共産主義者同盟(統一委員会)






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   第3回党大会の成功かちとる

     
党大会で採択された中央委員会報告
                           




 われわれ共産同(統一委員会)は、本年×月第三回党大会を開催し、大きな成功をおさめた。大会では中央委員会報告が討議され、新中央委員が選出された。中央委員会報告は大会で決議された。われわれは「できる限りの公開制」というレーニン主義党建設の原則に基づき、中央委員会報告を『戦旗』紙上に掲載する。ただし、紙面の都合上、全文は掲載できないので了解していただきたい。

【構成】

・第1章 総括
・第2章 情勢 二〇一〇年代情勢の特徴と現代帝国主義・現代資本主義の危機
・第3章 方針 三回大会で確立すべき路線・組織・綱領について



 
■第一章 総 括

 以下に提起する総括は、わが同盟が〇四年の組織統合以降、実践してきた全活動、路線―組織―綱領の全領域における同盟の活動を、その経過、成果、問題点にそって明らかにし教訓として確定すること、そして三回大会以降の次の同盟活動の前進の基盤を作ることを目的とするものである。路線―組織―綱領に基づく同盟の実践総括は、一つには実践の直接的な総括とそこからの教訓を確定しようとするものであるが、もう一つはこの実践の枠組みそのものを階級闘争全体の意義と限界(客観的な定在)においてとらえ返していこうとするものである。


 ●1節 路線―組織―綱領の確定とその体系的な実践と同盟建設
                       (全体の総括)


 わが同盟は、〇四年以降プロレタリア日本革命のための路線を確定し、この実践的貫徹を最大の任務にして、綱領と組織路線を確定し、実際的なたたかいを行ってきた。まず総括しておくべきは、この路線―組織―綱領の三位一体的推進を厳格に進め、日本革命運動と革命的労働者党建設を確実に実現していく確信をつかんだことである。われわれは、日本革命に向けて日本帝国主義・独占資本と対決し、当面する総路線(AWC運動の推進、階級的労働運動の建設、政治闘争―反戦闘争―反帝拠点の防衛)を断固として推進し、また、この路線を実現する組織の建設(中央指導部の建設―政治局・各級中央機関の建設、労働運動・学生運動の組織の建設、三大地方委員会の建設、また現闘・行動隊の建設など)をすすめ、一定の規模で運動(たたかい)とこれに見合う組織実態を作り出したのであった。そして綱領的にはプロレタリア革命―共産主義革命の立場を鮮明にして、『共産党宣言』を基礎的立場に、第一インター、第三インターを継承する内容を、より積極的に確定し深めてきたのであった。組織建設では大会や中央委員会の確立、細胞―組織会議の建設などを含めて進め、また綱領確立の面では現代の階級論や現代帝国主義・資本主義批判などへと接近してきた。「当面の路線」に限定されないかたちでの、現代日本のプロレタリア革命の普遍的な課題、すなわち、「組織の建設」や「綱領の創造」を推進してきた。この点でも大きな前進を見たのであった。路線の貫徹、組織の建設、綱領の創造とは現代の革命的労働者党が革命運動とその中での党建設を実現していく際の問題の基本的な立て方、その主体的な構造であって、この一体的な推進によってこそ現在のプロレタリア革命の主体的根拠は獲得される。この三位一体的活動を抜きにして、路線や組織や綱領をそれぞれ一面化して強調したり、一部の深化で全体を前進させることは不可能なのである。またそれぞれの領域がバラバラであっては活動を前進させることはできない。党とサークルの違いはここにある。レーニン的に言えばわが同盟は、「綱領―戦術―組織」の体系を整え確立し実践してきたということだ。
 すでに多くの政治集団・組織がこのトータルな革命運動、革命党建設の基本的な体系を維持し得ず、実現し得なくなっている。これは単に組織の力、政治勢力としての基盤の小ささ・狭さに決定づけられているというものではない。力量の結果なのでは決してない。むしろ前提的にこういった革命運動の全体性や、革命党建設の基本的方策をトータルに実現していく意志が欠けているところから、それはもたらされている。確かにわが同盟の現在の組織実態、政治勢力的基盤は限定的である。だがわれわれは、あくまでも、日本のプロレタリア革命運動の総体を前進させるために、運動と組織の全体系を堅持し活動を行なってきたのだ。ここにこそ、この間のわが同盟の活動の前進、組織の結束と維持・強化の根拠がある。
 〇四年以降七年間の活動において、わが同盟は組織勢力―階級的影響力の現実に踏まえて、路線・組織・綱領の内容をそれぞれの独自性をおさえながら、全体としてこれを一体的に深めてきた。これは大きな成果である。わが同盟は、国際主義を実践するAWC運動、連合型の帝国主義的・排外主義的労働運動を打破する階級的労働運動、さらに反帝国主義の政治闘争、反戦闘争、階級拠点の防衛のたたかいを前進させ、総体として日帝―資本家階級あるいは社会排外主義潮流とたたかい、プロレタリア人民の解放運動を前進させてきた。総路線を確立し、多くのたたかいと運動を作り出してきた。あるいはそれらの内部に入って断固として牽引してきた。また革命路線を推進するために組織を整備し、対応する組織の建設を進めた。(中略)
 綱領に関しては国際共産主義運動の総括や階級論―階級形成論、帝国主義論、現代資本主義批判や党組織論などを、『戦旗』三面論文の作成を軸に、また『共産主義』十七号の出版などを通じて深化させてきた。
 他方、路線上、組織上、綱領上のそれぞれの内容において、〇四年結成大会以降、その不十分性や問題点も明らかになってきた。例えば路線上では、労働戦線の本格的建設に関する問題や青年運動の新たな建設の課題、組織上では青年運動指導部の建設や書記局強化の課題、また三大地方委員会の本格的な強化の課題、若手カードルの建設―新しい組織指導部の建設の課題、また綱領上では現代資本主義体制の分析の基本的視角の確立、現代の思想理論(例えば階級論)批判などが同盟実践の結果として課題となってきている。


 ●2節 路線の推進と新たな課題―前進のための二つの方向
                    (路線の総括)

