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『戦旗』第1341号(2010年1月1日)





 恐慌化で強まる搾取・抑圧、貧困化と戦争攻撃に反撃せよ

  帝国主義・資本主義の世界的危機をプロレタリア世界革命運動の前進へ

  ブントの旗を掲げ社会主義・共産主義運動を復権・再構築せよ





 ■年頭論文―1章

 21世紀初頭の国際情勢―世界恐慌の進行と新たな世界の再編成




 ▼はじめに


 二十一世紀の初頭、二〇一〇年の現在、〇八年から始まった世界恐慌は帝国主義国、資本主義国、これに連動する官僚制国家の危機回避の諸方策にもかかわらず、依然として克服の方向にはなく、不安定性と深刻化の度を増している。百年に一度、すなわち、一九二九年の世界大恐慌に比すべき世界経済の破綻的事態が現在、進んでいる。また開始された米帝国主義とこれに連合する諸国によるイラクとアフガンへの大規模な侵略戦争は、しかし、頑強に抵抗するイスラム人民の存在によって破綻の淵に立たされている。二〇一〇年の世界情勢の特徴は戦後六十年以上にわたって中心国として世界を編成してきたアメリカ帝国主義の力が後退し、徐々に没落し、戦後体制が終焉し、新たな二十一世紀の帝国主義世界体制、資本主義体制の形成へと向かう過渡期に突入したということにある。また重要な特徴はこれと同一の重要性をもって、全世界の労働者階級、被抑圧民族・人民が一九一七年ロシア革命の成立とその後の一連のプロレタリア革命の発展、そして崩壊、挫折という歴史を越えて、現在、二十一世紀的な在り方において、国際的な意味を持って帝国主義と資本主義に対抗する自己解放の運動を開始したことにある。

 現代の共産主義者がなすべき世界情勢分析とは明らかに、資本主義の成立と発展と没落の歴史的位相を解明することであり、これと一体化して労働者階級と被抑圧民族・人民の運動の自己解放性、革命性と可能性を明示することにある。すなわち一方の側面においては、十八世紀に成立した資本主義体制の発展・変遷、具体的には産業資本主義段階、帝国主義段階、そして戦後世界体制、二十一世紀の現段階の特徴を、それぞれの段階における世界体制のメカニズムとその有機性、循環と蓄積の構造を解明し、そこから必然化する危機とそれとの連関における労働者人民に対する抑圧の特徴を明確化していくことである。また他方の側面においては、この抑圧と連関した労働者階級と被抑圧民族人民の抵抗運動、解放運動の自己解放性の特徴と勝利の可能性と必然性を解明し、同時に、プロレタリア革命運動において主体的に蓄積されてきた運動内容、とりわけ第一インターのたたかい、一七年ロシア革命の成立、第三インターのたたかい、戦後の中国を始めとする民族解放―社会主義革命運動の前進などの諸特徴を意識化し、二十一世紀の現在の革命の基盤、エネルギーを分析し、ここから革命的な方向(綱領・路線)を突き出していくことにある。

 資本主義社会の成立以降、労働者階級と被抑圧人民の自己解放運動は、帝国主義国の革命運動の敗北、ロシア革命の崩壊、中国革命の変質などの幾多の困難を経ながらも、新しい抵抗運動の形をもって展開されている。運動は不屈に前進している。それゆえに、共産主義者は「二十一世紀の現代世界は依然として資本主義から社会主義、共産主義への歴史的な過渡期である」という歴史認識を確信的に打ち固めることができるし、この確信を広く訴えていくことが重要なのである。共産主義者は、「プロレタリア革命の可能性と必然性」をその物質的基盤から分析、解明し・中身を提示していかなければならない。



 ▼一節 中心国米帝―多国籍資本の後退と新たな世界再編の始まり


 二〇一〇年の世界情勢の特徴はおよそ以下の通りであるだろう。

 その第一は戦後世界を中心国として編成、支配してきた米帝国主義の世界編成能力が〇八年世界恐慌とイラク、アフガン侵略戦争の失敗、泥沼化を二大要因にして著しく後退し、今後、世界は中心国米帝の後退下における帝国主義世界体制、世界資本主義体制として展開されていくことにある。九〇年代から二〇〇〇年代にかけて米帝―多国籍資本は「グローバル資本主義」の循環と蓄積の構造の確立を第一義とし、新自由主義政策の遂行、金融にかたよった金融資本の自由な活動の獲得、製造業における多国籍資本の世界的競争激化の政策を展開してきた。その結果、労働者への搾取の強化、非正規化など労働者階級の貧困化、社会の格差拡大が著しく促進され、また、経済の投機化が促進された。また第三世界の急速な資本主義化が進行した。グローバル資本主義の拡大、深化は生活破壊においやられる労働者階級の反貧困、反格差の運動を全世界で拡大させる結果をもたらし、また野放図な金融の証券化を手段とする信用拡大政策は金融恐慌を発生させ、自己崩壊の姿を示した。

 また軍事的には「百年の計」をもって石油資源の獲得とイスラム革命の拡大発展の制圧を目的とした、中東への侵略と軍事的支配の確立の政策は、パレスチナやイラク、アフガンなどイスラム人民の抵抗運動によって決定的な破綻に追い込まれつつある。またこれとは別に、中南米などの第三世界における反米、反新自由主義を掲げるチャベス政権などの反米左派政権の拡大に対する軍事的展開力の弱体化とも連動し、帝国主義、多国籍資本はその支配と搾取の空間を一層後退させるに至った。

 世界は中心国米帝の没落下における世界再編の時代に入ったのである。世界では「対テロ戦争」というの名の、人民の抵抗運動や民族解放運動に対する侵略戦争の激化や、投機的資本の一層の拡大と経済のギャンブル化、投機資金による金や石油、鉱物資源の高騰、農産物の高騰、ゼロ金利に近い異様な低金利政策の促進、大企業の救済や内需拡大の財政政策とこれにともなう財政赤字の空前の拡大などの資本主義の危機的状況がうみ出されており、事態はより一層深刻化していくだろう。重要な点は「対テロ戦争」はアフガン戦争において実際行き詰まり、基軸通貨ドルが徐々に下落していることだ。もちろん米帝―多国籍資本は中心国からの没落、転落を認めるものではなく、あくまでも中心国の位置の防衛のための諸政策、巻き返しの世界再編成の政策を政治、軍事、経済の全領域で大規模に展開していくだろう。軍事力を発動しての「対テロ戦争」という名の第三世界への侵略戦争の拡大政策や、異質な資本主義国家として台頭する中国の取り込み政策の推進、また環境政策における新産業の形成とこの分野での他国資本との競争における勝利の追求などである。米帝はあくまで「ドル基軸通貨体制」を防衛し、グローバリゼーションを掲げた争闘戦を一段と強める方向をとる以外に道はないのである。

 その二はドイツ、フランス、英国などの欧州や日本などの世界編成能力のない諸帝国主義は、グローバル資本主義に連結しつつも、一方で「地域的な連結、連合のブロック形成」を一段と強めている。今回の世界恐慌で打撃を受けた欧州連合(EU)では、危機打開のために、昨年十二月、この間頓挫してきたリスボン条約を各国が批准し、政治的、法的整備一体化が進み、EU大統領が選出された。現在ユーロ圏ではスペインやバルト三国、ポーランドなどの周辺国では経済的な崩壊状況にあり、また中軸のドイツ、フランスにおいても戦後最大の財政政策を打っているにもかかわらず、景気後退をとどめることができない。財政破綻と失業者の拡大を軸に社会の不安定性は高まっている。また米帝と一体化し「金融立国」を目指したイギリスは今回の金融恐慌によって深刻な打撃を受け、その打開の政策を持ち得ていない。また日本では「東アジア共同体」を掲げて鳩山政権が誕生し、米帝との軋轢にもかかわらず、アジア外交を強めている。また民主党政権の財政政策によって対GDP比で最悪の財政赤字、借金を抱えた日本の国家財政は一層悪化する。ここでも財政破綻と失業者の拡大という資本主義の危機が進んでいる。米帝の世界編成能力の後退は一層、欧州各国帝国主義、日本帝国主義や中国、ロシアなどの資本主義強国の生き残りをかけた地域統合、合従連衡の動きを加速させ、戦後世界体制、直接的にはソ連崩壊以降の世界体制、世界秩序は解体と再編へ向かう。世界の不安定性を拡大させていくことは明らかだ。

 その三は中国が資本主義化を一段と加速し、資本主義強国、資本主義大国として歴史的に登場してきたことである。十九世紀の清朝の没落以降の中国の復権である。二十一世紀の世界資本主義体制は中国を外しては分析し得ない。世界恐慌にあえぐ各国帝国主義、資本主義国、多国籍資本は今や「中国を第二のアメリカに」とばかりに、四兆元の財政政策に群がって、利益を確保するためにしのぎを削っているほどなのである。十一月のAPECではわざわざ、「中国の経済成長は他国にとって好ましい」ということを声明に盛り込んだ。中国は〇九年GDPで日本を抜き世界第二位(約五兆ドル)になることは確実であり、また日本の七千五百十億ドルを抜く七千九百八十億ドル(〇九年九月)の、最大の米国債保有国となっている。米帝はあくまでも資本主義強国として台頭しつつある中国を取り込むために、「戦略的対話」やG2体制、G4体制を目指しているといわれている。現在の国連安保理体制―常任理事国体制の護持とIMFの改革(額の拡大と出資比率の若干の変更)による取り込み政策である。中国の入らないG8では今や何も決定できず、その決定力はG20に移行している。しかし中国社会は決して安定しているわけではない。中国経済は低賃金を梃にした輸出主導型経済であり「格差の大国」であり、その資本主義的基盤は脆弱であることも確かだ。また政治的自由の欠落した極端な独裁国家であり、労働者階級、農民は全国各地で生活防衛、行政の腐敗追及の大規模な反乱を展開しているが、これは警察によって無慈悲に弾圧され鎮圧されている。少数民族への弾圧、同化攻撃も激化している。共産主義者は何よりも政治的自由を要求してたたかわなければならない。

 もちろん中国以外のBRICs諸国やVISTA諸国などがグローバル資本主義に連結し著しく資本主義化し、世界資本主義に占める位置が一層拡大している事実がある。世界の成長センターとしてのインドを含む東アジアが「世界恐慌の克服のための需要拡大地域」として資本家たちの危機脱出の期待を集めている。とくにASEAN10は低賃金を梃にして高い経済成長を依然として続けている。労働者階級の大量の形成は資本主義的矛盾を拡大させている。

