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   ■反動右翼政権と対決する
        韓国労働者と連帯しよう

      
                  高橋功作

        


 昨年二月に発足した韓国の朴槿恵(パク・クネ)政権は、弱い立場に置かれている人々に配慮するとした大統領選挙時の公約を早くもものの見事に全て破り捨て、米帝との同盟関係を基礎に朝鮮民主主義人民共和国に対する敵対政策を強化し、新自由主義政策を露骨に推し進め、進歩勢力と労働運動に対する弾圧を畳みかけている。その一方で、右翼反動政権として同じ穴の狢(むじな)である日帝―安倍政権に対しては、領土問題に加えてその歴史認識と関連政策があまりにも無惨であることを要因として、かつ、反日発言による支持率浮揚をも狙って、厳しく批判し続けている。
 そうした情勢の中、鉄道労組が分割民営化反対のストライキを十三年十二月九日から三十一日まで貫いた。この二十三日間にわたるストは全社会的な共感を呼び、政府の進める新自由主義政策に対する反撃の烽火となった。

 ●反共・新自由主義政策を進める朴槿恵政権

 間もなく発足一年目を迎える朴槿恵政権は何をしてきて、どのような性格を持っているだろうか。
 第一に、大統領選挙の不正疑惑がまだ晴れず、元KCIAである国家情報院(国情院)の大統領選挙不正介入が明らかになったことで、政権としての正当性に重大な疑義を抱えた状態が今も続いている。国情院職員が公務員であるにもかかわらず選挙期間中にSNSを使って朴槿恵賛辞のツイートやメッセージを数十万数百万個も垂れ流し続けて露骨な世論操縦に手を染めた。加えて、得票率を不正操作したという疑惑は未だ解明されていない(注:筆者も十二年十二月の大統領選挙投票日の夜遅くまでネットで開票状況を見ていたが、大票田ソウル市の開票が進む終盤、朴槿恵・文在寅(ムン・ジェイン、民主党)両候補の得票率は小数点以下も含め、最後の数十分間は微動だにしなかった)。選挙の不正疑惑は李承晩を打倒した六十年の四・一九革命という歴史の記憶に直結する。不正疑惑解明と朴槿恵政権退陣を求める民衆運動は李明博前政権発足直後に燃え広がった二〇〇八年の米牛肉輸入反対ローソク集会を彷彿とさせる規模で、各界各層の総力結集で大きく広がった。
 第二に、この一年間は政権基盤・支持基盤を固めるのに全力を傾けた。大統領選終了以降、前記の不正選挙疑惑に加え、大臣内定者に不正が次々に見つかり、辞退者が数か月間相次いだ。加えて、元日本軍将校であり、軍事クーデターで大統領に就任した朴正煕(パク・チョンヒ)の娘であることに対する批判が韓国民衆の中に根強く存在している。保守新聞の世論調査での高い支持率とは裏腹に、実際には極めて基盤の不安定な政権なのだ。それ故、朴槿恵政権が最初に行ったのは、光州民衆を虐殺しその血で染まった全斗煥(チョン・ドファン)の不正蓄財問題に着手することだった。全斗煥が大統領在任期間中に不正に懐に入れた巨額の富に対する追徴金二千二百五億ウォンの有罪判決が十六年前に最高裁で確定していた。しかし彼は「金がない」とうそぶき、その一部しか払っていなかった。李明博はおろか金大中・盧武鉉政権ですら手を着けられなかった、同じ右翼反動の「先輩」のこの問題に朴槿恵は踏み込んだ。七月に検察が全斗煥一族宅や関連会社などに一斉家宅捜査。結局、九月には同じく不正に蓄財した元大統領の盧泰愚(ノ・テウ)が残りの追徴金を支払ったのに続いて全斗煥側も「全て納付する」と発表するに至った。保守勢力の間に激震が走った。しかし、反共保守本流である独裁者の娘に楯突ける者はいない。これにより朴槿恵は自らに批判的な民衆の喝采と支持を大きく取り込むことに成功した。
 第三に、前政権以上に強硬策を乱発する親米反共反北政権だ。李明博前政権と本質は同じだが、より強硬だ。朴槿恵政権の政策を決定する中枢は、南在俊(ナム・ジェジュン、国情院長)、金淇春(キム・ギジュン、青瓦台秘書室長)、 金章洙(キム・ジャンス、国家安保室長)など、朴正熙・維新政権時代の中枢だった陸軍士官学校出身者によって構成されている。人的構成と基本路線からみて父の政府の復活だ。
 それは共和国への対決政策で一貫していることに如実に表れている。十二月の張成沢処刑事態で強硬策が一気に加速。朴槿恵政権は北を崩壊させる好機が来たと判断し、北の体制の「急変事態」に対する対処準備を声高に叫び始めた。当面、和解の方向での政策はない。南が北を圧迫し、朝鮮半島の緊張を高める政策を続け、北に対して何らかの形で軍事的に動く可能性も否定できないだろう。
