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『戦旗』第1320号(2009年1月20日)




  大量解雇―貧困化攻撃を打ち破れ

 イスラエルのパレスチナ人民虐殺弾劾!

 ソマリア沖派兵阻止! 麻生政権打倒




 ●1章 労働者への犠牲押し付けを許すな


 サブプライムローン問題を契機とした金融危機は全世界ですさまじい勢いで進行している。ブルジョアジー自らが、「世界経済はかつてない危機的な状況に直面している、日本経済も当面、厳しい状況が続いていく、世界同時不況の様相を呈している、これまで営々と築き上げられてきた資本主義経済にとって脅威である」(〇九経労委報告)と危機の深さに驚愕している。現在の危機が新自由主義の破綻にとどまらず、資本主義が本質的にもつ商品生産、過剰生産に根拠づけられた危機であり、従来の金融、流通システムの解体や、一国にとどまらない世界的な資本主義の危機であることを認識しているからである。

 帝国主義ブルジョアジーにとって危機の突破は、全世界の労働者階級に対し直接的に生存を脅かすような搾取、収奪の強化、戦争動員を不可避としている。労働者階級のこれに対する反撃の闘いは、国境を超え生活と雇用、反戦・平和のために生存をかけたたたかいと、資本主義、帝国主義打倒、社会主義の実現という体制選択を全面に掲げた労働者階級の国際的なたたかいとして発展していくことが不可避だからである。

 帝国主義ブルジョアジーは、「百年に一度」と自ら認めるような危機にのたうちまわりながら、その突破策が、自らの墓掘り人としてのプロレタリアートの形成を促進するという本質的な危機に直面している。

 昨秋のリーマンブラザーズの破たん以降、日本でも金融危機の影響は極めて大きなものがある。GDP実質成長率が〇八年一―三月期で前期比で年率2・4%増が七―九月期では年率1・8%減となり、輸出が一月は前年同月比7・7%増から十一月の前年同月比が26・7%減へ、鉱工業生産が一月は前年同月比2・2%低下から十一月は8・1%の低下へ、新車販売は一月の前年同月比3・7%増が十一月には27・3%減へ、百貨店売上高の前年同月比が一月2・1%減が十一月は6・4%減へ、日経平均株価は一月が約一万四千六百九十一円から十一月は八千七百三十九円へ、円が一月は百九円から十一月には八千七百三十九円となった。わずか十カ月という短期間にもかかわらず、経済指標は軒並み大幅に悪化している。

 労働者とりわけ不安定雇用労働者に対してはすさまじい大リストラ攻撃が進行している。〇八年十一月から十二月にかけて自動車産業、電機産業など日本経済の牽引車といわれる主要各社で、派遣労働者、請負労働者、期間工などの有期雇用労働者に対する解雇、賃金労働条件切り下げの攻撃が発表された。

 トヨタでは連結企業で九千八百五十人、トヨタ・グループ総計で一万千六十人の人員削減計画が進められ、日産では〇八年十月末には二千人が働いていた国内工場の派遣社員などの非正規社員を〇九年三月までに、ゼロにすることを公表している。ホンダでも国内工場に四千五百人いる期間工を〇九年二月までに千二百十人を削減するとし、マツダでは生産ラインと事務・技術部門で働く約千四百人の派遣社員の雇い止めを強行している。いすゞでは国内工場で働く派遣労働者、期間工千四百人を中途解約を含め〇八年十二月末で全員解雇するという方針を発表した。しかし当該労働者の反撃、労組結成などにより、中途解約のみ撤回したが、雇い止めの方針を変更はしていない。

 ソニーでは全世界でエレクトロニクス事業に従事する正規社員十六万人の5%にあたる八千人の削減、全世界の非正規社員も八千人規模で削減することを発表している。東芝では派遣、期間社員八百人、NECでは半導体子会社で派遣社員、約千二百人弱、パナソニック電工では正社員五百五十人、非正規社員四百五十人、TDKでは〇九年三月末までに派遣社員千人の削減が決定されている。御手洗日本経団連会長のキヤノンでも、大分工場で千百人の請負の労働者が職を奪われている。それ以外でも、シャープ、日立、富士通、サンヨーなど軒並み非正規労働者をはじめとする人員削減が予定されている。

 この結果、厚生労働省の調査によれば〇九年三月末までに失職する非正規雇用労働者は、八万五千人に達するといわれている。それは非正規雇用労働者の削減にとどまらず、すでに一部計画の中に組み込まれている正規社員の削減へと進んでいかざるを得ない。今、進行している非正規雇用労働者の解雇は、減産にともなう経費削減の側面もあるが、正規社員を解雇するために整理解雇の要件を満たすための側面もあることを見過ごしてはならない。追い詰められた日本経団連の御手洗などは、〇九年初頭からワークシュアリング容認の発言をおこなっている。これは正社員に対し「解雇されたくなかったら賃下げに応じよ」と言っているに等しく、更には正社員の賃金切り下げによって、いずれ訪れるであろう景気回復期においても低賃金構造の維持をもくろむためのものである。