 ▼2節―1項 基本路線の実践とたたかいの経過


 われわれは〇四年「日本革命に向けた当面する路線」を確立し、以降七年間に及ぶ実践、活動、たたかいを実現してきた。〇四年路線の内容を再確認することはここでは省略するが、わが同盟の路線の重要な要素には、二十一世紀のプロレタリア革命運動、また日本の革命運動に関する以下のような基礎的な分析・把握・認識があったことは踏まえておかねばならない。それは、@資本主義・帝国主義が急速にグローバル化し、全世界の階級支配の構造―労働者人民の在り方が変化してきていること、A共産主義運動が九〇年代の崩壊状況を越えて全世界的に再建されるべき時代が開始されていること、Bスターリン主義は基本の部分で崩壊したが、現代の共産主義者がプロレタリア革命を推進しようとする場合、スターリン主義批判を明確にしつつ、同時にこれを乗り越えていく内容の創造が必要であること、C日本においては戦後的階級闘争構造が崩壊し、革命派・革命的左派の旧来のたたかい方を転換した新たな階級闘争構造の建設が必要であること、D主体的には国際主義と労働運動を根幹に据えた運動を強め、革命的政治を復活させ、日本革命の展望を切り開いていく必要があること、また、E労働者階級・被抑圧人民の反帝国主義・反資本主義の決起とたたかいを常に支持し、政治闘争、反戦闘争、反帝闘争拠点防衛を貫徹していくことなどであった。わが同盟はAWC運動、階級的労働運動、政治闘争―拠点防衛そして三里塚―沖縄、岩国など反基地闘争、在日外国人への排外主義的敵対攻撃とのたたかい―とくに「在特会」からの防衛闘争、女性解放運動、障害者解放運動、被爆者解放運動、狭山闘争、国際的反帝共同行動の発展に向けた活動を実現してきた。また釜山APEC、香港WTO、洞爺湖サミット、横浜APECなどの帝国主義国際会議粉砕闘争、また3・11東日本大震災―福島原発爆発事故に対する労働者人民支援と反原発運動に取り組んできた。

 ▼2節―2項 総路線の貫徹と政治的・組織的成果、その意義

 a)基本路線の推進
 まず最初に確認するべきことは〇四年大会、〇七年二回大会の基本路線であるAWC運動の推進、階級的労働運動構築、反戦闘争―拠点防衛のたたかい、そして階級的な労働運動と反帝に貫かれた学生運動の実態的組織的な建設という点に関して大きな成果を獲得したということである。
 AWC運動に関しては、韓国―フィリピンの革命組織、先進的組織・集団との連携を中心にアメリカなどの組織を含めて確立し、アジア的規模での反戦闘争の共同行動を構造的に作り出した。国際幹事会の開催、日本における全国事務局体制を形成し、国境の壁を打ち破る労働者階級と被抑圧民族の恒常的な国際的運動を粘り強い活動によって作り出した。帝国主義グローバリゼーションが一層進行する中、国際的な共産主義運動の再建が問われ、また全世界でもさまざまな国際共同行動が、例えばイラク反戦などのかたちで進んだが、この中でも潮流的にいえば「社会フォーラム」系とその右派の傾向とのたたかいがフィリピン革命運動を巡る問題において作り出された。わが同盟は現在の日本の一定の政治勢力の現実に踏まえつつ、しかしこの反帝国主義を掲げた国際主義的な人民の共同行動の組織化を基本路線として明確にしてきたし、今後もこの方向を継続していく必要がある。二〇一一年にはAWC(日本連)が大衆性をもって、ILPSに参加する地平を実現した。
 階級的労働運動に関しては、民間・中小の左派労働運動潮流の統合をすすめ、また官公労の反戦派の活動を継続し運動を作り上げてきた。日帝・独占資本による新自由主義政策が激化する中、リストラ、倒産―失業攻撃が激化し、労働者階級は深刻な生活低下の状態を強制されるに至っている。とくに非正規労働者が雇用形態の重要な部分、青年層の半分にも達するという深刻な事態が生まれた。地域労組、地域ユニオンを着実に建設し、かつ介護や運輸の労働者産別を目指す方向も明らかにし、それらは現在組織化中である。過去の蓄積を生かして関西地方委員会では地域労組連の拠点化を一層進めることができた。そして首都圏や九州・山口においても労組作りは進んでいる。また労働運動領域では広範な他の政治集団との共同と統一が必要であるし、実際上、基盤的にこれが実現されている。左派労働運動の統一と連携構造の確立・強化の展望を持った全国的―地方・地域的な争議、メーデーなどに取り組み、前進を見た。また労働者反戦実運動を全国的に立ち上げ、今日の左派労働運動の実態的基盤に踏まえ、反戦派労働運動を継続・持続する活動路線を生み出し、一定の運動の成功を勝ち取った。
 反戦闘争―拠点防衛のたたかい。わが同盟はもちろんレーニン主義的な全人民的政治闘争の貫徹・実現のために一貫してたたかってきた。サミットやAPEC、WTOなど帝国主義、多国籍資本(現代の独占資本)による連合と争闘、全世界の労働者人民の支配、搾取と収奪の強化に反対し、たたかってきた。また日米の軍事同盟の一層の強化―日米軍事一体化―再編強化にとくに強固に反対してきた。沖縄・名護新基地建設反対闘争に取り組み、また岩国基地強化反対・愛宕山米軍住宅建設反対運動を現地闘争―全国闘争で担ってきた。沖縄では選挙運動にも取り組み、岩国では地元反対派市民・住民と強固に連携し運動を作り出してきた。岩国に全国からの労働者人民の結集を進め運動の前進のために努力してきた。首都圏―関西―九州・山口地方で政治闘争―反基地闘争(神奈川、あいば野、築城・日出生台)を展開してきた。また同時に三里塚を反帝国主義の拠点として防衛し、日帝―政府とたたかう路線を進めてきた。現在、天神峰現闘本部の破壊の攻撃が激化している。大量逮捕攻撃に抗してたたかいは永続化している。現闘―行動隊路線を堅持し反帝の拠点として打ち固めている。
 また現在、3・11以後の情勢に踏まえ反原発運動の全人民的政治闘争への発展、強力な反政府闘争の形成のためにたたかっている。
 b)あらゆる戦線、労働者・被抑圧人民の解放運動への粘り強い取り組み
 わが同盟は前項の基本的な路線軸をあくまでも貫徹していく活動を展開しつつ、同時にあらゆる労働者階級人民の運動、反帝・反資本主義の表れに対して、その発展のために、人民の解放を求めて、人民の解放を自らの任務として自覚し活動してきた。とりわけ被抑圧人民の解放運動に支援・連帯し粘り強くたたかってきた。
 この間、在日朝鮮人・韓国人、滞日外国人に対する攻撃が激化した。「在特会」なる反革命右翼がこれらの人々の生活圏に踏み込んで、暴力的な攻撃を激化させてきた。わが同盟は積極的にこの排外主義的攻撃を多くの団体・集団と共同して打ち破るたたかいをやり抜いた。また入管体制の強化反対、外国人研修生・技能実習生の権利擁護のために活動してきた。
 以下項目のみ。
 沖縄解放闘争 差別軍事支配と対決する沖縄解放闘争の推進。沖縄人民の自己決定権を支持してたたかう。名護新基地建設反対運動、米軍―自衛隊の基地強化―再編、沖縄への自衛隊配備反対運動。現地と「本土」での広範なたたかい。高江ヘリパット基地建設反対、普天間オスプレイ配備反対運動
 三里塚闘争 反帝闘争の拠点―三里塚闘争破壊攻撃とのたたかい。第三誘導路建設阻止、市東さんの農地を守りぬく
 女性解放運動 基地被害、米兵による女性へのレイプに対する反対運動、アジア女性との連帯などの取り組み
 障害者解放運動 日帝の差別抹殺、隔離の攻撃とのたたかい。地域での自立と共生のたたかい
 被爆者解放運動 8・6広島集会、反戦反核反原発、被爆者(二世・三世)の国家補償にもとづく援護を実現するたたかい
 部落解放運動 狭山再審闘争のたたかい。差別分断攻撃とのたたかい
 「日の丸・君が代」強制反対闘争 起立強制・不起立処分反対闘争の取り組み
 地域防災―治安出動訓練反対闘争 被抑圧人民の排除と支配の強化反対、運動の取り組み
 反弾圧闘争 サミット事前弾圧への反撃、三里塚裁判闘争での逮捕弾圧とのたたかい。組織の防衛
 また国際的な反帝国主義の団体、政治党派との連携をもって新しい国際的な潮流の建設を目指して活動してきた。さらにNGO活動など多くのところでさまざまな運動に取り組んできた。
 c)共同行動、統一戦線、多くの左派の結集による政治運動の形成
 わが同盟は、〇四年路線において、九〇年代の日本の階級情勢の変化を見据えて、戦後的階級闘争構造に代わる階級闘争構造の確立、いわゆる階級再編を主体的に実現することを目指す目標を確定した。それは六〇年代、七〇年代、八〇年代に実現されてきた日本の革命的左派の運動の前進と不可避の後退、ここをトータルな階級闘争の構造的転換によって突破することをめざすものであった。もちろんわが同盟はわが同盟の現実的力量に見合う主体的な任務の実践において、この階級再編の第一歩を確実に踏み出すことを何よりも重視し、他の政治勢力や情勢一般に期待するものではなかった。この七年間の実践はこのわれわれの主体的な路線の推進の成果を確実に確認できるものである。しかしこの間の階級情勢の展開において特徴的なことは、米帝を主軸とした戦争とグローバリズムの席巻の一時代が「イラク、アフガン戦争」の行き詰まりとリーマン・ショック以降の「世界恐慌の深まり」によって崩れ、帝国主義・資本の支配が一層の危機的様相を示し、そして、多くの労働者人民が深刻な生活の危機の中から革命的な立ち上がりを見せていることだ。日本においては、実際、諸運動や全国各地で広範に人民が集合し、緩やかな連携、共同行動が実現され拡大している。日本においては八三年の三里塚3・8分裂によって、新左翼、左派系潮流の統一の構造は崩壊し、その後の各集団の努力にもかかわらず運動の分散化、バラバラ化が一般的な事態となっている。こういった党派や政治集団の現状とは別に、労働運動、被抑圧人民の解放運動、各種の政治闘争、反基地闘争では継続した共闘が持続してきた。しかし現在この古い共闘の枠をも越える課題と運動の形成が見られる。在特会とのたたかいにおける広範な統一戦線の形成、横浜APECにおける旧来の枠を越えた共同行動、また関西などに見られる政治闘争―反弾圧展開における広範な共闘、こういった傾向は一層拡大している。わが同盟も党派として新たな階級闘争構造を建設するためにこの共闘の形成の分野でも努力してきた。反戦闘争実や課題別共同行動あるいは安保―改憲、反原発など全人民的課題をかかげた共同行動の推進である。現在の全体的な階級関係、社会関係を見据えたとき、わが同盟の任務の一角に左派全体の運動現状に踏まえた、より以上の積極的な新たな政策が必要となっているのは間違いない。わが同盟は現在岩国闘争での労働者運動を前進させ、左派グループとの共闘を実行しており、これが一つの潮流再編の方策としてあるのは確かだ。
 d)組織路線の推進
 わが同盟は、日帝―独占資本とたたかい、社会排外主義潮流とたたかって多くの労働者階級人民の運動の前進を実現させた。この路線推進のなかでわが同盟は着実に組織路線を実現し成果をあげてきた。〇四年大会で確定した組織路線の三大政策は全体的に進んだ。とくに学生運動活動家集団の建設の分野では大きな成果をあげることができた。われわれは、AWC運動の活動家集団形成、労働運動の活動家集団の形成、学生運動の活動家集団の形成、これらを一定のレベルにおいて成し遂げることができた。
 AWC活動家集団は夏期反戦合宿や、各地方―地区の政治サークルなどの形で作られている。AWCの旗を立てた各種の集会、闘争への参加、また韓国、フィリピンへの恒常的な派遣、連帯活動などを通して活動家の形成が進んでいる。
 労働運動活動家集団は全国的な交流会や交流誌読者会などの形で定着化している。全国各地の交流誌読者会、あるいはマルクス古典の読書会、学習会サークルを積み上げ全国的な労働者活動家交流会や合宿の組織化などを再度、目指していくことも展望としては重要だ。
 学生運動活動家集団建設は最も前進した。現在キム学班協全国総会―全国七大学支部建設に向けて前進している。拠点大学の支部構造の維持、また支部の一層の拡大は必須の課題だ。

