共産主義者同盟(統一委員会)


1539号(2019年1月1日) 政治主張(第一新年号)






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  混迷し対立する現代帝国主義

 打ち倒す国際共産主義運動を

 安倍独裁に全人民の怒りを!



【情勢分析】



 現代世界は大きく激動している。帝国主義諸国は中東をはじめとする各地で侵略戦争と軍事介入を続け、労働者人民を戦乱に叩き込み、その生命を奪っている。そしてまた、新たな世界的な危機の予兆に怯えながらも、あくなき利潤の追求のために新自由主義政策を推進し、貧困と格差を一国的にも国際的にも拡大し続けている。日本においては、安倍右翼反動政権が侵略戦争体制の強化をますます図り、辺野古新基地建設をおし進め、さらに具体的な憲法改悪策動に踏み込んできている。そして、治安弾圧体制を強めながら、資本の利害のために労働者人民にさらなる貧困と強搾取を押し付けようとしている。
 だが同時に労働者人民は、資本と国家権力による激しい攻撃と対峙して、各地で帝国主義の世界支配を揺るがす闘いを前進させている。とりわけ東アジアにおいては、韓国での労働者人民の闘いの前進を背景として、朝鮮半島情勢の歴史的な転換がかちとられた。到来したこの新たな情勢は、日本の労働者人民に対して新たな課題を浮上させ、そのような時代に対応した日本階級闘争の前進と飛躍を実現していくことを要求している。
 今年二〇一九年には、天皇の代替わりや改憲策動の具体化、大阪でのG20首脳会合の開催などの重大な政治日程が待ち受けている。また、連日の辺野古埋め立て阻止の闘いや、三里塚闘争における市東さんの農地の強制執行を阻止するための決戦的闘いをはじめ、多くの緊迫した闘争課題が存在する。労働者人民にとって、今年はあらためて「闘いの年」となるであろう。われわれ共産主義者同盟(統一委員会)は、全国の労働者、青年・学生の皆さんと共に、一連の政治攻防を全力で闘い抜いていく決意だ。
 今号の論文では、激動する国際情勢とその背景を捉えつつ、今日の国際階級闘争の特徴と課題を指摘する。加えて、労働者人民が打倒すべき安倍政権とその攻撃の階級的性格を端的に批判する。
 続いて次号に掲載する第二論文において、「改憲・戦争・天皇制」という安倍政権による階級支配の再編をかけた攻撃に対するわれわれの分析と批判をより具体的に明らかにしつつ、昨年の闘いの総括および今年の階級闘争と党建設の任務・方針を提起する。
 全国の闘う労働者、青年・学生の皆さん! 共産主義者同盟(統一委員会)に結集し、安倍政権を打倒する労働者人民の階級闘争の前進をかちとり、反帝国際共同闘争をさらに発展させ、国際共産主義運動の歴史的な再生を実現するために、共に闘おう。

