共産主義者同盟(統一委員会)


1455号(2015年3月5日) 政治主張






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 3・29三里塚に総決起を

 3・21デモから安倍打倒へ

 15けんり春闘に勝利しよう


 



 ●1章 15春闘を取り巻く情勢

 ▼1章―1節 戦争国家化進め搾取強める安倍

 ソ連崩壊による米ソ冷戦体制の崩壊によって、戦争の世紀と言われた二十世紀は終焉した、という言説は幻想であることが鮮明となっている。資本主義、帝国主義が続く限り、貧困と戦争はなくならない。資本主義は歴史の進歩を実現するものではなく、帝国主義として寄生性、腐朽性を深め、労働者、民衆にとっては搾取と収奪による窮乏化と貧困、戦争をもたらすものであることが鮮明になっている。
 日本帝国主義もまた労働者、民衆に対する強搾取と強収奪、戦争による資源、市場の確保によってしか、自らの延命の展望を描けない。安倍政権登場後の二年間をみれば一目瞭然である。労働者の賃金は下がり、消費は低迷し、貧困は拡大している。他方で、全世界において米帝と一体となって戦争をおこなうための日米共同作戦体制強化、基地強化、弾圧体制強化、集団的自衛権行使「合憲」化による自衛隊の海外派兵など、戦争動員の攻撃がこれでもかという形で打ち下ろされている。
 昨年十二月の総選挙は自公の圧勝に結果した。この結果は労働者階級にとって深刻な問題を明らかにしている。戦後最低の52・66%とい低得票率にしめされる政治に対する不信、投票した人々が破たんしたアベノミクスをそれでも一縷の希望を託して支持する、という二重の問題が存在している。とりわけ後者は政治不信の拡大の中で、投票という労働者民衆のわずかばかりの希望が、自公というブルジョア政党とその補完政党に簒奪されているという事態である。これには小選挙区制というブルジョアジーに有利な選挙制度、民主党をはじめとする野党が安倍政権に代わる展望を打ち出せないという問題もある。労働者階級の闘いは選挙に限られるべきではなく、したがって選挙結果に一喜一憂すべきでなく議会外の大衆闘争こそ基本であるとする見解もあり、それは原則的に正しい。しかし我々が現状では、議会多数を梃子に矢継ぎ早に戦争法案、生活破壊法案を成立させ攻撃を強める日帝ブルジョアジーに対し、それを突破するような大衆闘争、階級闘争実態を作り出せていないことも厳然とした事実である。
 そのような状態の中で閉塞し貧困化する労働者が、アベノミクスに一縷の希望を託し、自らの生活のために国益を掲げた戦争国家化を支持する構造が生み出されていることを直視しなければならない。
 労働運動、労働組合運動が、労働者、民衆の実際の利益を守り、戦争を阻止し、資本主義に代わる、労働者、民衆が人間らしく生きることができる社会を築くことができるという社会的確信を、作り出していくことが強く求められている。
 このような闘いを15春闘において進めなくてはならない。15春闘においては正規・非正規を貫く全ての労働者の大幅賃上げの闘いに勝利し、労働法制抜本改悪、戦争国家化とし、安倍政権打倒を目指す闘いへと前進しなければならない。

