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   街頭政治闘争で右翼反動政権を打倒

     
韓国民衆闘争の教訓と日韓労働者民衆連帯運動の課題


  

 韓国労働者民衆は街頭政治闘争によって朴槿恵(パク・クネ)右翼反動政権をついに打倒し、文在寅(ムン・ジェイン)中道左派政権を生み出した。六〇年4・19革命、八〇年光州抗争、八七年民主化運動・労働者大闘争に続く歴史的勝利だ。
 同時期に日本では、日系企業により不当にも整理解雇された韓国労働者が現職復帰を掲げて日本の本社前行動を続け、最後に現職復帰を勝ち取った。日韓労働者の連帯運動においてほぼ完全勝利といえる歴史的な地平が切り拓かれた。
 本稿では、ロウソク革命の意義、文在寅政権への評価、日韓労働者民衆連帯運動の課題、の三点について考える。

 ●一章 ロウソク革命の意義

 発端は二〇一六年十月二十四日のマスコミ報道だった。朴槿恵の盟友崔順実(チェ・スンシル)が国政の黒幕として政府の人事から軍事外交に至るまで指示を出し、朴槿恵がそれを忠実に実行していたこと、サムスン、ロッテなどの財閥と癒着し、政治を私物化していたことが暴露された。
 五日後、ソウル市中心部の光化門に三万人の労働者民衆がロウソクを手に結集し、この一大疑獄を弾劾した。ロウソク革命が始まったのだ。その後も毎週土曜日に集会とデモが開かれ、参加人員は十一月五日二十万人、十二日百万人、二十六日百九十万人、十二月三日に百三十二万人と鰻登りに増えた。
 その六日後には国会が朴槿恵を弾劾し、その大統領としての職務を停止した。憲法裁判所が弾劾を審理し、三月十日に朴槿恵を罷免した。翌日最後のロウソク集会が開かれ、勝利を祝った。この過程で権力中枢の核心人物と最大財閥サムスンの副会長、そして最後に朴槿恵と、約二十人が逮捕され、裁判が今も進行中だ。日本におきかえると安倍・菅・稲田・岸田など政府中枢の人物と東電会長が立て続けに逮捕されたようなものだ。四か月以上続いた街頭政治闘争が、腐敗堕落した政権と資本家を文字通り打倒したのだ。
 ロウソク集会参加者の要求内容は当初、大統領の下野=辞任だったが、最後は退陣と逮捕に代わった。崔順実とサムスン領袖イ・ジェヨンの逮捕だけでなく、主要政策批判、即ち、セウォル号真相究明、THAAD(終末高高度ミサイル防衛システム)配備反対、原発閉鎖、四大河川事業調査、民主労総委員長釈放、成果年俸制反対も掲げられた。延べ千六百万人の参加という史上最大の規模、平和デモという闘争方式、街頭のあちこちで行われた自主発言や議論による直接民主主義の実現、そして目的の達成と、ロウソク革命は韓国民衆闘争の巨大な一歩となった。
 他方で、南北分断を主要根拠の一つとする反共産主義の制度的イデオロギー的支配の貫徹という条件の下で、民衆革命は社会構造の根本的変革をスローガン即ち革命的意志として明確に打ち立てるには至らなかった。
 「第一に、ロウソク革命の主体である民衆が勢力交替の中心に立てなかったし、相変らず議会主義と代理主義の保守政治勢力による政権交替に留まった。第二に、労働組合と労働者の隊列がゼネスト等によって闘争の中心に立つことができなかった。第三に、結局のところ財閥中心の韓国資本主義体制を根本的に変革できないまま、権威主義政権から自由主義改革勢力へと政権が交替させられるに留まった。第四に、文在寅政府の積弊清算の試みが当分のあいだ国民的支持を得るなかで、構造的矛盾を克服しようとする労働者・民衆の闘争は、もうしばらく困難な条件に陥る見通しだ」(許榮九(ホ・ヨング)、AWC各地集会発表文)。
 つまり、ロウソク革命が政権交代という一定の勝利を得たことで、その中で掲げられた諸要求のうち、財閥解体などの社会変革的事項の実現が、新政権では構造的に実現困難なためにかえって遠のき、「不十分な面があるとしてもともかく新政権に希望を託そう」という民衆の気分が高まり、進歩左派陣営の社会変革的要求が支持されずに孤立して、その存立条件が今以上に厳しくなる事態が出来するだろうというわけだ。ではあるけれども、未完の革命の完遂が自らの課題であることを自覚する韓国労働者民衆の闘いは確固として存在している。
 六月三十日には民主労総と七十余りの市民団体で構成する「最低賃金一万ウォン非正規職撤廃共同行動」などが主催する社会的ストライキが行われ、五万人余りが参加した。学校非正規職労働者、大学病院清掃労働者、建設現場労働者、電子製品修理技師など民主労総傘下の十万人余りの非正規職労働者が主軸となり、非正規職撤廃、最低賃金一万ウォン(約千円)、労組活動の認定を要求した。史上初の大規模な非正規職ストライキだ。
 「政権が変わったからといって労働者の現実が変わったわけではないことを私たちはこれまでの歴史で確認してきました。常にそうであるように、労働者の運命は労働者自らが決定すべきです。それは労働者が自ら団結したたかってはじめて解決できました。(中略)労働者の生きる権利と労働三権が保障され、さらには労働者が解放される世の中に向かって力強く進んでいきましょう」(許榮九、蔚山(ウルサン)現代重工業下請労働者高空闘争四十日目連帯集会での発言)。

