共産主義者同盟(統一委員会)


1495号(2017年1月1日) 政治主張






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 激化する排外主義と対決し
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■新年号論文第一部:情勢



 新自由主義グローバリゼーションの破綻が鮮明になった二〇一六年、米帝をはじめとした帝国主義各国は、中東―シリア、イラクをはじめとして軍事介入し、戦争を激化させている。しかし、世界を再編していく展望があるわけではない。帝国主義そのものが、保護主義と対立に踏み込み始めたのである。
 日帝―安倍政権は、帝国主義として戦争を行なう軍事力と体制を構築し、侵略反革命戦争参戦に踏み込んできた。失敗が鮮明になったアベノミクスをむりやり推し進め、労働者人民に貧困と格差拡大を押し付けている。二〇一五年の戦争法反対闘争、一六年の伊勢志摩サミット反対闘争、派兵阻止闘争、反基地闘争、反原発闘争の中で、呻吟する人民の憤怒は安倍打倒闘争となって燃え上がってきた。戦争とファシズムを許すのか、労働者階級人民がこれを打ち砕くのか、厳しく問われる時代である。
 ロシア革命から百年にあたる二〇一七年、現代資本主義は危機に瀕しており、帝国主義がその本性をあらわにして搾取・収奪を極め、残虐な侵略反革命戦争にのめり込んでいる。分断と対立、格差が拡大する時代にあって、新たな展望を拓くのは、帝国主義に対抗して世界各地で立ち上がる労働者階級人民である。
 二〇一七年年頭にあたり、共産主義者同盟(統一委員会)としての見解を掲載する。本号(一四九五号)で第一部 世界情勢・国内情勢を提起し、次号(一四九六号)で第二部 総括・方針と党建設について提起する。

