共産主義者同盟(統一委員会)






■政治主張

■各地の闘争

■海外情報

■声明・論評

■主要論文

■綱領・規約

■ENGLISH

■リンク

 

□ホームに戻る

  
   ミャンマー民衆の抵抗に連帯を
   日本政府は国軍支援をやめよ!
                      国際部
 

 今年二月一日のミャンマーでの国軍によるクーデターの発生から三カ月以上が経過した。国軍は過酷な弾圧、そして民衆虐殺をますますエスカレートさせている。しかし、ミャンマーの労働者・民衆はそれに屈することなく抵抗を持続し、拡大させている。われわれは、ミャンマー国軍と癒着してきた日本の支配階級を弾劾し、日本とミャンマーの歴史的かつ現在的な関係を捉え返しつつ、立ち上がるミャンマーの労働者・民衆と連帯する道をつくりだしていかなくてはならない。

 ●1章 エスカレートする民衆虐殺

 二月九日の首都ネピドーでのデモに対する実弾使用によって初めての死者が出て以降、ミャンマー国軍は抵抗する労働者・民衆に対する弾圧、虐殺をますますエスカレートさせてきた。三月二八日の「国軍記念日」には、ミャンマーの最大都市ヤンゴンなど複数の都市で計一一四人が虐殺された。虐殺は拡大し、四月九日には中部の都市バゴーで八二人が国軍によって殺害されている。これは一地域での一日あたりの犠牲としてはこれまで最大だ。
 ミャンマー国軍はまた、三月一四日深夜に、民衆の抵抗が最も激しいヤンゴンの六地域に戒厳令を布告した。それにもとづいて四月八日には上訴ができない軍事法廷によって、ヤンゴン市民一九人に死刑判決が下された。国軍はさらに、カレンやカチンなど国軍のクーデターに批判的な少数民族の居住地域への空爆にも踏み出している。
 こうして四月中旬までに、実に七〇〇人以上のミャンマー民衆が国軍によって命を奪われた。その中には数十人の子どもたちも含まれている。民衆虐殺以外の何物でもない。ミャンマー国軍は国営放送を通じて、抵抗する民衆に対して、「頭を撃たれる危険があることを学ばなければならない」などという「警告」を発している。何ということか。われわれはこのようなミャンマー国軍の民衆虐殺を最大の怒りを込めて弾劾する。

 ●2章 持続し拡大する人民の抵抗

 にもかかわらず、ミャンマーの労働者・民衆は、弾圧・虐殺に屈することなく抵抗を続け、それを拡大させている。それは文字通り連日の闘いとして展開されている。二月二二日のゼネストには、ミャンマー全土で実に一〇〇万人以上が参加した。また、滞日ミャンマー人をはじめ、在外のミャンマー民衆も各地で様々な抗議行動を展開している。
 クーデター後に国軍が創設した国家行政評議会に対して、アウンサンスーチー率いる国民民主連盟(NLD)は、連邦議会代表委員会を組織した。四月一六日にはそれを国家統一政府へと発展させ、国軍に対抗する二重権力をつくりだそうとしている。しかし、その基底にある闘いの主人公は、あくまでも労働者・民衆だ。
 創意工夫に溢れるミャンマーの労働者・民衆の現在の抵抗の中には、いくつかの注目すべき特徴がある。
 ひとつは、当初から「国際社会」に対して国軍への圧力を訴える戦術を取っていることである。われわれはそれを、階級的な国際連帯の呼びかけとして受け止めるべきだろう。
 また、その抵抗が公務労働者をはじめとした「不服従運動」、職場放棄として発展してきたことである。この労働者階級の抵抗は、国軍の支配に大きな打撃を与えている。
 さらに、青年層が現在の抵抗の最先頭に立っていることだ。日本のメディアでは、その理由を民政移管後の「自由と豊かさを失いたくない」ことに求める論調が目立っている。しかしそれは、約半世紀に及んだミャンマーでの軍政支配を直接に知る世代ではない彼らが立ち上がる根拠としては一面的であろう。われわれはブルジョア・メディアの皮相な見方を越えて、ミャンマーの青年たちの思いに深く接近していかなくてはならない。
 また、別の重要な側面がある。高橋昭雄氏(東大東洋文化研究所)は、一九八八年の民主化闘争と比較しつつ、現在の抵抗において、都市部の住民だけでなく人口の七割を占める農村部の人々が直接に決起していることを指摘している(三月二一日付朝日新聞)。一方でのIT技術の発展と、他方での都市部と農村部の格差の拡大をその理由に挙げているが、そこからは深い基盤の中で現在の労働者・民衆の抵抗が起こっていることを見てとることができる。
 いずれにせよ、国軍による血の弾圧にもかかわらず、ミャンマーにおける労働者・民衆の最終的な勝利は不可避である。

