共産主義者同盟(統一委員会)


1477号(2016年3月5日) 政治主張






■政治主張

■各地の闘争

■海外情報

■声明・論評

■主要論文

■綱領・規約

■ENGLISH

■リンク

 

□ホームへ

 
  安倍政権の貧困化・戦争―改憲攻撃をうち破れ

  16春闘勝利に向け闘おう

  東電は原発事故の責任をとれ

  3・27三里塚全国集会へ




  ●1章 深まる帝国主義の危機

 IS、「対テロ」を口実として、米帝を先頭とする帝国主義諸国による爆撃が激化し、何の罪もない労働者・民衆が虐殺されている。「テロリスト」の攻撃があり、それに対する「報復」がおこなわれているわけではない。進行しているのはイラク戦争を契機とした、中東における石油資源をはじめとした米帝、仏帝、英帝、ロシアによる再分割戦の激化であり侵略戦争である。
 それは昨年十一月のパリでの同時攻撃にみられるように、帝国主義本国内における報復攻撃を生み出す。フランスは「戦争状態への突入」を宣言し、原子力空母シャルルドゴールをシリア沖に派遣しシリア空爆を強化している。しかし、いくら空爆を強化しようが、「戦争状態への突入」から逃れられるわけではない。
 帝国主義諸国は軍事的介入を強めること抜きに、帝国主義間の資源略奪戦に勝利することはできないからである。仮にISやシリアのアサド政権を軍事的に制圧したとしても、報復攻撃から逃れられるわけではない。労働者、民衆のたたかいではなく帝国主義の戦争で樹立された傀儡政権は、旧勢力の復活を怖れる強権的な政権以外ではありえず、労働者、民衆の反撃を不可避とする。同時に帝国主義国内においても強権的な体制とならざるをえない。それは帝国主義本国で生まれ「国民」として生活してきた旧植民地国の労働者人民への、今まで以上の抑圧・差別・貧困の強要となる。「ホームグロウン・テロリスト」を生み出し続ける根拠を、帝国主義が自らつくり出しているのだ。米帝、欧州各国帝、ロシアは、帝国主義グローバリゼーションが不可避にもたらす戦争から帝国主義ゆえに逃れることができない状況になっている。
 これを促進しているのが全世界で進行する経済危機である。〇八年の「リーマンショック」を契機とした金融恐慌は新自由主義の破たんを明らかにした。その破たんは金融資本に対するテコ入れなど巨額の財政出動などで隠蔽(いんぺい)されただけである。それどころか資本の自由、搾取の自由の名の下に、教育、医療、公共インフラを市場化し、大資本優位の税制、商取引制度への改編などをもくろみ、貪欲に資本の蓄積を進め、貧困を拡大し、社会を破壊している。富める者はますます豊かになり、貧しいものは生きることがやっとという状態にまで追い込められる。資本主義は自らが依拠する社会すら維持できない事態になっている。
 戦争と貧困が雪崩のように労働者人民に襲いかかっている。労働者人民の国際的に団結したたたかい以外に、貧困と戦争を阻止することができないことが鮮明な時代となっている。