 ●2章 大資本優先、搾取強化を狙う経労委報告経労委報告

 昨年十二月二十六日に開催された政労使会議で、「政府の環境整備のもと、経済界は賃金引上げに向けた最大限の努力を図る」ことが確認された。安倍政権は「アベノミクスの恩恵を、企業だけではなく労働者をはじめとする社会の隅々におよぼす」と主張しているが、労働者の賃金の引き上げによってGDPの約六割をしめるといわれる個人消費を拡大しなければ景気回復はありえず、アベノミクスの破たんが早期に露呈することを怖れてのことである。そのことを象徴するのが、「まだお金をためたいなんて、単なる守銭奴だ」として、企業に内部留保を吐き出し設備投資と賃金引き上げを要求した麻生財務大臣の一月五日の発言である。
 本年一月二十日、日本経団連は恒例の春闘方針書である「二〇一五年版経営労働政策委員会報告」(以下、経労委報告)を公表した。そこでは15春闘にむけた大資本の側の基本方針が以下のように述べられている。
 第一に、「持続的な成長を実現する経営環境の確立」と称し、好循環の実現に向けた課題として、規制改革の推進、法人税実効税率の25%への引き下げ、原発再稼働、社会保障制度の効率化、など大企業、大資本家に有利な主張が優先して述べられ、地域活性化、中小企業支援などは後景化されている。
 雇用・労働についての政策的な課題としては、残業代ゼロ法案、限定正社員、派遣法改悪、少子高齢化に備えた外国人材の活用、最低賃金の抑制など、この間の攻撃が網羅されている。自らも好循環の実現によるデフレ脱却、景気回復が必要であることを認識しているにも関わらず、好循環実現とは真逆の政策課題の追求以外の何物でもない。
 第二に、「生産性向上を実現する人材戦略」と称し、女性の活躍推進、高齢従業員の活動推進などが掲げられ、健康でメリハリのある働き方の推進として、企業におけるメンタル管理、長時間労働抑制、仕事と育児・介護の両立などが主張されている。
 この主張もまた、少子高齢化の中でのエリート人材の確保と、アジアの労働者をはじめとする国際的な低賃金に対抗できる低賃金労働者の大量の創出という徹頭徹尾、大資本の願望を主張したものにすぎない。その象徴が女性の活躍推進である。家事、育児、介護などの負担が、差別的に女性に強要される中で、その社会的解決の制度を確立しないままでの「女性の活躍促進」は、女性の就労にたいする過重な負担を強いる以外の何物でもない。高齢従業員の活動推進などは、彼らを低賃金でこき使い、他方で政府、資本の年金をはじめとする社会保障負担の軽減を意図したものでしかない。
 企業におけるメンタル管理強化や長時間労働抑制なども労働者を効率的にこき使うための方便でしかない。政府、資本は労働者に対し、老若男女を問わず、死ぬまで時間のある限り働き続けることを要求しているのである。
 第三に、「15春闘に対する経営側の基本姿勢」として、「労使コミュニケーションの強化」「海外労使紛争の現状と対応」「総額人件費管理の徹底」「多様化する人事・賃金制度」「連合ベア2%批判」「経営側の基本スタンス」などが、述べられている。
 ほぼ例年どおりの主張であるが、「多様化する人事・賃金制度」が強調されている。年功的で集団的な処遇ではなく個別的な処遇をおこない、複線型賃金体系などを積極的に採用し、労働者を団結させず個々人に分断して管理せよ、ということが強調されている。
 15春闘における賃金闘争に対する「経営側の基本スタンス」では、安倍政権に配慮する形で「デフレ脱却を確実なものとし経済の好循環の二順目をまわすことの重要性を踏まえていく必要」が述べられている。しかし実際の交渉を規定する考え方は、相変わらず「総額人件費の適切な管理にもとづく自社の支払い能力に基づく決定」であり、「利益をあげている企業は設備投資や賃金引上げ改善に回すことが必要」、という言わずもがなのことを述べているだけである。ベアは選択肢の一つでしかなく、一時金や手当による賃金改善など多様な方法による賃上げを主張し、相変わらずベースアップ引き上げを強くけん制している。
 安倍がいくら懇願しようとも、企業の判断基準は「自社の生き残りを第一義とした支払能力論」であり、支給するにしてもベースアップを極力回避し、一時金、手当類などで、可能な限り総額人件費を抑制せんとしている。
 第四に、「内部留保」を賃金引上げ原資にせよ、という主張に対して経労委報告は、次のような反論で開き直っている。「内部留保は現金、預金だけでなく土地、建物、機械設備、有価証券などであり、それを取り崩すことは簡単ではない。内部留保を賃上げの原資とするためには、所有する土地、建物、関連企業の有価証券などを売却し、現金化しなければならず、それでは企業体力が落ち、競争に耐えられなくなる」というのである。しかし日本企業の現金、預金は確実に増加している。それにもかかわらず、企業は労働者へ分配するよりも、内部で確保した方が自社価値を維持できると判断しているということである。
 このように「経労委報告」は、安倍政権の賃金引上げ要請に対して、「総論賛成、各論反対」とでもいうべきスタンスである。あるいは僅かばかりの賃上げと引き換えに労働法制改悪、社会保障負担の軽減、法人税減税などを企業の有利なように進めようという代物である。

