共産主義者同盟(統一委員会)


1429号(2014年1月1日) 政治主張






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   現代帝国主義の支配うち破る共産主義運動の再構築を

  安倍右翼反動政権打倒!

  労働者人民解放の党建設を




   2014年第一新年号論文


 すべての同志、友人、『戦旗』読者のみなさんに、二〇一四年年頭にあたって、共産主義者同盟(統一委員会)の見解と方針を明らかにする。
 日帝―安倍政権は昨年末、全人民の反対の声を踏みにじって、秘密保護法成立を強行した。国家安全保障会議設置を急ぎ、これと一体の法案だと強弁し拙速審議で強行可決した。戦争国家化を強引に進める安倍右翼反動政権は、「国家安全保障基本法」、集団的自衛権行使の「合憲」化、そして改憲を狙っている。安倍は、日米同盟関係強化を重視し、それを根拠に侵略反革命戦争に参戦できる帝国主義国への再生を一挙に進めようとしている。
 しかし、米帝国主義の力の失墜を最大の要因として、現代帝国主義はその不安定性を増大させている。
 現代資本主義世界体制の中心国として君臨し続けてきた米帝国主義においては、その経済的基盤が瓦解し続けている。資本主義世界そのものの経済危機が労働者人民への災厄として押し付けられている中で、新自由主義政策反対、緊縮政策反対、独裁政権打倒、あるいは民族解放を掲げて、全世界で労働者階級人民が立ち上がっている。人民の憤怒が世界各国・地域でさまざまな形をとって噴出している。米帝国主義が、あるいは国連安保理やG8、G20が、その支配を貫徹できない事態に至っている。現代帝国主義が抱える最大の矛盾は、全世界の労働者階級人民の不屈のたたかいによって、その磐石に見えた世界体制が大きく崩れてきていることなのだ。
 日米同盟が強化されれば磐石な階級支配が貫けるなどという時代ではない。帝国主義の世界支配に対して、全世界で巻き起こる労働運動、反戦闘争、反独裁闘争、民族解放闘争が、その根幹を揺さぶっている。この不安定な時代を最終的に規定するのは、帝国主義の侵略反革命戦争なのか、労働者階級人民の反帝闘争なのか、そういうたたかいの時代に踏み込んでいるのだ。
 われわれは、反戦闘争、反基地闘争、反原発闘争、階級的労働運動、反差別共同闘争を、労働者階級人民とともにたたかい抜いてきた。この日帝足下の反帝闘争の全国的な結合、国際的な結合を推進してきた。二〇一四年、安倍右翼反動政権と対決する全人民政治闘争として、さらに巨大な人民の決起を創出していこう。自民党―石破は、反政府闘争の高揚に恐怖して、秘密保護法反対の公然たる行動を「テロと同じ」と侮蔑した。この言辞に込められているものこそ、石破の、安倍政権の、民主主義とは対極にある許しがたい本性なのだ。憤怒を抱いて決起した全人民に包囲されているのは、安倍右翼反動政権自身なのだということを、本年こそ明確にしてやらなくてはならない。
 二〇一四年、安倍政権の戦争国家化、急激な貧困化・格差拡大の攻撃と真正面から対決し、これを打ち破る反帝闘争に、プロレタリア革命に、ともに立ち上がろうではないか。
 この階級攻防に向けて、以下、二号にわたって、共産同(統一委員会)の二〇一四年年頭の提起を行なっていく。本号、第一四二九号で、第一章 世界情勢、第二章 国内情勢、第三章 党建設方針を掲載する。第二新年号、第一四三〇号(一月二十日付)で、第四章 政治闘争方針、第五章 労働運動方針、第六章 青年運動方針、第七章 学生運動方針を掲載する。



  ■第1章―世界情勢

  恐慌、財政危機、戦乱、全世界で立ち上がる人民の憤怒



  ●1節 新たな戦争の衝動を強める現代帝国主義

 二〇一三年、現代帝国主義はその混迷を深めてきた。
 〇八年恐慌以降、経済危機を深めてきた米帝国主義は、政治的・軍事的領域においても世界を編成する力を大きく失墜させている。そのことはシリア内戦への対応において端的に表れ、さらに、対イラン外交においても明確になっている。
 新自由主義という腐りきった世界支配の構造が、暴露され、批判され、打倒される時代へと大きく踏み込み始めたのが二〇一三年だった。われわれは、現代帝国主義の深まる危機と戦争を発動する凶暴な本性をはっきりと捉え、労働者階級人民が反帝闘争にさらに大きく踏み出す展望を明らかにしていく。

  ▼1章―1節―1項 シリア問題における、米帝の孤立

 二〇一三年夏の米帝―オバマのシリア軍事介入方針の失敗は、米帝の力の減退を鮮明にする事態であった。
 二〇一〇年十二月チュニジア、二〇一一年一月エジプトで始まった独裁打倒の民衆革命は、モロッコ、アルジェリア、リビア、クウェート、ヨルダン、シリアなど中東・北アフリカ諸国全域に波及した。反独裁闘争が米欧の「民主主義」=資本主義を拡大するために利用できると捉えた帝国主義各国は、反政府闘争を一定程度支援した。リビアに対しては仏・米・英各国政府が軍事介入を行なってカダフィ政権打倒を進めた。
 オバマ政権は、イラク戦争を終結させ、ロシア・中国をにらむアフガニスタンに軍事的軸足を移すとしてきた。改めて確保するという意図だ。イスラエルとの同盟関係を護持し、中東における権益を確保し続けようとする米帝―オバマ政権は、この中東・北アフリカの民衆革命を利用できるところまで利用しようとしてきた。
 しかし、シリア内戦は米・英・仏を軸とした帝国主義各国が制動しきれず、近隣諸国に波及していた。シリア内戦が中東地域全体に拡大し、イスラエル、イランが参戦するような事態にまでいたれば、米帝の中東植民地支配は非常に不安定になる。
 米帝―オバマは昨夏、シリアでの「化学兵器使用」を軍事介入の奇貨と捉えた。シリア軍事攻撃をもってアサド政権を追い込み、中東における軍事的覇権を拡大することで、イランをも押さえ込んでいくことを夢想した。
 二〇一三年八月二十一日、シリアのダマスカス郊外で化学兵器と見られる攻撃によって多数の死傷者が出た。米・英・仏各国政府は、化学兵器使用をアサド政権によるものと断じ、アサド政権に対する軍事攻撃に踏み切ることを主張した。
 しかし、米帝の同盟国―英帝は、議会の不信任によって軍事攻撃を断念した。英帝の不参加決定によって米帝―オバマは孤立したが、シリア軍事攻撃を主張し続けた。
 九月、サンクトペテルブルグで行なわれたG20サミットを通して、ロシアがシリアの化学兵器を国際管理下に置いて廃棄することを提案。アサド政権はこのロシアの提案を受諾し、九月十二日には化学兵器禁止条約への加盟を国連に申請した。その後、オバマ政権は、ロシアと協議を行い、軍事攻撃を断念した。国連安保理は九月二十七日、シリアの化学兵器を国際管理下で廃棄させる決議を全会一致で採択した。
 米帝とロシアをはじめとする大国の利害によって、シリア人民の反独裁闘争の意義が覆い隠されてしまった。二年半前に開始されたシリア革命は、アサド政権の圧制に対する民衆の決起から始まったのであり、問題は、シリア内戦におけるアサド政権の弾圧―殺戮だったはずだ。オバマ政権をはじめとするG20各国は、化学兵器使用―軍事介入だけの論議に終始したのだ。結果としてアサド政権が、シリアを代表してこの国連決議を履行する正統性を賦与されたような状況を生み出してしまった。
 シリア人民のたたかいとは切り離された大国の「国際政治」の場において、シリア軍事攻撃から軍事覇権を強めようとした米帝―オバマの目論見は潰えた。

  ▼1章―1節―2項 イラン―ロハニ政権の「対話」外交

 昨年八月イラン大統領に就任したロハニは、米帝がシリア問題で孤立する状況を見極めながら、九月二十七日、オバマと電話協議を行なった。核問題の解決に向けた協議を行なうことが合意された。十月十五、十六日に、米英独仏中ロの六カ国とイランによる核協議が行なわれた。十一月二十四日、六カ国とイランは「第一段階の措置」を合意した。イランは今後六ヶ月間「核兵器開発」を部分停止し、その見返りとして資産凍結などの制裁の一部を停止するという内容だ。
 イランは、この六カ国との協議において、核問題だけでなく、シリア問題をも議題とし、「シリア和平会議」に対するイランとしての主張を行なっている。
 イランと米の「対話」、イランと六カ国による核協議は、米帝の側の一方的な勝利という状況ではない。これまでの米帝がなしてきたような、軍事力と国際的制裁で圧倒しつつ、この恫喝の下で政治的「合意」をつくるという、力による外交が困難となった事態というべきだろう。
 米帝のシリア問題での孤立、イランとの協議の開始は、米国内では下院共和党がイランへの新たな制裁を主張し、中東においては米帝の同盟国―サウジアラビア、イスラエルの反発を呼び起こす事態を生み出している。

  ▼1章―1節―3項 サウジアラビア、イスラエルの反発

 この問題は、米帝と中東諸国の関係としてその後も尾を引いている。十月十七日の国連総会の投票で安保理非常任理事国に選出されたサウジアラビアは、翌十八日に突如辞退を表明した。これは国連において前例のない異常事態である。
 サウジアラビアは「安保理の機能不全」として、パレスチナ問題、大量破壊兵器問題、シリア内戦への対応を挙げた。八月―九月、オバマ政権がシリアに軍事介入することは、「化学兵器使用への懲罰」という形式をとりながら、シリア反政府勢力に対して帝国主義が軍事支援することを意味していた。シリア反体制派を支援してきたサウジアラビアからみれば、米帝の軍事行動の断念は、同盟国―米帝の裏切りを意味していた。「安保理の機能不全」というよりも、米帝との同盟関係の機能不全ということこそ、サウジアラビア政府の本音であった。
 イランとの合意に、イスラエル首相ネタニヤフは強硬に反対している。ネタニヤフは十一月八日、米国務長官ケリーに対して、六カ国とイランの協議での制裁緩和の検討を強く批判し、「イスラエルは自衛のために必要なあらゆることを行なうだろう」と主張した。十一月二十四日の合意には、ネタニヤフは即座に反応して「歴史的合意ではなく、歴史的誤りだ」と批判した。
 オバマ政権が平和を選択し、シリア、イランに融和的に対処しているという事態ではない。最初にも述べたように、オバマ政権は昨年八月から九月、シリアへの軍事介入を強硬に主張した。
 しかし、米帝が戦争を主張すれば、全世界の支配階級どもが同意するという状況ではない。アフガニスタン戦争でもイラク戦争でも、米帝も同盟国も、決定的な勝利も権益も得たわけではない。中東諸国に戦乱を引き起こし、それを収束できぬまま、米軍駐留が続いている。これが現実であるがゆえに、オバマのシリア攻撃の主張は、国連安保理でも支持されず、同盟国による有志連合すら実現できなかった。
 孤立したオバマ政権は、化学兵器禁止機関(OPCW)とシリア和平会議の中で解決する道を選択するしかなく、また、その直後にはイラン―ロハニ政権との核協議の席に着くしかなくなった。
 しかし、これが、安定と平和につながる状況ではない。後述する米財政危機ともあいまって、中心国―米帝の急激な力の減退が始まっている。この不安定な現代世界において、帝国主義各国、そして、帝国主義国との同盟関係によって階級支配を貫いてきた各国の政権は、新たな戦争への衝動をむしろ強めている。
 一超軍事大国として君臨してきた米帝のシリア、イランとの外交を同盟国の裏切りと捉えるイスラエルが単独攻撃に突出する可能性もある。シリア内戦の拡大、あるいはイスラエル―イランの軍事的衝突という事態になれば、米帝は疲弊する財政のまま新たな中東戦争を選択するだろう。
 アフガニスタンでもパキスタンでもイラクでもリビアでも、未だ戦乱が終結した訳ではない。ブッシュ政権の時代に比して戦乱が目立たないのは、米兵の戦死者が減っているだけのことだ。米軍は、無人機攻撃をもって残虐な戦争を継続している。米軍駐留によって平和がもたらされるものでは決してない。米帝は資本の利害のために、米軍を駐留させ、あらゆる手法をもって戦争を継続させているのだ。

