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■寄稿(2009年11月)


   岩国基地訴訟を支持し、全国に発信しよう!

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AWC山口実行委員会事務局員




 米軍再編『日米ロードマップ』合意から三年半が経過し、「負担の軽減と抑止力維持」ということがまったくのペテンであることが明らかになるなかで、その進捗に「NO!」を掲げる各地住民の闘いは拡大し続けている。岩国市民は、山口県知事による基地・機能拡大容認―基地沖合移設の用途変更にたいして昨年二月七日、公有水面埋立承認処分取消行政訴訟をおこし、厚木艦載機五十九機移駐反対、米軍再編反対の闘いを強めている。また、全国の爆音訴訟の闘いとも連携し、遂に、三月「爆音訴訟原告団」が結成され、七月九日、岩国爆音訴訟が始まった。基地被害を許さず飛行停止と基地存在そのものを問う裁判である。その根底には、「武力による平和」を拒否し、基地騒音などの被害をなくし「平和的生存権」を求める願いと論理に貫かれている。さらに、昨年八月には「愛宕山を守る会」、続いて「愛宕山を守る市民連絡協議会」を結成し、愛宕山都市計画中止反対の意見書運動、住民監査請求、岩国市内五万戸ビラ配布など、愛宕山跡地への米軍住宅建設計画絶対反対の取り組みを連続しておこなっている。今年に入り、五万人署名目標を大きく超え十一万人分の署名を集め、四月七日防衛省に提出した。愛宕山住民の念願であった地元での「4・12愛宕山大集会」の成功を勝ち取るとともに、新住宅市街地開発事業許可取消しを強行した中国地方整備局に対して、七月三十一日「処分取り消し」を求める行政訴訟を広島地裁に起こした。

 そして、四つ目の訴訟が九月二日提訴された。「愛宕山開発等に係る市長協議」の報告書非開示決定取消請求訴訟である。いまだに国は愛宕山開発事業跡地を米軍住宅にするという正式な発表はしておらず、山口県も岩国市も「米軍住宅にするなら国には売らない」と明言していないが、すでに、二〇〇八年四月七日の段階で、国と県から岩国市に対して、「民間空港を再開する代わりに米軍住宅を受け入れる」などの内部協議が行われていたことが、二〇〇八年八月十八日、一部報道により明らかになった。

 岩国市民が岩国市情報公開条例に基づいて岩国市に対して情報公開請求をしたが、岩国市は意思形成過程であることなどを理由に非開示決定を行った。それに対し、申立人が異議申し立てを行ったので、岩国市は「岩国市情報公開・個人情報保護審査会」に諮問した。「岩国市情報公開・個人情報保護審査会」は異議申立人の意見陳述などを経て、岩国市長の全面非開示の主張を退け、「一部開示せよ」という答申を出した。しかし、岩国市はこれを無視し、異議申立人に対して、全面非開示の決定をし、異議を却下したのである。岩国市民は、岩国市情報公開条例に定められている非開示事由が存在しないにもかかわらず、非開示を決定したことに対し、その「非開示決定処分」の取り消しを求める行政訴訟を起こした。これまでの裁判と同様、米軍再編に伴う厚木からの空母艦載機部隊の移駐案に反対の意思を表し続けている岩国市民の民意の表れなのだ。

 いま、岩国では、それぞれの裁判原告、事務局、弁護団が互いに協力し、重なりあいながら、闘いの継続した展開と内容的発展を創りだすため奮闘している。岩国基地四訴訟の意義を学ぼう。本年一月十六日、百二十九共同要請団体による山口県都市計画審議会への要請書提出、愛宕山五万人署名運動への協力の取り組みに続いて、全国で継続した支援連帯運動を巻き起こそう。岩国訴訟の意義を全国に発信しよう。訴訟支援のカンパ運動を巻き起こそう。

 裁判傍聴に駆けつけよう。



 ●岩国基地4訴訟とは


 ▼海の裁判―岩国基地沖合移設事業「埋立承認処分取消請求訴訟」

 この「埋立承認処分取消訴訟」は、基地沖合移設に託した岩国市民の期待を踏みにじって行なわれた国の事業を批判し提訴した取り組みである。

 岩国基地を一キロメートル沖合に移設する事業により、よりましな住環境が市民生活に訪れるはずと期待されていた。戦後の四十年間市民の「悲願」としてあった爆音の軽減と墜落の危険の回避という期待を裏切り、完成間際になって、市民の「悲願」は米軍再編に利用されていたことが判明した。二〇〇六年五月の米軍再編最終報告には、岩国基地への厚木艦載機部隊移駐が記載され、恒久的な基地機能強化に連なっていることが鮮明になったのである。この国による裏切りは、公有水面埋立の許認可の権限を持つ山口県による用途・目的の変更承認処分が必要である。