  ●2章 安倍政権の戦争国家化と貧困の強要

 日帝―安倍政権もかかる帝国主義の市場再分割戦争に本格的に参戦し、勝利することぬきに自らの延命がないことを自覚している。昨年九月の戦争法制定の強行は、日帝―安倍政権の市場再分割戦、「対テロ」戦争参戦のためのものである。日本は経済的には有数の帝国主義国であり、海外資産もまた膨大である。戦争を伴って進行する市場再分割戦に後れを取ることは、日帝大資本の力を大きく損ない、国際的な競争から大きく後退することを意味している。日本帝国主義ブルジョアジーにとって労働者人民がどのように抵抗しようと、日米安保強化を梃子(てこ)に全世界で米帝と戦争を遂行する体制をつくること=戦争国家化は、日本帝国主義の唯一の延命策である。
 日帝の経済危機も極めて深刻である。アベノミクスは大幅な金融緩和と財政出動によって円安・株高を演出し、大資本を潤おしてきた。大企業が儲かればトリクルダウンで中小企業も潤い、労働者にもおこぼれが発生するという考え方が、まことしやかに語られてきた。そして、アベノミクスの第三の矢の成長戦略の停滞の中で、「名目GDP六百兆円」「希望出生率1・8」「介護離職者ゼロ」が、第二弾として打ち出された。しかし、有効な政策根拠がないばかりか、労働法制改悪や介護報酬の引き下げなど正反対の政策が強行されている。
 このようななかで本年初頭から株安、円高が進行し、慌てふためいた日銀・黒田はマイナス金利を導入したが、円高、株安の傾向に拍車を掛け、より一層の危機を招いただけとなった。
 日帝にとって景気回復の唯一の道は、安倍が春闘で3%の賃上げを経営者に要求したように、まずはGDPの六割をしめる内需の拡大、労働者の賃金引き上げしかない。しかし安倍がいくら要求し、麻生が「守銭奴」(一五年二月)と経営者を罵倒しようと、デフレと少子高齢化で市場が縮小する中では、経営者は設備投資や労働者の賃金引き上げをすることはできない。ひたすら内部留保としてため込むか、ハイリスク・ハイリターンの金融投機にかけるか、などは選択肢であっても、労働者の賃金引き上げなど選択肢ではないのが経営者団体の本音である。
 日帝による戦争国家化と搾取・収奪の強化による貧困の拡大は、経済活動の衰退の道であり、社会の荒廃につながる道でもある。
 貧困は自己責任とされ、大多数の若者に将来の希望がない社会、排外主義が流布され敵は帝国主義ブルジョアジーではなく近隣諸国などと宣伝扇動され、若者が戦争へと駆り立てられていく社会である。働く労働者の多くが精神的肉体的に極限まで追い詰められ、過労死寸前までこき使われるにもかかわらず、貧困化していく社会である。福祉が切り捨てられ、高齢者が虐待され、殺されていく社会でもある。16春闘はこのような社会と決別し、労働者としての生活と尊厳を守る社会を建設していくたたかいの第一歩としていく必要がある。

  ●3章 戦争・貧困と闘う16春闘の構築を!

 16春闘において日本経団連は、「人口減少下での経済の好循環の実現と企業の持続的成長の実現」(16経労委報告)を掲げている。しかし人口減少とデフレによる市場の縮小という事態に対して、労働者が安全、安心に暮らせる社会を実現することによって達成するのではなく、まず企業経営を安定させるということを第一義的に主張している。相変わらずのトリクルダウン的発想である。「好循環」を実現する安定した社会が破壊されているにもかかわらず、さらに破壊しつくすことしか意味しない妄想である。16春闘は企業が労働者の生き血を吸って延命するのか、労働者がたたかいによって自らの生活、生存権を守るのかをかけたたたかいである。

  ▼3章―1節 大幅賃上げ実現、長時間労働規制を

 労働者の賃金の大幅引き上げが実現されなければならない。労働者の実質賃金は低下し続けている。勤労者世帯(二人以上世帯のうち勤労世帯、農林漁業を除く)実収入(月収)は、九七年の五十九万五千二百十四円をピークに減少しており、一四年には前年比―0・7%の五十二万二百五十六円になっている(総務省家計調査年表)。世帯主収入は減収傾向であり世帯主以外の家族がパートやアルバイトに出ることによって補っているとみられている。
 同時に消費増税や円高で支出のうち固定費(住居、食料、光熱、水道などの消費支出)が増大する一方で、固定費以外の支出を節約する傾向が広がっている。いわゆる家計にゆとりがなくなる状態である。その結果、貯金などの金融資産を保有しない世帯は〇九年から一四年にかけて急増し三割となっている。所得の低い世帯ほど、消費増税、社会保障費、教育費、物価の引き上げの影響は大きい。そのような中で年収二百万円以下の貧困層の労働者の割合は千百三十九万人、全体の24%(国税庁一四年)となっている。女性では42・9%にのぼっている。
 同時に賃金水準の低下は、長時間労働の温床でもある。一四年の毎月勤労統計調査では一般労働者の総実労働時間は二千五時間である。月八十時間以上の時間外労働は過労死ラインであるが、週になおせば六十時間の労働であり、これ以上働く男性労働者は13%近くいる。低賃金職場では長時間労働が蔓延し、賃金引き上げのたたかいと長時間労働反対のたたかいは表裏一体である。
 大幅賃上げのたたかいは、長時間労働で精神的、肉体的に疲弊させられ、最低限の社会関係、人間関係を構築すること、その結果得られる、労働者の社会的、政治的経験の蓄積も阻害されていくことを阻止するたたかいでもある。「自己責任」によって孤立させられる労働者を、団結させる物質的条件の獲得でもある。安倍政権の3%賃金引き上げを跳ね飛ばす大幅賃上げを実現しなければならない。