  ▼1章―1節―4項 東アジアをめぐる対立

 米帝の力の減退は、中東と共にオバマ政権が「戦略的利益」と位置付けるアジア太平洋地域においても進んでいる。
 昨年十月、財政問題で米国政府機関が閉鎖される状況で、オバマ大統領がAPEC首脳会議(十月七~八日)、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉首脳会合(十月八日)に参加できない事態となった。一昨年オバマ政権が打ち出したアジア重視政策が大きく揺らぐことになった。とりわけ、米帝が主導して、日帝をも交渉に巻き込んできたTPPは、この首脳会議で「年内妥結に向けた大筋合意」がなされる予定であったが、オバマ欠席によって大筋合意どころではなくなった。
 この一方で、APEC首脳会議に出席した中国国家主席・習近平は「中国とASEANをより緊密な『運命共同体』としていきたい」と演説し、ASEAN各国首脳と会談し、台湾代表との会談まで行なった。十月九日には、ブルネイで中国・ASEAN首脳会合が開催された。中国首相・李克強が出席して演説し、中国とASEANの間で「善隣友好協力条約」を締結することを提案している。これは、米帝が主導するTPPに明確に対抗する提起であった。
 中国がいかに米国債を保有していようとも、中国は米帝の同盟国ではない。中国は、米帝が中東およびアジア太平洋での力を減退させていることをしっかり見極め、アジアにおける米帝の基盤を掘り崩しながら、米帝との「対話」を進めているのだ。
 米財政危機で、APECにオバマが参加できない状況によって、TPPの影響力は弱化し、一方で、東アジア地域における中国の位置が強まっている。


  ●1章―2節 恐慌と財政危機、その根底にあるもの

 現代帝国主義の根本的な危機は、〇八年恐慌の深化にある。〇八年、リーマン・ショックから始まった金融恐慌の中で、G20諸国は「国際協調」で莫大な財政政策を決定し、各国中央銀行は金融緩和を行なった。一旦世界恐慌回避を成功させたかのように言われたが、現代資本主義は、国家財政の莫大な赤字の下で延命している。この過大な財政負担を抱えた帝国主義各国は、財政破綻の切迫(ソブリン危機)の中にある。

  ▼1章―2節―1項 中心国―米帝の国家財政危機

 オバマ政権がシリア軍事攻撃をめぐって国際的に孤立していたそのときに、オバマ政権は米国内でさらに深刻な問題に直面していた。米議会の与野党対立で、新年度暫定予算が成立できないという事態であった。
 〇九年のオバマ政権成立以降、米議会は与野党対立で正式の予算を立てられなくなっている。そのため、期間限定の「暫定予算」をくり返して連邦政府は運営されてきた。しかし、一三年十月からはじまる新会計年度をめぐっては、オバマ政権が重要政策としてきた医療保険改革法「オバマケア」の本格実施に対して下院共和党右派「ティー・パーティー」が猛烈に反発した。
 「暫定予算」が成立せぬまま迎えた十月一日、米国政府機関の一部は閉鎖された。ホワイトハウス職員の四分の三、国防総省職員の80%、財務省職員の97%をはじめとして数十万人の連邦政府職員が自宅待機となった。
 そもそも「オバマケア」は国民皆保険ではない。民営化が進む米帝国主義は、国民皆保険を実現できない国なのである。妥協策としての民間保健を利用した「オバマケア」が、どうにか法としては成立したという状況だった。しかし、この妥協策の「オバマケア」すら、共和党右派は、予算審議の過程で実現を妨げようとしたのだ。
 しかし、問題はもっと深刻だった。十月十七日までに米政府の債務上限を引き上げないと新たな借金ができず、米国債がデフォルト(不履行)になる事態に直面していた。
 もし米国政府がデフォルトになれば、一国家が財政破綻するということだけで済む問題ではない。七〇年代以降ブレトンウッズ体制は崩壊しているとはいえ、現代資本主義世界の貿易・投資・金融を成立させている基軸通貨は現在でもドルである。中国、日本、EU各国、石油産出国をはじめとして世界各国は外貨準備として米国債を保有している。ユーロや円、人民元が使われるようにもなっているとはいえ、現在でも世界貿易の決済通貨はドルである。為替はドルを基準としており、各国通貨はドルとの交換比率をもって自らの「価値」を評価してきた。
 これは、言葉の本来の意味での決められた制度ではない。一超大国―米帝の経済、政治、軍事全般にわたる国力によって、市場での信用を確保し、ドルを国際通貨として通用させてきたのである。米国債がAAAの評価を保ち、世界で最も安定した資産であり続ける。世界のどんな国からも侵略されることなく攻撃―破壊されることのない軍事大国であり続ける。または、全世界にそのような幻想が成立していることによって、ドルの位置は保持されてきたのである。
 確かに、七一年ニクソン声明、七三年石油危機、七四―七五年恐慌と七五年のベトナム民族解放革命戦争の勝利(=米帝の敗北)は、中心国―米帝の世界支配の力を減退させた。七五年以降は、サミット首脳会合、主要国財務省・中央銀行総裁会議(G5―G7)によって支えられた「中心国―米帝」であった。G7諸国は、米帝の危機を現代帝国主義総体の危機と捉えて、資本主義体制を護持しようとしたのであった。〇八年のG20は、さらにロシア、中国、インド、ブラジル、産油国を加えて、現代資本主義の護持を確認したものであった。
 米国債不履行=デフォルトは、現代資本主義世界を支える経済基盤が一挙に瓦解することになる。世界貿易、国際金融が成立する根拠が喪失する。いまさら、国際決済を金地金で行なうことなどできない。
 昨年十月、米国共和党は米国債不履行に至るまでオバマ政権との対立を長期化させることはできなかった。しかし、米国政府そのものの国際的信用は毀損した。米国内の政争が、米国の財政問題を超えて国際通貨そのものの喪失に直結している危機の深層を、全世界が垣間見たのである。
 昨年七月十八日のデトロイト市の財政破綻は、暫定予算をめぐる米議会の政争以上に、米国経済を蝕む経済破綻の様相をまざまざと見せつけた。米国の一地方都市の問題として軽く見ることはできない。デトロイト市は、GMの本社がある米自動車産業の拠点である。二〇世紀後半の耐久消費財産業を機軸産業とした資本主義のあり方は、米国の自動車産業を大きな根拠として、全世界に波及してきた。デトロイト市は、米国におけるその中心都市であり、現代資本主義の最先端に位置する工業都市であったはずだ。そのデトロイト市が財政破綻したという事態は、〇八恐慌直後にオバマ政権が国家的威信をかけて、GM、フォード、クライスラーの自動車産業ビッグ3を救済したが、米国内における製造業の再生には至らなかったという事実をはっきりと示している。
 米国経済そのものが金融業を中心に転換し、製造業(第二次産業)の生産拠点は安価な労働力を求めて海外に展開し、国内産業の空洞化が極端に進んでいる。たとえ、そこに資金をつぎ込んでも、さらに資本輸出を拡大するだけだ。資本としては世界規模での独占化を進めているが、国内に雇用を生み、民生を向上する役には立たないという状況が、米国では日本以上に極度に進んでいるのである。これこそ、現代資本主義の腐朽の現実である。

  ▼1章―2節―3項 後戻りできない金融緩和政策

 米連邦制度準備理事会(FRB)は二〇一一年秋に金融の量的緩和第三弾(QE3)を実施し、現在も続けている。国債などの金融資産を買って市場にお金を流すという手法で、大規模な金融緩和を行なっている。
 日帝―安倍政権のアベノミクスの下で、新たに就任した日銀総裁・黒田は「異次元の金融緩和」に踏み込んだ。日銀が日本国債を大規模に買い上げることで金融緩和を行なっていくという手法をとっている。黒田は「二年で2%のインフレ率達成を目指します」と宣言して、日銀が国債を年間四十兆円買い占めていくという手法に着手した。まさに米帝の金融政策を後追いし、景気回復のためにはどんな経済政策でも行なうということである。
 欧州中央銀行(ECB)は昨年十一月七日、政策金利を0・5%から0・25%に引き下げることを発表した。ECBは、欧州金融危機が拡大した二〇一一年から一二年にかけて、民間銀行に対して資金供給を行い、昨年九月には問題国の国債購入プログラム(OMT)を実施することを発表した。欧州各国、とくにギリシャ、スペイン、イタリアをはじめとして一昨年財政危機に瀕した国々を中心に、欧州委員会、ECB、IMFの決定に基づく「財政再建」が強要されている諸国にあっては、緊縮財政が実施され、民生が極端に切り縮められている。
 欧州の緊縮政策が欧州経済そのものを圧迫していることはIMFも認めざるをえず、昨年四月十八日、IMF専務理事ラガルドは英国蔵相オズボーンに対して「緊縮政策の見直し」を認めた。さらに四月二十二日には、欧州委員会委員長バローゾが、緊縮政策は「社会的な受け入れ能力という点で限界に達してしまったようだ」と発言した。〇八年恐慌以降、欧州経済が収縮する中で緊縮政策を続けることが、さらに経済状態を悪化させるという事態に突き当たってしまった。財政政策を拡大することができず、デフレに陥る状況の中で、ECBは利下げ以外に選択がなかった。米、日に続いて、EUもゼロ金利に極めて近いところまで金融緩和を進めざるをえなくなっているのだ。
 〇八年恐慌から五年、帝国主義をはじめとした資本主義諸国は恐慌から脱した訳ではない。自立的にその経済成長を回復することはできず、G20諸国という全世界規模での財政投入、そして、金融緩和の拡大によって延命している状況なのである。
 このように各国経済が国家丸抱え状態の中で、「新自由主義政策」のさらなる徹底化が「成長戦略」であるかのように主張するブルジョア経済学は笑止であるが、本当の危機はこれからである。このような事態の中で、金融緩和を実施する諸国、とりわけ、米帝、日帝が、その緩和を終了することができるのか、という問題である。バーナンキもFRB新議長イエレンもQE3を停止、あるいは縮小する決心ができない。黒田は得意満面で「異次元の金融緩和」を続けているが、問題はむしろ、「インフレ・ターゲット2%」を達成した段階で即座に金融緩和を止められるのか、ということである。国債購入の形で金融緩和を続けていることは、政府側からみれば、国債が消化されて借金が続けられるという状況が続いているのである。経済指標が変化して金融引締めへの反転を日銀が決断できないということこそ、最も危険な事態をもたらす。
 QE3も、アベノミクスも限りなく続けられる訳ではない。現実問題として、インフレが進行し始めた段階で、日銀など中央銀行が国債買い入れをやめ、国債入札未達の事態となり、国債暴落に進むのか。あるいは、インフレ進行に対して金融政策の転換ができず、急速なインフレ昂進によって経済が混乱していくのか。黒田だけではなく、帝国主義各国がまさに「異次元の金融緩和」をもって資本主義を延命させているがゆえに、矛盾は先延ばしされながら、さらに増大している。
 現代帝国主義の延命が、このような危うい政策の下にあるのだ。金融資本、金融投機資本、そして各国政府―財務省も、この全世界規模での金融緩和がいつ終了するのか、その「出口」に戦々恐々としているのだ。


  ●1章―3節 現代帝国主義の根幹を揺るがす反戦闘争・反政府闘争

 不安定な延命を続ける現代帝国主義の危機を大きく規定しているのは、労働者階級人民の反政府闘争、反帝闘争の継続発展である。
 米帝の政治的軍事的覇権は、単に帝国主義間の争闘の結果ではなく、階級闘争の発展、被抑圧人民の自己解放闘争の発展によってこそ、大きく減退しているのだ。
 帝国主義は、その財政危機を直接的に緊縮政策として労働者人民に押し付けている。日帝―安倍政権の消費税増税も、労働者人民総体への財政危機の押し付け攻撃である。資本と政府財政の危機の深まりの中で、労働者階級はその生活をかけて立ち上がっている。ヨーロッパをはじめ全世界で労働運動が大規模に進展し、政府との対決―政治闘争へと発展している。