 一九九六年十一月に山口県知事が「公有水面埋立処分」を承認し、貴重な藻場を含む沖合二百十三ヘクタールは愛宕山を削った土砂で埋め尽くされた。この基地の沖合移設案には、当初から良識ある市民によって疑念が示されてはいたが、地元の経済活性化へ繋がるとの掛け声でかき消されてしまった。当初から、沖合移設事業を強力に牽引したのは日米安保堅持派と利権に群がる企業である事実を踏まえるならば、沖合移設事業そのものが日米合作の軍事戦略の一環と考えるのが妥当なのである。国は、岩国基地沖合移設事業が、厚木艦載機部隊などの受け皿になる事業であるとして公然化し、二〇〇八年初頭から国と二井山口県政は岩国市民を裏切り、その推進を一段と強めている。

 二〇〇八年一月八日、中国四国防衛局は「埋立変更承認申請」を山口県に提出する。当初の埋立申請内容には、今回の米軍再編に基づく内容は含まれていないから埋立変更の承認が必要になったのである。実に、埋立の目的や用途が変更されるという「重大事」がここで起きているのである。岩国基地に関する初めての裁判となるこの訴訟〈一九九六年十一月二十八日付けで山口県が国に出した「公有水面埋立処分」の取り消し、あるいは、二〇〇八年一月八日付の「埋立変更申請」の不承認〉が二月に提訴される。その間に、二井知事は「埋立変更申請」を承認したことから、原告は「変更承認処分」を取り消すよう「訴えの変更の申立」を行った。昨年四月八日、第一回口頭弁論から今年十月二十一日まで八回口頭弁論が行われ、裁判は「処分性」「原告適格性」「訴える利益」をめぐり攻防が激化してきている。この海の訴訟は、「艦載機移転に大きなクサビ!」を求める岩国市民が怒りを行動として継続し、「変更承認処分」を行った山口県知事を被告としながら、「米軍再編」に異議を訴えることを目的としたものである。


 ▼空の裁判―岩国爆音訴訟(飛行差止・損害賠償請求事件)

 三月二十三日、岩国市民四百七十六人は、国を被告に山口地裁岩国支部に飛行差止・損害賠償等請求事件(岩国爆音訴訟)を提訴し、既に二回の口頭弁論を実現した。その間も、各自治会説明会などが行われ、あらたに百七十八人の提訴がこの十月末におこなわれる。これまで一度も爆音訴訟が提訴されることのなかった「爆音被害」の実態は深刻である。今までも、「受忍限度を超える」ものであった。しかし、その背景に常に横たわってきたのは「沖合移設が完了すれば、墜落の危険や騒音が軽減される」という期待であった。期待は裏切られた。米軍再編による厚木基地からの艦載機部隊の移転などが実施されれば、航空機は倍になり、「爆音」は倍化される。厚木、横田、嘉手納、普天間、小松などの爆音訴訟が闘われ、「うるさ指数75W値以上の爆音は違法である」という判決が定着しつつあるが、75W値以上で防音対策をしたとしても、すでに受忍限度を超えているのである。このことは、八回になる海の裁判―「埋立承認処分取消訴訟」における原告意見陳述のなかで述べられ続けている。また、岩国爆音訴訟でも、原告意見陳述において主な「爆音被害の証拠」として訴えられている。国は、この深刻な実態をあまりにも軽視し、米軍再編によってさらに悪化させようとしている。「もうこれ以上の爆音は受忍できない」として裁判をおこした四百七十六名の岩国市民の闘いは、やむにやまれない岩国市民全体の声である。

 だから、岩国爆音訴訟の請求内容は、「現状の爆音」自体が生活と労働環境を著しく破壊し続け、安眠妨害や胃腸障害、さらには精神的苦痛等を与えていることを告発し、三つの差し止めと米軍再編撤回を求めるものである。

 請求と求める判決の内容(損害賠償部分は略す)は。

1、被告は、自ら又はアメリカ合衆国軍隊をして、原告らのために

(1)岩国飛行場において、毎日午後八時から翌日午前八時までの間、一切の航空機を離発着させてはならず、且つ、一切の航空機のエンジンを作動させてはならない。

(2)岩国飛行場の使用により、毎日午前八時から午後八時までの間、原告らの住居地に六十デシベルを超える一切の航空機騒音を到達させてはならない。

2、被告は、自ら又はアメリカ合衆国軍隊をして、原告らの住居地の上空において、航空機による旋回、急上昇、急降下の訓練をさせてはならない。

 これが、三つの差止め請求内容であり、司法が「爆音の違法性」を判決として下すよう求めている。続いて、3、被告は、アメリカ合衆国軍隊をして、岩国飛行場において、横須賀基地を母港とする航空母艦に配備されている艦載機及び普天間基地に配備されている空中給油機を、一切、離発着させてはならない。