 ●3章 15春闘を全力でたたかい抜こう

 ▼3章―1節 大幅賃上げを掲げて闘おう

 15春闘は労働者の賃金引上げがなければ景気回復が実現されず、日本社会が危機的な状態になることを、政府、ブルジョアジーも認めざるを得ない状況下での闘いである。昨年四月の消費増税、円安による物価高、社会保障費の引き上げなど、賃金は下がり続け、可処分所得は減少し続けている。このようななかで大幅賃上げは、企業の支払能力論を超えた社会的正当性のある闘いである。正々堂々と、労働組合は大幅賃上げを要求しなければならない。
 しかし労働者の賃金と労働条件の引き上げは、安倍政権がどのように企業に要望しようとも、そう簡単に実現できるわけではない。労働組合に団結した労働者が、争議も辞さず企業と粘り強く交渉するという原則的な闘いによってしか実現されない。
 その闘いは労働組合員が職場の仲間とよく話し合い、その成果を要求へとまとめあげ、会社と交渉し、その結果を職場の仲間に報告し、一人でも多くの仲間に闘いへの主体的参加を呼びかけ、団体交渉を重ねて少しづつ成果を積み上げていくという粘り強い闘いである。少数派組合でもユニオンの一人組合員でも、可能な限り、賃金引き上げを中心に職場要求をまとめあげ、全力で交渉しなければならない。それはたとえ今年、成果があがらなくてもゼロ回答に結果しても、将来の賃金引き上げの闘いの実現のためには絶対に避けて通れない闘いである。
 他方で、個別企業で賃金引上げの主体となるべき労働組合の組織率が極めて低いという決定的な困難がある。我々が主要に依拠するのは、事業者数の九割を占め、労働者数の七割をしめる中小企業労働者である。中小企業のうち三百人から百人の企業の組織率は7・6%、ユニオンや地域合同労組が日常的に対応する百人以下では1%(一三年労働組合基礎調査)である。大多数の労働者が賃金引き上げのための闘いの重要な武器である労働組合を保障されていない。
 それゆえ、ユニオンや地域合同労組をはじめ原則的に闘う労働組合にとっては、15春闘における大幅賃上げの闘いは未組織労働者の組織化、組織拡大と一体のものとして闘う必要がある。企業内組合ではたとえ組合員でなくとも非正規雇用労働者の声に基づく要求を掲げ、彼らの組織化を目指さなければならない。

 ▼3章―2節 最賃闘争を取り組もう

 このような中で15春闘において、未組織労働者、低賃金労働者の組織化にとっての大きな武器は最低賃金引上げ闘争である。最低賃金闘争を春闘と並ぶ第二の賃金闘争として取り組む必要がある。
 最低賃金は〇七年の「生活保護費との乖離の解消」などを目指した最賃法の改正によって、生活保護基準に依拠する形で引き上げられ、一四年度では七百八十円(全国加重平均)にまで引き上げられてきた。このような最低賃金引上げと低賃金労働者の増加によって、「引き上げられた最低賃金額を現行の賃金が下回る割合を示す『影響率』が高まっており、一三年度は過去最高の7・4%(Aランクの東京、神奈川、大阪、千葉、愛知などでは10・7%)に跳ね上がった」(経労委報告)という状況が生み出されている。
 また北海道や東北、沖縄などでは非正規雇用労働者の多数をしめる賃金層は最低賃金スレスレであり、毎年、それらの地域では多くの労働者が、最低賃金引き上げの影響を受ける。パートタイマーを主要な戦力として大量に雇用している、流通や製造業もまた影響を受けざるを得ない。それらの企業では勤続に応じて時給があがる賃金体系も多く、一番低い賃金が最低賃金を基準に設定されている場合もまた多い。最低賃金が上がれば、一番低い賃金があがり、その結果、上位の賃金も上がることになる。
 コンビニ労働者、飲食業、ビルメン、清掃関係など最低賃金の影響をうけるのは非正規雇用労働者だけではない。タクシー、二次・三次下請けトラック労働者も長時間労働ゆえに隠蔽されているが、基本給は最低賃金に設定されているケースが多い。これらの職種では「男性世帯主労働者」が最低賃金、時には最低賃金以下で働き、学生の息子、娘などよりも時給が低いと言ったケースも稀ではない。
 最賃引上げ闘争は、全国一律最賃制実現を掲げることによって最初から労働者の全国的な政府に対する賃金引上げ闘争となり、労働者としての社会的、全国的団結を形成しやすい闘いである。また最低賃金は厚生労働大臣、労働局長が審議会の諮問を受けて決定するのであり、政府が決められるものである。
 労働組合の15春闘の主要な取り組みの一つとして、最賃引上げ署名など様々な工夫によって未組織の低賃金労働者の中に最賃闘争を持ち込み、彼らの賃金引き上げの闘いを進めなければならない。
 組織労働者、未組織労働者、正規労働者、非正規労働者の様々な最低賃金闘争を工夫し、それらの闘いを全国一律最低賃金制度実現、千円以上のスローガンで結合し、最低賃金の大幅引き上げを実現しよう。これらの闘いを通じて低賃金労働者、非正規雇用労働者の組織化を進めよう。

