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   米軍プレゼンスの強化と闘うフィリピン人民

        反基地国際共同闘争の前進を





 対中国包囲網の形成・強化を念頭に置いた米軍の新軍事戦略は、アジア太平洋各地において米軍基地や米軍展開態勢の強化をもたらしている。フィリピンにおいてもそれは例外ではない。たたかうフィリピン人民と連帯し、アジアからの米軍の総撤収の実現に向けて、反基地国際共同闘争の前進をかちとろう。

 ●1章 強化される比国内の米軍

 周知のように、一九九一年のクラーク・スービック両米軍基地の撤去以後も、米国はフィリピンにおける米軍プレゼンスの維持を追求し、一九九八年には訪問軍協定(VFA)を締結し、二〇〇二年からは米比合同軍事演習バリカタンを通してふたたびフィリピン国内で米軍部隊を展開させた。そして、それを口実にフィリピン南部・ミンダナオ島のフィリピン軍基地内等に常駐拠点を設立し、演習期間以外も恒常的にフィリピンに留まってきた。また、合同軍事演習への参加やフィリピン国軍への訓練の提供を表向きの理由とし、実際にはフィリピン国軍を率いて対テロ作戦をおこなってきた。また、公表されてはいないが、ミンダナオ島のいくつかの都市では民間施設にカモフラージュされた米軍基地・施設が建設されている、と現地の人民団体は指摘してきた。さらに、二〇〇二年に結ばれた相互兵站支援協定(MLSA)は、フィリピン全土の民間空港や港湾施設の米軍の自由使用への道を開いた。米国側のまとめによれば、毎年二十回の合同軍事演習が実施され、昨二〇一一年だけで米軍艦百隻余りがフィリピンに寄港している。
 そして今、フィリピン人民は米軍プレゼンスのさらなる強化に直面している。米帝・オバマ政権がその新たな軍事戦略「全世界における米国のリーダシップの堅持―二十一世紀の国防戦略の優先事項」を発表した直後の本年一月下旬、米比両政府の次官級会談が行われ、「海上安保の深化・拡大」が確認された。これに次ぐ四月下旬の両国の外務大臣・国防大臣による初めて二国間戦略対話(2+2)では、合同軍事演習や対テロ活動の強化を含む「共通戦略目標」が合意され、それ以降も防衛当局者間の協議が続けられてきた。
 これらの協議は、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、中国が領有権を主張する南沙諸島(スプラトリー諸島)をめぐって、中国に対する対抗・包囲を強めるために、同諸島に向けた米軍のプレゼンスを強化する目的に貫かれている。
 こうしたなかで、今年四月に実施された米比合同軍事演習バリカタンは、米軍四千五百人が参加して南沙諸島に近いフィリピン南西部・パラワン島とその周辺海域を主要な舞台とし、あわせてルソン島のマニラ首都圏、ヌエバエシハ州、パンパンガ州でも実施された。公式には「人道支援」「大震災を想定した机上演習」とされているが、中国に対するあからさまな軍事的けん制である。この十月にもふたたびパラワン島で合同軍事演習が行われている。
 原子力潜水艦や原子力空母の寄港も相次いでいる。五月に米原子力潜水艦ノースカロライナ、六月に同ルイビル、九月に同ハワイ、十月に同オリンピアがそれぞれスービック港に入港している。これらの原子力潜水艦は核巡航ミサイルが搭載可能であり、これらのフィリピンへの寄港はフィリピン憲法の非核条項にも違反している。十月には横須賀を母港とする米原子力空母ジョージ・ワシントンがマニラ港に入港した。

 ●2章 実質的な米軍基地建設策動

 米比の軍事協議の詳細は、フィリピン人民の批判を恐れて、これまで公式にはつまびらかにされてこなかった。しかし、最近の報道によれば、米比両政府はパラワン島を「対中国の最前線基地」として位置づけ、米軍の拠点とすることで基本合意したという。
 米軍はすでにオーストラリアなどアジア太平洋地域での海兵隊のローテーション配置を開始しているが、パラワン島中部にあるフィリピン国軍のウルガン基地を米海兵隊のための拠点とし、新たにヘリポートを整備する。あわせて、同島南部のサマリニアーナ基地など島内の複数の基地を整備し、後方支援機能をもたせると報じられている。サマリニアーナ基地については、すでにこれまで千百メートルであった滑走路を二千四百メートルに拡張し、大型輸送機や偵察機が発着できようにするための工事が進行中である。
 パラワン島以外では、ルソン島のスービック旧米海軍基地、クラーク旧米空軍基地、ポロポイント海軍基地、ミンダナオ島サンボアンガ、フィリピン最北端のバタネス諸島などの基地・施設を米軍の補給・後方拠点とするための整備が検討されているという。いったんは米軍基地の完全撤去をかちとったフィリピンにおいて今、領土問題を利用してフィリピンにおける米軍プレゼンスの飛躍的強化、実質的な米軍基地建設の策動が進められようとしているのだ。