 これに乗じて米帝も今年に入り、テキサス州にある米第一機甲師団八百人を休戦ライン近くに九か月間駐屯させる方針を発表した。ローテーションの一環で「急変事態」に備えた措置というのが理由だ。同師団は二〇〇二―二〇〇五年にイラク戦争に参戦し、臨機対応が可能。しかし、駐韓米軍は第二師団のはずで、第一師団ではない。また、発表された配置予定地は米軍の駐屯を廃止することにした地域だ。それなのに再配置するというのは米軍移転協定違反だ。地域住民は経済発展の展望が消えて猛反発している。加えて、駐屯期間は九か月としているが、撤収後に装備を韓国軍に売却する可能性がある。「急変事態」時に軍事介入する態勢の継続化だ。米帝は北を打倒する路線に舵を切りつつある。
 さらに、「急変事態」時には自衛隊が集団的自衛権を行使して北に介入する可能性が極めて高い。そうするには日韓間に軍事協定が必要だ。日米は今後それを韓国に要求してくるはずだ。この日韓軍事協定が今年進展する可能性が高いと見るべきだ。通常国会での集団的自衛権問題は朝鮮半島、さらには中国との軍事的緊張と自衛隊の朝鮮・中国への出動=侵略と直結しているのだ。
 第四に、批判勢力を根絶するための弾圧を乱発している。その代表例が統合進歩党への弾圧だ。米牛肉反対ローソク集会と同水準の結集力と勢いを示した政権退陣運動をつぶし、合わせて、野党第二党である統合進歩党が十四年地方選挙、十六年国政選挙で民主党と選挙協力して躍進することを防ぐ必要が朴槿恵政権にあった。九月には国家保安法を越えて内乱陰謀罪を適用して同党の現職国会議員である李石基氏を逮捕した(これに先立つ同氏の国会議員免責特権の解除には野党の民主党に加え、統合進歩党から十二年に分裂した進歩正義党も賛成した。また、民主党は、この事態を受け、これまでの対北政策を全面転換し、安保の能力が自らに現在ないという否定的総括をした。その上で、安保に関する能力のある党を目指すという方向で進んでいる)。これに続き、統合進歩党の政党解散要求も提出した。大統領選挙の公開討論で朴槿恵の父が日本軍元将校だったと暴露して痛烈に批判し、また、昨年の不正選挙糾弾・退陣要求運動では牽引役となった同党を「北の追随勢力」と決めつけて解体しようというのだ。南北分断を根拠とする反共イデオロギーは今なお韓国民衆の思考と行動を根源で規定し縛り付けているが、それによる反対者・批判者の政治的抹殺策動だ。
 第五に、新自由主義政策の全面展開とそれに伴う労働運動弾圧及び生活破壊だ。大統領選時の公約である経済民主化と福祉拡充は全て露骨に投げ捨てられた。財閥中心・金持ち中心の反労働者・反庶民政権なのだ。特に福祉分野に関しては朴正熙政権時と比較しても大きく後退した。「創造経済」と打ち出してはいるが、外国資本の投資誘致が経済政策の全てで、内需拡大策も、最低賃金・非正規職に関する政策も公約とは裏腹に事実上皆無だ。青年学生は就職難、その大多数の非正規職労働者化、学資金の借金地獄により塗炭の苦しみを味わっている。ちなみに、金のない若者の間では安い弁当とカップ入りのクッパ=汁かけご飯(日本円で二百五十~三百五十円)が大人気だ。これまでなかった現象だ。韓国の最低賃金は五千二百十ウォン(約五百三十円)。物価は上がり続け、コンビニの商品価格は日本とほぼ同じだ。とても食っていけない。貧富の格差がさらに広がり、生き難さが酷くなっている。
 また、労働運動への弾圧と内容ゼロの労働政策も新自由主義政権としての経済政策を貫徹するためのものだ。公務員労組と全教組に対する非合法化策動、「公共部門の民営化は絶対にしない」という公約を破っての鉄道分割民営化への着手と、反対ストに立ち上がった鉄道労組への処分及び民事刑事訴訟全てを動員した弾圧、民主労総本部への史上初の警察権力の突入と蹂躙、やはり公約で解決すると訴えた非正規職労働者問題への無策がそれだ。これは、公共部門の民営化を全面的に行い貫徹するという新自由主義政策の基軸中の基軸である攻撃への踏み込みだ。経済政策では金大中政権以来の新自由主義政策が継続・拡大しているのだ。
 第六に、対日政策だ。朴槿恵の本質は親日だ。しかし、父親のイメージもあり、また領土問題と歴史認識に関する安倍政権の所業は韓国の保守右翼にとっても度を越して許容できないひどさだ。それ故、腹の底では日韓経済協力を望みながらも、一年前と比べると急落した現在40%台の支持率をにらんで切り札の対日強硬発言を繰り返さざるを得なくなっている。しかし、朴槿恵政権の歴史認識はまさに歪曲されたそれだ。最近問題となった教学社の高校歴史教科書はニューライト(新右翼)執筆陣の手によるものだが、植民地近代化論に基づく日帝植民地支配の美化と軍事独裁政権の賛美が最大の特徴だ。そして、歴史事実の誤認が何百か所も指摘されている。日韓全く同じだ。日本の歴史歪曲教科書を批判しつつも、内容と水準がそっくりすぎる教科書を高校生に押し付けようというのだ。これに対しては猛然たる批判の声と運動が沸き起こっている。日韓共同の歴史歪曲教科書反対運動が要請されている。