 ●二章 廬武鉉政権時の枠組みの再建を目指す新大統領

 大統領選挙運動が始まり、直接民主主義の熱気は物の見事に議会制民主主義の枠内へ回収されていった。極右・右派・中道・中道左派・左派の五人の候補がマスコミに取り上げられ、政権交代が成るか否かに耳目が集中した。進歩陣営からは民衆連合党が候補を出したが全く話題にならず、民主労総は進歩政党(民衆連合党と正義党)の候補を支持すると組織決定したが、その指導部の大半はブルジョア左派支持に回った。セウォル号が三年目にしてやっと引き揚げられて船内調査が進む最中の五月九日、大統領選挙が行われて「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)候補が41%の得票率で第十九代大統領に当選した。彼は光州抗争時に不当逮捕され、廬武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領と共に労働人権弁護士活動を行い、その後政界に進んだ、いわば民主化運動の申し子といえる存在だ。李明博・朴槿恵と九年続いた右派政権の不正腐敗に対する労働者民衆の怒りの決起がブルジョア左派=中道左派政権を誕生させたのだ。
 「国らしい国を作る」「雇用大統領」などのスローガンを掲げて大統領に就任した文在寅は、ロウソク革命によって自らの当選があり、その完遂が使命であると表明している。5・18民主化運動記念式では、抗日闘争と民主化運動の中で斃れた先達の意志を継承するという趣旨の闘争歌「あなたのための行進曲」の斉唱を復活させた。また演説では「文在寅政府は光州民主化運動の延長線上に立っている。一九八七年六月抗争と国民の政府、参与政府の脈を継いでいる」と自らの政権の性格を規定した。民主化運動の成果としての自己規定だ。
 文在寅政権は成立直後よりトランプ・習近平・安倍晋三との電話会談を行って外交活動を開始し、かつ、70~80%の支持率を背景に国内問題・南北問題において改革的な諸政策を打ち出している。
 だが、組閣作業が難航している。通常は大統領当選から二か月近くかけて政権の人選を行い、就任後に国会での人事聴聞会を経て任命に至る。しかし今回は前大統領罷免後の選挙であるため、就任直後から大統領府および内閣の人選が最優先課題となった。しかし、国会議席三百のうち与党百十九議席(四割弱)という少数与党体制であり、また、不動産投機や論文盗用などの問題を抱えている閣僚候補が少なくなく、野党の強力な抵抗で国会での人事聴聞会が大荒れとなり、決定が停滞する事態が続いている。
 「文在寅大統領は、長官級人事において五大排除原則(兵役逃れ、不動産投機、脱税、偽装転入、論文盗用)を明示したが、韓国の高官たちの顔ぶれがかつての政権の人々と別段違いがないということがあらわになった。開始時点から原則を守ることができなくなった」(許榮九、AWC各地集会発表文)。