 その四は二十一世紀に入って、全世界の労働者階級、被抑圧民族・人民の解放運動が新たなうねりを持って開始されたことである。九〇年代のソ連崩壊と中国の資本主義化以降の左翼の後退、帝国主義者、資本家とその手先の席巻という国際階級闘争の後退状況をようやく脱したのである。破綻を深める帝国主義、資本主義に対抗して、左翼とその他の勢力によって労働者、人民の抵抗運動が拡大し、支配者の政策を破綻に追い込める情勢を切り開きつつある。その第一は帝国主義諸国、韓国など進んだ資本主義諸国において、「対テロ戦争」「新自由主義」「グローバリゼーション」に対抗して労働者階級人民が抵抗運動を拡大し、政府や資本の好き勝手な搾取、抑圧に対して生存権をかけて自己解放に立ち上がったことだ。米国本国を中心にイラク反戦闘争が全世界で数百万の規模でたたかわれ、米帝がイラクから撤退する大きな根拠をつくった。また新自由主義政策の下に生存すら脅かされる労働者、とりわけ下層の、非正規の労働者は強力な反撃を開始し、この政策に打撃を与えている。反戦闘争、労働運動、諸人民の運動の形成と発展を基盤にして革命的労働者党、左翼勢力も全世界で力を増している。現下の世界恐慌の下にあって労働者の失業は拡大し続けている。米国では十パーセントを超え、EU諸国も同様であり、日本は五パーセントを上回ってきた。政府の彌縫策にもかかわらず、工場が閉鎖され数百万、数十万単位で失業者が拡大し、正社員は削減され非正規の不安定雇用の労働者が著しい勢いで増えている。労働者の生活破壊はより深刻化している。たたかいと反乱は不可避となっている。

 その五は反帝、反資本主義の運動において民族解放運動が独特な形で全世界で広範に形成されてきたことだ。その中でも中南米における反米、反新自由主義を掲げる人民運動、貧困層のたたかいが一定成功し、反米、非米の左派政権を相次いで誕生させていることだ。ベネズエラ、ボリビアをはじめブラジル、アルゼンチン他ほとんどの国で旧来の米帝―米軍と結託し、民主主義運動、労働運動の活動家を虐殺、暗殺してきた独裁政権が打ち倒された。もちろんキューバは社会主義を掲げた政策を継続しているし、ベネズエラのチャベス政権は二十一世紀の独自の社会主義を掲げて、石油産業の国有化、貧困層の生活向上、福祉政策の拡大、土地革命、生産手段(工場)の協同組合的所有と共同生産などの労働者人民の解放の諸政策を実現している。重要なことは米帝―多国籍資本が独裁政権と結託して新自由主義政策の下に労働者と人民を徹底的に搾取し収奪し、ここで利益を上げてきた過去の体制を打破したことであり、また中南米諸国の緩やかな連合によって米帝が軍事的に介入できない構造を実現してきていることだ。明らかに事態はロシア革命の波や中国革命の波と同一の時代的波が到来しているといって過言でない状況なのだ。ここには二十一世紀の社会主義革命を創造していくに際しての、重要な人民の革命的エネルギーの表れがある。

 その六は民衆の抵抗運動において、イスラム主義を掲げる政治勢力が台頭し、この中で、反米(反帝国主義)を掲げるイランなどのイスラム勢力が政権を獲得し(七九年イラン革命)、また現在、米帝侵略軍に対する武装抵抗運動を展開しているという事実である。帝国主義とグローバリゼーションに抵抗する一つの運動として大きな位置を占めるに至った。パレスチナ、イラク、アフガニスタン、パキスタン、アフリカで活動が強まっている。

 もちろんこれらの抵抗運動が目指しているものは、現在のイラン政権、政治体制に端的なように、イスラム体制を支えている民衆的基盤、すなわちウンマを基盤にしたイスラム社会建設にある。すなわち前近代的、また前資本主義的関係性にあるイスラム指導者と民衆の自給自足的社会関係の建設、イスラム的小共同体の建設にある。それは近代大工業制とそこでのプロレタリートの成立と拡大を基盤にした労働者人民の解放、革命、これを通した社会の建設とは全く異なるものであ。またしかし、実際上その抵抗運動はヨーロッパ型近代化に抵抗し、一定の政治的勝利を手にしているのも確かなのである。

 実際は、反米を掲げるイスラム諸国ではイラン、イラクなどに示されるように、石油資源の高騰が大きな国家建設のテコとなっており、国際援助も同様であり、今日のグローバル資本主義と強く結びついている。そして労働者階級人民の解放運動、共産主義者や左翼にとって何よりも重要なことは共産主義に対する排他的な攻撃の点であり、一部は反共テロリズムの性格をもって作られていることだ。また、ヨーロッパ的民主主義を否定すると言う点において、共産主義者、左翼とは対立する。労働者階級、農民、民衆そして左翼はあくまでも排他的なテロリズムに対決し、政治的自由を要求してたたかわなければならない。政治的自由の欠落は労働者階級の運動、階級形成にとって本質的な敵対であり、その体制は打破されるべきもの以外ではない。また労働者階級の世界的なたたかい、共産主義者の世界的な勢力の拡大と革命国家の建設によってこそ、急進的イスラム主義の限界性は初めて突破される。帝国主義、国際石油資本と親和的なイスラム主義を掲げるアラブ穏健派は一般に王族支配を強化して、グローバル資本主義に結びつき、外国人労働者を搾取して延命しており、もとより打倒の対象である。

 その七は、二十一世紀の帝国主義世界体制、資本主義世界体制の展開にとって、環境問題(直接はCO2増加―地球の温暖化問題)が体制の危機をはらむ問題として重要な位置を占めるに至っていることだ。もちろん環境破壊の問題をCO2問題―地球温暖化問題に一面化するのは帝国主義、多国籍資本の意図であり、われわれ共産主義者は他の環境破壊、被曝労働や放射能漏れ、処理不能な核廃棄物を必然化する原発開発など国家と資本の政策を暴露し、批判していく必要がある。CO2を主とする温室効果ガスの増大問題は、もちろん、過去の公害問題とは異なる要素も持っているが、基本的には資本の利潤第一、生産費の削減による汚染物質の外部化と労働者、貧困層への犠牲の転化が基底にある。重要なことは、労働者人民の生活と生存をかけたたたかいにより、社会的に固定化された社会秩序、価値意識の力(関係)を変えていくことである。何よりも労働者人民の運動の力が必要なのだ。

 現在、帝国主義、多国籍企業は様々な対立をはらみながらも、基本的に資本の利潤獲得とその永続化のために、「温暖化問題」を欺瞞的に「解決」するための「対策」に踏み込む事で一致している。かれらは①あくまでも資本主義的生産の結果としての温暖化問題であることを押し隠し、あたかも文明の発展の結果であるかのごとく超階級的に押し出し、このコストを労働者人民におしつけようとしている。電気料金の値上げや省エネ家電の奨励、太陽光の装置の販売などである。②エネルギー転換に関わる点で自然エネルギー(太陽光、風力、水力)とともに原子力の開発を本格的に開始しようとしている、原子力が制御不可能な点を無視し、プルトニウムをはじめとする核廃棄物を大量に生み出す点を承知のうえで生産コストの低下を追求し、資本の利益を追求しようとしている。電機産業・電力会社など原発に利害をもつ資本が暗躍している。③第三世界の台頭する資本主義国、その資本の競争力を削ぐために、この環境産業の技術力や省エネ力を競争の原理にしている。先進国が環境技術を独占し従属させる手段にしようとしているのである。また④CO2の排出権取引市場を創設し、新しい信用創造、投機の場所を作り出すことである。多国籍資本、独占資本が市場を牛耳り、途上国の排出枠を買い叩く。現実の排出量の減少が小さいことは目に見えているのである。

 帝国主義国の多国籍企業が温暖化対策として新産業を作り出し、クリーンエネルギーへの転換を目指したとしても、そこでは資本主義的危機が必ず進行する。なぜなら石油石炭に依存した生産力、それは単にエネルギー分野だけでなく、原油精製に依存するナフサを原料とする化学産業などの多くの産業分野で高コスト化を結果する。また、石油、石炭に依存した現在の産業体系そのものを抜本的に転換しようとするならば、それは生産力の過剰化を必然化するからだ。この生産力の廃棄は、今日の資本主義の長期大不況を、ますます深刻化させる。また一般化した相対的に安価なエネルギー源がありながら、生産コストの高い自然エネルギーへの転換などのエネルギー革命が進むことは、過去の歴史には無かった。資本主義的生産の枠内では、石油の補完物として自然エネルギーを利用するのがせいぜいだろう。昨年の十二月、COP15で米国と中国が数値目標を出した。また日本の鳩山政権は対九〇年比二十五パーセントのCO2削減を国際公約として宣言した。帝国主義者は「温暖化」問題をも利潤追求の場として位置付け、大競争に身構えている。しかしこれは本質的な温暖化の克服の道などには決して結び付かない。



 ▼二節
 〇八年恐慌と二九年恐慌との違い
  ―レーニン帝国主義論と現代帝国主義



 〇八年の夏に始まった世界恐慌は現在、中心国アメリカ帝国主義と多国籍資本、さらにはこれに連なる帝国主義諸国、資本主義諸国の危機を拡大させている。事態は明らかに中心国米帝の没落下における帝国主義世界体制、資本主義世界体制の新たなる展開と再編へと向かっている。一九四五年の第二次世界大戦の終結をもって戦間期とは区別されて確立されていった戦後世界体制は明確に米帝国主義を中心国として、米帝と結合した米独占資本の力によって世界を編成していったものとみることができる。もちろん戦後世界体制は、米帝を中心とする「西側」の資本主義体制とソ連を中心とする「東側」の社会主義体制の対立の世界として直接は成立したものではあったが、根本的には資本主義、帝国主義が規定する世界であった。帝国主義世界ではドル基軸通貨体制が確認され、IMF/GATT体制による国際的な通貨体制、貿易体制が構築され経済的基礎が確立されると同時に、軍事的にはNATO、日米安保という形で体制が確立され、以降の世界編成の基礎が作られた。

 「社会主義体制」は四九年の中国革命の成立をはじめとする朝鮮、ベトナム、キューバなどにおける民族解放―社会主義革命の成功によって地理的に拡大し、またソ連圏においてコメコンやワルシャワ条約機構という結合の体制が作られたものの、根本的には全体の政治経済体制を有機的に構築することができず、中・ソ対立を重大な契機にして分散化し、アウタルキー化を招き、結局は、労働者階級の解放無き生産力主義の弊害を主原因にして帝国主義陣営に敗北し、ソ連圏は九〇年前後して消滅し、中国などは資本主義化して延命することとなった。