 ▼3章―3節 労働法制解体攻撃と闘おう

 労働法制の解体ともいうべき攻撃が本格化している。安倍政権は大胆な金融緩和、公共投資につぐアベノミクスの要として成長戦略を掲げている。その内容は規制緩和、とりわけ自ら岩盤規制と規定している労働法制の改悪である。「多様な働き方、時間ではなく成果で評価される制度、女性の更なる活躍促進」など様々な言葉で飾り立てても、「世界で企業が一番活動しやすい国にする」というメインスローガンをみれば、労働法制・労働者保護制度の改悪にその目的があることは、一目瞭然である。
 それは単なる改悪ではなく、労働法制そのものの解体、法律による労働者保護の解体にあることが歴然とする。その行きつく先は、資本が思うがままの雇用流動化と賃金切り下げである。企業が必要な時に必要なだけ低賃金で使える労働者の大量創出である。

 ◆3章―3節―1項 派遣法改悪法案廃棄

 今、通常国会においては二度廃案になった労働者派遣法改悪案の上程が予定されようとしている。法案は前回、公明党が修正案を提出した内容のままだといわれている。
 安倍首相は国会答弁で「労働者派遣法の改正案は、派遣労働者のキャリアアップなどを通じて生産性の向上に資するものだ。正社員を希望する派遣労働者には正社員の道が開けるようにするとともに、派遣を積極的に選択している方については、待遇の改善を図ることにしている」と主張している。しかし派遣先によるキャリアアップのための教育、訓練なども全て配慮義務であり、キャリアアップなど絵空事に等しい。正社員の道についても、派遣先による直接雇用に関しては何の言及もない。有期雇用派遣社員が五年以上勤めて労働契約法一八条で零細な派遣元会社の無期社員になっても、大した改善にはつながらない。均等待遇も派遣先の団交応諾義務もない、今回の派遣法改正は、常用代替禁止を否定し生涯派遣の拡大、正社員ゼロをめざすものであり、絶対に廃案にしなければならない。

 ◆3章―3節―2項 残業代ゼロ法案、過労死促進法案を廃棄へ

 残業代ゼロ法案も通常国会への上程が予定されている。「労働時間に関係なく成果に応じて賃金を払う制度」(日本再興戦略改訂二〇一四)といわれ、「高度プロフェッショナル制度」といわれるものでもある。年収(千七十五万円以上)、職務の範囲が明確、高度な職業能力を有するもの、本人の同意などの要件を定めて、一日八時間、週四十時間の労働時間規制をはずそうとするものである。
 日本の労基法は三六協定で時間外労働を何時間にしようと全く自由な状態である。労働時間規制が実質的に無いに等しいから「過労死」が蔓延するという事態になっている。これ以上、労働時間規制を緩和すれば過労死する労働者がこれまで以上に、多数発生しかねないのが現実である。
 時間ではなく成果に応じて賃金を払う制度の創出といわれているが、それは今の賃金制度において十分、実現可能である。年俸制や基本給+成果給にするなどである。しかしながらこれでは残業代が発生する。
 安倍政権が狙っているのは、一定の賃金水準以上の労働者は八時間以上、働かせても残業代を払わないで済ませたいということである。ノルマの達成できない労働者は家庭生活も社会関係も犠牲にして、長時間労働でノルマを達成しなければ、賃金は保障しないといっているのに等しい。当然のことながらそのノルマなるものは、常に最高レベルが標準として更新されていくことになる。一定の賃金水準以下の労働者は八時間働くだけでは生活できない賃金水準にし、長時間労働を強要することになる。要するに全ての労働者を八時間以上、働かせたいということである。
 このような資本、企業にとって丸儲けの制度の前では、「千七十五万円」という年収要件などは何の意味もない。しかも年収要件は厚生労働省の省令によって自由に定められる。日本経団連はかつて「年収四百万円」を主張していた。四百万円以上の賃金を得ようと思う労働者は、八時間以上は働けということである。安倍政権はこのような年収要件の切り下げを否定していない。「千七十五万円」という年収要件に惑わされることなく、八時間労働制の否定に対する闘いを、大多数の労働者に長時間労働を強制するものになることについて最大の警戒心を持って闘わなければならない。

