共産主義者同盟(統一委員会)


1385号(2012年1月1日) 政治主張






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   全世界の革命、叛乱、占拠と結合し

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  労働者人民が自己解放を実現する革命党建設を





 すべての同志、友人諸君! そして、『戦旗』読者のみなさん! 3・11情勢と世界恐慌の中、新年を迎える。二〇一二年、プロレタリア革命の新たな時代をともに切り拓いていこうではないか。
 二〇一一年三月十一日、大地震、大津波、そして福島原発事故によって、多くの方々の尊い生命が失われた。あらためて、哀悼の意を表する。
 われわれは激動の二〇一一年、労働者階級人民が直接権力奪取に乗り出した二〇一一年を生きてきた。
 チュニジア革命、エジプト革命、リビアの蜂起―内戦、北アフリカ・中東諸国の独裁政権打倒闘争こそが、一一年の世界情勢を大きく規定してきた。
 〇八年金融恐慌から始まった世界恐慌は、一一年、さらに世界規模での瓦解へと突入しつつある。ギリシャ、イタリアをはじめとする欧州各国の財政危機から、金融機関の破綻、そして全世界への投資の急激な縮小、世界経済の急激な収縮へと進みつつある。
 ギリシャ労働者のたたかいをはじめとして、ヨーロッパ各国で労働者人民の叛乱が開始されている。
 アメリカの労働者・学生はウォール街占拠を呼びかけ、貧困と格差に対するたたかいが中心国―米帝の足下で前進している。
 世界各国の人民叛乱は、金融グローバリゼーションを、そして現代帝国主義そのものを打倒するたたかいへと前進している。一超大国―米帝の力が急激に減退し、米帝資本が世界を支配しようとしてきた金融グローバリゼーションの破綻は鮮明になっている。
 「貿易・投資の自由」として進められてきた現代資本主義の展開は、それが全地球規模に拡張されているがゆえに、破綻が始まったときの伝播もグローバルである。経済の変動から莫大な収益を上げてきた金融グローバリゼーションこそ、資本主義の不安定化を増大させてきた。全世界で非正規雇用を生み出し、増大させ、公共資本を民営化し、民生をことごとく破壊してきた。
 日本においては、3・11東日本大震災の復興が、資本の利害として新自由主義に絡めとられていくのか、労働者階級人民の利害を貫いたものとしてつかみ取れるのか。そして、原発事故-放射能被害、極限的な被曝労働の現実を前にして、国家権力、電力資本、電機産業資本に対する全人民の憤りはますます高まっている。階級闘争の新たな炎が燃え上がっている。
 独裁打倒からはじまった革命も、帝国主義足下の労働者階級のストライキ、デモ、占拠闘争も、そして反原発闘争も、敵は一つだ。全世界を支配し搾取する帝国主義の打倒へ、闘いは結合し発展するだろう。
 二〇一二年、ブントこそが、人民叛乱の歴史的意味を明らかにし、プロレタリア国際主義を貫いて、歴史的変革の新たな時代を切り拓いていく。
 二〇一二年の革命運動と革命党建設に対する共産主義者同盟(統一委員会)の見解を、以下の構成で明らかにしていく。
 本号(第一三八五号)では、第一章 世界情勢、第二章 国内情勢、第三章 党建設方針を掲載する。次号(第一三八六号)で、第四章 政治運動方針、第五章 労働運動方針、第六章 青年運動方針、第七章 学生運動方針を掲載する。




  1章 「世界情勢」

 深刻な危機へ突入する現代帝国主義

  全世界で燃え広がる労働者人民の決起


  1節 世界恐慌の第二段階の始まり

  ◆1項 さらなる危機へと突入する世界経済

 〇八年金融恐慌から三年、世界経済は恐慌の第二段階に突入しつつある。
 米帝金融投機資本の破綻が引き金となった〇八年金融恐慌は、金融のグローバルな展開ゆえに世界規模で伝播した。〇八年以降、帝国主義はG7などの協議では対応しきれず、中国などの新興国や産油国を巻き込んでG20を開催し、この危機を乗り切ろうとした。帝国主義各国、新興国が大規模な財政出動を行なって、銀行の連鎖倒産を阻止し、実体経済への波及を阻止しようとした。
 米帝の五大投資銀行が消滅し、GM、クライスラーの経営破綻をはじめとして、その影響は実体経済へも大きく波及した。G7、G20で合意した各国の財政出動によって、金融システムそのものの連鎖的な崩壊はどうにか阻止された。米帝の銀行は、地球規模の投資・投機を回復し、収益を上げている。この一方では、資本の延命のための人員削減によって、膨大な失業者が生み出されている。結局、莫大な国家財政を投入して、金融を支配する者どもを救済したにすぎない。
 資本主義そのものの危機に直面して、莫大な財政支出を行なった結果、各国の財政赤字が急激に増大した。
 すでに各国の財政出動は限界に達している。簡単に景気が回復して、税収増が見込めるなどという状況ではない。日帝も米帝も欧州各国帝も、財政危機の中で景気対策をとらなければならず、財政赤字は拡大の一途をたどってきた。野田政権は、欧州の財政危機をにらみながら、日本の大衆増税を狙っている。大統領選を目前にしたオバマ政権は、雇用対策を法案化し、富裕層増税をなそうとしたが、議会での共和党の反対によって阻止されている。
 日帝も米帝も財政危機に直面している。日帝の国債発行残高は七兆二千億ドル、GDP比233%。米帝の国債発行残高は五兆四千億ドル、GDP比100%。ヨーロッパ同様の財政危機の根拠は世界中どこにも存在している。
 ギリシャが直面した国家デフォルトは、この危機の始まりである。ギリシャ国債が信用を失うことによって、この国債を大量に保有している欧州の銀行が危機に直面する。BRICSなど新興国をはじめとして世界中に投資していた資金を引き上げるようになれば、資本主義総体の資金循環が急速に収縮することになる。
 〇八年には、サブプライム・ローンをはじめとして、労働者人民を借金漬けにしてきたアメリカの銀行の破綻から金融恐慌が始まったが、この矛盾の先延ばしによって、今度は国家財政危機として顕在化してきた。政府債務危機を引き金として金融危機が引き起こされれば、再び金融システムの世界的崩壊に直面し、恐慌の第二段階に突入していくことになる。この第二段階が厳しい事態であるのは、帝国主義各国はすでに〇八年からの三年間に財政的な方策を使い果たしてしまっているからだ。

 ◆2項 深刻化する欧州危機の世界的波及

 昨年十月十四―十五日に開催されたG20財務相・中央銀行総裁会議は、欧州各国の財政危機が世界経済総体に影響する事態に震撼し、欧州連合(EU)およびユーロ圏の財務相会合・首脳会合において欧州金融安定化基金(EFSF)の拡充を要請し、欧州の責任で危機を回避させようとした。その一方で、EFSFとともに、欧州金融危機への具体的融資を担うIMFの規模拡大も議題となったが、米帝の強い反対で決定できなかった。IMFの規模拡大は各国の出資額の増大を意味するが、自国の財政危機に直面する米帝はその余裕が全くないのだ。だからといって、G20の新興国のみが出資額を増やせば、IMFにおける米帝の出資比率が下がり、米帝の特権を弱化することになる。結局は、IMFの融資拡大はせず、独帝・仏帝を軸にした欧州諸国の責任でEFSFを拡充せよ、という結論になったのだ。
 これをうけたEU二十七カ国会合およびユーロ圏十七カ国会合は、ギリシャ問題をはじめとして、欧州全体の財政危機回避の方策を決定せねばならなくなった。
 十月二十一日にはユーロ圏財務相会合が、二十二日にはEU財務相理事会が開催された。二十二日夕には独首相メルケルと仏大統領サルコジが直接会談を行なった上で、二十三日にEU首脳会合が行われた。この連続した会議の末に、二十六日夜から二十七日朝にかけてのユーロ圏首脳会合において、欧州全体の財政危機問題に対応する「包括策」をどうにか合意した。
 その第一は、ギリシャ支援問題である。八十億ユーロの追加支援をおこなうとともに、ギリシャ債務の削減(棒引き)を21%から50%まで引き上げる。
 第二は、EFSFの銀行支援を拡充。欧州の銀行の自己資本比率を5%から9%に引き上げる。
 第三は、EFSFそのものの再拡充。金融支援に使える資金を一兆ユーロ規模に拡大する。
 結局、これは、ヨーロッパという規模で融資資金を準備して、公的資金を金融機関(銀行)に注入して、資本主義を救済するということだ。しかし、イタリアなども財政問題にあえぎ、フランス国債さえ「格下げ」の論議が始まっている状況である。欧州諸国だけで、EFSFの拡充を実現できる訳ではない。
 独帝・仏帝をはじめとする欧州諸国は、この「包括案」に基づいて、十一月三~四日のG20首脳会合において、新興国をはじめとする世界各国に融資を要請しようとした。
 G20首脳会合を目前にした十月三十一日、ギリシャ前首相パパンドレウがユーロ圏支援策を受け入れるか否かを国民投票で決めると発表した。欧米の株価が急落し、ユーロの為替相場も急落した。メルケルとサルコジがパパンドレウを直接説得し、G20開催当日にパパンドレウが国民投票方針を撤回した。G20では、この混乱の中で、ギリシャ、そして、欧州連合への批判が相次いだ。国家デフォルトから金融崩壊が始まれば、資本主義総体が大混乱に陥るという状況認識から、G20はユーロ圏「包括策」の支援を大筋では合意した。しかし、G20の場で具体的な融資について新興国から確約を得ることはできなかった。
 しかも、ギリシャ問題に集中している間に、イタリアの財政危機が顕在化した。イタリア国債が急落し、その金利は、財政再建が困難と言われる7%超にまで急騰した。イタリアに対しては、単にEFSFの支援対象国とするだけでなく、その財政再建に関してIMFの監視下に置くことになった。その直後には、スペイン国債も金利が上昇し、6%を超えた。
 ヨーロッパは、ポルトガル、アイルランド、ギリシャに続き、イタリア、スペインまでが金融支援の対象となり、国債暴落から金融危機という事態に直面している。そして、これは各国の政治危機に直結している。
 パパンドレウはG20直後の六日に辞任を表明。イタリア首相ベルルスコーニも退陣。スペインも総選挙によって政権が替わった。ギリシャでもイタリアでも、急激な緊縮財政への転換に対して、労働者階級人民の総反攻が開始されている。為政者の首のすげ替えで済むような事態ではなくなっている。
 メルケルとサルコジ、そしてイタリア新首相モンティは十一月二十四日、ストラスブールで首脳会談を開催し、欧州債務危機阻止のために、ユーロ圏の経済規模の五割をしめる三カ国が結束することを確認した。ここでは、EU条約を改定してユーロ各国財政に介入するEUの権限拡大まで論議された。しかし、メルケルは、「ユーロ共同債」は不要とし、また、欧州中央銀行(ECB)による国債購入にも強く反対した。ユーロ圏枢軸国が危機の深刻化を確認しつつも、一方では、帝国主義としての独自の立場を主張し、欧州連合(EU)の限界を鮮明にしたのである。

