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『戦旗』第1322号(2009年2月20日)




 大量解雇―貧困化攻撃を打ち破れ! 危機に瀕する麻生政権打倒

 ソマリア沖派兵阻止

 米軍再編実施協定粉砕!

 反「日の丸・君が代」卒・入学式を闘おう





 戦争と金融恐慌の中で、米帝の新大統領にバラク・オバマが就任した。新自由主義グローバリゼーションがおしつけてきた生活破壊に対する労働者階級人民の怒りを前にして、ありとあらゆる手段を使ってアメリカ帝国主義を延命させようとしている。

 われわれは、労働者階級人民の利害に立って、戦争と貧困化攻撃に対してたたかう。労働者階級人民に対する貧困化攻撃を強め、同時にソマリア沖自衛隊派兵に突き進む麻生自公政権を打倒しよう。



 ●第1章 危機の中で就任した米帝オバマ


 一月二十日、バラク・フセイン・オバマ・ジュニアが米国新大統領に就任した。昨秋からのサブプライムローンをきっかけにした金融恐慌はさらに深刻化しており、イラク侵略戦争・アフガニスタン侵略戦争が泥沼化している中での就任だ。オバマは、経済はもちろん、政治・軍事、国内階級支配の危機の中で、「変革」への展望を示して国民統合=階級融和を図ろうとしている。しかし、オバマの言う「変革」とは、帝国主義の根幹には手をつけることのない、帝国主義的政策の部分的修正に過ぎない。オバマは、経済政策として、野放図な金融資本に対する規制、大資本に対する資本注入と労働者階級に対する一時的な再分配、「グリーン・ニューディール」による産業構造の転換を推し進めようとしている。外交においては極端な一国主義を放棄する。ブッシュ政権が極限まで進めた新自由主義グローバリゼーションは、米帝自身の足元を掘り崩していったわけだが、これを修正し、帝国主義国家としての存続を図ろうとしているのだ。

 オバマ自身が就任演説の中で、「なぜ、六十年足らず前だったら地元のレストランで食事をさせてもらえなかったかもしれない父を持つ男が、神聖な宣誓のためにあなたたちの前に立つことができるのか」ということが「私たちの自由と信念の意味だ」と述べたように、非白人初の大統領就任は米国民にとっては歴史的な変革を意味するだろう。六四年の公民権法成立―人種隔離政策廃止に象徴される、米国内での非抑圧人民の抵抗闘争が勝ち取ってきた地平を、オバマを大統領職に押し上げた要素のひとつにあげることはできるだろう。少なくともこの一点においては、部落差別主義者の麻生太郎が首相にしがみついている日本よりは、ずっとましだ。

 しかし、オバマは、その融和主義的な演説においても、自らが米帝国主義の代表であることを明示している。「わずかな財産を荷物にまとめ、新しい生活を求めて海を越え……私たちのために、彼らは汗を流して懸命に働き西部を開拓した」と、ネイティブ・アメリカンの虐殺を覆い隠し、ヨーロッパからの侵略と「西部開拓」を賛美している。さらに、独立戦争、南北戦争とならべて、第二次大戦、そしてベトナム戦争を語り、これをアメリカ人の「奮闘」「偉大さ」として讃えた。そして、圧倒的な軍事力と「頼もしい同盟国」と「強固な信念」によって、「先人たちがファシズムと共産主義を屈服させた」と語ったのだ。

 これが、オバマが総括するアメリカの歴史であり、米帝大統領の歴史観なのだ。米帝国主義の侵略反革命戦争を肯定し、反共産主義を反ファシズムと同次元で捉える。そのことによって国内の階級分化―支配を覆い隠し、米帝国内をまとめあげる体制をつくりあげ、米帝が直面している危機を突破しようとしているのだ。

 われわれは、オバマが振りまく幻想に惑わされることなく、彼の階級的立脚点をしっかりと批判し、米帝オバマ政権と対決していかなくてはならない。

 そして、今の米国の惨状は、米帝を中心にした戦後世界支配体制そのものの危機として発現している。新自由主義グローバリゼーションの結末であり、ブッシュの単独行動主義に基づく無謀な侵略反革命戦争の結果である。単に、国内の階級融和で解決する事態ではない。

