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『戦旗』第1291号(2007年9月20日




テロ対策特措法延長阻止! 自衛隊撤兵!

10・7三里塚現地へ

アジアから米軍総撤収!

10・27―28岩国総力決起



 自民党―安倍政権の参院選惨敗―首相辞任は、国内支配層のみならず、米帝にも衝撃を与えるものであった。米軍再編、テロ特措法延長・恒久化、日本国憲法改憲は、危機に立つ米帝にとって、世界支配を継続していくための決して外すことのできないものなのだ。選挙直後、シーファー駐日米大使は、民主党小沢へ直接要請を行い、また同時に、安倍政権へのテコ入れにやっきとなっている。内閣改造直後には、さっそく米ライス長官から町村外相に電話協議、という熱の入れようである。九月八日の日米首脳会談で、安倍は「テロ特措法は、ぜひとも継続が必要で最大限努力したい」とブッシュに平身低頭で表明をおこない、翌日九日、オーストラリアでの記者会見で「職を賭す」と表明するに至った。

 そして九月十一日所信表明演説後、翌日の十二日突如「辞意」を表明し、政権を放り出してしまった。安倍政権が「職を賭す」侵略戦争国家化は、労働者・民衆にとって厄災以外の何ものでもない。軍事費の増大や巨大独占資本優遇策などは、労働者・被差別大衆の生活・生存権をギリギリの瀬戸際へと追いやり、労働者・民衆の怒りと今までにない反貧困運動などが引き起こされている。帝国主義の二つの側面である侵略戦争と生存権破壊に対するたたかいを固く結びつけることが必要である。

 労働者・被差別大衆の自己解放闘争を現場から引き起こし、10・7三里塚、10・8反戦闘争、10・21反戦闘争に連続的に決起しよう! 10・27―28岩国に全国総力決起を実現し、改憲阻止―安倍政権打倒の総反撃を切り拓こう!


●第一章 危機に瀕した自公政権を打倒せよ

 参院選で惨敗を喫した安倍政権は、八月二十七日、高村、町村など派閥領袖を閣僚に据えた「重厚人事」で、改造内閣を発足させた。かつ、舛添など安倍批判勢力も一定取り込んで「挙党体制」を形成しようとしている。野党からは「PTA内閣」と揶揄され、しかも改造わずか一週間で二名の閣僚が「政治と金」絡みの不祥事で早くも辞任して株を落とし、「解散・総選挙を視野に入れれば、政策の影響を議論しようがない」(国内証券)など、市場の反応は、冷め気味である。しかし、翌日二十八日、経済団体・企業のトップたちは、こぞって`改革続行への期待a(日経新聞)を表明した。というのは、日帝―独占資本にとって、小泉から安倍へと引き継がれ、侵略戦争遂行国家化を軸に強行的に推進されてきた安保・外交・国内支配政策を堅持することは、まさにその生命線であるからである。

▼@侵略的野望をむき出しにする独占資本

 参院選大敗後、安倍を中軸に精力的なアジア外交が展開されてきた。これには、日本経団連・御手洗会長を団長とした企業トップ二百名あまりが同行した。八月二十日、日本・インドネシア両国で、貿易総額の約92%の関税撤廃を柱にした経済連携協定(EPA)に署名。その狙いは「エネルギー資源(LNG)の安定的確保」(安倍首相)、「今後五年間で約七十億ドル投資を予定」(日本経団連・御手洗会長)である。八月二十二日には、インドを訪問した安倍は、「日印米豪での安保連携」と「日印EPAの早期締結」を訴える国会演説をおこなった。二十五日には、東南アジア諸国連合(ASEAN)とのEPA締結を大筋合意。と、財界と手に手を取って、アジアでの広域経済圏づくり(「東アジア共同体」)にまい進した。

 この安倍政権と企業トップとの一体となった動きは、海外権益の拡大を一段と求める日本独占資本の現状を鋭く反映するものである。上場企業の二〇〇七年三月期の地域別営業損益の集計によれば、海外営業利益は五兆七千三百九十億円と、前の期から二割増え、過去最高となった。連結営業利益に占める海外比率は、通期で初めて三割を超えた。財務省によると、海外法人が内部に積み立てた利益(内部留保)は、今年上半期で一兆三百五十五億円と、半期で一兆円を超えた。海外で稼いだ利益を、そのまま現地で再投資し、肥え太っていく独占資本の海外侵出は、ますます構造化している。

