共産主義者同盟(統一委員会)






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   防御・対峙から反転攻勢へ
   韓国史上最大規模の政権打倒闘争に参加して



 アジア共同行動日本連が呼びかけた訪韓団に入り、十一月十一日から五日間、韓国を訪れた。
 十一日夜遅くにソウルの宿所に到着し、労働者大会前夜祭に参加した先発組と合流した。一週間前の朴槿恵退陣要求集会には十万人が集まった。歴史的な現場で韓国民衆とともにたたかうことができるのだと考えると、興奮を抑えることができない。

 ●1章 情勢と民衆運動を確認

 十二日午前、日韓労働運動交流会があった。韓国側はAWC韓国委員会、労働党、左派労働者会、青年左派、青年緑ネットワーク、アルバイト労組が出席。韓国の情勢とたたかいに関する報告と質疑が行われた。AWC韓国委員会による情勢報告の要旨は次の通り。
 第一に、朴槿恵政権退陣闘争だ。これは、大統領の辞任だけでなく、資本主義の矛盾を大衆が実感し、行動に移している歴史的なたたかいだ。これまで労働者・農民の組織的なたたかいが今日の大規模集会の土台となっている。
 「朴槿恵退陣」「即刻下野」「これが国か?」がスローガンだ。国家財政二兆円を自分の関連会社に流し込んだ「崔順実(チェ・スンシル)ゲート」をきっかけに、これまで累積されていた怒りのマグマが爆発した。シャーマニズム的な新興宗教に対する反発もある。また、中高校生がこの草の根運動の一部を成しているのも特徴だ。必死で受験勉強しても非正規の仕事にしか就けないことへの怒りがある。「コンクリートの30%」と言われた保守派支持層が瓦解した。特に朴槿恵の故郷であり政治基盤である慶尚道での支持が暴落した。
 しかし、朴槿恵が最悪の大統領なのではない。今回と同様の国政の私物化と運動への弾圧は、他の歴代大統領もやってきた。金大中時代も労働者の自殺が多かった。今と違うのは政府が謝罪し、責任者が一定の処罰を受けたことだ。人気のあった盧武鉉大統領はFTAを推進し、平澤(ピョンテク)米軍基地を拡張し、イラクに派兵した。謝罪もし、権威的ではなかったが、労働運動での被逮捕者数は史上最多で最悪だ。朴槿恵が違うのは謝罪しないことだけだ。国家暴力、資本の収奪という点で、現政権と歴代政権との間に本質的な違いはない。
 第二に、労働運動だ。九月二十七日、十五の参加労組が同時に突入した公共運輸労組のストライキは、成果年俸制の撤回を要求している。それは、労働者を五段階で評価し、一番下は自動的に解雇となる。すでに一部導入されている。IMF危機後に整理解雇制が導入されたが、勤労基準法があり、解雇を容易に実施できない、それで、資本が、成果年俸制を公共労働者に全面適用しようと朴槿恵政権を通して推進してきた。鉄道労組と貨物連帯の成果年俸制反対ストは今も続いている。
 現在、非正規へのイデオロギー攻撃、正社員との分断が進んでいる。しかし、これを労働組合が突破する道はある。独裁時代は労組そのものが暴力的に弾圧され、民主化時代以降も新自由主義政策が徹底された。朴槿恵が退陣したとしても労働者の力で新自由主義と運動弾圧を打ち破らなければ今後も続く。非正規職労働者が大量に決起して資本主義を根本的に変革できるかどうか。朴槿恵退陣闘争の核心はそこにある――。
 青年組織からは次のような報告があった。
 第一に、反原発運動だ。今年九月に原発林立地帯の近くで大地震が起きた。活断層もあるが、政府は調査結果を発表しない。来年十二月の大統領選では「脱原発」候補を立てる計画だ。老朽化した原発の即時廃止、古里(コリ)原発一号機の完全廃止、新たな原発建設反対、使用済燃料の再処理反対に取り組んでいる。
 第二に、労働運動だ。最低賃金一万ウォン(約九百五十円)、アルバイト差別禁止、労働基準監督官などの制度改善、ベーシックインカムが主要課題だ。韓国には百万~五百万のアルバイトがおり、全体の5%~25%を占める。韓国の最低賃金は全国一律で、現在六千三百五十ウォン(約六百円)。国会前で最賃一万ウォンを掲げて二十二日間のハンストを行った。十一月にはマクドナルド労組が結成された――。

