共産主義者同盟(統一委員会)

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  東日本大震災、現地激励支援行動の報告



 四月二〜三日、労働組合の被災地支援・激励団の一員として、東京から被災地を訪問しました。宮城県の仙台、福島県の郡山といわきの地域労組を訪問し、激励と情報交換、現地視察を行うのが目的でした。3・11東日本大震災は未曾有の大災害でした。地震・津波・原発事故という三重の災害が人々を襲っています。犠牲になられた方々に哀悼の意を表明し、困難ななかで生活再建・地域再建に進みはじめた被災者の方々への心からの連帯を表明します。
 わたしたち民衆運動陣営にとって被災者救援活動の実践は、長期的な課題・任務としてあると思います。見聞きした現地情勢とわたし自身の感想を簡単に書いていきます。

  ●1 現地の情勢

 まず、四月二日夕方、仙台の現地震災対策本部を訪問しました。市内は、ぱっと見た感じではあまり大きな影響はないように感じました。飲食店や交通機関も少しずつ復旧しています。しかし、内部が激しく損傷している建物が多くあり、使用不能なホテルやビルが多数あるとのことでした。仙台駅も構内や駅ビル内で天井が崩落するなどの大被害があったそうです。
 そうした状態のなかで、労働組合の最初の任務は「組合員の安否確認」です。電話が通じない中で、三陸沿岸の津波来襲直後の現場と避難所を車でまわったそうです。震災直後は経営側も慌て、十日ほどはどこも休業状態になり、建物が使用できない職場もあり、今後大規模な「震災解雇」「便乗解雇」が予想されます。会社を廃業・解散せざるをえない中小零細企業もあります。事態が落ち着き労働者に余力が出てきたら労働相談も増えることが予想されます。すでに休業や転勤について五〜六件の相談が寄せられているそうです。雇用調整助成金や失業手当てを要求していくとのことです。
 組合災対本部の方は「大企業の労働者のように社宅などが支給されない中小零細の労働者や非正規労働者が問題だ。ピンポイントで継続的な支援をしていかなければならない」「街づくりを含めて全国的な運動が必要。報道が下火になった後でも支援の継続が必要だ。一地域の問題にしてはならない」と力を込めて報告されました。参加した地域労組から、特養ホームでライフラインが寸断されて料理がつくれないことがあったという話や、自治体労働者や教育労働者が入浴もできないなか避難所で不眠不休で働いているといった話も聞かせていただきました。
 翌日四月三日朝、千名が行方不明という名取市の津波被災地である閖上(ゆりげ)港と、仙台空港周辺の立ち入り禁止区域を、緊急車両に乗せてもらい視察を行いました。当たり前ですが、テレビや新聞で見る風景と違って三百六十度全景が見渡せます。砂と瓦礫しかない、風の音だけの被災光景に思わず息を飲んでしまいました。鉄筋の建物の三階以上に避難できなかった人は流され、電柱や水銀灯がなぎ倒され枕木のように倒れていることから、津波の規模(高さも距離も)の大きさがうかがえます。住宅のほか、魚市場や名物・笹かまぼこの工場などが壊滅し、地域産業に深刻な打撃を与えていることがわかりました。消防や自衛隊の行方不明者捜索が続き、瓦礫のあちらこちらの遺体発見場所には黄色いリボンが結ばれていました。また、管制システムが崩壊した仙台空港は米軍によって制圧され、テントと車両がズラリと並んでいて、輸送機がちょうど着陸してきました。
 四月三日午後、次に訪れた福島県も地震や津波の被害を受けましたが、なにより原発事故が深刻な影響をもたらしています。周辺の避難区域の人たちが「原発難民」となっています。工場の閉鎖や自主退避で働く場所がない労働者がたくさんいるなかで、行政機関が崩壊してしまった地域もあり、諸々の手続きができない状態です。
 郡山の地域組合の方は「東電本社に抗議するのはもちろん大切だが、原発難民への支援や福島の産業そのものをこれからどうしていくのかという問題意識を持ってほしい」と語っていました。原発周辺の市や町は、ほとんどが年金生活者の超高齢化地域で、現在、避難先で医療・福祉が停滞して大変なことになっているそうです。郡山に避難してきた高齢者には、入浴もできないベッドも足りないなかで、重い肉体的・精神的負担がかけられています。介護施設の職員も大変だし、引き取ることができた家族にも負担が強いられています。「原発によって死ななくていい命が死んでいる。雇用と地域コミュニティーの崩壊が進んでいる。国家と資本に全面的な補償を要求することが大切だ」と訴えられました。被災後の格差の拡大を絶対にゆるしてはなりません。いのちの格差を絶対にゆるしてはならないと思います。郡山は原発から五十八キロの地点で、米英仏などの規定では危険地域です。「自分たちは実験用のモルモットにされているようだ」「子どもたちだけでも逃がしたい」「これは棄民政策だ」と語る方もいました。農漁業への打撃も深刻です。自殺したキャベツ農家もいて、今春の米や野菜の作付けが全県で禁止されているそうです。農地汚染も深刻で、東電糾弾とともに、具体的な行政交渉や農漁業者への支援が必要とされていると感じました。「原発労働者とともに雇用の確保と代替エネルギーを求める運動を組織していく必要がある」という組合の方の言葉も印象に残りました。
 四月三日夕方、訪れた港湾労組の拠点でもあるいわき小名浜港も津波被害があり、漁船やハシケが打ち上げられて港が大損壊を受けていました。火力発電所や銅製錬所の操業全面停止のため、石炭輸送のトラック労働者や港湾労働者の一斉解雇が行なわれたそうです。

  ●2 今後、なにをなすべきか

 阪神淡路大震災や中越地震での教訓もあるように、救援物資や救援ボランティア部隊を「とにかく」現場に集中させればよいというわけではありません。「被災現地が要求している物を送り、要求している場所に人を送る」ということが原則だろうと思います。そのための情報収集と調査が必要です。様々な団体・個人と横断的なネットワークを形成していきましょう。新自由主義思想にどっぷり浸かった政府や財界はもはやアテにはならないと思います。いまこそ、民衆運動陣営が問われています。労働者、農民、漁民、中小零細経営者、その他様々な事情で「弱者」にさせられている人々への長期的な救援活動を組織し、天災被害が民衆に集中することをゆるさず、政府や行政機関に対して声をあげていきましょう。
 この報告がその一助になればさいわいです。

                                    (首都圏 介護労働者)
                                

 

 

 

 

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