 一連のアジア外交は、アジアにおける日本独占資本の権益と支配(資本の自由)をさらに拡大しようとするものである。そして、これらの利権を防衛し、押し広げるための軍事的条件として、日帝―独占資本、安倍政権による侵略戦争遂行国家化の野望は、ますます切実なものとなっている。帝国主義グローバリゼーションの進行の中で、巨大独占化する資本にとって、その利益市場はますます狭いものとなっており、これを打開するために、侵略と反革命、労働者民衆の貧困化と生存権破壊は、不可避に深まらざるを得ない。そうして安倍と独占資本家たちは、アジア行脚に駆け回ったのだが、その露骨で浅薄な「アジア権益圏構想」は、インドネシアでは「エネルギー(LNG)の安定供給」の確約を得られず、「シーレーン防衛」を強調する安倍のインド国会演説は議員たちに眉をひそめられ、たいした成果もなく終わったのである。さらには、米ライス長官から「印豪との安保連携を強調することは、中国を刺激することになりかねない」とクギをさされるというオマケつきである。

▼A破たんを深める国内政策

 国内においては、安倍政権はまさに火ダルマ状態であった。小泉路線を引き継ぐ「改革の実行」を掲げ、強行的な国会運営を行ってきた安倍であるが、みるみるうちに求心力が低下している。年金記録不備、「政治とカネ」、地域間格差などが、参院選惨敗を招いた引き金であったが、その解決どころか、続々と新しい問題がわき起こっている。閣僚の不祥事問題は、内閣改造後も収まる気配がなく、また五千万件といわれている年金記録喪失は実はその十倍以上あることが確実視され、刑事事件に匹敵する年金横領なども、次々に発覚しているという有り様である。そしてそれすらも、表層的な事態でしかないことを見ておかねばならない。

 年金については、そもそも年金資金(保険料)を運用する財政投融資制度そのものが破綻しているという事態が、パックリと口をあけて待ち受けている。二〇〇八年には財務省に委託されていた公的年金積立金(約百三十兆円)が償還されねばならないが、それは借り手である特殊法人の赤字財政によって不良債権化しており、「年金破たん」が公然化するのは時間の問題である。

 さらに難題は、もはや財政自身も破たん状態にあり、実は`貧しい者殺しaの消費税増額に踏み切るか、独占資本の要望を断ち切る以外に、税制改革方針など立てようもないことである。安倍政権はまさに断崖絶壁とでもいうべき状況にたっていたのだ。

 八月末には、来年度予算の概算要求が出そろった。国と地方の長期債務残高は、〇七年度末で七百七十三兆円と、国内総生産の一・五倍に迫り、真っ赤な赤字という危機的状況である。国債の残高が増え、今年度の元利払いだけで二十二兆二千五百億円、今年度より一・二兆円も増加となっている。赤ん坊も入れて、〇八年の元利返済だけで一人につき十九万円余、債務残高は一人当たりなんと六百五十万円である。銀行支援や法人税減税など独占金融資本・多国籍資本への優遇策によって、この財政的危機は深まり、この数年、消費税の税率アップに解決を求める動きが加速している。

 表向きは、「高齢社会化」「年金空洞化」などがその理由として叫ばれてきたが、本質的には独占資本の国際競争力増強政策によってもたらされた「財政破たん」「年金破綻」であり、二重三重のトリックでそれを覆い隠そうとしている。「年金空洞化」(未払い者増加)などは、厚生年金加入者である正社員労働者のリストラ・賃下げ、年金基金・年金組合の倒産や自主解散などによって引き起こされたものである。そして年金保険料さえ払えない低賃金労働者が、不安定雇用化によって拡大している。これを引き起こしたのは、自公政府の雇用政策なのだ。そのツケを、食費をはじめ生存・生活に必要な出費から、有無をいわせず税金を搾り取るという消費税増税によって、まかなおうというのだ。労働者・民衆を犠牲にして、自公の汚い尻拭きをさせるだけではあきたらず、「法人税率を国際基準に下げろ」と求める独占ブルジョアジーたちのさらなる企業減税の受け入れと消費税増税とがセットにされていくことは目に見えている。他方で、ミサイル迎撃システム整備や空母購入、一回で数億〜数十億円の実弾を消費する軍事演習(先日も富士裾野で実施)、米軍基地再編のための二兆円予算、米軍維持のための「思いやり」予算など、侵略戦争遂行国家化のために湯水のように税金を投入している。