 まさに、米軍再編そのものに反対の意思を表し続ける裁判であり、米軍再編そのものに反対の最初の裁判である。

 国側は既に答弁書を提出している。@自衛隊の差止め、及び、損害賠償の将来請求は不適法だから却下A米軍機の飛行差止め、艦載機や空中給油機の移駐差止めは、米軍という第三者がおこなっている事柄なので、その運用について、日本政府として口を挟むことは出来ないから棄却B損害賠償請求については、受忍限度内であり、我慢できる騒音であるから棄却。仮に受忍限度を超えていたとしても、危険への接近論(基地があり、爆音があることを承知の上で移住してきた)によって減額すべきとして全面的に争うと主張している。

 しかし、岩国爆音訴訟は、全国爆音訴訟原告団全国協議会結成という画期的地平の上におこされた裁判である。各地爆音訴訟団との経験の共有、激励と連帯のもとに始まったのである。「裁判所は、違法な爆音は違法だとする判決をだすべきだ」と意気軒昂である。


 ▼陸の裁判―愛宕山開発事業許可取消処分取消請求訴訟)

 「愛宕山開発跡地に米軍住宅建設計画はあり得ないこと」として昨年八月、住民は愛宕山を守る会を結成し、五万人署名運動を地元岩国のみならず全国に呼びかけ、その不当性を訴えつづけてきた。愛宕山地域住民は、さらなる闘いの継続と前進のために七月三十一日、国(処分行政庁:中国地方整備局)を被告とする行政訴訟〈中国地方整備局長が、山口県住宅供給公社に対してなした、二〇〇九年二月六日付の岩国都市計計画・新住宅市街地開発事業許可を取り消すとの処分を取り消す〉を広島地方裁判所に提訴した。

 訴訟の目的は、「我々愛宕山を守る会齲白≠ヘ(二〇〇八・八設立)愛宕山に米軍住宅・施設は要らない≠フ一点を目標に行動をしてきました。愛宕山は、旧市街地の中心に位置する好立地の広大な空間です。これを米軍住宅でなく、我々県民・市民の為に利活用するように要求します」と、鮮明だ。海兵隊岩国基地沖合移設事業と岩国市都市計画・新住宅市街地開発事業はセットの事業として始まった。沖合移設工事のための土砂搬入で里山は切り崩され、鎮守の森は破壊された。地域住民の憩いの場である愛宕山神社は工事のため移動させられた。多大な騒音、振動、粉塵に耐えたのは、基地周辺住民の「安全と騒音軽減のため」「良好な住宅供給のため」だったはずだ。ところが、山口県知事は、二〇〇七年三月、愛宕山から土砂搬入が終了したとたん、「経済状況の変化によりより事業継続が困難となった」として岩国市都市計画・愛宕山地域開発事業を中止する手続きを岩国市を巻き込み強行してきたのである。

 その目的は悪辣であり、愛宕山住民・岩国市民を二重三重に裏切るものであった。米空母艦載機五十九機などの移駐を受け入れ、航空機部隊としては極東最大の米軍基地に変貌させ、市民に耐え難い負担を強いるものであった。良好な住宅供給事業は、米軍住宅化計画に目的変更されようとしているのである。愛宕山地域住民の憤激は、三番目の裁判―陸の裁判の提訴として表現された。その闘いは、「愛宕山跡地への米軍住宅化絶対反対」「米軍再編に影響を与える」運動として、そして、岩国市民の米軍再編反対の民意を推進するものとして発展している。

 愛宕山地域住民は、「愛宕山を守る会」「愛宕山を守る市民連絡協議会」を結成し、愛宕山都市計画中止反対の意見書運動、住民監査請求に取り組み、更に岩国市都市計画審議会や山口県都市計画審議会に対して数次にわたり都市計画・新住宅市街地開発中止の問題点を詳細に指摘する要請書を提出してきた。その成果ともいうべきものが、下記の訴訟理由にぎっしり詰まっている。

(1)二〇〇九年二月六日 中国地方整備局長の愛宕山地域開発事業(計画変更)の許可を取り消す旨の処分に重大な違法性が存在すること。
 (新住宅市街地開発法に基づき許可を取り消したが、同法には事業廃止を認める規定はないのである。)

