共産主義者同盟(統一委員会)


1582号(2020年12月5日






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  日帝の「インド太平洋」外交弾劾

  アジア人民と連帯し菅政権打倒

  市東さんの農地を奪うな

  12・17東京高裁に結集を





 米大統領選でトランプは敗北した。差別と分断のトランプをアメリカの労働者人民がきっぱりと拒否し、引きずり下ろした。その勝利の核心は、ブラック・ライブズ・マター(BLM=黒人の命は大切)運動の爆発と、コロナ感染問題で浮き彫りとなった新自由主義政策の破綻だ。
 菅政権もまたコロナ感染拡大の第三波が始まってもなおGoToを継続するなど、民衆の健康より資本の生き残りに躍起になっている。学術会議の任命拒否問題を居直り、逆に大学の軍事研究を認めろと学術会議を揺さぶっている。アメリカ労働者人民の闘いと連帯し、菅政権を打倒しよう!

 ●第1章 米国人民は、差別と分断のトランプ政権を拒絶した

 一一月三日に行われた米大統領選は開票、集計に時間がかかっていたが、七日にペンシルベニアでバイデン勝利が決すると、米国メディアは一斉に「バイデン当選確実」と報道した。一三日には勝敗が全州で確定したと報道。これに対しトランプは証拠もなく「不正選挙だ」と訴訟を乱発し、敗北を拒み、悪あがきを続けている。トランプ支持者も一四日、ワシントンで大集会を開いた。
 しかし、政権交代のゴタゴタはありつつも、次期大統領は民主党のジョー・バイデンに、副大統領はカマラ・ハリスで確定した。われわれは、アメリカ帝国主義の政治的代表であるバイデンに何も期待するものではない。しかし、アメリカの労働者人民が、様々な差別と排外主義を煽動し汚職にまみれ存在そのものが「フェイク」であったトランプを、大統領の座から引きずり降ろしたことは高く評価しなければならない。
 経済的にも政治軍事的にも一超大国であったアメリカ帝国主義がその力を喪失してきたため、その復活を主張するトランプを支持する流れは四年前から鮮明になっていた。今回の大統領選は、この流れがより強固になったことを示している。投票率が「米国建国史上最高」だったことが前提としてあるが、トランプの得票数そのものは四年前より増えた。二〇一六年の大統領選で六二九八万票だったのが、今回は七一四三万票であり、八〇〇万以上も票数を伸ばしているのだ(AP通信、一〇日現在)。アメリカの、特に白人層の利害を掲げた排外主義はより鮮明となってきた。
 しかし、今回はトランプを嫌悪するアメリカ人がトランプ支持者を上回った。投票率が史上最高になったのは、前回、棄権した人々(全有権者の11%)が投票したことが大きな要因であり、またその過半数がバイデンに投票した。
 その背景には、ブラック・ライブズ・マター運動が、警察機構、ひいては奴隷制度以来の根深い黒人差別を暴きだし、これと実力対決してきたことがある。トランプのまったく酷いコロナ感染対策と相まって、この闘いがトランプ打倒の原動力となった。実際、有権者調査によれば、アメリカ社会で「差別が深刻」と捉える有権者の66%がバイデンに投票している(AP通信)。また、非白人の72%がバイデンに投票している(ニューヨーク・タイムズ)。
 アメリカ労働者人民の闘いは、このトランプ打倒の勝利にとどまらず、トランプの差別と分断の根底にある米帝国主義そのものを打ち破る闘争へと発展するに違いない。今回、三〇歳以下の青年の過半数が反トランプに投票している。同時に、トランプ登場以前より、青年層で「社会主義」への希求が高まっている。やがてこの流れは、プロレタリア革命勢力と結合して、帝国主義的支配秩序における共和党か民主党かという対立を超えて爆発するだろう。
 われわれ日本の労働者人民もまた、差別や分断と闘うアメリカ労働者人民と連帯しうる闘いを推し進めていこうではないか。
 トランプ政権とは政治手法は異なるであろうが、民主党バイデン政権になっても、米帝と中国の関係が根本的に変わる訳ではない。中国―習近平政権は「中国製造2025」を掲げ「製造強国」になる政策を進めている。「一帯一路」の枠組みをアジア、アフリカ、ヨーロッパ諸国に拡大している。
 産業と金融における力を増大し軍備を増強する中国スターリン主義が、米帝国主義の世界的な位置を脅かすものである以上、米中対立の根本は変わらない。
 帝国主義とスターリン主義の世界支配と新たな世界分割の衝動を見すえ、反帝闘争を闘い抜こう!