 労働者・民衆の怒り、怨さの声は、否が応でも高まらざるをえない。


▼B侵略反革命戦争国家化へののめり込み

○テロ対策特措法をめぐる攻防

 現在、米帝を巻き込んで、もっとも厳しい政治的煮詰まりをみせているのが、テロ特措法延長問題である。テロ対策特措法は、現在、海上自衛隊がインド洋で米艦船に給油などの後方支援活動を行う法的根拠となっており、十一月一日には、期限切れを迎えてしまう。英軍のイラク撤退、米国内でのイラク占領反対闘争の高揚をかかえ、米帝は、今後の世界支配の基軸をNATO、日米同盟の一体的軍事運用によって展望づけようとしており、現在の米帝によるアフガン・イラク占領支援の継続、米軍基地再編、交戦権を放棄している九条改憲の要求は、まさにこのような米帝戦略に基づく一体的なものである。

 「十月末に未成立なら海自の活動停止」というテロ対策特措法の危うい局面を利用し、参院選で第一党となった民主党・小沢は、「廃止法案」の参院への提出や、特措法に変わる新たな貢献策などをチラつかせ、安倍政権への揺さぶりを強めている。高村正彦防衛相は、「(インド洋での給油活動を)続けられる方向なら、野党の要求をどんなことでも聞いていく覚悟だ」(都内にて、九月三日)と懇願した。イスラム諸国で唯一、インド洋での軍事行動に参加するパキスタンからは、「日本の石油がないと我々は行動できなくなる」との要請が、外務省に届けられている。APEC時の日米首脳会談では、ブッシュが安倍に直接、期待を表明、ヒル次官補の「(「テロ国家指定」解除を始め共和国との協議は)日米関係を強化する方向で対処したい」と、米帝からの要望は熱く、切実である。

 テロ特措法は`報復戦争支援法a(二〇〇一年十一月二日)という時限立法として出発し、何度か延長が繰り返されてきた。このテロ特措法の特徴は、第一に、実質上の集団的自衛権への踏み込みが行われていることにある。インド洋に派遣された自衛官は、アメリカ海軍第五三任務群司令官の戦術指揮下に入り、海自の将校は、バーレーンのアメリカ空軍基地内に駐在し、まさに共同作戦行動として行われている。そして第二に、事実上の戦闘地域への派兵を合法化するものであった。アメリカの指定する戦闘地域への派兵、そして戦闘行為の一部である補給活動への従事は、すでに現行憲法(交戦権の放棄)に抵触するものである。第三に、シビリアンコントロールの有名無実化である。すでに二〇〇二年には、米帝との共同軍事行動推進を意図する海上自衛艦幹部が、政府の頭ごなしに、米軍に対し日本政府へのイージス艦やP3C対潜哨戒機の派遣要請をするように依頼する、という事態も起こっている(纐纈厚「文民統制 自衛隊はどこへ行くのか」)。このようなテロ特措法は、イラク特別措置法と並び、日米の共同軍事行動を強め、帝国主義権益に基づいて世界を機動する日米安保体制への転換をはかっていくための、日米帝にとって極めて重要なステップにほかならない。安倍は「延長が無理なら新法制定を」と叫び、ついには「職を賭す」と言わざるをえないまで追い詰められたのだ。

○「集団的自衛権」の合憲化

 このような事態を背景に、明文改憲を待ちきれず、集団的自衛権行使の合憲化にむけた論議や実績つくりが、着々と進んでいる。

 八月三十日、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二前駐米大使)は、国連平和維持活動(PKO)などでの自衛隊の後方支援のあり方を論議し、現行の憲法解釈を見直し、後方支援を積極的に展開できるようにすべきだとの意見が大勢を占めたことを確認した。安倍首相は、「後方支援のあり方が、これまで通りでいいのか」と憲法解釈の見直しが必要との認識を強調した。