 ▼二章―一節 労働問題

 韓国の労働者は長時間労働と低賃金に苦しんでいる。年間労働時間は二千百十三時間でOECD加盟国平均千七百六十六時間を大きく上回る。勤労基準法は週最大五十二時間労働を許容しているが、土日は適用外だ。それゆえ、大部分の企業が週末まで含めて週六十八時間を限度にしている。
 非正規職労働者の賃金は正規職の約半分だ。公共部門の労働者の約20%を非正規職が占めている。不当労働行為があっても、勤労監督官が絶対的に不足しているために放置される事例が続出している。労災発生率でも正規・非正規の間で大きな開きがある。二〇一五年基準で労働者一万人当たり労災で死亡した元請労働者の率は〇・〇五人である一方、社内下請け労働者は〇・三九で八倍だ。
 また、「雇用なき成長」がここ数年続いている。大企業は史上最大の実績を挙げながらも人員を減らしている。有価証券市場上場企業七百五十社の職員数は二〇一五年から二〇一七年の二年間で二千七百十七人(0・2%)減少した。新規上場企業を除けば1%の減少だ。韓国内最大企業で昨年史上二番目の営業利益を記録したサムスン電子は二〇一三年から二〇一六年にかけて職員数が三千六百九十八人減った。サムスングループ全体では一万二千七百八十九人減少だ。雇用と直結する施設投資は海外で行い、国内では費用削減のために人員を削減して利益を確保しているのだ。
 こうした中、文在寅大統領は八十一万雇用という公約を守るために大統領直属の雇用委員会設置を最初の業務指示とした。
 六月一日、雇用委員会が「雇用百日計画」を発表。大統領就任後百日以内に国政システムと財政・税制など各種政策手段を雇用中心に再設計し、政府の措置のみで推進可能な課題をできるだけ早く推進するというのが主要内容だ。
 具体的にはまず今年下半期に公務員を一万二千人増員。消防士、警察官、社会福祉士、国軍下士官を千五百人ずつ追加選抜し、生活安全分野と教師を三千人ずつ増やすという内容だ。七日、雇用創出のための十一兆七千億ウォン規模の補正予算案を国会に提出したが、七月上旬現在も棚上げのままだ。同案は十万前後の雇用を創出することがその目的だ。
 八日、民主労総が、一九九九年二月に労使政委員会を脱退してから十八年ぶりに雇用委員会への参加を決定した。韓国労総はすでに参加を決めていた。しかし、「『雇用委員会』は三十人の委員で構成されているのに労働界代表は三人だけだ」(同前)。
 他方では「労使政委員会ではないが、一種の社会的対話機構が十八年ぶりに完全に稼働する条件がもたらされた」(ハンギョレ新聞)と肯定的に評価する声もある。
 大統領はまた、就任から三日後に仁川空港公社を訪問し「公共部門非正規職ゼロ時代を52開く」と述べた。これに対して公社社長は間接雇用労働者一万人を今年中に直接雇用に転換すると発表。続いて政府は、全公共部門の間接雇用労働者十一万五千人のうち六万人を直接雇用に転換すると約束した。しかし、「仁川空港の場合、派遣会社の代わりに子会社を作って労働者を『無期契約職』(中規職)として採用するということなので正規職化とは距離があるものだ」(同上)。
 五月二十四日、検察が控訴時効満了三日前にユソン企業の「労組破壊」に介入した容疑で現代自動車法人と役員四人を起訴した。下請企業の労組を相手とする元請企業の不当労働行為に刑事責任を問うた最初の事例だ。
 六月十四日、政府は成果年俸制を廃棄した。ただし、大統領は選挙中に「成果年俸制に反対するが、単純に年功序列通りに賃金が上がる構造も正しくない」と述べて、業務の性格・難易度・責任性などにより賃金水準を決定する職務給制の導入が必要とも強調している。二十二日、今年下半期より公共部門の採用で履歴書に志願者の学歴、出身地、身体条件などを記載しないよう指示。七月三日には、労災発生時に元請企業と発注者に責任を問うと述べている。