 ●2章 大企業こそ社会的責任を取れ


 日帝ブルジョアジーによる、「国際金融危機」「百年に一度の危機」を口実にした派遣労働者、期間労働者などの不安定雇用労働者にたいする解雇攻撃は、許すべからざるものである。それのみならずリストラによって自社防衛に走り内需を冷え込ませ、景気低迷の主要因を率先して作りだしている。大企業が雇用責任どころか日本社会全体に対する責任を一斉に放棄し、自社防衛に突きすすみ、それが日本経済の更なる悪化要因になっているという悪循環が生み出されているのだ。この間、標榜されてきたCSR(企業の社会的責任)など全くのお題目に過ぎないことが暴露されている。我々は日帝ブルジョアジーの手前勝手なやり方を全面暴露し、彼らを社会的に追い詰めていく必要がある。そして多くの解雇された期間工、派遣労働者が、路頭で苦しみ、そして生活の不安を抱え苦悩しているのは、単なる「世界金融危機」という抽象的な観念ではなく、「強欲資本主義」といわれる大企業の経営者たちの強欲の結果であることを暴露し批判していく必要がある。労働者の大量解雇はその意味で日帝ブルジョアジーが作り出した人災である。

 第一に、これだけの大量解雇で労働者を路頭に迷わせながら、自社の資産価値防衛のために大手企業は増配か、配当維持をおこなっていることである。

 マスコミなどから「人より株主優先」と批判されながら、共同通信の調査によればトヨタなどの自動車七社、キヤノンなどの電機・精密九社など日本を代表する大手企業十六社のうち、増配が五社、前期実績維持が五社をしめていることが報道されている。増配を予定しているのは大リストラを進めているソニーやパナソニックであり、キヤノンも前期実績維持となっている。新自由主義にもとづく株主重視が今日に事態の一因であるにもかかわらず、株主を優遇することによって株価を維持し、自社の資産価値を守ろうとするブルジョアジーの反社会的行動を許してはならない。

 彼らは〇七年に「希望の国、日本(御手洗ビジョン)」などで、「清貧は尊敬すべき信念の一つであり、倫理性を欠いた制限のない蓄財は、貪欲や拝金主義として退けなければならない」「現在の教育においてもっとも欠けているのは克己心、公徳心の涵養という視点……、自己中心的な考えが蔓延し、他人に迷惑をかけないといった最低限のモラルも守られているとはいいがたい」と、つい二年前に得々と自らが主張していた。これだけ労働者を大量解雇しながら、自社の価値の維持のためだけに、株主配当を増配、維持することは反労働者的であることのみならず反社会的であり、「最低限のモラルも守られていない」というということである。これは一部の企業ではなくトヨタ、キャノンなど歴代の日本経団連会長企業も含む、日本を代表する大企業が率先しておこなっていることである。解雇された非正規雇用労働者は、この配当の原資に使われたということである。まさに株主と資本の利益のために労働者の雇用と生活は破壊されている。

 新自由主義にもとずく株主優先の論理によって、リストラしなければ株価が下がり、減益でも配当を維持するか増配しなければ株価が下がり、自社の資産価値が下がるという、新自由主義・強欲資本主義の法則に縛られ社会を混乱と荒廃の極みに追い込めているのが、今の大企業である。

 第二に、許しがたいのは、整理解雇の要件を満たすほどの経営危機にはおちいっていないにもかかわらず、非正規雇用労働者を解雇し来るべき危機の回復過程に備えて内部留保の確保を推進していることである。

 新聞報道にあるようにこの間の派遣労働者や期間労働者の解雇はほとんどが、国際金融危機による減産と自社の資産価値の暴落を理由としている。しかし前述した主要十六社の内部留保は〇八年九月末で三十三兆円にも達している。〇一年度末には十七兆円であり、ほぼ倍増したということである。

