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『戦旗』第1359号(2010年10月20日)



  APEC粉砕! 11月横浜現地へ

 日米首脳会談粉砕! アジア米軍総撤収を

 反基地掲げる伊波洋一さんを支援しよう

 朝鮮民主主義人民共和国への戦争重圧許すな




 横浜APEC(アジア太平洋経済協力会議)開催が目前に迫った。十一月十三日から十四日にかけて、菅直人が議長となり、アジア太平洋の帝国主義国や中国など「新興国」の首脳たちが結集し、この地域の権益を争奪するためにしのぎを削る首脳会議が開かれる。それによってもたらされるものは、アジア労働者民衆への極限的な搾取であり、貧困の強制だ。「持続可能な成長」なる欺瞞のもと、自然環境はいっそう収奪されることになる。そればかりではない。APEC開催地である神奈川県は、在日米軍の集中する地だ。ここで日米両政府が「安保五十年」を賛美し米軍再編の推進を宣言することなど断じて認めるわけにはいかない。
 帝国主義のアジア支配、利権争奪のための会議である横浜APEC首脳会議を、反帝国主義に貫かれた国際共同行動によって粉砕しよう。沖縄や岩国、神奈川の粘り強い反基地闘争、住民のたたかいと結合し、「安保五十年」日米首脳会談を迎え討とう。


 ●1章 帝国主義が主導するAPEC首脳会談

 横浜APEC粉砕闘争の目的は第一に、資本のグローバルな展開を前提とした、帝国主義のアジア太平洋支配の攻撃と断固対決することである。
 〇八年九月のリーマン・ショックに端を発した金融危機―世界恐慌は現在も進行している。当初、帝国主義各国をはじめとしてG7―G20諸国は、全面的な財政出動をもって、銀行など金融機関やゼネラルモーターズ、クライスラー、あるいは日本航空のような経営破たんした大資本を国家的に救済してきた。これにより、一九二九年の世界恐慌のような株価暴落・連鎖倒産が世界規模で起こる事態は回避されたかのように見える。しかし、EU諸国も、米・日帝国主義も財政赤字を拡大し、かろうじて世界恐慌の連鎖回避をしているにすぎない。帝国主義各国の財政赤字の規模はすさまじいものがある。例えば米帝の一〇年度の財政赤字は一兆四千七百十億ドル(約百二十八兆円)に達し、過去最悪だった〇九年度の一兆四千百三十億ドルを上回り、過去最悪の赤字幅を更新すると言われている。本質的に恐慌を脱したとは言えず、むしろ危機を先延ばしすることによって、常に大崩落の恐怖に直面しているのが世界資本主義の現状なのだ。
 こうした状況の中、ドル下落・ユーロ下落・円高という事態に、G7財務相―中央銀行総裁会議は、有効に対応できずにいる。帝国主義各国が協調介入することができなくなっている。基軸通貨国米帝がドル暴落の危機を放置したままなのだ。日帝が単独介入し、米国議会はこれを非難するという、まさに為替戦争の様相を深めている。
 リーマン・ショック直後には、オバマは、G20が帝国主義各国を軸にして資本主義世界経済の協調発展の論議の場になっていくという幻想をばらまいた。いまや、この幻想も崩れ去っていきつつある。
 一方、APEC議長国である日帝・菅政権は、APECにどう臨もうとしているのか。
 十月一日の所信表明演説で、菅首相は「私が議長を務めるAPEC首脳会議では、米国、韓国、中国、ASEAN、豪州、ロシア等のアジア太平洋諸国と成長と繁栄を共有する環境を整備しなければなりません」と前置きしたうえで、「架け橋として、EPA(経済連携協定)・FTA(自由貿易協定)が重要です」「東アジア共同体構想の実現を見据え、国を開き、具体的な交渉を一歩でも進めてまりたいと思います」と述べている。
 日帝資本は戦後、東南アジア諸国への戦後賠償という形をとった経済進出を皮切りに経済力を回復し、決定的には朝鮮戦争による特需によって復興を成し遂げた。さらにはODA(政府開発援助)を呼び水とし、自動車産業など基軸産業の生産拠点をアジア諸国に移転することによって、アジア民衆を低賃金で搾取し、安価な資源を収奪してきた。まさにアジア民衆の生き血をすすることによって帝国主義として復活してきたのが日帝だ。今、菅首相の言う「成長と繁栄」なる言葉もまた、経団連など日本ブルジョアジーの利害を代弁し、日帝が盟主となってアジア太平洋支配に乗り出すという宣言にほかならない。
 だが、「大東亜共栄圏」を掲げたアジア侵略によって排他的ブロックを作ろうとした戦前や、日米安保体制のもと、表面的には軍事侵略によらず、「賠償」やODAを通じたアジア進出を進めた戦後を経て、日帝をとりまく環境は、米帝との利害対立、中国の台頭、アジア全域での工業化の進展等により、より不安定となり、複雑さを増している。
 この状況を打開する道筋として、鳩山から菅にまで継承されている政策が「東アジア共同体構想」にほかならない。この構想は、「友愛」なる反共イデオロギーを敷衍した鳩山の思いつき一般ではなく、経団連などブルジョアジーの意向を忠実に反映している。経団連は、ASEAN+3(日・中・韓)を軸に、EPA・FTAを推進し、東アジア共同体の構築をもって、この経済危機から脱することを構想している。
 しかしこの「東アジア共同体」構想は、APECの枠組みで関税等を撤廃するアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の実現を強調し、日・中の関係強化をけん制することを狙う米帝の構想とは、本質的に対立している。さらに、日帝と中国の東アジアにおける主導権争いもまた強まっている。こうして横浜APECは、日帝、米帝、中国という大国が、アジア太平洋地域の権益を争奪する場となろうとしている。
 資本間の熾烈な競争は、これまでもそうであったように、帝国主義国、中国、東南アジア諸国それぞれの労働者に対する搾取をますます強めることになる。帝国主義国内においては産業空洞化が進み、若者が失業、非正規労働、低賃金に苦しんでいる。「世界の工場」中国の労働者は過酷な労働に痛めつけられ、至る所でストライキ、実力闘争に決起し日帝資本をゆさぶっている。フィリピンの労働者も軍隊による殺人弾圧に抗してたたかいを継続している。
 われわれは今こそ、「底辺への競争」を強いられる労働者階級人民の国際共同闘争で、帝国主義の強盗会議=横浜APEC首脳会議粉砕闘争に決起しよう。