 2節 全世界で開始された革命、叛乱、占拠闘争

 二〇一一年、恐慌の深化の中で、貧困と格差に直面する労働者が、とりわけ若者が、現代資本主義そのものに反抗を開始した。

  ◆1項 北アフリカ・中東の独裁政権打倒闘争

 二〇一一年の人民の叛乱はまずもって、北アフリカ・中東の独裁政権打倒闘争の巨大な勝利から始まった。
 チュニジアでは、二〇一〇年十二月の露天商の若者の焼身決起から始まった街頭デモが、全国的なデモとストライキに発展し、一月にはベンアリ大統領を国外逃亡に追い込んだ。さらに二月には、ベンアリ政権を引き継いで成立した暫定政権を、四万人の反政府集会によって退陣させた。ジャスミン革命と呼ばれるチュニジアの独裁政権打倒闘争が、北アフリカ・中東諸国に一挙に拡大した。
 エジプトでは、一月二十五日にカイロを中心に始まった反政府集会・デモが、治安警察部隊、国軍の弾圧を打ち破って全土に拡大。カイロのタハリール広場には百万規模の結集が続き、二月十一日、ムバラク大統領を辞任させた。
 しかし、その後エジプトを暫定統治してきたのは軍事評議会だった。軍事最高評議会議長タンタウィは、大統領選挙を一三年まで先延ばしして軍が権力を掌握し続けるようにしてきた。これに抗議するデモがタハリール広場で続いてきた。武力弾圧によって三十人もが虐殺される中で、治安部隊との激突が続き、十一月二十二日、タンタウィは大統領選挙を一二年六月まで繰り上げると発表せざるをえなくなった。
 この民衆蜂起は、イエメン、バーレーン、サウジアラビア、オマーン、イラン、シリア、ヨルダン、そしてリビアへと拡大した。
 リビアでは、カダフィ独裁政権打倒闘争として闘われてきた。かつて、王政を打倒し、米帝と対決し、パレスチナ解放闘争を支援してきたカダフィ政権であったが、〇三年に米帝に屈服して以降カダフィ政権は帝国主義と協商して独裁を維持する政権に成り果てていた。このようなカダフィ独裁に対する打倒闘争は当然であったが、軍事力を全面的に発動して政権を護持しようとするカダフィ政権との内戦へと事態は推移した。英帝、仏帝など北アフリカを自国の権益圏と捉える欧州各国帝を中心にNATO軍がここに介入した。カダフィを打倒した後の、原油をはじめとするリビアの利権を確保することを狙っての軍事介入であった。
 十月二十日、カダフィ死亡をもって、反カダフィの国民評議会がリビアの全権を掌握した。帝国主義が介入した内戦の後、リビア人民が自らの社会を構築していけるのか。これは、帝国主義足下におけるリビア軍事介入を阻止していく闘いと一体の課題である。

 ◆2項 貧困と格差うちやぶる労働者、青年の決起

 〇八年恐慌以降の財政負担が各国政府の財政危機として認識された二〇一〇年には、欧州各国の政府は緊縮財政政策をとった。公務員削減、年金削減、教育予算削減といった明確な民生破壊が始まった。ベルギー、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、フランス、イギリス、イタリアで、労働者、学生がデモに、ストライキに立ち上がった。
 しかし、二〇一一年、アイルランド、ポルトガル、ギリシャは独自の財政再建が困難となり、ユーロ圏全体の支援―EFSFを受け入れざるをえなくなった。欧州各国の支配者どもは、労働者人民の生活・生命ではなく、銀行―金融システム―全世界の投資がどうなるのかしか論議していない。資本主義そのものの延命がどうなるのか、というぎりぎりの事態に追い詰められているのだ。労働者人民の生活を踏みにじり、増税して、資本主義が延命しようとしている。
 イギリスでは昨年八月、警官による黒人青年射殺事件の抗議行動が大衆的に拡大し、ロンドン暴動となった。キャメロン首相は「ギャングとギャング・カルチャーに対する全面戦争」などと位置づけ、移民、貧困者に対する排外主義を前面に押し出して治安弾圧を激化させた。千九百名も逮捕するという弾圧となった。この火に油を注ぐような弾圧の中で、ロンドン暴動はイギリス全土に拡大した。
 貧困と格差が進み、とりわけ、若年者の失業率が急激に高まる中で、組織されない若者たちの暴動への参加は、帝国主義国家権力の弾圧と金融投機資本への無政府的な叛乱だった。
 ユーロ圏十七カ国全体の失業率は10・2%だが、十五歳から二十四歳の若年失業率は20・3%である。中でも、スペインの若年失業率は45・7%に達しており、ギリシャでは38・5%、イタリアでは27・8%となっている。
 貧困と格差が、人間として生きていく限界を突破してしまっているのだ。この上さらに、国家、資本の側から「財政再建」を進めるという攻撃に対して、欧州全域で抗議が急激に高まった。
 スペインでは首都マドリードでのデモ弾圧に対して、大規模な抗議行動が始まり、五月二十一日には十二万人が結集し、デモは全国に広がった。
 ギリシャではユーロ圏の金融支援と一体になった急激な緊縮政策に対して、労働組合を先頭に抗議行動が闘われている。十月十九日二十日には、四十八時間のゼネストが闘われ、デモには十二万人が結集した。ギリシャ労働者階級人民の決起が、パパンドレウをして「国民投票」という選択を余儀なくさせたのだ。独帝、仏帝、米帝は、パパンドレウを恫喝し、ギリシャ人民を押さえつけようとした。
 イタリアでも、反ベルルスコーニの闘いから、さらに緊縮政策反対の抗議デモが開始されている。
 EU、IMF、G20が決定したからといって、ギリシャ、イタリアの労働者人民が、生活を直接踏みにじる極端な緊縮政策を受け入れることはない。国家財政危機から金融危機という事態は、支配者どもの国際会議と「資金援助」、そして金融投機資本の利害を代弁するIMFの監視で解決する問題ではない。資本主義の危機は、労働者階級人民の闘いの前進の中で、さらに深まっていくのだ。
 昨年九月、〇八年恐慌の震源地―アメリカ帝国主義の足下において、「ウォール街を占拠せよ」のスローガンが掲げられた。グローバリゼーションを主導する米資本主義の中枢で、失業・格差に反対するたたかいが開始された。
 九月十七日から始まった「ウォール街を占拠せよ」行動は、一ヶ月目の十月十七日には数千人のデモに発展した。ニューヨークだけでなく、ワシントン、ロサンゼルス、ボストン、シカゴなど全米の主要都市に拡大。オークランドでは十一月二日、七千人の労働者が「資本主義をぶち壊せ」と叫んでゼネストとデモに立ち上がり、貨物業務を停止させた。さらに、銀行を襲撃した。
 欧州、アジア、中東など全世界八十二カ国で呼応する行動が起こった。
 占拠行動の二カ月目を目前にした十一月十日午前一時、ニューヨーク市警はズコッティ公園に突入し、二百人を逮捕し、行動の拠点を強制排除した。ウォール街の行動に呼応していた全米各地の占拠キャンプも一斉に強制排除された。全米で千五百人が逮捕された。
 十一月十七日、この暴挙に抗議するデモ参加者はニューヨークで警官隊と激突し、さらに四百人が逮捕された。
 ブッシュが戦争をもってイラクに強制した「民主主義」、あるいは、オバマが米国民の融和を掲げ、一方ではアジア太平洋地域にに新たな軍事拠点を築きながら構築してきた「民主主義」とは、こういうものなのだ。現代資本主義の未曾有の危機が深化する中で、ブルジョア独裁は、労働者、若者の前にはっきりとその姿を現したのだ。
 日本においても、反原発闘争は、イラク反戦闘争に匹敵する全人民決起へと発展してきている。これは、反貧困の闘い、また、沖縄をはじめとする反基地闘争、反戦闘争と結合して発展しつつある。3・11以降の事態の中で、労働者人民の利害に立った復興こそが希求されており、ここから、新しい階級闘争、解放闘争が開始されている。

 ◆3項 資本主義の危機と労働者階級

 米帝を中心国とした現代帝国主義は、八九―九〇年のソ連邦―東欧圏の崩壊以降、その資本の力を地球規模で拡大し続けてきた。全世界に蔓延する新自由主義は、労働者階級の歴史的闘争と「社会主義圏」との対抗の中で存在してきた現代資本主義の「規制」や社会政策を次々に破壊してきた。統御されない資本の国境を越えた自由な動きは、世界を金融投機の中に叩き込んだ。あのサブプライム・ローンのごとき、労働者人民に無理矢理借金をさせ、搾り取る金利を「金融工学」で証券化する、という詐欺金融を国際的な事業に高め上げた。この腐りきったアメリカの金融投機資本主義が、世界規模の需要を生み出し、この資金循環の中で、中国、インド、ブラジルなど新興工業国が「経済成長」を続けてきた。
 この金融投機資本主義の世界規模での破綻が、リーマン・ショックで顕現した〇八年恐慌であった。全世界の巨大銀行は、この金融投機を軸にした脆弱な資金循環の中にあることが白日の下にさらされた。アメリカ経済の瓦解とともに現代資本主義総体が崩れ落ちようとしていた。帝国主義各国をはじめとするG20首脳は、世界を自分たちが支配しているという前提の下に、〇八年恐慌の中で、「金融システム」こそ資本主義の血流であるとばかりに瀕死の巨大銀行と保険会社、機軸産業(自動車産業)を救済した。巨額の財政負担をもってG20総体が「景気対策」を行なった。
 〇八年恐慌から三年、帝国主義をはじめとしたG20諸国がなしてきたことは、莫大な財政投入による資本の救済であった。しかし、これで世界が救済された訳ではない。滅びるべき投機資本―巨大銀行が延命し、再び全世界で金融投機を続けている。金、原油、食糧などの資源の国際取引に莫大な資金が流れ込み、その国際価格の急騰が世界中で労働者人民の生活を圧迫している。実体経済においては、延命をはかる企業は、膨大な人員整理を強行し、より安価な労働力を求めて国外直接投資を進めている。
 銀行が救済されて、労働者人民が野たれ死んでいく現代資本主義は、もはや「修正」されることはない。銀行を救済して景気が回復して豊かな資本主義が復活し、雇用が増える、などというのは、オバマをはじめとする帝国主義の支配者どもの詭弁でしかない。財政破綻がヨーロッパで顕在化し、米国も日本も財政危機に直面している。恐慌の深化しか結果せず、しかも、この負担はあらゆる社会政策の縮減として、労働者人民に直接襲いかかっている。
 この攻撃に対する抗議行動が全世界で開始された。この行動は日々発展し、国際的な結合を強めている。労働者階級人民の主体的な組織化が始まっているのだ。帝国主義の本当の危機はここにこそある。