  ▼1章―3節―1項 中東・北アフリカの革命

 中東・北アフリカ諸国の民衆革命は、自然発生的な反独裁闘争として開始された。
 すべてのたたかいが直接に反帝闘争であるわけではない。独裁打倒のためには帝国主義の軍事支援、軍事介入をも要求する勢力すら存在する。一方では、諸政治勢力の介入によって運動内部に軍事的対立も生み出して複雑化している。
 さまざまな屈折した抵抗闘争があろうとも、それは、これまでの帝国主義の新植民地支配、そして帝国主義と結託した独裁政権を打ち砕こうとする運動なのである。二〇〇一年以来米帝が中央アジア・中東諸国に強制してきた新たな侵略反革命戦争に対する反米―反帝の闘争が、現代世界を大きく揺り動かしているのだ。
 エジプト人民は二〇一一年一月・二月、大規模な反独裁デモでムバラク政権を打倒した。しかし、その後の議会選挙と大統領選挙で勝利を収めたのはムスリム同胞団だった。大統領となったムルシは一二年十二月、イスラム色の強い新憲法制定を強行した。一方で、ムルシ政権は経済生活の安定を実現できなかった。ムバラク独裁打倒の革命に逆行するムルシ政権に対して、エジプト人民は街頭で反ムルシ政権運動を開始した。昨年春街頭署名運動から始まった反ムルシ運動は、五月・六月には一挙に拡大し、六月三十日の大集会へとすすんだ。
 しかし、ムルシ政権と反ムルシ大衆運動の対決に、軍が介入した。反ムルシ運動に立ち上がっていた民衆は一旦は軍の介入を歓迎した。しかし、軍は反ムルシ運動の主導権を握り、ムルシ大統領を排除して暫定政府を樹立し、ムスリム同胞団を非合法化して弾圧した。ムルシ政権打倒闘争は、軍事クーデターに転化してしまった。現在、反ムルシ運動を主導した若者の中に、軍によるムスリム同胞団排除ではなく、改めて反軍・反同胞団の「第三の道」を探る動きが始まっている。
 軍の下にある暫定政府は十一月二十四日、「デモ規制法」を導入した。しかし、十一月二十六日には、これに抗議する若者たちがカイロの中心部でデモを行なった。暫定政府は「デモ規制法」を初適用して、デモ参加者数十人を逮捕した。翌二十七日には、この弾圧に対する憤激が一挙に拡大し、一万人以上が結集して「軍政打倒」を叫ぶ抗議デモに立ち上がった。エジプト人民のたたかいは、明確に軍政打倒に向かっている。
 シリアにおいては二〇一一年に民主化要求デモが開始され、アサド政権の武力弾圧の激化によって内戦化してきた。現在、シリアでは、「ヌスラ戦線」やアルカイダ系「イラク・レバント・イスラム国」など外部から介入した武装勢力が、シリア人組織よりも強力な武器を持ち込んで、内戦を激化させている。これら外国勢力は、アサド政権との戦闘のみならず、住民殺戮をも行なって、内戦を複雑に混迷させてしまっている。化学兵器は、政府側も、反政府武装勢力側も所持している状況である。
 民主化闘争の当初、アレッポ、ラッカにおいては、地域レベルの民衆委員会が闘争を指導し、解放区が創出されていた。
 内戦下にあって、現在も、アサド政権と対峙しつつ、イスラム旗を拒否した民衆組織が自立的な活動は続いている。
 反政府闘争は昨年、トルコにも波及した。五月三十一日から開始されたエルドリアン政権抗議デモは全国六十七都市に拡大してたたかわれた。イスタンブールではデモ隊が政府庁舎にまで迫った。
 中東、北アフリカの革命の根底にあるのは、パレスチナ解放闘争である。二〇一一年エジプトでムバラク政権が打倒されたことによって、ガザ封鎖が緩和された。一方、PLOは一一年九月に、パレスチナの国家として国連加盟を申請し、まずはユネスコ加盟が承認された。一二年十一月、国連総会で、パレスチナは「オブザーバー組織」から「オブザーバー国家」に格上げされた。この国際的な流れによって政治的に追い詰められたイスラエルはガザに対する大規模な空爆―殺戮を強行した。その後も、イスラエルは国際法上違法とされている入植地の拡大を続けている。この暴虐に対するパレスチナ人民の解放闘争は不屈に続いている。反イスラエル・反米帝国主義を鮮明にしたパレスチナ人民のたたかいこそ、改めて中東・北アフリカの革命の核心とならなければならない。
 米帝は、原油をはじめとする中東の利権を確保し続けるために、あらゆる手段をもって中東新植民地支配を貫徹してきた。一方ではイスラム社会を資本主義へと転換させるためにリベラル―世俗勢力を支援し、他方では支配に都合がよければ王政を護持することも行なってきた。そしてまた、イスラエルとの同盟関係を基礎にした、軍事介入―侵略戦争という選択肢も行使してきた。
 この米帝の中東新植民地支配に対して、イスラム主義による反米闘争が民衆の支持を受け、一定の力をもってきたのは当然のことである。しかし、二〇一一年以来、帝国主義と結託した軍事独裁政権に対する反独裁闘争が、反帝闘争を内包して発展してきた。この中東・北アフリカの革命は、帝国主義の思惑通りの中東新植民地支配という構図を大きく崩してきた。中東、北アフリカの反独裁闘争が、紆余曲折を経ながらも、その圧制の根源に帝国主義の新植民地支配があること、そして、経済的な格差と貧困の根源が現代資本主義のグローバルな展開にあることを見極め、帝国主義との対決へと向かってきているのである。これこそが重要である。革命の行く末を決定するのは、帝国主義の軍隊ではなく、蜂起した人民である。

  ▼1章―3節―2項 反資本主義、反帝国主義の闘い

 昨夏、米帝のシリア軍事介入切迫の状況の中で、米国においては、シリア軍事攻撃反対の行動が断固として取り組まれている。二〇〇一年9・11攻撃直後に米国で結成されたANSWER連合は、アフガニスタン反戦運動、イラク反戦運動を中心で担いつつ、同時に米国における排外主義とのたたかいを大衆運動の重要な領域として進めてきた。
 オバマがシリア軍事介入を強く主張していた昨年九月七日、ANSWER連合はシリア軍事攻撃反対の全国一斉行動に立ち上がった。また、十一月十五日には首都ワシントンDCで、パキスタン、アフガニスタン、イエメンなどでの米軍による無人機攻撃での殺戮に対する抗議行動に立ち上がっている。
 二〇一二年、ギリシャ財政危機をはじめとしてヨーロッパ諸国の財政危機が次々と問題になる中で、財政破綻国は徹底した緊縮政策が強制されている。金融投機資本のグローバルな展開という現代資本主義の根本的な問題は放置したままで、経済危機の埋め合わせを労働者人民に押し付けてきたのだ。ユーロ圏の失業率は昨年年頭から12%を超え、昨年九月の段階で12・2%に達し、最悪の記録を更新し続けている。若年層(二十五歳以下)の失業率はユーロ圏全体では24・4%に達しており、ギリシャでは62・5%、スペインでは56・4%、イタリアでは40・5%という状況なのだ。
 支配階級は「緊縮緩和」の論議をはじめたとはいえ、緊縮政策そのものが終止符を打たれた訳では決してない。二〇一三年、貧困と格差を拡大し続ける緊縮政策の強制に対して、欧州労働者階級のたたかいは続いている。
 ギリシャをはじめとする欧州各国で緊縮政策反対、政策転換を求める労働組合は集会・デモ、庁舎包囲の行動に立ち上がっている。緊縮政策が強制されているギリシャにおいては、公務員の削減・解雇、工場閉鎖などによって失業者は増大し続けている。ギリシャでは解雇、減給が強行された公務員労働者の争議、ストライキがたたかわれている。また、民営化に反対する抗議行動がたたかわれている。フランスにおいても九月十日、オランド政権の緊縮政策に対して、パリでの五万人をはじめとする全国三十七万人が一斉抗議行動に立ち上がっている。

  ▼1章―3節―3項 アジアにおける階級闘争、反帝闘争の発展

 米帝―オバマ政権は、アジアと中東を「戦略的利益がある地域」と規定し、アジア太平洋にその軸足を移してきた。TPPは、この米帝の戦略転換の中で位置づけられたものである。アメリカは今世紀初頭には、NAFTAを南北アメリカ大陸全域に拡大して貿易・投資の自由化を進めようとしていた。しかし、この米帝の構想は、ベネズエラ、キューバ、ボリビア、ニカラグアなど反米八カ国による米州ボリバール同盟(ALBA)、また、ブラジル、アルゼンチン、ベネズエラなどが主導する南米南部共同市場(メルコスール)、そして、中南米カリブ諸国共同体(CELAC)などの、米州諸国の反米・非米の枠組みが進むことによって、阻止されてきたのである。米州諸国の反米(反帝国主義)運動が大きく進む中で、オバマ政権がその経済権益の根拠をアジア太平洋に移さざるをえなくなったということが現実の姿である。
 米帝、日帝、中国が、アジア太平洋地域の権益をめぐって主導権を争う。この情勢の中で、しかし、この状況を打ち破るのは、労働者階級人民のたたかいである。東アジアの「経済発展」と表現されるが、それは急激な資本主義化の進展であり、農村社会の解体と工業化・都市化であり、大量の労働者を生み出してきたのである。東アジア各国において、労働運動が急速に発展してきたのは当然のことである。
 韓国においては、朴槿恵政権が李明博以上の弾圧と新自由主義政策を強行している。十一月、反独裁・反財閥を掲げて朴政権と対決する労働者大会がたたかわれた。重要なことは、この韓国労働運動の中にあって、民営化、非正規雇用化に抗して、非正規職の青年労働者のたたかいが大きく発展していることだ。民主労総の主流部分が労組官僚化している状況の中で、全泰壱精神を真に引き継ぐ青年労働者の決起が力強く開始されている。
 同時に、韓国労働者階級人民は、米軍の駐留に反対し、反戦闘争、反基地闘争をたたかい続けている。済州島カンジョン海軍基地建設反対闘争、群山米軍基地反対闘争など、米帝と朴政権の軍事同盟と対決して、たたかいは続いている。
 フィリピンにおいては、米帝との同盟関係を護持するノイノイ・アキノ政権が、米帝・日帝を「戦略的同盟国」と呼び、米比合同軍事演習を継続し、ここに自衛隊も参加、さらには、米軍と自衛隊の駐留・アクセス協定を策動している。フィリピン共産党は、アキノ政権と日・米帝国主義の軍事同盟、軍事協力関係に反撃し、フィリピン革命を進めてきた。
 フィリピン経済は年率7・8%という経済成長をしているが、その実態は日系企業をはじめとした外国資本が侵出し、フィリピン労働者を低賃金の下におくことによってなされている。「五月一日労働運動(KMU)」は、この状況に対して、大幅賃上げ、契約雇用の廃止、労働組合弾圧をやめることを要求し、たたかい続けている。
 インドネシアでは昨年十月三十一日~十一月一日、全土で、賃上げをめぐって労働組合がゼネストに立ち上がった。一昨年秋のゼネストに続くたたかいが再び始まっている。ユドヨノ大統領が、来年一月からの最低賃金引き上げ幅を「10%以内」に抑える大統領通達を出したことに対して、インドネシア労働者がストライキに立ち上がったのだ。
 資本主義化が進み国内総生産(GDP)が世界第二位となった中国においても、スターリン主義官僚の統制を打ち破って、労働者階級のたたかい、土地を奪われた農民のたたかいが、中国全土で巻き起こっている。そして、独立を希求するウィグル人民をはじめとした民族解放闘争が大衆的実力闘争をもってたたかわれている。習近平政権の弾圧に抗して武装闘争も開始されている。

  ▼1章―3節―4項 極右勢力、排外主義者とのたたかい

 帝国主義各国で労働者階級人民が階級的利害をかけた闘争が大きく前進している。その一方において、これに敵対する極右勢力―排外主義勢力が伸張していることも、現代世界の特徴として見ておかなくてはならない。支配階級は、極右排外主義者どもと直接・間接に結びつき、その排外主義襲撃・反革命行動を社会の中に取り込んできたのだ。
 米国において、共和党の極右として存在しているのが「ティー・パーティー」である。「ティー・パーティ」は、皆保険制度に反対し、オバマケアに対してさえ、議会内外でその実施を妨害し続けてきた。米国内での新自由主義政策に対するたたかい、そして、反戦運動が前進する中で、これに対する反動として生まれ伸張してきた右翼運動である。
 欧州においても、ギリシャ「黄金の夜明け」、フランス「国民戦線」など右翼潮流が跋扈している。ドイツにおいては昨秋の総選挙で反ユーロ新党「ドイツのための選択肢」が注目され、議席獲得には至らなかったが4・7%の得票率となっている。欧州各国では、民族排外主義勢力が、労働運動に対抗しつつ伸張している。「黄金の夜明け」などファシストは、移民に対して、左翼勢力に対して、殺害攻撃をかけている。
 日本において、在特会、がんばれ!日本全国行動委員会、幸福の科学(幸福実現党)などの極右勢力が登場してきたが、かれらの主張・標的は、在日・滞日外国人であり、反原発運動であり、沖縄反基地運動である。これら新興極右勢力は、その出発点や基盤は異なっているが、帝国主義・資本主義の危機、そして、階級闘争の前進に恐怖した支配階級の危機意識を背景にして伸張しているのだということをはっきりと見ておく必要がある。
 階級支配の危機の中で登場してきた極右勢力―排外主義者どもの敵対・襲撃を断固打ち破っていくことは、現在の階級闘争の重要な課題である。
 労働者階級人民はその階級的利害をかけて全世界で立ち上がっている。危機に直面した資本の横暴と対決して、階級闘争は大きく発展している。そして、この労働者階級人民の闘争の中においてこそ、共産主義運動が改めて再生されていく。共産主義者こそが、階級闘争を前進させ、その国際的結合を推進する任務を負っている。現代帝国主義の存立基盤をその根幹において打ち破り、労働者階級人民の未来を切り拓いていこうではないか!