 この懇談会は、私的性格が強いとかねてから批判されてきたものであるが、足元がぐらつき始めた改憲を、何が何でも実現するために、もはやなりふり構わなくなっていた。

○強権的に進む米軍基地再編

 このような情勢の中で、米軍基地再編も大きな節目を迎えようとしている。

 八月三十一日、在日米陸軍は、在日米陸軍キャンプ座間(相模原市・座間市)に新しい第一軍団前方司令部を移駐させるための移行チームを発足させたことを発表した。松沢成文知事は、報道陣に新司令部の人員について「基本的には三十人程度」と述べ、移行チームと同規模になるとの説明を防衛施設庁から受けていることを明らかにした。

 米軍基地再編の動きと連動し、札束で自治体や地元住民の顔面をはたくような動きも進んでいる。八月二十九日、防衛省は、自民党の国防部会などに、同日施行された在日米軍再編特別措置法に基づく再編交付金の算定基準を提出した。自治体が、再編計画受け入れを表明すると、交付金の10%を支給。環境影響評価の着手で25%、工事着工で66・7%、再編事業の完全実施で100%を支給する仕組みである。交付額は、基地負担の増減を五項目で点数化。「面積が百ヘクタール増えれば一点増」「部隊減少が千人未満なら〇・五点減少」など、まさに自治体・地元住民、そして日本労働者・民衆を愚弄するものである。この対象候補は、沖縄名護市など全国四十市町村とされているが、明らかに現在まさに住民との攻防さ中にある辺野古や、住民投票で反対の意志を明確化した岩国を念頭に置いて考えられたものにほかならない。

 岩国では、新市庁舎への報復的予算カットが行われ、また愛宕山地域開発事業での米軍住宅としての売却や、民間空港再開をめぐる論議で、住民投票の意思を踏みにじって、米軍基地強化を求める側面攻撃が、地元商工会議所や自民党から激化している。

 安倍政権はグラグラの危機的状況下で、侵略戦争遂行国家化と生存権破壊を踏みとどまることはなく、またとどめることもできなくなったのだ。そして、保守二大政党制を実現するために自民党を割って出た民主党・小沢が、止められるわけでもない。巨大独占資本―帝国主義が、世界の主人公として君臨している限り、あくなき利益を求める資本の活動は、侵略戦争と貧困、人権と生存権の破壊、地球環境の破壊へと突き進む以外にないのである。これを打破できるのは、反帝・国際主義に立った労働者・被差別大衆の階級闘争の前進とその結合だけである。今秋期闘争を全力で担いぬき、国際的な階級闘争の前進の一ページを、日帝本国においても切り拓いていかなければならない。


●第二章 高まる労働者民衆の反抗

 憲法を強権で踏みにじり、自治体を札束で支配し、たたかう部分には弾圧をもって、横暴の限りを尽くそうとする帝国主義―独占資本は、ますますたたかう労働者・民衆を立ち上がらせ、帝国主義との対決へと腹をくくらせている。

▼@米軍基地強化への怒りと反対闘争の広がり

 米軍基地再編の要をなす沖縄、岩国、座間においては、戦後の米軍による基地占領以来の怒り、その拡大強化を拒否するたたかいが広がっている。

 防衛施設局は、辺野古における新基地建設を阻止してきた「ヘリ基地反対協」や「命を守る会」のたたかいに対し、海上自衛隊の掃海艇空母`ぶんごaを投入し、その脅しを背景に、環境アセスメント調査を暴力的に推し進めてきた。反対派住民・支援は、不法なアセスメント調査の中止を求めて、粘り強い説得活動を行っているが、海中で平良夏目さんの酸素ボンベのバルブを締めるなど、殺人まがいの暴力的な弾圧が行われている。このような攻撃に屈することなく、現在も新基地建設阻止の不退転のたたかいが続けられている。

 その近隣の沖縄北部・高江地区では、八月二十四日、「ヘリパッドいらない住民の会」(安次嶺現達、伊佐真次、宮城勝己共同代表)が結成された。米軍北部訓練場の一部返還に伴う東村高江周辺へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設に、住民たちは反対していたが、八月二十三日、那覇防衛施設局は、N1地区への工事用進入ゲートから、砂利などを搬入、道路整地作業に着手するという暴挙を強行。この本格的工事を阻止するため、会が結成されたのだ。集会では、村外からの支援者も含め五十人余りが集まり、水源地に近い貴重な自然環境と暮らしを守り、非暴力で行動することなどの不退転の活動方針が確認された。