 ▼二章―二節 「北の核・ミサイル」問題

 文在寅政権は朝鮮民主主義人民共和国に対する政策として、核・ミサイルには断固として対処するとする一方で、対話によって南北関係の改善を図り、それを通じて朝鮮半島の緊張を緩和する方針だ。
 大統領選挙公約として「離散家族全員の対面」を挙げ、大統領就任の辞で「条件が整えば平壌にも行く」と述べた。五月十四日には共和国がミサイルを発射したが、人道的支援をはじめとする民間交流を復元する方針を堅持。ちなみに十八日に米国防長官が「共和国に対して政権交代も試みず、侵略もせず、体制を保障する」としている。二十二日、統一省が民間交流については柔軟に検討していくと表明した。
 二十六日、李明博・朴槿恵両政権の時期に転換が事実上棚上げされていた戦時作戦統制権を、文在寅大統領の任期内の二〇二〇年代前半に前倒して米国から韓国へ転換する案を推進すると国防省が報告した。
 六月十五日、「六・一五南北共同宣言十七周年」記念式では、「北が核とミサイルの追加挑発を中断するならば、無条件で対話に乗り出すことができる」と述べた。
 十九・二十日には対北政策を明らかにした。北の核とミサイルの高度化を止める「核凍結」をまず履行し、その次に「核廃棄」へ進むという二段階非核化方針だ。「米国との緊密な協力」のもとに「条件が整えば」南北首脳会談を行う計画だ。南北問題においては韓国が主導的な役割を果たすという「韓国役割論」だ。
 二十四日、世界テコンドー選手権大会開幕式で「平昌(ピョンチャン)冬季オリンピックに北の選手団が参加するならばオリンピックの価値を実現する上で大きく寄与するはず」とし、南北単一チームを構成しようと公式に提案した。
 三十日、米韓首脳会談が米国で行われた。その後の米韓共同マスコミ発表で「われわれ両首脳は『制裁と対話を活用した段階的かつ包括的な接近』を基礎に北の核問題を根源的に解決していこうという点で合意した」と述べた。北の核問題における「韓国の主導権」を米国から認定された(ハンギョレ新聞)。首脳会談に続いて、シンクタンクの米国戦略国際問題研究所での演説で、「私とトランプ大統領は北に対する敵対視政策を推進しない。北を攻撃する意図がなく、北の政権の交代や政権の崩壊を願ってもいない。人為的に朝鮮半島の統一を加速化させることもない」といういわゆる「対北四NO原則」を明らかにした。
 七月四日共和国が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射して米帝に衝撃を与えたが、韓国政府は制裁の強化とともに対話の必要性を強調した。

 ▼二章―三節 THAAD問題

 THAAD配備は密室で協議し決定され、地元住民を無視して強行された。朴槿恵前政権は当初、米国のTHAAD配備要請はないと一貫して否定していたが、二〇一六年一月にTHAAD配備を検討すると表明。同年七月に星州への配備決定を発表した。反対運動が盛り上がると配備予定地を変更。韓国政府は大統領不在の今年四月に警察動員の下で搬入を強行した。
 文在寅大統領就任直後の世論調査によると、THAAD配備について韓国民衆の56・1%が「配備決定を再検討すべき」と回答した。
 五月十七日、THAAD問題で対米特使が米政府に対し、THAAD配備と関連して国会論議が不可避だとの立場を伝達した。韓国国防省はこれまで、THAAD配備は在韓米軍地位協定によりなされたもので、国家間の条約ではないから国会論議を経る必要が無いと主張してきた。しかし、憲法に記された国会同意権が必要な条約項目には「安全保障、主権制約、国家又は国民に重大な財政的負担を生じさせる」場合が含まれており、これに抵触する。
 THAADはレーダー及び六基の発射台で構成されるが、今年四月二十六日に星州(ソンジュ)へ強制搬入されたレーダーと発射台二基以外に、追加ですでに四基の発射台が非公開で国内に搬入されている事実が五月三十日明らかになった。国防省はこの日まで大統領に報告していなかった。権力内抗争の一端だ。
 六月二日、青瓦台国家安保室長が「(季節ごとの環境調査と住民公聴会を含めて最低一年かかる)環境影響評価を徹底して行うためには当初の予想より多くの時間がかかるかもしれないのではないかと思う」と述べた。この点は米韓首脳会談でも争点にはならなかった模様だ。
 文在寅政権は、大統領当選前は見解をはっきりさせない「戦略的あいまいさ」を維持し、発足後はTHAADを撤去する考えはないと繰り返し表明している。しかしこれでは、ロウソク革命の否定と言わざるを得ない。