 ▼2節―3項 基本路線の貫徹と成果、新たな課題の成立

 路線の実現によって多くの成果を出したが、その結果次の課題が明らかになってきた。この間、同盟の重要な課題、総括点となったのは次の三点である。
 a)階級的労働運動の本格的建設のための課題
 わが同盟は路線の最大と言って良い基軸に階級的労働運動の建設を掲げて活動してきた。まず、中小未組織労働運動の全国組織強化のための実践と全国支部拠点労組の建設を着々と進めてきた。また官公労における反戦派の継承を進めてきた。そして全国の各地区・地域に拠点労組を作り、地域的なヘゲモニー形成を進めてきた。また活動家集団の交流誌を発行し基本的な左派労働運動の方向を明らかにすると共に、岩国反基地闘争への労働者の立ち上がりを実現し、また諸労働者グループとの共同行動の拡大を実現してきた。
 わが同盟はこのような地平を作り出してきたが、問題はより積極的なわが同盟の労働運動の組織路線を確立し、本格的な労組拠点の更なる拡大、労働運動の全国的潮流的牽引体制の確立、また地区的な労組の自立的力の形成を成し遂げていくべき局面を迎えるに至っていることだ。このかん中央委員会での論議は、中身の問題はあるにしても一定の組織的力の投入を抜きにして、現状の打開はないと言うことであった。わが同盟の全体の組織政策はあるが、可能な限り労働戦線への活動家の移行を実現すべきと言うことであった。現在的には各地方段階での拠点労組を確実に強化すべき課題がある。安定的に労組活動家―組合員の立体的構造の確立に持ち込めない現実を打開するための課題が明らかになった。何よりも中小未組織労働運動の全国組織の強化―組織路線の内容確定によって、労働運動の活性化・全国化を進めていかなければならない。例えば介護労働者産別、運輸労働者産別の形成の展望などが現在打ち出されている。
 いずれにしてもわが同盟は三回大会をメルクマールに、この階級的労働運動の建設の課題にわが同盟の前進の成否をかけて取り組んでいかなければならない。
 b)新たな課題―青年運動の形成のための取り組み
 この間の路線実践において、青年運動、青年戦線、青年労働者の組織化が大きな課題となってきた。わが同盟の組織路線は〇四年路線では労働運動と学生運動を戦略的組織化の二大方向とするものであった。情勢の一層の深刻化に伴い最も抑圧され切り捨てられる部分に青年層が位置付けられ、青年は未来の展望を削られた深刻な状態にたたきこまれている。未来を担うべき、また未来の左翼、社会変革を担うべき青年層の独自の組織化、運動の形成が重要な課題となった。政治サークル、労働組合、あるいは共済団体などさまざまな形があるものの青年層の団結形成、階級形成、政治集団の建設を一個の基軸路線として採用していくべきだろう。
 c)広範な統一戦線・共同行動の形成、その発展に対する新たな対応
 八三年三里塚3・8分裂以来三十年弱の時間が経つ。日本の新左翼は基本的にこの分裂を契機に統一行動、共同行動が不可能な状態に落ち込んだ。社会党―総評が解散し実質的な左派ブロックが解体し、しかも新左翼は共同行動ができない状態が長らく続いてきた。一方では宗派による支配、スターリン主義者によるセクト的分断が続いてきた。分裂と分散化の階級闘争の時代を終わらせ、左派が総結集できる革命的政治の時代が求められている。この間の反在特会のたたかい、反戦闘争、沖縄闘争、反原発運動など、また地方・地域の運動における共同行動は発展している。もちろん過去のような党派間の統一戦線や党派ブロックの形成が、一般的に事態を前進させることはないだろう。問題は全左翼が共同行動の意義を確認する立場を明確にして運動していくことである。もちろん三里塚の「話し合い派」が認められるわけではない。また「社会フォーラム」に連なる一部右派の帝国主義容認―フィリピン共産党への攻撃が認められるわけではない。問題はわが党派の立場を明確にしつつ、同時に現状に見合った、できる限りの共同行動を積極的に構築していくことだ。

