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 ■フィリピン 第26回KMU・ISA報告

  反アロヨで燃え上がった総選挙前のフィリピン人民の闘い




 フィリピンのKMU(五月一日労働運動センター)が呼びかける第二十六回ISA(国際連帯会合)が四月二十九日から五月六日まで行われた。この間、アメリカをはじめとする帝国主義の侵略戦争と略奪に抵抗する反帝派の国際労働運動を結集し建設することがKMU側から意識的に行われている。日本の左派労働運動の建設において、日米帝のアジア侵略支配とたたかう東アジア各地の戦闘的労働運動との国際連帯は重要である。とくに、東アジアにおける戦闘的・階級的な労働運動の国際的拠点を形成する民主労総やフィリピンKMUとの連帯は、戦略的事業といわねばならない。
 第二十六回ISAのテーマは、「利潤のための雇用ではなく、働く者全てにとっての雇用確保を!」であった。オーストラリアからAMNUやCFMEUなど四労組、米国からチームスター、ドイツのオペル労組・MLPD、インドネシアのGSBI(独立労組連盟)、デンマーク、カナダ、ニュージーランド、香港、韓国、そして日本からはAWC日本連などが参加した。
 この時期、フィリピンでは五月十日の総選挙が全国各地で闘われていた。現アロヨ政権への人民の不満と批判はきわめて強い。腐敗と汚職にまみれた国家事業などから莫大に私腹を肥やし、労働運動・人民運動の活動家など約千名を虐殺し、最近も医療保健労働者四十三名(モロン43)を「新人民軍メンバー」としてデッチアゲ不当拘束するなど多くの政治犯拘束や人権抑圧を進め、米軍四千名規模を常駐させ米比軍事一体化のもとでイスラム武装勢力や共産党・新人民軍への「対テロ戦争」を強め、政敵などを大量虐殺した地方権力者を保護するため南部ミンダナオを威厳令に置くなど、アロヨ政権の反人民性や独裁化は度外れている。
 それ故、第二十六回ISAは、KMU・バヤンなど反帝民族解放勢力による合法的選挙闘争として反アロヨ闘争が高揚した真っ只中で開催された。国際選挙監視団としても組織されるものであった。ILPS(人民闘争国際連盟)のノルマさんは、五月中旬、ビコール、中部ルソン、ミンダナオの三地方にて、国際選挙監視団を展開すると初日のオリエンテーションで語った。その地方は、貧困化が激しく、国軍による軍事作戦がきつく、したがって人権抑圧状況の強い地方なのだ。
 オリテや諸報告、地域訪問などで、フィリピン労働者・人民の状況は大変厳しいことが認識できる。現在の世界恐慌のもとで、米国・欧州・日本など帝国主義本国でも、労働者の失業・貧困化は激しい。新自由主義のグローバリゼーションによって、雇用破壊が加速し、派遣や短期契約など非正規化と失業者が大規模に構造化され、賃金と労働条件・諸権利が切り捨てられ、貧困化が強められ、昨今、社会問題化した。他方、フィリピンでは、地方農村・農業における大地主の大農園支配が構造化され、おびただしい貧農と相対的過剰人口群が生み出され、このなかで帝国主義の外資・多国籍企業による「輸出自由地域」・経済特区がつくられ、天然資源・漁場を略奪され、国民経済の基礎が完全に破壊されている。新植民地支配が固着している。低賃金労働者とその予備軍、大量の土地なし農民、そして街頭物売りなどのインフォーマル・セクターの市街地貧民層など、これらを背景として一日四千人の男女(七割が女性)が海外へ出稼ぎに行く。約九百万人が海外で働き、その送金がGDPの約10%に上り、沈没するフィリピン経済を支えている。失業率11%以上、マニラ首都圏で一日の最低賃金は三百八十二ペソ(約千円)、地方の最低賃金は二百九十八ペソ(約八百円)なのだ。日本の約一五分の一という低賃金で新自由主義政策のもと、日本社会からは想像を絶するほどの巨大な貧富格差が再生産されているのだ。
 こうした米日帝国主義による超過利潤の搾取と資源略奪、そして軍や私兵・暴力団の階級的暴力が、フィリピン人民を押しつぶしている。この状況は歴史的に永続化してきた。
 五月一日は労働者の国際的統一闘争日である。KMUのマニラ・メーデーは約一万人が結集した。アロヨ大統領の退陣、アメリカ帝国主義打倒、全国一律一二五ペソ賃上げ、米軍駐留協定の破棄などがシュプレヒコールされ、灼熱の街頭をデモする。集会では、犯罪者アロヨを投獄するパーフォーマンス。アロヨのハリボテが火あぶりにされた。ISAの国際代表団の登壇と国際メーデー・アピール。その後、夕方のデモではアロヨ大統領の住むマラカニアン宮殿にむけて、松明デモが行われた。マラカニアン宮殿前のメンジョーラ橋には、鉄条網と機動隊の阻止線が張られ、そこで夜の抗議集会。
 翌日からの地域エクスポージャーでは、南タガログ地方を訪問する。ラグナの「輸出自由地域」には日系企業が大量に侵出している。韓国、台湾、アメリカの企業も多い。トヨタ・日産・ホンダなど自動車工場とその関連企業、富士通やパナソニックなど電機も多い。輸出自由地域・経済特区では、ノーユニオン・ノーストライキ政策がとられている。すさまじい低賃金と契約労働(五ヵ月未満の繰り返しを三年から五年)を強制され、御用労組や経営の暴力支配と闘う多くの若い労働者と交流した。フィリピン・トヨタ労組委員長とも会った。ほとんどが労組つぶしの不当労働行為や団交拒否を受け、軍や暴力団の攻撃や脅迫を受けていた。地域オルグは、貧困な労働者コミュニティで粘り強く生活・医療・労働の相談を進め、地域から職場へと組織化をひろげる。その波及力により、警備と塀で囲まれた「輸出自由地域」内職場に闘う労組を建設している。抵抗と団結によって、「人間としての」「労働者としての」誇りを獲得している若い男女の労働者たち。彼ら彼女らは活発に貪欲に学習し行動し闘っていた。あらためて、労働者の国際的存在と連帯、階級的団結を確認しあった。奪われた健康・生活・雇用・権利などを全力で奪還しているフィリピンの闘う労働者。軍や警察・暴力団から、命も脅かされ、ネスレ労組・ヤザキ労組などの指導者が殺されてきた。彼ら彼女らは「労働者階級の闘いなのだから。生涯をかける。怖くは無い」と述べ、その階級的団結の確信をはにかみながら表明した。大変なきびしさである。
 その後、最終日、マニラで社会主義フォーラムや、「新人民軍のメンバー」として不当なデッチアゲで拘束された労組指導者たちの釈放を求めるデモを行い、国際連帯の夕べをもって、第二十六回ISAは終わった。「団結した労働者は決して負けない!」「国際連帯万歳」「万国の労働者、団結せよ!」のスローガン・シュプレヒコール、そして労働者人民の闘争歌が鳴り響いた。