 ●2章 百万人集会デモに参加

 午後、地下鉄「ソウル市庁駅」はすでに参加者でごった返していた。構内ではソウル地下鉄労組が集会を開いていたので再会を喜び合いながら握手。同労組は九月に鉄道労組などと同時にストに突入し、三日目で使用者側と合意してストを中止したが、その後も鉄道労組ストをわがものとして組織的に受け止めて支援活動を継続している。その合意内容は、①成果年俸制は労使の協議にのっとって解決する②労組の合意なしに成果年俸制は導入しない、の二点。実質的に阻止したということで、完全勝利したわけだ。公共運輸労組の連帯ストは労組交流の積み重ねなど事前準備をしっかりと行い、国会開会中に焦点を合わせて計画され、実行された。その過程で、若い組合員を含めて「鉄道労組ストは私自身のたたかいだ」という確信を持った若い活動家が数千人数万人単位で新たに形成されたのだ。民主労組運動の未来にとって巨大な成果だ。
 ソウル市役所前広場につくと、その公共運輸労組主催の集会のさなかだった。継続中の鉄道労組のストライキが公共運輸労組十六万人組合員全体の取り組みとなっていることを再確認できた。午後二時からは労働者大会が、午後四時からは第二回民衆総決起大会が開かれた。「朴槿恵は下野しろ」「たたかい続ける準備はできていますか?」「新しい韓国は目の前にある」「がんばれ鉄道労働者」「共に進もう、鉄道スト」「成果年俸制を撤回させよう」などのプラカード。シュプレヒコールは「労働三法をたたかいとろう」「労働者が主人公だ」「世の中を変えよう」など。配布されたポスターには、「主権者の七大要求。①大統領下野、特別検察の捜査を、②セヌリ党の議員総辞職、③関連者の逮捕、不当財産没収、④癒着している財閥企業の捜査、⑤朴槿恵の政策の再検討及び廃棄、⑥歴史教科書の国定化中断、⑦セウォル号の七時間の真実を明らかにせよ」とあった。
 鉄道労組ストが朴槿恵政権打倒闘争の最前線に位置していること、それを支える民主労総が民衆運動の牽引車となっていること、その民衆運動が巨大な集会デモとして表現され、野党各党がそのあとに続いていること、そうした構図がはっきりと見て取れた。
 百万人集会デモは深夜まで続いた。ソウル市の集計によれば、周辺地下鉄駅の乗降者数が通常に比べて七十万~八十万人多かったという。また、車両通行規制区域の周りは、地方からの参加者が乗ったバスで埋め尽くされていたそうだ。東京に置き換えると、東京駅周辺から新橋駅周辺までの長方形の地帯が日比谷公園と細道も含めて群衆で埋め尽くされた、それほどの結集だ。
 これは革命だ。そう直感した。政治委員会の交代に終わるのか、それとも資本主義の根底的変革へと突き進むのかという課題はあるにせよ、だ。
 その後は、十三日、平和市場のチョンテイル像の前であったアルバイト労組の集会デモに参加。星州住民のサード配置反対集会に参加。十四日、亀尾(グミ)市で日本企業の旭硝子の子会社に不当解雇された非正規職労働者と交流。大田(デジョン)にある原子力研究院前での労働党の記者会見に参加し、その後交流……。ここで紙数が尽きた。
 てんこ盛りの経験となった。歴史の転換点となる現場に韓国労働者民衆とともにいることができ、感無量だ。この経験を最大限生かし、日本でも同じ巨大な運動のうねりを作りだし、安倍晋三を審判すること。私たちがなすべきことはこれだ。
 今度は日本の番だ。


 

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