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   ■強権的政治へ突き進むアキノ政権

   
フィリピン人民の闘いに連帯を


 

 二〇一〇年の大統領就任から丸四年を経たアキノ政権は、新たに調印された米比防衛協力強化協定の締結など米国との軍事同盟関係をさらに強化しつつ、憲法改悪による長期政権に向けた野望を表明するなど、その強権的な姿勢を強めている。こうしたなかで、米日帝国主義の支配・介入に反対し、アキノ政権とたたたかうフィリピン人民との連帯を引き続き強化していくことが求められている。

 ●1章 米軍駐留強化に対する闘い

 今年四月に調印された「米比防衛協力強化協定」の下で、フィリピンにおける米軍駐留と米比両軍の一体化がますます強化されようとしている。
 米比防衛協力強化協定の核心的内容は、①米軍によるフィリピン軍基地の使用、②フィリピン軍基地内における米軍基地の建設、③米軍のフィリピンへの「ローテーション配置」、④フィリピンへの物資等の事前集積、を認めることにある。これは上院の同意がなければフィリピン国内における外国軍の駐留や外国軍基地の建設は認められないとしているフィリピンの現行憲法を完全に骨抜きにして、米軍の駐留と駐留拠点を飛躍的に拡大しようとするものだ。(詳細は『戦旗』一四三九号を参照のこと)
 この協定の締結と並行して、フィリピンにおける米軍の新たな拠点の選定と建設が進められてきている。その具体的な場所として現在挙げられているのが、フィリピン陸軍のフォート・マグサイサイ基地(ルソン島ヌエバエシハ州)、クラーク旧米空軍基地(ルソン島パンパンガ州)およびスービック旧米海軍基地(ルソン島サンバレス州)、旧米海軍基地、フィリピン海軍のサンミゲル基地(ルソン島サンバレス州)、そして南沙諸島に近いフィリピン南西部パラワン島であり、三年前に建設されたばかりのフィリピン海軍のウルガン基地である。これらの施設ではすでに米軍の駐留に向けた具体的な整備が進みつつある。
 米軍はすでに二〇〇二年以降、ミンダナオ島などに約七百人の米兵をなし崩し的に駐留させてきた。またフィリピンへの本格的再駐留の地ならしとして、米艦船のフィリピンの港湾への寄港を強化してきた。公式データによっても、二〇一三年にはスービック湾だけで実に七十二回も寄港している。こうしたなか、今回の米比防衛協力強化協定をばねにして、フィリピン各地へと米軍駐留を一挙に拡大させていこうとしているのだ。
 また、米比両軍の合同軍事演習も継続・強化されており、合同軍事演習バリカタン(今年五月)、強襲上陸演習を含む「協力海上即応訓練」(六月下旬~七月上旬)、合同軍事演習フィブレックス(九月下旬~十月上旬)と続いている。最新の合同演習フィブレックスがパラワン島とその周辺海域で実施されているように、このかんの米比合同軍事演習は南沙諸島をめぐる領有権問題を抱える中国をけん制し、また中国への対抗をアピールすることでフィリピンにおける米軍のプレゼンスの増強を正当化するものとして展開されている。米国からフィリピンへの軍事支援も一挙に拡大した。二〇一四年度の米国の対比軍事支援は前年度比で実に70%近くも増額されている。
 このようなフィリピンにおける米軍駐留の強化に対するたたかいは、帝国主義の支配からの解放を求めるフィリピン人民運動の最も重要な課題のひとつとなっている。BAYAN(新民族主義者同盟)は、オバマ米大統領がマニラに滞在し、フィリピンのガズミン国防相との間で米比防衛協力強化協定に調印した四月二十八日と二十九日には、これに対する大規模で戦闘的な抗議行動をマニラおよび全国の主要都市で組織した。以後も、五月のメーデー集会や七月のベニグノ・アキノ大統領の施政方針演説に対する抗議行動のなかでも、「米比防衛協力強化協定粉砕!」「米軍駐留反対!」はたたかいの主要なスローガンとして掲げられている。違憲訴訟も展開されている。アジア太平洋地域における米軍基地と米軍駐留の強化の一貫として強行されているフィリピンでの米軍駐留強化策動とたたかうフィリピン人民のたたかいに引き続き注目し、連帯していこう。