 帝国主義世界では六〇年代から七〇年代にかけて日本帝国主義―独占資本とドイツ(西)帝国主義―独占資本が製造業分野で復活し、米国の生産力を圧倒し始め、米帝は慢性的な貿易赤字と財政赤字に陥り、ドル危機を顕在化させていった。ニクソンの「ドル金兌換の停止」と「変動相場制への移行」と「中国の承認(常任理事国としての承認)」の声明は米帝の世界を編成する力の後退、戦後体制の再編を意味した。米帝の中心国としての位置を動揺させたのは七四―七五恐慌とベトナム侵略反革命戦争の敗北を二大要因にしたものであった。七〇年代の二度の石油危機とも相まってスタグフレーションが帝国主義国を覆った。

 そして八〇年代、日帝―独占資本は、米帝、多国籍資本の世界編成力、生産力の後退に付け込む形でME合理化―生産過程のロボット化を労働者階級の抵抗を解体して遂行し、ドイツなど欧州諸国が労働者の抵抗によって合理化に手間取る間に、国際競争力を飛躍的に高め一人勝ち的に膨大な貿易黒字とドル外貨を蓄積していったのである。米帝―独占資本は危機突破のために新自由主義政策に転換し、労働者階級からの徹底した搾取、また一切の国民(労働者階級と被抑圧人民)の社会福祉体制を破壊し、この賃金の低コスト化をテコに資本間競争に出たのであった。また対ソ連対決の戦争危機政策を強行し国際的な軍事的危機を煽り、軍拡を進めた。また、米国、英国では凄まじい労働者への攻撃が吹き荒れたが、これら諸国では製造業の生産力が回復することはなかった。

 しかしながら米帝―独占資本は九〇年代に入るや、クリントン政権によって中心国としての世界再編の本格的な巻き返しと新たな米帝的な世界秩序の構築に向けて、国家戦略局を作り政治経済軍事の全面にわたる政策を展開したのだった。その最大の柱は米金融(金貸し)資本の自由を獲得し、世界で利益を上げることであり、また知的所有権、世界標準を独占してIT産業を育成し他のそれを圧倒することであった。ITとは、もちろん、単なる製品の技術の革新ではなく、経済のサービス化を促進させ、ソフト開発で膨大な利益をあげることであり、この産業を育てることであった。九〇年を前後するソ連圏の崩壊と中国の変質という社会主義革命の圧力の後退、左翼・労働者人民の力の後退という条件はあったにしても、基本的にこの二大政策は貫徹され、以降、世界体制の経済的な基軸を占めることとなった。製造業での競争力によって決定付けられる旧来型の構造を転換したのである。その結果米国は軍事費の削減と相まって財政赤字を解消したほどであった。

 米帝・ブッシュ政権はこのクリントン政権の政策を一層進めると同時に、これに加えて〇一年の「9・11事件」を一要因にして、軍需産業の活性化と石油産業の活性化を目指して第三世界、中東―アラブ地域への侵略戦争に乗り出したのであった。イスラム急進派の民族抵抗運動と国家の樹立、その拡大の動きを帝国主義世界、資本主義世界を防衛する中心国として制圧することを掲げた。しかし、九〇年以降に米帝―多国籍資本を中心にした循環と蓄積の安定した世界体制、また第三世界の制圧による安定した世界体制が一旦は構築されたかに見えたが、これはイスラム人民の頑強な抵抗運動や現下の世界恐慌の爆発によって崩れ去りつつある。


 ◆<二九年恐慌と現在>

 一九二九年世界大恐慌は戦間期、全世界で何千万、何億の労働者階級人民を失業と生活破壊に追い込み、帝国主義諸国が自国の生き残りのためにブロック化を開始した原因として、また、世界的な金融経済の分断と縮小を果てしなく繰り広げ、最後は勢力圏拡大のための戦争、世界戦争に行き着いた原因として余りにも有名である。現下の世界恐慌が百年に一度などと資本家の側からいわれるほど、凄まじいものであり、ブロック化や帝国主義間戦争の現実性がいわれている。問題は現在のグローバル化した資本主義、帝国主義下における現在の世界恐慌の分析において、二九年恐慌とその後のブロック化、世界戦争を一般的な基準にして見てしまうことやアナロジーで見ることである。このような安易な姿勢は現下の危機の本質を見過ごすことに直結し、労働者階級人民のたたかいの任務を曇らせてしまうことになるのだ。二九年の帝国主義、資本主義の世界体制の特徴、世界の編成力をもった国家―中心国の問題や産業構造、また世界経済の循環と蓄積の構造を分析すること無くしては、現下の恐慌の特徴を明らかにすることはできない。

 二九年恐慌はアメリカの株価の暴騰による異様な信用拡大が崩壊し、株価が大暴落することを直接の契機としていたが、この危機は戦間期の世界体制、帝国主義世界体制、資本主義世界の構造的な問題点と脆弱性をあぶりだした。株価暴落によって当時再建ドイツに投資されていた米国の資金は急速に引き上げられ、ドイツの経済は一挙に破綻の様相を見せた。ドイツの戦争賠償は不可能となり、ナチス政権の成立は賠償を反古にし、ベルサイユ体制は崩壊する。

 三一年イギリスは金本位制を停止して管理通貨制へ移行し、ここと連合する諸国もこれに習う。三三年アメリカはルーズベルトが大統領になるや金本位制から離脱し、各国帝国主義の幣貨切り下げ競争と保護関税強化による世界経済のブロック化が本格的に開始されることになる。三三年六月の国際連盟によるロンドンでの世界経済会議はアメリカとフランス(金本位制の護持)の対立を軸に、列強の利害の不一致によって失敗に帰した。スターリング・ブロックとドル・ブロックを初め各帝国主義の通貨ブロックが形成され、貿易ブロックへと拡大し、経済圏の狭隘な日、独、伊は世界再分割へと傾斜していく。

 三二年二月国際連盟による軍備制限会議がジュネーブでアメリカ、ソ連を入れて開かれたがこの軍備制限会議はドイツとフランスの対立や日本の領土拡張路線に対する英、米の不一致、そして一般的には軍事力の増強による勢力圏の防衛、拡大という政策への衝動の強まりという情勢によって失敗に帰した。この間三三年三月に日本が、十月にはドイツが国際連盟から脱退した。

 このように二九年世界大恐慌はアメリカ帝国主義はもちろん、勢力圏であった中南米、そして日本帝国主義やアジアの植民地、従属国地域、ヨーロッパ帝国主義とその経済圏を巻き込んだ経済の大破壊であり、全産業分野に及んだ。また、二〇年代前半から慢性化していた農業恐慌と重なり、労働者や農民などの勤労人民は生活の破壊を強制された。まさに餓死者が出るほど深刻化したのである。工業生産は半減し三二年末には失業者が全世界で五千万人を超えた。世界市場の分断とブロック化、市場の縮小、国内の企業の倒産と失業者の拡大、階級対立の激化などである。そして、結局はロンドン経済会議とジュネーブ軍備制限会議が失敗し、それ以降、再分割戦争になだれ込んでいくのである。

 ここで二九年恐慌の基盤を明確にして、〇八年恐慌と比較していく。


 ★1 中心国イギリスの没落過程

 産業資本主義段階ではイギリスが中心国として世界を編成したが、一八九〇年代ころからドイツが重工業化を開始し旧来の繊維産業中心の構造を脱し、イギリスに生産力において上回る。また資本蓄積は遊休資本を取り込む株式資本化によって、また銀行資本と産業資本が癒着する金融資本という様式によって資本主義の新しい段階を切り開いた。ドイツに対抗してイギリス、フランス、アメリカ、ロシア、日本などの帝国主義が重工業化を開始して競争が激化する。イギリスは軍事力と金融力(基軸通貨ポンド)をテコに、また広大な植民地領有をテコに再編を目指すも、産業的基盤での急速な後退によって実現できなかった。戦間期とは、実際上はイギリス、アメリカ、ドイツの併存する中心国無き時代であった。帝国主義段階の成立は歴史的にいって世界編成の中心国が欠如して出発し展開していくこととなった。とくに戦間期は国際連盟の統合力の弱さ、ポンド体制の不安定性は顕著であった。


 ★2 基軸産業と蓄積様式

 鉄鉱石と石炭を原料とする製鉄業が現れ、繊維産業に替わる。一九〇〇年代に入ると鉄道、航路などの社会的インフラの整備が強化され、交通網は一段と発展した。本国のみならず植民地において鉄道を敷くことは帝国主義国家の競争に勝利する条件であった。また軍事兵器においても鉄は大きな比重を占めた。造船や重機械また鉱山の開発など大資本が必要となり、資本は巨大化し、独占資本が基軸を占める。ここでは銀行資本と産業資本が融合し競争によって寡頭制をとるとともに、株式会社化することによって資金調達を容易にし、産業資本とは異なって、金融資本的蓄積様式を生み出していったのである。

 ドイツではいち早く製鉄業が形成されイギリス、フランスを上回る生産力を確立していった。またアメリカではこれとは異なって、電機や化学を中心にして独占資本が形成された。鉄鉱業と鉄道を軸にした産業構造はドイツ以外の先進資本主義国の後追いするところとなり、植民地の敷設権が資本の発展の度合いを示すものとなった。資本は一層国家と結びつき、帝国主義政策(他の帝国主義との対立、植民地の解放運動の制圧)を促進させた。アメリカはすでに戦間期の二〇年代に他の帝国主義諸国とは異なり、自動車、家電の耐久消費財を軸とする産業を確立し、いわゆるフォード―テイラー方式に基づく生産と消費の循環構造を確立しつつあった。


 ★3 世界市場と国際通貨体制、金融体制

 ポンドが基軸体制ではあったが、金本位制の国際的な決済のシステムであって、何らかの別の国際的なシステムがあったわけではない。産業資本主義段階で中心国であったイギリスのポンドが一次大戦まで基軸通貨の役割を果たしたが、この大戦による疲弊によってその威信は低下した。代わってアメリカのドルが一定の比重を占めるようになる。

 金本位制は金の保有量によって通貨政策が著しく制約され、財政拡大政策を効果的に打つことはできなかった。戦間期の国際的な資金の流れは、ドイツの戦争賠償費をフランス、イギリスが収奪し、この費用をアメリカが戦費の貸し付けの返済として受け取り、この資金をドイツに投資するという資金循環の構造によって説明できる。ドイツはアメリカからの投資によってともあれ生産力を回復していくのであったが、二重の収奪にさらされていた。二九年恐慌はこの国際的な資金循環を崩壊させた。二九年の恐慌以降、各国は、フランスなどの一部を除いて金本位制から離脱し管理通貨制へ移行し、国独資政策を駆使した財政拡大政策をとることになった。