 神奈川においても、米第一軍団前方司令部移駐のための「移行チーム」の一方的発表に対し、怒りが広がっている。神奈川県の松沢知事は、「相模総合補給廠(しょう)返還の問題はまだ進んでいない。増強だけでなく、基地の削減も国と米軍でしっかりと話を進めてもらいたい」と早期の負担軽減実現を求め、「既成事実が積み上がっていくのは愉快なことではない」と不快の念を表明した。「ミサイルで撃たれても反対する」としていた座間市の星野勝司市長は、「基地恒久化解消策を求め、国と交渉をしている中で、米軍から移行チーム発足が発表され、誠に残念」と、怒りのコメントを行った。市民らで作る「県民のいのちとくらしを守る共同行動委員会」も、七月二十日に米軍基地再編などについての要望書を提出し、九月六日から県や行政との交渉を始めている。横須賀における原子力空母母港化阻止のたたかいも持続的に前進している。

 岩国においては、井原市長は「新庁舎募金の会`風a」を組織し、「国のアメとムチの手法で、岩国は押しつぶされそうになっている。国が約束した三十五億円の補助金がカットされ、市民に動揺が広がっている。岩国の実情を知ってほしい」と全国行脚を開始した。また在日米軍再編推進特別措置法の施行に関し、今後の国との交渉については、「住民の安心、安全の確保が中心的な課題。その点で納得できるよう協議したい」と主張、民間空港再開には「米軍再編と完全にリンクしている現状では、再編に一定の方向性が出るまで、これ以上進めることは困難」と明言した。

米軍基地再編に対する自治体や住民の怒りが、たたかいを引き起こしているのである。

▼A 不屈に闘う「反戦の砦」・三里塚

「反戦の砦」として軍事空港反対闘争を担いぬいてきた三里塚闘争も、戦争国家化攻撃の中で、その重要な位置を浮かび上がらせている。

 新日米軍事同盟が実体化されようとし、国民保護法―「国民保護計画」が地方レベルで具体化される中にあって、三里塚空港は派兵拠点―軍事空港として位置付け直されている。三里塚現地においては、成田国際空港会社の暫定滑走路延伸攻撃が、新誘導路建設として着工された中で、頑としてたたかいの旗をかかげ続ける主体である農民つぶし・叩きだしの攻撃がさらに強まっている。本年二月以降、東峰の森破壊攻撃が進められてきた。これは、東峰の森だけの問題にとどまるものではなく、萩原さんをはじめとする東峰地区の農地を囲い込み、農地・農道、集落のつながりを破壊する攻撃にほかならない。市東さんに対する耕作権強奪攻撃もそうである。「訴訟」の形をとっているものの、農地法を「根拠」に企業(空港会社)が農民から農地を取り上げようとする前代未聞の攻撃である。

 これらは戦争国家化情勢への突入の中で、不退転のたたかう主体・三里塚農民を、日帝―国家権力が心底恐れていることを示すものなのだ。

▼B 新たな胎動を開始する労働者階級人民の闘い

 かつて反戦・反基地闘争で平和勢力として大きな力を発揮してきた労働運動は、大きな時代的変化の中で、一国平和主義と企業内労組主義の限界を露呈し、後退と停滞を余儀なくされてきた。国鉄民営化―国労つぶしにはじまる戦後労働運動の背骨をたたきおる攻撃の中で、日経連の「新時代の日本的経営」にみる雇用形態による労働者の差別・分断・競争の徹底した導入もあいまって、労働運動は団結・闘争力を破壊され、政府と企業への交渉力を失い、組織率18%にまで低下した。労働者の三人に一人が、パートや派遣や契約など様々な名前を持つ非正規雇用労働者となり、年収百五十万円以下が全労働者の四分の一となり、さらにはワーキングプアと呼ばれる、働いても生活していけない労働者が大量に生み出されてきた。「ネットカフェ難民」といわれる労働者の数は、厚労省の推計で五千四百名という数字が出ている。セーフティーネットのないまま、失業・半失業からカフェ難民化、野宿へは紙一重であり、高齢者のみならず青年・女性・障害者などの社会的弱者が、このような境遇に突き落とされている。このような中から今、かつての企業内本工(男性)を中心にしたものではない、新たな主体による労働運動が胎動しはじめている。全国各地で、青年や女性、フリーターや日雇い派遣、偽装派遣や偽装請負の労働者たちが、「人間らしく生きさせろ!」と叫んで、たたかいを開始している。しかし「固定化された格差社会をくつがえす希望は戦争だけだ」という声も、その内部からあがっている。政治闘争と経済闘争を固く結合させ、階級・大衆の希望・展望を切り拓くことのできる階級的労働運動の再建は、いまや緊要の課題となっている。