 ●第一章 米帝の歴史的没落と激動する国際情勢

 米帝の歴史的没落の趨勢は、今日ますます明白なものとなっている。米帝は資本主義世界体制を編成する中心国としての位置と役割を低下させ、また、帝国主義の世界支配秩序をその圧倒的な軍事力をもって維持するための力を減退させてきた。「米国を再び偉大な国にする」というスローガンを呼号するトランプ政権が歴史の舞台に登場したことそれ自体が、そのような世界史的な変動のなかでの一つの象徴的な出来事であった。
 歴史的な大きく深い変動を基底に置くがゆえに、帝国主義諸国間の対立、および、米帝を先頭とする帝国主義諸国と中国やロシアなど世界的大国との間の対立は、ますます拡大し深刻なものになっていかざるをえない。それは世界各地の情勢を激動させ、労働者人民の新たな闘いを生み出し、帝国主義による既存の世界支配秩序をいっそう深く揺るがしていくであろう。
 実際に、「米国第一主義」を掲げ、主要に国内製造業を保護するための「貿易戦争」を推進する米帝―トランプ政権の動向は、世界の政治と経済に激動をもたらし、帝国主義の世界支配体制、資本主義世界体制に亀裂をつくりだし、それをいっそう拡大するものとなっている。
 昨年六月のカナダ・シャルルボワでのG7首脳会合(サミット)は、帝国主義間対立の激化とそのなかでの米帝の孤立を端的に示すものであった。トランプは「多国間ルールにもとづく貿易の推進」という文言を首脳宣言に明記することを拒み続けたあげく、途中退席した。腕組みして口をへの字に結んだトランプを取り囲み、ドイツの首相メルケルらが身を乗り出して談判する様子は、今日のG7のあり様を象徴する戯画として広く世界に報道された。さらに、一一月に開催されたパプアニューギニアでのAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会合は、「貿易戦争」の最大の対象とされている中国による米国の保護主義的関税政策への批判とそれに対する米国からの激しい反発のなかで、一九九三年の開始以来初めて首脳宣言を取りまとめることができないままに終了した。
 一一月末から一二月初頭にかけてアルゼンチン・ブエノスアイレスで開催されたG20首脳会合もまた、米国の抵抗によって首脳宣言に「保護主義と闘う」という文言を盛り込むことができなかった。G20はリーマン・ショックがもたらした世界金融恐慌の勃発という事態に対応する新たな多国間協調の枠組みとしてつくりだされてきたが、米帝の振る舞いがこの新たな政治的枠組みの存在意義を問うような深刻な亀裂を生み出している。金融独占資本および多国籍企業の利害を背景にして米帝が先頭になって推進してきた新自由主義グローバリゼーションは、いまや当の米帝自身が保護主義的関税政策を強固に打ち出すところにまで大きく矛盾を拡大させた。同時に、トランプ政権が推進する「貿易戦争」は、米国のブルジョアジー全体の利害を代表しうるものではなく、それゆえに米帝支配階級内部の矛盾をも深化させていかざるをえない。
 トランプ政権の動向のいま一つの特徴は、軍産複合体の利害と一体となった軍備の拡大と武器輸出の推進であり、中東における支配秩序の維持のための軍事介入の継続である。
 実際、トランプ政権は中東における戦乱を拡大している。昨年四月、米帝はシリアのアサド政権が化学兵器を使用したと一方的に断定して、イギリスやフランスと共にシリア空爆を実施した。それは一昨年四月の空爆に次ぐ、帝国主義諸国による二度目のシリアへの直接軍事介入であった。化学兵器禁止機関(OPCW)による調査も待たずに行われたこの攻撃が、アサド政権との関係を強めるロシアやイランと対抗し、中東における自らの覇権を誇示するためのものであったことは明白だ。ただそのために多くの人々の生命が奪われてきたのである。
 トランプ政権はまた、エルサレムを「イスラエルの首都」と認定し、昨年五月一四日には米大使館のエルサレムへの移転を強行した。この日は「イスラエル建国」七〇年にあたり、難民になることを強いられたパレスチナ人民の怒りが爆発するのは当然のことであった。イスラエル軍はそれに銃撃をもって応えた。その後も米国は国連人権理事会を脱退し、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金拠出を凍結するなど、イスラエルを庇護する姿勢を鮮明にしている。それがパレスチナ人民の抵抗とアラブ諸国の批判を拡大させていくことは必至である。
 さらに米帝は今日、イランをその最大の恫喝対象とし、圧力を強めている。トランプ政権は昨年五月にイラン核合意から一方的に離脱した。八月にはイランに対する独自の経済制裁を発動し、一一月には「最大限の圧力」としてそれを大幅に強化した。イランが中東に及ぼす「悪影響」に対抗するために「必要とされるあらゆる措置」を講じるというポンペオ国務長官の発言(昨年五月)が示すように、トランプ政権はイランに対する軍事的手段の発動の可能性を含む恫喝を続けている。しかしそれは、イラン核合意を結んだ英仏独中ロをはじめ各国からの非難を浴び、国際政治にますますの亀裂と混乱をもたらしている。