 ★4 国際的な同盟・国際機関と政治体制

 第一次世界大戦までは各国の帝国主義、いわゆる列強が自国の資本主義的発展をを求めて資本間競争と植民地への勢力拡大をのための合従と連衡を繰り広げるものでしかなかった。大戦で疲弊したヨーロッパ諸国は、ここからの脱出のために国際連盟を作り国際秩序の安定化を目指したのであった。しかし国際連盟にはアメリカ、ソ連が参加しておらず、その歴史的限界は明らかであった。またドイツの戦争賠償を強要するベルサイユ体制という国際秩序を護持する機関でもあった。このドイツへの抑圧、制圧の国際体制は、ドイツ国民の生活を永遠に奴隷化するものであって、体制の最大の不安定要因をなすものだった。アメリカは依然として国内の経済成長を重視する伝統的政策を維持していたし、革命達成後のソ連は帝国主義陣営とは対立しており、また国内経済建設に注力していた。また日本は中心国イギリスとの同盟を基本的に堅持してアジアでの勢力拡大を進めた。重要なことは、二九年恐慌を克服するべき国際連盟が呼び掛けた経済会議や軍備制限会議が失敗に終わったように、基軸的な帝国主義諸国が同盟、連合する世界システムはいまだ形成されてはいなかったことだ。


 ▼〈現代の資本主義と〇八年恐慌〉

 〇八年恐慌下の現在の帝国主義体制、資本主義体制との連関で分析すれば以下の通りだろう。


 ★1 米帝の没落と中心国概念について

 二九年恐慌は戦間期の中心国不在の時代の恐慌であった。イギリスは確かに産業資本主義段階においては基軸産業、金融、軍事において他の資本主義諸国を圧倒する力をもっており中心国として世界を編成(パックス・ブリタニカ)したが、一八九〇年代以降の帝国主義段階への移行にともなって、基軸産業の転換、繊維から鉄鋼への転換過程で他の帝国主義、ドイツに製造業における生産力で敗北し、これが金融力、軍事力に徐々に波及し、世界編成の能力を失ったのである。レーニンが分析した帝国主義とはこの時代のものであり、帝国主義国間における領土拡張競争と戦争による決着が一般的な傾向であった。世界資本主義の有機的な編成が損なわれ、不断に分極化、分断が進む時代だった。

 現在は確かに帝国主義段階であるが、戦後世界をアメリカ帝国主義が中心国として編成してきた世界であり体制である。戦後確立された体制は米帝の基軸産業の力、金融力、軍事力、これに伴う法体系や社会制度によって世界を統合してきた。しかもイギリスと違い、国際的な秩序を網の目状に構築し、米帝―多国籍資本が優位を確保できるシステムを作ったことだ。当初的には対労働者国家の封じ込めという性格をもっていた。基軸産業については自動車、家電などの耐久消費財を生産、消費するフォード・システムを生み出し、世界に普遍化した。素材革命、農薬の革新など新分野を産業化していった。もちろんこれらの製造業はキャッチアップした日本やドイツの独占資本によって競争力を失い崩れていく。ここに中心国としての米帝の動揺と没落の主要な原因がある。しかし米帝は九〇年代IT産業の確立とその世界的普遍化などの産業構造の転換で対抗している。

 金融力に関しては戦後圧倒的な生産力と金保有を基盤にしたドル基軸の国際通貨体制を確立、IMF・GATTによる通貨―貿易体制を確立した。現在再編され、貿易は世界貿易機関(WTO)下で交渉が行われ、またIMFの米国独占支配は各国の増資などの形で徐々に崩れようとしている。また金融資本、いわゆる金貸し・投機の金融部門を強化し、膨大な利潤を上げる産業に押し上げてきた。現状は、世界的に見て、生産分野での資本投下では確かに第三世界で高度成長が続いているものの、資本、資金は圧倒的に過剰化している。その結果利潤率は低下し、政府の貸出レートは異様な低金利状態にある。生産資本から遊離した資本の信用拡大、生産資本を収奪することで利鞘を拡大するという金融システムを、米帝は生み出し強化しているのだ。

 〇八年恐慌はこの金融システムの歪みの爆発であったが、投機化した資金は今、金、原油や為替へと向かっている。米帝は投機を促進することはあっても規制をかけることはできない。基軸通貨ドルは米国の構造的な大幅な貿易赤字によって不安定性を増し、また各国通貨に対して下落してきたが、〇八年恐慌によっていよいよ暴落の可能性が拡大している。しかし現在これに代わる国際通貨がない以上、グローバル資本主義の下ではドルが基軸通貨として機能していくしかない。地域ブロックの通貨としてユーロや元が比重を増していく。

 軍事力に関しては、米帝は戦後一貫して最大の軍事費を使い、また兵力に関してもNATOを通した軍事基地の保持と派遣、日米安保を通した日本―沖縄に基地と軍隊を保持している。全世界で兵力を展開できる唯一の国家となっている。ソ連崩壊後の二十一世紀の現在、米帝の軍事的枠に入らない中国が軍事費を拡大し地域的な大国となってきているが、その規模は圧倒的な差がある。また米帝は核兵器、ミサイル網に関しても、ソ連の崩壊によって圧倒的な力を保持している。


 ★2 産業構造の転換と多国籍企業 多国籍資本の概念

 耐久消費財を生産する自動車、家電などの分野が拡大し、戦間期の鉄鋼と石炭の産業構造を大きく変えた。いわゆる民需部門が大きな比重を持つ産業構造への転換である。ここでは六〇、七〇年代は日本、ドイツの独占資本の復活という形での国籍と資本が一体のものであったが、八〇年代日本の自動車産業が対米輸出を飛躍的に拡大させ米自動車産業の危機を作り出したとき、輸出規制に対抗して東南アジアへの資本投下、工場建設を強化し米国への迂回輸出を拡大したり、また直接に米本土において資本投下、工場建設に乗り出す事態を作り出した。日帝―自動車産業の独占資本は一挙に多国籍化し利潤の多くの部分を外国の生産に依存するようになった。この傾向はその後家電に続き、IT産業に至るまでより拡大して進んでいる。日本のみならず全世界の資本が多国籍化した。とくに先進資本主義間における相互投資は水平型であり、より多国籍化したといえる。もちろん多国籍企業とは無国籍化した資本では有り得ず、常に関税政策や税制などの国家政府の政策に規定付けられるものではあるが、その傾向は関税の撤廃や税制の世界的統一、市場の統一と拡大を求めるところにある。もちろん、また巨大な超国家的な企業からなる石油産業や軍需産業は多国籍化したり、国境を越えて合併したりして成立するものが多いが、しかしこれは国家の戦略や力によって直接の利害が左右されるものであり異なる。むしろ国家的対立、戦争の危機によって利益を拡大する傾向にある。


 ★3 国際連合―政治的な枠組み

 米ソ分割体制として成立した戦後世界体制は、帝国主義圏と「社会主義圏」が対立するものではあったが、一方で妥協と依存の体制でもあった。七二年に中国の国連復帰と常任理事国化は植民地の解放闘争の力を削ぐという点で戦後体制の妥協と依存の安定性を強めた。九〇年のソ連邦崩壊と中国の急激な資本主義化は体制間対立の妥協、依存の構造を失い、むしろ資本主義、帝国主義の国家的な連合と取引をする場となった。ドイツや日本は国連常任理事国入りを目指したがこれは排除され、米、英、仏、中国、ロシアの五カ国で構成されている。確かにNATOや日米安保の軍事政治的同盟や上海協力機構のような個別的な政治的結合ではないにしても、一種の世界的同盟、連合であり、国際秩序形成に大きな決定的な役割をもっている。国際連盟が簡単に崩壊した歴史とは異なる連合が形成されて、イスラム主義勢力よる民族的抵抗運動に対しては「対テロ」の名による戦争が共通の基盤になっている。

 二十一世紀の現代世界において、帝国主義、資本主義、また世界的な連関、循環のメカニズムは大きく変化している。世界恐慌の勃発、侵略と戦争の拡大、また抵抗運動、解放運動の拡大という新しい階級闘争の時代を生み出している。失業者の拡大、労働者の非正規化が資本の延命のために促進され、また第三世界への植民地的収奪の攻撃が強められていく。しかし労働者階級と被抑圧民族、被抑圧人民は新しい形態を持って全世界で反撃に出て、実際の勝利をつかんでいる。中心国、米帝が没落し世界の不安定化が進行するとき、全世界の帝国主義、これに連なる官僚制国家、資本主義国家は連合して危機脱出政策を採るだろう。しかしそれはあくまで資本を救済し現体制を維持していくためのものでしかない。労働者、人民の搾取と収奪によって生き延びようとするにすぎない。

 二〇一〇年、共産主義者は現代の帝国主義世界の危機、資本主義世界の危機をしっかりと見据え、労働者階級の解放、被抑圧民族の解放、被抑圧人民の解放―プロレタリア革命、世界革命の実現に向けて着実に頑強にたたかっていかなければならない。





 ■新年号論文―第2章

 恐慌と鳩山連立政権の成立―そしてわれわれの基本任務




 ▼一節 恐慌と社会主義



 〇八年のリーマン・ショックから一年後の九月、帝国主義国・日本で歴史的な政権交代が実現した。8・31総選挙で圧勝した鳩山民主党の連立政権が自公を退陣させて登場した。その二カ月後、菅・国家戦略相は、デフレを宣言した。長期の物価下落による日本資本主義経済の泥沼の危機が吐露された。前後して円高・ドル安、株安がつづき、ドバイ政府系企業の債務返済猶予問題(ドバイ・ショック)が発覚し、一ドル=八十四円台へと突き進んだ。円高・ドル安はいっそう進もうとしている。この半年間、G20による五兆ドル規模の景気刺激策・公共投資、銀行や自動車・電機など巨大独占資本へ国家資本投入などの救済策が実施された。他方、労働者人民には首切り・失業・住宅喪失・貧困化が激化した。その結果、各国で景気「底打ち」が叫ばれた。しかし、エコカー・エコ家電・新規住宅など補助金・減税など総額百三十三兆円の補正予算による景気刺激策が期限を迎え、その効果は急速に低下した。日本経済の景気回復期待感は、現在、一挙に吹き飛んでいる。中国など新興国やアジアでは経済成長が続く反面、米国や欧州でいまだに金融危機と大不況が続き、日本もまた出口の無い大不況を深めている。