 ▼2節―4項 わが同盟の階級的規定力と階級闘争構造の建設

 わが同盟が目指すべき階級闘争構造とはもちろん階級的労働運動を大規模に作り出し、ここを拠点に、連合労働運動を現実の力で動揺させるような階級構造・情勢を作り上げていくことである。さらに国際主義―AWC運動の発展、学生と青年の運動の全国運動化、さらに被抑圧人民の解放運動の発展、政治闘争―反戦闘争の全国的発展が立体的に結び付き、労働者人民の反帝闘争の爆発と大量の階級形成が可能となるような構造の形成を意味する。わが同盟は現在の同盟の一定の政治勢力にあって労働運動、学生運動、被差別者の解放運動、反戦反基地などのあらゆる領域でたたかっている。わが同盟の現在の階級的規定力は新左翼内の左派の一潮流を代表するものとなっているのは間違いない。わが同盟はこの基本路線の実体化による政治勢力の拡大を粘り強く必ず成功させていかなければならない。階級再編の根拠はこの主体的な活動の成功にあるだろう。そしてもう一つ重要なことは、わが同盟は、われわれの潮流の新左翼内での位置を高めていくこと、あるいは全体政治を作り出すこと、これに参加していくことにある。また共闘を追求していく(もちろん現実的には党派的な対立の構造、部分があり、わが同盟が一方的に妥協していくべきものではない。現実的には見通しは簡単ではないのはもちろんである)。つまり主体的な政治組織作りを一方でがっちりと実現しつつ、広範な人民の共闘・統一を促進し、階級闘争の構造転換の準備をすることである。もちろん他者もたれかかり的に何かを生み出そうとしても、そこからは何も生み出し得ない。しかし全左翼の統一、また、とりあえずの左派部分の結集と信頼関係の形成は新たな時代を生み出す一つの根拠である。こういう左翼集団の関係の形成が人民の切実な要求なのだ。ここ十年を展望するならば、大規模な階級再編を主体的に実現していくわが同盟の責任が強く求められているのは明らかだ。


 ●3節 組織建設の総括と新たな課題(組織の総括)

 わが同盟はこの七年間、日本における革命的労働者党の建設を目指して一貫して粘り強く活動してきた。その一つは路線の実現のために組織をつくること、帝国主義とたたかい労働者人民を現実的に階級形成していく現実的方策を実現してくために組織体制を整備し強化していくことであった。また全国的な単一の党派、政治組織として、全戦線、全地域にわたって計画的で系統的な組織の展開を実現することであった。この路線の推進とそのための組織の建設という点に関しては、とくに、指導部―指導体制の建設、その内容作り、また全国的な地方―産別・階層別の組織の建設、これを動かしていく執行体制を確実に建設していくことにあったが、この点で確実に前進することができた。これがわが同盟のこの七年間の最大の組織建設の地平である。わが同盟の路線は確かに立体的であり総合的である。これを体系的に成し遂げるには多くの力と意思統一がいる。わが同盟は言い倒れ、空念仏の構造、空論主義の構造を脱して、確実に路線を実行する組織を作り上げたのである。それは路線を全面的に展開し、より以上の組織の建設と拡大にただちに結び付くという主体的構造を確立しているわけではないにしても、一定のところでは確実に結び付けている。
 また二つにはこの推進過程で組織建設の総括を提示し、またより積極的な組織路線―組織戦術を確定する力を作り出してきていることである。路線を推進する体制を作り出しただけでは不十分である。この活動を組織として総括し新たな組織の政策、組織路線に結び付けていかなければならない。全体的な、あるいは一部署的な報告と総括、積極的な組織路線が検討され提出されてきている。路線実践との連関で組織や会議の建設に関する構成員による検討、討議を進めることができる組織体への前進こそ、この間の重要な地平である。
 そして三つめには路線一般とは区別された組織としての団結形成、会議的結束の実現、全同盟的な意思の形成と執行の確立、一般的・普遍的な組織体としての確立の活動の推進とその一定の前進である。ここでは中央指導部(政治局、中央諸機関)建設、中央委員会建設、大会の組織化、さらに地方委員会建設、地区党―細胞建設が進められた。またこのなかでの機関紙活動、財政活動、反弾圧活動を組織的義務とするところの一般的な組織の建設が進められた。さらに組織構成員の共産主義者としての確立に向けた学習会、討論会などが組織された。またほかにもいわゆるカードル形成、次世代指導部の形成の課題などが取り組まれた。
 また、改めて確認するべきことは、機関紙によってわが同盟組織を作ってきたことである。組織の建設、会議の建設を機関紙『戦旗』を通して実現してきたことである。わが同盟の政治内容、理論内容を主体化する最大の手段が『戦旗』である。シンパのオルグ、拡販活動、財政づくりは重要であり、会議づくりと一体化して党建設の根幹を作る。現在的には十分に使い切れていない、あるいは軸になっていない面もある。この点を一層、自覚的にとらえ機関紙活動を生み出していこう。