 ●分割民営化反対掲げ、鉄道労組が23日間スト

 今年一月の世論調査で「大統領は国民の声に耳を傾けようとしない」「大統領と国民は意思疎通できていない」という回答が60%に達した。韓国民衆は朴槿恵(パク・クネ)政権を「不通(=人の話が通じない)政権」と呼び、その独善性を厳しく指弾している。「独裁者の娘ではなく独裁者そのもの」という批判ポスターまで登場し、「アカ」レッテル張りによる民衆運動弾圧と新自由主義政策とに抗する闘いが連綿と続いている。
 ソウル市中心部にある景福宮前や各地の送電塔などでの現代自動車・雙龍自動車・公務員労組・全教組の労働者による、警察による宿泊用テントの撤去と植え込み設置などの執拗でえげつない妨害を跳ね返しての座り込み闘争、各地の非正規職労働者の闘い、バイト連帯のバイト労組への転換と青年学生非正規労働者の組織化の前進、指導部が数年ぶりに御用派から民主労組派に転換した現代重工業労組の内部の熾烈な闘い、無労組政策を社是としてきたサムスン財閥系企業での史上初の労組結成、原発と繋がる密陽(ミリャン)送電塔の建設に反対する住民運動などがそれだ。それらが、大統領選挙不正糾弾・政権退陣闘争および済州島・江汀(カンジョン)住民と現闘活動家たちによる海軍基地建設反対の粘り強い闘いなどと共鳴・共闘しつつ、利潤追求のためには人々の生活も命も犠牲にして構わないとする新自由主義攻撃への、「一緒に生きよう!」という異議申し立てとして連続的に取り組まれてきているのだ。
 政府に対するそうした抵抗闘争の一つとして鉄道労組は二年間の準備期間を経て十二月九日、分割民営化阻止闘争に突入した。日本の新幹線に相当する高速鉄道KTXの水西(スソ)駅発の新路線を鉄道公社の子会社として分離し発足させる計画を分割民営化の第一歩とみなし、この阻止を目的としたものだ。スト突入宣言全文は次の通りだ。
 「ゼネスト宣言文
 今日、私たちは鉄道を止める。 庶民の足であり国の動脈である鉄道を! 鉄道労働者が毎日運行してきた鉄道をしばらく止めようと思う。脱線が目前に迫っているから、疾走する列車をしばらく止めて線路を直そうと思う。
 もう一度走るために止める。
 二〇一三年十二月九日〇九時、鉄道労働者はゼネストに突入する!
 ブレーキが壊れ、民営化に向かって暴走する鉄道を、鉄道労働者が体を張って止めなければならない。私たちがブレーキ装置にならなければならないのだ。
 料金が上がり、庶民の足が金持ちの足に変わる鉄道! 老人・障害者・青少年の割引を廃止して社会的弱者を冷遇する鉄道! 赤字を理由に古里の駅を無くして地方の路線を撤去する鉄道! 投資はしないくせに利潤にだけは血道を上げ、乗客の命を担保にして危険極まりない運行をする鉄道! 私たちは、こんな鉄道のために青春と汗と情熱を捧げたのか?
 権力に媚びて嘘を誠に仕立てる御用研究機関、国民の意思を無視して傍若無人かつ一方通行の姿勢で一貫する国土交通省(訳注:名前が日韓同じ!)、原則と信頼を掲げてはいるが、大統領選挙時の公約を守るどころか、鉄道売却できますよと外国に約束している大統領、そして、鉄道公社の官僚の無能と卑怯さが、私たちにとって家庭と同じ仕事場を危機の奈落の底に陥れている。鉄道を奴らに任せるのか? 否だ。鉄道の主人公は鉄道労働者だ。
 私たちの夢のために、鉄道労働者は今こそ列車を止める。
 南北を連結してアジアとヨーロッパを走る統一鉄道の夢、大陸鉄道の夢! 庶民の足となり、全国民に愛される国民鉄道の夢! 誰もが安全で便利で安く利用できる公共鉄道の夢! 私たちの夢を奪って行ける人間はいない。