 トヨタなどは〇八年三月期には過去最高の二兆二千七百三億円の利益をあげ、〇七年度の内部留保は十三兆円九千億円を超えているといわれている。〇〇年以降の八年間で株主配当を五倍に、内部留保を二倍にしている。この主要な原動力になっているのが期間社員などである。トヨタが期間社員を本格的に導入しだしたのは、〇三年からであり、トヨタ本体で八千人から一万八千人、トヨタグループ全体では、四万人から八万七千人へと増加している。そしてトヨタ本体の正社員の平均賃金が八百三十万円であるのに対して、期間社員は二百二十万円から二百五十万円といわれている。トヨタはアメリカをはじめとする外国市場での需要の増大を、期間社員などの不安定雇用労働者の全面的な投入によって莫大な利益をあげてきたのだ。その期間社員を、本年度千五百億の赤字見通し、減益だから雇い止めで解雇するというのである。そして契約期間の満了だから法的には問題がないと主張している。自動車産業の期間工の仕事などは、臨時的でも、一時的でも、補助的でもなく、常時存在する中心的な業務であり、期間の定めのない雇用契約である正社員の仕事を、経費削減のために無理やり有期雇用としてきただけである。現に多くの労働者が契約期間の反復更新を重ねてきたのであり、期間工だから雇い止め可能だというのは詭弁にすぎない。そして期間工の契約を更新したからといって、トヨタが整理解雇の要件が当てはまるような経営危機におちいるわけでもない。

 更にこの間、進行しているのは契約期間満了の雇い止めだけではなく、法律違反の中途解約が進行している。細切れ雇用で二カ月、三カ月の雇用契約が大半であるにもかかわらず、それすら満了せず、中途解約しているのである。ほとんどの中途解約の場合、残り一カ月というケースが多いが、一カ月の賃金など時給千円から千二百円前後、月額にすれば二十万円前後、千人解雇してもわずか2億円であり、数千億から数兆円の内部留保をもつ大企業にとって経営危機に至るような問題ではない。解雇された労働者は野宿者になる可能性もある。しかし大企業はそれも承知、法律違反も承知で労働者を解雇している。

 大企業はこのようにして、雇用の流動化により増大した派遣労働者、有期雇用労働者、滞日外国人労働者を低賃金でこき使い、バブル崩壊後の史上最長の好景気を作り出し、莫大な内部留保を蓄積しながら景気の低迷で減産になれば情け容赦なくコストカットと称して解雇し、路頭にまよわせているのだ。
 第三に、派遣法改悪に象徴される雇用の流動化政策の反労働者性、反社会性が全面的に明らかになっていることである。

 九五年の「新時代の日本的経営」以降、雇用の流動化が一挙的に進められた。非正規雇用労働者は労働者数の37・8%に達しており、その象徴ともいえる派遣労働者は三百八十四万人となっている。そのなかでも仕事があるときだけ雇用契約を結ぶ登録型は二百八十万人と言われている。派遣労働の問題点はいまさら指摘するまでもないが、千円から千二百円と言われる低賃金、不安定雇用であることによる生活不安、それゆえ一般的な家庭生活を送ることが困難なこと、技能が蓄積されないことなどである。総じて低賃金非熟練労働者として固定化され、競争社会では社会の最底辺に強制的に隔離される存在にされる。更に日雇い派遣になれば低賃金だけではなく、一日単位の仕事しかなく「ネットカフェ難民」といわれるような住居の維持すら困難な貧困状態に追いやられる。このような問題がありながらも、派遣労働は景気拡大と正社員の派遣労働者への置き換えの中で増大した。近年、「ネットカフェ難民」などで一部、社会的に顕在化していたが、本質的な問題点である低賃金がもたらす貧困とそれによる「社会からの排除」という問題は覆い隠されてきた。今回の大量解雇によって期間工や派遣労働者とはいえ、日本を代表する大企業で働いていた労働者のうち少なくない数の労働者が、解雇されれば住む場所もない、野宿者になりかねない、社会的に排除されかねない、という境遇で大企業によって働かされていたということが社会的に暴露されてきたのである。

 「新時代の日本的経営」はこのような低賃金の不安定雇用労働者を大量に作り出し、大企業に莫大な利益を確保させてきた。それのみならず彼らは「規制緩和」や「小さな政府」を掲げながら、法人税切り下げ、社会保障の企業負担の軽減などの様々な資本優遇策を強行し、労働者人民に対するさまざまな社会政策を切り下げてきた。今の日本社会には大量の失業者を救済する社会的なシステムなどは極めて貧弱なものとなっている。このような状況であるにもかかわらず大企業経営者は、「企業には限界があり解雇された労働者の救済などは社会や国の役割である」と強弁している。

 労働者を必要なときだけ使い、自らの糊口をしのぐのに精一杯で、家族を維持し市民として労働者として社会の一員として社会参加することなど不可能な低賃金を強要し、社会保険や税などの公的負担は極力抑え込むようなやり方で企業利益を確保し、労働者と社会を疲弊させるようなやり方はもはや通用しなくなっている。日帝ブルジョアジーも労働者と社会への利潤の再分配を怠った結果、ワーキングプアー、子供の貧困、シャッター商店街、限界集落、医療崩壊、などの問題が噴出し、良質な労働力の確保と、生産性の高い社会、安定した社会が解体し、その修復に膨大な労力と資金が必要となることについては各種の政府報告などで認めざるを得なくなっている。しかし日帝ブルジョアジーにもはやその余力はない。深まる世界金融危機は、大企業各社のコストカットとそれによる資産価値の防衛以外の選択肢を与えないからである。そのことは労働者に対する搾取と収奪の強化によって、そして最終的には戦争によって事態を突破するということであり、労働者の生存をかけたたたかいとの正面対決にならざるを得ない。