 一九四四年のIMFと世銀の設立、そして米ドル中心の固定為替相場制を軸としたブレトン・ウッズ体制がはじまるが、これが一九七一年のニクソンショックによって破綻し、世界経済は変動相場制へと移行した。ここから、擬制的基軸通貨である米ドル発行権を握る米帝が中心となって、新自由主義政策を推し進めてきた。そして、八九年の冷戦体制の崩壊を契機に、利潤獲得―更なる資本蓄積を唯一の動機とする巨大資本が、全世界を搾取の対象として動きまわることで、世界中を荒廃させてきたのだ。帝国主義国が推し進める新自由主義グローバリゼーションは、国際的には貿易による生産物の移動を自由化―関税の免除、投資の自由化、国内的には法人税の減免などによって、ブルジョア支配体制を維持するために巨大資本が支払うべきコストさえも免除し、労働者人民の生活を全面的に破壊してきた。第三世界を主な対象として、次第に帝国主義国内をも対象に、資本が利潤を蓄積する一方で、労働者人民の生活を破壊し、社会を空洞化―荒廃させてきた。さらに、金融資本に対しては、投資銀行の巨大化をテコにして、これまで商業銀行にかけられていた規制をなし崩し的に撤廃していった結果、ITバブル・住宅バブル、そしてサブプライムローン問題に発する現在の金融危機を引き起こしている。それに対して、ブッシュ政権は、自ら唱導していた新自由主義の原則に反する資本注入を金融資本に行いながら、住宅を失った労働者を「自己責任」の名の下で放置している。こうした状況で、世界規模では失業者が二億人を突破しようとしている。国際労働機関(ILO)の報告では、〇八年の失業者数一億九千万人から四千万人増加する見込みだというのだ。にもかかわらず、全世界のブルジョアジーたちは、あくまで「過剰な規制」を拒否し、新自由主義グローバリゼーションを押す進めようとしている。

 資本は利潤を獲得し続け、拡大し続けなければ生き残ることはできない。しかし、そのような利潤獲得―蓄積を第一とする資本を中心とする社会である限り、労働者人民に押し付けられる不条理を取り除くことはできない。このような資本主義社会の本質を表面化させたのが、新自由主義グローバリゼーションであり、その帰結である現在の世界的な経済危機である。オバマは、こうした事態を引き起こした資本主義を根本から変えようというのではなく、帝国主義国としての戦略を少しばかり転換しようと言っているに過ぎないのだ。

 また、今の米国の惨状は、ブッシュの単独行動主義に基づく無謀な侵略反革命戦争の結果でもある。「対テロ戦争」を喧伝しながらアフガニスタン侵略、イラク侵略と立て続けに侵略反革命戦争を引き起こしながら、自らの力で終結させることができないでいる。ブッシュの単独行動主義が完全に破綻したことは明らかだ。

 オバマは、単独行動主義の極みであるグアンタナモ基地の収容所を閉鎖し、イラクからは十六カ月以内の撤兵を掲げている。しかし「対テロ戦争」については継続していくことをはっきり示している。米軍の展開について、イラクからは十六カ月以内に撤退させる一方、アフガンへは増派させ、現在の三万千人から倍増させようとしている。つまり、「対テロ戦争」を維持しながら、その主戦場をイラクからアフガンに転じようとしているのだ。また、オバマ政権の国防長官は共和党のゲーツであり、ブッシュ政権からの留任となる。オバマがやろうとしていることは、ブッシュの戦略の手直しでしかなく、「対テロ戦争」方針そのものは引き継いでいくということだ。ブッシュの単独行動主義によって傷ついた帝国主義の中心国としての地位を回復させようということであり、まずはアフガン侵略反革命戦争を完遂するということだ。