  ■第2章―国内情勢

  貧困を拡大し、戦争国家に踏み込む安倍右翼反動政権を打倒せよ



  ●2章―1節 リーマン・シッョク後の現在、情勢の新たな特徴について


 リーマン・ショックに象徴されたアメリカの金融恐慌の発生は、その危機をグローバルに深化させつつ欧州帝、日帝など帝国主義各国を直撃した。その影響は中国をはじめとした新興国にも波及しつつある。帝国主義各国は、国家財政を悪化させ続けている。財政赤字は、GDP比で帝国主義国で110%(日本は200%以上)、新興国で35%、低所得国で42%となっており、これまでは後発資本主義国などで想定された国家デフォルトの危機が帝国主義国で深刻化し、現実化してきていることが現代世界の特徴の第一である。第二は、昨年五月に米FRBがQE3の縮小を示唆しただけで長期金利が急騰し、急激に新興国からの資金の引き上げが起こり、中国、ブラジル、インドなど新興各国に倒産、失業、物価高騰をもたらしていることだ。帝国主義の経済的危機を新興国が下支えするという構造に大きな変化が生まれはじめている。第三には、米帝の政治・軍事的影響力の衰退が顕著になりつつあることだ。特に中東における政治・軍事的支配力の弱化は、昨今のシリア内戦に顕著にあらわれている。
 世界経済は、日帝の「失われた二十年」に象徴されるような出口なき危機に突入している。危機はその規模を一層拡大させつつスロー・パニックとして全世界を覆っていくであろう。広く労働者大衆に犠牲を押し付けつつ、ワーキングプアを全世界的に蔓延させ、貧困と格差の拡大はますます拡大していくであろう。とくに全世界的に若者の失業と貧困化が深刻である。こうした経済社会の衰退・破綻は必ずや政治的危機へと結びついていく。IMFは昨年八月に発表した世界経済の報告書で、日本で構造改革が進まないとアベノミクスは世界経済の主要なリスクの一つになりうると恫喝し、「米国の金融緩和縮小」や「中国の国内需要拡大のための改革」と同列のリスクに挙げた。帝国主義による世界支配体制の動揺と本格的崩壊過程の始まりの中で、その生き残りをかけて登場したのが安倍右翼反動政権である。

  ●2章―2節 保守二大政党制支配の後退と安倍右翼反動政権

 一昨年の衆議院選挙で大勝した安倍自公政権は、「議会内での多数」獲得をテコとして、アベノミクスをかかげ参議院選挙までは慎重なる政権運営を標榜していたが、世論調査での支持率を伸ばすにつれて、参議院選挙を待たずに、原発の維持・再稼働、TPP交渉参加決定、さらには「憲法改正」にまで言及するに至った。そして、昨年の参議院選挙において公明党とあわせて過半数を獲得し、政権与党としての議会内における安定的基盤を確立した。
 しかし、安倍自公政権はたしかに議席の上では圧勝したが、その政治的基盤はきわめて脆弱だということがある。一昨年・昨年の衆参両院選挙に特徴的なことは、投票率の圧倒的低さである。これはすでに多くの人民が議会制度そのものへの不信を深め、既存政党になんらの期待も幻想ももっていないことを如実に示している。
 第二は、五五年体制の崩壊以降、日帝支配層は新たな政治支配体制を保守二大政党制への転換として志向してきたが、それがうまく機能しなくなってきていることである。そもそも九三年に「政治改革」を標榜し導入された「小選挙区制度」導入の目的は、グローバリズムの世界大的拡大の中で、帝国主義としての生き残りをかけ新自由主義・構造改革の遂行を目的として安定的な保守支配体制を構築するところにあった。構造改革により増大する政治への不満・不信を政権交代という形で吸収することにあった。〇九年の自民党から民主党への政権交代劇は、政権を握ってきた政党にとっては悪夢でも、同じ路線をとる二つの保守政党間での権力移動として保守支配層にとってみれば極めて安定した政治支配構造を確立させたかにみえた。しかし、今回この構造が大きく崩れたということである。投票率の低下のみならず保守二大政党全体への得票そのものが大きく低下し、保守総体が国民の支持を取り付け、糾合できているわけではないのである。
 しかし、安倍右翼反動政権は、一体、何をおこなおうとしているのか。第一は、戦争国家化と憲法改悪であり、第二は、新自由主義・構造改革の推進、第三は、構造改革による社会の破綻や社会矛盾の顕在化に対する国家主義的教育改革などをとおした保守的国民統合である。
 九〇年代、冷戦の終焉とともに経済のグローバル化が本格化し、新自由主義といわれる時代に突入した帝国主義各国には大きく二つの課題が突きつけられた。第一は、新自由主義・構造改革の徹底した推進である。各国帝国主義は、自国のグーバル企業の競争力をつけるために既存の政治経済的構造改革に乗りださざるをえなくなった。大企業に対する負担と規制を軽減すること。労働力コストを下げて競争力を強化すること。これらが「新自由主義・構造改革」として世界を席巻しているのであり、安倍は日本的構造改革を急進的に進めようというのである。
 第二は、全世界規模で市場が拡大する中で、帝国主義各国の多国籍企業が自由かつ安全に経済活動ができるよう世界の軍事的・政治的体制を構築することであった。グローバル企業による資源の略奪、製造拠点の確保や販売市場の拡大などあらゆる領域においてグローバル企業の「自由な活動」を保護し保障するために帝国主義各国には新たな軍事化が求められることになったのである。とくに、米帝は日帝に対して「核の傘」の下、日本の多国籍企業がその恩恵を受けるのみならずアメリカ経済をも脅かす一方で、自由世界の秩序に責任をもっていないとして軍事的分担を強く求めてきた。これに応えるべく安倍は日米同盟の強化、実際に戦争のできる国家づくりを目指しているのである。

  ●2章―3節 改憲―戦争国家化をねらう安倍右翼反動政権

 安倍右翼反動政権は、「積極的平和主義」と称して日米軍事同盟を再編強化し、国防軍を創設し、集団的自衛権を行使できる本格的な「戦争のできる国家」をめざそうとしている。すでに安倍は集団的自衛権行使にむけ内閣法制局人事において集団的自衛権行使容認派の小松一郎を起用した。
 昨年末の臨時国会において、米国NSCとの継続的協議を行える組織として国家安全保障会議(日本版NSC)法を成立させ、特定秘密保護法を強行採決した。昨年九月、集団的自衛権の行使「合憲化」にむけ安倍の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)が議論を再開させた。安倍は、懇談会再開の冒頭「いかなる憲法解釈も国民の生存や国家の存立を犠牲にする帰結となってはならない」と述べ、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使「合憲化」に改めて意欲をみせた。そもそも集団的自衛権の行使とは、決して自衛戦争のためではなく、米帝とともに侵略戦争に参戦するということだ。
 安保法制懇では、国連のもとでの集団的安全保障にもとづく多国籍軍への自衛隊の参加を、さらにはアメリカ以外の国の間での集団的自衛権行使を「合憲化」しようとその解釈の拡大をも狙っている。安倍は防衛費増額による自衛隊の強化・改編を図りつつ、解釈変更で集団的自衛権容認にまず風穴をあけることをねらっているのだ。そして、今年には「国家安全保障基本法」などの立法改憲により包括的な集団的自衛権容認をおこない、恒常的な自衛隊の海外派兵の法制的体制を構築し、最後の総仕上げとして明文改憲による九条改憲をおこなおうというのである。
 こうした集団的自衛権行使の「合憲化」をめざす憲法改悪は、米帝からの強い要求でもあるが、日本の経済界も歴代政府に対して強く改憲を要求してきた点を見過ごすことはできない。本格的なグローバリゼーションの時代に突入し「政治改革」が叫ばれていた九四年、経済同友会は『新しい平和国家をめざして』において「必要最小限の自衛力の保持とその国際的平和維持・救援活動への貢献」とその「法制化」を提言している。九九年には「集団的自衛権行使に関わる政府の憲法解釈の早期見直し」、そして○五年には日本経団連が「集団的自衛権に関しては、わが国の国益や国際平和の安定のために行使できる旨を憲法上明らかにすべきである」と要求しているのだ。読売新聞の憲法改憲試案もこうした流れの中で〇四年に発表されている。企業活動のグローバルな展開を見据えて日本の国益(グローバル企業の防衛)のため憲法改悪を求めてきているのであり、新自由主義・構造改革の推進と憲法改悪は一体のものである。
 一二年に発表された自民党改憲草案は、憲法を、国家権力をしばるものから「国民」をしばるものへと根本的に転換させた。実際に「戦争のできる国家」づくりにむけた一連の改憲策動の集大成である。この改憲を許すことは、われわれの日常生活の中に戦争が組み込まれ、戦争を前提とした社会へと日本社会が大きく変わることを意味するのだ。反戦平和を訴えることが「公の秩序」「公益」に反するものとして規制の対象となる。そのために表現の自由にも制限が加えられる。戦争で戦死者が出ればその合祀と英霊化も問題となる。戦地での命令に従えない軍人に対する処罰をおこなうための軍法会議の設置も必要となる。そうした戦争遂行のための様々な条項が草案には盛り込まれているのだ。
 自民党改憲草案は現行憲法前文に明記されている「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」という「平和的生存権」をめぐる記述を完全に削除している。まさに社会末端にまであらゆる領域で「戦争のできる国家」づくりをねらっているのである。自衛隊国民監視訴訟の中でも明らかになったように、すでに自衛隊は何の法的根拠もなく戦争の遂行(彼らのいう「実力の発揮」を維持する)ために団体・個人を問わず監視活動をおこなっていたことが明らかになった。その対象は一般市民も含む広範な団体・個人に及び「平和宣伝活動」は言うに及ばず「労働組合の春闘」など、いずれもが情報収集の対象になりえると元自衛隊の情報保全隊長が裁判で証言している。そのような活動する個人・団体は「敵性人・敵性団体」として今後、逮捕・拘束の対象になる可能性が高い。徴兵制の復活も今後課題として浮上してくるであろう。
 安倍は、改憲と一体的に教育再生と称して愛国主義教育を強化してきている。「日の丸」「君が代」強制を教育現場においてますます強化し、「道徳教育」の教科化や戦争を正当化・美化するための教科書の国定化ももくろんでる。中国や韓国に対しては、釣魚諸島、独島をめぐり領土・領海への「侵犯行為」だとして政府・マスコミが一体となって排外主義扇動をつよめている。とくに、朝鮮民主主義人民共和国(以下、共和国)に対しては過酷な植民地支配や戦争による加害者としての立場を相対化あるいは無化させるためにミサイル発射問題や拉致問題を最大限に利用し、共和国への敵意を徹底的に煽っている。こうしたアジア敵視の排外主義的扇動、宣伝が維新の会や在特会さらに「がんばれ日本!全国行動委員会」(田母神グループ)など差別排外主義集団、天皇主義右翼なども利用しながら強化されてきている。さらに秘密保護法を制定し、情報の国家管理と統制を一挙につよめ「戦争のできる社会」へと日本社会を大きく変えようする一大反動攻撃が労働者人民にかけられてきているのである。
 米帝は、二〇一〇年に「四年ごとの国防政策の見直し(QDR)」を発表した。それは政治的、経済的、軍事的に対中国を想定したうえでアジア太平洋地域における帝国主義的軍事支配秩序の形成を重視したものである。米帝は中南米および中東での覇権と支配秩序形成に失敗し、その支配力をおおきく後退させた。アジア地域こそが米帝にとって死活的に重要な地域となってきている。それゆえにアジア太平洋地域の支配にむけてTTPを推進し、軍事力を強化するとともに同盟国への役割分担の強化を求めてきている。
 それをうけた日帝は自衛隊のミサイル防衛や防空能力の強化を図り、合同演習を繰り返し実施して米軍との連携強化を進めてきた。普天間基地へのオスプレイ配備、辺野古新基地建設策動や岩国基地強化(一七年艦載機の五十九機移駐、海外では初のF35の配備、KC130の本格移駐、愛宕山米軍基地建設など)と岩国を運用拠点にした低空飛行訓練の実施、嘉手納・横田へのオスプレイ配備策動、沖縄南西諸島への自衛隊配備策動、京都米軍Xバンドレーダー基地建設が、こうした戦略のもとに進められているのだ。
 また、安倍政権は国内軍需産業の育成もふくめて「武器輸出三原則」の全面的見直しを目論んでいる。若者の就職難を利用した自衛隊への勧誘もその激しさを増しており、自衛隊採用年齢の低年齢化による「戦える自衛隊」への改編を目論んでいる。さらに新防衛計画大綱の策定にむけてより具体的に「国民の生命・財産、領土・領海・領空を断固として守りぬく態勢の強化」として①「敵基地攻撃能力を保有する」(共和国のミサイル基地への直接攻撃)や②「島の防衛強化」として自衛隊に「海兵隊的機能」を付与するとしている。安倍は、集団的自衛権行使にむけ自衛隊の実践部隊化を強化し、侵略軍隊としての改編強化を急速にはかっているのである。

