共産主義者同盟(統一委員会)


1507号(2017年7月5日) 政治主張






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  改憲攻撃粉砕! 安倍打倒

  安倍「働き方改革」弾劾

  共謀罪法を廃止せよ!





 六月十五日朝、安倍政権は共謀罪法案を強行採決した。世界的な資本主義の行き詰まりの中で、貧困と格差の拡大に対する怒りが高まり、支配階級は統治を危うくする事態に直面している。安倍政権は資本主義体制の延命のために全力で強権的な統治機構の確立と戦争準備を急速に進めている。第一次安倍内閣は二〇〇七年五月、「日本国憲法の改正手続に関する法律(国民投票法)」を成立させ、第二次安倍内閣では二〇一三年五月、マイナンバー法成立、十二月、国家安全保障会議設置法と秘密保護法の成立、第三次安倍内閣では二〇一五年六月、改悪防衛省設置法を成立させて文官統制解体に着手した。続いて九月には戦争法を成立させた。そして本年共謀罪の成立をだましうち手法で強行した。安倍は今、二〇二〇年改憲へと突き進もうとしている。人民に情報を与えず、情報操作した上で管理と統制を強化し、抵抗勢力を弾圧して、戦争遂行のための体制を強化していく安倍政権の意思が明確に表れている。絶対に許してはならない。安倍政権を打倒し、共謀罪・戦争法・秘密法を廃止しよう。

  ●第1章 共謀罪を廃止せよ! 安倍政権打倒

  ▼1章―1節 安倍政権のデタラメ審議採決強行弾劾


 「共謀罪」は過去三回、廃案になっている。三月二十一日、四度目に提案された共謀罪は四月六日衆院本会議で審議入りした。四月十四日から衆院法務委員会で審議されてきたが、金田法務大臣のデタラメな答弁をめぐり委員会は紛糾し続けた。政府は審議時間三十時間を超えたとして五月十九日、委員会の審議を打ち切り、可決。五月二十三日衆議院本会議で可決。六月十四日参院法務委員会の審議を打ち切り、「中間報告」を強行。十五日参院本会議で強行採決し、自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で法案は成立した。投票総数は二百三十五票、賛成は百六十五、反対は七十だった。六月二十一日公布され、七月十一日に施行されることが確定した。
 共謀罪は適用対象を「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」と規定し、集団の活動として、二人以上で犯罪を計画し、うち一人以上が計画に基づく「実行準備行為」を行った場合に、計画した全員を処罰可能としている。対象犯罪は当初の六百七十六から二百七十七に削減された。だがこの削減過程では、除外対象として警察などの特別公務員職権濫用・暴行陵虐罪や公職選挙法・政治資金規正法違反・政党助成法違反・職権乱用罪など、公権力を私物化する罪、また、規制強化が国際的トレンドになっている民間の賄賂罪などがある。政治家や警察を取り締まる犯罪を外しておこうという狡猾な意図が丸見えだ。