 ブッシュ政権がおしすすめた米帝のイラク・アフガニスタンをはじめとする「対テロ」戦争が、中東情勢を大きく規定してきた。ブッシュが強行した米帝の先制攻撃を見ながら、イスラエルはパレスチナへの武力攻撃を繰り返し、分離壁をつくり、パレスチナ人民に対する抑圧を強めてきた。今回のガザ空爆、地上侵攻、無差別殺戮も、ハマスを「イスラム過激派」規定して強行してきた。これに対して、米帝は国連決議にも棄権するなど、イスラエルを擁護する立場を貫いた。大統領に就任したオバマも、まっさきに「イスラエルの自衛権を常に支持する」と表明している。イスラエルの犠牲者が十三人で、パレスチナでは千三百人以上が犠牲になっているという現状を無視して、「イスラエルに向けたロケット攻撃の恐怖と同じように、パレスチナ人にとって希望のない将来も耐え難い」と述べた。また、大統領就任直後に、パレスチナのアッバス議長には電話したが、ハマスとは連絡をとってはいない。何よりもまず「イスラエルの安全」を第一に考え、そのための「中東和平」というのがオバマの考えであることが明らかとなっている。

 われわれは、千三百人以上のパレスチナ人を殺戮したイスラエルを強く弾劾するとともに、この殺戮を支えた米帝を断固として弾劾していく。イスラエルの抑圧支配を許さず、解放闘争をたたかうパレスチナ人民にこそ連帯していこう。米帝の中東植民地支配の貫徹としての「中東和平」など絶対に許してはならない。



 ●第2章 政権末期状態の日帝―麻生政権


 一月二十八日、麻生は施政方針演説を行った。小泉がおしすすめた構造改革―新自由主義政策が破綻し、その実態が明らかになっていくなかで、労働者階級人民の怒りは深まり拡大している。今年はじめに行われた世論調査では、すでに内閣支持率が二割をきり、不支持率が七割に達しようとしている。一定程度の支持率を当て込んで解散総選挙に打って出ようとした麻生政権は、当初の任務を果たせなくなっている。こうした状況下で、麻生の施政方針が示されたが、日帝―政府がなんら方針を示しえず、打開策を持たないことが明らかとなった。

 日帝ブルジョアジーは世界金融恐慌のなかで、そのツケを労働者人民に押し付けようと躍起になっている。トヨタをはじめとする製造業の首切りが横行している。厚生労働省は、今年三月までの六カ月間で十二万四千八百人の非正規職労働者が失職すると予測している。こうした状況に対して、麻生は施政方針演説において「当面は景気回復、中期的には財政再建、中長期的には改革による経済成長」と述べたが、麻生は定額給付金をはじめバラマキ政治で、労働者人民の怒りをごまかそうとするしか手がない。空前の利益を上げてきた大企業に対して行ってきた法人税減税など、一連の大資本優遇策は変更しようとすらしない。その一方で、経団連は基礎年金をすべて消費税でまかない、そのために税率を17%まで引き上げるべきだという改革案を出している。新自由主義・構造改革を基本路線とするかぎり、階級対立の拡大は不可避だが、世界金融恐慌のなかでブルジョアジーは労働者人民に対する攻勢を強めている。こうした事態に対して、日帝―政府は内需拡大などという小手先の手法で乗り切ろうとしているが、それさえまともにできないのが麻生政権の末期的状態を表している。

 経済政策で危機的状況に陥っている日帝―麻生政権は、海賊対策としてソマリア沖に海上自衛隊を派兵しようとしている。ソマリアはかつて、南北に分断され、イギリス・イタリアの植民地にされていた。一九六〇年に南北が独立し、後に統合してソマリア共和国が建国されたが、エチオピアとの戦争、内戦が絶えず、そこに米帝が軍事介入してきたが、いまだに中央政府が存在しない状態が続いている。そうしたなかで、一九九〇年代初めに欧米の大企業がソマリアの政治家・軍幹部と交わした廃棄物投棄協定がある。その内容は、企業がソマリア地域沿岸に産業廃棄物を投棄できるというものだ。欧米現地で廃棄物を処理した場合の四百分の一のコストで済むため、放射性廃棄物を含めて大量の産業廃棄物が投棄され続けている。このような大資本による無法状態を放置しながら、「国際協力」の名の下で自衛隊の海外派兵を強行しようとしているのだ。