 ▼二章―四節 日本軍性奴隷制問題

 五月十一日、文在寅大統領は安倍との電話会談でいわゆる「慰安婦問題」関連の日韓合意について「韓国国民の大多数が受容できないのが現実」と述べた。六月二十一日、カン・ギョンファ外務大臣が日本外務相との初通話で日韓合意について「被害者が受け入れることのできないのが現実」と強調した。翌日、大統領は日韓合意について「多くの韓国人が受容できないでいる」とマスコミのインタビューで語り、日本政府の法的責任の認定と公式の謝罪を求めた。

 ▼二章―五節 脱原発

 五月十八日、韓国政府は初の原子力発電所である古里(コリ)一号機の稼働を永久停止した。翌日、古里一号機永久停止記念行事で「原発中心の発電政策を廃棄し、脱原発時代へ進む」と宣言。新規原発建設を全面白紙化し、原発の設計寿命を延長しないと述べた。六月二十八日、政府は新古里五・六号機原発建設工事を暫定中断し、公論調査方式で工事の再開もしくは白紙化を決めると発表した。ちなみにPM2・5対策として老朽化した石炭火力発電所の大半を六月の一月間稼働を中断すると発表した。

 ▼二章―六節 投機対策

 朴槿恵前政権は成長率を高めるために不動産景気浮揚に大きく寄りかかった。その過程で住宅価格が急騰し、一世帯当たりの借金が急増した。六月十九日、政府は不動産対策を発表した。江南(カンナム)地域の再建築を中心に投機の需要が加わって住宅価格が局地的に上がっているので、これらの地域を集中規制するというものだ。その四日後にはキム・ヒョンミ国土交通省大臣が就任式で、多住宅保有者の投機を住宅価格急騰の原因と指摘し、断固対応するとの方針を明らかにした。

 ▼二章―七節 積弊清算

 保守政権九年間に積み重なった弊害を一つ一つ取り除いて清算する「積弊清算」作業も進めている。
 文在寅大統領は就任後三日目に国定歴史教科書の廃止を指示した。また、国家人権委員会の地位強化を指示した(五月二十五日)。人権委員長の大統領特別報告を復活させ、国家機関ないし機関長の評価項目に人権委勧告受容指数の導入を検討するよう命じた。
 六月一日には国家情報委員長が、行政部署・マスコミに出入りする国内情報担当官制度の廃止を指示したと明らかにした。ただし共産主義と防諜の「保安情報」収集は継続する。
 警察も態度を転換し始めた。新政権発足直後から警察は「人権警察」に変わると表明。警察庁長官が、集会・デモ現場で参加者への直射放水を禁止するのは困難との立場を明らかにした(六月五日)が、数日後に民主化運動の過程で斃れたパク・ジョンチョル烈士とイ・ヒョニョル烈士、二〇一五年に直射放水で転倒してその後死亡したペク・ナムギ烈士の名を挙げて「謝罪する」と述べた。しかし、ペク・ナムギ闘争本部は、警察庁長官の謝罪は誠意が見られないので受け入れられないと発表した。
 司法改革も進められている。五月十五日、ソウル中央地裁の裁判官が会議を開いて司法内部の不正について最高裁判所長官の責任を追及。六月十九日には全国の各級裁判所を代表する裁判官百人が全国裁判官代表会議を開き、「司法省ブラックリスト」疑惑を直接調査すると決議した。同月下旬には裁判所内部掲示板に最高裁判所長官の辞任を要求する意見が載った。
 政府は検察の改革の必要性も強調し、権力・企業との癒着構造を根本的に変えようとの動きが加速している。
 マスコミ改革も進められている。日本のNHKよろしく政権のあからさまな宣伝道具になり果てた韓国放送KBS、文化放送MBCといった公共放送の首脳陣の歪曲報道をやめさせ、彼らによる労組弾圧の責任を追及し、人事を一新するべきとの民衆の声が高まっている。公正放送を求めて二〇一二年にストを打った労組に対するすさまじい弾圧と不当労働行為を徹底的に行っていたMBCに対して、雇用労働省が六月三十日に特別勤労監督を開始した。
 教育改革としては、大学入試競争を激化させたとされる自律形私立高校と外国語高校を廃止して一般高に転換させる政府・地方自治体の方針をめぐって論議が活発化している。
 四大河川事業は、李明博政権が利権のためにごり押しして川の水をひどく汚染させた事業だが、政府は五月二十二日に政策監査を指示した。

