共産主義者同盟(統一委員会)






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   帝国主義の脅迫と介入に抵抗する
   ベネズエラ人民の闘いに連帯しよう


     
     


 中南米においては、新自由主義の抑圧に対して立ち上がった民衆に支えられて成立した左派的・進歩的政権が経済的・政治的危機においこまれ、崩壊させられる事態が続いた。いうまでもなく、これらは個々の国における偶発的なものではない。中南米諸国における民衆の変革の嵐が相互につながり、大陸規模での革命運動へと拡大・成長していくことへの帝国主義者どもの回答であった。そしてそれが地域全体にわたる巨大な利権を侵食することへの反撃であった。とりわけ米帝は、キューバと並んで地域の人民運動を経済的に支えてきたベネズエラのチャベスの後継政権を打倒し、人民運動を壊滅させ、再び新植民地主義支配下におくことに全力をあげている。それと一体となってベネズエラ国内の旧支配層もチャベス政権によるボリバリアン革命(革命家ボリーバルの理想を受け継ぐ革命)のなかで失われた獲得物を奪回しようと必死にあがいている。現在のベネズエラをとりまく経済的危機・政治的危機とは以上のような基本的構造のもとで生み出されたものに他ならない。
 今、ベネズエラにおいては、大統領チャベスの死後、後継者のマドゥロ政権になって、世界的な原油安が襲った。ベネズエラでは輸出の九割以上を原油がしめるので外貨収入は減少し財政も悪化した。深刻な食糧・生活必需品や医薬品の不足、激しいインフレなど大衆の生活苦と不満が増大していった。その不満に乗じて政権反対派の活動も活発になり、暴力的に政治不安を煽り社会的に混乱と暴力を拡大させて今日にいたっている。
 八月、米大統領トランプは金融的封鎖のみならず「軍事的選択肢もありうる」と述べてベネズエラへの公然たる軍事的介入を示唆した。歴史的に、米国はみずからの意に沿わない中南米の政権に対する軍事介入やクーデター工作を常套手段としてきた。この発言にたいして他の帝国主義国は黙認し、国際マスメディアも意図的に沈黙を保っている。
 いまベネズエラを包囲している危機の直接の契機は石油価格の下落によるものであるが、基本的には帝国主義による支配と国際的・国内的攻防が現在の危機を大きくもたらしていることを見失ってはならない。そのためにこの危機の歴史と背景を見ておこう。
 ベネズラでは一九九九年チャベス政権以前には長らく伝統的な二大政党が支配していたが、いずれも腐敗し、新自由主義的な緊縮政策を行って国民大多数の貧困層を切り捨てていた。このようななかで、チャベスが貧困層支援を掲げて大衆の圧倒的な支持を得て大統領に当選した。かれは国営石油会社を外資の影響力から切断して完全に国有化した。そして、世界一の埋蔵量をもつ石油がもたらす利益をもとに一方では貧困救済のための社会政策・医療や教育の無償化に力をいれた。他方では帝国主義の支配にあえぐ中南米の諸国・人民の経済的自立と政治的統合のために、キューバとともに積極的な外交を展開した。これらの改革政策を「二十一世紀型社会主義建設」をめざす「ボリバリアン革命」と呼んだ。これは「二十世紀型」と比して複数政党制と定期的な自由選挙を含むという。このような政策の結果、国内では人民の多数をしめた貧困層の生活は改善し、かれらはチャベス政権の強固な支持基盤となった。国際面ではキューバはじめ中南米の左翼政権・進歩的政権、さらに保守的な政権をも含む三十三ケ国が参加する「ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)」を創設し、米国の地域における覇権に対抗する「広義の南米」を展望した。また、チャベス政権は中南米における代表的な反米左派政権としてキューバとともに活動した。チャベス政権の行なったこれらの進歩的政策、とりわけ反帝国主義・国際主義の原則は高く評価されねばならない。
 これに対し、二〇〇二年、米帝国主義はベネズエラの旧来の支配層と結託してチャベス追放の軍事クーデターを企てたが、チャベスは、人民の支援のもとにこれを打ち破った。