 ▼3節―1項 この間の組織建設の諸課題、取り組んだ諸政策と成果

 この七年間に取り組んだ課題の経過そして成果については以下の通りであるだろう。
 a)政治局を全国指導部として構造的に確立したこと、これに加えて路線推進のための中央諸機関―各専門部を作り出したことである。
 また、地方委、地区、細胞段階でこの任務を引き受ける組織体制を確立したこと。何よりも、一義的に政治局を単一の指導機関としてがっちりと確立したことの意義は大きい。さらに中央の専門部を作り指導内容、指導体制を確立した。(以下略)
 b)中央委員会の確立・強化の政策を実行し、一定の前進を勝ち取ったことである。
 党中央部(政治局―専門部)と並んで全国の中心的活動家で構成する中央委員会の強化を進めてきた。中央委員会での論議内容も同盟建設の中心課題に絞って濃い論議を展開してきた。討論された課題がこの間のわが同盟の基本的主張と組織の方向を確定している。「労働戦線の主戦場化―中心戦場化」問題、グロ―バリゼーションを巡る現代帝国主義体制と現代資本主義の分析視角について、いわゆる組織建設を主要な課題とする組織総括について(学生系列などからの提起)、青年運動への本格的な取り組みについて、階級闘争の構造転換と新たな統一戦線の形成について、同盟の革命的労働者党論の規定について、若手のカードル建設・次期同盟指導部の建設、書記局の建設、地方委員会の強化の課題、綱領改定の課題についてなど、多くの課題にわたって同盟の中心テーマが論議されてきた。中央委のメンバー的確立も進んだと評価できる。
 c)組織総括の開始と積極的な組織路線の確定、また組織的結束の形成
 わが同盟は本格的な組織建設の強化に取り組み、「組織総括」と「積極的な組織路線」「組織的結束」を全同盟的に打ち立てていく段階に入った。組織の各レベルにおいて、会議で一致し内容を確定し全構成員で執行すること、この基礎的な力を確立していくことはわが同盟の飛躍の鍵である。とくにまとまった系列単位、委員会単位で組織の現実についての主体的な討議や、また組織の構成員の一致と団結の形成のスタイル、能力を獲得していくことは革命党の生命線である。全党での組織建設、会議建設への主体的な反省と新たな結束、意思一致の形成が必要となっている。
 学生系列の総括は組織の結束・一致と組織活動の展開、団結形成が結び付き、積極的な活動方針の確立、またそれへ向けた態度の形成の意義について重要な総括提起としてなされている。もちろん組織員が会議で一致し、お互いを高め認め合い組織の発展を実現することは簡単ではない。しかし同盟組織をプロレタリア革命運動の一つの目的として建設するという立場に立つならば、こういった組織の一致に関わる部分の主体化は避けて通れないのである。
 d)若手カードルの形成のための活動の推進、その前進
 わが同盟はこの間、政治局への若手カードルの参加、さらに中央委員会への参加、そして全国各系列では共産主義を巡る討論会や『資本論』の学習会などを通して、いわゆる若手を共産主義者に育成し指導部に育成していく政策を積極的に進めてきた。とりわけ同盟指導部への参加と中央委への参加は大きな意味を持った。三十歳代、四十歳代の指導部を積極的に育てていくことによって同盟の次の展望も切り開ける。また現在、地方、地区、系列のさまざまな場所で共産主義者の建設に向けた取り組みが開始されている。結局、党員、組織員を拡大していくにはこの共産主義者への労働者人民主体の変革、立ち上がりがなければ困難である。積極的にこのための政策を位置付け継続していく。
 e)その他、実行してきた点は次の事項である。
 〈青年運動の本格化のための指導体制の構築〉
 青年運動の組織化の課題は同盟二回大会以降の中央委員会の大きな課題であった。わが同盟は労働戦線、学生戦線と並ぶ組織路線にこの青年戦線の建設の路線を確定した。(以下略)。
 〈三大地方委員会の強化〉
 この間、同盟の組織的実態の強化と拡大のために、地方委員会の強化、各地方の一括の指導体制の強化、いわゆる指導機関としての委員会の強化が大きな課題となってきた。わが同盟の〇四年大会において、首都圏、関西、九州―山口の各地方をわが同盟の三大拠点として位置付け、組織体制を確立することを追求してきた。この地方委員会は基本的に労働者、学生、青年、被抑圧人民諸階層の実態を持ち、運動を持っている。全人民にわたる指導体制の確立が必要である。もちろん各地方の政治闘争、反戦闘争、統一戦線、また労働運動の建設を主眼とする指導も鋭く問われている。こういったことに対応し組織を確立し拡大させていくために、指導体制の強化が課題となった。(以下略)
 〈書記局の強化〉(略)
 〈三里塚・統一委行動隊の堅持〉
 この路線は〇四年大会の大きな組織路線の一つである。三里塚を拠点に同盟の行動隊を確立していくことは、現在の階級情勢下にあって極めて大きな目的意識性がいる。数度に渡ってこれを実現してきた。あくまでもこの路線を堅持しやり抜いていく。
 〈編集局の建設、機関紙スタイル問題〉(略)
 〈綱領委員会の設置〉
 この間、わが同盟の〇四年綱領に対して綱領改定の提案と論議がなされている。改定の中身を確定していく上でも綱領委員会の設置が必要である。

 ▼3節―2項 一般的に確認するべき組織建設上の教訓

 第一は、中央指導部の建設、また組織中枢の建設の立体的構造の確立を意識的に進めていく意義についてである。政治局(プラス中央諸機関)と中央委員会の一体的・立体的な組織構造を確立し、同盟の意志の形成と執行の基本的スタイルを確立していくことが、同盟建設のもっとも重要な課題となること。政治局の中央指導部としての独自の力の確立は必須の事柄であるが、他方では全同盟を代表する中央委員会の意志と能力、すなわち現場での組織活動を代表する力を確立することを抜きに同盟の根幹での建設は困難である。もちろん党大会の実現と全党論議は大きな意味を持っている。ここの確立が重要である。
 第二は、組織総括を実行することを通して委員会の確立、組織会議の確立を進める地平に全同盟組織が到達していくことである。さまざまな会議建設の報告がなされてきた。簡単な報告やメモなどさまざまな形態があるが、会議において、総括、問題点、方向性について全構成員が、一致して検討していく組織的レベルを作っていくことが必要である。とくに会議の現状、在り方に対してそれ自身、責任者が見解を明示していくことが重要であるだろう。それは委員会の団結、結束、信頼関係の形成という側面を持つ。ある意味では共産主義者として、共産主義者相互の関係として組織総括を割り切って実現できる組織の力を持つことである。また全同盟的総括、方針を一つのスタイルとして提起できる組織へ前進することである。委員会それ自身の総括を責任者が組織建設の観点から提出し、構成員によって論議され検証されることが重要であり、この組織スタイルの確立が重要であるということだ。
 第三は、共産主義者の建設、共産主義的自覚、共産主義への積極性を作り出して共産主義者を確立していくことである。日々の組織活動の中で党員、組織員としての自覚は形成されるとしても、独自のマルクス主義―共産主義の学習を通して確実な共産主義者は建設される。また自ら共産主義者になっていくことができる。この過程を党の組織政策によってわれわれは実現していく。さまざまな系列・委員会で積極的な政策が追求されている。ここでの教訓を活かしていく必要がある。


 ●4節 綱領―理論の深化、創造への取り組み(綱領に関する総括)

