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 ●1章 「決裂」した第二回朝米会談

 今年二月二八日にベトナム・ハノイで第二回朝米首脳会談が開かれたが、物別れに終わった。事前の実務協議が様々な経路で数多く行われ、米側は楽観的シグナルを発していた。首脳単独会談に続く拡大会談では合意書が提出され、署名をするだけになっていた。
 報道によると合意の中味は、①終戦宣言(と平和協定締結に向けた後続措置。南北米中の委員会開設)、②連絡事務所設置――事実上の人質(連絡員とその家族)の交換との評価もある――、③寧辺(ニョンビョン)核施設の閉鎖と朝米合同の検証、及び、米国の対北制裁緩和の三点だった。
 ところが、拡大会談には名簿未記載の強硬派ボルトンが急きょ出席。「スナップバック」すなわち制裁緩和はするものの朝鮮民主主義人民共和国(以下、共和国)が非核化の約束を履行しなければ制裁を復元する案をトランプは提示しつつ「合意は可能かもしれない」と言及しながらも、米側はリビア方式の「ビッグディール」(一括妥結)案を北に伝達した。
 つまり、寧辺だけでなくすべての核施設のリスト提出・閉鎖・検証と核兵器関連物質の米国への搬出という即時の包括的な非核化を要求したのだ。
 北側はこれを拒否し、合意文書への署名は流れた。共和国は「決裂」直後の記者会見で、「寧辺核施設の永久的廃棄」――昨年九月の平壌共同宣言の一項目――が唯一可能とした。
 米国の「一括」と共和国の「段階的」の折り合いがつかなかったわけだ。トランプの方針転換は、米国内でこの時進行中だった、大統領弾劾に直結するトランプの元弁護士コーエンの公聴会とのからみで朝米が合意した場合に政治的利益にならないという判断に基づくものだったと言われている。米国では共和党と民主党がともにこれを肯定的に評価し、安倍も即座に「決裂」支持を表明。日米そろって朝鮮半島の平和と統一に敵対する帝国主義者ぶりをいかんなく発揮した。
 朝米会談の「決裂」が朝鮮戦争に直結するという主張が一部左翼から上がっているが、これは誤りだ。米帝トランプは就任以来、オバマ前民主党政権の全政策を否定するように政策を打ち出して実施してきた。
 オバマはその発言の与える印象とは逆に、中東をはじめ全世界で極めて侵略的で好戦的な政策を打ち続けた。朝鮮半島に関しても然りだ。共和国を完全に無視して軍事的経済的圧力による体制崩壊を目指す「戦略的忍耐」を八年間続け、米韓合同軍事演習では金正恩暗殺作戦の予行にまで踏み込み、任期の末期には朝鮮戦争突入も決断していた。
 ところがトランプは裏腹に、二○一七年段階での北の核・ミサイルに対する制裁の畳みかけと強硬発言の裏で、断絶していた共和国とのチャンネルを再開して情報機関主導で接触し、戦争突入直前にまで至った同年末の二カ月後には韓国平昌(ピョンチャン)五輪の場すなわち表舞台でも接触し協議を開始した。それが南・北・米間の外交機関による協議の積み重ねにより、三月の米韓合同軍事演習の中止を経て、四月の南北首脳会談、六月の朝米首脳会談に結びついたのだ。
 九月の南北首脳会談で発表された平壌共同宣言と軍事分野合意書は南北間の事実上の停戦宣言といえるもので、それに基づく軍事緊張緩和措置が相次いで実施されたが、これもまた米帝の承認を得ていなければ不可能だ。
 今回の「決裂」直後にトランプは、例年の米韓合同軍事演習の目的から北への侵略を外して南の防衛に絞り、金正恩国務委員長への信頼を語り、新たな制裁の中止を演じて見せた。戦争突入の選択肢を堅持しながらも、協議による問題解決の意思を共和国へ伝えているのだ。
 トランプの狙いは共和国のベトナム化だ。完全な非核化の対価として経済的繁栄を何度も挙げてきているように、経済的に取り込んでいくことも目的の一つだが、それ以上に、政治的軍事的に関係を強めて中国との結びつきを弱めさせ、最終的には対中国包囲網の一つに据えようとしているのだ。
 文在寅(ムン・ジェイン)政権は、共和国との経済協力関係強化を自らの延命策の一環に位置付けている韓国資本家階級内勢力の利害を代表するブルジョア政治委員会だ。
 文在寅大統領は百周年を迎えた三一節の演説でハノイ会談に触れ、①連絡事務所が論議されたことを高く評価し、②新朝鮮半島体制の形成を宣言し、③朝米間の仲裁の役割を今後も果たすとし、④金剛山(クムガンサン)観光の再開については韓国が米国に直接談判する、と述べた。
 三月二九日の韓米外相会談では開城(ケソン)工業団地と金剛山観光問題が包括的に協議され、また、米側は南北間合意の持続的履行に理解を示した。四月一一日の韓米首脳会談がどうなるかは現時点では不明だが、韓国側は「包括的合意、段階的履行」という中間案をもって米国の説得にあたると報道されている。
 第三回朝米首脳会談へ向かうのか、それとも真の決裂そして朝鮮戦争危機の再燃に至るのかの分岐点だ。南北・在外の朝鮮人民の闘いによって切り拓かれた地平を守り抜き、発展させるために、私たちも闘っていかなければならない。