 トランプ政権はまた、昨年一〇月にはロシアと結んだ中距離核戦力(INF)全廃条約の破棄を表明し、核ミサイル開発の拡大へと突き進もうとしている。トランプ政権は一昨年二月の「核態勢見直し」(NPR)で新たな小型核兵器の開発や潜水艦から発射できる核巡航ミサイルの開発を目指すと表明してきたが、加えてこのINF条約の破棄によって、同条約が禁じてきた中距離核ミサイルの開発へと向かおうとしている。このような状況の下で、米国の軍事関連予算は二〇一九会計年度(一八年一〇月~一九年九月)で総額七一六〇億ドル(約七八兆円)にまで膨れ上がり、前年度比で13%も増加し、過去九年間で最大規模に達した。それは米国の財政赤字をさらに悪化させつつ、大国による軍拡競争を助長させていくものとなる。
 ところで、トランプは東アジアにおいては、朝鮮民主主義人民共和国の金正恩(キムジョンウン)国務委員長との歴史的な6・12米朝会談を行い、その後実際に米韓合同軍事演習を中止あるいは縮小したりするなど、中東における振る舞いとは異なる対応をとっている。それは、米帝がかつてのような「二正面戦略」を構えるだけの軍事的・財政的な力をもはや減退させてきたこと、後に述べるような中国の地域的・世界的な大国としての台頭、そして何よりも「ろうそく革命」という形をとった韓国の労働者人民の闘いの前進とそれを背景にした文在寅(ムンジェイン)政権の発足という歴史的条件の上に成立したものである。労働者人民の闘いが朝鮮半島の歴史的な情勢転換を切り拓き、トランプ政権にそれを強制してきたのであり、その逆ではないのである。
 加えてトランプ政権は、白人優越主義を助長し、中南米からの移民キャラバンに対する攻撃的言辞と国境地帯への軍隊の派遣に象徴される差別的移民政策と排外主義煽動を拡大してきた。このような差別排外主義の拡大もまた、トランプ政権の、そして現在の帝国主義諸国に共通する特徴の一つである。
 EU諸国もまた新自由主義グローバリゼーションの荒波にさらされ、経済的・政治的矛盾を拡大させてきた。二〇一六年のイギリスによるEU離脱決定は、まさに新自由主義グローバリゼーションの矛盾の深まりの結果であり、その政治への反映であった。周知のように、イギリスは第二次世界大戦を前後して米国に覇権を譲り渡すまでは世界資本主義の中心国として存在した。そのイギリスによるEU離脱決定は、ヨーロッパという一地域の問題ではあれ、「米国第一主義」を掲げたトランプ政権の登場とともに、資本主義世界体制の歴史的な変動を象徴する重大な事態であった。それは進められてきた欧州統合に明白な形での亀裂をつくりだし、昨年のイタリア総選挙でのEUに批判的な「五つ星運動」の勝利による新政権の発足などの形でいっそう拡大している。
 EU諸国が直面してきた問題のひとつとして、とりわけ二〇一五年に顕在化したいわゆる「難民危機」がある。帝国主義による侵略戦争・軍事介入の結果としてつくりだされてきた中東や北アフリカでの戦乱の拡大のなかで、その惨禍から逃れるために百万人を超える人々が難民となって欧州諸国へと殺到した。それは帝国主義の世界支配の結果であり、各国による対応は欧州社会の中にある差別排外主義の問題をあらためて大きく浮かび上がらせた。今日、欧州への難民の移動自体は大きく減少しているが、この問題は各国での移民・難民の排斥を主張する排外主義政治勢力の台頭・拡大として、今日まで継続している。
 また、EU諸国を直撃してきた問題として、二〇一〇年以降に相次いで発生した国家財政危機とその連鎖がある。そのなかで最も深刻な危機にあったギリシャについては、今年一〇月、EUによる金融支援がようやく終了した。しかし、債務危機の再燃の可能性は依然として継続している。
 このようななかで中国は、その世界的大国としての位置をますます鮮明化させている。中国はこの間、アジア・インフラ投資銀行(AIIB)を設立し、東アジア包括的経済連携(RCEP)協定締結交渉のなかに自らの位置を確保し、アジアからヨーロッパ・アフリカまでを結ぶシルクロード経済圏(一帯一路)構想を推進することを通して、アジア太平洋地域および世界における経済・貿易秩序を主導的に再編成していこうとする動きを強めてきた。帝国主義諸国はそれに対抗しつつも、もはや完全に無視することはできなくなっている。
 米帝―トランプ政権の保護主義的関税政策に対して、中国は「自由貿易体制の堅持」を主張してきた。その姿は、孤立する米帝と比して、中国の世界的大国としての台頭をますます印象付けている。一昨年一〇月に開催された中国共産党第一九回大会において、国家主席である習近平(シー・ジンピン)は「新時代の中国の特色ある社会主義」の下で、中国は「世界の大国」となり、「世界の舞台の中心に立ち、人類により大きな貢献をする時が来た」と豪語した。だが、その「社会主義」はもはや内容を伴うものではなくなっている。かつてソ連とは異なる一つのモデルとして植民地・従属国の労働者人民をはじめ多くの人々の社会主義へと希望を組織し、国際共産主義運動の中で大きな位置を占めた中国スターリン主義は、今日では国家的計画の下で資本主義化を推進し、資本主義的自由貿易体制を擁護する世界的大国として台頭した。しかし、格差と貧困の拡大など内部矛盾は深く蓄積し続けており、習近平体制はその爆発を抑えるために統制を強化している。
 総括的に言って、われわれは今、世界史の地殻変動とも言うべき状況のただ中にある。米帝の歴史的没落の趨勢がますます鮮明になる中で、帝国主義諸国は相互の対立を強めつつ、国内外を貫いて労働者人民の犠牲を拡大させている。それは戦争・貧困・排外主義という激しい攻撃として世界各地の労働者人民にかけられている。労働者人民の側からすれば、反戦・反貧困・国際連帯の闘いとその世界的な結合を促進していくことが国際階級闘争の共通課題となり続けているのである。