 ◆3章―3節―3項 解雇の金銭解決制度に反対しよう

 解雇の金銭解決制度の導入も目論まれている。それは解雇無効と裁判所で判断されても、労働者、もしくは使用者が申し立てると、一定の金銭の支払いによって職場復帰をさせず、退職させることができる制度である。労働力の円滑な移動を口実にしているが、実際は使用者による不当解雇を金銭で解決することを制度的に確立しようとするものである。
 現実の解雇事件においては金銭和解、退職は多いが、それは苦渋に満ちたものであるとはいえ労働者の主体的な決断によるものである。解雇の金銭解決制度は、裁判所によってそれを労働者に強制しようとするものであり、金さえあれば解雇できるという使用者の不当解雇をさらに増加させていく代物以外ではない。
 労働法制改悪は、戦後の労働運動が獲得し守ってきた八時間労働制や常用代替防止など、労働者保護の解体につながる攻撃である。15春闘の渦中で全面的な反撃を実現しよう。

 ▼3章―3節―4項 社会増税と社会保障切り捨てと対決しよう

 昨年四月に実施された5%から8%への消費増税は、労働者、民衆の生活を直撃した。個人消費は、一―三月期に比較し、増税後の四―六月期はマイナス5・3%にまで落ち込んでいる。勤労世帯の収入は九七年をピークに減少傾向が続いている。一三年には貯蓄ゼロ世帯も三割を超えたといわれている。
 安倍政権は一七年四月には消費税の8%から10%の引き上げを景気にかかわりなく実施すると主張している。法人税減税は優先しながら、逆進性が高く低所得者に影響が強いといわれる消費増税の強行を許してはならない。
 社会保障制度の改悪も急ピッチで進行している。一三年には安倍政権のもとで、医療、介護、社会保障制度などの分野ごとの改革についての検討課題と時期を明示する「プログラム法」が成立し、一四年の通常国会では医療法、介護保険法、健康保険法、看護師人材確保法など五十八もの法律を抱き合わせた「医療・介護総合法」が成立した。要支援者の訪問介護、通所介護を保険給付から外し、市町村の総合事業に移行、特養ホーム入所対象者を要介護三以上に制限する、などをはじめとする改悪がおこなわれている。一五年には医療保険法改定などによって患者負担が増加させられようとしている。
 これらは少子高齢化の中で進行する社会保障制度の維持を名目に行なわれているが、その真の狙いは給付を削減し国の社会保障支出を少しでも減らすだけではなく、社会保障改革を成長戦略に位置づけ(日本再興戦略)、資本の利潤確保の巨大市場にせんとしているのだ。その司令塔は経済財政諮問会議による「骨太の方針」であり、混合診療の導入はその大きな突破口である。社会保障給付を削減するだけではなく、可能な限り地方自治体に丸投げし、生存の根幹にかかわる部分は市場化し利益確保の手段にする、という労働者の生き血を吸って生きていく資本の姿が鮮明となっている。生活保護切り下げも進行している。
 われわれが社会保障や公的サービスを、生存権として国が責任を持つものとしてきた闘いの歴史を否定したことに激しい怒りを持つのとは真逆に、新自由主義者は「愚民政策」としてこれらに激しい嫌悪感をもっているのだ。命の尊厳を商品化する安倍政権の社会保障制度改悪と闘いぬかなければならない。

 ●4章 15春闘の前進をかちとり、安倍内閣打倒の闘いへ

 ▼4章―1節 戦争国家化に反撃を

 15春闘は前述したように、大幅賃上げ、労働法制改悪反対、増税・社会保障改悪反対の闘いであると同時に、安倍政権の戦争国家化との闘いである。戦争国家化は安倍政権の最優先課題であり、株高演出も、戦争国家化に向けた政策実現のための支持率確保がその第一義の目的である。
 一四年七月の集団的自衛権行使「合憲」化の閣議決定は、武力行使や戦闘地域における行動はできないという歯止めをはずし、アメリカの戦争に直接、自衛隊を投入することを可能にするものである。「武力行使の新三要件」によって、「我が国の存立が脅かされたら」、日本が攻撃されていなくても武力行使ができ、国連の集団安全保障の武力行使もできるようにするものである。「日米軍事協力の指針(ガイドライン)」再改定をはじめ、「切れ目なく」日米一体で戦争遂行が可能な戦争立法、安保法制整備がすすめられ、統一地方選後の国会提出が予定されている。一六年参議院選終了後に改憲を発議することを安倍は宣言している。