 ●1章 世界情勢

 ▼1章―1節 現代帝国主義が激化させた戦争と内戦


 昨年十一月の米大統領選で勝利したトランプは「アメリカは世界の警察官ではない」と言い続けてきたが、この新大統領への政権移行の過程にあっても、中東、アフリカをはじめとして戦争、内戦は収束するどころか、激化の一途をたどっている。帝国主義の新自由主義グローバリゼーションと一体に進んだ二十一世紀の侵略反革命戦争は、各国の経済政策と階級支配が大きく揺らぐ中でさらに拡大しているのだ。
 八年前、米大統領に就任したばかりのバラク・オバマはプラハ演説で「核兵器なき世界」を訴え、二〇〇九年にノーベル平和賞を受賞した。しかし、二〇一六年十月二十七日、国連総会で「核兵器廃止条約」交渉決議に際しては、最大の核保有国=米国オバマ政権は、これに反対票を投じた。さらに許しがたいことは、米帝との軍事同盟強化を基盤として戦争法制を実効化しようとする安倍政権も反対したことだ。
 米帝オバマ政権は、ブッシュ政権のように「悪の枢軸」との対決を掲げたのではない。「人権」と「民主主義」を掲げて、侵略反革命戦争を継続し激化させてきたのだ。地上軍投入を極力回避して、無人機攻撃での殺戮に力を傾注してきたのはオバマ政権である。米軍の死傷者は減り、戦争を見えにくくした。
 二〇一一年以降の北アフリカ・中東の「独裁政権打倒闘争」が大衆運動として進む過程で、米帝や仏帝は帝国主義の利害から、この運動の伝播を後押しした。そして、リビア、シリアなど反米(反帝、反イスラエル)国家の打倒へと捻じ曲げていった。
 米帝オバマ政権は二〇一三年、シリアが内戦化した時期に、パレスチナ解放闘争を圧殺する意図をもってアサド政権に対する軍事攻撃を主張した。オバマ政権は同時に、アルカイダまで含めた反アサド勢力に軍事支援を行ない、大量の武器・弾薬がこれらの勢力に渡った。この状況の中で、同盟国―英帝は軍事介入不参加を決定した。米帝は国際的に孤立し、軍事介入することができなかったのだ。この混乱を一時的に集約したのは、ロシアとイランだった。この事態は、米帝の中東植民地支配において大きな蹉跌となった。中東における米帝の同盟国サウジアラビア、イスラエルとの間に亀裂を残した。
 「世界の警察官」たる位置を自ら放棄せざるをえない米帝の軍事力、政治的編成力の減退が、シリア内戦をめぐって鮮明に浮かび上がってしまった。中心国―米帝の力の減退は、以降の国際政治に大きな影響を及ぼした。
 直接的には、二〇一四年年頭のロシアのクリミア併合、ソチ・サミットの中止とハーグG7サミットで、帝国主義諸国とロシアの対立が一挙に深まった。サウジアラビアを中心とする石油輸出国機構(OPEC)は、原油価格低下の中で供給制限を行なわずに価格を暴落させ、米国のシェールオイル開発に打撃を与えた。イラク、シリアでは、ヌスラ戦線、「イスラム国(IS)」などアルカイダ分派の武装組織が、反米を掲げて、その支配地域を拡大した。
 北アフリカ・中東の「独裁政権打倒闘争」を利用した米帝、仏帝、英帝の植民地支配回復の野望は、リビア、マリ、シリアの内戦化、カダフィの殺害にまで至った。帝国主義の空爆と殺戮、内戦激化によって、帝国主義の掲げる「人権」と「民主主義」の醜悪な本質があからさまになった。北アフリカ、中東地域人民の帝国主義に対する怒りと憎しみが高まる状況を背景にして、ISなどは軍事支配地域を拡大していった。ISの反撃は、仏帝、米帝などの国内における爆弾攻撃、銃撃にも至っている。
 この事態の中で、米帝など帝国主義とロシアは今も、中東、北アフリカへの侵略反革命戦争を継続し激化させている。ISを壊滅するために共闘しているのではない。中東の権益と政治軍事的支配をめぐって、アサド政権を打倒するか、護持するかで対立し、それぞれの利害からシリア内戦に軍事介入しているのだ。
 そして、戦場はアフリカに拡大している。帝国主義は原油など資源をめぐる権益確保のために、部族間、宗派間の対立に介入し、武器輸出を拡大して、内戦、戦争を拡大してきた。日帝―安倍政権が昨年十一月戦争法を適用して陸上自衛隊を送り込んだ南スーダンはどういう位置にあるのか。
 南スーダンは二〇一一年にスーダンから独立した。この地域の重要な資源である石油は、現在のスーダン・南スーダン国境地域に偏在するため、国境画定をめぐって両国は対立してきた。また、南スーダンで産出される原油もスーダンを通過するパイプラインによって運ばれており、この使用をめぐっての対立もある。一方では、南スーダンの油田およびスーダンのパイプラインともに中国国有石油会社がほぼ独占している。南スーダン内戦でのキール大統領派、マシャル前副大統領派の対立も、国家財政の大部分をしめる石油収入をいかに分配するのかということが問題なのである。南スーダンの独立、そして南スーダンでの内戦という過程を通して、アフリカの資源をめぐる中国、旧宗主国フランス、そしてアメリカ、日本などの争闘が繰り広げられているのだ。
 同時に、ジブチは、アフリカへの侵略反革命戦争の拠点となっている。そこに日本の自衛隊も基地を築いているのだ。
 米軍は、全世界を分担する地域統合軍を置いているが、その一環として二〇〇七年にアフリカ軍を設立した。このアフリカ軍を軸にして合同統合任務軍「アフリカの角」を形成しており、ジブチがその拠点である。フランス軍もジブチに駐留している。
 二〇〇八年以降に問題となった「ソマリア沖海賊」問題なるものによって日本は〇九年以降海上自衛隊艦船を派兵しているが、この派兵を根拠にして二〇一一年に自衛隊の海外基地をジブチに建設した。米軍を軸にした「アフリカの角」と自衛隊は、ジブチを拠点にアフリカでの軍事協力関係を深めてきた。戦争法発動による南スーダン派兵は、日帝が帝国主義としてアフリカ侵出するための端緒であり、同時に、米軍・自衛隊のアフリカでの共同展開の一環なのである。
 東アジアにおいて日米は、その軍事同盟を再編して朝鮮民主主義人民共和国(以下「共和国」)と中国に対する軍事的緊張関係を強めてきた。日米防衛協力の指針(日米ガイドライン)の下で、朝鮮戦争に関しては具体的戦争計画が組み立てられている。それは、米韓間においてもそうであり、米軍を軸にした大規模な軍事演習は、日米韓による朝鮮戦争を具体的に準備するものである。日韓両国は昨年十一月、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を締結した。日米、米韓の二国間軍事同盟から、日米韓三国間の軍事関係強化へと踏み込むものである。直接的には共和国に対する戦争態勢の強化であり、中国、ロシアなど東アジア全体の軍事的緊張を高めるものである。