 ●第二章 世界資本主義の危機の現段階

 二〇〇八年の「リーマン・ショック」から一〇年を経て、世界資本主義は今日、新たな形での危機へと向かい、その爆発を日々準備しつつある。それは資本主義というシステムが景気循環を決して克服できないという根本的な意味合いにおいてのみならず、先送りされてきた諸矛盾がここに至っていよいよその煮詰まりを迎えているからである。以下、この一〇年間の流れを簡潔に振り返りつつ、それが国際的な階級情勢にもたらした影響を検討し、世界資本主義の危機の現段階を見ていきたい。
 二〇〇七年に始まった米国での住宅バブルの崩壊は、「金融工学」などと称して貧困層からの収奪強化の仕組みを編み出してきた金融投機資本の貪欲で野放図な行動がもたらしたものであり、それは二〇〇八年九月に米国の大手証券会社リーマン・ブラザースの破綻という象徴的事態を結果した。同時にそれは、米国発の世界金融恐慌として瞬く間に拡大し、実体経済へと波及した。米国では自動車大手のGMやクライスラーなどが経営破綻に陥った。日本でも急激な円高のあおりを受け、トヨタやホンダなど多くの企業が大打撃を受けた。それは「派遣切り」に象徴されるように、幾重にも連なる下請け・孫請けの中小企業やそこで働く労働者たちにより深刻な影響をもたらした。米国や日本だけでなく、世界各地で無数の労働者人民がこの世界金融恐慌によって自らの生活を翻弄され、生存の淵へと陥らされた。
 このような事態に対して、米帝を先頭とする帝国主義諸国の政府がまず第一にとった行動は、巨額の財政出動によって破綻の危機に陥った大銀行・大資本を救済することであった。しかもそれは、緊縮政策による労働者人民への一方的な犠牲の強要と一対のものとして推進された。このことは国家の階級的性格をあらためて示すものであった。困窮する労働者人民の生活状況が顧みられることはなく、それは貧富の格差の拡大と固定化が示すように今日にまで至っている。
 二〇〇八年恐慌は「新自由主義グローバリゼーション」の破綻を示すものであった。ところで、資本主義というシステムはその延命のために新たな搾取・収奪の対象としての「外部」に働きかけ、それを既存の資本主義体制の内に編成していくという活動をたえず必要としている。いわゆる「資本のグローバリゼーション」は、マルクス・エンゲルスが一八四八年の『共産党宣言』で、「ブルジョアジーは、世界市場の開発を通じて、あらゆる国々の生産と消費とを超国籍的なものにした」、「ブルジョアジーは自らの姿に似せて一つの世界をつくりだす」等々と指摘しているように、資本主義の一般的傾向である。そのうえで、われわれが今ここで問題にしているのは、一九七四―七五年恐慌を経た一九八〇年代以降に英・米・日などの帝国主義諸政府が採用し、その後「ワシントン・コンセンサス」としてまとめあげられ、一九九〇年を前後するソ連・東欧スターリン主義政権の崩壊によって世界的に拡大してきた「国家が推進する新自由主義政策と一体となり、かつそれにより助長されてきた資本のグローバリゼーション」のことである。
 では、そのような「新自由主義グローバリゼーション」の破綻とはどのような意味合いにおいてなのか。そのひとつは、新自由主義政策の核心として新たな収奪の舞台をつくりだし拡大するために米帝を先頭に推進されてきた「金融の自由化」そのものが、新たな形の世界恐慌を招来させたという点にある。もう一つは、新自由主義政策を唱道する論者たち(諸政府も含め)が「小さな政府」を要求する市場万能論を唱えてきたにもかかわらず、破滅的な事態を回避し、大銀行・大資本を救済するために、国家によるなりふりかまわぬ財政出動が推進されてきたという点にある。IT技術の進展が景気循環を抑制・克服するといった米国発の「ニューエコノミー論」は、ブルジョアジーのあどけない願望として粉々にされた。また当時から、資本のグローバリゼーションが「国民国家」の位置を低下・相対化させるといった皮相な議論が存在したが、現実は資本の救済者としての国家の役割をより大きくクローズアップさせたのである。
 帝国主義諸政府は先に述べたようになりふりかまわぬ財政出動によって、大銀行・大資本の救済に向かった。しかしそれは危機の先送り策にすぎず、新たな危機を準備するものであった。現実には、巨額の財政出動が各国における財政危機をつくり出し、それが新たな金融危機の引き金となり、その連鎖をつくりだすという悪循環が生み出されたのであった。二〇一〇年以降のギリシャ、スペイン、ポルトガル、イタリア、アイルランドなどEU諸国を次々と襲った国家財政危機(ソブリン危機)の連鎖はその典型であった。そのうち、EUによるギリシャへの財政支援が終了したのは、ようやく二〇一八年一〇月のことであった。しかしその過程はブルジョアジーにとっても平坦な道のりではなく、EUが押し付ける緊縮政策に対する労働者人民の抵抗と反乱、それによる政治危機の招来、急進左派連合(シリザ)政権の発足とその妥協などの複雑なプロセスを経てようやく実現されたものであった。