 現代資本主義の未曾有の危機=恐慌が進む日本。大失業・貧困化が労働者人民へ押し寄せている。これは一過性のものではない。小泉など新自由主義を軸とした構造改革路線によって日本資本主義社会は破壊的に再編され、貧富の格差・二極化、労働者人民の雇用破壊―非正規化・貧困化が激化してきた。地方の経済や農業は、後退と崩壊を強めた。年収二百万円以下の貧困層が一千万人を越え、三割を超える労働者が派遣や有期契約・パート・アルバイト・非正規となった。そこへ世界恐慌が日本経済を飲み込んだ。「派遣切り」など非正規労働者の切り捨て・解雇が一挙に進み、職・住を失った労働者たちがホームレスとなり「派遣村」へ避難し、大きな社会問題となった。〇八年秋から今日まで、非正規労働者の解雇は政府統計で約二十四万人、実際は百万人を超える。そればかりではない。もはや正社員も「コスト削減」のもとで首切りされ、週一勤務・六日休みなどの操業短縮や自宅待機、賃下げが進んでいる。経済財政白書によると、昨年一月から三月の「企業内失業」が六百七万人。雇用調整助成金で約二百万の労働者の雇用がかろうじて維持されている。さる七月の完全失業率が過去最悪の5・7%、失業者約三百五十九万人を記録し、十月も5・1%、約三百四十四万人の高い水準にある。新規採用内定率が高卒で37%、大卒で62%でしかない。若者は十人に一人が失業である。すでに、職探しをあきらめた者を含めれば、実際の失業率は14%と言われている。そこに、デフレによる低価格競争・内需低迷が重なり、企業収益の悪化、労働者の賃下げ・残業代ゼロの長時間労働・倒産・首切りにはいっそう拍車がかかる状況である。雇用調整助成金など、さまざま対策の期限が来るなら、さらに膨大な失業者増が続く。

 世界恐慌と金融危機事態は、ますます日本資本主義社会の危機を深めていかざるを得ない。

 現在、「百年に一度の危機」にあるといわれる。かつて、失業と貧困を膨大に生み出した一九三〇年代の大恐慌時代、世界各地で労働者人民の闘争と社会主義革命を求める闘いは大高揚した。それがソ連スターリン主義の一国社会主義路線によるロシア防衛戦に各国の闘いが利用され反革命的に抑圧され、当時の激烈な階級矛盾は資本主義改良の社会民主主義や排外主義・反革命のファシズム勢力によって組織化され、労働者人民の闘いと社会主義革命は大弾圧を受け敗北した。その結果、大恐慌の突破は、帝国主義列強によるブロック化・民族排外主義・戦争経済・侵略反革命戦争の悲劇的結末へと到った。

 現在における恐慌も、資本主義の基本矛盾を爆発させている。利潤率の低下のもと、資本の独占化が進む一方、倒産・失業・貧困化が多くの労働者人民を襲っている。これまでの自公政権もまた、許しがたいことに、膨大な国家資金(将来の大増税)を使い、自動車・電機・建設など独占資本を救済してきた。貧困対策には、ほんのわずかな給付金などをもって、お茶をにごそうとしてきた。

 求められているのは、労働者・被抑圧人民が自らの解放闘争を前進させ、階級的団結と連帯を強め、階級形成・階級闘争・国際主義と社会主義革命の道を進むことである。帝国主義・独占ブルジョアジーによる生産手段の私有と集中・集積化、少数による富の独占と多くの貧困・失業の構造化、これを終結させるのは、さまざまに化粧直しした資本主義ではない。独占ブルジョアジーを打倒する国際主義に立脚した労働者・被抑圧人民の社会主義革命だけがそれらを解決しうる。恐慌に苦しむ日帝の危機に対して、我々は、資本主義の改良にとどめることなく、また、ファシズム勢力の台頭と襲撃を許さず、労働者・被抑圧人民の解放闘争を原則的に組織し、反帝国際主義・社会主義革命の階級闘争を組織せねばならない。



 ▼二節  鳩山連立政権の登場


 鳩山政権の登場前夜。麻生自公政権は、極度に危機を深めた。その要因は、新自由主義・構造改革によって多くの人民が生活苦・失業・貧困化を受けたこと、新日米同盟―米軍再編下の基地強化や九条改憲―戦争国家化が強まったこと、政治と金の腐敗、政官業の癒着、相次ぐ政権放り投げによる指導力喪失などにあったことは、明らかであった。六〇年近く続いた自民党長期支配権力がその内部から崩壊し、恐慌という経済危機がそれを根底から促進した。自公政権への反発・批判・怒り、そして労働者人民の変革を求める動きが、遂に、八・三一総選挙で噴出し、歴史的政権交代を生んだ。

 鳩山民主党連立政権は、本質的にブルジョア政権である。民主党の主流はブルジョアジーと労働貴族・連合に依拠している。日帝の階級支配の支柱である天皇制と日米軍事同盟、そして官僚・警察・軍隊・司法権力を温存した上で、民主党は特権的官僚層の権力を弱め制限しようとしている。同時に、自公政権の基盤であった中小零細企業、医師などの都市中間層、地方、農民が自公から離反し、労働者、貧困層などとともに民主党を現状批判の「受け皿」とした。こうした動きを反映し、鳩山連立政権は、当面、階級矛盾を「緩和」する「修正資本主義」を体現している。

 九月十六日、民主党・社民党・国民新党による鳩山連立政権が出発した。連立政権は、グローバルな独占資本の利益を中心とした新自由主義・民営化・市場原理主義の政策を転換し、中小企業や労働者人民への「痛み」の緩和の諸政策を実施しようとしている。官僚政治―天下りを止め、公共事業を削減し、子育てなど「国民の家計」支援や環境・福祉などの新産業育成、雇用確保など、内需主導路線が打ち出された。連立政権は次の領域の政策で合意した。①新型インフルエンザ対策、災害、緊急雇用対策、②消費税の据え置き、③郵政事業の抜本的見直し、④子育て、仕事と家庭の両立への支援、⑤年金・医療・介護など社会保障制度の充実、⑥雇用対策の強化―労働者派遣法の抜本改正、⑦地域の活性化、⑧地球温暖化対策の推進、⑨自立した外交で世界に貢献、⑩憲法、である。

 とくに雇用問題では、緊急雇用対策、登録型・製造業派遣の原則禁止など派遣法抜本改正、最低賃金引き上げ、求職者支援、雇用保険の全労働者適用、均等待遇を実現すると表明した。

 安保・外交政策は次の諸点を確認した。①環境外交や感染症対策、国連平和維持活動、貿易自由化、②「緊密で対等な日米同盟関係をつくる」「沖縄県民の負担軽減の観点から、日米地位協定の改定を提起」「米軍再編や在日米軍基地のあり方の見直し」、③東アジア共同体の構築、④北朝鮮の核兵器・ミサイル開発をやめさせ、拉致問題を解決する、⑤アフガニスタンの「貧困の根絶」と「国家の再建」に主体的役割を果たす、などである。

 憲法では、唯一の被爆国として核兵器廃絶、「平和主義」「国民主権」「基本的人権」の三原則、諸権利の実現、国民生活再建に全力とあげるとし、明文改憲の動きを停止した。

 これらは、今日の労働者人民の要求と抵抗を反映している。だが、失業・貧困化問題および沖縄人民を先頭とした基地撤去・反米軍再編の要求では、いまだ不徹底で部分的となっている。

 新政権は、「多国籍企業化」した日本独占資本の利害と対立する環境・雇用・安保外交の諸政策を有している。だからこそ、日本経団連、経済同友会など独占資本の主流は鳩山政権を「政権政党としては不十分」と反発した。彼らは自らの階級要求を強め、新政権を揺さぶり、ネガティブ・キャンペーンを組織するなど大騒ぎをする始末である。「新政権の温暖化ガス削減目標は高速道路無料化と矛盾し、GDPの3・2%低下、失業の1・3%増をもたらす。太陽光発電やエコカー・断熱材の導入などは家計へ大きな負担増だ」と猛反発した。春闘における経団連側方針では「労働者派遣制度への過度な規制は雇用を減らし、逆に失業は増加」、「最低賃金引上げは中小企業に多大な影響を及ぼし、倒産・経営難・海外移転を強める」と激しく反対している。財政健全化や社会保障制度充実のために企業負担減―個人負担増―消費税増税をもとめ、郵政民営化など規制緩和・新自由主義改革の徹底化を強調し、道州制の早期導入などを要求している。オバマ来日の直前、わざわざ記者会見を行った経団連・御手洗会長は、日米同盟をいっそう強化し、これまでの政策を堅持しろと言い放った。



 ▼三節  鳩山連立政権の諸政策


 鳩山新政権は、国連総会やG20サミット、ASEAN+日中韓、APECなどで、核兵器廃絶、温暖化ガスの九〇年比25%削減(二〇年まで)や途上国支援、東アジア共同体構想など、「鳩山イニシアティブ」なる外交を繰り広げた。また事務次官会議や官僚記者会見を無くし、政治家主導のもとで、政務三役・国家戦略室・行政刷新会議など、新たな政権執行体制を編成した。十月末の鳩山所信表明演説では、「衆院選の勝利者は国民一人ひとり」「コンクリートから人へ」「子ども手当てなど国民生活第一」「人間のための経済、家計支援」「地域主権、農家への戸別補償制度」「架け橋外交、対等な日米同盟と東アジア共同体構想」など、「友愛理念」をかかげ、演説を行った。
 麻生前政権時代の補正予算のうち二兆九千億円を停止する一方で、来年度概算要求には子育て手当て・農家戸別補償など約九五兆円という戦後最大規模の概算要求を作成した。その後、行政刷新会議の下、約五百の事業を対象として約一・七兆円削減の事業仕分けを公開で組織し、新政権の「透明感」と求心力を演出した。初の臨時国会では、中小企業の返済猶予法を強行採決し、郵政民営化見直しの株式売却凍結法、肝炎対策法などを制定した。

 民主党連立政権となって、「脱官僚」の政治運営における「透明感」が高まり、労働者人民の政治への関心・意識は拡大した。とくに多くの労働者人民が自公政権打倒と歴史的政権交代へ主体的に関与した経験の意義は大きい。労働者人民の多くが高い政治意識を持続し、新政権の動向・公約・諸政策と正面から向き合い、自らの諸要求の実現にむけ、政治的に活性化し積極化している。