  ●2章―4節 新自由主義政策推し進める安倍右翼反動政権

 安倍は、選挙で最優先課題としてきた景気回復にむけて緊急経済対策を矢継ぎ早に打ち出してきた。デフレからの脱却を図り、日本経済の再生を図るとするアベノミクスの基本政策は①大胆な金融緩和、②起動的な財政政策、③民間投資を喚起する成長戦略の「三本の矢」からなる。そのうち、金融政策面では「異次元的緩和」として日銀に圧力をかけ、「2%のインフレターゲット」を政府との共同声明を掲げさせた。日銀総裁―黒田は、大胆な金融緩和によりデフレと円高からの脱却を図ることを目指している。そのために一二年末に百三十八兆円だったマネタリーベスを十四年末には二百七十兆円にしようというのだ。市中に出回った莫大な金が企業の設備投資などに向かうことをねらったものだ。
 しかし、この政策は世界的にみれば異次元でもなんでもない。米FRBのQE3の焼きなおしに過ぎない。こうした金融緩和策は、緩慢なインフレを継続させることにより経済の安定成長を図ることができるとするマクロ経済学の理論を喧伝し政策に取り入れようとするリフレ(リフレーション)派の理論に依拠したものである。現在、安倍のブレインである浜田宏一や日銀副総裁に就任した岩田規久雄らがその代表格である。
 金融緩和により一ドル=九十円前後だった円相場は現在、九十七円から九十八円を前後して推移している。これにより自動車産業を中心とした輸出関連企業の業績が回復し、それにともなう株価の上昇を背景として景気回復が叫ばれている。他方、円安による燃料や原材料価格などが値上がりしており、国民生活を徐々に圧迫している。貿易赤字は昨年九月で十五カ月連続となり、過去最長だった第二次石油危機時の連続赤字を三十三年ぶりに更新している。「双子の赤字」への転落であり、構造化のきざしを示している。「輸出で稼ぐ」という日本のビジネススタイルは過去のものになりつつある。そして、物価だけが上がって給料が上がらないという悪循環の構造に入りつつあるのだ。そして、今年四月からは消費税増税が追い打ちをかける。昨年後半からの国内消費の拡大傾向は、消費税増税前の駆け込み需要の側面が極めて強い。再び国内消費が冷え込むことは火をみるより明らかだ。
 財政政策の面では昨年の予算案でも過去最大規模の九十二・六兆円の積極財政を閣議決定してきた。公共事業に五・三兆円。公共事業費とあわせると十兆円に達する。公共投資により、たしかに一時的には景気は持ち直すかもしれないが、それは長続きせず借金だけが増大することはあきらかだ。昨年十一月に発表された七月から九月期の国内総生産は年率換算で前期より1・9%増加したが、個人消費は伸びず公共投資がなければ成長率はゼロに近い。早くもアベノミクスの経済効果が鈍化してきているのだ。
 アベノミクスにおいてその核心的部分は三本目の矢といわれる「成長戦略」にある。そして、この「成長戦略」の柱こそTPPと原発推進、産業構造の転換にあわせた労働市場の一層の弾力化(雇用の流動化)を図ることである。安倍は、昨年四月に「成長戦略スピーチ」をおこない、成長戦略のキーワードとして、挑戦(チャレンジ)、海外展開(オープン)、創造(イノベーション)の三つの言葉をあげた。その中身として、挑戦は、人材、資金、土地を、生産性の高い分野にシフトすることだと説明している。具体的には、成長産業への再就職を支援する助成金の拡充、女性労働を活用するための待機児童ゼロへの環境整備。海外展開は、TPPの推進と医療機器の海外への売り込みである。創造は、再生医療の実用化のための規制緩和促進、医療研究開発の司令塔(日本版NIH国立衛生研究所)の創設などである。
 こうした産業構造の転換を「成長戦略」として推進しようとしているが、日本政策投資銀行の調査では、大企業の一三年度の国内設備投資計画は、前年度実績より10・3%増える見通しだが設備投資は国内より海外の伸びが大きい。同じ調査では、海外投資は25・9%増の計画だ。「インドネシアの化学品工場の生産能力を、約四百億円かけて増強する」(旭硝子)。「増産に向けた設備投資は海外が中心。国内では研究開発投資が中心だ」(ダイハツ工業)というように企業の設備投資の基本動向は依然として海外が中心となっている。企業は、労働コストの削減はもちろんのこと日本社会の少子高齢化の進行にともなう市場の縮小を見据え、海外での拠点拡大をもとめて内部留保などを使った海外企業の買収なども積極的に行っている。こうした海外への投資傾向は一層強まらざるを得ない。肝心の国内中小製造業などの設備投資にむけた資金流動の動きは極めて弱く、アベノミクスが狙う国内の雇用増に直接つながる動きを示してはいない。グローバル大企業を中心に海外へと権益を求める動きは、強まりこそすれ弱まることはないのである。
 また、特に注視しなければならないのは、労働政策をめぐる領域である。グローバル企業は労働力コストを徹底して削減することを至上命題としてきた。イギリスやアメリカでは、労働力コストの削減には、力の強かった産業別労働運動を弱体化させることが不可欠であったことから、その手始めに労働組合に対する攻撃が執拗に行われた。日本でも中曽根のもとで国鉄の分割・民営化という国労潰しがおこなわれ、今日では連合内の自治労と教組の解体が目論まれている。ただ、日本の場合、連合に集約されたように労働組合が企業主義と本工主義に毒され、「サービス残業」や「過労死」を生み出すような過酷な労働を強いられてもなお企業の成長に労働者の未来を託するという労働者支配の構造が作られ、これが日本企業の競争力の源泉となってきた。
 しかし、世界市場に中国やインド、ベトナムなどさまざまな国が参入し、日本の何分の一という賃金で労働力が供給されると、労働力コストをさらに削減しないと競争には勝てないこととなり、小泉以来激化している労働法制の諸改悪が強行されてきたのである。そして、この間多国籍大企業をはじめとして莫大な利益をあげてきた企業は労働者への分配ではなく、株主への配当や内部留保資金を厚くする自己金融化傾向を増強させてきた。
 こうした傾向は、金融の不安定化、金融恐慌、あるいはますます激しさを増す資本間の競争激化の中で、強まりこそすれ弱まることはない。企業はぎりぎりの賃金で労働者を酷使し、企業収益をあげ資本間の国際的競争に生き残っていこうというのである。
 政労使協議において企業側は、今春賃上げに応じるかのような姿勢をしめした。しかし、それは一部大企業の正社員にのみあるかもしれないという程度のものであり、口約束に過ぎない。賃上げ期待感を高めた上でその後に痛みをともなう本格的構造改革が待っているのだ。
 安倍は失業率の増加を抑制し雇用を維持するというよりも、制度的にも職業紹介会社を通じ社員を再就職させた企業に支給する「労働移動支援助成金」を増やすなど、労働移動の流動化に重点を置いた政策をすすめようとしている。こうした狙いの延長で、職種や勤務地を限った「限定正社員」の拡充や裁量労働「職種の拡大」、解雇の金銭解決、「解雇特区」の導入などがもくろまれている。「解雇特区」構想は一旦頓挫した形にはなっているが、基本的な流れは決して変わっていない。
 一方、企業に対する各種負担と規制が軽減・緩和されようとしている。現代国家が資本に負担としてもとめるのが法人税と社会保障負担であるが、こうした法人税と社会保障の負担を下げ、一層企業の競争力を強化しようというのである。労働力市場の一層の流動化と一体的に大企業に対する負担と規制の軽減と緩和をおこない、その穴埋めとして消費増税のような大衆課税を強化しようとしているのだ。安倍は、急進的構造改革を推進した小泉以上の新自由主義・構造改革路線を推進しようというのである。労働法制の改悪がそうした「成長戦略」の重要な柱としてすえられているのだ。
 現状、雇用と労働をめぐる環境は、急激に悪化している。昨年、非正規労働者の割合が35・2%となり、千八百万人を超えた。失業率が改善しているようにみえるが、期間従業員やパートなど非正規労働者が増加したためだ。また、正社員にあってもリーマン・ショック後のリストラによる雇用不安の増大、長時間労働、過労とストレスなどにより精神疾患が二割増加し、過労死・過労自死は過去最高になっている。労働者の給与は下がり続けている。所定内給与は十四ケ月連続で減少(昨年七月段階)している。みなし労働制や固定残業代制度の悪用による残業代の未払い、新たなリストラ策として出向や追い出し部屋など労働者の切り捨て・使い捨てが常態化している。こうした悪徳企業が急増している。非正規労働者だけでなく、正規労働者の労働条件も急激に悪化している。若者の失業の増大と長期化の傾向は一向に改善されず、それにともなう若者の生活保護受給者の増加など貧困化が深刻になっている。安倍はこうした過酷な労働者支配の現状を、改善するどころか一層悪化しようとしているのだ。
 それだけではない。高齢者、女性、障害者をはじめとした社会的弱者への矛盾の押し付けもますます強められている。医療・介護・年金などの社会保障制度の改悪が一層進もうとしている。昨年、公共投資や防衛予算の増額、企業の復興法人税の前倒し廃止が決定される一方、六百七十億円の生活保護予算が削減された。生活保護費は三段階で引き下げが行われ、子どもがいる世帯などで最大10%の減額がなされようとしている。最後のセーフティネットすら自己責任論のもとで崩壊させられようとしている。一部大企業の儲けのために多くの人民が生活の破綻、命の危険にさらされるのだ。

  ●2章―5節 原発再稼動へと突き進む安倍右翼反動政権

 福島第一原発の爆発事故から三年を迎えようとしているが、故郷を追われ仮設住宅に今なお入居中の被災者は十万人を超えている。三百トン以上の汚染水がタンクから漏れ出し、地中、海洋へと放射能汚染を拡大させている。環境省は、国直轄の除染終了目標だった福島の七市町村での作業を延長。今年度中の完了を断念した。手抜き除染の実態が次々と明らかとなり、もし国が除染完了を宣言し規制を解除したとしても安心して帰れる保障はまったくない。
 昨年十月、世界の原発関連企業から多額の資金提供を受ける国際的原発推進組織であるIAEAと原子力規制委員は「年一ミリシーベルト以下の被曝線量は、除染だけで短期間に達成できないと住民に説明すべき」「年間二十ミリシーベルト以下までを許容した方が良いというのが世界の一般的な考えだ」と述べ、国や東電の除染費用の節約と引き換えに福島の住民にさらなる被曝を強制しようとしている。昨年十月には、その除染費用すら東電は一部支払いを拒否していることが明らかとなった。これほどの甚大な被害といつ終わるともしれない放射能被害を引き起こし、原因の究明も責任者の処罰もないままに、安倍や電力資本は、全国の原発再稼動反対、即時廃炉の声も無視し、原発再稼動の動きを加速させている。
 その真の目的は何か。第一には、プルトニウムを保持し核武装をめざすためだ。これまで使用済み核燃料から取りだされたプルトニウムの量は、原爆千百発分に及ぶ。決して電力不足のためではないことは原発の全停止中に停電が起こらなかった事実をみれば明らかだ。米帝は〇五年以降、原発をめぐる協議の中で日本に対して原発の「軍事施設」としての位置づけを求め続けている。日本では建前上、これまで原発施設は民間の発電施設としての運営を続けてきたわけであるが、福島第一原発の爆発事故を契機に「原発テロ」の危機が高まったとして一挙に「核軍事施設」として管理・防衛、機密の保持を求めてきているのだ。これは、米帝を中心として、ロシア、中国、共和国に対抗する核戦略体系の中に日帝を一層組み入れようとする動きである。すでに、原子力基本法第二条に「我が国の安全保障に資することを目的」とする条項と原発新基準の中にテロ対策の項目が追加されたのは、こうした動きを反映したものだ。
 第二は、東電の経営破綻を避けるためだ。原発をかかえる電力各社は原発停止により、大幅な赤字に陥っている。電力各社は、電気料金の値上げの理由として、原発を停止させているため火力発電などの燃料費が上昇したことをあげている。しかし、これはまったくのペテンである。東電は、すでに燃料費上昇分を燃料調整費という形でかなりの金額をカバーしており、値上げはその口実にすぎない。値上げのほんとうの原因は、停止中の原発が不良債権化していることにある。電力各社は、原発を稼動させない限り経営破綻の道しかない。今後も増えることが確実な莫大な賠償費用や事故処理費用、廃炉費用、除染費用などを考えるならば、すでに東電の支払い能力は完全に喪失している。東電は実質的に経営破綻しているのだ。そうした電力各社の経営破綻を救済するために再稼動が目論まれているのだ。
 それはまた、電力各社に多額の融資をおこなっているメガバンク救済のためだ。昨年十一月、安倍政権は事故対策の抜本的対策を見直すとして、除染費用の一部に国費(税金)を投入し、廃炉や汚染水対策にも積極的に関与することを表明した。今年の通常国会で関連法の改正も検討するとしている。ここでの国の積極的関与と国費の投入とは、国が全面的に避難住民の帰還や健康に責任をもつということではない。あくまでも電力会社と銀行の破綻回避の費用を際限なく投入するということにすぎない。銀行資本の弱体化はアベノミクスの成否に直結するからだ。
 第三には、アベノミクスの第三の矢である「成長戦略」の柱のひとつに原発輸出をかかげている。新規原発の建設が困難となっていく中で、新興国を中心に原発を売り込み、日帝の経済成長の基盤にしようとしている。そのためにも原発再稼動は絶対に必要なのだ。本年はそうした再稼動をめぐる正念場の年となる。原発がある限り無限に被曝労働者が生み出される。反原発―再稼動阻止、全原発の廃炉のたたかいは、金儲けのためなら人命も健康も関係ないとする電力資本、資本主義そのものとの全面的たたかいの中軸であり、日帝の核武装と戦争国家化を狙う安倍右翼反動政権打倒闘争の核心的課題である。全国、全世界の反原発闘争との結合をつよめ、再稼動阻止、原発輸出反対にむけたたたかいを一層強化しなければならない。