 3節 一超大国―米帝の神話の崩壊

 ◆1項 新自由主義の破綻と中心国の力の減退


 〇八年恐慌そのものは新自由主義の破綻であった。もっと具体的に言えば、八〇年代以降の米帝の資本主義(世界規模での投資・投機を軸にした資本主義)の破綻であった。
 七一年の金―ドル兌換停止、七三年の変動相場制移行によって、米帝を中心国として成立してきた戦後の資本主義体制=ブレトンウッズ体制は崩れた。その後も、帝国主義間の「合意」によってドルを基軸通貨とし、統一的世界市場を維持し続けてきた。しかし、それは米帝の圧倒的な生産力によって資本主義世界経済総体を牽引してきた五〇~六〇年代のブレトンウッズ体制とは異なっていた。独帝・仏帝を軸にした欧州連合、また、アジアへの資本輸出を拡大してきた日帝と、せめぎ合いながら「協調」する体制であった。この擬制的ドル基軸体制の下で、米帝は独自の権益を確保してきた。
 米帝は、圧倒的な軍事力をもって、かつ、それを経済問題ともリンクさせながら、その利害を貫いてきた。米―欧間のNATO、米―日間の日米安保を軸に、全世界を米軍とその同盟国軍の支配下におく世界戦略によって、経済、政治、軍事全般にわたる世界支配を護持してきた。
 そういう世界支配ゆえに、現代の中心国―米帝にとっては、〇八年恐慌は単に経済問題ではない。アフガニスタン戦争、イラク戦争の泥沼化、勝利できない戦役が続き、米帝の軍事的覇権が大きく失墜してきたことと重なって、恐慌は起こっている。
 世界恐慌の第二幕が始まったというべき一一年、その危機は、中心国―米帝にとっていかなる意味をもっていたのか。
 昨夏、オバマ政権は債務上限引き上げ問題で揺れた。辛うじて米国議会で引き上げが合意されたものの、その直後にスタンダード&プアーズは米国債を格下げした。これは、米帝もまた債務問題に直面しているというだけでなく、財政政策をめぐって共和党との妥協ができない内政上の危機に直面しているということでもあった。共和党内の右派潮流「ティーパーティー」が一定の力をもって、オバマの「雇用対策」「富裕層増税」などに全面的に対抗しているのだ。米国内において、貧困と格差に対する決起が始まったことに対置するように、ブルジョアジーの意思を直截に体現するような右派潮流が明確な政治的運動と組織をもって登場してきたのだ。オバマが構想したような米国民の融和どころか、この恐慌の深まりの中で階級対立を鮮明にする事態へと進みつつある。
 一方で、外交においては、パレスチナ国連加盟問題で米帝は孤立を深めた。
 イラク戦争でフセイン政権を打倒した後、中東各国に米軍が駐留し、米軍とその同盟軍の軍事力を背景にした中東植民地支配を強化し、この下での「民主化」=帝国主義資本の投資・投機の拡大、というブッシュの野望は、戦争の泥沼化で破綻した。この事態の中で、米帝が主導してイスラエルの利害を貫徹する「中東和平」ということは全く進展しなかった。オバマはこの事態を放置したまま、主戦場をアフガニスタンに移そうとしてきた。
 チュニジア革命、エジプト革命は、この「中東和平」の膠着状態を、アラブ人民―パレスチナ人民の側から転換する情勢を作り出してきた。パレスチナ・アッバス議長は九月二十三日、国家としてのパレスチナの国連加盟を申請した。イスラエルと米帝は反対している。最終的には、米帝は拒否権を発動できる。しかし、米帝の拒否権をもってパレスチナ国連加盟を否決すれば、米帝の世界的孤立は鮮明になる。このような状況にまで至っていること自体が、米帝の中東外交の政治的軍事的失敗なのだ。
 米帝は、米州諸国全体においても、かつての巨大な植民地支配の根拠を失ってきている。米帝は「アジア太平洋地域」を強調してAPECを領導しようとしているが、これは、米州諸国での米帝の支配が弱まっていることの反映でもある。ベネズエラとキューバ、ボリビアなどが主導する米州ボリバール代替構想(ALBA)や、ブラジルやアルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイなどが主導する南米南部共同市場(メルコスール)など、反米あるいは非米の地域統合が進んでいる。昨年十二月三日には、米国とカナダをのぞく米州の三十三カ国首脳が、ベネズエラに集まり、「中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)」を新たに発足させた。
 この状況の中で、オバマは、米国を「アジア太平洋国家」と改めて位置づけて、環太平洋経済連携協定(TPP)をもって「貿易・投資の自由化」を主導しようとしているのだ。TPPとは、日帝、中国に対抗しつつ、米帝が東アジアの主導権を握ろうとする攻撃にほかならない。
 米帝の財政危機は国防費にも及ぶ。全世界に展開する米軍を縮小し再編する圧力はますます強まる。イラク戦争の失敗と「撤退」の中で、米帝の世界支配は大きく弱化せざるをえないだろう。経済的な危機だけではない情勢の大きな変転が、基軸通貨ドルの減価とともに進んでいるのである。

 ◆2項 米帝―オバマの覇権維持の野望

 この事態の中で、米帝―オバマは、その覇権をいかに維持しようとしているのか。
 ブッシュ政権が開始したアフガニスタン戦争、イラク戦争の泥沼化の中で、米帝の政治軍事的な位置は大きく揺らいできた。米帝は十年以上にわたって米軍や同盟国軍を投入して殺戮を続け、中央アジア・中東地域を戦乱におとしいれてきた。費やされた莫大な戦費が、米帝の財政危機の重要な要因ともなってきた。
 昨年、米帝―オバマ政権は、ウサマ・ビンラディン殺害をもって「勝利」を確認しようとした。「非対称戦争」に一つの決着をつけ、イラクから米軍を撤退させ、主戦場をアフガニスタンに移そうとしている。オバマは、イラクかアフガニスタンかという一国ごとの比較をしているのではない。ロシア・中国・インドに挟まれた南アジア・中央アジア全域をにらむアフガニスタンに米軍を集中することが、米帝の戦略的な要と捉えているのだ。
 アフガニスタンにおいては、二〇一四年以降も米軍駐留を継続し続ける条件が作られている。アフガニスタン大統領カルザイは十一月十六日、「伝統的ロヤ・ジルガ(国民大会議)」において、一四年末のアフガン側への治安権限委譲後も、米軍駐留が「われわれの利益になる」として駐留継続を主張した。
 米国防長官パネッタは十一月十五日、一一年十二月にイラク駐留米軍二万四千人を完全撤退させた後も、中東・湾岸地域に米軍四万人を駐留させる方針を明らかにした。現在、米軍はクェートに二万九千人、バーレーンとカタールにそれぞれ七千人、アラブ首長国連邦に三千人が駐留しており、この態勢を維持するということなのだ。「イラク完全撤退」を掲げてはいるが、隣国のクウェートが駐留米軍の一大拠点となっているのであり、イラク、イランをにらんだ米軍の中東への配置を続けるということなのである。
 オバマは、この十年にわたる戦役を「決着」させ、中東への一定の兵力を配備した上で、アフガニスタンを南アジア・中央アジアをにらむ拠点として位置づけ直そうとしている。その上で、米帝の権益の最大の根拠をアジア太平洋地域とし、あらためて軍事的な軸心を東アジア―太平洋地域に据えようとしている。
 オバマは十一月十七日、オーストラリア議会で行なった演説で、安全保障政策においてアジア太平洋地域を最優先に位置づけるという戦略的転換を明らかにした。オバマは、アジアは「雇用と機会の創出という最優先課題の達成に決定的に重要」という理由から、米国を「太平洋国家」と位置づけなおし、軍事において重点化するとしたのだ。
 具体的には、在日米軍と在韓米軍の「強固な兵力展開を維持」し、東南アジアと南太平洋でも米軍を「強化する」とした。
 オバマはこの演説の前日の十六日には、豪首相ギラードと会談して、豪北部ダーウィンの豪軍基地に米海兵隊二千五百人を駐留させることを合意した。米帝は、アジア太平洋地域において対中国の観点から軍事戦略を立て、韓国、日本、沖縄に駐留する米軍を前線と捉え、後方基地としてのグァム、さらにダーウィンを位置づけて兵力配置するということだ。
 もちろん、国防費削減圧力の中で、同盟国の既存基地を活用して、米帝の負担を少なくして米軍配備を強化するという意図を含んでいる。日本でやってきた通りのことである。