 ●3章 先進的な労働者、労働組合の闘い


 第一に、解雇された労働者、雇い止めに直面する労働者の労働組合への組織化を促進していかなければならない。

 昨秋からの派遣労働者の解雇、契約社員の大量解雇に対し反撃の戦いが開始されている。御手洗キャノンで解雇された労働者やいすゞで解雇された労働者は労働組合に結集してたたかっている。各地のユニオンや地域合同労組でも中途解約や雇い止めに対する労働者の反撃を開始している。

 日比谷の「年越し派遣村」のたたかいは年末、年始、寒空に身一つで放り出された労働者を支援しながらマスコミに大々的に報道され、労働問題だけでなく今回の「派遣切り、期間工切り」がもつ、「滑り台社会」としての日本社会の深刻な問題を鮮やかに社会的に暴露することに成功した戦いもある。

 しかし圧倒的に多くの解雇された労働者は戦いに立ち上がる以前に、貧困ゆえに職探しに疲労困憊しているのが現実である。労働組合がたたかいをよびかけても、二カ月、三カ月の細切れ雇用契約が多い現状では中途解約を撤回させても一か月から二カ月の賃金であり、派遣労働者にとってはそれに時間をかける余力はなく、新たな就職先を探すほうが重要となっている。そのような現実がありながらも彼らにたいするあらゆる生活支援、労働問題をつうじたかかわりの中で労働組合への組織化を呼び掛けていかなければならない。

 今後も、彼らの労働条件の向上は簡単には見込めず、常に生存ギリギリのところまで追い込められるのは不可避である。このような彼らにとって労働組合は重要であり、原則的で良心的な労働組合はその役割をはたせるよう全力で努力しなければならない。

 第二には、「ナショナルミニマム(国民最低生活保障)」をはじめ、労働者保護、社会保障、福祉制度の再構築のたたかいを推進していかなければならない。

 新自由主義政策の推進により、住宅、医療、教育、福祉、社会保障などのあらゆる公共サービスの市場化が進行し、低賃金労働者にとっては利用しがたいものとなっている。他方、職場では慢性的な人員不足で、労働強化が進行している。

 その結果、今回の派遣労働者の解雇でも顕在化したが、解雇は単に職を失うだけではなく、住居を喪失することと直結し、職が見つからなければ野宿者へと追い込められる労働者が多数、存在することを暴露した。またユニオンや地域合同労組での最近の労働相談では解雇とメンタルヘルスの問題をはじめとして、様々な生活問題に対応すること抜きに労働問題が解決できない事例も増大している。解雇、労災、賃金未払い、メンタルヘルス、住居、子育て、など複合的な問題を抱え、労働組合に相談して、最初の取り組みが生活保護の申請闘争というケースも少なくない。

 労働組合はこのような問題に対し、医療者、自治体の福祉担当者、野宿者支援の仲間、宗教者などと広範な支援のためのネットワークを形成し、協力しながら、住居を失っている労働者、メンタルヘルスで苦しむ労働者、その他、様々な生活問題で苦しむ労働者を支援していく必要がある。

 同時に、これらのたたかいを推進しながら、新自由主義で奪われた社会福祉、社会保障制度、労働者保護制度の再構築のたたかいを、全国的な社会運動として推進するとともに、当面は「ナショナルミニマム(国民最低生活保障)」の実現を要求していく必要がある。

 第三には、新自由主義の「競争社会」ではない、労働者が人らしく生きられる新たな社会構築のたたかいを呼び掛けていく必要がある。

 新自由主義の破綻が明らかになっているにもかかわらず、ブルジョアジーの危機突破の選択肢は新自由主主義そのものの解決手法であり、それは社会を混乱させ荒廃させていかざるをえない。それのみならず、放置され、労働者のたたかいが弱ければ、戦争によってその突破が図られんとすることは歴史の教訓でもある。

 新自由主義の破綻を多くの労働者、民衆が自覚しているとき、「行き過ぎの是正」など様々に装った資本主義の手直しではなく、社会主義こそ今日の事態の根本的な解決策であることをわれわれは強く訴える。そのたたかいは全世界の労働者が団結して、資本主義、帝国主義を打倒するたたかいから開始されなければならない。
 

 

 

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