 他方、チャベス派の長期政権はさまざまな問題を生みだした。官僚主義の弊害があり、伝統的な支配階級から石油利権を奪った新興成金層があらたな支配層として成長し、汚職・腐敗が横行した。これにたいする支持層大衆からの批判も増大し、チャベス派政権支配層と民衆との距離はだんだん拡大し、以降、生活苦が進行するにつれて大衆の離反がはじまった。チャベスも「脱石油経済」を重視し産業を多角化して安定した経済建設をめざしたが、二〇一三年、それをなしえぬまま死去した。
 こうした状況のなかで反政権派は米帝国主義と共謀し、政権打倒をねらって、伝統的保守政党や暴力的極右政党などを含んで「民主連合会議」(MUD)を結成した。MUDは二〇一三年の大統領選挙に統一候補をたてて争い、チャベス派後継者のマドゥロに惜敗した後、極右政党が主導した死者四十三人にものぼる大規模な暴動を引き起こした。
 二〇一五年、国際原油価格が暴落し、ベネズエラの国家財政に大打撃を与えた。輸入にも支障がではじめ、インフレ、物不足は進行し、国内総生産(GDP)は大きく下落した。米政府は好機とばかり金融封鎖をしいた。マドゥロ政権は「仕掛けられた経済戦争」と呼ぶ。しかし、チャベス派支持貧困層も生活苦の増大にあえぎ政権支持が激減した。
 一五年一二月、国会議員選挙がおこなわれ、MUDが三分の二の議席を獲得して大勝した。MUDは国会でもってマドゥロ政権の行政を妨害・束縛し、一六年には大統領罷免の国民投票請願運動を始めた。このようななかで極右政党が国会とMUDの執行部を握り、一七年四月から七月にかけて首都を含む全国的な反政府暴動をひきおこした。かれらの右翼別働隊や外国民兵も動員して、殺戮、破壊、略奪をくり返し、四ヶ月で百二十五人の死者が出た。マスコミをも動員して「マドゥロは非民主独裁政権」であり「内戦状態」であり「施政不能状態のベネズエラへの介入もやむなし」などとする国際世論誘導の工作が行なわれ、クーデターの下準備が作り上げられた。
 これに対してマドゥロ政権は七月三十日、超法規的な「憲法制定議会」選挙を実施して対抗した。MUDは「違憲」としてボイコットするなかで41・5%の投票率で全員チャベス派の議員が選出され、この「制憲議会」が国会から立法権を奪った。
 こうして今、ベネズエラにおいては、公然と介入する米国、米国と結託し暴力的に政権打倒を狙う極右にひきいられた反政権派、そして軍隊とともにこの危機を防ぎ切り抜けようとするチャベス派マドゥロ政権との厳しい攻防が続いている。
 全世界の労働者人民はこの攻防において、ベネズエラについて帝国主義とマスコミがたれ流すあらゆる欺瞞的報道・悪罵を批判し、真実を大衆的に明らかにせねばならない。そして、米帝をはじめとする帝国主義の介入・侵略を許さず、打ち砕くことが第一義的に必要である。そのことによって、困難な生活にも耐え敵から革命を守りぬき発展させようとするベネズエラ先進的人民のたたかいに連帯せねばならない。かれらが自らの解放を他の多くの諸国の人民の解放と一体のものとしてつきだした国際主義の地平は、今こそ全世界の人民によって継承さるべきものである。かれらは二〇〇二年のチャベス打倒クーデターに立ち向かい勝利し、いま右翼ファシストの暴力と対峙している。そして、マドゥロ政権のなかにはびこった病根、腐敗・官僚主義・新たな特権階層をも鋭く批判し、困難な状況下でうまずたゆまず人民自身を組織しつづけているのである。
 第二に、そのような連帯を前提としつつ、ベネズエラが示しているところの現代における革命の課題と実践についてあらゆる角度から総括され深化され教訓化される必要がある。
 たとえば、ひとつには経済建設の問題があり、帝国主義支配の網の目を食い破っていかに経済の自立をはかるのか、という課題である。チャベス政権が自己の権力を経済的に政治的にラテンアメリカ全体の革命と変革のなかに展望したことを発展させる必要がある。ふたつには、政権と人民との結合の問題であり、革命政権はしのびこむ腐敗や官僚主義といかにたたかうのか、という古くて新しい問題である。このために、人民からの批判・点検や人民の政治的自由や創意工夫が最大限保障され、人民が実際に経済、政治、社会を管理していく進路を明らかにする必要がある。
 世界の労働者人民がこうしてベネズエラ人民連帯のたたかいのなかで革命の課題を論議し深めていかなければならない。


 

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