 ◆3項 恐慌の深化に直面する現代帝国主義

 〇八年恐慌は、帝国主義各国の財政危機を大きな要因として、劇的な変転へと進みつつある。市場は、ヨーロッパ、アメリカの財政危機や政治的混乱を反映して、日々大きく変動している。
 ユーロ圏そのものが瓦解して世界経済が混乱に陥るのか。政府債務危機が金融危機として発現し、巨大銀行の連鎖倒産として恐慌の第二段階が進むのか。
 世界経済の収縮は始まっている。しかし、G20は一つにまとまっているのではない。欧州と他の地域の間、そして、帝国主義国と新興国との間には危機意識の乖離がある。財政危機の責任をめぐって対立している。どの国家も全体を救済する余裕などない。
 さらに、この財政危機、金融危機が米帝に及べば、基軸通貨ドルそのものを資本主義各国が維持し続けようとするのか否か、という事態に直面するだろう。
 ユーロが暴落し、ドルも暴落してきた。相対的に「安定」と見られた円が買われ、円高が進んできた。むしろ、市場では金価格が上昇を続けてきた。一昨年、世界銀行総裁ゼーリックは、G20の政策協調を主張しようとした論文の中で、「金価格を国内物価や為替相場に関する指標として用いるべき」ということを書いている。これが、ドル信認低下の中での「金本位制回帰」の議論と受け取られてしまった。現実には現代帝国主義が金本位制に回帰することなど不可能である。にも関わらず、ゼーリックの主張が「金本位制回帰」などと論じられること自体、基軸通貨としてのドルの信認がそこまで損なわれているということである。
 恐慌第二幕の進展の中で、米帝の「中心国」としての根拠は急激に失われていくだろう。
 それは、個別資本、個別国家の破綻という問題ではない。米帝を軸にした戦後世界体制の枠組みそのものの瓦解が始まることになる。
 統一的世界市場の瓦解、基軸通貨ドルの瓦解は、帝国主義間対立が不可逆的に進展し、ブロック化に進むということである。
 そして、われわれが現在の世界情勢からしっかりと掴み取ることができることは、この現代帝国主義の危機をより深めているのが、全世界で開始された労働者階級人民の決起であるということだ。
 一年前、全世界の人民は、巨万人民の反政府闘争が独裁政権を打倒していく事実を、同時代の現実として見つめていた。
 貧困・格差への対抗行動は、反資本主義運動として発展しつつある。国家権力の弾圧に抗して、団結を強め、より強力な階級闘争へと成長している。
 現代帝国主義が金融グローバリゼーションの道具としてきたIT技術を、闘う労働者階級人民は、世界各国・地域の闘争を瞬時につなぐ道具として奪い返してきた。
 資本の危機の中で、保守主義、排外主義が先鋭化してきた。しかし、労働者階級人民の自らの利害をかけた闘争は、この反動を打ち破って前進していくだろう。
 現代帝国主義の発展と技術革新、そして、その衰退と腐敗の足下で、全世界の労働者人民が、とりわけ若者たちが、資本主義そのものの本質を見極め、これと対決する新しい力を獲得してきている。
 二〇一二年、全世界の階級闘争の発展こそが、帝国主義の危機の最大の要因となっていくであろう。




  二章 国内情勢

 反人民性強める日帝・野田政権と日本階級闘争の新たな局面


 一節 深まる日本資本主義の危機


 バブル崩壊以降、一九九一年から二〇一〇年までの日本の経済成長率の平均はわずか0・9%であり、「失われた二十年」と呼ばれるほど日本資本主義は成長力を喪失してきた。資本主義世界が世界恐慌の第二幕に向かうなかで、日本資本主義もまたさらに危機を深めている。昨年七月十二日、日本銀行は二〇一一年度の経済成長率予測を0・4%に引き下げた。そして、東日本大震災による深刻な打撃、一ドル七十五円台に達する円高の進行、世界的な債務・金融危機のもとで、東証平均株価は昨年十一月には八千百円台にまで下落した。また、リーマンショックによる巨額の財政出動の結果、財務省統計表一覧によれば政府の債務は昨年九月末日時点で、国債および借入金残高が約九百五十四兆四千百八十億円に達している。政府の歳入の47・9%を国債の発行などでまかなっていることから、今年の三月末にはこれらの政府債務は千五十六兆円を超えると予測されている(五十嵐財務副大臣)。これはまさに構造的危機と言えるものなのだ。
 日本の帝国主義ブルジョアジーは、バブル崩壊以降、ますます激化する国際的な資本間競争、帝国主義間抗争のなかで生き残るために、以下の戦略的課題を推進してきた。第一には、生産拠点の海外移転をさらに促進し、海外生産の比重を高め上げていくことであった。第二には、合併やM&Aなどによって、国際競争力を持つ巨大独占資本を形成していくことであった。第三には、新自由主義政策をもって規制緩和を推進し、その重要な一部として労働者の非正規雇用化など、労働者をますます無権利な状態で搾取・収奪できる構造をつくりだすことであった。
 しかし、この二十年を見れば、それは日本資本主義の再生という意味では成功してきたわけでは決してない。国内産業の空洞化が進行し、失業と非正規雇用化による労働者の貧困などによって、国内市場は縮小していった。そして、内需が低迷してきただけではなく、日本の多国籍資本の国際競争力を増強していくことにも成功してこなかった。このようななかで二〇一一年に世界的に顕在化した債務・金融危機、そして急激に進行する円高は日本資本主義にいっそう深刻な打撃を与えるものとなった。
 日本経団連の「経団連成長戦略2011」は、この事態を日本の帝国主義ブルジョアジーがどのように打開しようとしているのかをはっきりと示している。それはまず、国家の政治力・軍事力を最大限に活用して、国際的な資本間競争、帝国主義間抗争において生き残ることにある。原発輸出を含むインフラ輸出の推進を成長戦略の基軸のひとつとしていくこと、また二国間・多国間の自由貿易協定や経済連携協定をもって投資と貿易の自由化をさらに推進していくことなどである。WTOが百五十カ国を越える加盟諸国の利害対立から、日本の多国籍資本が要求する貿易と投資の自由化のための何ら意味ある合意をつくれないなかで、日本はこの間、二国間・多国間のFTA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定)の締結を推進してきた。日本の帝国主義ブルジョアジーにとって、これらのFTA・EPA締結の目的は、資本投下市場・商品販売市場の拡大にあり、それはまた第三世界の低賃金労働者の搾取と資源・食糧などの略奪をいっそう強めていくことにある。
 APEC(アジア太平洋経済協力)は、二〇二〇年までに「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)」を実現すると合意してきた。そのもとで、東アジアでは多国間のFTA・EPA形成のヘゲモニーをめぐって、アメリカ・日本・中国がますます対抗関係を強め、相互の争闘戦が熾烈化してきている。
 八〇年代後半以降の日本の東アジア諸国へのぼう大な直接資本投下を経済的な根拠として、この地域における経済的連携が進展してきた。この十年をかけてASEAN+3(日中韓)の構造が形成され、その内部では急速に資本主義的発展を続ける中国の位置が高まってきた。これに対して、日本は中国に対抗し、インド・オーストラリア・ニュージーランドを加えたASEAN+6の構造を提唱しつづけてきた。昨年十一月十七日・十八日のASEAN首脳会合では、中国が譲歩する形でASEAN+6による「広域自由貿易圏」の形成が合意された。また、それに先行する形での日中韓三国のFTA締結を展望した協議が開始されていこうとしている。
 AEEAN+3であれASEAN+6であれ、それはアメリカを排除した構造である。アメリカは、このような中国や日本の動きに対抗して、二〇〇九年十一月にTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に参加を表明し、これを強力に推進しようとしてきた。TPPは、そもそも二〇〇六年五月、シンガポール・ニュージーランド・チリ・ブルネイの四カ国が締結した経済連携協定として発足したものであった。TPPには当初の四カ国に加えて、アメリカ・ベトナム・オーストラリア・ペルー・マレーシアが協議に参加してきた。TPPは、加盟国間の貿易において全品目の関税を十年以内に原則全面撤廃し、知的財産権、労働規制、金融、医療サービスなど広範な領域での規制や非関税障壁の撤廃を目標としている。アメリカ・オバマ政権は、このTPPをもって環太平洋地域における自らが主導する経済圏を形成し、日本を組み込みつつ中国を牽制していこうとしているのだ。
 このようななかで、野田政権はアメリカが要求するTPPへの参加をめざし、各国との協議を開始すると昨年十一月のハワイAPECにおいて表明した。その目的は、アメリカをはじめとした環太平洋諸国の市場への日本の多国籍資本の展開を拡大するとともに、中期的にはアメリカと連携することによってASEAN+6におけるヘゲモニーを強化し、中国に対していっそうの市場開放を迫ることにある。野田政権や日本経団連は、このTPPへの参加を推進しようとしているが、日本のブルジョアジーや民主党・自民党内は分裂している。
 TPP参加を表明している日本を含めた十カ国のGDPを比較すれば、その91%を日米両国が占めている。その意味で、TPPとは実質的に日米経済連携協定にすぎないとも言える。したがって、TPPは自動車産業のようなアメリカを主要な資本投下市場・商品販売市場とする日本の多国籍資本に短期的には利益をもたらすものではあっても、中国・韓国が参加しないTPPはこれまでのASEAN+6(日中韓)を基礎とした日本の東アジア経済戦略と矛盾する面がある。
 帝国主義国間の力関係からすれば、日本の帝国主義ブルジョアジーの選択肢は、小沢・鳩山のようにASEAN+6に軸足を置いて日中関係を強化しながらアメリカに対抗するか、あるいは外務省・経産省・防衛省官僚の伝統的な手法のままに基本的にアメリカに追随して日米同盟強化のもとで権益を確保するのか、二つしかないのだ。
 野田政権は、「東アジア共同体」構想を掲げてアメリカからの相対的自立を志向した鳩山政権とは違い、経済的にも政治・軍事的にも明らかに日米同盟に軸足を置こうとしてる。ここに、TPPへの参加をめぐってブルジョアジーや民主党・自民党内が分裂している根拠がある。
 だが、労働者人民にとって重要なことは、日本帝国主義の延命のためにこの二つの選択肢のどちらを選ぶべきなのかということではない。これらの環太平洋地域における貿易と投資の自由化、国際的な規制緩和・撤廃の動きが、労働者人民の生活と権利にどのような影響をもたらすのかということこそが重要なのだ。そこにおいて、TPPへの参加はきわめて重大な影響をもたらす。それは、TPPが関税の原則的な撤廃や広範囲な規制緩和・撤廃を掲げているからである。TPPへの参加によって食糧自給率が現在の40%から13%にまで下落する(農林水産省試算)と予測されており、それは農業のみならず労働、医療などさまざまな領域で、関税撤廃・規制撤廃による深刻な影響をもたらすものとなる。労働者人民の生活と権利を擁護するためには、野田政権が推進するTPPへの参加など絶対に認めることはできない。
 「経団連成長戦略2011」ではまた、国内的には原発の維持・推進を意味する電力供給の安定化、法人実効税率の引き下げ、高い労働コストと多様性・柔軟性を欠く労働市場の解消、税と社会保障の一体的改革などを課題として掲げている。しかし、それはますます労働者人民に犠牲を強い、社会を荒廃させていくものに他ならない。野田政権は、これらの日本経団連の要求にもとづき、消費税大増税を今年の通常国会で成立させることをうちだし、労働者派遣法改正を無内容なものにすることなど、まさに小泉政権以来の新自由主義政策に回帰していこうとしているのだ。