 その対極に反動的反人民的な動きも明らかとなっている。中井国家公安委員長による「盗聴・おとり捜査・司法取引」導入発言、司法権力によるビラ言論弾圧の正当化・居直り判決など、治安弾圧強化の攻撃が進んでいる。事業仕分けでは、労働法改悪・最賃引上げ反対の規制改革委員会メンバーや、JPモルガン調査部長などを仕分け人に組み込み、リストラ合理化による反労働者攻撃や保育・パートへの助成廃止を進めた。所得税・住民税の扶養控除の廃止、環境税導入、タバコ税アップなど大増税も画策されている。

 とくに普天間基地閉鎖問題など米軍再編・日米地位協定の見直しをめぐって、独占資本や米帝からの重圧が激しく新政権を揺さぶっている。キャンベル国務次官補やゲーツ国防長官など米帝の外交軍事責任者が、辺野古新基地案などこれまでの日米合意の米軍再編計画を早期に実施するよう恫喝し、岡田外相、北沢防衛相は早々にその容認へ傾斜した。オバマとの日米首脳会談で同様に迫られた鳩山は動揺し、玉虫色の態度に終止している。これは、11・7嘉手納町民二千五百の決起や、11・8沖縄県民大会の二万一千人決起、それに連帯する東京など各地の行動、岩国市民大集会など、米軍再編反対の民意や政権公約を踏みにじる大後退である。米軍再編事業費約八百九十億円や、年間二千億円の米軍駐留経費支援・「思いやり予算」がそのまま来年度予算に計上されることとなった。

 鳩山新政権は、自公政権の米帝追随外交と決別し、国連中心主義や東アジア共同体構想などへと舵を切り、日米同盟の相対化を行おうとしている。鳩山の改憲試案には、そうしたビジョンが存在する。即ち、①「アジア太平洋地域への経済社会協力および集団的安全保障制度の確立」を憲法前文に挿入すること、②「国際連合やその他の確立された国際的機構が行う平和の維持と創造のための活動に積極的に協力」、③「陸海空その他の組織からなる自衛軍を保持」などである。鳩山も日帝の海外権益を軍事力で拡大強化する意図を持つ点では、危険で反動的な九条改憲論者にほかならない。米帝・オバマが主導するアフガニスタン戦争に対して、莫大な約五十億ドルの「民生支援」を約束した鳩山は、さらにISAF本部の連絡調整やアフガン治安警察軍育成への自衛隊派兵を準備している。「友愛ボート」構想として、紛争地などへの自衛隊・自衛艦による医療民生支援・文化交流も明らかにした。許しがたいことに船舶臨検法の制定策動がある。鳩山連立政権は、自公政権が制定しようとした船舶臨検法に自衛隊出動の明記を避け、臨時国会へ提出した。駆逐艦級の海上保安庁警備艦船による朝鮮民主主義人民共和国の船舶への「臨検」は、韓米軍と共同した武力行使となる。現憲法で禁じられた集団的自衛権の行使である。九条改憲=戦争法の一環である船舶臨検法案に反対し、朝鮮戦争攻撃の発動を絶対に阻止しなくてはならない。

 雇用問題では、派遣法抜本改正に否定的な独占資本や連合・労働貴族の策動が強まっている。一月からの通常国会は大きな正念場である。

 ASEAN+日中韓は、今年、ユーロ圏を超え、米国に次ぐ世界の21%を占める経済規模となる。民主党の東アジア共同体構想とは、日帝のアジア侵略支配を強める外交路線にほかならない。



 ▼四節 日本共産党の誤り


 日本共産党は、現下の新しい情勢を大いに歓迎している。自公政権に歴史的審判を下し登場した民主党新政権に対して是々非々でのぞむ「建設的野党」と自らを規定している。「鳩山新政権が『財界中心』『軍事同盟中心』という政治のゆがみに正面から切り込む姿勢はないものの、一定部分では国民の要求を反映した政策を掲げるという『過渡的性格』をもつ」という。この観点から、沖縄基地問題、後期高齢者医療制度撤廃の先送り、「政治と金」、官僚答弁禁止など、主な問題点をただしてきたと成果を誇っている。

 日本資本主義・帝国主義の改良と反米愛国主義を総路線とする日本共産党。それは民主党連立政権の完全な補完勢力であり、ブルジョア改良勢力として突き進んでいる。日共は、労働者・被抑圧人民の解放闘争・社会主義革命の闘いを抑え、その敵対物へと転落している。日共は、「ルールある経済社会」を要求し、憲法九条を中心とする自主外交を推進すると打ち出している。独占資本の無制約な利潤追求を規制し、内部留保を吐き出させ、労働者人民に分配せよと主張し、欧州諸国のような「規制ある経済社会」の実現を呼びかける。また反米愛国、すなわち米帝に対する日帝の自立化を要求し、日帝本国労働者人民がアジア第三世界人民への抑圧民族に位置することを正当化している。「国連憲章に規定された平和の国際秩序を擁護し、この秩序を侵犯・破壊するいかなる覇権主義的な企てにも反対する」という綱領部分が日共にはある。それに沿う形で、日共はアジア地域集団機構の形成を展望している。これは日帝のアジア侵略支配と結合した帝国主義的国益主義へ日本労働者人民を動員する侵略反革命路線である。

 現在、保守勢力や右翼ファシズム勢力が「日本人拉致・核・ミサイル」問題をテコとした朝鮮民主主義人民共和国の敵視と民族排外主義煽動を激化させている。朝鮮戦争攻撃を強めている。共和国制裁決議に賛同する日共は、完全に民族排外主義攻撃へ屈服している。

 日帝免罪と民族排外主義、資本主義改良、アジア地域集団機構の美化、これら日共の根本的誤りの暴露と批判を強めねばならない。我々は日共の影響下から労働者人民を奪還し、労働者人民の国際主義・階級形成・解放闘争を発展させていかねばならない。さらに囲い込みの宗派主義集団、社共に追随する日和見主義諸派や思想サークル諸派と分岐し、労働者階級・被抑圧人民の実力闘争・反帝国際主義の闘いを推進しなくてならない。



 ▼五節
 反戦、反ファシズム、反資本主義・反帝国際連帯―社会主義革命の闘い



 我々の革命的労働者党の基本戦術は、あくまで労働者階級人民と被差別大衆の解放闘争、その実力闘争と国際主義に立った階級闘争の前進こそが核心となる。

 鳩山連立政権に対して、派遣法抜本改正や米軍再編見直し・温暖化対策など独占資本や米帝の利害と対立する政権公約・諸政策の実施を断固迫らなくてはならない。それらの実現の徹底化を要求し、労働者階級の闘いのヘゲモニーや主体的力量の強化へ繋げることである。そうして、多くの労働者人民へわが革命的労働者党の影響力を広げ、かつ広範な階級形成をひきうけていかねばならない。

 民主党が先の衆院選における政権公約を裏切り・破棄し、本格的なブルジョア保守党として日帝の基本政策を推進する動きへと転換することに警戒しなければならない。今夏の参院選で、民主党が勝利し、両院の単独過半数を制するなら、そうした状況は強まるであろう。そうであるなら、労働者人民の広範な怒りを組織し、鳩山民主党政権打倒の全人民政治闘争の総決起を組織していかなければならない。

 さらに台頭する右翼ファシズム勢力・差別主義者集団との攻防が全人民的な課題となった。激化する階級矛盾を被抑圧民族・被差別大衆への憎悪へ転化し、これを煽動・組織化する右翼ファシスト勢力。その動きが活発化した。「在特会」「主権回復を目指す会」などが、在日朝鮮人・在日韓国人や滞日外国人労働者、そして被差別大衆への差別排外主義煽動・排斥攻撃を強めている。元日本軍「慰安婦」問題などの戦後補償運動や反天皇闘争への襲撃事件も発生した。右翼ファシストの攻撃を粉砕し、労働者人民の階級闘争、被差別大衆の解放闘争、社会主義革命の闘いを防衛発展させていかねばならない。

 二〇一〇年の政治的任務は鮮明である。

 第一には、米軍再編粉砕闘争の推進である。普天間即時閉鎖―辺野古新基地建設阻止、岩国基地の強大化・艦載機移駐・愛宕山米軍住宅の阻止、神奈川の基地強化反対、これらの米軍再編粉砕の闘いは決定的な攻防を迎える。現地の実力攻防と全国的支援を強化し、アジア人民との国際主義的結合を推進し、前進をかちとろう。沖縄―岩国―神奈川の闘いを支援し、全国各地の階級的労働運動や青年学生運動、被差別大衆の解放運動と結合し、たたかおうではないか。

 第二には、反帝国際主義の大衆的闘争を推進し、横浜APEC粉砕の国際共同闘争、米軍アジア総撤収の国際連帯闘争、アジア太平洋各国の闘いの相互支援連帯を進めることである。大衆的な反帝国際主義を推進する「日米のアジア侵略支配と闘うアジアキャンペーン」(AWC)とアジア共同行動日本連の拡大強化を支援しよう。

 第三には 大失業と貧困化との闘いであり、派遣法抜本改正や雇用確保を実現し、階級的労働運動の強化と前進を進めることである。国鉄闘争をはじめとする全ての争議の解決と勝利をもぎとり、労働者の組合への組織化を拡大強化しよう。職場・地域、全国を貫く原則的な労働運動の発展を進めよう。

 第四には、日帝打倒の人民闘争拠点、沖縄解放闘争、三里塚闘争を推進することである。沖縄人民は、普天間基地即時閉鎖―辺野古新基地阻止を高く掲げ、日米帝の差別軍事支配との不退転の実力闘争の真っ只中にある。沖縄解放闘争の歴史的勝利を支援しよう。三里塚闘争は、空港会社・千葉県・国家権力の農地強奪を実力で阻止し、裁判闘争や全国的支援網を強め、人民闘争拠点として前進している。これを断固発展させよう。

 第五には、被差別大衆の解放闘争を推進することである。女性解放運動、部落解放運動、障害者解放運動、被爆者解放運動、在日韓国朝鮮人の解放運動、移民労働者のたたかいを全国で強化しよう。軍事基地・性暴力との闘いや女性労働者組織化、狭山闘争の勝利、自立支援法廃止と保安処分粉砕、核廃絶・全ての被爆者とその子孫への国家補償実現、反入管闘争などを前進させよう。