 ●3章 日帝の介入・軍事協力許すな

 米帝のアジア重点化戦略は、同時に、同盟国間の軍事協力の促進・強化をもたらしている。フィリピン議会は今年七月、オーストラリアとの間での訪問軍協定を批准し、九月には初めてとなる米・豪・フィリピンによる三国合同軍事演習をミンダナオ島で実施した。同時にわれわれが指摘しなければならないのは、日帝のフィリピンとの軍事協力の強化、南沙諸島問題への介入である。
 今年四月のバリカタン演習は米軍のみならずオーストラリア、韓国、ASEAN諸国などが参加する多国間軍事演習として実施され、日本の自衛隊もまた初めてこの演習に参加している。自衛隊は佐官級三名を送り込み、マニラ首都圏での机上演習に参加した。
 さらに、七月には、日本とフィリピンの防衛大臣が「防衛協力・交流に関する意図表明文書」に署名している。この文書は、国連PKO、人道支援・災害救援、海上安保を「共通する関心事項」とし、防衛大臣や軍トップから部隊レベルに至る「交流」を促進していくことをうたっている。これと並行して、日本政府から政府開発援助(ODA)の一環としてフィリピンに対して巡視艇の供与が進められようとしている。フィリピン政府はこれを「南中国海における『領土保全』のために」活用すると明言している。これはまだ正式決定されていないが、実現されれば民主党政権による武器輸出三原則の緩和以後初の日本による武器輸出となる。
 日比の軍事協力の強化は、米軍のアジア重点化戦略のなかに組み込まれ、対中国包囲網の一部を形成している。それはまた経済権益の存在を背景に、フィリピンにおける日本の軍事的影響力を拡大していこうとするものでもある。われわれはこのような日比の軍事協力の強化、日本政府の南沙諸島問題への介入に反対してたたかっていかなくてはならない。

 ●4章 フィリピン人民と連帯し、反基地共同闘争の前進を

 フィリピン・アキノ政権は、「中国脅威論」を声高に喧伝することで、フィリピンにおける米軍のプレゼンスの強化をおし進めようとしている。フィリピンの民族民主主義運動はこのようなアキノ政権による排外主義煽動を通した米軍のフィリピン駐留の強化の正当化と対決し、米軍展開態勢の強化に反対する闘いを継続・発展させている。
 四月の米比合同軍事演習バリカタンに対しては、新民族主義者同盟(BAYAN)を先頭にして各階級層の運動体が結合し、同演習に反対してパラワン島に近い中部ルソンまでの民衆キャラバンが取り組まれた。マニラではフィリピン学生同盟(LFS)を先頭にした米大使館に対する戦闘的な抗議行動が取り組まれた。相次ぐ米原子力潜水艦、米原子力空母の寄港に対してもその都度抗議行動が取り組まれている。
 フィリピンの民族民主主義勢力は、南沙諸島をめぐる問題においても、「最も重要な要素は、米国のフィリピンおよびアジア太平洋地域における介入をやめさせることである」(フィリピン共産党声明)として、領土問題を利用した米国のフィリピン軍事介入を批判し、反帝国主義闘争を推進していく姿勢を鮮明にしている。
 米軍のアジア重点化戦略は、これまで見てきたようにフィリピンを初めとして、沖縄-日本「本土」、韓国、オーストラリア、グアムなど各地で米軍基地と米軍プレゼンスの飛躍的な強化をもたらそうとしている。これと対決するアジア太平洋地域民衆の反基地国際共同闘争がこれまでにも増して強化されてゆかねばならない。米比合同軍事演習バリカタンに参加している米海兵隊、パラワン島にローテーション配置されようとしている米海兵隊は在沖米軍基地所属の海兵隊である。こうした点を踏まえて、反基地闘争の国際主義的な発展が組織されていかねばならない。また、日本帝国主義によるフィリピンとの軍事協力強化、南沙諸島問題への介入を徹底的に批判していかねばならない。米軍プレゼンスの強化とたたかうフィリピン人民との連帯を強めよう。日米軍事同盟に反対し、アジアからの米軍総撤収をかちとろう。



 

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