 ●第2章 菅の強権支配を打ち砕け

 敗北したトランプにへつらい、オスプレイやイージス・アショアをはじめ危険で高額な兵器を爆買いしてきた安倍晋三とともに日米同盟強化を進めてきた菅義偉は、バイデン勝利と見るや、即座に「祝意」を示した。
 菅政権は就任早々、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想の具体化に向け外交活動を開始した。
 FOIPは二〇一六年に安倍が掲げた外交方針だが、菅政権も踏襲している。この構想に基づき菅は初外遊にベトナム、インドネシアを訪問した。一一月一七日には来日したオーストラリアのスコット・モリソン首相と会談し、日豪首脳共同声明に署名した。注目すべきは、自衛隊と豪軍の共同運用と演習を円滑にする「日豪円滑化協定」締結で大枠合意したことだ(すでに一〇月の日豪防衛相会談において、自衛隊が他国の艦艇などを守る「武器等防護」の対象に豪軍も加えることを確認している)。これは中国への対抗路線に転換したオーストラリアをFOIP構想に取り込む狙いがある。
 ただ、FOIPは当初の軍事色の強い「戦略」から「構想」へ微妙に変化している。日帝が直ちにFOIPをもって中国を牽制し、包囲網の強化に動くとは限らない。安倍は一八年の訪中を機に、中国の「一帯一路」構想と協力する方針に転じていた。日帝の最大輸出国はアメリカを抜いて中国が依然としてトップである(輸出総額の19・5%、二〇一八年)。また一一月一五日には日中韓と東南アジア諸国連合などが「地域的包括的経済連携(RCEP)」に署名した。
 こうしたなかでFOIPは、米帝の新政権が今後さらに中国との対決姿勢を強めるかどうかによってその性格を変えていくとみられる。
 いずれにせよ菅政権は、何が何でも日米同盟を強化し、FOIP構想をより具体化して、インド太平洋地域での日帝の軍事的プレゼンスと経済権益権拡大を画策していくのは間違いない。この策動を警戒し、アジア労働者人民との共同闘争を強めていく必要がある。
 菅首相は、学術会議会員任命拒否問題について、国会本会議でも予算委員会でも追及されながら、六人の任命拒否理由の答弁を拒み続けている。「総合的・俯瞰的観点」、「多様性が大事」などとしながら、六人を拒否した説明にはなっておらず、菅は「個別の人事」を理由に答弁を逃げ続けている。
 事実としては、警察官僚出身の内閣副官房長官・杉田和博が六人の排除を決めたことが明らかになった。野党が杉田の国会出席を求めているのに対し、自民党の国対委員長・森山は拒否し続けている。菅政権の強権的人事を警備・公安が主導していることが鮮明になることを恐れているのだ。
 任命を拒否された六名は戦争法や共謀罪に反対の立場であったことから、菅政権の狙いは誰が見ても明らかである。だがそれ以上に安倍―菅政権は、まがりになりにも「大学の軍事研究反対」の声明を出してきた学術会議の立脚点の解体を狙っている。自民党政調会長の下村博文は、学術会議が軍事研究に反対していることに「日本の防衛を考えた時に本当にそれでいいのか」「そこまでこだわるのであれば、行政機関から外れてやるべきではないか」と恫喝した。科学技術担当相の井上信治は、大学の研究成果が民生と軍事の両面で使われる「デュアルユース」(軍民両用)ができるよう学術会議に求めている。
 大学の軍事研究の復活は、日本における「軍産学複合体」の形成に道を開く。それを、公安警察を動員して強権的におこなおうとしているのだ。
 菅は今年度の第三次補正予算の編成を指示した。 一五兆円とも三〇兆円ともいわれる、ばらまき経済対策であり、同時に、デジタル化を進め、新自由主義政策をさらに促進しようとしている。
 コロナの新たな感染拡大は、「第三波」に突入した。東京都では一一月二一日に過去最多の五三九人の感染を記録した。日本医師会すらも「GoToトラベルがきっかけになったことは間違いない」と断言している。菅政権は、それにも関わらずGoToを継続している。
 ブルジョアジーを救済する経済政策ではなく、労働者人民の命と生活、権利を守りぬく闘いを改めて強めていかなくてはならない。労働者階級人民の利害に立って、菅政権と対決していこう。

 ●第3章 市東さんの農地強制執行を許すな!

 市東さんの農地の強制執行を阻止するための裁判=請求異議裁判・控訴審は、一〇月二二日に結審した。判決は一二月一七日だ。
 市東孝雄さんと弁護団は、法廷で農民が農地を耕作し続けることの正義を明確にした。コロナ禍で日本の航空会社、全日空も日本航空も過去最大の赤字となっている。全日空は、航空需要が復活しないことを見すえて「ビジネスモデルを変革する」としている。航空機を手放し、国際線を羽田中心に再編する方針だ。
 成田空港会社こそがその経営体質を根底から見直すことが問われている。第3滑走路新設を軸とした機能強化策は、まずもって撤回するのが当然だ。だが空港会社社長の田村明比古は、コロナの影響は「長く続くであろうと覚悟している」ものの、機能強化を「確実に進めていく」として、第三滑走路の二〇二九年完成を掲げ続けているのだ。
 機能強化策に対し、反対同盟はいま地域住民への働きかけを精力的におこなっている。市東さんは「空港会社は破たんした状況を住民に隠している。同盟ニュースで明らかにして、地道に訴えていこう」と語っている。
 市東さんの農地を強制執行する公共性も緊急性もない。空港会社の強制執行を認める理由などない。空港機能強化をただちにやめろ。請求異議裁判・控訴審闘争に勝利し、市東さんの農地を守りぬき、空港廃港に向けた闘いを今こそ進めよう!



 


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