 ▼二章―八節 文在寅政権への評価

 以上、文在寅政権が成立以降これまでの二か月間に行った諸政策を大まかに見た。非正規職の撤廃、人道支援など南北民間交流の推進と南北首脳会談開催への意欲、対話による「北の核」問題解決の強調、日本軍性奴隷制問題関連日韓合意の受け入れ拒否、脱原発推進の明確化、国定歴史教科書の廃止、国家人権委員会の地位強化、国家情報院・警察・検察・裁判所・教育・マスコミの改革等々、李明博と朴槿恵の保守右派政権があまりにもひどくでたらめだったこともあり、それと比べると大きな前進だ。爪の垢を安倍などは大量に飲む必要があるが、しかし、こうした政策は、金大中・廬武鉉両政権が培った「国の形」がこの九年間に跡形もないほど歪められたので、それを復元する実践なのだ。
 もちろん、以前の民主党政権時に新自由主義政策によって貧富の差が拡大し、非正規職労働者が増大したことをとらえ返しているがゆえに、文在寅が自らを「雇用大統領」と呼んで非正規職問題を第一課題に据えているのも事実だ。
 だが、THAAD問題への対応は、軍事同盟を柱とする対米関係には手を付けないという方針の反映であり、廬武鉉政権時のイラク派兵と平澤(ピョンテク)米軍基地拡張推進に当たるものだ。つまり、米韓関係は不可侵の聖域で、韓国民衆の利益に優先するという態度に他ならない。これではロウソク革命の継続とはとても言えないだろう。
 また、以前の民主党政権が試みて一敗地に塗れた国家保安法廃止について現民主党政権は黙っている。取り組まないという態度表明だ。国家保安法に象徴される反共産主義という政策的思想的支配の堅持、および、資本主義社会の構造的矛盾の不問は、基本的人権及び真の民主主義の確立と本質的に両立しないが、文在寅大統領個人の資質ではなく、ブルジョア左派である民主党の路線的限界が現政権を制約し続け、前政権に比してはるかに優れた現在の諸政策も、米帝との関係および資本主義の構造的な壁に早晩衝突せざるを得ない。
 ではあるが、ロウソク革命の炎の中で文在寅政権は生まれた。これが廬武鉉政権との決定的な違いだ。千六百万の火の波に示された民意をくみ取り実現することが自らの使命と同政権は自覚している。
 他方で、社会の構造変革的要素をも内包した民意の前には米帝トランプ、日帝安倍、韓国内右派が一体となって立ちはだかっている。帝国主義者とその追随勢力は民衆の意志を粉砕するために全体重をすでにかけているのだ。
 故にわれわれは、日帝足下の労働者階級人民として、第一に、未完の革命を完遂しようとする韓国労働者民衆のたたかいを断固として支持する。第二に、韓国新政権の諸政策に対する日帝安倍政権の圧力と悪辣な蠢きを粉々に打ち砕くのでなければならない。第三に、韓国労働者民衆の実践に学んでロウソク革命のような巨万の民衆決起を日本でも必ず実現して、日帝国家権力の朝鮮侵略反革命戦争策動を粉砕し、日帝国家権力を打倒するのだ。