 二〇〇八年恐慌はまた、G20という新たな国際政治の枠組みを生み出した。それは資本主義の世界的危機に対する帝国主義ブルジョアジーの一つの対応であった。だが同時にそれは、そのような枠組みなしには帝国主義がこの危機に対処できないことを示しており、それ自体が帝国主義の世界支配秩序、資本主義世界体制の動揺と再編を示すものである。しかし、このような多国間協調の枠組みをつくることが、持続する資本主義世界体制の危機そのものを解決するわけではない。むしろ今、米帝―トランプ政権による「貿易戦争」の発動によって、統一的世界市場とその防衛のための資本主義諸国による国際協調の枠組みが揺らぎ、対立と矛盾が深まっている。また、時期は前後するが、イギリスによるEU離脱決定も新自由主義グローバリゼーションの矛盾を反映した重大な政治変動であり、EUおよび国際的な政治諸関係に大きな影響を与えている。
 米国発の世界金融恐慌が生み出したものはそれだけではなかった。それは労働者人民の新たな闘いをも登場させた。階級闘争を推進し、資本主義社会を根底から変革しようとするわれわれにとっては、この点がより重要である。とりわけ「われわれは99%だ」というスローガンと共に二〇一一年に米国・ウォール街占拠として始まったオキュパイ運動は、帝国主義の心臓部から資本主義を告発する闘いとして世界に大きなインパクトをもたらした。この闘いは、それに先立って二〇一〇年から始まった帝国主義の支配秩序を揺さぶる中東・北アフリカでの一連の民衆蜂起、そして二〇一一年の3・11福島原発事故以降の日本での反原発闘争の高揚などと共に、人間の生活や生命よりも資本の利潤を優先する資本主義のあり様を告発し、問い返し、新たな社会への希求を内包する闘いとして全世界の労働者人民を鼓舞した。さらに、ギリシャ、スペイン、イタリアなどEU諸国で緊縮政策反対を掲げて新たに発足した政党が躍進した。それらは先行する中南米諸国での相次ぐ左派政権の成立とともに、新自由主義グローバリゼーションに対する労働者人民の痛烈な国際的反撃であった。
 しかしながら、このような労働者人民の国際的抵抗の拡大にもかかわらず、われわれが冷厳に確認しなければならないことは、破綻が明らかになっている新自由主義グローバリゼーションおよび各国政府による新自由主義政策が、今日においても世界的に貫徹されていることである。それは例えば、アフリカにおける資源と市場をめぐる帝国主義諸国や中国などの大国による略奪抗争として現れており、かつ、それは軍事支配の拡大競争を背景にしたものとして推進されている。また、「ワシントン・コンセンサス」で示された自由化・民営化・規制緩和を基調とする諸政策は、今日でも各国で推進され続けている。金融投機資本の活動はますます肥大化しており、世界の飢餓人口は増加し、貧富の格差は一国的・国際的にさらに拡大している。そうしたなか、ますます多くの労働者が非正規職に置き換えられ、貧困を強制され続けており、その数はいっそう増大している。破綻を宣告された政策が生き永らえ、その下で労働者人民が犠牲を強制されているという現実を国際階級闘争の現段階として厳しく確認しつつ、われわれはそれを突破するための闘いを全世界の労働者人民、共産主義党と連携・連帯しつつ共に推進していかねばならない。
 安倍政権による「異次元の金融緩和」なる政策に示されるように、帝国主義諸国は量的金融緩和策をとり続け、それによって政策的に景気拡大局面をつくりだしてきた。しかし、それもいまや限界に近づきつつある。とりわけ米国は、トランプ政権の保護主義的関税政策にもかかわらず、ますます膨張する軍事費とブルジョアジーのための大型減税(法人税減税)による歳入減によって、その国家財政赤字を拡大させている。米国は再び、財政収支と貿易収支がともに悪化する「双子の赤字」に陥った。二〇一八会計年度で七七九〇億ドル(約八七兆円)だったその赤字幅は、二〇二〇会計年度には一兆ドルを突破すると見積もられている。さらに、これと並行する米国債の下落と長期金利の上昇が、トランプ政権による「貿易戦争」の発動とあわせて、世界の株式市場をいっそう不安定なものにしている。これらはドル暴落への圧力をますます強め、基軸通貨としてのドルの位置、さらには国際通貨体制をより不安定なものにしている。蓄積されてきた矛盾がいずれ爆発することは不可避である。
 マルクス・エンゲルスは一七〇年前に、周期的な恐慌に翻弄される当時の資本主義の状況を描写して、「近代ブルジョア社会は、自分が呼びだした地下の魔物を、もはや統御しきれなくなった魔法使いに似ている」(『共産党宣言』)と述べている。これは現代世界によりいっそうあてはまる。統御できない矛盾が爆発したとき、それはマルクス・エンゲルスの時代を超え、また二〇〇八年恐慌の惨禍を超えて、よりいっそう深刻な打撃を世界の労働者人民にもたらさざるを得ない。だが、その危機を根底から突破するものもやはり、『共産党宣言』が指摘しているように労働者人民による階級闘争とその国際的な団結の前進であり、資本主義というシステムを根底から覆すプロレタリア社会主義革命の実現である。われわれは共産主義の旗を高く掲げ、この道を断固として突き進んでいかねばならない。