 ●2章 再浮上する改憲策動との闘い

 今年の九月二十一日は、マルコス元フィリピン大統領による戒厳令の布告から四十二年目にあたる。長年にわたるマルコス軍事独裁政権の支配を自らの手で打ち破ったフィリピン人民は、そのたたかいを記念して毎年九月二十一日前後に大規模な集会・デモを開催してきた。九月十九日に開催された今年の集会のテーマは、「独裁政権は二度といらない!」「憲法改悪反対!」であった。
 マルコス独裁政権の打倒後の一九八七年に制定された現行のフィリピン憲法は、長期独裁政権の出現を抑止する目的から大統領の任期を一期六年に制限してきた。しかし、ベニグノ・アキノ大統領が今年八月の記者会見で、「政治改革を進めるため」などとして、憲法を改定して自身の再選を狙うことを示唆する発言したために、人民運動の具体的な課題としてあらためて浮上してきた。
 フィリピンにおいては、現行憲法が制定されて以降、それを改悪しようとする策動がラモス、エストラダ、アロヨと続いた歴代の政権によって繰り返し画策され、そして、その度に人民の力によって阻止されてきた。
 繰り返し浮上するフィリピンにおける改憲策動には、大統領任期の延長など行政制度の改悪以外に、常にもちだされるふたつの主要な内容がある。そのひとつは、外国資本の投資を規制するいわゆる経済条項の改悪策動だ。現行のフィリピン憲法は、外国人による土地などの所有を厳しく制限し、フィリピンで操業する企業は外国人の出資比率の上限である40%を越えてはならないとしてきた。それが「海外からの投資の拡大の障壁となっている」ので、それを緩和・撤廃しようという議論である。もうひとつは、前節で述べたように、上院の同意のない外国軍の駐留や外国軍の基地の建設を禁じている条項の撤廃である。この条項は、このかんの米軍の再駐留によってますますなし崩し的に掘り崩されようとしているが、最終的な明文改憲を図ろうとする動きである。
 これらが日米をはじめとする巨大独占資本・多国籍資本の利害、アジア太平洋支配の強化のための軍事拠点としてフィリピンを確保・強化しようとするアメリカ帝国主義の利害と合致するものであることは言うまでもない。フィリピンにおいて憲法改悪策動が繰り返し浮上する基礎はここにある。経済条項の改悪を先行して進めようという議論も有力な保守政治家によって繰り返し行われている。アキノ大統領による最新の憲法改悪策動は腐敗した自らの政権の延命を狙うもとして直接的には浮上してきているが、それはこのようなフィリピンの新自由主義的再編の徹底化と外国軍駐留の容認を内包するものである。しかしフィリピン人民は、これまでもそうであったように、必ずやこのアキノ政権による最新の改憲策動を打ち砕くだろう。

 ●3章 継続する政治的殺害

 フィリピンにおける「政治的殺害」、国家権力による活動家やジャーナリスト、宗教者らに対する暗殺攻撃は、とりわけアロヨ前政権の時代に顕著となり、広く国際的な非難を浴びてきた。しかし、フィリピンの人民運動、活動家にとって、政治的殺害に代表される国家権力による弾圧・人権侵害は決して過去の一時期の話ではない。それはフィリピン国軍が指揮する「オプラン・バヤニハン」と名づけられた内乱鎮圧作戦のもとで、現在のアキノ政権によっても継続されている。
 BAYANに参加する人権団体カラパタンの調査によれば、アキノが大統領に就任した二〇一〇年七月から二〇一四年六月までの四年間で政治的殺害の犠牲者は二百四人にのぼっている。また、二十一人の強制失踪者が存在している。加えて、二百七件の活動家に対する政治的殺害の未遂事件が報告されている。今年八月の一ヶ月間だけで七人の合法大衆団体に所属する活動家が殺害されており、毎週どこかで活動家が暗殺されているという状況である。カラパタンは加えて、今年六月末の時点で、さまざまなでっち上げの罪で投獄されている政治犯の数を五百四人と報告している。
 そもそもアキノは政治的殺害など重大な人権侵害に対する調査と訴追を進めることを公約の一部として当選し、今年七月の施政方針演説においても同様の趣旨を述べている。しかし、そうしたことは実行されず、政治的殺害や強制失踪が続いている。われわれはこのような事態に注目し続け、弾圧に屈せずたたかい続けるフィリピン人民への連帯を引き続き強化していかねばならない。

 ●4章 継続する連帯を

 アキノは今年七月の施政方針演説で、高い経済成長率やインフラの拡張などを自らの「改革」の成果として強調した。しかし、二〇一三年の失業率はASEAN加盟国で最悪の7・3%であり、インフレ率も上昇しており、労働者人民の生活はいっそう苦しいものになっている。アキノによる「改革」は抑圧され搾取されるフィリピンの労働者人民の生活をまったく改善していない。「大統領の『改革』に関する演説は、過去四年間の失政を糊塗し、失敗した政策の継続を正当化しようとするものに過ぎない。彼はどの改革について語っているのか? 空前の失業率や電力料金高騰についてか? 失敗した高架鉄道の民営化についてか? 議員たちの腐敗とそれを一部だけ訴追したことか?……」(BAYANプレスリリース)。こうしたなかで現在、アキノ大統領の支持率は急速に低下している。
 BAYANをはじめとしたフィリピンの民族民主主義勢力は、弾圧に抗し、アキノ政権の打倒と帝国主義の支配からの解放に向けたたたかいを着実に粘り強く進めている。そのたたかいに対する連帯を引き続き強化していこう。日本帝国主義はこのかんフィリピンへの経済支配のみならず、フィリピンの支配層との間での軍事協力をも強化してきた。直近の米比合同軍事演習フィブレックスには日本の自衛官も初めて参加している。このような策動を弾劾し、たたかうフィリピン人民との連帯をいつそう強化していこう。



 

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