 二節 日帝ブルジョアジーの利害を代表する野田政権

 昨年九月、二〇〇九年の政権交代から三人目の首相として野田佳彦が登場した。野田は、民主党内でも右派として知られ、財務省官僚と強く結びついてきた政治家である。野田政権は、日本経団連などの日本の帝国主義ブルジョアジーの利害を全面的に代表する政権として発足した。民主党政権は、首相が交代するたびに、二〇〇九年の政権交代時のマニフェストを投げ捨ててきた。労働者派遣法の改正、障害者自立支援法の廃止、米軍再編の見直しなど、労働者人民の要求の一部を取り入れる形で掲げた政策はことごとく放棄されるか、まったくの無内容にされた。その代表的なものが、米軍再編の見直しとならんで、労働者派遣法の改正である。民主党は昨年十一月十三日、労働者派遣法改正案から製造業派遣や登録型派遣の原則禁止を削除することで自民党・公明党と合意した。いったい何のための派遣法改正なのか。野田政権に至っては、かつての自公政権との違いを見つけることすらもはや難しいありさまである。
 野田政権の課題は、その末期には政権の体をなさなかった菅政権にかわり、日本の帝国主義ブルジョアジーの基本路線を推進する政権を再建することにある。経済の領域では、日本経団連の「経団連成長戦略2011」を実行することであり、TPPもその一部である。それは、資本主義世界がリーマンショック時よりもさらに危機的様相を深め、EUやアメリカの財務・金融危機が次の大恐慌の到来を予測させるなかで、多国籍資本の国際競争力の徹底した強化とこれを可能とする国家政策の推進に活路を見出そうとするものである。そしてまた、日本においても深刻化する財政赤字・債務問題を打開するために、すさまじい大増税や社会保障・社会福祉の削減を強行しようとしている。そのことがどれほど労働者人民に犠牲を強い、貧困と無権利を拡大するものとなるのかは、二章一節に提起したように火を見るよりも明らかなことなのだ。このことを前提として、二章二節では主要に野田政権の安保・軍事政策や原発・エネルギー政策の領域について批判を提起するようにしたい。日本帝国主義にとって、一節で提起した経済の領域での延命戦略と二節で提起する政治・軍事戦略は不可分一体のものである。
 野田政権は第一に、日米同盟の深化・発展を対外戦略の基軸とし、米軍再編の推進に政権をあげて向かおうとしている。菅政権末期の六月二十一日、日米安全保障協議委員会(2プラス2)が開催され、あらためて辺野古にⅤ字型滑走路二本をもつ新基地を建設すると確認した。そして、九月二十三日の日米首脳会談において、オバマもまた「これからの進展を期待する。結果を求める時期が近づいている」と述べ、野田に強い圧力を加えた。オバマ政権が、辺野古移設の進展を強く迫ってきたのは、米上院において米軍再編計画の見直しを要求する動きが顕在化し、普天間基地の辺野古移設についても財政難や計画の非現実性などから嘉手納基地統合案などが提起されてきているからである。オバマ政権は何としても日本政府に辺野古移設を実行させ、米軍再編計画を維持しようとしているのだ。
 オバマ政権からの圧力のもとで、野田政権は米軍再編を何としても推進しようとしてきた。昨年秋、野田首相は仲井真知事に対して、辺野古新基地建設に関する「環境影響評価(アセスメント)」の評価書を二〇一一年内に提出すると通告した。評価書が提出されれば、知事は九十日以内にそれへの意見を提出することが義務づけられており、公告・縦覧期間をへて、政府は知事に対して辺野古新基地建設のための公用水面埋め立ての認可申請を行うことができる。だが、いかに野田政権が辺野古移設を策動しようとも、沖縄人民の辺野古移設阻止という圧倒的な民意は揺るがない。仲井真知事もまた、次々と訪沖する閣僚たちに対して普天間基地の県外移設と日米合意の見直しを要求し、公用水面埋め立て認可申請についても認可できる状況にはない。高江ヘリパッド建設や沖縄へのオスプレイ配備を阻止するたたかいを含めて、攻防は重大な局面を迎えている。沖縄解放闘争を強化し、辺野古新基地建設阻止・普天間基地の即時閉鎖・撤去に向けて闘おう。
 このような沖縄をめぐる動きと並行して、野田政権は岩国基地大強化・愛宕山米軍住宅建設に向けても、急速に動きだしてきた。昨年十月十七日、渡辺周防衛副大臣が山口県と岩国市を訪問し、米軍住宅建設のための愛宕山開発跡地の買い取り費用として百六十八億九千万円を提示した。これを受けて、二井山口県知事と福田岩国市長は、愛宕山の売却に向けて協議を開始した。そして、昨年十一月には、福田市長はついに愛宕山を米軍住宅用地として売却することを決定した。
 愛宕山を守る会や愛宕山を守る市民連絡協議会などは、この渡辺防衛副大臣の山口県、岩国市への訪問に対して断固とした抗議行動を組織し、十一月二十三日には岩国市民集会が開催された。岩国基地大強化・愛宕山米軍住宅建設をめぐる攻防もまた、この二〇一二年に重大な局面を迎えようとしている。そしてまた、今年の一月二十九日には岩国市長選挙が予定されている。岩国住民の闘いと連帯し、何としても岩国基地大強化・愛宕山米軍住宅建設を阻止しよう。
 野田政権は第二に、日本の戦争国家化をさらに推進していこうとしている。米軍再編は、日米軍事一体化や日本の戦争国家化と深く結びついている。ますます海外への資本投下をおし進め、海外権益を拡大していく日本のブルジョアジーにとって、日本の海外権益を自らの軍事力によって防衛できる帝国主義へと飛躍していくことは、切実な要求であり続けてきた。そしてまた、イラク侵略戦争が石油利権の争奪戦という側面を持ったように、帝国主義間の抗争は経済外的領域、国家の政治力・軍事力を総動員した抗争として行われてきた。日本帝国主義は、九一年中東湾岸戦争の過程でそのことを嫌というほど思い知らされた。そこに、日本の帝国主義ブルジョアジーが日本の戦争国家化を熱望する根拠がある。
 野田政権は、米軍再編の推進と結びつけて、与那国島などへの自衛隊の配備を強行しようとしている。そればかりではない。民主党政調会長の前原は、就任直後、自衛隊の海外派兵の推進、集団的自衛権行使の推進と海外における武器使用基準の見直し、武器輸出三原則の見直しなどをぶちあげた。民主党はまた、衆参両院の憲法審査会の委員名簿の提出に踏み切り、いよいよ改憲案の提出とその審議が可能となる段階が始まる。野田は、かねてから自分が改憲論者であることを公言してきた。自公政権の崩壊によっていったん停止してきた改憲へのプロセスが、いま動きだそうとしているのだ。このような戦争国家化を絶対に阻止すること、とりわけ憲法九条改悪を何としても阻止しなければならない。
 野田政権は第三に、原発の維持・推進という方向を明確にしてきた。野田首相は、九月十三日の所信表明演説において「原発への依存度を可能な限り引き下げていく」と言いつつ、「脱原発と原発推進の二項対立で捉えるのは不毛」だと述べ、脱原発という立場には立たないことを明確にした。さらに、九月二十二日の国連「原子力安全会合」の演説では、「原発への依存度を引き下げる」ことすら言わなかった。それは、福島原発事故の当事国でありながら、原発を維持・推進していくという国際的な宣言にほかならない。
 野田政権は、停止中の原発の再稼動について、安全性が確認され地元の合意が得られたものから順次再稼動していくと表明してきた。また原発の新設・増設についても、個々に判断するとして、可能なところから再開しようとしてきた。さらに、原発輸出まで推進しようとしてきた。野田政権は、今年の夏をめどに、新たな「エネルギー基本政策」や「原子力政策大綱」を作成し、福島原発事故以降の日本の中期的・長期的なエネルギー政策・原発政策を確定する。野田政権がここにおいて原発の維持・推進をあらためて日本の国策として明確にしようとすることは必至である。
 そこには、原発建設・原発輸出を日本の新たな成長戦略の基軸のひとつにしようとしたこれまでのエネルギー基本政策が引き継がれているのだ。電力独占資本など官産学複合体は、これらのことを一貫して強く要求し続けてきた。そこにはまた、原発の推進をもって日本の核武装の条件を維持していくという軍事的目的が貫かれている。
 原発の廃止に向けた闘いもまた、この二〇一二年、いよいよ決定的な攻防局面を迎える。反原発を掲げた全人民政治闘争を全国・各地で推進し、政府・国会に対してすべての原発の廃止とそこに至るプログラムの決定を迫る巨万の反政府闘争へと発展させていこう。停止中の原発の再稼動、原発の新設・増設を大衆的実力闘争をも含めて全力で阻止しよう。そして、反原発運動の国際連帯を推進し、アジア・世界への原発輸出を阻止するために闘おう。核兵器であれ原発であれ、核と人類は共存できない。反原発闘争と被爆者解放闘争、被曝者解放闘争をしっかりと結合させ、核兵器と原発を全世界から一掃していかねばならない。