 第六には、学生運動、青年運動の前進をすすめよう。差別選別・抑圧、失業・貧困化ななど階級矛盾が青年・学生層の内部で強まっている。ファシスト・差別排外主義勢力による青年・学生への浸透や組織化を許してはならない。闘う労働者、被抑圧人民、被差別大衆と連帯し、反戦・反差別・国際連帯を進め、資本主義―帝国主義批判と社会主義革命の闘いを担う学生運動、青年運動を推進しよう。





 ■新年号論文―第3章

 60年安保闘争から50年
 ―ブント党建設の新たな地平を切り開こう




 本年二〇一〇年は、一九六〇年安保闘争から五十年目にあたる記念すべき年である。六〇年安保闘争は、巨万の労働者人民が立ち上がった戦後日本最大の全人民政治闘争として歴史に記録されている。この闘争こそ、戦後日本階級闘争の新たな出発点を画した記念碑的闘争であった。六〇年安保闘争を準備する過程において、われわれの前身である第一次共産主義者同盟は、この歴史的闘争の牽引者として誕生した。われわれはこの半世紀におよぶ日本階級闘争と党建設の全歴史を継承して進む。そしてこの五十余年の党建設の勝利と敗北の歴史をしっかりと踏まえ、必ずや強大な革命的労働者党を日本において現出させていくべく二〇一〇年をたたかいぬく。

 日本では昨年、総選挙で自民が大敗し、民主党が圧勝した。民主党は比較的高い支持率のもとで、新しい政権を発足させた。だが、すでに述べてきたように民主党の階級的性格は「もう一つのブルジョア政党」である。民主党政権のもとでは、労働者人民の根本的な社会変革の要求は実現されない。雇用・福祉・医療・教育など人民の当面の切実な要求すらまともに満たされていくこともない。民主党は日本資本主義・帝国主義擁護の政党である。大独占・多国籍資本の利益を防衛する政党である。労働者階級はこのようなブルジョア政党に現在の利益も未来の展望も託すわけにはいかない。プロレタリア階級の利益を真に代表できる党、資本主義に代わる新たな社会を準備していく党を、みずから建設していくことが求められている。

 いまなお世界は恐慌のただなかにある。恐慌期のなかで、労働者人民が階級闘争・革命運動に参加していく条件が広がっている。この情勢に応えうる共産主義者の活動が、政治的・組織的・イデオロギー的なあらゆる面において、つくりあげられていかねばならない。われわれにとって現在の局面は、党を大きく飛躍させていく好期である。あらゆる階級闘争の前進・発展に力をつくしながら、階級闘争の沃野(よくや)のうえに、強大な革命党、革命的労働者党を建設していくために二〇一〇年こそ全力をあげよう。



 ▼一節 ブントの綱領・路線の継承


 われわれの党建設は無から始まるわけではない。われわれにはこの五十余年の貴重な経験が存在する。ブントは、スターリン主義に転落した日本共産党の内部から、その限界を食い破って生まれた。新しい共産主義運動の創出に挑戦したブントの、五十余年にわたる闘争の歴史に蓄積された諸内容のうちにこそ、われわれにとってかけがえのない党建設の糧が存在する。われわれは何よりもブントの綱領・路線(ブント主義)の継承をめざす。それはもちろん、現状のままとどまりつづける保守主義であってはならない。ブントの綱領・路線は、現実世界の階級闘争の経験と教訓を踏まえて不断に発展・更新されていくものでなければならない。

 われわれはブント主義の精髄として、とくにブントの次の四点の綱領的・路線的内容を受けつぐ。

 第一に、プロレタリア世界革命とプロレタリア国際主義の路線である。第一次ブントがこの旗をかかげて出発したとき、世界の共産主義運動はスターリン主義によって制圧されていた。レーニン死後、スターリンは一国社会主義論を定式化し、国際主義をソ連国家防衛の手段に歪曲して国際階級闘争の発展を阻害した。一九四三年にはコミンテルン(第三インターナショナル)が解散させられた。一九五三年のスターリンの死は、スターリン主義の消滅を意味しなかった。一九五六年、ソ連共産党二十回大会においてフルシチョフ新指導部はスターリン(個人崇拝)を批判したが、同じ年、ソ連は「反ソ暴動」の鎮圧を理由にハンガリーに軍事侵攻した。スターリン死後においても、スターリン主義は形を変えて存続したのである。ブントはスターリン主義の一国主義・民族主義との決別・闘争を宣言した。そしてプロレタリア・インターナショナリズムにもとづく労働者階級人民の国際的連帯・結合と、それを基盤にした資本主義世界の変革―プロレタリア世界革命の道を展望した。しかし一九六〇年当時の主客の条件下では、その展望は現実性を持たず、理念としてとどまるほかはなかった。

 それから半世紀が経過した。いまやグローバリゼーションと呼ばれる時代にある。世界市場はいっそう巨大になり、紆余曲折はあれ、資本の運動は国境を越えて拡大しつづけている。資本間の世界的な競争も激化するが、ブルジョアジーのあいだの国際的な連携もまた緊密になっている。IMF、世界銀行、WTOなどの国際機関、さらにG8、G20といった帝国主義列強を中心とした国際組織が、世界の支配、帝国主義的世界秩序の維持、労働者人民の搾取・収奪のために日夜、活動している。これと対決するプロレタリアートの側の国際的結束はいまだ脆弱である。飢餓・貧困、戦争、支配・抑圧・差別、人権侵害、環境破壊といった現代帝国主義が生み出しつづける膨大な矛盾は、世界共産主義革命を通じてこそ真に解決できる。それをになう主体たるプロレタリアートの団結・結束が、いまこそ強化されていかねばならない。そして国際主義はまた、帝国主義国プロレタリアートの階級形成にとっても不可欠である。

 第二には、自国帝国主義の打倒をめざす路線である。ブントは自国帝国主義に対する闘争への決起を労働者人民に一貫して訴え、その先頭に立ちつづけてきた。第一次ブントが指導した第一次安保闘争は、日本帝国主義に対する最初の本格的な闘争であった。一次ブントは安保闘争を反米愛国の方向へねじ曲げていこうとする社共を批判し、米帝のみならず、復活しつつあった日本帝国主義に対する闘争へと労働者人民を組織した。二次ブントにあっては、帝国主義の反人民的政策に反対するにとどまらず、日本帝国主義国家権力をプロレタリアートの革命的暴力をもって打倒することを直接に問題にし、ここに労働者・学生、被抑圧人民を実際に組織する実践をもって、日本における反帝国主義闘争の水準を大きく引き上げた。われわれはこうしたブントの闘争と政治路線を基本的に継承する。

 第三には、プロレタリア独裁の路線である。スターリン主義・ソ連指導部は「平和共存・平和移行」「議会主義革命」路線のもとで、プロレタリア独裁の旗を踏みにじり捨て去った。これに足並みをそろえて、民族主義と議会主義に染まったスターリン主義・日本共産党はプロ独概念を遠ざけるようになった(その後、かれらはプロ独の用語を「プロ執権」に置き換えた)。これらに対してブントは、「一切の階級の廃止への、階級のない社会への過渡期」(マルクス)、共産主義に至る過渡期の権力としてプロレタリア独裁の概念を承認・防衛し、当面する革命の目標にプロ独権力の樹立をすえた。

 資本主義が打倒された社会において、ブルジョア階級の必死の反抗を打ち砕くプロレタリア国家の国家権力が、プロレタリア独裁という性格をもつことは不可避である。階級と階級闘争が存在しつづけるかぎり、過渡期にプロ独国家は必要である。同時に、このプロ独国家はまた徹底した民主主義である。それは、労働者階級・被抑圧人民を社会主義建設の主体として形成し育成していく武器でもある。

 資本主義社会の変革―共産主義の実現を語るならば、われわれは資本主義・帝国主義を打倒していかなる権力を樹立すべきかについて解答をもたねばならない。プロ独(その具体的形態としてのコミューン、ソビエト)は、決して過去の問題ではない。また遠い将来の問題でもない。二十一世紀初頭、「新しい社会主義運動」がさまざまな形で広がりを見せ始めている。プロレタリア革命における権力の問題が、ふたたび革命運動の重要・現実的な課題となってきている。

 第四に受けつぐべきは、階級闘争の烈火のなかでのみ党はつくられるというブントの基本的な党観、党建設の思想である。第一次ブントというひとつの政治集団は、当時の国際・国内情勢を背景にして、生まれるべくして生まれた。一九五〇年代の中期、世界的には国際共産主義運動の変質があらわになり、国内では一九五五年の六全協をもって日本共産党は右翼的路線を深めていた。日共の日和見主義・議会主義と戦闘的大衆の志向とは大きく乖離し始めていた。党内左派勢力を強権的に排除しようとする党中央の動きが強まるなかで、ブントを形成した左派勢力は、日共に代わる「日本労働者階級の新しい真の前衛組織」を建設していく道に断固として踏み出した。

 六〇年安保闘争の指導部であった第一次ブントにおいては、党とは階級闘争と切り離されて存在するものではありえなかった。ブントは、党と階級闘争のあいだに高い壁を築くような見方、すなわち党建設と階級闘争の二元論的な理解をしりぞけ、党を階級闘争の発展の産物としてとらえた。「党は真空のなかからは生まれない」「党は密室のなかでつくられるものではない」という、党建設について当時、さまざまに語られた主張は、そのことを表現している。より積極的にいえば、党建設と階級闘争を統合的に推進するという正しい観点が、結成当初から、その置かれた客観的位置に規定されるかたちで、ブントには内包されていたといえる。

 党を何らかの法則の認識者集団であるとか、あるいは真理を啓蒙する集団であるかのようにとらえるのは正しくない。そのような党観は、党が階級と階級闘争の外部に、それらから遊離して存在していることを前提にしている。だが党と階級・階級闘争は一体の関係にある。党はつねにプロレタリアートの階級闘争の内部にあって、階級闘争の発展を不断にうながし、またそうすることではじめて形成され建設されつづける。共産主義運動がこの資本主義社会を変革していく現実的な運動と切り離してはありえないと同様、党は現実の階級闘争の発展と切り離しては存在しえない。



 ▼二節 克服されるべき弱点


 他方、次の点においてはブントの限界は明らかである。それはブントの党建設が大きく停滞・遅滞してきた主体的な根拠でもある。

 何よりもまず、労働者階級の党としてみずからを建設していくうえでの弱点が問題にされねばならない。

 そもそもブントに限らず日本の新左翼党派は、すでに存在した戦後の階級闘争構造に大きく規定されて出発した。社会党・共産党の議会主義政治勢力と、社会党を支えるナショナルセンター総評がいわゆる社共・総評ブロックを形成しており、新左翼運動はその左派を占めることで政治的な位置をつくった。一次ブントも二次ブントも、この戦後的階級闘争構造の存在を前提にして、その最左派たろうとすることで存在意義を示すことができた。もちろん「最左派たろうとすること」自体が問題であろうはずがない。そうではなく、もっぱら闘争戦術における戦闘性をもって左派の位置を占め、結果として、党の役割をそこに限定してきたことが問題であった。