  ●2章―6節 安倍右翼反動政権と全面対決し、打倒する全人民闘争の発展を

 アベノミクスに経済再生と労働者人民の未来を託すならば、その行き着く先は地獄である。新自由主義・構造改革と改憲・戦争国家化にむけた一大反動攻撃がはじまっており、この安倍右翼反動政権を打倒する労働者人民の総抵抗の反撃がもとめられている。
 〇五年、百六名もの尊い命が奪われたJR西日本福知山線脱線事故によって強制起訴を受けていたJR西日本の歴代三人の社長に無罪判決が下された。福島原発告訴団による東電、御用学者などを相手とした刑事告訴に対して福島地検は東京検察に移送し、東京地検は間髪を入れずに全員を不起訴処分とした。告訴団は、検察の決定に強く抗議するとともに「検察審査会」への申し立てをおこない徹底した責任追及のたたかいを継続している。戦後五十八年以上たってもなお、病気に苦しみ被害の救済が終わっていない水俣病に対して、「水俣病を克服した日本こそが水銀中毒とのたたかいにたつことが求められている」と安倍は言い放った。しかし、水俣病被害者たちは「水俣病は終わっていない」と怒りも新たに提訴もふくめて安倍政権との対決を開始している。
 この国は、国民が死のうが、放射能汚染や公害で苦しもうが、政府、企業、行政の誰ひとりとして責任をとることもなく、処罰されることもない。弱肉強食、拝金主義、無責任主義の極みに達している。そして、今度は、労働者人民を戦争へと動員し、企業と国家のために死ねといっているのだ。こうした極反動政権は、打倒する以外にない。
 福島第一原発の爆発事故と収束のめどのたたない放射能汚染とのたたかいは、それまでの原発依存社会のあり方を根底から問い直し、人類と核が共存できないことを証明した。政府・電力資本、原発製造メーカーなどによる原発再稼働との攻防は一層激化せざるを得ない。いまも国民の六割近くが原発再稼動に反対している。再稼動阻止のたたかいは安倍政権打倒の導水路である。四割以上が反対し、秘密の範囲が拡大されていくことに八割近くが危惧を抱いていた特定秘密保護法が自民・公明によって強行採決された。国会は、自民・公明を中心に維新、みんなの党など右翼反動どもが制圧し、国民の意思とはまったくかけ離れたものになっている。
 こうした国会の翼賛化と反動化には、「選挙」ではなくプロレタリア人民の直接行動こそが必要なのだ。プロレタリア人民のたたかい方こそが未来を決定づけるのだ。沖縄人民は、オスプレイの普天間配備に対して警察権力、米軍などと激しくたたかい二十二時間にわたって普天間基地を実力で封鎖した。ヘリパッド建設には、高江住民を先頭に連日の工事阻止の座り込みをおこない、工事を実力で阻止してきた。陳情をおこない、説明をもとめ、どのような抗議を行おうとも強権的に基地機能強化に突き進む日帝国家権力に対する沖縄人民のこうした怒りの実力決起・徹底非妥協のたたかいがあらゆる闘争の場に求められている。
 こうした沖縄のたたかいを先頭に岩国、神奈川など全国各地において反戦・反基地闘争が全国的結合を深めつつ粘り強く闘われている。こうした反基地闘争は韓国、フィリピンをはじめとしたアジア規模での反米軍闘争として連携が強化されつつある。
 三里塚では徹底非妥協のたたかいにより空港の完成を敢然と阻止している。憲法改悪にむけた動きは、急速に反改憲運動とその勢力を全国に拡大させている。草の根の市民運動、弁護士や憲法学者、先進的労組なども反改憲活動を活発化させている。さらに反TTPのたたかいが農協や医療関係者など広範な勢力を巻き込んで拡大してきている。
 秘密保護法反対のたたかいは、短期間のうちに燃え広がり、安倍右翼反動政権との対決陣形を拡大している。先進的な中小労働運動を先頭とした労働者の生活防衛のたたかいは、新自由主義・構造改革路線と対決し、労働者階級全体の生存をかけたたたかいとして現代資本主義を根底から突き破る質を有して前進しようとしている。アジア蔑視、女性蔑視、憲法改悪などまったくの安倍と思想的同根である石原・橋下率いる日本維新の会の正体を労働者人民は見抜きつつある。地方選における維新の会の敗北や支持率の低下は明確にそのことを物語っている。在特会など右翼排外主義勢力と実力で対抗する動きも急速に拡大してきている。
 大きな社会経済的危機は、新たな社会運動や社会主義再生へのチャンスを孕むものである。こうした時代の転換点に今、われわれは立っている。その新たな社会建設にむけて政治的危機へと転化させていくたたかいと努力が問われている。反原発、反改憲、反自由主義・構造改革、反排外主義、反TPPなどあらゆる反政府勢力の結合と連帯を強化し、戦争責任・戦後責任を徹底追及し、日帝の戦争国家化に警戒をふかめるアジア人民との連帯を一層おしすすめることが極めて重要である。アジア人民とともに労働者階級人民の未来をかけて安倍右翼反動政権を打倒するたたかいにともにたちあがろう。



  ■第3章―党建設方針

  党建設十年の地平打ち固め、革命的労働者党の全国党への大躍進を



  ●3章―1節 共産同(統一委)結成十年の地平


 二〇一四年は、共産主義者同盟(統一委員会)の結成から十年となる年である。〇四年、共産同(統一委)は、戦旗派と全国委員会派が統合し、結成された。当時、米帝のアフガニスタン戦争・イラク戦争と新自由主義グローバリゼーションが激化し、日帝も自衛隊派兵と新自由主義的構造改革を強行していた。わが共産同(統一委)は、戦争・新自由主義と正面から対決し、国際主義と日帝打倒、プロレタリア革命をたたかう二十一世紀の歴史的任務をもって登場した。それから十年の現在、安倍政権の改憲―戦争国家化を軸とする歴史的な反動的攻撃の嵐が吹き荒れている。われわれの任務と責任は重大である。日本帝国主義本国におけるプロレタリア革命勢力として、いっそうの飛躍が問われている。これに応えなくてはならない。
 安倍右翼反動政権の強権政治に全人民の怒りが噴出している。われわれは、安倍打倒の全人民決起の一翼を担い、反帝国際主義潮流、労働者・被抑圧人民の解放を準備する新たな階級闘争構造を建設していかねばならない。
 われわれは人民の総抵抗戦の牽引に奮闘する。同時に、他の共産主義者・社会主義者グループとの党派共闘、そしてプロレタリア革命準備の実践・思想理論をめぐる同志的な共同活動を強め、現代の共産主義運動の創造的再建を担っていく決意である。
 十年目となる、わが共産同(統一委)の党建設の地平について、簡単に確認したい。〇四年、共産同(統一委)は、綱領・規約、組織テーゼ、戦術テーゼを勝ち取った。その内実は次のものである。
 第一に、綱領をもって、現代の革命的労働者党の建設を宣言した。綱領一部では、現代資本主義・帝国主義支配の打倒、プロレタリア世界革命、永続革命・共産主義運動を規定した。綱領二部では、天皇制と日米安保を軸とする日本帝国主義を歴史的に具体的に批判し、日本革命の性格と特質を明確化した。日本のプロレタリア独裁政権の基本政策についての考え方が、政治・経済・社会・国際など諸分野での革命的諸政策としてまとめられている。綱領三部の革命準備は、政治闘争・国際連帯・労働運動・民族問題・反差別運動・環境問題・反原発・教育問題・議会の利用・反ファシスト闘争など、具体的な闘争方針で構成されている。
 第二に、一九五八年の共産同結成以来の実践と路線を総括し、敗北と弱点を抜本的に突破する転換が進められたことである。戦術・組織のそれぞれのテーゼは、階級闘争の様々な発展段階に応じた革命的労働者党の活動形態を規定した。それは、安保闘争など全人民政治課題の牽引一般や、社共に対する左翼反対派という、これまでの共産同の戦略戦術主義の限界から根本的に転換し、プロレタリアート・被抑圧人民・被差別大衆の階級形成を営々と組織することである。
 組織原則では、民主主義的中央集権制と定め、政治警察との闘争による制限があるものの「できるだけの公開性と選挙制」をもって民主主義的な組織運営をすることを基本としている。
 第三には、第二次共産同が掲げた「プロレタリア国際主義と組織された暴力」を発展させた。国際主義活動を実際に組織し、暴力革命路線を武装蜂起戦術として確立した。
 国際活動では、①アジア太平洋地域において反帝国際統一戦線・国際共同行動を進めること、②労働者人民運動を牽引する共産主義・社会主義の諸組織との国際的協議をすすめ、とくにアジア・インターの建設をめざすこと、その他を提起した。
 暴力革命の戦術では、日本が高度に発達した資本主義国であり、圧倒的多数派のプロレタリアートに依拠して被抑圧人民・被差別大衆とともにコミューン・ソビエトを組織し、全国一斉武装蜂起戦術を策定した。
 これらの綱領・組織・戦術のもとで、当面の基礎的実践として、新たな階級闘争構造の全国的建設を行なうことを呼びかけた。
 共産主義者同盟は一九五八年の第一次共産同結成から始まる。当時の国際共産主義運動を制圧した一国社会主義路線・スターリン主義である日本共産党を革命的に批判し、共産同は誕生した。六〇年安保闘争では、全学連の主流派となり、全人民の最先頭で戦闘的にたたかった。
 復活した日帝本国において、わが共産同は、日共の路線と根本から対立した。日共の革命路線は、主要な階級敵として米帝とこれに従属した日本政府・独占資本を措定し、民族民主主義革命、議会による平和革命と一国主義、反米反独占統一戦線であった。
 日共を批判し、これと決別した共産同は、日帝打倒のプロレタリア革命、暴力革命、世界革命を対置した。日共や国際的なスターリン主義潮流の誤りを批判し、共産同は六〇年安保闘争を最左派で牽引し、その敗北後、崩壊し分裂した。
 一九六六年、第二次共産同が再建された。それは、ベトナムの反帝民族解放・革命戦争が激烈化し、米帝のベトナム侵略反革命戦争では日帝がその出撃・兵站基地となり、それが泥沼化し、国際的なベトナム反戦闘争が大高揚する時代であった。
 われわれ共産同は、「組織された暴力とプロレタリア国際主義」を掲げ、反戦・反安保の街頭闘争、学園の学費値上げ阻止闘争などをその中心でたたかった。労働運動では、電通や長崎造船、各地区において、戦闘的にたたかった。われわれ共産同は新左翼の主流であった。
 七〇年安保決戦を前後して、日帝国家権力の反革命弾圧が激化し、第二次共産同は再び指導部の崩壊と分裂に到った。党組織・指導部が不十分であり、戦略戦術主義の限界を主な原因とし、第二次共産同は後退し分裂した。
 共産同(統一委)にいたる戦旗派、全国委員会派は、それぞれにおいて、共産同の総路線である日帝打倒―プロレタリア革命・国際主義・暴力革命の路線を堅持し、第二次共産同の地平を維持し、かつ弱点の突破を行なってきた。
 労働運動や被抑圧人民・被差別大衆の自己解放運動の組織化をすすめた。三里塚闘争、沖縄解放闘争、狭山闘争、入管闘争を担ってきた。国家権力の農地強奪と実力でたたかう反帝闘争拠点―三里塚闘争の攻防を支えつづけている。日米帝の差別軍事支配を粉砕する沖縄解放闘争は、基地撤去・安保粉砕の闘争拠点としてある。
 学園を基盤とした学生戦線を組織し、全人民政治闘争の先頭でたたかいつづけてきた。女性解放運動、部落解放運動、障害者解放運動、被爆二世の会を軸とした被爆者・二世・三世の解放運動、在日朝鮮人・韓国人などの解放運動等、被抑圧人民・被差別大衆の自己解放運動を推進・連帯してきた。
 階級的労働運動では、総評解散・連合結成という帝国主義的労戦再編に抗し、左派労組・労組活動家の拠点づくりに奮闘した。官公労内部における左派潮流を建設してきた。また左派労働運動の一翼をにない、各地において、民間中小零細の相対的下層の労働者をユニオンなどに組織してきた。
 われわれ共産主義者同盟(統一委員会)は、これらの歴史的な活動内容を継承し、安倍右翼反動政権の打倒にむけ、反転攻勢を断固として組織する。次の党派性のもとに、いっそうの労働者・被抑圧人民・被差別大衆の決起と団結・行動を進めていくことである。
 第一の党派性は、安倍政権打倒の全人民政治闘争や反帝闘争において、人民の先頭にたって、これを牽引し、大衆的実力闘争・実力抵抗闘争を担っていくことである。秘密保護法廃棄、反原発、改憲―戦争国家化攻撃とのたたかい、沖縄解放闘争、三里塚闘争、岩国・神奈川の基地強化反対、生活破壊の数々とたたかい、アジア人民連帯など、われわれは体を張って牽引する。
 第二の党派性は、困苦する労働者大衆の決起と希望、団結・階級形成を支え、労働者階級の革命性を組織できる革命的労働者党である。物価値上げと実質賃金の削減、労働法制改悪、非正規雇用労働者のさらなる増大の中で、労働者の団結、労働組合の組織化を推進する。
 第三は、共産主義を組織する党である。現代資本主義・帝国主義の危機、戦争と差別・貧困、社会的崩壊、腐敗が深まっている。この根本矛盾の解決は、労働者階級・被抑圧人民・被差別大衆の解放運動、即ち共産主義運動の前進によってしかできない。反共攻撃を跳ね返し、共産主義運動の組織化と思想理論活動に攻勢的に取り組んでいく。
 第四は、被差別大衆の自己解放運動を組織する党である。資本主義・帝国主義の階級社会は、労働者人民の差別分断、被差別大衆の排除と抹殺を構造化している。被差別大衆の解放は、共産主義運動の中心テーマである。被差別大衆の差別にたいする糾弾権を支持し、自己解放闘争を発展させる。女性解放運動、障害者解放運動、被爆者解放運動、部落解放運動など、それぞれの実践と到達地平を踏まえ、課題をともに担っていかなくてはならない。
 第五には、国際主義を現実に実践する党である。二十二年となるAWC運動を支援することである。中国、共和国への敵視と軍事的緊張の強まり、「釣魚諸島」「独島」「北方四島」への領土拡張主義がはげしく、アジア支配・人民殺戮の日米同盟が軍事的に発動されようとしている。排外主義を跳ね返し、反戦闘争や労働者人民の全運動領域において、国際主義を実践しなければならない。
 結成から十年目を迎える共産同(統一委)は、二〇一四年、断固たる飛躍に不退転で挑むことを同志友人の前に誓うものである。