 3節 保守二大政党制支配の後退と日本階級闘争の新たな局面

 昨年三月十一日の東日本大震災と福島原発事故は、日本の政治状況、階級闘争の状況を大きく変貌させた。無数の人々が被災者に心を寄せ、その支援のために立ちあがった。そして、反原発を要求する闘いが全国・各地で組織され続け、九月十九日の六万人集会の成功に示されるように、巨大な大衆運動へと発展してきた。他方において、ますます犠牲を集中され、貧困と無権利に苦しむ労働者を組織しようとする労働運動における努力が粘り強く推進されてきた。また沖縄・岩国・神奈川をはじめとして、米軍再編・日米軍事一体化と対決する各地の反基地運動が断固として組織され、この地元の闘いへの連帯と支援が取り組まれてきた。このような中から、二〇一二年の階級闘争の前進を切りひらいていくために、以下のことを提起しておきたい。
 まず第一に、この間の日本の階級闘争の基底にあるものは、小泉政権以降の新自由主義政策のもとで一挙に進行した労働者の非正規雇用化、貧困と無権利がますます過酷になってきていることである。そして、社会保障・社会福祉が崩壊的な危機に向かい、地方においては過疎化や地域社会の解体がますますひどくなってきたことである。この3・11以前から進行してきた事態は、リーマンショックから現在の財政・金融危機に示される資本主義の世界的な危機のもとで、さらに深刻化してきているのだ。
 日本の「相対的貧困率」は、二〇〇九年に16・0%に達した。政府の統計によってすら完全失業率は、5・3%(三百三十四万人)、十五歳から二十四歳までの失業率は9・4%に達している(二〇一一年九月統計局労働力調査、以下同じ)。また、日本の被雇用者五千十一万人のうち、正規雇用は三千三百五十五万人にまで減少し、非正規雇用は千七百五十五万人(34・3%)まで増加した。ここにおいても青年層の状況はさらに過酷である。十五歳から二十四歳の被雇用者では、一九九〇年には男女とも20%程度であった非正規雇用率は、男性で49・1%、女性では51・3%となっている。
 昨年三月、イギリスでは青年層を中心とした暴動が発生した。またアメリカでは、青年層を中心にした「ウォール街を占拠せよ」と呼びかけるデモが九月十七日に開始され、アメリカ各地に波及するとともに、十月十五日の世界一斉行動日には九十一カ国・千八百カ所以上で集会やデモが組織された。この反格差・反貧困を主テーマとし、社会の富を独占する金融独占資本をターゲットとしたデモには、イラク・アフガンからの米軍の撤退を要求する反戦運動や反差別運動などが結びつき、新たな社会変革運動という様相を強めてきた。日本においては、未だこれに呼応する動きは小さなものにとどまってはいる。しかし、日本社会においても労働者の貧困と無権利がすさまじい勢いで拡大しており、ウォール街占拠デモと同質の青年層を中心とした運動が拡大していく条件が広く形成されてきている。
 第二には、東日本大震災と福島原発事故という事態のもとで、生命や安全を脅かされることなく、人らしく生きたいという人々の素朴な願いと資本による利潤追求を第一義の目的とする資本主義が相いれないことがより明確になり、これまで集会やデモに参加したことがなかった広範な人々が反原発運動・脱原発運動に立ちあがってきたことである。
 何人もの研究者が三陸沖での巨大地震と巨大津波の発生を警告し、政府の一部でも認識されていたにもかかわらず、なぜ政府はこれほどまでに無策のまま東日本大震災の発生に直面したのか。その根拠のひとつとして、資本による利潤追求を第一義の目的とする資本主義のもとでは、自然災害から人々の命と生活を守ることは二義的、三義的な課題とならざるをえないことがある。福島原発事故をめぐっては、さらに事態は明確である。原発事故発生の危険性と深刻な事故が発生したときの破滅的事態が、多くの研究者や反原発運動から警告されていたにもかかわらず、政府は日本の資本主義の発展に不可欠な電力の確保のためにそれを無視し、国策として原発を推進してきた。そして、巨大な原発利権によって結びついた電力独占資本を中心とした官産学複合体がこの国策を推進してきた。しかし、電力独占資本といえども利潤追求を第一義の目的とする民間資本である。そのことがまた、原発事故発生の危険性をさらに高めあげてきたのだ。
 3・11以降の反原発運動・脱原発運動は、原発推進という国策の転換を要求する巨大な大衆運動として発展してきた。そのもとで、原発の推進を立場としてきた連合すらその見直しを、建前であったとしても表明せざるをえなくなった。そして、「原子力の平和利用」を容認してきた日本共産党もまた、原発からの「段階的撤退」から「ただちの撤退」へと転換した。これらは、原発の廃止を要求する超党派の結集構造、広範な全人民的政治闘争の成立を可能とする新しい条件をつくりだした。われわれは、政府・国会に対して原発の廃止とすべての原発の廃炉に向けたプログラムを決定させねばならない。それはまた、国策といえども不動のものではなく、労働者人民の闘いによってこれを転換させていくことができるという経験を日本の階級闘争のなかに刻み込むことでもある。
 それだけではない。3・11以降の反原発運動には、子どもたちを被曝から守りたいと願う女性たちをはじめとして、これまで集会やデモに参加したことがなかった多くの人々が立ちあがってきた。そして、青年層を中心にした新しい闘いが登場してきた。われわれは、このことに着目する。これらの青年層を中心とした新たな闘いは、反資本主義という質を内包し、政府と電力独占資本に対する直接行動を重視するものとして形成されてきた。そして、これらの新たな闘いを推進する青年たちの少なくない部分が、この数年、反貧困運動や辺野古新基地建設に反対する闘い、在特会ら排外主義差別者集団との闘いを担ってきた青年活動家たちであった。そのことは、反原発運動と反貧困運動・反基地運動・反排外主義運動との結合の可能性を生みだすものであり、新たな社会変革運動の登場を予告するものであると言える。基地も原発もない人らしく生きられる社会へ、この資本主義・帝国主義の打倒と結合していくスローガンのもとに、闘う労働者人民の総結集を実現していくことが求められている。
 第三には、保守二大政党制支配がその規定力を後退させ、そこには収れんされることのない、新しい流動が始まってきたことにある。日本の帝国主義ブルジョアジーは、一九九〇年代以降、保守二大政党制支配を日本においても実現しようとしてきた。保守二大政党制支配は、犠牲を集中される労働者人民の怒りが反資本主義・反帝国主義にもとづく闘いにまで発展することを抑止し、それらを保守二大政党間の政権交代に封殺することを目的とした政治支配体制である。
 二〇〇九年の自民党から民主党への政権交代は、典型的な保守二大政党間の政権交代であった。小泉政権以来の新自由主義政策に対する労働者人民の怒りや不安、さまざまな労働者人民の闘いがいったんこの政権交代に引きつけられた。しかし、民主党政権はかつての自公政権と何ら変わらない政策へと転換していき、ぼう大な労働者人民が民主党から離反していった。
 だが、そのことは自民党の支持率の上昇には結果しなかった。保守二大政党制支配は、二大政党の政策があまりにも似かよってしまうと規定力を後退させ、そこに収れんされない労働者人民を増大させていく。その間隙を突くようにみんなの党のようなポピュリズム政党が伸張してきた。また、橋下・大阪維新の会は、ポピュリズムを基礎としつつも、教育基本条例や職員基本条例などきわめて強権的で排外主義的な性格を強めてきた。そして、「頑張ろう日本全国行動委員会」(会長・田母神俊雄)などの右翼勢力が勢力を拡大し、在特会ら排外主義差別者集団も再び活発化してきている。これらの右翼・排外主義勢力と断固として対決していかねばならない。
 他方において、保守二大政党制支配には収れんされない労働者人民の闘いもまた拡大してきている。それはまず、普天間基地の辺野古移設などに反対する沖縄人民の闘いであり、全国各地の米軍再編・基地強化に反対する闘いである。民主党も自民党も米軍再編の推進で足並みをそろえてきたにもかかわらず、沖縄では「島ぐるみ」の闘いをもってこれに対峙してきた。そして、高揚する反原発運動・脱原発運動もまたそうである。福島原発事故にもかかわらず民主党・自民党が原発を維持・推進しようとしてきたことに対して、すべての原発の停止と廃炉を要求する全国・各地の闘いは、ますます拡大していこうとしている。さらに、未だウォール街占拠デモのような明確な形をとっていないとはいえ、反資本主義という質を内包した反貧困運動、社会の富を独占する金融独占資本に対する広範な反乱が発生していく条件もまた形成されてきている。
 保守二大政党制支配が規定力を後退させ、そこには収れんされない流動が拡大し、労働者人民の闘いが噴出していくという新しい局面が始まっている。共産主義者と先進的労働者人民は、この新しい局面を促進し、そのなかから資本主義・帝国主義の打倒とプロレタリア社会主義革命を展望した階級闘争の前進を切りひらいていかねばならない。人民のなかへ、とりわけ犠牲を集中され、いま立ちあがりはじめた青年たちのなかへ分け入っていこう。闘いを共有し、資本主義・帝国主義への批判をおし広げ、あらゆる闘いを資本主義・帝国主義との闘争へと発展させていこう。ここにおいて、共産主義者と先進的労働者人民の領導性を強化していくことが何よりも求められている。
 われわれは、二〇〇四年の共産主義者同盟(統一委員会)の結成以降、崩壊した戦後階級闘争構造にかわる新たな階級闘争構造の建設を推進してきた。階級的労働運動を基礎に、反帝国際主義政治闘争のための政治的統一戦線を編成し、被抑圧人民・被差別大衆の自己解放闘争と結合した新たな階級闘争の構造を建設しようとする先進的労働者人民の闘いを支持・推進してきた。そして、そのただなかに強固な革命的労働者党を建設しようとしてきた。それは、歴史的には革命のソヴィエトの建設を展望した努力である。言うまでもなく、それは未だ途上にある。日本における階級闘争が新しい局面を迎えるなかで、われわれはこの新たな階級闘争構造を建設するための努力と保守二大政党制支配に収れんされない労働者人民の新たな闘いを領導するための努力を結合させて、共産主義者と先進的労働者人民の領導性を高めあげていかねばならない。そうすることによって、新たな階級闘争構造の建設により広範な労働者人民を引きつけていかねばならない。このことは、開始された二〇一二年の階級闘争におけるわれわれの重要な課題である。




  第三章 党建設方針

 危機が深まる時代、革命的労働者党建設を根拠に、階級的反撃を強化せよ!