 ●2章 韓国労働運動はどうなっているか

 文在寅民主党政権は、南北統一と歴史認識の分野では大きな前進を成し遂げてきた。今年四月三日には国軍と警察が済州4・3事態について初めて謝罪した。光州民主化抗争における国軍による虐殺の真相究明も進んでいる。しかし、それ以外の領域ではブルジョア左派としての地金が露わになってきている。労働政策の実際と労働運動の現状をみてみよう。
 第一に、長期労働争議現場は大部分が解決した。当該と支援が闘争を継続してきたことに加え、政府が資本側に解決するよう圧力をかけ続けてきたことも要因だ。
 双竜(サンヨン)自動車は、ハン・サンギュン民主労総元委員長を含めて一一三名全員が今年六月までに現職復帰することが決まっている。しかし、当時解雇されたのは約二六〇〇名だ。法律的には、会社が正常化した場合に被解雇者は優先的に再雇用されなければならないが、うち一九〇〇名が闘争しなかったという理由で復職できないという問題が残っている。その中で二〇〇名が再雇用を要求する声明を出したが、民主労総、金属労組、双竜分会は支援していない。
 煙突上で長期間籠城したファインテックは、最低賃金に一〇〇〇ウォン(約一〇〇円)を上乗せした賃金で三年間の雇用を保障するという内容で会社と合意した。それゆえ、合意が失効する三年後にまた闘うことになるかもしれない。
 世界三大ギターメーカーの一つであるコルトコルテックの労働争議は、裁判闘争で最高裁が、「今は儲かっていても将来破産するかもしれないので解雇事由に相当する」という滅茶苦茶な判決で解雇を正当化した。韓国の工場は中国とインドネシアに移転した。三月の時点で労使交渉が続いている。
 台湾資本のハイデスの労働争議は合意して解決した。だが、解決できずにつぶれた争議も多い。
 第二に、最低賃金だ。政府と資本は、現在の全国一律額を地域別の格差の容認――つまり日本型――に変えようと図っている。二〇一九年(一月一日~一二月三一日)の最低賃金は前年比で15%上がった。これについて資本の側は、最賃が上がり過ぎて中小零細・自営業者の経営が悪化し、その結果雇用が減った、とキャンペーンを張った。そのうえで、来年の最低賃金額を凍結しようと狙っている。
 最低賃金をめぐっては、二〇一三年に結成したアルバイト労働組合が時給一万ウォン(約一〇〇〇円)キャンペーンを行ったが、他の左派組織はその実現可能性を疑い、反応が極めて冷ややかだった。ところが、二〇一五年に左派のハン・サンギュン指導部が時給一万ウォンを民主労総の方針として確立した。二〇一七年にはこのキャンペーンが社会全体に広がり、保守派も含めて主要な大統領候補全員が公約に掲げた。しかして二〇一八年六月には二〇一九年の最低賃金が前年比で15%上がった。だが今、政府は区間設定の導入を図っている。例えば「5%から10%の間」のように引き上げ区間を設定し、引き上げ率を限定しようというものだ。
 「時給一万ウォン」に変わる新たなキャンペーンも始まった。「一対一〇最低賃金」がそれだ。同じ会社で働いている人間がもらう賃金の格差を一対一〇にしようというものだ。
 第三に、労働時間短縮法案と弾力労働制だ。
 韓国の勤労法は週の労働時間を四〇時間と定めているが、週一二時間の時間外労働も認めているので、四〇時間+一二時間=五二時間が法定労働時間だ。しかし、労働省は土日の労働をこれに含めなかったので、実際は五二時間+土曜八時間+日曜八時間=六八時間の労働がこれまで許されていた。労働時間短縮法案は、この六八時間を五二時間に短縮するというものだった。但し、特殊雇用労働者、運輸及び病院の労働者は対象外だ。
 だが、そもそも週休二日制の導入は、週の労働時間を八時間×六日=四八時間から八時間×五日=四〇時間へ減らすという趣旨だったはずだ。従って今回の五二時間は、週休一日制だった時の四八時間をさらに四時間延長するものだと言える。短縮ではなく延長だ。短縮法案という名前は騙しだ。
 弾力労働制は、繁忙期は週六八時間働かせることができ、かつ、これを年六カ月まで認めるという内容だ。これだと、例えば、七月一日から一二月三一日まで実施した後、翌年の一月一日から六月三〇日まで、丸一年続けて実施できる。さらに、弾力労働期間中は残業手当がつかない。つまり、賃金削減と長時間労働が狙いなのだ。政府と与野党はすでに合意しているので通過・成立する可能性が高いが、民主労総は四月四日に国会突入を図って警官隊と激突し、委員長ほか数十名が不当逮捕された。
 第四に、民主労総だ。組合員数が昨年一二月段階で九五万人を超えた。非正規職労働者が大量に加入している。これは「ろうそく革命」の成果とみるべきだ。文在寅政権は前政権とは違って少なくとも労組を弾圧はしない。ただ、闘争スローガンからは「労働〔者〕解放」「社会変革」「新自由主義反対」という言葉が消えた。
 キム・ヨンファン現指導部は「対話と闘争」「社会的対話」を掲げて選挙で60%を得票し当選した。選挙公約に経済社会労働委員会(前身は労使政委員会)への参加を掲げていた。指導部発足から一年目の代議員大会で同委参加を発議した。しかし、否決された。今年の代議員大会でも社会的対話を掲げて再度発議したが、否決された。