 ▼4章―2節 原発再稼働を許すな

 福島第一原発事故の収束のめども立たないにもかかわらず、安倍政権は原発再稼働をやみくもに進めようとしている。川内、高浜において再稼働が秒読み段階となっている。
 安倍政権が原発再稼働に邁進するのは、再稼働しなければ債務超過で電力会社が破たんし、アベノミクスが破たんしかねないということもあるが、最大の動機は核武装への潜在能力の確保である。原発は攻撃される危険も伴うが、存在するだけで大きな核抑止力となるといわれている。一三年九月に全国の原発が停止してから一年半近くがたっている。電力不足が発生していないにもかかわらず再稼働にこだわるのは核武装の選択肢を保持せんがためである。原発再稼働は安倍政権の戦争国家化にとってさけてとおることができない選択である。福島の人々と固く連帯し原発再稼働を阻止し、全ての原発を廃炉にする闘いを進めなければならない。

 ▼4章―3節 戦争国家化と闘い、安倍政権を打倒しよう

 15春闘では賃金労働条件の向上のために安倍政権と闘うのみならず、安倍政権の「戦争国家化との闘いの必要性を、春闘の只中から労働者に呼び掛け、労働者の政治決起を組織していく必要がある。
 そしてこの闘いは安保容認、原発維持を掲げる連合などから労働者を階級的に分岐させていく闘いでもある。
 この闘いは階級的立場にたち原則的に闘う先進的労働者が責任を持たなければならない闘いである。そのために以下の闘いを担う必要がある。
 第一に、先進的労働者は15春闘において賃金引上げをはじめとする諸課題を、全力で取り組み一人でも多くの労働者を闘いに参加させ、成果をあげる必要がある。
 我々が依拠する労働者は中小企業労働者であり、彼らの生活と雇用はこの間の新自由主義攻撃で痛めつけられ、肉体的精神的に疲弊しつくしている。何らかの改良の成果による経済的余裕がなければ、目先の生活維持以外の事を考える余裕のない労働者が多数、存在する。そのようなかで労働者の生活のために全力を挙げ闘うのは労働組合、労働運動であるということが可視化されなければならない。そうでなければ少なくない下層労働者がアベノミクスで賃金が上がったと錯覚し、賃金引き上げのためには国益防衛、強い国作り、戦争国家化の支持者となっていく可能性が極めて高いからである。
 第二に、闘いの中で勝ち取った信頼関係と、自らの闘いで労働条件が向上したと自信を深めた労働者の活性化した意識に依拠して、15春闘過程の節々で取り組まれる反戦平和闘争をはじめとする政治闘争への参加を呼びかけていく必要がある。それらの労働者の経験の蓄積の上に先進的労働者は、資本主義が続く限り貧困と戦争はなくならないこと、排外主義と対決する労働者の国際的団結だけが戦争と貧困をなくすことができることを、学習会や、話し込み、日常的な会話など、あらゆる創意工夫をこらして労働者に理解させていく必要がある。労働者の階級的意識は自らの闘いの経験とその総括によって形成される。先進的活動家の役割はその闘いを経験させ、その経験を労働者自身が自ら獲得した階級的意識として確立することを援助することにある。
 第三に、これらと並行して労働者の雇用と生活の安定、平和のために、安倍政権との闘いが必要不可欠であることを訴え、全人民的な安倍政権打倒闘争の創出の必要とそれへの参加を呼びかけていく必要がある。
 何らかの改良といえども安倍政権打倒の闘いと結合させることがなければ、搾取、収奪の強化と戦争動員へと利用される可能性が高まっている。小さな成果といえども労働者にとっては大きな意義のあるものである。しかしそれに満足していれば別の局面で大きく取り返され、貧困と戦争動員へと追い込まれる状態となる。自らの労働条件向上のためにも、勝ち取った労働条件が他の局面で取り戻されたり戦争動員に利用されないためには、戦争と貧困の元凶である安倍政権打倒の闘いの前進が必要であることを訴えていかなければならない。15春闘に勝利し安倍打倒の全人民的闘いを作り出そう。


 

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