 ▼1章―2節 グローバリゼーションの破綻に直面する現代帝国主義

 ◆1章―2節―1項 米大統領選の意味するもの


 昨年十一月八日の米大統領選挙で勝利した共和党のドナルド・トランプは、移民排斥、イスラム教徒入国禁止、女性差別の主張を公然と行なってきた。日本の在特会に匹敵するような差別排外主義者が米国の次期大統領に決まったのだ。
 トランプは「アメリカ第一主義」を掲げ、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を宣言し、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を公約し、「中国、メキシコ、日本、ベトナムから仕事を取り戻す」と発言してきた。米国の利害のためには保護主義を公然と主張する。アメリカは「世界の警察官」ではないと発言し、日本、韓国、ドイツなど同盟国に米軍駐留経費の負担増を要求すると主張してきた。
 クリントン、ブッシュ、オバマの各政権はその軍事戦略には変更がありながらも、米国方式の経済政策(アメリカン・スタンダード)をグローバル・スタンダードとして世界各国に押し付けてきた。それは企業経営のために国家の規制を緩和・撤廃する。各国の社会政策を民営化することで米国並みの劣悪な社会保障環境に引きずり下ろし、企業が入り込む市場として開放させる。金融自由化を進め、投資銀行やヘッジ・ファンドなどの金融投機資本の活動の自由を拡大する。中心国―米帝の経済力、軍事力が減退する中で、自国に有利なルールで世界支配を護持しようとする戦略が「新自由主義グローバリゼーション」であった。
 二〇〇八年金融恐慌は、この「新自由主義グローバリゼーション」の母国=米帝を震源とする世界規模の恐慌であった。現代資本主義は、この恐慌に対処するためにG20を召集して当面の危機を脱したかに見えたが、それは欧州金融危機―国家債務危機、日帝のデフレの深化、BRICS諸国の経済停滞、原油価格の急落―一次産品産出国の経済危機と、世界規模でこれまでにないさまざまな経済困難を結果してきた。帝国主義各国政府や欧州委員会、国際通貨基金(IMF)が提示し進めてきた処方箋は、緊縮財政―社会保障の削減、民営化という新自由主義政策のさらなる強化であり、それは米国並みの格差社会を全世界に蔓延させることであった。現代帝国主義は、新自由主義グローバリゼーションの矛盾を、労働者人民に徹底的に押し付け続けてきた。
 アメリカの労働者階級人民こそが、この新自由主義グローバリゼーションの極まった矛盾の中にあり、大統領選挙ではとにかく現状を打破するものを選び出そうとした。それは一方では、サンダースを支持する大きなうねりであった。しかし、米大統領選の最終段階では、現状打破を排外主義と保護主義に集約するペテン師トランプのデマゴギーにからめとられてしまったのだ。
 アメリカ人民の多数がトランプを支持している訳ではない。大統領選の投票率は48・62%で、非常に低い。しかも投票数はトランプの方がクリントンより少ない。トランプを支持しているのは、米国の有権者の四分の一にも満たないのである。

 ◆1章―2節―2項 英国のEU離脱

 昨年六月二十三日に行なわれ、欧州連合(EU)離脱を決定したイギリス国民投票も、グローバリゼーションの破綻が端的に表れたものであった。
 反移民の主張が大きく報じられたが、保守的で排外主義的な主張だけで、イギリス人民総体が動いた訳ではない。保守党支持者の中でも、労働党支持者の中でも、離脱か残留かは分かれた。
 九〇年代から二〇〇〇年代、EUは「ヨーロッパ社会民主主義的な統合」を進め、米帝の新自由主義に対して一定の独自性をもった「社会的資本主義」なる政策をもっていた。しかし、新自由主義のグローバルな進展の中で、欧州諸国も競争の中で新自由主義政策への転換を図ってきた。とりわけ、欧州金融危機・国家債務危機に際しては、急激な緊縮財政、公共部門の民営化など、労働者人民の生活を犠牲にして金融機関―金融システムを救済する政策をとった。EUが、グローバル化を制御する地域統合ではなく、グローバル化の新しい方法でしかなくなったのだ。イギリスの労働者階級がEUに展望を失ったのは当然であった。
 一方、スコットランドと北アイルランドはイングランドとは異なって、EU残留が多数を占めている。スコットランドでは改めてイギリスからの独立の主張が強まっている。北アイルランドではEUに加盟しているアイルランドとの関係強化を重視する動きがある。
 EUが、欧州金融危機・国家債務危機を通して新自由主義政策を全面化し、それに対する反発が離脱、分離、独立の動きを促進する結果を生み出しているのだ。そこには、排外主義勢力の急伸という動きの一方で、現代帝国主義に対する新たな対抗勢力が伸張し始めているのである。

 ◆1章―2節―3項 中国―習近平政権とアジアをめぐる争闘

 米帝のアジアに軸足を移したリバランス戦略、米日が中心となったTPPに対抗しつつ、中国習近平政権は、アジアインフラ投資銀行(AIIB)を立ち上げ、中国から東南アジア、インド、中央アジア、中東、アフリカ、ヨーロッパに至る地域を「陸と海のシルクロード」と位置づけて投資を行なおうとする「一帯一路」構想を掲げている。中国―習近平政権は、この経済開発計画と連関しつつ、南中国海の軍事的覇権をも確保しようとしてきた。
 中国は二〇〇五年段階からASEAN+3(日中韓)を軸とした「東アジア自由貿易圏」構想を掲げており、一方、日本では民主党―鳩山政権が二〇〇九年に「東アジア共同体構想」を掲げていた。
 トランプ次期米大統領によってTPPの展望は押し潰されている。昨年十一月のペルーAPECでは、オーストラリア、ニュージーランド、インドを加えたASEAN+6による東アジア地域包括経済連携(RCEP)が注目された。ペルーやチリはRCEPへの参加を希望している。習近平は、トランプ政権の保護主義をにらみつつ、RCEPの「早期妥結を図る」としている。
 しかし、アジア太平洋の経済的主導権が、米・日から中国に移り、習近平政権が新たな経済圏を発展させるという楽観的状況ではない。習近平政権は官僚支配を強化しつつ、市場経済化=資本主義化を進めてきた。汚職官僚を粛清しながらも、資本主義化の要である国有企業(国家独占資本)は官僚と強く癒着している。中国が〇八年恐慌直後に実施した財政出動は四兆元(六十四兆円)に上る。不動産投資などにばら撒かれた四兆元バブル問題は今もくすぶっている。官僚と国家独占資本の癒着、国家財政を投じたバブルが、中国経済と世界経済に大きな打撃を与える可能性をはらんでいるのである。