 ●第三章 国際階級情勢の諸特徴

 激動する国際情勢のただなかで、労働者人民は帝国主義による戦争・貧困・排外主義という激しい攻撃と対峙しつつ、さまざまな形態をとって各地でその闘いを前進させてきた。それは今日いかなる特徴をもって進行し、国際階級闘争にどのような教訓を与えているのであろうか。
 この点で、とりわけ東アジアに生きるわれわれがまず第一に確認すべきは、昨年の4・27南北首脳会談と「板門店宣言」および6・12米朝首脳会談とその共同声明がもたらした朝鮮半島情勢の歴史的な転換の重大な意義である。
 これまでも『戦旗』紙上などにおいて繰り返し述べてきたが、われわれがここであらためて確認したいことは、そのような歴史的な情勢転換を切り拓いた最大の要因が、「ろうそく革命」という形をとった韓国の労働者人民の闘いであったということである。それは歴史を動かす原動力が他ならぬ労働者人民の階級闘争であることをあらためて示した。労働者人民の闘いの前進こそが、諸政府の動向を規定し、国際政治に影響を与え、新たな歴史を切り拓くのである。
 韓国の労働者人民は今、朝鮮半島の自主的平和統一に向けて闘うと同時に、「ろうそく革命」の完遂の問題として、文在寅政権の限界を乗り越え、非正規職撤廃、財閥解体、THAAD撤去、原発全廃など社会の全面的な変革に向けた闘いをおし進めていこうとしている。われわれはその闘いに固く連帯していかねばならない。
 アジアにおいてはまた、フィリピン共産党(CPP)を先頭にしたフィリピンの労働者人民の闘いが、ドゥテルテ政権による激しい弾圧と対峙しつつ、着実に前進している。
 その政権発足当初、ドゥテルテは自らを「左派」として打ち出し、米帝を批判し、フィリピン民族民主戦線(NDF)との和平交渉を再開させた。それゆえ民族民主勢力は、「闘争と戦術的同盟」という枠組みの下で、農村部での革命的武装闘争から閣僚としての活動まで、実に重層的な闘いを展開してきた。しかし、ドゥテルテはその後、国軍や大資本への依存を次第に強め、民族民主主義運動の出身者を次々と政府機関から排除し、民族民主主義勢力との全面対決へと向かってきた。米帝への批判を口にすることもなくなった。とりわけ昨秋以降、政治的殺害やでっちあげ逮捕の拡大など、闘う労働者人民に対する弾圧が強まっている。しかし民族民主主義勢力は、農村部における解放区建設と都市部における大衆運動を結び付けつつ、強まる弾圧に抗してその闘いを前進させている。
 またラテン・アメリカでは、「社会主義」を堅持するキューバに続いて、ベネズエラでチャベスの遺志を継いだマドゥロ政権の下で労働者人民が困難な闘いを続けている。ハイパーインフレなどベネズエラを襲っている混乱と困難の背景には、マドゥロ自身が認めたような経済政策における失敗もあるが、より重大な要因として帝国主義による経済制裁やマドゥロに対する暗殺未遂事件を含む激しい政権転覆策動など、あらゆる手段を用いた圧力があることを見ておかねばならない。
 同時にこの間、緊縮政策―新自由主義政策に対する抵抗の中から、労働者人民の新たな闘いが生み出されてきた。とりわけ欧州においては、ドイツの左翼党、スペインのポデモス、昨年四月のフランス大統領選で健闘したメランションの「不服従のフランス」などの左派勢力がその支持を拡大してきた。その内、ギリシャの急進左派連合(シリザ)とイタリアの「五つ星運動」は政権の座を獲得した。これらはイギリス労働党から首相になったトニー・ブレア「第三の道」に代表される、新自由主義に包摂されることになった「ヨーロッパ社会民主主義」の限界を左から批判してその勢力を拡大してきた。
 二〇一六年の米大統領選に至る過程での「サンダース現象」もまた、同様の経済的根拠を背景に持つものであろう。米国ではまた、先の中間選挙において、トランプ政権がおし進める社会的不平等の拡大と差別的諸政策に抗して、とりわけ女性や若者たちが活発な活動を繰り広げたことが報じられている。二〇一七年に実施されたある世論調査では、米国で「ミレニアル世代」と呼ばれる四〇歳以下の若者の中で、その46%が資本主義国よりも「社会主義」国で生活することを好むと回答したという。格差と貧困、差別と抑圧が拡大するなかで、労働者人民の中に新たな社会への希求が拡大しているのである。
 しかし、このような形で前進してきた各国での左派勢力の闘いが、一つの課題に逢着していることもまた事実である。緊縮政策に対するギリシャの労働者人民の激しい反対を背景にして成立した急進左派連合(シリザ)主導のチプラス政権は、最終的にEUによるの緊縮プログラムを受け入れることになった。また、シリザもイタリアの「五つ星運動」も緊縮政策に反対するという一点で右派政党との連立を組んでいる。その下での政策に限界があるのは明らかである。労働者人民にとって、新自由主義政策に代わる明確な展望の問題、一国の闘いを孤立させないための国際的な共同闘争の問題、そして権力問題があらためて問われているのである。
 他方、とりわけ帝国主義諸国において差別排外主義勢力が台頭し、その勢いを維持・拡大していることも国際階級情勢の大きな特徴の一つである。米国における白人至上主義、ドイツやフランス、イタリアなど欧州各国における移民・難民の排斥を主張する極右政党の伸長など、その国が置かれてきた歴史や状況の違いによって現れ方は異なっているが、帝国主義諸国ではおしなべて差別排外主義勢力が政治的集団として登場し、台頭してきた。欧州でのそれは、スウェーデンなど北欧諸国にも及んでいる。それは貧富の格差と社会の亀裂の拡大のなかで、物質的根拠を持って登場し、その勢力を広げてきた。日本では、「在特会」や「日本第一党」などの差別排外主義集団が、在日韓国・朝鮮人に対する差別的攻撃や韓国・朝鮮民主主義人民共和国に対する排外主義煽動を続けている。また、米国や日本においては、現政権そのものが差別排外主義を先頭に立って煽動し、民間の極右勢力を鼓舞し、その活動を助長させていることも特徴だ。
 新たな社会を希求する労働者人民は、このような差別排外主義勢力と対決しつつ、その闘いを前進させていかねばならない。国際階級闘争は、そのような攻防を経つつ、ますますダイナミックに展開していくであろう。
 現在、資本主義世界体制は歴史的な変動の渦中にあり、新たな危機の爆発を準備しつつある。労働者人民に対する貧困と抑圧は拡大し、国際情勢はますます激動している。こうした状況のなかで、帝国主義を打倒し、資本主義の根底的変革をめざす国際共産主義運動の歴史的な再生と飛躍こそが求められている。
 新自由主義政策がもたらしている貧富の格差の極限的な拡大のなかで、例えば「公正な分配」を要求する声が様々な場面で広がってきた。また、マルクス主義とは異なる立場も含め、「資本主義の終焉」を論じる議論もいくつか現れている。それらは、労働者人民の生存そのものと相いれないまでに極限的に肥大化した資本主義の矛盾、そして新たな危機の爆発を準備しつつある資本主義世界体制の現状を反映している。前章でも述べたように、その矛盾を解決する唯一の道は、労働者人民の階級闘争とその国際的な団結の前進であり、プロレタリア社会主義革命の実現である。また、共産主義社会の実現に向けて現実の闘いを牽引する革命的労働者党建設の前進が、労働者人民の手によって勝ち取られていかねばならない。
 われわれは個々の現場での闘いを具体的に推進しつつ、新たな時代を切り拓く国際共産主義運動の再生と前進に向けて、政治・組織・理論をはじめあらゆる分野における闘いを全力でおし進めていく。

