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   韓国労働運動の現状と課題
              
国際部
  


 ●1章 労災死亡率が世界最悪

 政府の統計によると労災死亡者は年間二四〇〇人で労災死亡率は世界で最悪だ。非公式の数字を含めると三千人を超えるといわれている。四月二九日には利川(イチョン)の物流倉庫の火事で三八人が死亡。ほとんどが下請け企業の非正規職だった。二年前に起きた火力発電所での非正規労働者の労災死をきっかけに産業安全保険法が改正されて今年一月より施行されたが、現場は何も変わっていない。

 ●2章 急増する配達労働者

 コロナ事態の中で韓国でも配達労働者が急増しているが、個人事業主としての契約を結んでいるので労働法の適用対象外だ。そうした中でも労働者としての組織化が進められ、昨年五月一日にはライダーユニオンが結成された。今年のメーデーでもバイクデモを行った。

 ●3章 双竜自動車労組とサムスン被解雇者の闘い

 解雇撤回闘争を一一年間続けてきた双竜自動車労組が被解雇者全員の復職を勝ち取った。解雇撤回を最後まで求めた一六五人のうち四六人がまだ残っていたが、うち三四人が五月四日に現職復帰し、残る一二人は来年工場に戻ることになった。しかし、工場占拠闘争への暴力的弾圧にかかった費用の支払いを労組に求めて政府が起こした訴訟は今も取り下げられず、裁判が続いている。これが文在寅(ムン・ジェイン)政権の意思だ。幻想は死だ。
 サムスン航空被解雇者のキム・ヨンヒさんがサムスン本社近くの交差点の鉄塔に立て籠もって解雇撤回を訴えていたが、三五五日目にサムスン側と合意し、五月二九日に地上に降りた。

 ●4章 微増に終わった最低賃金

 韓国の最低賃金は全国一律で、最低賃金委員会が毎年六月に論議して決め、翌年の一月一日に施行される。文在寅大統領は、最低賃金を二〇二〇年までに一万ウォン(約九二〇円)に引き上げると大統領選挙時に公約した。二〇一八年は七五三〇ウォンから八三五〇ウォンへ16・4%上がった。しかし翌年は二四〇ウォン増(約二二円)に終わった。二〇二一年度の額を決める今年の論議は結論が出ず、結局七月一四日に労使の代表が退場し公益委員だけで一三〇ウォン(約一二円、1・5%)増の八七二〇ウォンと決定した。

 ●5章 民主労総が労使政合意案を否決

 民主労総のキム・ミョンファン委員長が五月に大統領府で開かれた労使政代表者会議に出席し、そこでの「合意最終案」の承認を求めた。完全な労使協調、闘争自粛宣言だ。労働運動活動家の全国組織の一つである平等労働者会は、同案を「コロナ禍に直面している労働者の生存権のための措置が全くなく、むしろ政権と資本による危機の責任の労働者への押し付けで一貫している」内容だと批判する。六月の中央執行委員会では大多数が反対して承認されなかった。同委員長は代議員大会を「職権」で招集。七月二三日の臨時代議員大会で反対約62%、賛成約38%の得票で同案の承認は否決された。

 ●6章 全教組の合法化

 七年前に朴槿恵(パク・クネ)前政権から「法外労組」にされた全教組について、同政権が「法外労組」と通知したことは違憲であると大法院(最高裁)が九月三日に判決した。文在寅大統領は全教組の合法化を大統領選挙の公約に掲げ、全教組委員長に直接会って約束もした。しかし就任から今日までの三年間余り、何もしなかった。嘘と無視だ。

 ●7章 韓国労働運動の現状認識と闘う方針

 韓国労働運動はコロナ禍の状況をどう捉え、どこへ進もうとしているか。一例として平等労働者会の主張を紹介する。
 「資本家政府〔=文在寅政権:訳注〕はコロナを口実に集会デモを禁止した。間隔をとれば集会が可能であるにもかかわらず、災難を口実に労働者の闘争を抑制し、恐怖の雰囲気を作っている。官僚化した労組はこれに調子を合わせつつ集会を放棄し、政権と資本による危機の押し付けと新たな支配戦略に順応している。今日、ソウルでは、非正規職の労組と一部の労組組合員が警察の妨害を何とかくぐり抜けて大統領府近くまで接近した。/コロナ禍を迎えて(一九九八年の)IMF危機よりもっと深刻な状況が到来している。政権と資本は以前と同じように経済危機を労働者に押し付けるために労働組合を飼い慣らし、労働運動を体制内化しようとするだろう。コロナ禍を利用して危機を助長しながら欺瞞的な議会主義選挙を通じて労働者民衆の不満を眠り込まそうとするだろう。」(五月一日の声明)
 さらに、同会は闘う方針として、コロナ事態下で急増する解雇・失業・貧困に抗して、解雇禁止、全国民雇用保険、基本所得概念の常時災難支援金の支給とそのための保有税と相続税の引き上げ、財閥大企業の内部留保の取り崩し、特別災難税の新設を訴えている。また、労災事故に関して、民主労総は「重大災害企業処罰法」の制定を要求しているが、同会は、労災死亡率ゼロ政策の即刻実施と、労災を引き起こした企業と事業主を殺人罪に問う「企業殺人法」を制定しろと主張している。

 ●8章 韓国サンケン労組の闘いに連帯しよう

 二〇一六年に労組を標的にした整理解雇を撤回させるために来日して本社前などでの闘争を連日展開した日系企業の韓国サンケンの労働者は、八カ月余りの闘いで解雇を撤回させて労組員全員の現職復帰を翌一七年に勝ち取った。親会社のサンケン電気の和田社長は、韓国の工場を正常化すること、争議によって本社周辺の住民がうるさく思う事態を二度と起こさないことを、韓国サンケン労組と地域住民にはっきりと約束した。
 ところが今年七月、韓国サンケンは労組に対して、累積赤字と労組の存在を理由にして来年一月に会社を清算・解散するのでその時点で解雇すると通告してきた。だがこの三年間、本社は韓国の子会社に十分な原材料を供給せず、工場は操業と休業を頻繁に繰り返した。生産・販売が不十分で利益を上げられないから赤字になるのは当然だ。その一方で、韓国の他会社を買収して生産を行い、韓国サンケンのブランドを付けてヨーロッパに輸出して黒字の業績としてきた。本社は韓国での生産を放棄するつもりはさらさらない。
 今回の事態は本社の指示による意図的な偽装倒産であり、明白な労働組合弾圧だ。和田社長は「コロナ禍で韓国の労組は来日できないから労組も今度は勝てない」と言い放ったと韓国の社長が労使協議の場で公言さえしている。長年まじめに働き、この三年間は会社の再建を願って賃金凍結と休業要請にもすべて応じてきた韓国の労働者の生活と人権を、日本の悪徳企業がまたもや踏みにじろうとしているのだ。
 八月には地元住民の支援組織が、九月には労働運動を基盤とする支援する会が結成された。工場前、日本領事館前などで連日横断幕を持って会社清算撤回と雇用保障を求める韓国サンケン労組(金属労働組合韓国サンケン分会)の闘いを、日韓労働者連帯運動の前進をかけて支援・連帯しよう。毎週木曜のサンケン電気本社前・志木駅前・営業部前(東京・池袋駅東口)の抗議行動に参加しよう。





 

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