 ブントは一貫して権力闘争(国家権力の打倒)を問題にした。現実の階級闘争を権力闘争にまで発展させ、自国帝国主義の打倒をめざすという点に、ブントのひとつの優れた党派性はあった。だが、実際の活動のあり方としては、国家暴力装置の打破・粉砕、より具体的に言えば警察権力との実力攻防での勝利を通じて階級闘争の新しい局面を切り開いていくということ自体が不断に自己目的化した。そのなかで、党は労働者・大衆から遊離し、現実の労働者を「革命の主体」として形成していくという任務は一面化した。党の内実は共産主義の実現という綱領的目的と大きくかけ離れるものとなった。

 これらは、ブントの綱領・路線全体における限界、その狭さの結果として批判的に総括されねばならない。その限界は、綱領的にも実態的にも労働者階級に基盤を置いて党を建設していくという点での不徹底性として端的に表われた。ブントはプロレタリアートの解放を党是として掲げたが、プロレタリア階級を自己解放闘争の主体として規定する点であいまいであり、したがって階級形成を党の任務の基礎にすえきる点において不十分であった。実践上それらは、労働組合運動と経済闘争の軽視として現象した。プロレタリア社会主義革命をめざす党としては、致命的な限界であったと言える。ブントは社共に代わる前衛党をめざしたが、社共に対する戦術左派、左翼反対派の位置に甘んじた。

 さらに党建設における目的意識性という点において、ブントは大きな限界を内包していた。ブントの「四分五裂」という事態は、党をねばり強く建設していく作風と組織論の欠如、党の経験を総括していく意識的な活動の欠如の結果であった。より具体的に言えば、それはとくに、党内での論争の組織化を通じて党を強化していくことのできない弱点の結果としてあった。闘争の総括や組織方針・戦術をめぐって、あるいは綱領的・路線的諸問題をめぐって、党組織の内部で論争や対立が起こることは避けることができない。これをいかに解決していくのかは、つねに党建設の第一級の課題となる。問題解決の仕方によって、党は強くも弱くもなる。かつてのブントは、とくに闘争の後退局面において党の団結を解体させることがしばしばあった。少しでも大きな論争が起こると、組織の分裂や崩壊に結果することが多々あった。組織の団結を維持・強化するために意識的に努力することが軽視され、論争止揚の努力が放棄されたり、論争が封殺されたりした。指導部の未経験・未熟さが、党内対立を止揚していく道をみずから閉ざし、事態のさらなる悪化をまねいた。これらの点におけるブントの敗北を、われわれは必ず克服していかなければならない。

 二〇〇四年、ブントの二つの分派であった共産主義者同盟(戦旗派)と共産主義者同盟(全国委員会)は組織統合を果たした。統合によってわが共産主義者同盟(統一委員会)は誕生した。統一委員会の結成を通じてわれわれは、党建設におけるブント的限界を越え、党建設を新しい次元において切り開いていくことをめざした。プロレタリア自己解放の綱領を高々と掲げ、階級闘争を通じて現実のプロレタリアートを革命的階級、次の社会の支配階級へと形成していく活動を基本的・基礎的任務とする党―それが、われわれが建設しようとする革命的労働者党である。〇四年、われわれはこのことを確認して党建設の新たな歩みを開始した。それから約六年。そのかん、さまざまな困難や壁に直面してきた。いまだ道なかばであり、われわれの苦闘はつづいている。われわれには党建設のあらゆる側面において、いっそうの飛躍が要求されている。



 ▼三節 青年のなかへ


 二〇一〇年、われわれは革命的労働者党の建設にまい進する。

 昨年、われわれは アジア共同行動(AWC)第三回総会と十一月岩国現地闘争を成功させるために全力をあげた。AWC第三回総会は、アジア諸国・地域の代表と米国ANSWER連合の参加をえて、帝国主義とたたかう国際的な共同行動をさらに強めようという確認を強固なものにした。十三年ぶりに開催されたAWC総会は、アジアを中心とした労働者人民の相互の闘争支援、共同の闘争を発展させていくうえで、今後、その橋頭堡となっていくであろう。つづいて組織された十一月岩国現地闘争もまた、全国各地から多くの労働者・学生・市民を結集させ、大成功をかちとった。言うまでもなく岩国米軍基地は、沖縄・神奈川の基地群とならぶ、米軍再編の焦点となっている。沖縄・神奈川と同様、岩国における市民・住民のたたかいは、この米軍再編―日米安保体制強化を強権的に推進しようとする日米帝の攻撃の前に立ちはだかっている。岩国住民と固く連帯してかちとられた十一月岩国現地闘争は、全国反基地闘争の勝利と労働者反戦闘争再建の展望を切り開くうえで、積極的な役割を果たしていくであろう。

 さらにわれわれは、三里塚闘争、沖縄闘争、反天皇制闘争、「日の丸・君が代」処分反対闘争、治安出動訓練反対闘争、そして階級的労働運動、全国学生運動、女性解放・部落解放・障害者解放・被爆者解放など被差別大衆の自己解放運動などの諸闘争・諸戦線において、それらのたたかいの発展のために奮闘してきた。

 こうした活動の成果を、党建設の力強い前進に結びつくよう活動していくことが問われている。革命的な党が強化されるならば、それは必ず階級闘争の発展につながっていく。また階級闘争の発展は、党建設の新しい基盤を作り出していく。階級闘争と党はそのような相互関係にあるというのがわれわれの確信である。

 革命的な党の建設という事業は、けっして限られた人々の特別な活動というものではない。政治結社の形成という課題は、労働者階級の闘争の発展のなかから必然的に生まれてくるものである。それは本質上、階級闘争の一部であり、労働者階級の先進的部分によってになわれる階級的な活動の一部である。しかし、たとえそうであったとしても、現実の党組織が人々に積極的・持続的に働きかけていくということがなければ、また党を強化する活動を意識的に創出していくということがなければ、党が自然に強大になるということも、党がひとりでに前進するということもない。

 そのような意味では党建設、とりわけ革命党建設は、共産主義者の目的意識性をもってはじめて成立する事業である。それは、階級闘争の発展一般のなかにその展望を解消することのできない独自的性格をもつ活動である。

 われわれは二〇一〇年、次の三つの党建設的課題をとくに重視してこれらに取り組む。

 第一に、労働運動に深く立脚して党の建設をおし進めていくことである。経済危機のもとで、資本による労働者階級への無慈悲な攻撃がつづいている。労働者階級の多くの仲間たちが、明日をも知れぬ苦難を強いられている。労働者たちに過酷な現実を強いている国家・資本に対して反撃せねばならない。だが労働者たちは国家・資本の支配のもとで、分断され相互に対立さえさせられている。分断と対立の支配を打破して、労働者たちが「連帯と団結」を取り戻していくために労働組合と労働運動が必要である。労働組合は賃金・労働条件をめぐる経済闘争の手段であるばかりではない。それは、労働者が最初の階級的団結をはかっていく、もっとも大衆的な性格をもつ組織である。生活と権利を守る労働組合運動・労働運動を通じて労働者は団結のすばらしさに目覚め、みずからを階級として自覚し始める。階級的労働運動は、こうしたたたかいを一貫して促進し牽引する内実をもつ先進的労働者たちのたたかいである。われわれは全国で、階級的労働運動を創造し・支え・推進しながら、労働者階級にしっかりと根を張った党を建設していく。現実の労働者大衆のなかから、とりわけ中小・未組織、非正規雇用労働者のなかから革命的労働者を形成し、かれらを党に結集させていく活動を創出していくためにたたかう。

 第二に、党の宣伝・党オルグの活動を強化していくことである。これらの活動に真剣に取り組んでいくことが、いまほど求められている時はない。約二十年前、ソ連の崩壊にさいして、資本主義の側は社会主義に対する勝利を宣言した。だが、いまや資本主義こそが危機の淵に立っている。資本主義勝利の神話は完全に崩れ去った。世界中で貧困と格差が急速に広がっている。そうした光景に直面して、資本主義そのものに対する疑問や批判が労働者人民のなかからわき起こり始めている。そしてまた、資本主義に代わる社会の希求を内包しながら、資本主義・帝国主義に対する闘争が、さまざまな形態をとって広がっている。それらをもっと促進していくこと、それらをより強固なものに発展させていくことこそ共産主義者の重要な任務である。資本主義とは何か、革命の主体とは誰か、共産主義とは何か、これらの内容を明確に示した党の綱領、戦術・組織テーゼ、党規約を武器に、党の宣伝・党オルグ活動を強化しよう。階級闘争を革命的に発展させていくために、いまこそマルクス・レーニン主義の復権のためにたたかおう。

 第三に、青年層のなかから党を作り上げていくことである。社会変革運動の中心勢力をになうべき青年たちを、党のなかに獲得していくことである。青年たちはいま、この階級社会の矛盾を集中させられている。資本のグローバリゼーションは、資本主義諸国において青年層の高い失業率を生み出している。日本では再度の「就職氷河期」がやってきている。貧困を強いられ、将来にも展望を見出せない青年たちの一部は、欧米では侵略戦争に志願したり、ネオ・ナチ的な極右運動に身を投じたりしている。日本においても少なからぬ青年たちが、「行動する保守」を自称する排外主義ファシストなどの運動に影響を受け始めている。青年層を誰が組織するのか。体制護持の側か、社会変革・革命の側か。これは大きな政治問題である。閉塞感にさいなまれ、進むべき道を見出せないでいる学生・青年たちに、共産主義者こそが手を差し伸べるべきである。全国の学園・職場・地域そして街頭で、学生・青年たちを共産主義運動のもとに組織しよう。そうした活動の力強い前進は、この社会に希望をもたらし、階級闘争の前途を明々と照らし出すだろう。学生・青年の内部から、エネルギーに満ちた若々しい党を作り上げるために、われわれは全力をあげる。
                  *    *    *
 いま階級闘争は党を、何よりも革命的な党を必要としている。われわれは全国のたたかう労働者・学生・市民に心から訴える。二〇一〇年こそ、わが共産主義者同盟(統一委員会)に結集しよう。そして闘争・苦難・希望をともにし、プロレタリア解放の大道を切り開くために力を合わせよう。


 

 

 

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