 共謀罪をめぐる国会審議は迷走した。一月二十三日衆院本会議で安倍首相は「一般人は捜査、処罰の対象にはならない」と明言したが、四月二十一日の衆院法務委員会で森山法務副大臣は「一般人が捜査対象にならないことはない」と答弁し、金田法相は五月八日に「一般人は(共謀罪で)告発されても捜査対象にはならない」と捜査実務と矛盾する答弁を行ったが、六月一日には「組織的犯罪集団とかかわり合いがある『周辺者』が処罰されることはありうる」と答弁している。法案の提出者自身が理解していない無責任さに審議は紛糾し、「共謀罪」の本質はまったく明らかにならないまま、採決が強行された。「一般人は対象にならない」というのは真っ赤な嘘である。
 共謀罪の問題以前に、加計学園問題の追及逃れや東京都議選対策で、審議打ち切りを強行し、国会の幕引きをはかった安倍政権の横暴を許すことはできない。議会的手続きすら踏みにじって、共謀罪を成立させ、監視と支配を強化しようとする安倍政権をただちに政権の座から引きずり降ろす人民の強力なたたかいが求められている。
 共謀罪は、パレルモ条約締結のために必要と説明されてきた。パレルモ条約は、二〇〇〇年十一月国連総会で「国際組織犯罪防止条約」として採択された。その内容は、組織的な犯罪集団への参加・共謀や犯罪収益の洗浄(マネー・ロンダリング)・司法妨害・腐敗(公務員による汚職)等の処罰、およびそれらへの対処措置などについて定めている。二〇一六年十月現在、百四十七ヵ国が署名し、締約国は百八十七ヵ国となっている。
 共謀罪新設の動きはこの条約締結を機にはじまっている。今回の共謀罪法案を安倍政権は、パレルモ条約の締結に必要だと説明し続けてきたが、すでに予備罪や抽象的危険犯の広範な処罰規定があり、条約締結のために共謀罪立法は必要ない。そもそも二〇〇四年に国連が出した公式の「立法ガイド」にも、共謀罪処罰の導入は義務でないと明示されている。締約国百八十七ヵ国の内、条約締結のために共謀罪を新設したとされているのは二ヵ国のみである。条約締結に共謀罪が必要不可欠というのは安倍政権の嘘である。
 また、安倍首相は一月二三日衆院本会議で「共謀罪と呼ぶのは全くの間違いです」と言い切り、「テロ等準備罪」と言いくるめて、「これがなければオリンピックを開催できないといっても過言ではない」と繰り返し述べていた。しかし、法案の中には、「テロ」のための条文は一ヵ条も存在していない。政府の犯罪対策計画においてオリンピックのための共謀罪立法が論じられたことはなく、共謀罪立法が「テロ対策」の一環として位置づけられたこともない。これが安倍政権の三つ目の嘘である。