 ●2章 「安保50年」を糾弾し日米首脳会談粉砕せよ

 第二に、日米首脳会談―軍事同盟強化を粉砕するために、横浜現地に結集しよう。
 日帝―菅政権はAPECに際し、安保五十周年式典を設定しようとしている。
 六月の時点で、仙谷由人官房長官は「五十周年を記念して何をどうするかは政府でも考えている」と述べていた。九月には松沢成文神奈川県知事が、政府に対して式典開催を要請するという、多くの在日米軍基地を抱える神奈川県民にとって認められない暴挙を働いている。しかし、式典がいつどのような形で開催されるのかはいまだ明らかになっていない。「普天間移設問題」が日米政府間のトゲとなって突き刺さり、祝賀ムードではないこともひとつの原因だろう。いずれにせよ、我々は日米安保五十周年を祝う式典など絶対に認められない。
 一九六〇年の反安保闘争では、巨万の労働者学生が国会を包囲し、安保改訂を強行採決した当時の岸首相を、怒りのデモによって打倒した。この闘争は、いまなお日本階級闘争の歴史上、不滅の意義を持っている。しかしながらその後、反安保闘争は急速に後退し、改訂された安保のもとで、米帝によるベトナム侵略戦争や中東湾岸戦争に日本が加担することになっただけでなく、アジア侵略と植民地支配の責任をないがしろにしたまま、アジア諸国地域への日帝資本の経済進出が進んだ。沖縄の米軍基地は一層強化・拡大した。「日本の経済成長は安保のおかげ」なる言葉はこの五十年間、いったい誰の犠牲で「経済成長」したのかを完全に無視したものだ。今こそ反安保、反基地、米軍再編阻止の方向性をはっきりと労働者民衆に指し示し、安保五十年を糾弾する声を日米両政府に突きつけていかなければならない。
 APECに際して行われる日米首脳会談を粉砕しよう。去る九月二十三日、ニューヨークで行われた菅首相とオバマ大統領の会談では、「日米同盟の深化」をうたいながら、「対中関係について日米が緊密に連携していく」「普天間の移設問題に関しては、名護市辺野古に移設するとした五月の日米共同声明の履行を目指す」と話し合ったと報道されている。
 ここで対中関係についての議論になったのは、言うまでもなく「尖閣諸島」(釣魚台)沖での中国漁船と海上保安庁巡視船との衝突事件を念頭においたものだ。「尖閣諸島が日米安保条約の適用対象」だと双方で確認し、中国を威嚇・けん制した。一方、普天間移設問題については、菅は国家的利害を全面に押し出し、辺野古への移設を日米合意としてオバマに約束した。
 だが、周知のとおり、名護市議選は基地反対派が圧倒的に勝利した。これまでやむなく基地容認派だった市民も、今回はその多くが基地受け入れ反対の立場を鮮明にした。名護市だけでなく、沖縄全島の怒りのマグマは爆発寸前だ。いくら新種の移設案を並べても、沖縄のどの立場の人をも説得することができない。だからこそ、日米合意を約束しながらも菅首相は「沖縄の方々のご理解を求め、誠心誠意話し合っていく」(所信表明演説)と言わざるを得なかったのだ。
 沖縄民衆は名護市議選から、十一月知事選の勝利へと渾身の力を込めて立ち上がっている。日米首脳会談反対・日米合意粉砕のたたかいをまきおこし、沖縄民衆のたたかいに何としても応えていかなければならない。
 「普天間移設問題」が行き詰まる中で生じたのが、「領土問題」だ。