 わが同盟にとって同盟の綱領の創造、深化は、〇四年で確立した地平を踏まえるならば、極めて重要な同盟成立の基礎をなす分野であった。共産主義理論の深化、プロレタリア解放綱領の創造は二十一世紀の革命的労働者党の活動にとって極めて重要な領域である。二十一世紀の理論―綱領の発展なくして現代のプロレタリア革命の主体的根拠は、極めて弱くなってしまうのは必然的である。わが同盟は〇四年綱領に基づいて、これをベースに作業を行い、一定の地平を作り出してきた。『共産党宣言』をわが同盟の綱領の原則的部分として確定しつつ、階級論や階級形成論、国際共産主義運動総括、あるいは現代帝国主義批判、現代資本主義批判などを深めてきた。ただやはり、実際上の路線上の任務や作業に流されて、〇四年段階で深めるべき課題として設定した諸領域については不十分な作業に終わったことも事実である。三回大会以降、より積極的な取り組みが必要であるだろう。また現在、活動家の建設のためにマルクス主義の基本的な原理の把握の課題が問われ、この古典領域においても原則的にテキストにそった整理と共に、過去の論争、現在の論争についても整理していくべきことが必要となっている。スターリン主義批判、宇野理論評価、『ドイツ・イデオロギー』などの解釈、また党建設論における『共産党宣言』の解釈についての討議など。もちろん古典解釈だけでなく現代思想・理論、例えばわかりやすくいえば「ネグリの非物質的労働論」の批判における、マルクスの価値論や唯物史観、『資本論』や『ドイツ・イデオロギー』の現在的再把握、再解釈について欠かせない問題が出ている。労働運動などでは「ワーク・フェア」「アクティベーション」や「ナショナル・ミニマム」などをめぐる論争もある。「同一価値労働・同一賃金論」論争も一部で関連している。
 『戦旗』の定期発行と三面論文の掲載、とくに三面で理論課題については確実に挑戦してきた。また『共産主義(イズム)』十七号を同盟の政治理論誌として出版した。イズムをどう位置付けていくかは今後の課題である。『共産主義』を発行する意義は基本的に現代のプロレタリア革命を実現していくための政治理論を広く全人民に提示し、革命運動の前進を勝ち取ろうとするものであるが、『共産主義』の名の通り、これは一次ブント、二次ブントが出版してきたものであり、わが同盟がブント理論をあくまでも継続していくことを表している。現代世界におけるプロレタリア革命運動のための真の理論は、われわれにとってはブントの革命理論をベースに置く以外にない。もちろん過去の理論のレベルでは新しい二十一世紀の革命を推進していくことはできない。新たなブント理論、思想、綱領をわが同盟が創造していく他はない。また『共産主義』は理論一般を扱うものではない。政治や路線の実践的諸課題に関しても積極的に提案していく。
 現在、機関紙『戦旗』の活用、積極的な党建設への定式化が課題となっている。『戦旗』をいかに活用し党の建設に結びつけていくのか、またいかなるものとして活用していくのかが、紙面の変更問題を含めて大きな課題となっている。現在の活用状況をとらえ検討し、課題を明確にしていくことが三回大会の一つのテーマであることは間違いない。           



 
■2章 情勢分析

 2010年代情勢の特徴と現代帝国主義、現代資本主義の危機


 ●1節 2011年を前後する帝国主義、資本主義の危機の諸現象  


 ここではまず、ここ数年に起こった全世界での帝国主義・資本主義の危機的現象と労働者階級人民の動向とたたかいについて見ていく。
 大きい事象は、11年3・11に日本で福島原発の大事故(メルト・ダウン−水素爆発)が発生し、大量放射能漏れ、制御不能の事態をもたらしたことがある。また、大きくはソ連崩壊以降の世界体制にあって、全世界の資本と資本家階級は、資本主義、帝国主義の新たな発展の時代を作り出そうとしたのであったが、その結果は、確かにグローバル資本主義とでもいうべき世界体制を作り出したものの、しかしこの歴史的時代は、08年の世界恐慌の爆発とそれ以降の世界的な長期不況の継続、これを巡る労働者階級との抗争の激化を、また第三世界への侵略戦争の継続と、これを巡る人民との抗争の拡大をもたらすものでしかなかった。米帝、多国籍企業を中心に世界政策(世界編成の政策)は実行されたが、この運動は現代資本主義と現代帝国主義の反労働者的、反人民的性格を顕著にあらわしたのである。21世紀に入っての資本主義、帝国主義の運動、政策は結局、多くの労働者階級、被抑圧人民を生活と生存の危機に陥れるものに他ならなかった。また特徴の一つに世界経済体制の運営においてはこの間、G7からG20へのヘゲモニーの移行が見られた。
 全世界の政治、軍事、経済では以下の現象が見られた。

 ▼1項 資本主義、帝国主義の危機の表れと動向

 a)米帝・多国籍資本
 米帝の01年「9・11テロ攻撃」に対するアフガン、イラク侵略戦争の開始、朝鮮民主主義人民共和国(以下「共和国」)に対する軍事的重圧。基本的にこのイラク、アフガン両国に対する侵略戦争は人民の抵抗によって勝利的に貫徹できず、撤退を余儀なくされる。また共和国に対する重圧攻勢は「六者協議」の中断によって進まず。
 米帝の新自由主義−グローバリゼーションの世界政策は08年「リーマン・ショック」を契機に金融恐慌−世界恐慌によって破綻。米帝の金融資本、投資銀行は相次いで破綻した。TPP路線、経済的囲い込み−経済圏の形成によって延命を目指す。ブロック形成による東アジア経済圏形成の動きへの妨害−ASEANの分断、またトヨタ叩きを通した自動車資本の防衛、アップルのサムソン提訴と対立の激化。
 財政政策(補助金、減税、低金利)の強化によって慢性的なドル過剰と政府の財政赤字の飛躍的増大。ドル下落。月8千億円にも達する戦費で財政危機が一段と深刻化する。量的緩和−QE2の限界の露呈(インフレ、ドル下落、投機資本の増大)。国債の上限枠に到達、共和党の反対によって債務不履行の可能性、ドル暴落と金利上昇の危機。
 08年大統領選によって民主党・オバマが選出される。一定の人民の意思を代弁していた。イラク、アフガンからの撤兵・撤退、金融規制、保険改革など労働者人民の生活の防衛を主張する。しかし中途半端な取り組みに終始。金融資本、独占資本の救済と金持ちの優遇政策を継続し、移民の権利拡大公約の放棄など労働者人民の要求を裏切ることになった。

