共産主義者同盟(統一委員会)






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   ドゥテルテ政権の強権的支配と闘う
   フィリピン人民へのさらなる連帯を

 

 強権的支配を強めるドゥテルテ政権に対して、フィリピン民衆は広範な統一戦線と共同行動を拡大しつつ、そのたたかいを前進させている。フィリピン民衆のたたかいへの連帯をいっそう強化していこう。ここではこのかんのフィリピン情勢について簡潔にまとめている。(国際部)

 ●1章 拡大するフィリピン民衆の反政府闘争

 さる七月二三日、就任以来三度目となるドゥテルテ大統領の施政方針演説に対して、四万人の人々が大統領府のあるマニラのマラカニアン宮殿近くに集まり、抗議の声をあげた。同様の行動はルソン島北部のバギオから南部のミンダナオ島・ダバオまで、全国の主要都市で一斉に取り組まれた。
 一昨年の五月に発足したドゥテルテ政権は、当初は米国の介入への批判的な姿勢を示し、民衆の生活状況の改善を約束することによって、民衆からの現状変革への大きな期待を集めた。しかし、そうした政権発足当初の姿勢はやがて消え失せ、今日ではその強権的支配だけが露骨に際立つ状況になっている。
 今年の大統領施政方針演説に対する抗議行動の特徴は、新民族主義者同盟(BAYAN)などで構成する統一戦線「暴政反対運動」のみならず、傾向を異にする様々なグループ、約三三〇団体の統一行動として取り組まれたことである。今年五月のメーデーも、その一部のプログラムが五月一日労働運動センター(KMU)とマルコス独裁の時代に政権によって育成された歴史をもつフィリピン労働組合会議(TUCP)などの労働団体による統一行動として実施された。ドゥテルテ政権による民衆抑圧の深まりが、それに対してたたかう民衆の広範な統一戦線と共同行動を促進させているのである。
 フィリピン民衆は、古くは一九八六年のマルコス軍事独裁政権の打倒、その後も二〇〇〇年のエストラーダ政権の打倒など、腐敗した政権を民衆自身のたたかいによって打倒した歴史的経験をもっている。強権的支配をますます強めるドゥテルテ政権に対しても、フィリピン民衆は必ずやそのたたかいをさらに大きく前進させていくであろう。

 ●2章 民族民主主義運動への弾圧の強化拡大

 ドゥテルテ政権はこのかん、その強権的支配、とりわけ民族民主主義運動に対する弾圧姿勢を強めてきた。政権発足当初の公約であったフィリピン民族民主戦線(NDFP)との和平交渉は、二〇一七年四月を最後に中断されたままになっており、その後何度かなされた再開合意も直前になって政権側によって反故にされるという状況が続いている。
 こうした状況の中で、ドゥテルテ政権は昨年一二月にフィリピン共産党(CPP)と新人民軍(NPA)を「テロリスト組織」に指定した。これと並行して、昨年五月に布告されたミンダナオでの戒厳令を今年末まで再延長することを決定した(昨年一二月)。ドゥテルテは「NPAが暴力的な手段で政権転覆を狙っている」ことをその理由の一つにあげている。これらはフィリピン国軍によるCPP―NPA―NDFPに対する「全面戦争」の攻撃をさらに加速させるものである。政権発足当初の和平交渉の開始と連動して保釈されたNDFPの顧問メンバーが今年一月末に再逮捕されたことも、ドゥテルテ政権の民族民主主義勢力との対決姿勢の強化を示すものである。
 自らの権力基盤を強めるために、ドゥテルテはさる七月下旬、元大統領で後にその任期中の汚職や不正により逮捕されたグロリア・マカパガル・アロヨを下院議長として復権させた。アロヨもまた、その大統領在任期間中における一〇〇〇人を超える超法規的殺害などの人権侵害によって悪名高い人物である。アロヨはまた、マルコス一族とも深い結びつきを持っている。
 そのアロヨの下院議長就任と前後して、かつてアロヨ政権時代に四人の民族民主主義運動出身の下院議員(当時)らに対してなされた完全にでっちあげの殺人容疑が蒸し返され、改めて逮捕令状が発行されるという事件が起こった。そこには現職の国家貧困対策委員長のリサ・マサ氏(後に辞任)やドゥテルテ政権発足当初の農地改革大臣だったラファエル・マリアーノ氏も含まれていた。この件は後に当然にも「証拠不十分」で裁判所が令状発行を取り消したが、ドゥテルテとアロヨ(およびマルコス一族)との結びつきの強化が、民族民主主義勢力への弾圧をさらに強めていくものであることを示している。
 これらに加えて、大衆運動活動家、とりわけミンダナオのルマドなど先住民族の権利のためにたたかう活動家への超法規的殺害などの弾圧が強まっている。また、長年フィリピンの農村に滞在して貧農への支援活動を行ってきた高齢のオーストラリア人修道女の強制送還問題や海外の活動家の入国拒否の拡大など、様々な形で民衆運動への弾圧が広がっている。

 ●3章 改憲・全土戒厳令化を許さない闘い

 先に紹介した七月の大統領施政方針演説抗議行動の現場では、「憲法改悪反対!」や「戒厳令はいらない!」などのプラカードが多く掲げられていた。
 改憲策動は歴代の政権の下で繰り返し浮上し、その度に民衆の抵抗によって挫折してきた。フィリピンにおける改憲問題の核心のひとつは、外国資本のフィリピンへの参入を拡大するために、現行憲法では49%以下に制限されているフィリピンの土地、資源、工場、公共サービス等々の外国資本の所有比率を無制限に開放するという点にある。その背景には帝国主義諸国からの圧力があるが、ドゥテルテ政権もまた、そのような憲法改悪をおし進めようとしている。ドゥテルテ政権の改憲策動が歴代政権と異なる部分は、それにより彼の持論であるフィリピンの「連邦制への移行」を成し遂げようとするところにある。しかし、民族民主主義運動はそれを大統領権限の強化によって、自らの支配をさらに打ち固めようとするものだとして批判している。
 民族民主主義運動はまた、ミンダナオでの戒厳令の即時解除を要求し、ドゥテルテ政権がフィリピン全土の戒厳令化をも狙っているとして批判している。
 昨年五月にミンダナオ全土に布告された戒厳令は、同島マラウィ市でのISとつながりがあるとされるイスラム武装勢力との戦闘を口実にしたものであった。政府は昨年一〇月に戦闘終結宣言しており、戒厳令を継続する理由はない。しかし、ドゥテルテ政権はすでに議会の承認の下に今年末までの戒厳令の延長を決定した。民族民主主義運動は、それを自らに向けられたものとして捉え、あわせてありうる全土戒厳令化に反対して広範なたたかいを展開している。
 フィリピン民族民主主義運動は、都市部においては広範な人々の決起を促しつつ戦闘的な大衆運動を進め、農村部では武装闘争と解放区建設を堅持し、ドゥテルテ政権の強権的支配と対峙しつつ、帝国主義の支配からの解放と反動的政権の打倒に向けた全国的陣形の建設を着実に進めている。たたかうフィリピン民衆への連帯をさらにいっそう強化していこう。


 

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