 ▼1章―3節 労働者人民の闘いと排外主義の台頭

 ◆1章―3節―1項 労働者人民の闘いと新たな政治状況


 現代帝国主義が進めてきた新自由主義グローバリゼーションが大きく破綻しつつある中で、世界各国で、この矛盾と対決する運動が大きく発展してきている。
 米大統領選がトランプとクリントンの不毛の争いとなった中で、この予備選挙の過程で躍進したのはバーニー・サンダースだった。「民主社会主義者」を自称するサンダースが千二百万票をかちとったことは、米国の階級情勢の新たな状況を明示するものであった。サンダースは、公立大学の授業料を無料にし、大規模な失業対策、女性の賃金平等、最低賃金十五ドル、そして、不完全なオバマケアではなく「全国民のためのメディケア」を民主党政策綱領とすることを主張した。そして、この社民的主張は、青年・学生やラテン系アメリカ人の支持を得た。
 サンダース支持は一つの表れである。アフガニスタン戦争、イラク戦争に対する反戦闘争、反排外主義運動、そしてウォール街占拠闘争以降、アメリカでは左派、共産主義者の運動が改めて開始されてきた。トランプが当選して以降、トランプを認めない街頭行動が全米を揺るがしていることにも鮮明に表れている。
 英国においては、イギリス労働党最左派のジェレミー・コービンが二〇一五年九月に党首に選出されている。かつて労働党ブレアは帝国主義社民としてEUを支持し新自由主義政策を進めてきたが、その間に英国においても貧困と格差が拡大した。四十万五千人だった労働党員がブレアの時代に十七万七千人まで落ち込んだ。保守党とほとんど差異のないブレア労働党はイギリス労働者階級の支持を大きく失ってきたのだ。
 この労働党主流派とは全く異なって、コービンは公共事業や鉄道の再国有化、福祉予算の回復、炭鉱再開、企業への課税強化、大学の学費軽減、反核、再生可能エネルギーへの転換など社会主義的政策を掲げて、党首選に臨み、労働党員の圧倒的支持を得て党首となった。
 昨年六月に行なわれた英国のEU離脱をめぐる国民投票に対して、労働党の公式の方針はEU残留であったが、コービンはEU残留運動に積極的には動かなかった。米国とEUの間の大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定(TTIP)に対しても、コービンは労働者、消費者の立場から、健康、環境の基準を下げ、国家主権を脅かすという観点で反対し、拒否権を行使して批准を阻止すると発言し、グローバリゼーションへの対抗を明確にしてきた。
 EU離脱決定後、労働党内部では残留支持派がコービンの責任を追及したが、昨年九月二十四日の党首選において、コービンは再選されている。
 ギリシャは二〇一一年欧州金融危機・国家債務危機の過程で、最も大きな矛盾を押し付けられた。そのギリシャ労働者人民のたたかいの中から、政治勢力として急進左派連合シリザが生まれてきた。二〇一五年一月の総選挙後に、シリザを軸にしたチプラス政権が成立した。しかし、債務不履行に突入していたギリシャが金融支援を受けるために、政権政党としてのシリザは増税、国有資産の売却民営化、社会保障・年金などを削減する構造改革、緊縮財政を受け入れざるをえなかった。EUが、ギリシャ急進左派連合の抵抗を押し潰した結果になった。しかし現在、このEUの重圧を受けた政権政党シリザの制動をも超えて、貧困と格差の現場から新たなたたかう労働運動は生まれてきている。
 ポルトガルにおいても、二〇一五年十月の共和国議会選挙後、「反緊縮」で一致する社会党、共産党、左翼ブロックの三会派による左翼新政権が発足している。新政権は「経済成長、雇用、平等の拡大」を目標として掲げ、具体的には最低賃金の引き上げ、付加価値税の引き下げなどの政策を明示した。
 スペインにおいては二〇一五年十二月の総選挙で過半数を制する政党がなく、連立協議も決着がつかず、再選挙をはさんで十ヵ月にわたって暫定政権が続いた上で、最終的には昨年十月に国民党―ラホイ政権が成立した。この政治状況は、社会労働党(PSOE)、国民党(PP)という既成二大政党に対して、新たな政治勢力として左派のポデモス、中道改革派のシウダダノスが、欧州金融危機以降の緊縮財政と失業の増大の中で形成され、急伸してきた結果生まれたものである。二〇一五末の総選挙では、ポデモス、シウダダノスの登場で、PP、PSOEのいずれもが過半数を確保することができなかったのだ。
 ポデモスは反緊縮を掲げると同時に、最低賃金の引き上げ、非正規雇用の正規化、解雇規制の強化、法定労働時間短縮(週四十時間から三十五時間へ)、公的医療・教育の充実など、具体的に新自由主義政策と対抗する政策を掲げている。労働者人民、とりわけ貧困層の多くが、PSOEではなくポデモスを支持した。
 アジアにおいては、新自由主義政策を食い破るたたかいが大きく発展している。
 韓国階級闘争は歴史的な勝利に向けて突き進んでいる。
 昨秋以降の朴槿恵打倒闘争は十一月十二日の労働者大会―民衆総決起大会を一つの頂点としてたたかわれた。百万人を超える労働者階級人民がソウル市中心部を埋めつくした。朴槿恵自身の疑獄事件に対する韓国民衆総体の憤怒が一大民衆闘争として燃え上がったのである。
 このたたかいの一大高揚は、単に朴槿恵の国政私物化ということだけから巻き起こったのではない。昨年の韓国における労働運動、農民運動、反基地運動など階級闘争の前進がその基底にはあった。「成果年俸制」や「成果退出制」(資本の利害による解雇制度)などの反労働者政策をとってきた朴槿恵政権に対して、民主労総は昨年九月ゼネストを呼びかけた。九~十月公共部門労組のゼネストから、鉄道労組、地下鉄労組、金融労組、保健医療労組が続々とストライキに立ち上がってきた。
 昨年七月にTHAADシステム配備が発表された星州では、住民が反対運動に立ち上がり、連日ロウソク集会がたたかわれてきた。朴槿恵政権は共和国敵視を強め、米、日との軍事関係を強化し、戦争準備を進めてきた。星州住民のたたかいは、反基地闘争―反戦闘争として拡大し、朴政権と対決してきた。
 このような韓国階級闘争こそが、朴槿恵政権の疑獄事件に対する全人民的反政府闘争の最先頭に立ち、勝利に向かって進んでいるのである。
 フィリピンにおいては昨年五月にドゥテルテ新政権が成立し、新たな階級情勢を迎えている。
 ドゥテルテ自身はブルジョア階級の一員であるが、フィリピンの諸階級・諸階層の支持を得るために、「独立外交路線」をとり、また、国内的に一定の社会政策をとろうとしている。これまで、米帝、日帝のアジア政策に服してきたことに対する不満、憤激が、ドゥテルテの独自路線の支持につながってきた。
 ドゥテルテ政権は、フィリピン民族民主戦線(NDFP)との和平交渉を積極的に進めようとしている。昨夏、政治囚の釈放が行なわれ、和平交渉の中でドゥテルテ政権とNDFPの間では暫定的停戦が成立した。
 フィリピン共産党(CPP)とNDFPは、その根拠地での武装闘争から、各領域での大衆運動、また議会闘争まで含んで重層的にフィリピン革命を推し進めてきているが、昨年の和平交渉―停戦合意という新たな状況は、その活動の自由を大きく広げるものである。フィリピン革命勢力は、この情勢を最大限に利用して、フィリピン革命を大きく前進させようとしている。
 ラテン・アメリカにおいては、一三年以降の原油価格急落を大きな要因として、反米を貫いてきた産油国ベネズエラが経済的に大きな打撃を受けており、それはキューバやボリビアにも影響を与えている。しかし、ベネズエラ、キューバ、ボリビア、ニカラグアなど反米諸国は米州ボリバール同盟(ALBA)を形成しており、米州南部共同市場(メルコスール)や中南米カリブ共同体(CELAC)など反米・非米の多国間枠組みを堅持している。排外主義的なトランプ政権は南北アメリカ大陸においてこそ、その孤立を深めることになるだろう。