 ●第四章 階級支配の転換を狙う安倍政権の打倒へ

 帝国主義による戦争・貧困・排外主義という形をとった労働者人民に対する攻撃は、日本においても安倍右翼反動政権の下で全面的に推進されている。われわれは次号で、その攻撃の性格と内容を詳しく検討し、あわせてそれと対決する二〇一九年のわれわれの闘争方針を提起する。ここでは安倍政権の労働者人民に対する攻撃を概括的に批判し、日本階級闘争の発展のための課題を提起する。
 昨年九月の自民党総裁選での安倍の三選により、第四次安倍改造内閣が発足した。安倍は一〇月から始まった臨時国会冒頭の所信表明演説において、日本は今「歴史の転換点」にあるとし、これからの三年間で「新しい国造り」に挑戦していく、と語った。確かに、われわれは今「歴史の転換点」に立っていると言えよう。しかしそれは、安倍右翼反動政権による労働者人民に対する攻撃の歴史的で全面的な性格のゆえにである。それゆえわれわれは、安倍とはまったく正反対の方向で、日本階級闘争の新たな歴史を切り拓いていかねばならないのである。
 安倍が進めようとする「新たな国造り」の最大のものは、言うまでもなく憲法改悪である。九条への自衛隊の明記や緊急事態条項の新設を柱とする安倍の改憲策動は、いよいよ具体的な政治日程にのぼってきた。同時に、安倍と日帝ブルジョアジーが狙っていることは、改憲を頂点とした社会の全面的な再編であり、階級関係の反革命的な転換である。安倍はこれを今年の天皇代替わりや二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの開催を徹底的に利用しながら、強圧的な手法をもっておし進めていこうとしている。メーデー当日へのナルヒト「即位の礼」の設定は、安倍政権とその攻撃の階級的性格を実に端的に示している。
 実際、安倍政権がおし進めてきた階級的攻撃は、全面的で歴史的なものである。
 改憲策動は、敗戦帝国主義としての歴史的制約を最後的に突破し、名実ともに海外での侵略戦争・軍事介入を実行することができる部隊へと自衛隊を改変しようするものだ。それは同時に、立憲主義を否定して、国家が労働者人民を統制・支配するという国家主義的思想の下で、統治形態の転換を図ろうとするものである。一昨年に制定された「共謀罪」は、そのような強権的な人民支配を支えていこうとする手段の一部に他ならない。
 安倍はまた、日本を「世界で一番企業が活動しやすい国」にすると標榜してきた。それは、労働分野での規制緩和を推進し、八時間労働制をはじめ全世界の労働者が血の犠牲の下に闘い取ってきた諸権利を根底から破壊・解体しようとするものだ。二〇一五年には派遣法が改悪され、昨年六月には残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル制度)の導入やさらなる長時間残業を助長する労働基準法改悪など「働き方改革」一括法を強行採決した。
 加えて安倍政権は、「戦後最大の名目GDP六〇〇兆円の実現」なる政策目標を掲げ、「一億総活躍社会」なるスローガンの下、搾取の対象を拡大すべく女性の労働力市場への参入拡大や高齢者の就業促進を進めてきた。そして先の臨時国会においては、単純労働力としての外国人労働者の導入を拡大するために、差別を温存したまま実質的な「移民制度」に門戸を開く、入管法改悪を強行した。それは日本の入管政策の根本的な転換である。
 外交の分野においては、安倍はこの間「戦後日本外交の総決算」という言葉を繰り返している。安倍政権は「自由で開かれたインド太平洋戦略」を掲げ、それが「新しい時代の北東アジアの平和と繁栄の礎」となる、などとしている。それは、米国、インド、オーストラリアとの政治的・軍事的連携を強め、中国に対抗し、この地域における帝国主義の搾取と収奪、支配を強めていこうとするものである。この地域を中心とする日本の対外純資産は三二八・四兆円に達し、一二年連続で世界最大を記録している。このような膨大な海外権益の存在が、日本帝国主義による「戦争する国」づくりの経済的基礎にあり、それはわれわれに日系侵出資本の搾取・抑圧と闘うこの地域の労働者人民との国際連帯をいっそう推進・強化していくことを要求している。
 安倍はまた、昨年九月の国連演説で、「北東アジアから戦後的構造を取り除く」と述べている。だが今、朝鮮半島情勢が歴史的な転換局面を迎えるなかで、安倍政権の存在とその行動こそが、この地域における戦後「冷戦体制」の残滓を一掃するための最も明確な桎梏となっていることは明らかだ。変化する東アジア情勢は日本の労働者人民に対して、安倍政権の打倒を火急の課題として要請しているのである。