 b)EU諸帝国主義・多国籍資本
 08年恐慌(07年パリバ・ショック)に伴って、ギリシャ危機(国債の暴落)、−PIIGS危機の進行。ユーロの下落。ポルトガル、アイルランドの財政危機の進行。財政赤字の拡大。周辺国の脱落の危機。独帝と仏帝によるユーロの死守、EUブロックの死守の動き。IMFとEUによる12兆ドルにも及ぶギリシャへの救済決定は、しかし問題の先送りにすぎない。
 11年リビア人民の民主化要求闘争−カダフィ政権打倒運動への軍事介入(フランス、イギリス中心)、国民評議会政権の承認と膨大な戦費の負担による重圧を受ける。
 ドイツ、北欧諸国と南欧、周辺諸国との経済格差の拡大。ドイツの一人勝ち構造。EUの構造的矛盾の深刻化、全体的にEUの東欧、中欧への拡大構想の停滞、ウクライナ、グルジア問題。ロシアとの対立を巡る動揺。

 c)日帝・多国籍資本
 09年鳩山政権の成立、「東アジア共同体」と「国民の生活第一」の路線。旧来の自民党の対米同盟基軸、独占資本基軸の政策(これは小泉・竹中新自由主義路線に結果した)の修正を試みる。米帝・日本の国家官僚、日本独占資本の反動によって鳩山−小沢政権は崩壊、自民党型の菅政権成立。政権交替時の労働者人民の要求は頓挫。
 外交路線−日米同盟(安保体制)護持、日・米軍再編−辺野古基地建設、対中国敵視政策、対「共和国」敵視政策。
 経済政策−新自由主義労働政策の継続(派遣法改正・是正の放棄)、企業減税と消費税増税の策動、TPP米経済圏への一体化政策推進。

 3・11大震災と原発大事故以降
 世界恐慌下における震災と原発事故は日本資本主義、日本帝国主義に深刻なダメージを与えている。グローバル資本主義の下における多国籍企業間の競争は、不況に伴い激化の一途を辿っている。日帝・企業の後退は他のドイツ、韓国、中国企業のチャンスなのである。大幅な貿易赤字の拡大傾向、一兆円に接近する月間赤字(4月、5月)。原発事故の収束不可能性−放射能の外部拡散の深刻化。原発推進勢力−権力構造の護持と一層の権力の腐敗の進行。人民への犠牲の押しつけ。
 大連立への動き、米帝、国家官僚、財界、連合労組などの既成の政治集団、利益集団の反革命的密集−有産階級の結集による危機の突破。目指すのは大衆増税、労働力の流動化−低賃金化、人民の抵抗・反乱に対抗する治安弾圧の強化、天皇制(イデオロギ−)攻撃である。

 d)中国の資本主義国家化、国家的台頭
 中国はスターリン主義官僚による独裁国家であるが、ソ連崩壊以降急激な資本主義化を開始し、資本主義大国としての位置を固めつつある。GDPで昨年日本を抜いてアメリカに次ぐ世界第二位に浮上した。確かに労働集約型の繊維や雑貨などの軽工業部門を中心とした低賃金を条件とした国際競争力によってではあるが、膨大な貿易黒字を実現している。近年では鉄鋼、自動車などの部門でも一定の力を付けている。最大の米国債(ドル保有)国となっている。しかし賃金上昇に伴い急激なインフレ(とくに食料品)、不動産価格の高騰があり、公害、食品汚染が進む。
 経済規模の拡大は必然的に軍事的、政治的台頭をもたらし東・南中国海を巡りベトナム、フィリピンなどとの領土争いを激化させている。レア・アースの保護化、資源外交を強化している。中ソ国境確定を果たし、日本、東南アジア諸国への外交攻勢を強めている。
 広範な労働者階級の形成、内陸部の開発路線によって旧社会の資本主義的な解体を進め、貧困層の拡大と切り捨て、民族抑圧の更なる強化を進め、政治的自由などの労働者、市民、被抑圧人民の権利の要求運動には、警察と軍隊使って徹底的な弾圧で臨んでいる。労働契約法の成立、賃金の上昇、「和諧社会」建設を掲げるが、行政官僚の不正、腐敗が深刻化し格差は一層拡大している。

 e)その他諸国、BRICs、これに続くインドネシア、トルコなど諸国の経済成長
 総じてグローバル資本主義に連結して、低賃金を武器にした製造業部門での生産拡大が進んだ諸国では、GDPの著しい伸びがあった。08年恐慌以降、アメリカ、日本、EU先進国ではマイナス、もしくはゼロから1パーセント台であるが、これら新興国では7から10パーセント台のGDPの成長を保っている。これが世界経済のとりあえずの牽引の構図となっている。しかし低賃金を梃にした製造業の拡大の経済構造は、賃金の上昇、物価の高騰、不動産の値上がりや公害などの規制強化によって、徐々に崩れつつある。中国からベトナムへの資本移動、さらにカンボジア、ラオスへの移動の例など。問題は一定の技術水準と資本蓄積を持つ場合、先進国多国籍資本の間の低賃金を求める資本主義的競争の結果にある。資源を抱えるブラジル、中国などは比較的独自の外交を展開できる。またベトナムではとくに激しいインフレが進行している。中南米では独自に南米南部共同市場(メルコスル)が持続し、成長の基盤を形成している。
 もちろんこれら諸国では主として、帝国主義国の金融資本、多国籍資本の導入による合弁などの形が企業展開スタイルであって、この点での搾取という側面も見逃してはならない。

 ▼2項 この間の労働者階級人民の全世界でのたたかい、解放運動

 米帝・ブッシュ政権の「戦争とグローバリゼーション」の世界政策とこれに伴う世界再編成に対抗して全世界の労働者人民の抵抗闘争は一貫して続けられた。とくに08年恐慌−それまでのグローバリゼーションによる階級支配の強化、搾取の強化に対する人民の怒りは広範な動きを示した。アメリカ、日本では政権交替をもたらし、中南米では依然として反米左派、非米の左派政権が継続、拡大の傾向を見せている。ヨーロッパでは08恐慌以降、政府、資本家による緊縮財政への転換−労働者人民の首切り、賃金カット、福祉切り捨て攻撃への抵抗運動が激化している。中東、イスラム圏、北アフリカでは民衆革命が成功し独裁政権が倒され、多くの国で反独裁の人民の決起が続いている。中国では格差拡大、政治的自由の否定に対する労働者人民の運動など、あるいはチベット、モンゴルなどの被抑圧民族への警察支配、治安弾圧に抗してたたかいが暴動・デモなどの形で拡大している。インド、ロシアなどでも運動は続いている。

 a)米国
 07年、戦争と失業に反対する運動がオバマ政権を生み出す。共和党政権の崩壊。医療保険の改革を巡るたたかい、失業拡大・移民排斥に対するたたかい。排外主義運動−ティーパーティの台頭とのたたかい。

 b)ヨーロッパ
 周辺国の財政破綻と危機、労働者人民への搾取・収奪の強化による乗り切りに対するたたかい、ギリシャ、アイルランドなど、巨万のゼネストとデモ、階級対立の深まり。スペインの「人民の真の民主主義を要求する運動」の高揚と全ヨーロッパへの拡大、ドイツ、イタリアなど反原発運動の高揚、脱原発政策を勝ち取る。またオランダ、ベルギー他で排外主義右翼が台頭。反移民、反EU運動。