 麻生政権は海賊対策新法なる新たな派兵法案を画策するとともに、この立法の前にも「海上警備活動」を援用して派兵を強行しようとしている。自民・公明は「海賊対策プロジェクト・チーム(PT)」を一月九日に発足させ、二十日の会合で、自衛隊法の「海上警備行動」を発令して海自護衛艦をソマリア沖に派遣することを了承し、二十二日の会合で正式決定して首相に要請している。二十八日には派遣準備命令を出し、一カ月後には海自艦船が出航していくことになる。防衛省は武器使用基準などの法整備を求めているが、首相および自民党側が「とにかく護衛艦を出せばいい」と派兵を強く主張し、「海上警備行動」での派兵が強行されようとしている。これを受けて、防衛省は二月八日から調査団を派遣した。二隻の護衛艦のみならずP3C哨戒機の派遣、さらに、海上自衛隊の特殊部隊と位置づけられている「特別警備隊」の派遣を画策している。そして麻生政権は「海賊対策新法」案の作成に入っており、三月上旬には、国会に法案を提出しようとしている。麻生がやろうとしていることは、まず解釈を拡大して既成事実を作り、後追いで立法化し正当化しようというものだ。公務員の天下りを禁止した法律を省令で破壊した問題でもそうだが、麻生には、ブルジョア法秩序を守ろうという意思すらない。

 麻生政権は、昨年十二月十二日に給油継続法成立を衆議院再議決で強行している。さらに今、ソマリア沖派兵をなそうとし、今後、米オバマ新政権のアフガニスタン増派方針に応じて地上軍派兵をも強行しようとしている。政権末期状況にある麻生政権は、派兵―参戦に突き進み、「外交的成果」での延命を図ろうとしているのだ。貧困化と戦争の攻撃を劇的に強めようとしている麻生政権を許さず、麻生政権打倒を掲げて立ち上がろう。



 ●第3章 米軍基地撤去! ソマリア沖派兵阻止


 米新政権の下で、ナイが駐日大使に就任した。ナイは、ブッシュの単独行動主義を批判してきた。しかし、それは、決して米軍の軍事覇権を否定しているのではない。クリントン政権で国防次官補であった九六年には日米安保の「再定義」を主導し、〇〇年と〇七年の二度にわたってアーミテージ・リポート作成にかかわっている。ナイのブッシュ批判は、外交の一環として周到な戦略の下で、米帝の利益にかなった戦争を行なえと言っているにすぎない。ナイは、戦争だけでなく、あらゆる外交的手段をもって、同盟国・日帝を米帝の利害のために利用するだろう。また日帝も、こうした米帝の要求を利用し、国内の米軍基地再編―強化、自衛隊強化を推し進めようとするだろう。

 われわれは、オバマ政権の世界戦略を注視しつつ、これまでの反基地闘争の地平をもって、米軍再編粉砕の立場を貫いてたたかう。

 まず、辺野古新基地建設阻止のたたかいに立ち上がろう。まったくデタラメな環境調査を強行している日帝―防衛省は、〇九年度予算案で埋め立て護岸整備のために二億五千万円を計上している。二〇一四年の再編完了から逆算すれば、ここで計上しなければ新基地建設計画が頓挫するのだ。九六年から十二年間たたかい続けてきた基地建設反対運動に追い詰められている、日帝―防衛省の米軍基地建設強行を許さず、辺野古現地闘争と一体となって、新基地建設阻止に立ち上がろう。高江ヘリパッド建設に対しても粘り強いたたかいが継続している。沖縄では一月二十日、「ヘリパッド建設反対! 沖縄防衛局の住民弾圧を許さない1・20県民大会」が開催され、五百人が立ち上がっている。昨年十一月に沖縄防衛局がかけてきた不当弾圧を粉砕し、ヘリパッド建設に反対し座り込みを続けている住民とともに立ち上がろう。岩国では、一月十六日に山口県都市計画審議会が「愛宕山都市計画事業廃止」を許す不当な答申を下した。岩国市民をだまし、住民財産を防衛省―米軍に供出させる米軍住宅建設を絶対に阻止しなければならない。岩国市民と一体となって、『愛宕山の米軍住宅化は絶対に許さない』請願署名を全国で進めよう。

 米軍再編を強行しようとする日帝―防衛省に対峙して住民のたたかいは、各地で広がりと深まりを増している。われわれは、日帝の侵略反革命戦争への急激な傾斜を絶対に阻止すべく、各地住民と結合してたたかっていく。政治・軍事・経済のあらゆる面で危機に瀕し、それゆえに強権的に海外派兵を強行する日帝―麻生政権を打倒するたたかい、米軍再編を粉砕するたたかいに立ち上がろう。



 

 

 

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