 ◆1章―3節―2項 排外主義の急伸

 新自由主義グローバリゼーションが生み出した巨大な矛盾に対して、このような労働者階級人民の階級的反撃が開始されているだけではない。トランプを支持した人々、移民排斥の立場からイギリスのEU離脱を支持した人々のように、排外主義へと大きく傾斜する流れが生まれ、これに依拠して極右―ファシストが各国で伸張していることも大きな特徴なのである。
 「対テロ」戦争という現代帝国主義の侵略反革命戦争の激化は中東・北アフリカから難民を大規模に生み出した。欧州諸国では、この難民の受け入れと排斥が急激に政治問題化したことによって、極右の言動にさらに拍車がかけられている。トルコ、ギリシャを経由して難民が流入したハンガリー、オーストリア、スロバキア、チェコ、ポーランドなど東欧諸国は、EUの難民受け入れ分担そのものに反対し、ドイツ政府への反発を強めた。
 そのドイツではメルケル与党=キリスト教民主同盟(CDU)が昨年九月四日の州議会選挙で敗北を喫した。難民受け入れ反対の新興右派政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が急激に伸張している。それは、議会選挙だけの問題ではない。移民・難民に対する放火事件などの排外主義的襲撃事件が急激に増加するという事態にもなっている。
 イギリスのEU離脱においても、イギリス独立党など排外主義勢力が反移民を掲げて伸張してきたことは事実である。フランスにおいても、右翼・国民戦線(FN)は、移民・難民排斥とEU離脱を掲げて急伸してきている。FN党首ルペンは本年四月の大統領選に向けて、その排外主義的主張を強めて支持を拡大しようとしている。ギリシャ、スペインなど新自由主義グローバリゼーションの矛盾を強いられて経済困難に直面する諸国、また、東欧諸国においても、排外主義を掲げた極右が伸張してきているのである。