 九月七日、沖縄県石垣市の釣魚諸島(尖閣諸島)沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船「みずき」に衝突し、翌日、中国人船長が公務執行妨害容疑で逮捕された。これは日帝―菅・前原の政治的意志によるものであることは明白だ。中国政府側の抗議に対して、日本政府は「国内法に基づき粛々と対応する」と押し通した。中国側は、東中国海のガス田開発に関する日中条約締結交渉の延期や、両国間の閣僚交流の停止を発表、さらに温家宝首相が船長の無条件釈放を要求して新たな対抗措置に言及し、実際にレア・アース(希土類元素)の輸出規制など「対日強攻策」を開始した。レア・アースはハイテク製品の生産に不可欠だ。対中関係のさらなる悪化を日本の財界は恐怖した。
 こうしたなか菅政権は二十五日、那覇地検に船長を処分保留で釈放させたが、これに対し国内では「弱腰外交」なる右からの非難が巻き起こっている。中国との「関係正常化」もいまだ不透明なままである。
 この一連の事態が示すものは何か。まず第一に、日帝・菅政権が意図的に漁船を拿捕して「中国による領土侵害」を扇動し、もって日米安保と自衛隊の強化を正当化しようとしたということである。とりわけ事件当時、国土交通大臣だった前原誠司は以前から「中国脅威論」を唱えてきた人物であり、この事件を政治利用したことは明白だ。
 そもそも菅政権は、八月末に発表された「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」の報告書において、中国の軍拡を念頭に、自衛隊の「専守防衛」という建前すら投げ捨てて「動的抑止」を目指すとして、自衛隊が海外に素早く展開できる能力を持つようにする、としていた。
 さらに九月に発表された「防衛白書」においては、中国について「国防政策の不透明さと軍事力の動向はわが国を含む地域・国際社会の懸念事項」と触れた上で、「南西諸島防衛」という項目を設けて、「宮古島以西に部隊は配備されておらず、防衛上の空白地域となっている。新たな部隊配備を検討中」と記述していた。
 まさに今回の事態は菅政権が意図的に釣魚台をめぐる軍事的緊張を高めることによって、自衛隊の沖縄配備強化を正当化することに狙いがあった。また同時に、沖縄民衆に対しても「領土を守れ」なる排外主義に巻き込むことによって、在沖米軍を「抑止力」として認めさせようという狙いもある。これは、沖縄民衆の反基地闘争に真っ向から敵対する攻撃である。
 そして第二に、「尖閣諸島は日本の領土」なる領土拡張主義をあおり、排外主義に労働者民衆を組織する攻撃だ。
 日本政府は「明治政府が一八九五年の閣議決定で日本の領土に編入した」ことを唯一の根拠に釣魚台を日本の領土だとしている。だが、近代史を振り返れば、釣魚台は、日韓間で領土問題となっている独島(竹島)同様、日本帝国主義が明治以降のアジア侵略・植民地支配の過程で略奪したものである。一八九五年、日清戦争の末期において、内密におこなった「閣議決定」をもって一方的に編入したのが釣魚台であり、戦争によって強奪したのも同然だ。その意味では、日帝による中国・朝鮮―アジア侵略の歴史において、いまだ清算されていない問題の一部だということができる。しかしこうした歴史的経緯はほとんど省みられず、「一九七〇年代になってから、海洋資源を狙って突然中国が領土だと主張し始めた」という言説だけが一人歩きしている。
 東アジアをめぐる資源や市場をめぐる争奪戦は、帝国主義国のみならず中国もまきこんで激化している。中国の資本主義化は一群の労働者階級を生み出しつつある。中国労働者階級との国際連帯をめざすためには、まずもって日本民衆が日帝のアジア侵略の歴史に向き合い、「釣魚台は日本の領土ではない」「侵略の歴史を清算する」という立場を明確にして日帝とたたかうことが前提条件となる。
 日本共産党も含めた「領土を守れ」なる排外主義の大合唱に抗して、日中・アジア民衆の国際連帯を推進しよう。