  ▼1章―2節 共謀罪は現代版治安維持法だ

 共謀罪はさまざまな問題点が指摘されているが、本質的な問題は刑法の原則を根本的に変えてしまうものであるということだ。日本の刑法は、「犯罪の実行に着手」することを構成要件としており内乱陰謀などの例外的な要件に該当しない限り処罰することができない。したがって強制捜査をすることもできない。しかし、共謀罪は「犯罪の実行に着手」する以前に捜査・処罰するものである。そのために事前に共謀の情報を察知する必要があり、現に盗聴法の拡大などが予想されている。また、共謀罪のあるアメリカなどでは、おとり捜査や意図的な罠、密告、でっち上げによる人権侵害や冤罪の多発が問題になっている。
 警察の捜査権限の無限定な強化・拡大に対する制限として、裁判所の令状があると政府は説明しているが、いまでも「(捜査令状の)自動販売機」と揶揄される裁判所が不当・違法捜査の制限になると期待することはできない(裁判所の通信傍受令状の却下率は3%にすぎない)。また、不当捜査への不服申し立てもほとんど役に立っていない。すでに、令状なしの違法な捜査は進んでおり、令状なしGPS捜査が最高裁判所まで争われてやっと「違法」と判断されたが、最高裁判決はGPS捜査の立法の必要性をもつけ加えている。今後新たな法律で合法になる可能性もある。
 第二に、適用対象が限定されないことが大きな問題だ。「テロリズム集団」「組織的犯罪集団」なる規定をもって、政府にモノ言う運動や団体を根こそぎ口封じすることが狙われている。「組織的犯罪集団」をどのように定義するのか、認定や指定が不要だということだ。「周辺者」という無制限の範囲も対象にされる。刑法学者の高山佳奈子京大教授は、最高裁判例を例示して「一般の集団がある時点から組織的犯罪集団とみなされることになる」、「犯罪を行う計画についての『合意』は、やはり法案上限定されていないため、従来の共犯処罰に関する最高裁判例に従って解釈されることになる。すなわち、暗黙のもので足り、ツイッターやフェイスブックなどSNSを用いて順次成立する場合もある」と共謀罪の危険性に警鐘をならしている。
 第三に、警察権力の無限定な拡大である。
 捜査する警察の権限が無限定に広がるということである。警察が「疑わしい」と思うだけで共謀罪の捜査対象になり得る。犯罪のないところにも捜査と犯罪を生み出すということだ。反政府組織と運動に予防反革命弾圧を合法的にかけられる立法―弾圧体制を構築しようとする攻撃だ。すでに、共謀罪成立前からこのような警察権力の強化ははじまっている。軽微な違法行為(またはその疑い)を口実にした弾圧と人権剥奪が進んでいる。沖縄平和運動センターの山城博治議長は名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブゲート前の工事資材の搬入阻止闘争における「威力業務妨害」の口実で五ヵ月間も拘留された。また、米軍Xバンドレーダー基地反対運動に対しては、二〇一五年の道路運送業法違反を口実にした逮捕と大規模な家宅捜索、二〇一六年の会議室予約名が主催団体と違うことを口実とした「詐欺罪」での逮捕と家宅捜索など、同様の事態は枚挙にいとまがない。共謀罪成立は、警察の不当な弾圧が今後はますます大っぴらに、「合法」的に進むということを意味している。捜査・処罰の対象が無制限で、「犯罪」の事実が無くても捜査対象にするものだ。さらに「準備行為」の要件が曖昧で、どのような日常的な行動も警察が「準備行為」とすれば、捜査対象とされる。このような恣意的な捜査・処罰が無制限に「合法」とされる。
 第四に、強力な監視社会が作られるということである。共謀罪の曖昧性はこれまでも問題になってきたが、「共謀」の情報をつかむための監視が強まることが容易に予測される。LINEやメール、スマートフォンに限らず携帯電話も現在でもすでに監視対象となっている。令状捜査はもちろん、通信各社は捜査協力を求められたら任意に個人情報や通信情報を提供している。金融機関も同様である。共謀罪下の社会では、警察は疑いをもてばより大っぴらにこうした捜査を実行するということだ。このような監視体制に対して、国連のプライバシー権に関する特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏は、五月十八日に安倍首相あての書簡を発し、共謀罪(テロ等準備罪)について「そのような『計画』と『準備行動』の存在と範囲を立証するためには、論理的には、起訴された者に対して、起訴に先立ち相当程度の監視が行われることになると想定されます。……法律の広範な適用範囲によって、プライバシーに関する権利と表現の自由への過度の制限につながる可能性があります」とする警告文を公開している。
 戦争法の発動によって世界中で米軍と共に戦争できる国へと歩を進めた安倍政権は、共謀罪を成立させて、監視と弾圧を強め、国内においては共産主義者、反帝闘争をまずもって封じ込めようと狙っている。さらには「組織的犯罪集団」の「周辺」に対しても際限のない弾圧拡大を企図している。あらゆる抵抗勢力を根こそぎにすることが安倍政権の狙いである。総力をあげて、共謀罪・戦争法の廃止に向けてたたかおう。安倍政権を打倒しよう。