 ▼一節 世界恐慌、侵略反革命戦争の危機、今こそ共産主義革命を

 ◆1項 プロレタリア解放綱領を明確にし、労働者人民の先頭に立って闘おう

 二十一世紀初頭、現代資本主義、現代帝国主義の世界体制の危機の深刻化に対して、共産主義者、革命的労働者党は共産主義革命、プロレタリア社会主義革命による危機の打開の立場を鮮明にしてたたかわなければならない。確かに、現在の資本主義社会、そして現在の世界恐慌や侵略戦争による労働者階級、被抑圧人民の犠牲の拡大は深刻化しているが、この事態を現代の革命の主体であるプロレタリア人民が自らの革命を成功させない限り、資本主義―帝国主義はプロレタリア人民へ犠牲をおしつけ、生き延びていくのである。重要なことは、プロレタリア人民が自らの権力を確立し社会を編成していくことにある。
 中心国―米帝国主義の歴史的没落、世界編成能力の後退、中国などの諸国の台頭、多国籍資本の一層の金融化による腐敗の進行と製造業部門の資本間競争の激化、不均等化などの諸要因は古い戦後的体制を変質させている。一層グローバル化した世界資本主義の成立と進行によって、商品にとどまらず資本と労働力に至るまで国境をこえた移動の自由が拡大し、全世界の労働者人民に対する搾取と収奪が強まっている。全般的な過剰資本の拡大と利潤率の低下が資本主義の危機を根底から規定しているのである。異様な信用拡大と過剰生産力の形成を要因に現在の世界恐慌は爆発し拡大している。
 問題は現在の必然的ともいえる危機を労働者階級人民が自らの解放に転化できるかどうかにある。労働者階級人民が自らの政治権力を樹立し、帝国主義を打倒し、資本主義を廃止して自らの社会を形成できるか否かにある。現在の共産主義者の党、革命的労働者党は、既に三百年以上にわたって世界を規定し構成してきた資本主義の世界を打倒し、プロレタリア人民の社会を建設することを明確にし訴えていかねばならない。封建制社会から資本制社会へ、資本主義の産業資本主義段階から帝国主義段階へ、そして一七年ロシア革命以降の過渡期世界へ、そしてソ連邦崩壊から現代のグローバル資本主義へ、この様な変容を経て、歴史的に完全にゆきづまった資本主義に終止符を打つ革命の時代が到来している。資本主義と帝国主義は自動崩壊することはない。既成の秩序や体制が危機に瀕するとき、戦争や貧困の強制、搾取率の拡大や排外主義的支配の強化によって、自らを変容させて生き延びていく。プロレタリアの決起のみが新しい事態を切り開いていく可能性を作り出すことができるのである。革命的労働者党は資本主義、帝国主義の歴史的没落の必然性を明確に示し、労働者人民の政府の樹立による解放の正義を明確にし訴えなければならない。資本主義世界体制、帝国主義世界体制の現在の動揺、グローバル資本主義の進行に伴う危機の拡大、失業者、非正規雇用労働者の拡大、貧困層拡大、侵略され支配される被抑圧民族人民の拡大は「資本の支配の必然性」である。現在全世界で、この支配に労働者人民は抵抗し反抗し、反乱が拡大している。問題はこの様な反資本主義、反帝国主義の人民のうねりをプロレタリア人民の世界革命に転化していくことだ。革命的労働者党はこのプロレタリア人民の運動の先頭に立って最もたたかう部分―断固たる推進部分として自らの任務を全うする。

 ▼2項 プロレタリア革命の戦略、路線を明確にして闘おう

 現下の危機の新たな形態を分析し、戦略、路線を明確にしてたたかうことが、革命的労働者党の極めて重要な任務になっている。現下の世界恐慌やイラク、アフガン侵略戦争の泥沼化は現代の資本主義、帝国主義の歴史的力の喪失を明確に示している。戦争、恐慌、原発事故などその命脈は尽きつつあるといわなければならない。明らかに一面では、中心国アメリカの歴史的な没落と中国の資本主義的台頭という世界体制の動揺と再編の問題(中心国の没落、再分割、移動の問題)、その中で軋轢と抗争の激化という歴史的危機の形成という問題、また他面では、この間急速に進行し、現代の支配的な資本形態である多国籍資本の存立の基盤をなしてきたグローバル化した世界資本主義の成立、この中での激烈な資本間競争の激化、とくに労働者にとって合理化と低賃金化が徹底的に世界的規模で推進される問題(グローバル資本主義の大競争と世界の貧困化の問題)をしっかりと分析し、戦略・路線を明確化していくことだ。また一つの軸として全世界の労働者人民の抵抗と反乱が現在の危機の中で進んでいるが、これが直接、世界的に結び付く傾向を強めていることである。資本主義のグローバル化がこの基盤を一層拡大している。問題は労働者階級人民の国際的な連帯や結び付きの可能性が拡大し、主体的に求められていることである。低賃金化―非正規化の問題や、資源や労働力の搾取と収奪の問題、総じて戦争と貧困の問題はこの国際的な労働者の連帯と結合、労働者階級の側からの国際的な協定や資本に対する統制を構築していくことを要求しており、ここからたたかいの展望を切り開いていくことが必要だ。
 明らかに一九三〇年代危機や第一次世界大戦、第二次世界大戦を前後する危機とは異なった危機が進行する。また労働者階級人民の解放運動の現実も大きく変容している。レーニンの「帝国主義戦争を内乱へ」や三〇年代の階級対立・「反ファシズム統一戦線」戦略とは異なる革命戦略が必要なのである。労働者階級の階級形成の路線、労働者権力樹立の戦略が必要なのである。
 戦後革命期から六十年以上、六八年から七〇年を前後する世界的な革命、解放運動の高揚期から四十年以上の時間が経過した。現在、新たな世界的な階級闘争の高揚期が開始されている。戦後、第三の高揚期が到来したのである。現在的にわが同盟は日本の戦後の、とくに戦後革命期以降の階級闘争構造の成立とその中での革命的左派の存在構造を対象化しつつ、しかしその構造が崩壊し―主体的に崩壊に十分対応できなかったブント、党派、労働者党としての責任を明らかにつつ―、九〇年代以降は新たな階級闘争構造の建設が不可欠であることを明確にし実践してきた。ここに現代の革命戦略の基本的な軸がある。
 この路線はしかし単に日本の事情に限定されたものでは決してない。資本主義、帝国主義の現代的展開とその中での危機に伴う、労働者人民の自己解放の戦略として全世界に一定普遍化できる戦略でもあった。とりわけ「戦争とグローバリゼーション」の嵐が吹き荒れる中で、国際的な労働者階級、被抑圧民族人民の連帯と共同行動がプロレタリアの階級形成の要になっていることを明示し実践してきた意義は大きい。労働運動を軸にした反帝国主義、反資本主義の潮流的内実を明確化した意義は大きいのである。
 わが同盟は日本における革命党派、労働者党として日帝打倒―プロレタリア政治権力の樹立を目指す総路線を示し実践してきた。現在の革命戦略、路線の内容として、総路線を提起し実践してきた。それは、階級的労働運動、国際的な共同行動の支援、反帝国主義―全人民的政治闘争、拠点防衛、反戦反基地闘争の体系的な推進と、そして、あらゆる被抑圧人民、被差別大衆の解放運動の推進を粘り強く実践していくことであった。とくに階級的労働運動の実態的な建設と連合支配の打破は、日本の人民の解放路線の革命戦略の核心部分である。重要なことはあくまでも労働運動の階級的発展、基盤形成、規定力の確立を実現して全人民の解放運動の体系的な発展、活性化を永続化していくことであった。労働運動、労働組合、労働者ソビエトの基本的軸を確立し総路線の中心にしていくことである。
 また現在、恐慌の深刻化の中で全世界で広範な人民の決起があり、一層拡大の傾向にある。例えばアラブの春―北アフリカ・中東諸国の一連の民主化運動、アメリカのウォール街を占拠せよ運動など。また日本では反原発運動の一連の高揚、沖縄反基地闘争の永続的展開、若者、非正規雇用労働者の運動などあらゆる階級、階層、社会集団において運動、たたかいが始まっている。革命的労働者党はこれら人民の巨大なうねりを全人民的政治闘争の高揚と発展に向けて共同と統一のために活動しなければならない。多くの政治集団、政治党派と統一戦線を形成し、信頼を作り上げ、原則を作り、たたかいの準備を整えなければならない。

 2節 労働者人民の政党建設の一時代を作り上げよう

 長期にわたる労働者階級人民の政党(労働者党)建設の一時代を作り上げ、革命運動の発展の基盤を拡大しよう。現代の共産主義者、革命的労働者党(またこれを目指す部分)は二十一世紀初頭の全世界的な階級的危機の深まりに対応する組織、政党として自らを強固に建設していかなければならない。人民の側のストライキ、デモ、暴動、武装抵抗運動、権力の側の国家権力を動員した弾圧、投獄、暗殺、軍隊による殺戮、これに呼応する民間反革命、排外主義襲撃集団の運動、事態は、運動と革命を巡る激烈な階級対立の時代に移行しつつある。広範な人民の運動、抵抗の動きの発展も権力―反革命の側からの武力攻撃によって後退させられる可能性が強まっている。革命党、労働者党は労働者人民の運動の核として軸として、強固に建設されなければならない。
 また現体制の危機に伴って、支配階級の内部での傾向の違いが生み出されている。より一層の「資本の自由」「弱肉強食」の政策を持って、資本主義と帝国主義を護持しようとする新自由主義勢力が主流を占めており、これとは別に労働者の要求を一定、取り込むかのポーズをとる修正資本主義勢力がいる。もちろん支配階級内部の傾向的違いは本質的には資本主義と帝国主義を防衛、維持していくための諸傾向であってこれに期待することはできない(各国の階級の運動の結果によって様々な政党と統治の形態がある)。人民の運動の発展がないところでは資本家階級の分裂もない。資本のむき出しの自由が貫徹されていく。
 しかも現在、帝国主義諸国、いわゆる先進資本主義国にあっては労働運動を基盤に社会排外主義潮流の支配が強固に確立されている。資本と帝国主義の利益と一体化する政治勢力である。これらと対決しプロレタリアが自己解放運動を貫徹するには理論的、思想的に資本主義社会を根底から批判しプロレタリアの社会建設を明確に措定する、共産主義者、革命的労働者党の存在が不可欠である。 資本家、帝国主義者、社会排外主義者は自らの陣地を進んで明け渡すことはない。ただプロレタリア人民の解放運動の力、衝撃によってのみかれらは歴史の舞台から降板する。革命党、労働者党はプロレタリア人民の中核として、一軸として人民の運動を支え、たたかいの展望を切り開いていかなければならない。
 共産主義者が政党(労働者党)を建設していく作業は、確かに、運動の形成、階級の形成と異なって独特の内容を持つ。それゆえに、労働者人民が政党を作り出すのだとしてもそれが永続化し、系統的に教訓が生かされることには大きな困難がある。しかもマルクス以来の第一インター、レーニンの第三インターもその実態において、基本的には崩壊しいわゆる政党としてのインターナショナルや国際共産主義運動という概念自体が成立していない。さらにスターリン主義によって共産主義の内容自体が「階級の抑圧」の体系へ転化され、人民の桎梏を意味する所となった。しかしこのような困難にも拘らず、今全世界ではアメリカ、ヨーロッパ、アジア、中南米などで新しい共産主義者の集団が生まれ、また労働者党が建設されている。日本でも新左翼党派の再編と流動が一部で開始されている。確かに、第三インターの崩壊以降、革命的左派は党建設において国際的な潮流を作り得ていない。第四インターも成功していない。また毛派系も中国の変質などによって毛インターは存在せず、各国ごとの共産主義集団になった。
 ここで確認するべきことは、一つは現在の全世界の労働者人民の抵抗運動の拡大にともなった政党―労働者党建設の動きを積極的に評価し、わが同盟も共産主義者の集団として新たなインターの形成の方向性をもって、この動きの一部として自らの党の建設に積極的に取り組んでいくことである。韓国、フィリピンの政党、アメリカ、東南アジア、ヨーロッパの政党と多くの連携を作り出してきたが、二十一世紀初頭を新たなインターを目指した長期にわたる党建設の時代と設定し、その一翼として党の建設を進めていく。そのために多くの政治集団との協力、共闘を広範に作り出していくことが重要だ。
 二つにはマルクスが政党論で明らかにした、プロレタリアによる政党の結成、プロレタリアの政党への自己組織化という観点を明確に確保し、政党としての独自の団結を生み出していくことである。あえて言えば、階級への形成と別の回路―論理を確保し、独自の党の建設、党の組織化に積極的に乗り出していくことだ。いうまでもなく階級の運動、その広がりに対して明らかに党の建設、また政党(労働者党)の建設の方向は進んでいない。これは労働者階級の解放運動の不可欠の要素、解放闘争の一方の軸に労働者党の建設が措定されていかない解放運動の現状を示しており、共産主義者、革命的労働者党を目指す部分において、組織論の欠落や目的意識性の弱さがあるといわざるを得ない。共産主義者はあえていえば、労働者階級の階級への形成と同一の比重を持って、政党の組織化の任務を遂行していかなければならない。プロレタリア革命―プロレタリア解放のために階級と並んで党の建設を一つの自己目的として設定、その内部構造の解明と主体化を進めていくことが重要である。
 三つには、もちろん新しい共産主義、綱領の新しい内容が必要だとしても、あくまでも第一インター。第三インターの基本部分を継承して新たな党建設は進められる。もちろん過去の内容だけでは極めて不十分である。例えばスターリン主義の基盤を形成した労働者ソビエトの解体問題や工場委員会の解体問題、プロレタリアの措定に関する『党宣言』の規定に関して、マルクスとレーニンの中身の違いとその確定、資本主義批判、プロレリア措定、共産主義の現代的発展、また唯物史観の再構築などの課題がある。
 日本では、二次ブント崩壊以降、スターリン主義党や宗派組織によって政党建設は擬制的に歪められてきた。しかし時代が変わり、人民の広範な抵抗が現れたとき、あらゆるところで政治サークル、政治結社の結成の動きが始まっている。われわれはブントとしてこの日本における革命的労働者党建設に向けた一時代を、目的達成のためにあらゆる党派、政治集団、政治グループと積極的に協力し、共に担い抜いていく。