 独占資本利益拡大と戦争国家化の進行の下で、社会保障や福祉は削減の一途を辿り、被差別大衆をはじめとする社会的弱者の生存権はギリギリのところまで脅かされている。自立支援法という名の障害者切り捨て攻撃、特措法打ち切りと徹底した部落解放同盟破壊攻撃、母子加算手当て削減などシングルマザーの難民化など、弱者は死ねという攻撃が拡大し、社会は荒廃を深めている。しかし他方、これらの被抑圧人民・被差別大衆自身が、自らの生存と尊厳を求めて立ち上がり、小泉や安倍をはじめ独占ブルジョアジーの太鼓持ちたちが触れてまわる`弱肉強食a`自己責任aという歴史の反動・暴虐としか言いようがない社会ビジョンに対し、正面から`NO!aをたたきつけている。

▼C反動攻撃に対する民衆の怒りと闘い

 戦争国家化と弱肉強食―生存権破壊は、対になって進行する事態である。この反動諸政策は、労働者・住民・若者、障害者や女性などの被差別大衆を、政府に対する怒り、現在の資本主義制度への怒りへとたゆまなく引き入れる。

 日帝―安倍は、侵略戦争国家化に欠かすことができない「国のために死ねる人間」を育成するために、「日の丸・君が代」強制に反対する教育労働者を処分し「良心の自由」を叩きつぶし、また侵略の歴史を美化することに躍起となっている。そのために、あるいは戦時下で行われた軍隊性奴隷制(軍の強制による慰安施設への女性拉致など)の具体記述の削除、「本土防衛の捨石戦」として行われた沖縄戦における住民への集団死強制の事実の削除など、戦争の実相を消し去ろうとしている。それは、現にこれを体験してきた被害者やその周辺に、激しい憤りを生み出している。沖縄では、島ぐるみで抗議闘争が燃え広がっている。アジア諸国からは、軍隊性奴隷制の被害者とさせられた女性たちが、高齢をおして怒りの告発を強めている。

 敵支配者階級は、あらゆる民衆そして労働者大衆を立ち上がらせながら、このような独占資本主義―帝国主義社会ではなく、労働者階級や被差別大衆を主人公にした社会を建設していくことの必要性を、ますますハッキリと問いかけるのだ。その答えが民主党・小沢や、現在の社共(スターリン主義や社民勢力)の中にないことは明らかだろう。帝国主義―独占資本によって推し進められているグローバリゼーションと新自由主義がもたらす災禍に対し、いま全世界でたたかいが行われている。それは国境を超え、様々な試行錯誤や挑戦を行いながら、帝国主義世界を打倒し、次の社会―社会主義社会を世界が獲得することができるまで、やむことなく前進し続けるだろう。

 九月十五日には、アメリカANSWERが、イラク即時撤兵を求める全米行動を開催し、全世界に同時行動が呼びかけられた。また国際民衆闘争同盟(ILPS)がWTOやAPECなどに対する国際行動を行っている。つい先日、その議長であるホセ・マリア・シソン氏が亡命先のオランダで逮捕・投獄されるという事態が起こっており、世界各国で抗議行動が展開されている。アジアにおいては、フィリピン・韓国・台湾・インドネシア・ネパール・日本などの民衆団体によって構成されるアジア共同行動(AWC)が、全ての米軍基地をアジアから撤去させる共同行動や、日本の再侵略を許さないたたかいの一つである憲法九条擁護の`アジア・メッセージ・プロジェクトaなどを展開している。