 ●3章 11月ソウル―横浜現地闘争に総決起しよう

 第三に、横浜APEC粉砕の現地闘争に全国から総決起してたたかおう。
 我々は、横浜APECに反対する広範な反対闘争を支持すると共に、反帝国主義に貫かれた国際共同闘争を組織するために奮闘する。
 アジア共同行動日本連、労働運動活動者評議会、戦争・差別・貧困とたたかう学生グループ「あすじゃ」の三者が呼びかけ団体となって、「戦争と貧困を強めるソウルG20―横浜APECに反対する国際行動」が九月に結成された。国際行動は、「戦争と格差・貧困化をつよめる横浜APECにたいして、アジア太平洋地域の労働者民衆による反グローバリゼーション・反戦反核・反基地の国際共同闘争を進めることはきわめて重要です。私たちは、資本主義・帝国主義による略奪と戦争に反対する国際的な抵抗と団結を推進します」と呼びかけ、反帝国主義の立場を鮮明にした現地闘争を準備している。国際行動には、これまでのところ、韓国民主労総・AWC韓国委、フィリピン・バヤン、台湾・労働人権協会、インドネシア・YMB、米国・ANSWER連合など各国・地域からの民衆団体やアイヌ民族が合流する予定であり、十一月十三日から十四日、国際フォーラムやAPEC会場に向けたデモをおこなおうとしている。
 またAPEC反対闘争は、その直前に韓国で開催されるソウルG20粉砕闘争と連動したたたかいだ。十一日から十二日にかけてソウルで開催される第五回G20首脳会合は、世界に新自由主義政策をおしひろげ民衆の貧困を拡大する、非民主的な会議であり、その点でAPECと同様の性格を持っている。ソウルG20に対し韓国では「G20対応民衆準備委員会」が発足し、民主労総が中心となって、数多くの進歩団体や労働団体、市民団体が結集している。ソウルG20から横浜APECへ至る、新自由主義グローバリゼーションに対抗する労働者民衆の決起をかちとろう。
 そしてその最先頭でたたかう限り、国家権力との対決は避けることができない。あらゆる弾圧を警戒し、これをうちやぶって横浜現地に結集しよう。
 われわれは、一昨年のG8―洞爺湖サミット粉砕闘争に対する、京都府警によるデッチあげ弾圧を、完黙非転向のたたかいで断固粉砕した。この勝利の地平を継承し、公安警察、外事警察、法務省入管局のあらゆる弾圧や敵対をはねのけてたたかおう。
 すでにAPEC予防弾圧が様々な団体・個人にかけられている。横浜現地はすでに厳戒態勢に入っており、これまでに「テロ対策」「過激派のデモ鎮圧訓練」などと称した警察の弾圧訓練が日常的に繰り返し行われている。そのなかで許せないことに野宿者の排除や、港湾で働く外国人労働者の「不法就労摘発」が繰り返されているのだ。まさに弾圧と「異分子の排除」を一体に進めているのがAPECだ。
 弾圧をはねのけ、戦争と貧困をもたらす帝国主義強盗会談=APEC粉砕に全国から決起しよう。



 

 

 

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