  ●3章―2節 マルクス、レーニンの労働運動の継承

 われわれは、プロレタリア革命準備のたたかいとして、労働運動の組織化に相当な力量を投入していかねばならない。労働運動そのものを組織し、労働者が社会的生産の主体であり、社会的協業の担い手であり、失うべき何物も持たず、未来社会を切り拓く積極的な存在であるという革命的な性格を引き出していかねばならない。労働者階級の深部に立脚した党を建設することは、現代の共産主義運動を復権させる要となる。広く左翼勢力と左派労働運動は、労働者の階級的組織化をめぐる攻防に立ち向かい、階級的労働運動の前進と発展をかち取っていかねばならない。ここでは、マルクス、レーニンの労働運動をとらえ、労働運動の組織化路線を深め、思想的立場を強化し、わが革命的労働者党建設の一助とする。

  ▼3章―2節―1項 マルクスの労働運動

 マルクスはその生涯にわたり、プロレタリア革命の路線建設、労働者の組織化、資本主義批判を深めた。後期のマルクスは、『資本論』の執筆と出版、国際労働者協会(第一インターナショナル)の発足と実践、パリ・コミューンの分析である『フランスの内乱』、革命的労働者党の資本主義打倒・過渡期と共産主義論を記した「ゴータ綱領批判」など、豊富な内容をまとめあげている。マルクス自身は第一インターを牽引し、その労働運動指導の理論的実践的力量は高かった。「労働組合のことにかけては、当代人のだれかれと同じくらい経験をもっている」(一八六八年)と、マルクスは手紙(シュワイツアー宛)で述べるくらいであった。
 マルクスが労働運動の路線内容を最初にまとめたのは、一八四七年の『哲学の貧困』のなかであった。これは、当時、ヘーゲル批判を深めながら、僚友エンゲルスとともに唯物史観と共産主義運動観を確立した『ドイツ・イデオロギー』の草稿作成と同時期にあたる。直接的にはフランスの社会主義アナーキストのプルードンへの批判書である。『共産党宣言』出版の直前であった。
 その『哲学の貧困』の最終節「同盟罷業と労働者の団結」では、プルードンが「ストライキによる労働者の賃上げ闘争は物価騰貴となるから、やるべきではない」と論じたことを徹底的に批判した。マルクスは、ストライキによる賃上げ闘争は資本家の取り分が減るだけで物価騰貴へと繋がらないことを暴露した。その中で労働運動の路線内容を提出した。
 すなわち、「イギリスでは、……労働者たちと企業家たちとの闘争において労働者たちの城砦の用をなす恒久的団結が(すなわち)労働組合が結成された」。「団結は、つねに一つの二重目的、すなわちなかま同士の競争を中止させ、もって資本家に対する全般的闘争をなしうるようにするという目的をもつ」。「資本家のほうが抑圧という同一の考えで結合するにつれて、最初は孤立していた諸団結が集団を形成する。そして、つねに結合している資本に直面して、組合の維持のほうが彼らにとって賃金の維持よりも重要になる」。「この闘争――内乱――においてこそ、きたるべき戦闘に必要ないっさいの要素が結合し発展する。ひとたびこの程度に達するやいなや、組合は政治的性格を帯びるようになる」。「労働者階級は、その発展の過程において、階級と階級の敵対関係とを排除する一つの結社をもって、古い市民社会におきかえるであろう」(以上、『哲学の貧困』国民文庫)と。
 ここには、労働組合と団結の役割と意義、その不可避性、労働者を階級形成する相当長い局面と敵階級打倒・新社会を創造する局面において、労働者階級解放には政治闘争・政治革命を不可欠とすること、これらが主張されている。
 レーニンは、マルクス『哲学の貧困』の労働運動内容を高く評価した。「ここにわれわれが見るのは、『きたるべき戦闘のために』プロレタリアートの軍勢を訓練する長い期間全体にたいする数十年にわたる経済闘争と労働組合運動との綱領と戦術である」(「カール・マルクス」(一九一三年)国民文庫)と説明した。
 一八六四年に国際労働者協会(第一インター)創立宣言を執筆したマルクスは、その二年後、「労働組合――その過去、現在、未来」(国際労働者協会ロンドン協議会の決議)を提出した。当時、労働運動が高揚し、組合主義、プルードン主義などの諸派活動家と共闘し、同志的論争をおこない、マルクスの思想・理論・実践路線が当時の国際労働運動の主流派を獲得していった。
 マルクス労働組合論の「その過去」では、「労働組合は、第一の資格において、資本と労働のあいだの日常闘争――真のゲリラ戦闘――にとって欠くことのできないものであるが、その第二の資格において、賃労働と資本の支配の制度そのものの廃止を促進する組織された手段として、さらにはるかに重要である」(『労働組合論』国民文庫、以下同じ) と述べた。まさに労働組合は労働者階級解放の団結の基礎なのである。
 「その現在」では、「労働組合は、今日の生産制度に対抗しての自分自身の行動力をまだ完全に理解していない」と述べ、その不十分な活動の突破を訴える。政治運動・社会運動・国際連帯を行うこと、第一インターへの結集を増やすことが主張される。
 「その未来」では、「労働者階級の完全な解放という偉大な利益のために、……労働組合は、その目標が狭量な、利己的なものでは決してなく、踏みにじられた幾百万人の全般的解放にむかってすすむものであるという確信を労働者階級の広大な大衆(全世界の人々)にきざみつづけなければならない」と締めくくった。
 全人民解放にむけ、労働組合は、社会・政治運動と結合し、差別され虐げられる人々の解放運動と連帯し、国際的な労働者連帯を行うこと、マルクスはこのように労働組合・労働運動の原則的活動を定式化した。

  ▼3章―2節―2項 レーニンの労働運動

 レーニンは、その初期の活動の中で、労働運動の実践路線を深く考察し、労働組合組織化を指導した。一八九五年、逮捕され獄中で執筆した「ロシア社会民主党綱領草案と解説」は、レーニンの労働組合組織化の指導内容を記している。
 その「綱領草案と解説」では、党の任務の第一項は、「ロシア社会民主党は、労働者の階級的自覚を発展させ、彼らの組織化に助力し、闘争の任務と目標とを指示することによって、ロシアの労働者階級のこの闘争を援助することを、自分の任務として宣言する」(『レーニン全集』第二巻 大月書店、以下同じ)とある。当時のレーニンにあっては、党は、労働者階級の助力・援助が第一の任務であった。
 「解説」部分では、「労働者は自分を守るために、なんとしてでも資本家に反撃を加える手段を見いださなければならない。彼らは、そういう手段を団結のうちに見いだしている」と情勢をとらえる。そして「党の任務は、なにかの当世流行の、労働者援助の手段を頭の中からあみ出すことではなくて、労働者の運動に加わり、その運動のなかに光明をもちこみ、労働者がすでに自分でやりはじめているこの闘争において、彼らを援助することである」と述べ、いっさいの主観的押し付けを排除した。
 レーニンは次のように階級形成をとらえた。①「労働者の階級的自覚とは、労働者が、自分の地位を改善し、自分の解放をかちとる唯一の手段は、資本家と工場主の階級との闘争にあるということを理解すること」②「労働者の自覚とは、全労働者の利害は同一で一致しており、彼らの全体は社会の他のすべての階級と別個に一つの階級をなしているということを、理解していること」③「最後に、労働者の階級的自覚とは、自分の目的を達成するためには労働者は、……国政にたいする影響力をかちとらねばならないことを、労働者が理解すること」という。
 このなかで賃金・労働時間などの経済闘争について、レーニンは積極的に位置づけた。「この闘争によって、働く人びとの大衆は、第一に、資本主義的搾取の方法をつぎつぎとみわけ、検討する、……第二に、この闘争で労働者は自分の力をためし、団結することを学び、団結する必要と意義とを理解する、……第三に、この闘争は、労働者の政治的意識を発達させる」と。
 レーニン労働運動の画期的地平は、『帝国主義論』(一九一六年)において、ドイツなど帝国主義国労働運動が上層と下層に分裂し、その上層が資本に買収され労働貴族となることを弾劾し、この裏切り勢力が帝国主義戦争へ加担する社会排外主義の基盤であることを暴露し、批判した。これは今日の日帝本国の労働運動建設でも重要なテーマである。レーニンによる帝国主義本国の労働運動指導路線は、相対的下層労働者に依拠し組織化すること、日和見主義・社会排外主義・労働貴族とたたかうこと、反戦の労働者国際連帯、植民地・従属国の被抑圧民族・人民との国際連帯を進めること、これらの思想と実践にある。
 さらにレーニンはロシア革命後の労働組合の新たな任務を定式化した。一九二〇年十二月末、党中央をほぼ二分した労働組合論争の真っ只中で、闘病中のレーニンはその集約にむけて懸命に訴えた。労働組合は、「国家組織ではない。強制の組織ではない。……教育の組織であり、引き入れる組織、訓練する組織である。それは学校であり、管理の学校、経営の学校、共産主義の学校」(「労働組合について、現在の情勢について、トロツキーの誤りについて」、問題別レーニン選集『労働組合論』国民文庫、以下同じ)だと規定する。これは、「教師と生徒の学校ではなく」、資本主義の残したものとこれを変革する先進的労働者階級との間の「ある種の、きわめて独特のくみあわせ」を取り扱う活動である、と語った。様々な官僚主義を重要な闘争対象とした。後にネップ路線による部分的な資本主義的妥協のなかでも、資本と国家・官僚主義にたいする労働組合の階級的大衆的たたかいを任務づけた。
 レーニンもまた、マルクスと同様に、労働組合と革命的労働者党の相互関係を発展させ、労働者階級の団結と解放運動を推進したのであった。
 われわれはマルクス、レーニンの労働運動・階級形成をふまえ、労働者を一から労働組合・団結に組織する実践路線をいっそう深め強化していかねばならない。労働者階級は、本来、生産主体であり、社会的協業の担い手であり、失うものを持たず、支配すべき階級を必要としない。だからこそ労働者階級は全人民解放を主導できる歴史的条件を持っている。党活動家や先進的活動家こそが、労働者の積極性と階級的団結=労働組合の組織化に全力で力を注いでいかねばならない。日帝本国における独占資本と労働貴族の労働運動制圧を打ち破り、相対的下層労働者の組織化をたたかい、とくに非正規・若者・女性の労働者の団結・労組組織化を実現し、差別排外主義とたたかい、反差別と国際連帯の階級的労働運動を建設していかなくてはならない。