 これらと固く結合しながら、自公政権の侵略戦争国家化の攻撃と生存権破壊に対し、十月闘争の爆発でもって、とどめをさしてやらなければならない。


●第3章 10月闘争の勝利を闘いとろう

 今秋期闘争は、危機に立つ安倍政権と真っ向対決し、日本階級闘争の歴史的な一歩を切り拓く闘争としていくことが必要である。まさに十月闘争は、その帰趨がかかっているのだ。

 中曽根が「戦後政治の総決算」を掲げ、日本労働運動の支柱を砕き根腐れさせ、反戦政治闘争もろとも戦後階級闘争構造を崩壊させてから二〇数年。今、「戦後レジュームの転換」を掲げ、侵略戦争国家への最終的攻撃に手をかけんとする安倍政権との、きわめて重要なたたかいの局面に日本労働者階級は立たされてきた。敗戦後、当時の支配者たち(天皇・財閥・官僚・政治家)の延命のために利用された`平和と民主主義aの建前をかなぐり捨て、帝国主義支配強化とふたたびの海外侵略へと大きく支配を転換してきた日帝―独占資本に対し、この二〇数年、反戦・反基地闘争は国境を超え、若者・女性・非正規雇用の労働者・失業者・野宿者などをも労働運動の仲間・解放闘争主体として含む真に階級的な労働運動の萌芽が育ち、被差別大衆の解放闘争も改良主義をはねのけ次の社会を建設する主体としてのたたかいを育みつつある。反帝・国際主義、階級的労働運動と被差別大衆の自己解放闘争を、ガッチリと結合した「新たな階級闘争構造」を形成し、日帝―独占資本を打倒し、これにとって代わっていく一時代を準備することが必要である。その長い道のりにとって、今秋の連続する十月闘争は、きわめて重要なのである。

 全力挙げて成功を切り拓き、反戦・反基地、反帝闘争の前進、アジア共同行動と階級的労働運動、被差別大衆の自己解放闘争の前進をたたかいとろう。帝国主義―独占資本と労働者・民衆との日常的な攻防の中で、階級としての形成、階級の団結、被差別大衆との社会的結合、階級の反撃陣形―各地区・全国の階級闘争構造を築き上げていこう。

▼@沖縄闘争の前進を勝ち取ろう★

 九月二十九日、沖縄では大規模な県民大会が開催される。

 アジア太平洋戦争末期の沖縄戦で起きた住民の集団死強制を巡る教科書検定問題で、検定意見の撤回を求める沖縄県民大会として開催される(宜野湾市・海浜公園)。八月九日にも同趣旨の県民大会が行われているが(県庁前広場三千五百名)、この時点で、検定意見の撤回を求める意見書は、県内四十一市町村議会中、二十議会が可決、署名は三万人以上である。沖縄人民の怒りの深さが示されている。文科省に検定意見の撤回を求め、十一月までに印刷される高校日本史教科書からの削除を阻止する構えである。

 この時期は、北部の辺野古や高江地区の、米軍基地強化とのたたかいも煮詰まる時期である。「集団自決の削除」も「住民無視の米軍基地強化」も根っこは同じである。歴史歪曲は、ふたたびの侵略戦争への踏み出しという現在の支配者の野望から生み出されている。辺野古・高江の米軍基地再編をめぐる攻防と結びつけ、沖縄闘争の前進をたたかい取ろう。

▼A三里塚闘争に勝利しよう

 そして十月七日、三里塚全国集会である。三里塚では、先述したように不屈にたたかう農民つぶし・追い出し攻撃が、執拗に行われている。これに対し、反対同盟と支援連は、連日の抗議行動、連月闘争をたたかい抜いている。

 大地に根を張って、軍事空港を許さない三里塚農民のたたかいは、安倍政権と対決する反戦闘争―反基地闘争の重要な環である。そしてまた、安倍`構造改革路線aの下で進む貧農イジメ・農民殺しの最先端を形成するたたかいでもあるのだ。「反戦の砦」三里塚闘争を解体する攻撃を打ち破り、三里塚から、戦争国家化を阻止していこう。全国から結集し、三里塚闘争勝利の道を切り拓こう。