(2)山口県が申請した都市計画変更の理由について裁量権の逸脱があること
 (住宅需要減少と、赤字を見込んだ収支見通しを十分に審査しておらず、裁量権を逸脱している。)

(3)事業中止に至る手続き上に違法性がある
 (事業廃止後の土地利用計画が示されていないのに、具体的な審査をしていない。)
等など、理由を具体的に指摘している。

 そもそも、都市計画の規模自体が、基地の拡張工事に併せて無理な計画が強いられ、土砂の搬入量から逆算されていたのでないかと言われている。新住宅開発事業は、地域全体の活性化に寄与する目的のため、その事業主体に「無限の責任を」負わせ、事業完遂のため「継続性のある主体であることを要する」と規定し、せいぜい変更による対処しか想定してないのである。県は、「無限の責任」を簡単に放棄し、国・防衛省に転売し、責任と財政的負担を引き受けようとしないのである。こんなことが許されるなら、自治体の都市計画は、国策のために粉々に潰されることになってしまう。しかも、岩国市で起こっていることは、「赤字財政」のニュータウン計画を米軍住宅に変更させることも可能だという事例を作ってしまうものなのだ。


 ▼テーブルの裁判

 昨年九月十日、公文書「四月七日 愛宕山開発等に係る市長協議報告書」「四月十五日 県・市・県住宅供給公社事務レベル協議報告書」の非開示決定処分を行った福田良彦岩国市長に対し、岩国市民は、今年九月二日訴訟を起した。岩国市情報公開条例所定の非開示事由が存在しないにもかかわらず、(公文書「愛宕山開発等に係市長協議報告書」等を)非開示とした処分がなされたのは、違法であるから、二〇〇八年九月十日の非開示決定処分の取り消しを求める」というのがその請求内容である。

 岩国では(旧岩国市)、住民投票で九割の市民が、艦載機移転反対の民意を表した。市民・住民は、愛宕山開発跡地への米軍住宅化反対の十一万人を超えた署名を岩国市、山口県、国に提出した。同じ時期、二〇〇九年四月二十三日、福田岩国市長が、岩国市情報公開・個人情報保護審査会の一部開示の答申さえ無視し、全面非開示の決定し、異議申立人の請求を却下したことの意味は重大である。

 地域の未来はいったいどうなるのか。市民の民意が及ばない処で何が決められようとしているのか。特にここ三〜四年、米軍基地を抱えるが故に、岩国市民の中には行政への不信と不満、怒りが渦巻いていた。米軍再編に伴う米軍岩国基地の機能強化拡大を決定づけるであろう愛宕山開発跡地の行く末(米軍住宅化の懸念)に関し、どのような協議が福田良彦岩国市長を取り巻く関係者の間でなされてきたのか。国や行政に未来を託するのではなく、地域の行く末を自らが決定する力量を培うためにこそ、知る権利、住民自治などの基本的人権の獲得を実現せんとして「テーブルの訴訟」を起した。福田岩国市長は米軍住宅化と直結する空母艦載機部隊移駐計画に対し、「容認」とも「反対」とも明言していない。が、この時期、つまり、「異議申して却下」の数週間前に「愛宕山と民空は取り引きできる」「八月の知事選が済むまでは、封印」「あとはトップ同士で決めたら防衛省が測量に来る」

 など生なましい協議がおこなわれていたのである。協議内容は、誰が発言し、どのように福田市長を米軍再編容認、愛宕山跡地の米軍住宅化容認へ早急に誘導しようとしているのか具体的であり、協議報告書は明確な合意形成文書として作成された。

 岩国市情報公開条例の第一条(目的)には、「地方自治の本旨にのっとり、市民の知る権利を尊重し、行政情報の公開を請求する権利」が謳われている。「市民の市政参加を一層促進する」「市の諸活動を市民に説明する責務」「市政運営における透明性の向上」「市政に対する市民の理解と信頼」「公正で開かれた市政の発展に寄与」が記載されている。市長と市幹部は、岩国市情報公開条例破りの違法行為をおこない、市民の知る権利を奪っているのである。そして、その目的は、愛宕山開発跡地への米軍住宅化を推進することだ。

 岩国市当局は、いまだに、「いろんな場面を考えての想定問答」「意思形成過程の内部文書」だとして非公開を貫いている。しかし、米軍再編―愛宕山開発跡地に米軍住宅を建設するための合意形成の協議文書であることは明白なのだ。

 愛宕山開発等に係る市長協議報告書非開示決定取消請求訴訟とは、市民が地方自治の本旨、知る権利を武器にし、米軍住宅計画反対、米軍再編反対の闘いを発展させる取り組みである。だからわれわれは、共感をもって九月二日、山口地裁への提訴に合流したのである。

 
 

 

 

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