 ▼1章―4節 帝国主義の世界支配の危機 分離と対立

 現代資本主義は二〇〇八年世界金融恐慌以降、かつてのように米帝、日帝、独帝が主導して世界経済を成長させるというような回復ができなくなっている。
 〇八年金融恐慌では、帝国主義G7だけでは対処できず、BRICSや産油国などを巻き込んだG20において、可能な限りの莫大な財政政策を行ない、各国が金融緩和を進め、銀行をはじめとする金融機関を救済してきた。米帝は、破綻寸前だった自動車産業GM、クライスラー、フォードを公的資金を投入して救済した。現代帝国主義と中国、ロシアなどは、労働者人民から吸い上げた税金とさらに赤字国債をもって、グローバル資本主義の世界恐慌への突進を食い止めてきた。
 行なったことは危機に瀕した資本の救済である。二〇一〇年代になって進んだ欧州金融危機、国家債務危機に際しては、国家財政で資本を救済し、その一方で、公共部門の削減、民営化、緊縮政策という新自由主義政策を労働者人民には強制した。現代資本主義の危機の中で、新自由主義グローバリゼーションとは何なのかということが、誰の目にも見えるものになった。
 〇八年以降経済の停滞が続く帝国主義諸国は、金融緩和を行なってきた。米FRB、ECB、日銀ともに金融の量的緩和を続けてきた。FRBは二〇一五年末に利上げに踏み込み、FRB議長イエレンは幾度も利上げを進める方針を語りつつも、先延ばしが続いている。しかし、この金融緩和によって景気が浮揚したわけではない。〇八年以前のようなバブルすら引き起こせてはいない。
 資本主義は、その矛盾の爆発として恐慌を引き起こすと、一挙に過剰資本が破壊され、その後の不況期において、賃金が低下したことを利用しつつ、新たな生産方法によって資本の有機的構成を高度化して好況へと転化していく、という形で景気循環をなしてきた。しかし、〇八年恐慌は、過剰資本の破壊を政策的に食い止めてしまった。本来の意味での不況期というのとは異なる、恐慌が終らずに停滞状況が続いている。
 帝国主義は〇八年にG20を形成してBRICS諸国に財政負担を行なわせることには成功した。しかし、G20は、世界を牛耳ってきたG8やG7に代わるものではない。ロシア、中国は資本主義化を進め、WTO、IMFにも参加している。統一的世界市場、擬制的な国際通貨体制に加わってはいるが、米帝を軸にした資本主義世界の編制を全面的に認めている訳ではない。シリア、ウクライナ、あるいは南中国海をめぐる政治的軍事的対立は、このことの証左である。
 現代帝国主義が唯一の解決策のように推進してきた新自由主義政策、その地球規模での拡大が、労働者人民の利害と真っ向から対立するものであることはますます鮮明になっている。これまで通りの資本主義には展望はない。グローバリゼーションに対する不満、批判、憤りが、現状を変革する者への期待として新たな政治行動が始まっている。現代資本主義の限界を突破するのが、トランプのような排外主義と保護主義なのか、プロレタリア国際主義に貫かれた革命運動なのかということが、現実の問題として問われる時代に突入しているのだ。