▼B反帝闘争の前進を勝ち取ろう

 十月八日、反戦闘争実集会が行われる。

 この時期、`テロ特措法粉砕、自衛隊撤兵、米軍再編強化反対・新日米軍事同盟にNO、沖縄連帯aを掲げ、帝国主義の侵略戦争路線全体に対するたたかいの場を作り上げていくことは、きわめて重要である。拡大する労働者・民衆の反抗を、帝国主義―独占資本と真にたたかいぬく階級闘争へと形成していくことは簡単なことではない。反帝・国際主義派による共闘と政治闘争を担い、ともに発展させていこう。

▼C反戦集会を反基地・反改憲闘争と結合させよう

 また今日の戦争国家化攻撃が進む中で、この秋は各地で反戦や反基地、反改憲の集会・闘争が行われる。一章でも述べてきたように、テロ特措法延長、米軍基地再編、改憲は、侵略戦争遂行の三つの欠くことができない重要環として存在している。

 安倍政権の改憲攻撃は、米軍再編と一体である。現憲法と日米安保の矛盾を、安倍政権は改憲攻撃をもって突破しようとしている。そして、共和国敵視攻撃を強める安倍政権は、現憲法破壊―集団的自衛権行使を、朝鮮戦争を想定した日米共同作戦の具体化・実戦化を通して進めているのである。反戦や反基地や反改憲のたたかいをそれぞれの部分にとどめるのではなく、しっかりと結合させなければならない。そして、現在すすむ日帝の侵略戦争遂行国家の道をうち砕く、強力な反帝闘争の成長を促進していくことこそが必要なのである。

 10・21国際反戦デーを中心に、全国で様々な反戦行動が行われる。首都圏では、十月辺野古闘争連帯集会、横須賀基地フィールドワークなども行われる。関西では、十月十四日、「戦争あかん!基地いらん!」大阪集会が、十月二十一日、「このままでええの!日本と世界・反戦共同行動in京都」などが開催される。各地でこれらのたたかいに参加し、反戦・反基地・反改憲を連携させ、反帝・国際主義、階級闘争派の大きな流れを形成していこう。

▼D10・27―28岩国現地に総力決起しよう

 そして今秋期十月二十七―二十八日、米日帝の米軍基地再編の要となる岩国現地において開催される「アジアから米軍総撤収を!日米軍事同盟に反対する岩国国際集会」に、総力で決起しようではないか。アジア共同行動日本連主催のこの集会は、政府のみならず地元議会・自民党や商工会議所からの攻撃に耐えながら、「米軍基地は要らない」という住民投票の意思を守ろうと奮闘する岩国の市民、住民団体、労働組合などを激励するものとして準備されている。

 海外から、同じ闘争課題を共有する韓国・フィリピン・台湾・米国のたたかう団体からの代表も参加する。まさに米日帝による軍事同盟と軍事基地再編成に、真っ向から対決する国際共同闘争としてたたかわれるのだ。岩国米軍基地の目の前で、「米軍は要らない、アジアから撤収しろ」と、日本労働者・民衆の意志をはっきり示す闘争だ。アジア諸国民衆、そして本国アメリカの労働者・民衆も、「ここに米軍はいらないから、即刻、出て行け」と声高く宣言するのである。プラカードを持ち、旗を持ち、岩国と世界の民衆に、そして米軍基地内に、たたかいの声を響き渡らせよう。

 前日二十七日には、岩国基地フィールドワークが開催されるとともに、米軍基地再編と改憲・侵略戦争国家化とのたたかいの強化を求め、学生団体や労働運動の交流会も組織されようとしている。米軍基地とは、切っても切り離せない軍事基地と性暴力問題を、参加者すべての課題とする提起も行われている。侵略戦争国家化とたたかう労働運動・学生運動・女性運動が、その旗を鮮明にして登場しようとしている。
 これらに応え、沖縄から、岩国から、神奈川から、安倍政権の朝鮮戦争準備を突き破っていくたたかいの前進を実現しよう。戦争の基盤―軍事基地建設・強化を阻止することが、改憲攻撃そのものの根拠を粉砕していく。米軍基地再編阻止に全国で立ち上がり、安倍改憲政権打倒へと進撃しよう。

 

 

 

 

 

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