アロヨ大統領のこの行為はすべての米兵たちに、女性たちを暴行してもよい、処罰はしない、というメッセージを送るものとなった。

 今日までに、フィリピンでは十七から二十四回の米比合同軍事演習(いわゆるバリカタン軍事演習)が行われており、そのなかでフィリピン人の生命に対して無数の損害が引き起こされている。それにもかかわらず、アロヨ大統領は米国に従属的な姿勢をとりつづけ、フィリピン人を米軍の虐待と搾取の餌食にしている。

 ガブリエラは世界の女性たち、とくに米国の軍事侵略、米軍による虐待に苦しめられている女性たちとともに、抗議と要求の声をあげる。米軍はいますぐ出て行け! 米国による軍事介入を終わらせよう!



  ●沖縄でのフィリピン人レイプ被害者に正義を!

         ミグランテ・ジャパン


 ミグランテ・ジャパンは沖縄での米兵によるフィリピン人女性に対するレイプ事件を強く弾劾する。われわれは徹底的な調査を要求する。われわれは米国政府に対して、すばやく公正な調査をおこなうために、犯人とされる人物を引き渡すことを要求する。

 またもやわれわれの同胞であるフィリピン人に対するレイプ、犯罪が発生した! われわれはまたもや米兵がそれを引き起こしたことに憤っている。二〇〇六年十一月、二十二歳のフィリピン人女性をレイプした米海兵隊員が有罪判決を受けた。このレイプ事件はフィリピン国内で起き、広くメディアの注目を浴びた。しかし、米国政府は―アロヨ政権の黙認のもとで―判決を支持するのではなく、有罪を宣告されたレイプ犯、ダニエル・スミスの「逃亡」を企図した。被害者が苦痛と絶望にさいなまされ続けている一方で、スミスは在フィリピン米国大使館で保護監督下に置かれたまま時を楽しんでいる。

 ミグランテ・ジャパンは、沖縄のホテルの室内でレイプされたフィリピン人女性に起こったのと同様のことがこれ以上繰り返されることをのぞまない。われわれは、ブッシュ・福田がこの事件をもみ消し、女性たち、そしてわれわれ日本にいるフィリピン人移民の誇りを傷つけることを許さない。われわれは、米軍によるのではなく、この犯罪の真相を突き止めることができる公正な機関によるすばやく徹底的な調査を要求する。そしていったん罪が証明されるならば、正義が執行されることを要求する。

 ミグランテ・ジャパンは、フィリピン人移民に対しておこなってきたすべての犯罪のためにアロヨ政権を非難する。政府のほとんどすべての機関でおこっている無類の腐敗によって、限られた資源が食いつくされ、ますます多くのフィリピン人が海外での運だめしに追いやられている。いったん海外に出てしまえば、移民たちは実際には必要とされるドルを送金するドル箱として扱われるが、しかし必要なときにはいつも無視され、裏切られている。

 いまこそ虐げられた海外の兄弟姉妹たちへの憂慮を示すときだ。われわれはアロヨ政権が沖縄でのレイプ被害者に手を差しのべ、法的に、領事館として、また物質的なすべての必要な支援を提供することを要求する。
 ミグランテ・ジャパンはまた、沖縄の人々に、日本駐留の米兵によって犠牲になったわが同胞を含む犠牲者を支援し立ち上がってくれるよう訴える。われわれの経験から言えば、米国政府が問題をぼかして被害者を苦しめながら、真実を覆い隠すためにできることはなんでもしてくるであろうことはほとんど確実だ。

 ミグランテ・ジャパンはレイプ被害者の正義を要求して東京の米国大使館への抗議行動に取り組むことを誓い、米国の覇権の象徴であり、民族の主権に対する直接的な攻撃である日本およびアジア地域のすべての米軍基地・施設の撤去という日本の人々の要求を共にして行動する。
 

 

 

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