 三節 ブント党建設の核心を発展させ、革命的労働者党建設の前進を

 わが同盟は、日本における革命的労働者党の建設に向けて、ブントの党派性をより一層発展させて、党建設を前進させていく。そこでは二つの事柄が中心的課題となるだろう。(A)階級形成を全面的に推し進める党派として前進することであり、(B)党派として組織のプロレタリア的団結を強めて前進することである。とくに日本においては、韓国やアメリカ、ヨーロッパなどの全世界の階級闘争の全般的表れと異なる、左翼内部のセクト的分断と分散化の傾向が大きい。労働者人民の共闘、統一戦線が作れず、党派、政治集団の対立と抗争の状態が色濃く続いている。とくに日本ではスターリン主義党や宗派組織による人民の支配(セクト的囲い込み)や他党派、他の政治集団への攻撃が一つの特徴となっている。この様な日本独特の左翼の否定的な歴史的伝統を打破していくこと、政治権力の打倒のための広範な人民の共闘と統一行動が可能な階級闘争の構造を生み出してことが真の労働者党の任務である。
 このためにはスターリン主義党や宗派組織に代わる、それらを乗り越える革命党、労働者党の建設とそのへゲモニーの形成が不可欠なのである。ブントが目指してきたプロレタリア解放―プロレタリアの階級形成とそのための党の建設という核心的課題は、二十一世紀の激動の時代にいよいよその意義を発揮するときがきている。革命的労働者党を目指す部分の前進がなければ、スターリン主義や宗派主義が支配しながら運動が敗北していく道をたどってしまうのである。

 ◆1項 ブントが推し進めるべき階級形成

 マルクスが明らかにしブントが実践の核心にしてきた「階級形成論」をより積極的に生かしていくことである。マルクスは『共産党宣言』で革命的労働者党の任務として「あらゆる労働者党と同一の目的」―「プロレタリアートの階級への形成、ブルジョア支配の打倒、プロレタリアートによる政治権力の獲得」をあげている。これを当面の目的としている。マルクスは階級形成を重要な課題としてブルジョア支配の打倒や政治権力の獲得を規定付けているのである。またマルクスは共産主義者の課題としてプロレタリアの解放運動の断固たる推進部分―とくに他の労働者政党に比べて―となることを主張している。ブントはスターリン主義や宗派とは異なって、自らの党の結成以来、現実の労働者階級人民の運動に結び付き、労働者人民の不断の団結形成とその発展、人民の現実の要求を実現する活動を重視する党綱領を立脚点にしてきた。大衆運動―権力闘争を重視し、労働者人民の運動、たたかいを一歩でも二歩でも前進させていくこと、またその過程でたたかう主体の団結を不断に高めていくことを任務の最大の部分にしてきた。これは現実の労働者人民の解放のエネルギー、解放の力、立ち上がりの諸要素に深く結び付き、また新しい社会建設の根源的可能性との連関で運動の発展を求める実践的態度となって表れている。スターリン主義型、宗派型スタイルへの解放運動の落ち込みとたたかい、あくまでも現実の人民の解放運動を進めてきたのである。
 また現在、問われていることは、ブントの階級形成論の一層の発展と拡大である。スターリン主義や宗派へのアンチにとどまってはならないのである。それは一つには階級形成の不可欠の要素として、広範な共闘、人民の運動の結び付き、統一行動、統一戦線をプロレタリアの階級形成の不可欠の一環にするという点を明確にし、実際に行動していくことである。コミューン権力、ソビエト権力など歴史的にみて労働者権力は常に階級の同盟、統一戦線であり、また政治党派、集団による共同の場であった。政策協定や基本理念を巡る討議の場であった。そして二つには社会排外主義や帝国主義的労働運動の潮流を、一般的にいえばブルジョア政府、権力、体制を擁護するプロレタリア人民の内部の潮流とのたたかいを進める革命派、戦闘的階級的潮流の建設を目指していくことである。とくに現在のグローバル資本主義下における世界恐慌の深化の中で、帝国主義労働運動派は依然体制擁護の一支柱となっている。これを打ち破る潮流の建設によって人民の展望を作り出していくことの意義は大きい。戦争と貧困の攻撃を阻止し、階級闘争の発展をかち取っていくことだ。こういった課題はブント―革命的労働者党の力によって準備し作り出していくべきものなのである。

 ◆2項 ブントが推し進めるべき党のプロレタリア的団結、結束の強化

 ブントの党建設に付きまとってきた「運動の媒体としての党」「運動の指導の党」という破産した組織論と、またこれへの反発から生まれた「党の絶対化」「党の神秘化」「党と階級を分離する党・階級二元論」「思想集団化」を根底から乗りこえていくべき、組織論の確立が重要である。それは何よりもマルクス党組織論のしっかりとした基礎を主体化することであり、ここに踏まえて実践的な党の団結体としての確立を目指していくことである。マルクスは『共産党宣言』で「プロレタリアートの自己解放運動の一つとしてプロレタリアはプロレタリア党を結成する」と規定している。すなわちプロレタリアの解放運動が生み出す一つの団結体が政党(労働者党)であると言うことだ。同時にまた、プロレタリアートは「政治結社、政党という組織的基盤を持ち組織的結束を作り出す」と規定している。ここに踏まえて現代の党の建設に積極的に立ち上がっていくことが、重要なのである。
 日本においては黒田―同盟組織が党を「永遠の今」「共産主義の母体」として規定し、組織の内部の人間を同一化することをもっぱらの組織づくりにするという一種の宗教組織の様な組織論を作り上げ、現実的な勢力を作り上げてきた。組織以外の外部に対してとくに他の政治党派、政治集団に対して敵意と憎しみをもって攻撃を繰り返し、日本階級闘争の大きな阻害要因となってきた。ブントはこれに反発してきたが、十分な組織の建設に成功してこなかった。この歴史を打破していくという観点が重要である。
 それは革命的労働者党の建設にとって独自の組織論の構築が不可欠であるということだ。ここをはずして党の規定をあれこれ論じていてもその意味は薄い。わが同盟は(1)綱領―戦術―組織の内容的確定とその一致による同盟組織としての結束、(2)組織活動を通した組織の形成・確立、規約を通した党の運営、(3)権力―政治警察、反革命の側からの攻撃に対する防衛・訓練、(4)これらの一連の活動を通した組織的一致と団結体としての不断の強化、同志的信頼関係の形成を自らの組織の結束の指標としてきた。
 プロレタリアの解放運動の一つとしての「党建設」を認めず神秘化したり彼岸化したりして、実際組織の団結の形成、実態の建設に立ち上がらない組織傾向を打破していくことが重要である。
 二〇一二年、わが同盟は〇四年統合大会以降の政治実践のすべてを踏み固めて、新しい同盟としての飛躍を実現するために全力で活動していく。粘りづよい系統的な活動なくして危機が迫る現代資本主義、現代帝国主義を打ち破っていくことは困難である。現在吹き荒れる世界恐慌はアメリカからヨーロッパへと拡大し、アジア諸国にも大きな影響を及ぼしてきている。労働者階級人民への支配階級の攻勢は一層拡大していく。プロレタリア人民の反撃を確実に準備し、政治警察や民間反革命、社会排外主義と有効にたたかっていくことが大切である。わが同盟は同盟建設の新たな段階をかち取り、この任務にこたえていく。激化する階級情勢をプロレタリア革命に転化できる労働者党として自己確立するために「党の飛躍」を実現していく。
 総路線の発展、全人民の広範な政治運動形成、反戦、反原発、反貧困の人民の巨大なうねりを、共同行動、統一戦線の強化へ発展させるためにたたかっていく。新たな階級闘争構造の確立のために、その基軸として階級的労働運動の形成―労組建設、地域労組の前進のために全力を傾けていく。多くの労働運動グループとの信頼関係、協力関係を積極的に作り出していく。綱領の進化と創造、帝国主義批判―資本主義批判、現代の革命の主体の措定と再措定、共産主義論―社会主義論の深化、唯物史観、組織論の創造を課題にして取り組んでいく。何よりもわが同盟を一個の組織体としてしっかりと作り上げ、労働者人民の期待と要請に応える力を培っていく。
 二〇一二年、わが同盟(統一委員会)は労働者階級、全人民の解放闘争の勝利に向けた運動の先頭に立ち、情勢を切り開いていく。ともにたたかっていこう。




 

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