  ▼3章―2節 非正規雇用労働者の賃金、労働条件改善を

 非正規雇用労働者が二千万人、約四割を占めるようになった。正規労働者との賃金格差も大きい。所定内賃金は男性正規労働者は三十四万二千円だが、男性非正規労働者は二十二万二千円、女性正規労働者は二十五万七千円、女性非正規労働者は十七万九千円である。女性の非正規労働者は男性正規労働者の賃金の約二分の一でしかない。
 非正規労働者は主婦パート、学生アルバイトなど家計補助者が中心とされていたが、最近は自分自身の収入で生活をまかなう「大黒柱」である家計維持者が47・7%に達している。
 このような状況のなかで、非正規雇用労働者の賃金の大幅引き上げは不可欠となっている。
 非正規規労働者の賃金引き上げの大きな武器は均等待遇原則である。他方で、均等待遇原則に依拠しながら、正職員化要求だけではなく、非正規労働者であっても最低限の生活ができる賃金を要求していく必要がある。当然のことながら、それは賃金だけが問題とされるのではなく、医療、住宅、教育などの社会福祉制度の向上・改善などの政策制度闘争と不可分一体である。
 すでに労働運動研究会では「非正規労働者に『正規労働者になりなさい』とよびかけることではなく、非正規労働者が労働者として尊厳を持って働き、当たり前の生活が出来るようにしていくために……」として、「非正規労働者のユニオンキャンペーン(仮称)」を提起している。非正規労働者の大幅賃上げのためにも、非正規労働者自身のたたかいの拡大が不可欠であり、非正規労働者であっても生活できる賃金を要求する当たり前のたたかいを前進させていかなければならない。

  ▼3章―3節 最低賃金の大幅引き上げを

 貧困の拡大の中で、最低賃金闘争の重要性が拡大している。一五年度の経団連報告によれば、最低賃金があがれば賃金がそれまでの最低賃金以下になる影響率が、一三年度では全国平均で7・4%となっている。東京、大阪、神奈川、千葉、愛知など都市部が中心で最低賃金が最も高いAランクでは10・7%にまで上昇している。実際に影響をうけるのは最低賃金周辺の労働者だけではない。
 労働集約型の流通、製造業などで多数の非正規雇用労働者を雇用している企業では、毎年、いくらかは時給があがるランク制を採用している企業も多い。その最下層は最低賃金との関係で基準づけられている場合が多いので、最賃が上がれば最下層には賃金引き上げの圧力がかかり、各ランクの賃金も引き上げざるを得なくなる。また地域にはA職種はB職種より高いなどの時給相場があるので、最下層があがれば緩やかに上層にまで影響が及ぶと推察される。最低賃金がベアの役割を果たす状況になりつつある。
 現状の七百九十八円(全国加重平均)は、余りに低い。最高額の東京で九百七円、最低額の鳥取、宮崎、高知、沖縄で六百九十三円である。年間千八百時間働いても最高で約百六十三万円、最低で約百二十四万円である。これでは最低賃金法の目的である「労働者の生活の安定、労働力の質的向上」も果たすことは出来ない。最低賃金の大幅引き上げを目指さなければならない。
 金額水準が低すぎることだけが問題ではない。四ランクに分けられ各県別に金額が異なる、全国一律最賃制度でないことも大きな問題である。地方別最低賃金制度のままでは、最低賃金の影響が高まる中で、地方と都市の格差を拡大することにも結果する。
 このような中で最賃闘争は、非正規労働者をはじめとする低賃金労働者の賃金闘争の武器となっている。しかも最初から、雇用主に対するたたかいではなく、全国的に団結した労働者のたたかいである。「二〇年までに全国平均千円を目指す(一〇年政労使合意)」の実現に向け、「直ちに全国一律、千円以上の引き上げ」を要求しなければならない。