  ●第2章 関電高浜原発再稼働強行弾劾

  
関西電力は多くの市民の反原発の声を踏みにじり、五月十七日の高浜原発四号機再稼働に続き、六月六日、三号機を再稼働した。高浜原発一・二号機は稼働四十年を超えた老朽原発であり、三・四号機も三十年を超えている。二〇一六年三月九日、福井県に隣接する滋賀県の住民の訴えを認め、大津地方裁判所は三・四号機の運転停止を命じる仮処分の決定を行った。
 その後、六月二十日に一・二号機について、原子力規制委員会が、運転を最長二十年間延長することを全会一致で認めた。建設から四十年超の老朽原発で審査に合格し延長が許可されたのは初めてである。これに対して高浜原発に隣接する音海地区の自治会は原則四十年と定められている原発の運転延長に反対する意見書を十二月十八日に採択し、関西電力、福井県、高浜町に提出した。音海地区の反対に驚いた関西電力は地区の新年会で「米国では六十年超えて稼働している」などと説明し住民の怒りを一層かきたてた。音海地区では「延長反対」の看板やのぼり旗を立てて、老朽原発再稼働反対の意思を示している。
 本年三月二十八日、大阪高等裁判所は三・四号機の運転を認める不当決定を行い、これを受けて関西電力は三・四号機の再稼働を強行した。関西各地をはじめ、東京からの参加も含め、原発前に百名を超す市民が集まり、再稼働反対の緊急行動をたたかった。若狭の原発を考える会を先頭に、長期にわたって粘り強い宣伝や町内をくまなく回るデモ、各市町村への申し入れなどが取り組まれ続ける中で、長期間原発と共存を強いられてきた住民たちの中に変化が生まれてきている。
 三号機再稼働当日の六月六日には、茨城県大洗町の日本原子力研究開発機構大洗研究所でウランやプルトニウムの粉末による汚染事故が発生し、作業していた五人が被曝するという深刻な被害が発生している。トップレベルの知識と技術を持っているはずの研究所でウランやプルトニウムが極めてずさんな取り扱いをされていることに明らかなように、原子力に慣れ、安全軽視が蔓延している。原子力の安全な利用など全くの絵空事でしかない。すでに世界の趨勢は原発廃止へと歩みをはじめている。韓国でも古里一号機を永久停止することが決定され、文在寅(ムンジェイン)大統領は十九日「脱原発を推し進める」と宣言した。文大統領は「福島原発事故後、先進国は脱原発に向かっているが、わが国は安全性を後回しにした結果、世界で最も原発が密集する国となった……韓国も地震安全地帯ではない」と表明している。日本列島全体が地震・火山活動の活発期に入っている現在、原発の再稼働は市民の生命を危険にさらす。原発は地震や火山などの自然災害をさらに深刻な人災へと導くものでしかない。再稼働絶対反対、一刻も早い廃炉を実現するためにたたかおう。

  ●第3章 辺野古新基地建設阻止、岩国基地強化反対

 安倍政権は、岩礁破砕許可が三月末で期限切れになったにもかかわらず、許可を更新しないまま、四月二十五日に辺野古埋立て工事に踏み込んだ。資材を積み込んだトラックに対してキャンプ・シュワブゲート前では基地建設反対の連日の座り込み行動がたたかいぬかれている。海上では抗議船の抗議が続いている。沖縄の島ぐるみのたたかいは一歩も引くことなく、続いている。安倍政権の違法な工事強行を許すことはできない。六月二十一日には名護市久志地域の平和祈願祭が大浦湾に面した瀬嵩で開かれ、稲嶺進市長は戦没者に対し、「この地に決して新たな基地を造らせないことをあらためて誓う」と語り掛けた。
 翁長知事は六月二十日、沖縄「県」議会(新里米吉議長)の六月定例会本会議で、政府―沖縄防衛局の暴挙に対して、工事差し止め訴訟を提訴する議決案を提案した。六・一〇国会包囲行動をはじめ、全国で辺野古新基地建設阻止のたたかいは拡大している。安倍政権の戦争政策の根幹たる辺野古新基地建設阻止を全力でたたかおう。
 岩国では、市議会の最終日である六月二十三日に福田市長が市民の声を無視して米空母艦載機部隊の移転受け入れを表明した。米軍再編に伴い、主力戦闘攻撃機FA18スーパーホーネットなど計六十一機の厚木基地から岩国基地への移駐は早ければ七月中にも始まり、米空母艦載機部隊は来年五月までに移転完了するとされている。岩国基地は米軍機約百二十機を擁する極東最大級の米軍航空基地となる。基地の米軍関係者は一万人超となる。「愛宕山を守る会」の岡村寛世話人代表は「スーパーホーネットは厚木周辺の騒音の主因で、米兵による事件、事故も増えるだろう」と抗議している。
 朝鮮民主主義人民共和国のミサイル発射で、米軍基地が標的になり岩国市民も危険にさらされるのではないかという不安が広がっている。愛宕山跡地に建設された米軍住宅には、地下シェルターが設置されているのに比して、市民には避難訓練と防災無線の配布で基地との共存を押しつけようと政権はやっきになっている。このアンバランスが市民の不安といら立ちを一層強くしている。
 戦争への道をばく進する安倍政権下で、日米軍一体化はますます強力になり、アジアの軍事緊張が高まる。
 沖縄、岩国、京丹後、横田など全国の反基地闘争をつなぎ、反戦―反基地闘争をさらに発展させよう。


 

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