 ●3章 欺まん的な諸大国の態度

 ミャンマーは、「アジア最後の経済フロンティア」などと呼ばれるように、諸外国の市場開拓と直接投資・企業侵出の舞台となってきた。また、タイとラオスに加えて、中国、そして日米帝国主義の「インド太平洋戦略」の中でクアッド(QUAD)の一角を構成するインドとも国境を接している。これらのことが、今回の帝国主義をはじめとした諸大国の態度の相違に反映している。
 米国はミャンマー国軍幹部や国軍系複合企業に対する制裁を課した。ミャンマーと歴史的な関係を持つ英国もそれに続く態度をとっている。他方、中国やロシアは「内政不干渉」や「ミャンマーの政治と社会の安定」を理由に国軍とその関係者への制裁に反対している。中国にとってミャンマーは「一帯一路」構想の重要なターゲットであり、その海洋進出の一環として両国を結んでインド洋へと至る原油や天然ガスのパイプライン建設、鉄道建設を進めてきた。また、ロシアはこのかんミャンマーへの武器輸出を推進している。
 われわれは、いま現在も民衆虐殺を続けているミャンマー国軍を自国の経済権益のために事実上擁護し容認している中国・ロシアの政府の態度を弾劾する。同時に、われわれは米国をはじめとした帝国主義諸国政府が語る「民主主義」の欺まん性を片時も忘れるべきではない。
 ミャンマーの労働者・民衆は自らの生死の問題として、「国際社会」に対してミャンマー国軍に圧力をかけることを呼びかけている。それに断固として応えなければならない。しかしそれは、米国―バイデン政権の「人権外交」を支持することではない。労働者・民衆自身の階級的な国際連帯の組織化こそが決定的に重要だ。
 さらに、後に述べるように、このかんの事態の中での日本政府の態度を徹底的に弾劾し、日本政府・支配階級のミャンマー国軍への支援をやめさせるために闘っていかなくてはならない。

 ●4章 ロヒンギャへの迫害をやめよ

 ミャンマーには、人口の約七割を占めるビルマ人以外に、一三四の少数民族が存在すると言われており、その多くが独立や自治の拡大を求めてビルマ人を中心とする政府・国軍に対して歴史的に抵抗を続けてきた。
 ミャンマー国軍は今、いくつかの少数民族居住地域に空爆を行うと同時に、国家行政評議会に少数民族政党の代表を加えるなど、懐柔策にも乗り出している。他方、NLDを中心とした「連邦議会代表者会議」と「国家統一政府」も、軍政下で定められた現憲法を廃止して、少数民族の自治権の拡大を打ち出すことで、対国軍の共闘を呼びかけている。
 しかしながらロヒンギャの人々は、そうした動向からさえもまったく排除されている。イスラム教徒であるロヒンギャは、仏教徒が多数を占めるミャンマーの中で迫害されてきた。とくに二〇一七年の国軍による掃討作戦は、数百人の死者と約七〇万人のロヒンギャ難民を発生させた。アウンサンスーチーもそれをジェノサイド(集団殺害)とは認めないことで、ロヒンギャへの迫害に加担した。国軍もNLDもロヒンギャの人々を「ベンガル人」と呼ぶことで、その存在を否定し、ロヒンギャの民族的自己決定権を踏みにじっている。
 われわれはクーデターに対する抵抗に連帯すると同時に、ロヒンギャへの差別と迫害を許してはならない。

 ●5章 日本の労働者人民の課題

 かつて日本帝国主義は、アジア太平洋侵略戦争の過程で、当時のビルマを占領した。泰緬鉄道建設では現地の人々を「ロームシャ」として動員した。その過酷な労働の中で、動員された一八万人のビルマ人のうち、約四万人が死亡したとされている。
 この占領期間中に、日本の支配階級と後にミャンマー国軍の中枢を握ることになる人物らとの関係が形成された。歴代の日本政府はその下で、巨額の政府開発援助(ОDA)の供与を含め、一九六二年に始まり半世紀に及んだミャンマーでの軍政支配を政治的・経済的に支えてきた。さらに、日系企業の現地侵出を進め、今日ではその数は四三三社に至っている。そのため今回のクーデター以降、日本政府は新規のОDAの供与は停止したものの、「制裁」とは打ち出さず、民衆虐殺をエスカレートさせる国軍に対する強い態度は取っていない。
 メディアなどでは「日本は国軍とのパイプを活用して対話を進めるべきだ」という論調もあるが、それは誤りだ。そうではなく必要なことは、日本政府・資本とミャンマー国軍との癒着を断ち切らせることであり、国軍を政治的・経済的に支え、そのことで現地民衆への抑圧に加担している日本政府を徹底的に弾劾することである。
 抵抗するミャンマーの労働者・民衆への連帯を広げよう。



 


Copyright (C) 2006, Japan Communist League, All Rights Reserved.