 ●三章 日韓労働者民衆連帯運動の推進を

 高城誠一「ろうそく革命・文在寅政権の評価と日韓連帯の課題」(『戦旗』第一五三四号二〇一八年一〇月五日)は、日韓の連帯を新たに発展させるための焦点として三点を挙げている。
 第一に「アジア民衆の国際的な共同の闘いを推進していくこと」、第二に「労働者階級を中心とした「基層民衆」の要求とその解放を掲げ、現場の大衆的な闘いによってこれを実現しようとする部分との連帯を意識的に追求していくこと」、第三に「韓国における左派勢力の現状についての把握と分析を積みあげ、左派勢力を再建していこうとする努力に連帯していくこと」だ。
 日韓労働者民衆連帯をさらに強めるために、民族排外主義、歴史の歪曲と対決し、進歩左派勢力の連帯を強めて、ともに闘おう。



 ■平壌共同宣言

 昨年九月一九日の南北首脳会談後に発表された平壌共同宣言は、同年四月の板門店(パンムンジョム)宣言の諸原則を再確認したうえで、①軍事的敵対関係を終息させる、②開城工業団地と金剛山観光事業の正常化など民族経済発展のための対策を講じる、③離散家族問題を根本的に解決するための協力の強化、④文化・スポーツでの交流促進、⑤東倉里(トンチャンリ)エンジン試験場とミサイル発射台を永久的に廃棄し、米国が相応の措置を取れば寧辺核施設の永久的廃棄などの措置を取る、⑥金正恩国務委員長が近い期間内にソウルを訪問する、という内容だった。
 また、同日発表された「歴史的な板門店宣言履行のための軍事分野合意書」は、南北間の一切の敵対行為を全面的に中止し、軍事的衝突を惹起しうる全問題を平和的方法で協議・解決し「いかなる場合にも武力を使用しない」としたうえで、具体的措置を多数記している。
 平壌共同宣言と軍事合意書は、板門店宣言を基にして、それをさらに豊富化・具体化するとした内容だ。南北の間では戦争はもう終わったことを宣言する、朝鮮戦争の実質的な終戦宣言だ。



 

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