 ●2章 国内情勢

 ▼2章―1節 安倍政権の反動攻勢


 二〇一五年九月に戦争法を成立させた安倍政権は昨年十一月十五日、南スーダンPKO部隊に対して、戦争法に基づく「駆けつけ警護」と「宿営地の共同防護」を新たな任務として付与することを閣議決定した。防衛大臣稲田朋美は同月十八日、PKO交代部隊である陸上自衛隊部隊に新任務付与の命令を出した。二十日、青森空港から陸自部隊が南スーダンに出発した。
 南スーダンでは昨年七月、政府軍と反政府勢力の大規模な戦闘が発生して「停戦合意」は完全に破られている。国連安全保障理事会も昨年八月、南スーダンPKOについて「地域防護部隊」四千人を追加派遣する決議案を採択した。「地域防護部隊」は、武力行使に踏み切る権限を認められた部隊である。内戦が激化していることはこの安保理決議でもはっきりしている。「治安が落ち着いている」(稲田)という状況ではない。「PKO参加五原則」を逸脱して、南スーダンへのPKO派兵をむりやり継続させる。とにかく戦争法を発動させる。派兵し参戦する国家へと日本を作り変えていく。これが、昨年末に安倍晋三が強行したことなのだ。
 憲法審査会の審議は、二〇一五年の戦争法案国会審議中に開かれていたが、自民党推薦の参考人が「安保法案は憲法違反」と指摘したことで止まっていた。昨年七月参院選で、経済危機を煽って消費税増税を再延期して自公が改選議席を上回った。そして、自公と「おおさか維新の会」「日本のこころを大切にする党」など改憲勢力が衆参両院で三分の二を超えるという国会情勢が現出した。この状況の中、昨年十一月十六日参院で、十七日衆院で、憲法審査会の審議が一年五ヶ月ぶりに再開された。
 安倍政権は一七年中に改憲項目を絞り込み、一八年中に改憲原案を取りまとめるという目論見の下に、審議再開を強行した。一五年戦争法成立強行から一六年戦争法発動―自衛隊派兵を強行した安倍政権は、憲法九条(戦争放棄)と憲法前文(平和的生存権)をすでに踏みにじっている。この矛盾状態から改憲攻撃へと大きく踏み出したのだ。
 安倍政権が目指している改憲とは、自民党の改憲草案に基づく天皇の元首化、九条の否定、自衛隊の国防軍化、基本的人権の制限などの全面改悪である。これを「基本原理」としつつ、まずは改憲勢力が合意しうるところから着手しようとしている。「大規模災害」と「テロ」を煽った緊急事態条項を持ち出してきている。これは「国家の存立を維持するため」として「立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置をとる権限」を政府に付与するものである。国家緊急権の発動であり、憲法を停止する権限を政府に与えることになる。戦争法における「存立危機事態」の概念とあいまって、国家権力が戦争に向けた国内総動員体制を構築する根拠にしようというのである。
 戦争法成立を強行した安倍政権は、日米ガイドラインを改定し、日米軍事同盟の強化を進めている。高江オスプレイパッド建設、辺野古新基地建設は、この同盟関係強化の要となっている。沖縄人民は、辺野古新基地建設を阻止する攻防の中からオール沖縄のたたかいを生み出してきた。この沖縄の島ぐるみの反対運動に対して、安倍政権はむき出しの暴力をもって襲いかかってきている。高江、辺野古での不当逮捕、運動のリーダーを狙った令状逮捕―事後弾圧攻撃、平和運動センターなど沖縄の大衆運動拠点に対する刑事弾圧へと攻撃をエスカレートしている。安倍政権は沖縄人民総体を敵に回してでも米軍基地を徹底的に沖縄におしつけていく強権発動の手段に訴えている。
 安倍政権の下で、各電力会社は原発再稼働を推進している。九州電力川内原発に続き、四国電力は伊方原発三号機の再稼働を強行した。経産相世耕弘成は、伊方原発再稼働に対して「プルサーマルの推進、核燃料サイクルの推進という観点からも非常に意義がある」と発言している。安倍政権は昨年九月、高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃炉を決定した。しかし、その直後の十一月三十日、安倍政権は「もんじゅ」の後継としての高速実証炉を建設するという方針を発表した。原発の稼働を続ければ必然的に発生する核廃棄物のプルトニウムは蓄積されていく。これは原爆の材料を保持し蓄積しているということでもある。だからこそ、プルトニウムとウランを混合したMOX燃料を使用するプルサーマル原発を再稼働すると同時に、高速炉開発をさらに強行し続けることを、世耕は企図しているのだ。核兵器の技術と材料を保持していくということである。
 安倍政権は、派兵―参戦を強行するがゆえに、戦争総動員体制構築に向けて治安弾圧を強化してきた。伊勢志摩サミットでの弾圧、沖縄反基地運動への弾圧、国家権力にはむかう勢力に対する事前弾圧、事後弾圧を激化させている。刑事司法改悪を強行してきた安倍政権は、改めて共謀罪新設に踏み込もうとしている。