 また、安倍政権の労働者人民に対する歴史的で全面的な攻撃は、激しい排外主義煽動を伴って推進されている。
 安倍政権は執拗に朝鮮民主主義人民共和国への排外主義煽動を続けている。朝鮮半島情勢の平和的局面がすでに到来しているにもかかわらず、昨年八月に閣議決定された二〇一八年度版の防衛白書では、共和国の「核・ミサイル」について、前年度版にあった「新たな段階の脅威」という表現をさらにエスカレートさせ、「これまでにない重大かつ差し迫った脅威」などとしている。重大な階級関係の再編攻撃を仕掛けている安倍政権と日帝ブルジョアジーは、あくまで架空の「脅威」を煽動し、それによる排外主義的な「国民統合」をおし進めようとしている。そして、このような政府の動向が、昨年二月の朝鮮総連中央本部への銃撃事件など、民間右翼や差別排外主義集団の活動を助長させているのだ。
 この間相次いで出された韓国での徴用工裁判の判決に対して、安倍政権は許し難い排外主義的対応をとってきた。安倍政権は韓国側が不当な判決や要求をしているかのように振る舞い、労働者人民に排外主義的意識を植え付けようとしている。だが、この問題の根幹は、日本政府がかつての朝鮮植民地支配が不法なものであったことを決して認めず、植民地支配への国家としての謝罪と犠牲者への賠償を一貫して行ってこなかったことにある。当然のことながら、安倍の言う「戦後日本外交の総決算」には、日本帝国主義によるアジア太平洋地域での侵略戦争・植民地支配に対して、その戦争責任・戦後責任を果たすことなど入っていない。この問題に対する対応は、日本の労働者人民の闘いの歴史的総括を問う課題であり、プロレタリア国際主義の試金石だ。
 「一強」とも言われる安倍政権の基盤は、しかし決して盤石なものではない。自民党総裁選の結果はその一端を示した。地方票の45%は対抗候補の石破へと向かい、安倍は望んでいた「圧勝」を演出することはできなかった。それは、小泉政権以来の新自由主義的「構造改革」路線を引き継いで、安倍政権が「アベノミクス」や「成長戦略」などの名で進めてきた規制緩和と民営化、農業や社会福祉の切り捨て等々が、地方とそこで生きる人々への疲弊をもたらしてきたことの自民党内部への反映である。実際、法人税減税と労働分野の規制緩和による搾取強化によって巨額の内部留保を蓄積し、いっそう肥え太る大資本とは対極に、安倍政権とその政策の下では、ますます多くの労働者人民の生活と生存が、安倍政権とその政策とはもはや相容れなくなっている。安倍政権はだからこそ、強権的な手法によって労働者人民の抵抗を抑えつけようとしている。だが、それは永遠に続くようなものではない。
 昨年九月の自民党総裁選の直後、沖縄知事選において、急逝した翁長雄志前知事の遺志を継いで、辺野古新基地建設反対を鮮明にした玉城デニー氏が圧倒的な票差で勝利したことは、安倍政権に痛打を与えた。沖縄人民の辺野古新基地建設を必ず阻止するというその固い決意は、その後も那覇市長選での「オール沖縄」候補である城間幹子氏の勝利などとして現れており、沖縄人民の解放闘争の前進を刻印している。このような沖縄人民の民意を踏みにじり、辺野古埋め立て―土砂投入に突き進む安倍政権を許さず、沖縄人民と連帯する辺野古現地と全国各地での闘いを推進していこう。
 階級支配の反革命的転換を狙う安倍政権の歴史的で全面的な攻撃に対して、これと断固として立ち向かう闘いを全国各地で推進していこう。辺野古での埋め立て阻止や三里塚での強制執行を阻止して市東孝雄さんの農地を守り抜くための闘いなど、緊迫する現地での決戦的闘いをしっかりと担い抜こう。また、資本と国家権力、差別排外主義集団が一体となった歴史を画する弾圧攻撃と闘う連帯労組関西生コン支部の労働者たちをはじめ、弾圧と闘うすべての仲間たちと連帯して闘おう。このような闘いを推進しつつ、二〇一九年を安倍政権がその全体重をかけておし進めようとする「改憲・戦争・天皇制」の攻撃に対して真正面から対決しよう。アジア人民と連帯して安倍政権を打倒する全人民的政治闘争のさらなる前進を切り拓こう。われわれは革命的労働者党建設をおし進めつつ、その先頭に立って闘い抜く決意だ。
 全国の労働者、青年・学生の皆さん! 共産主義者同盟(統一委員会)に結集し、共に階級闘争の最前線で闘おう! そして、その実践の中から国際共産主義運動の歴史的な再生を実現する闘いを共に担い抜いていこう!




 

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