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 帰国後、フィリピン総選挙の結果が明らかとなった。選管の発表によると、新大統領は故コラソン・アキノ大統領の息子であるノイノイ・アキノが大勝したという。反アロヨや貧困層の票が集まったようだ。KMU・バヤン系は「国家主権」「貧困の解消」「自立経済」「分配の平等」「人権・環境」を訴え、選挙闘争を取り組んだ。大統領選ではKMU・バヤン系は、ルイシタ大農園の労働者虐殺事件もあって、その農園を支配するアキノ一族を批判し、対抗馬のビリヤール候補を支持した。上院ではサトル・オカンポやリサ・マサの両候補を立て、惜しくも敗北。下院の比例で、バヤン・ムナ(人民が第一)、ガブリエラ(女性)、アナクパウイス(労働者農民)、カバターン(青年)、アクト(教員)から計七名の国会議員を当選させた。一方、現アロヨ大統領は下院のパンパンガ選挙区で当選し、その一味も比例で残存した。
 KMUのエルマー・ラボッグ議長は、米帝や比財界が腐敗しきったアロヨから「清新」なアキノに交代し人民統治力の回復に期待し支持していることを、痛烈に非難した。同時に、KMUは、アキノ新大統領に公約実施を求め、「アロヨの汚職・腐敗・人権侵害の訴追」「外資の制限」「富裕層への課税強化」「教育・医療など社会サービスの増額と充実」などを求めた。とくに、労働者を抑圧する法権力の横暴をやめ、労働者保護法制を厳格に守ること、全国一律百二十五ペソ賃上げすること、新大統領がアロヨ政権の閣僚・官僚を引き継がないこと、NDF(民族民主戦線)との和平交渉を進めること、これらを強く求めた。そのために、労働者の広範な大衆行動を組織すると訴えた。
 アキノ新大統領は、オバマや鳩山のように、「変革」を強調し貧困対策を訴え、当選した。だが、アキノはオバマや鳩山と同様に、資本家・地主・帝国主義の利害に立ち、労働者・農民・貧困層と非和解の階級対立を激化させることは不可避である。
 AWC日本連などのISA派遣団のもとに、六月四日付で、KMU国際部から緊急抗議と支援要請が来たという。なんとISAの南タガログで交流した日系侵出企業の労組書記長が軍関係者からの銃撃を受け虐殺されたのだ。「タカタ・フィリピン」で働く、エドワード・パンガニバン労組書記長は、労組指導部の政治虐殺では全国で九十六番め、南タガログで九番めの犠牲者となった。ぜったいに許せない。南タガログでは、この間、七十二名の労働者・農民運動の指導部が、新人民軍メンバーとデッチアゲられ、指名手配を受けている。これらの潜った地域指導部に代わって、若き労組活動家が続々と形成されていた。今回の労組活動家への政治虐殺は、こうした運動基盤の広さと深さを壊滅しようとして行われたのである。ぜひとも、フィリピンの政権末期アロヨに抗議を集中し、次期大統領アキノへアロヨ訴追と政治虐殺・人権侵害事件の根絶を求めよう。フィリピン労働者人民の反帝民族解放―社会主義革命の闘いを支援しよう。排外主義による分断攻撃を打ち破り、日米帝国主義とたたかい、労働者国際連帯を進めよう。反帝国際連帯・社会主義と労働運動を結合しよう。

 
 

 

 

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