 ▼2章―2節 アベノミクスの破綻

 安倍政権は戦争法―派兵強行の一方で、アベノミクスで全面的に景気回復するというデマゴギーをばらまき、また選挙のたびに消費増税を先延ばしするという方便をもって、国政選挙を勝ち抜いてきた。しかし、昨年の新たな経済状況は、このアベノミクスのメッキを完全に剥ぎ取り、その階級的本性を鮮明にするものとなった。
 アベノミクスの「第一の矢」であった金融政策の失敗である。
 日銀が一三年に必ず達成できるとしていた「2%インフレ目標」はこれまでも先延ばしされてきたが、昨年十月三十一日、十一月一日に行なわれた日銀金融政策決定会合において、黒田総裁自身が五年の任期期間中においても達成できないことを認めたのである。事実上の敗北宣言である。
 黒田バズーカなどと名付けて極端な金融緩和を行い、その資金が株式市場などに流れ込んで、安倍政権発足時の株価上昇に結果した。安倍は「景気回復」「アベノミクスの成功」だと喧伝した。これが安倍政権の支持率にも貢献した。
 しかし、黒田がやってきたことは、日銀が日本国債を大量に買い入れることをもって金融の量的緩和を行なって株価を吊り上げ、一方では政府がいくらでも赤字国債を発行できる条件を作ることでもあった。金融資本、金融投機資本にとっては収益が上ることにはなったが、民生につながる経済効果は何もなかった。
 黒田は昨年九月段階で「量的緩和から長期金利重視へ」という言葉で金融政策の路線転換に言及した。しかし、日銀が日本国債を買い支える構造をつくり出してしまった現在、これを一挙に転換することはできなくなっている。
「第二の矢」であった財政政策は危機に瀕している。
 安倍政権はその放漫財政によって、財政赤字を拡大し続けている。安倍政権は法人税減税を強行し、一方では消費税増税延期を「政権の決断」と演出して衆院選、参院選を乗り切ってきた。昨年七月の参院選に際しては、直前の伊勢志摩サミットでの首脳宣言における世界経済分析を大きく捻じ曲げて「世界経済危機」を騙り、消費増税延期の「根拠」をでっち上げた。
 減税ポピュリズムというべき安倍は、日銀の国債買い支えによって財政赤字を省みずに財政出動を続けてきた。政権維持のために財政破綻の道をひた走っているのである。
 「第三の矢」の「成長戦略」はどうか。
 「成長戦略」の柱と位置づけてきたTPPは、次期米大統領トランプが一月二十日の就任日に離脱通告を行なうと決定している。TPPは条約発効の条件として、域内の国内総生産(GDP)の「85%以上を占める六カ国以上」の批准が必要と取り決められている。米国(60・3%)か日本(17・7%)のいずれかが批准しなければ成立できない規定になっているのだ。
 安倍政権は昨年秋の臨時国会で、このTPP条約批准を最大の焦点にして、数の力で強行採決をくり返した。安倍政権はTPPをもって、国内農業を全面的に犠牲にし、ISDS条項を受け入れて人民の生活より企業経営を選択することを鮮明にした。安倍政権は、TPPを「成長戦略」の柱とすると同時に、経済政策における日米同盟とも位置付けてきた。
 安倍晋三は、日本が批准すれば、トランプの翻意も引き出せると考え、大統領就任前のトランプの自宅を訪問した。しかし、保護主義を最大の政策に掲げて大統領選に勝利したトランプにとってTPP離脱は重要な公約であり、これを翻すことはなかった。安倍政権が最も力を傾注してきた経済政策・外交政策が潰えたのである。
 安倍政権がその政権維持の「根拠」としてきた経済政策―アベノミクスがことごとく破綻したことは、昨年秋の重要な事態である。
 安倍政権は何に向かって進むのか。三本目の矢「成長戦略」のTPPが潰れた中で、資本にとって利潤を拡大するには、労働法制改悪による搾取の徹底以外にはない。労働法制改悪による非正規化を進めてきた安倍政権は、さらに資本の利害を貫き労働基準法そのものの改悪による労働者の権利剥奪に踏み込んでくるだろう。完全にメッキの剥がれたアベノミクスは、労働者人民にとっては貧困化と格差拡大そのものなのである。

 ▼2章―3節 日帝足下階級闘争の課題

 二〇一七年、世界各国でこれまでとは違う変動が始まっている。根本的には新自由主義グローバリゼーションの破綻というべき事態の中で、各国の経済政策や軍事・外交政策だけではなく、国内支配体制そのものを大きく変容せざるをえない状況に至っている。
 労働者階級人民は、その下層労働者が貧困にあえいでいるというだけではない。正規雇用労働者まで含めて、多くの労働者が厳しい労働条件、賃下げ、増税、社会保障の削減の中で、生活の展望を持てなくなっている。資本主義社会にしがみついて、いつか景気が良くなるという展望を、労働者人民の多数が信じなくなっている。
 オバマ政権の下でも「変化」は起こらなかった。このままでは暮らしていくことができない。現状を打破するものをとにかく選び取ろうとしているのだ。労働者階級としてはっきりと階級的立場にたった主張とたたかいが大きく伸張する一方で、排外主義、保護主義、自国の利害だけを主張する極右の主張が大きく支持を得ている現実がある。
 日本においても、〇八年以降、一一年以降、階級闘争は新たな攻防に突入しているではないか。
 金融恐慌の中で派遣切りが横行し経済矛盾が徹底的に労働者人民に押し付けられた。東日本大震災―福島原発事故以降、反原発闘争が全人民的に高揚してきた。日本資本主義の危機の中で安倍右翼反動政権が登場し、アベノミクスで景気が浮揚し、そのトリクルダウンで労働者も豊かになるという幻想をばら撒いた。異次元金融緩和と放漫な赤字財政、そして「成長戦略」。しかし、それは新たな産業や技術革新を生み出すものではない。労働法制の改悪を徹底して、劇的に搾取を強めることであった。日本の労働者は、アベノミクスによって本当に殺されてきた。過労死、自死に直面する労働を強制されている。
 日本の労働者階級は、派遣切りに対してたたかい、非正規労働者・下層労働者が団結して労働組合に結集する構造を創り出すために努力してきた。労働者―労働組合の反戦闘争、反基地闘争への決起を促進してきた。
 3・11福島原発事故が根本的に収束できない状況の中で、福島の人々と結び反原発闘争は粘り強くたたかわれている。沖縄―辺野古・高江の基地建設を阻止するたたかいがオール沖縄へと大きく発展してきた。二〇一五年の戦争法反対闘争において、十万人以上の人民が国会を包囲し、安倍政権打倒闘争が前進した。
 日本人民のたたかいはこれからである。二〇一七年、安倍政権は戦争と改憲、労働法制改悪、弾圧強化に突き進んでくるだろう。日本においては、政府そのものが排外主義に立脚している。この安倍政権との対決は本年、いよいよ本格化する。
 戦争と排外主義の激化をもって資本主義が延命することを許してはならない。破滅に突き進む現代資本主義に対してなすべきことは、労働者階級人民の利害に立脚したプロレタリア革命の前進だけである。


 

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