 ●三章 日韓労働者民衆連帯運動の課題

 ロウソク革命とほぼ同時期に、日系企業で働く韓国労働者の日本遠征闘争が行われ、日韓労働者連帯運動における新たな地平が切り拓かれた。
 韓国金属労組韓国サンケン分会が七か月にわたる争議の末、整理解雇を撤回させて原職復帰を勝ち取った。日本遠征団が本社前での抗議行動を行ったが、日本側は支える会及び全労協系労組が支援した。
 サンケン電気株式会社は電気器具メーカーだ。資本金が約二百九億円で、従業員数が一万人を超える東証一部上場企業だ。同社が100%出資して馬山(マサン)自由貿易地域に作った子会社の韓国サンケン電気が二〇一六年九月三十日、経営難を理由として、労働者三十四人を整理解雇した。しかしこれは実施に必要な四要件も満たさず、労働協約にも違反する不当で違法な暴挙だった。
 被解雇者は直ちに争議を開始。工場前にテントを張って、そこに寝泊まりしながら抗議と宣伝を展開した。解雇撤回要求一万人署名運動、釜山での日本領事館前、ソウルでの日本大使館前、営業会社であるソウルサンケンコリア前、国会前など数か所における抗議行動を展開した。韓国サンケンは日本の本社の承諾なしには何一つ決められない関係にある。本社への働きかけこそがカギと判断して十月には遠征団が来日し、本社前抗議行動と駅前宣伝活動を平日毎日朝七時から十一時まで続けた。
 十二月二十七日、韓国の地方労働委員会が「解雇は不当」との判決を出した。「被解雇者全員を現職復帰させろ」「未払い賃金全額を払え」という内容だ。しかし、会社はこれに従わず、今年二月上旬に中央労働委員会へ再審査の申し立てを行った。四月二十七日、中央労働委員会が地労委判定と同じ不当解雇判定を出した。会社は希望退職を再度募り、十八人がこれに応じた。しかし、残りの十六人は拒否し、原職復帰を求め続けた。
 五月十日、会社は、「五月十二日までに現場復帰しろ」との命令を携帯メールで被解雇者各自に伝え、翌日には郵送で通知もした。考える暇を与えない一種のショックドクトリンだ。労働協約には、復帰命令後一週間以内に復帰しなければ自動的に解雇になるという規定がある。休業を想定したものだが、労組はこの条項が発動されることも鑑み、現場復帰を決めた。
 原職復帰の日に労働者を待っていたのは、機械と作業台と配線がすべて撤去されて椅子だけが置かれたがらんとした空間だった。国鉄清算事業団と同じ「追い出し部屋」だ。しかし当該はひるまず出勤を続けた。
 六月二日、労使が電撃合意した。その要旨は、整理解雇の根拠となった生産部門廃止方針を会社は撤回する、被解雇者十六人は現職に復帰する、今後組合員の解雇問題については労組の合意を必要とする――というものだ。労組の主張をほぼ100%反映させた内容だ。完全な勝利といってもよいだろう。
 日本側は十月から韓国側と会議を重ね、社前闘争に参加した。十一月支える会結成集会、今年三月会社包囲デモを行った。当該はけんり総行動や単位労組の争議現場及び支援集会に積極的に参加し、日本の労働者との連帯関係を作り上げていった。六月十六日には闘争勝利報告集会が行われた。
 当該は、日本の労働者の支援がなければ勝利できなかったと総括している。また、日本側も当該と文字通り一つになって支え切った。「当該と支援」という関係を越えて、同じトンジ(同志)としての相互認識を共有できたのは、二〇〇〇年代以降に日本遠征闘争を行ったシチズン、山本、シチズン精密の場合にはなかった地平だ。国境を越えた連帯、労働者は一つだという階級意識で日韓労働者が団結したのだ。
 この韓国サンケン労組の日本遠征闘争は、日韓労働者民衆連帯の一つの形を作り上げたと評価できる。歴史的な成果だ。この質をもってこれからも、労働運動はもちろん、THAAD配備反対など反戦反基地闘争、12・28「日韓合意」反対をはじめとする戦争責任・戦後責任の清算などあらゆる分野において韓国労働者民衆と結び付き、問題の解決を目指して共に歩んで行こう。そして、日本のロウソク革命即ち日帝を打倒する労働者人民の巨万の決起を絶対に実現しよう。
 日米帝の朝鮮侵略反革命戦争策動粉砕!
 共和国への軍事的圧力反対!
 日米韓軍事同盟粉砕!
 日韓軍事情報包括保護協定を破棄しろ!
 星州へのTHAAD配備反対!
 日本軍性奴隷制に関する12・28「日韓合意」破棄!
 在韓日系企業による韓国労働者への不当労働行為反対!
 日本帝国主義打倒!
 共にたたかおう。

 

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