  ▼3章―4節 労働法制改悪反対、増税・社会福祉解体との闘いを

 安倍政権は経済の好循環の実現のためには、労働者の賃金引き上げが必要だといいながら、労働法制の改悪などによって「賃上げ効果」を打ち消す攻撃を強めている。
 残業代ゼロ法案について政府は年収要件千七十五万円の歯止めがあるとしているが、塩崎厚生労働大臣が「小さく生んで大きく育てる」と発言しているように、法案を通すための方便にすぎない。日本経団連はかつて年収四百万円以上と主張したように、多くの労働者が適用対象となっており、八時間労働制を解体しようとするもくろみに他ならない。他方、日本の労働法制では、労使協定さえ締結すれば過労死ラインを超える八十時間どころか何時間で締結しようと合法であり、残業賃金を払わずに労働者を過労死寸前まで働かせることも可能となる。これでは少子化対策など成立しようがない。
 解雇の金銭解決などは徹底した使用者のパワハラ推進、労働組合潰し以外のなにものでもない。実際の解雇事案の解決の大半が金銭解決である、というのが政府の言い分であるが、それは結果に過ぎない。不当解雇であると裁判等で判断されても復職すれば使用者によるイジメなどの「報復的対応」が待ち受けているからであり、結果としてそうなるに過ぎない。使用者が些細な理由で労働者をいじめ倒し、辞めさせ、裁判で不当解雇と認定されても金銭で解決できることが可能になれば、パワハラは今まで以上に横行することになり、メンタル疾患も増大する。当然、一定の金額を支払うことを決断した、労組活動家排除のための解雇も増大する。 
 また「希望出生率1・8」「介護離職ゼロ」などといいながら、介護報酬を引き下げ、社会福祉制度を改悪し、労働者が安心して子どもを育てることも、老後の安心も、損なうような政策をうちだしている。一七年四月から10%の消費増税もおこなわれる。大資本には大幅な減税をおこないながら、労働者、民衆からは更なる収奪をもくろんでいる。
 労働法制、社会福祉制度、増税に関するたたかいは、「第二の賃金闘争」ともいわれるように、個別資本との賃金引き上げを実現しても、この領域の政策制度において改悪されれば一挙にその賃上げは意味を失うという意味で、きわめて重要である。このたたかいは政府に対するたたかいでもあり、労働者の全国的闘争として推進することが不可欠なたたかいでもある。労働者の階級としての形成に向けた社会的な団結形成として大きな意味をもつ。

  ▼3章―5節 戦争国家化、改憲、原発再稼動阻止せよ

 以上述べたような経済的な要求以外に、16春闘のテーマである「生存権」を守るたたかいである戦争国家化に対する闘いも重要である。安倍政権は戦争国家化の総仕上げとでもいうべき改憲を、参議院選によって実現せんとしている。昨年の戦争法反対を圧倒的に上回る改憲阻止の大衆運動、行動を作り出し、その力で自公をはじめとする改憲勢力を敗北に追い込まなければならない。
 福島第一原発事故の収束に何のめども立たない中で、安倍政権は川内原発・高浜原発の再稼動を突破口として、原発再稼動を推進している。原発再稼動は、巨大独占資本である電力会社の救済策であるとともに、戦争国家化にむけた核武装にとっても不可欠だからである。また海外へのインフラ輸出の重要産業である原発プラント輸出にとって不可欠である。原発再稼動阻止のたたかいの重要性を訴えていかなければならない。
 貧困と戦争が一体となった攻撃である。労働者階級の利害に立ち、貧困に対するたたかいと戦争に対するたたかいを結合していくことが重要である。

  ▼3章―6節 先進的労働者は16春闘の最前線で闘おう

 16春闘は戦争と貧困を労働者に強要する安倍政権に対する、総反撃の第一歩である。先進的労働者はそのたたかいの先頭でたたかわなければならない。それだけではなく資本主義、帝国主義が続く限り、労働者は戦争と貧困から逃れられないこと、労働者の生存は常にぎりぎりの状態に追い詰められる。これが今日本の労働者人民の眼前にある現実である。そして命脈が尽きた資本主義、帝国主義に代わる、労働者が安全、安心に暮らせる社会の建設が必要であり、そのためには安倍政権打倒が必要である。
 先進的労働者は、16春闘を戦争と貧困と対決するたたかいとして前進させながら、安倍政権打倒を目指す中心的なたたかいとして労働運動を押し上げていかなければならない。



 

当サイト掲載の文章・写真等の無断転載禁止
Copyright (C) 2006-2007, Japan Communist League, All Rights Reserved.