 今日私たちは、民営化を阻止するための正義の闘いに突入する。
 正義に勝る不義はない。国民に勝る政府はない。鉄道労働者が機関車となり、国民と一体となって牽引する私たちの闘いは、誰も止めることはできない。正義の闘い、国民の思いを受け止めた闘 いだから、私たちは必ず勝ち、歴史と国民の記憶の中に永遠に生きていくのだ。
 二〇一三年十二月九日
 全国鉄道労働組合中央争議対策委員会」
 鉄道労働者は現場・各地域・首都での集会に結集して隊列を維持した。民主労総傘下の他労組の連帯行動はもちろんだが、公共部門の組合員が大勢所属する御用ナショナルセンターである韓国労総まで政府を猛烈に批判。加えて民衆の支持がかつてなく大きかった。「安泰ですか?」(生活と将来は安泰でも大丈夫でもない、という意味)と問いかけ、ストを支持する壁新聞運動が全国の大学・高校に瞬く間に広がり、若者が連帯集会へ結集した。政府の弾圧は熾烈を極めた。スト突入直後に参加組合員全員を職位解除した。業務妨害を理由に逮捕状を取り、地下に潜伏した指導部を追った。二十二日には指導部の立て篭もる民主労総本部周辺に警察約四千人と放水車を配備した上で機動隊が建物内に突入。抗議の座り込みをしていた労働者・市民を大量逮捕した。しかし、労組指導部はその包囲網をかいくぐって全員が脱出した。民主労総はゼネスト突入を宣言し、二十八日のローソク集中闘争には十万人がソウルに集まった。これまではストに反対することも少なくなかった家族も今回は応援し、家族ぐるみの闘争になった。鉄道ストは勝利感と高揚感に包まれ、隊列を維持したまま十二月三十一日まで二十三日間貫徹された。鉄道労組も「鉄道公社のスト破壊行為に対して国民がそれを非難する世論や自発的な宣伝活動が全国的に拡大しながら、労組と国民が励まし合い、鉄道公社の策動に打ち勝つことができた」(労組幹部)と総括している。
 今回のストの特徴は何か。
 第一に、鉄道分割民営化攻撃と真っ向から対決し、同時にこれを打ち砕くための陣形を形成する上で大きな前進を勝ちったことだ。
 朴槿恵政権は赤字路線を日本のように第三セクター方式で運営し、かつ、貨物列車株式会社、維持保守整備株式会社などを完全に分割しようとする民営化の計画を確定し、その第一歩として水西発高速鉄道の民営化を進めようとしている。それゆえ、鉄道労組は、高速鉄道が民営化されたら残りもすべてそうされるという危機意識を労組内で共有する活動を徹底して行った。
 鉄道公社の在職職員二万七千人のうち鉄道労組の組合員は二万千人。鉄道産業労組という労組もあるが、組合員数は七百人未満だ。鉄道労組は99%以上の組織率だ。
 民営化反対ストはこれまで二○○二年、二○○三年、二○○六年、二○○九年に打ち抜かれ、今回が五度目だった。過去のストでの被解雇者が九十一人(約四十五人は公判中で残りは解雇が確定)であり、また、職位解除は九百―二千七百人だった。
 今回はどうだったか。鉄道には必須維持業務制度があり、労組はスト中も八千六百―九千人の組合員を職場に残した。スト突入直後に鉄道公社が職位解除を行った数が八千六百人ほど。以前と比べて弾圧がいかに苛烈かが分かる。労組の推算では約九千人がストに参加した。必須維持業務に従事した人を除いた組合員一万二千人のうち参加九千人だから75%だ。ちなみにラインやカカオトークなどのSNSが意思統一や情勢把握に大いに役立った。組合員の意識と戦闘意志と団結は極めて高く、強く、固かった。ストの隊列は最後までほとんど乱れることなく、強固に堅持された。