  ●3章―3節 スターリン主義路線の誤りとたたかおう

 二十一世紀の共産主義運動を前進させる上で、「ソ連・東欧社会主義」崩壊の路線的基礎となったスターリン主義の誤りを教訓化することが不可欠である。
 スターリン主義路線の批判とは、いったん一国地域で勝利した社会主義革命政権が、いかに継続して国内的・国際的に階級闘争・革命運動を前進させ、永続的なプロレタリア世界革命へと生き延びて発展するのか、といった過渡期の中心問題である。
 スターリン主義は、国際主義、民族問題、党組織、民主主義、農業農民問題、経済建設等の領域において、労働者階級・被抑圧人民の自己解放運動の団結とエネルギーを、革命運動・階級闘争の継続から捻じ曲げ、放棄し、抑圧した体系である。以下、スターリン主義の誤り・問題点を提起する。
 スターリン主義の誤りの第一は、一国社会主義建設可能論をもって、プロレタリア国際主義と世界革命への長期戦を担うことに敵対した路線にある。
 史上初のロシア・プロレタリア革命を破壊しようとする帝国主義列強の包囲・介入・反革命戦争と対峙することは大変な負担である。もちろんロシアの革命勝利から引き続く他国の革命勝利への支援、ひいては世界革命へむけた道のりは、平坦で簡単なものではない。当初めざされたものは「万国の労働者、被抑圧民族人民は団結せよ」であり、ロシア革命によって一挙に世界中にひろまった。世界革命の司令部=コミンテルン(共産主義インターナショナル)も結成された。しかしながら、スターリンこそこのプロレタリア国際主義の実践を破壊しつづけたのであった。許しがたい反動反革命である。スペイン革命をうらぎり、戦後も米英帝との取引をもって、中国革命や日本革命など各地の階級闘争を抑止しようとした。しかも、ロシアの革命的労働者人民の階級意識と団結を、大ロシア民族主義といった抑圧民族の大国意識へと不断に解体させていった。
 第二の誤りは、二段階革命論によって、マルクスやレーニンが主張したプロレタリア永続革命論を破壊したことである。第一段階としてのブルジョア革命、その後の第二段階として社会主義革命といった図式のスターリン二段階革命論は、労働者・被抑圧民族人民の解放運動をブルジョアジーや帝国主義者に売り渡す犯罪的役割を担った。
 一九一七年ロシア二月革命後、スターリンは「かちとった諸権利を保持せよ」と訴え、ブルジョア臨時政府に協調的支持の態度を取り、四月に帰国したレーニンの「四月テーゼ」=社会主義革命への移行のたたかいという永続革命論に反対した。マルクスは一八四八―四九年のヨーロッパ革命の敗北を総括し、一八五〇年三月の共産主義者同盟中央委員会のよびかけのなかで、民主主義的小ブルジョア諸派を批判し、革命的労働者党の戦術を「永続革命」として提出した。
 一九二〇年代後半にロシア共産党とコミンテルンの主導権を握ったスターリンの二段階革命路線は、スペイン、中国など世界中のプロレタリア・被抑圧民族人民の革命運動を抑圧した反動反革命である。日本革命では、日本共産党に誤った路線を取らせ続けた。二七年テーゼ、三二年テーゼでは、日本革命の戦略を「絶対主義的天皇制」打倒のブルジョア民主主義革命とし、戦後革命期には「米軍解放軍」規定の誤りを生み出すなど、日共の二段階革命論の誤りの原因となった。
 第三に、民族問題において、スターリンは大きな誤りを繰り返した。グルジアをカフカース連邦の自治共和国化しようとした問題、すなわち「社会主義」と称してグルジア民族を大ロシア民族主義の下へと併合しようとした誤りは決定的であった。スターリンは、民族問題に関する共産主義者の基本的アプローチにおいて、根本的な過ちを繰り返した。民族問題では、問題を歴史的で具体的な諸民族の諸関係において考察し、接近しなくてはならない。民族的な特権や差別とたたかい、民族的同権の実現をたたかい、民族的分断と隔壁を打破する労働者人民の統一行動を不断に組織していくたたかいである。
 スターリンは、第二次大戦に突入する過程、ナチス・ドイツや日帝・天皇制権力との戦争の対策の一つして、「敵性・スパイ」の民族をデッチ上げ、ソ連領内のドイツ人や朝鮮民族の住民共同体を潰して、強制移住させた。「社会主義」防衛の美名のもとで大ロシア民族だけをまもり、他民族の生存権・自決権を抑圧し、差別と迫害を繰り返した。
 第四には、スターリンの党階級組織論の重大な誤りである。スターリンは、労働者・被抑圧人民の解放運動の先進的部分である党を労働者大衆から切断し、しかも党優越の組織思想に陥った。
 マルクスの党組織論・思想は、「共産主義者は、他の労働者政党と対立する特殊な政党ではない。……全プロレタリアートの利害と別個の利害をなにも持っていない。……特殊な原則を打ちたて、プロレタリア運動をその型にはめようとするものではない」(『共産党宣言』国民文庫)と規定する。レーニンは、党と労働組合・大衆運動組織の相互関係をとらえ、これを基本的見地とした。レーニンは、自然発生的な労働者大衆運動における積極性や目的意識性の萌芽をはっきりと対象化していた。
 レーニン没後、大量入党した労働者党員へのスターリン講演録『レーニン主義の基礎について』(一九二四年、国民文庫、以下同じ)では、次のように主張する。「自然成長性の理論は、日和見主義の理論であり、……労働者階級の党の、指導的役割を事実上否定する理論」、「自然成長性の理論は労働組合主義のイデオロギーである」という。労働者大衆運動の自然発生性の積極的性格=目的意識性の萌芽が完全に切り捨てられている。労働者が団結して資本・国家とたたかう労働組合の意義と役割はまったく否定されている。
 第五に、スターリン党組織論には、団結規定が無く、国家機構との融合や官僚支配を正当化し、党内民主主義を否定するものである。スターリンが『レーニン主義の基礎』で主張した体系的で犯罪的な党組織論をさらに批判する。
 ①「プロレタリアートの階級組織の最高形態としての党」論は、労働組合との相互発展関係を否定し、党を団結組織の一つと規定しない誤りである。一方、レーニンは、党を「プロレアリアの階級的団結の最高形態」と主張し、少数精鋭の革命家の戦闘組織の性格を認めながらも、党を労働者階級の団結組織の一つと規定する。党員の信頼関係と団結を措定した。
 ②「プロレタリア独裁の道具としての党」とする誤り。これは、党と国家権力の融合・一体化を正当化し、党官僚が支配する国家機構を強め、官僚主義の独裁国家へと発展転化する理論的根拠となった。資本主義から共産主義への過渡期に照応した政治権力は、マルクスが「ゴータ綱領批判」で呼んだようにプロレタリア独裁である。革命はブルジョア独裁国家を粉砕し、団結した労働者人民の直接民主主義の自己権力であるコミューン・ソヴェトが主体となり、プロレタリア独裁権力を打ち立てる。党は、このなかで、先進的勢力として、献身的で自己犠牲的な活動を担い、プロレタリア独裁期における労働者人民の階級闘争・階級形成を支え、官僚主義とのたたかいへ労働者人民を組織し、革命運動を支えるのである。コミューン・ソヴェトによる民主的統治と党の任務は、融合することはできないし、癒着を戒め、はっきりと区別しなくてはならない。
 党内民主主義の否定は、スターリン主義党組織論のもっとも酷い誤りである。「分派の存在と両立しない、意志の統一体としての党」、「党は日和見主義を取り除くことによって強固になる。党内分派活動の源は、党の日和見分子である」と、スターリンの組織論は主張する。これは、レーニン・ボルシェヴィキ党建設からの完全な逸脱である。レーニン主義・ボルシェヴィキ党は、はげしい同志的論争においても、単一の路線へと粘り強く統合することが基本とされ、決定には統一して行動する原則をとる。「批判の自由と行動の統一」である。スターリン主義党組織論の分派排除・日和見主義排除・粛清は、党内民主主義の否定であり、上意下達と命令主義・官僚主義の固定化、「粛清」による党員への選別・排除・追放を恣意的に正当化する。これは、指導者スターリンへの個人崇拝を助長した。そして無実の同志に「帝国主義の反革命スパイ」「人民の敵」のレッテルを張り、三〇年代の数百万におよぶ大量の「同志殺し」へと帰結した誤った組織思想にほかならない。
 第六に、農業農民問題における誤りである。農業農民問題における集団化や社会主義的改造は、説得と実例、そして自発性を引き出し、ねばりづよく進めることが鉄則である。ロシア、中国などの革命では、土地革命が実施され、平準化した自営農や集団農場を編成した。資本家・大地主などから収奪した国有地や公有地では、集団的農業・協同組合化が進められた。その発展による実例をもって、自営農には粘り強い説得と実例・自発性を組織し、集団化が行われなくてはならない。スターリンは「上からの革命」を進め、「階級闘争激化」論を掲げ、労働者部隊や貧農、赤軍を農村へ動員し、農業集団化を暴力的強制をもって全面化した。
 第六には、生産力主義の誤りである。
 スターリンは、過渡期の労働者大衆の革命的エネルギーを階級形成と労働者民主主義へと位置づけることをしない。逆に、国家権力と官僚主義によって労働者農民を支配し、重工業化や農業集団化の暴力的強制、労働生産性のペテン的官製向上運動(スタハーノフ運動)、刑罰による労働規律の強制によって、生産力主義の路線を推進した。ネップ後期、スターリンは、重工業強化の第一次五ヵ年計画の下、労働組合を国家生産機構の末端へ再編した。
 ネップ期の労働組合は、相対的自立性をもち、労働者大衆の経済的精神的利益を擁護し、団体協約権、自由加入方式、官僚主義歪曲との闘争、ストライキなどの活動をした。スターリンは労働組合の階級的大衆的運動の役割をつぶした。スターリンによる労働組合の任務は、ノルマなど労働生産性向上、労働規律強化にむけ、労働者大衆を動員し点検する「伝導ベルト」にほかならない。労働組合の相対的自立性や労働者大衆の利害を主張する者は、「右派」「アナルコ・サンディカリスト」「メンシェヴィキ派」として粛清された。
 第七に、個人崇拝を強め、体系化し、独裁支配を続けた誤りである。労働者階級の前衛党指導者の崇拝、とくに個人崇拝は、「一人は万人のために、万人は一人のために」といった共産主義的平等思想や差別とたたかう原則に真っ向から敵対する反動政治である。共産主義者党と労働者人民は、個人崇拝を絶対に許さず、コミューン・ソビエトの直接民主主義的統治を原則としなくてはならない。

  ●3章―4節 二〇一四年党建設の重点

 スターリン主義の路線は、日帝本国では日本共産党に反映されてきた。現在の日共は、議会の「多数者革命」のもと、現ブルジョア秩序へと擦り寄り、それに溶解しつつある。天皇制と自衛隊を容認し、福島原発事故後には「核の平和利用」を総括することなく脱原発へと利用主義的に転換した。また、共和国への日帝の敵視政策に賛成し、領土問題では帝国主義的領土拡張主義・排外主義を支持するなど、許しがたい数々の行為を行なっている。反米愛国主義・日帝免罪の日共は根底から断罪されなくてはならない。
 われわれ共産同(統一委)の責任と役割は重大である。全国党への途上にある現段階から、大きく躍進していかねばならない。最後に、共産同(統一委)結成十年目の重点方針を訴える。
 第一には、安倍政権打倒の全人民政治闘争・統一戦線を推進し、その過程で反帝国際主義潮流を組織していくことである。秘密保護法強行制定など安倍右翼反動政権の強権政治に人民の怒りが沸騰している。安全保障基本法・集団的自衛権行使「合憲」化などの改憲攻撃との攻防が続く。反原発、反弾圧、沖縄解放闘争、三里塚闘争、岩国・神奈川の反基地闘争、貧困・格差への労働者人民の怒り、日本軍の蹂躙・性暴力・侵略をうけたアジア人民の告発と糾弾など、安倍政権を弱体化させる情勢は煮詰まっている。安倍政権打倒へと爆発させていかねばならない。
 第二には、労働運動組織化の路線と実践を強化することである。革命的労働者党として、その基礎的な階級基盤である労働者の団結・労働組合組織化を総力で前進させねばならない。この歴史的課題を突破していこうではないか。
 第三には、青年運動の組織化である。今日の日本社会の格差貧困・失業や差別選別・腐敗の多くの犠牲が青年に押しつけられている。これを反動右翼や排外主義ファシスト勢力が愛国心・民族排外主義や差別排外主義へと煽っている。これらの排外主義とたたかい、青年たちを反戦・反帝・国際主義のたたかい、反貧困、階級的労働運動、反差別運動、様々に工夫した階級的団結へと組織していかなくてはならない。
 第四には、共産主義運動の組織化をつよめ、現代資本主義・帝国主義の批判、スターリン主義批判、現代革命論など思想・理論活動を粘り強く行うことである。共産主義運動の復権にむけ、わが同盟の内外において、宣伝・扇動・組織化のために、機関紙『戦旗』・機関誌『共産主義』を充実させ、その読書会などの活動を強めていかねばならない。
 同志友人のみなさん。二〇一四年、われわれ共産主義者同盟(統一委)に結集し、ともにたたかおうではないか!

 

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