 同時に、今回のストは民主労総のみならず御用派の韓国労総も含めた韓国労働者全体の魂を揺り動かし、大きな励ましになった。民主労総のゼネスト闘争、韓国労総の民営化阻止の旗幟の鮮明化、両ナショナルセンターの公共部門労働者の共闘組織発足へと繋がった。二月二十五日は国民ストライキ闘争が予定されている。新自由主義反対の闘争陣形が急速に形作られ、拡大している。鉄道労組ストはその起爆剤になったのだ。
 第二に、民衆の支持がかつてなく大きかったことだ。二〇〇八年の米牛肉輸入反対ローソク集会以降、鉄道・医療・ガスの民営化に反対する闘いが広がった。李明博前政権は「先進化政策」、朴槿恵政権は「競争体制」という用語を使っているが、それが公共部門の民営化であることを多くの民衆は知っており、反対の世論は大きい。加えて、朴槿恵政権は大統領選挙の公約で「公共部門では絶対に民営化しない」と言っていたのに一年足らずで破ったことも人々の怒りにガソリンを注いだ。
 また、鉄道労組の事前準備も民営化反対世論の形成に大きく寄与した。鉄道労組は民営化が国民の生活に与える影響について討論・宣伝・周知活動を二○一二年以降二年間に渡り徹底して行った。二十七の地域対策委があるKTX民営化反対汎国民対策委員会を市民と共に作り、そうした活動に加え、国会・道議会・市議会で民営化反対の決議を上げるよう働きかけ、可能な所は上げさせた。
 保守マスコミは「鉄道ストは国民に大きな不便をもたらす」という悪宣伝を今回も展開した。にもかかわらず今回は、高速鉄道民営化への危機意識と反対闘争への共感が社会的に形成された。以前のストの時は沢山の人々が駅に押しかけて抗議をしたが、今回はほとんどなくなり、逆に「不便だけど大丈夫」というスローガンが社会的に大きく広がった。初期のころから全国各地で市民対策委が活発に動き、多くの人々がストを支持し、連帯集会とデモに参加した。インターネットポータルサイトのコミュニティーではスト募金運動が行われ、マスコミに意見広告も出した。政府に対する批判は続いている。
 第三に、スト弾圧のすさまじさだ。政府・鉄道公社はストについて「全てが非正常だ」「非正常を正常へ」と最後まで主張して労組の対話要求を拒否。弾圧一辺倒だった。八千六百人の職位解除。厳重処分の乱発。民主労総本部への公権力投入。民事では数百人の罷免解任スト期間中に発生した営業損失に関する約百五十億ウォン(約十五億円)の損害賠償訴訟の準備。刑事では業務妨害罪で百九十人を告訴告発した。うち三十一人に対する逮捕令状を発布。しかし、延長実質調査で、令状が無理に発布されたとして裁判所が棄却し、多くが釈放されている。こうした強硬策が逆にストライキを大きく育ててしまったのだ。
 鉄道労組は今、弾圧への対応に追われながらも意気軒昂だ。「分割民営化を国民に知らせるためのスト」(労組幹部)だった今回の闘いは第一歩だ。次の闘いの準備はもう始まっている。鉄道労組の分割民営化阻止闘争はこれからも続く。国鉄労働者の分割民営化反対闘争の教訓を伝えていこう。支援・交流活動を強め、現地闘争へ合流しよう。「労働者解放」という共通のスローガンを掲げ、中期的展望を持って日韓労働者民衆の連帯活動を実践していこう。



 

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