 c)中東、北アフリカ、イスラム圏
 チュニジア、エジプトで独裁政権打倒の民衆反乱。バーレーンやイエメン、リビヤやシリアで人民が反独裁で決起、内戦的情勢へ。イラク、アフガンで米帝・多国籍軍に対するイスラム抵抗運動、侵略軍の支配は成功していない。

 d)中南米
 ペルーで軍人左派のウマーラが2011年6月の大統領選で勝利。ベネズエラ、ボリビアの反米政権は依然として存続しており、またブラジルやアルゼンチンなど米帝・多国籍資本の支配、新自由主義政策に反対する政権の誕生が構造化している。現在は米帝支持はチリとコロンビアくらいとなっている。

 e)中国
 急激な資本主義化による労働者階級の増大、賃金闘争の拡大、ホンダなど日系企業などでの労働者スト。公害、強制立ち退きなど権利無視に対する人民の暴動や裁判闘争などの決起。政治的自由を求めるネットなどによる独裁批判。粉ミルク食品公害、土地の強制収用、新幹線証拠湮滅事件などに対する人民の権利の要求運動は拡大し、治安警察の支配を揺るがしている。また被抑圧民族の同化や差別支配に対する抵抗運動の発展。弾圧への抵抗組織の建設が問われている。一方では、民衆の大国主義的排外主義運動が急速に台頭している。

 f)アジア他
 インド、資本主義化に伴う労働者のストライキが発展拡大している。スズキのストなど貧農の解放運動も東インド諸州で拡大−毛派による解放闘争は依然大きな勢力を形成している。また反原発の運動の形成。
 また韓国における労働者階級のたたかい、フィリピンにおける労働者、農民のたたかい。日本のトヨタ資本とのたたかい。東南アジア、資本主義の拡大にともなって労働者階級の組合結成と賃金闘争が全体的に高揚している。またネパールでは依然として貧農を主体とした解放運動が政府樹立を目指して、たたかわれている。

  
 ●2節 米帝・多国籍資本の「戦争」とグローバリゼーションの
   展開と破綻・再編。各国帝国主義・資本主義国の生き残りを
   かけた争闘の激化


 ▼1項 00年代から11年への情勢の推移と基本的な特徴


 ソ連崩壊以降の90年代、米帝・多国籍資本は「金融の自由化」「IT革命」を梃に経済分野で巻き返し政策を展開し、00年代にはこれを受けて米帝・ブッシュ政権は米帝による新たな世界秩序の構築を目指して政治、軍事、経済の全分野にわたる世界政策を展開した。戦争とグローバリゼーションの全面発動であった。米帝・資本(米)は製造業に対する金融資本(金融部門の資本の意味)の優位を確立しつつ、戦争によって抵抗する被抑圧民族の運動を破壊し、これによって他の日本、ドイツ、フランスなどの諸帝国主義・資本の動きを制動しようとした。また米帝と米多国籍資本が目指したものは米社会の階級支配秩序(人種差別を基礎にした形式民主主義、自由主義体制)を全世界に強制・拡大していくことであった。いわゆる新自由主義の拡大である。
 この結果、唯一の世界政策を展開できる中心国・米帝と米多国籍資本は、イラク、アフガンなど第三世界諸国への侵略戦争を展開しつつ、全世界でグローバル資本主義とでもいうべきシステムを確立し、独特の資本主義の拡大局面を生み出した。特徴的には金融業部門の異様な発展と全産業部門からの搾取の構造を作り出し、製造業では技術と労賃を軸にした世界的な競争の激化の時代を作り出した。ここでは一定の政治的安定と国民的教育を有する第三世界各国で著しい経済的発展を見、先進国では製造業部門で資本による労賃の切り下げ競争が激化した。米帝・資本の新自由主義政策の全世界への拡大である。
 しかしこのグローバル資本主義自身の展開は、米国の低金利政策を背景にした住宅と株の価格上昇による金融資本(金融機関)の利益拡大という条件を大きな部分で前提しており、米国内の住宅バブルに大きく依存したものであった。また金融部門の拡大は90年代のアジア通貨危機に示されるようにIMFと結び付いた金融資本の投機的傾向を強めた。新興国(中国やインド、東南アジア諸国)やEU諸国、日本、韓国の資本は、対米市場への輸出を前提としたシステムであった。EU諸国の不動産バブルの発生もこの連関のうちにある。この米帝・多国籍資本が中心国として生み出した一時代は急速に終わりつつある。すなわち米帝の戦争政策が直接にはイスラム主義を掲げる武装抵抗運動によって頓挫しつつあること。イラク撤兵、アフガン撤兵の表明に至っている。もちろんこれはイスラム勢力に追い出されたとまでは言えない。現地政権は過渡的な形態を取っている。軍事的な膠着と戦費の増大、戦死者の拡大は米帝に大きな打撃を与えている。
また08年のアメリカ発の世界恐慌が最初はサブプライムローンの破綻を端緒にした金融恐慌という形で爆発した。グローバル戦略、新自由主義政策を通した世界経済体制の再構築の戦略は恐慌となって現れた。これに伴ってアメリカ型の階級支配システムの世界への外延化の運動も大きな打撃を受けたのである。

 ▼2項 11年を取り巻く全世界の現状とその特徴

 現在の情勢は、米帝・多国籍資本による90年代、00年代において実現した世界体制が崩壊し再編される時代を迎えているということを意味する。

 a)08年世界恐慌は解決不可能であり、財政破綻と失業者の増大を結果していく。08年恐慌以降、各国帝国主義、資本主義国家では大規模な経済対策が展開されたが、企業倒産や失業を何ら回避できるものではなかった。アメリカでは、オバマ政権が、金融機関の救済、GMなど独占企業への資金供与・救済と金持ち減税を継続し中間層の減税を実現した。しかし圧倒的な信用崩壊に直面するアメリカでは不動産・住宅部門は落ち込み、依然競売は高水準であり、製造業の競争力の復活も進んでいない。しかも膨大な戦費と資本家の救済によって急速に連邦予算は赤字を拡大させている。失業率は10パーセント近くの最悪の水準だ。
 日本では企業の利益が急激に落ち込み、高校、大学の新卒者の就職率は過去の氷河期を下回っている。失業者・非正規雇用者が拡大している。また国家の財政赤字は危機的レベルを越えて先進国で最悪の水準の800兆円にのぼり、GDPの二倍になっている。
 EU諸国では金融機関の救済に国家資金を投入したが労働者人民の救済の費用は極めて少ない。イギリスでは「金融立国」路線が破綻した。また経済の弱い国家、ギリシャなどでは急激に財政赤字が拡大し、国債の暴落の危機を迎えている。ユーロの通貨危機は深刻化していく。
 08年恐慌は現在も続いている。米国、EU諸国、日本などの帝国主義国、先進資本主義国に共通しているのは、極端な国家財政の赤字の拡大であり、この傾向はますます強まっていく。国民の税負担能力の低下に比べ企業救済や労働者人民への一定の社会政策費、あるいは軍事費が維持拡大されていく。また失業者の増大−雇用形態の悪化は長期不況の中で一層進んでいく。また貿易を巡って通貨安競争が不断に促進されていく。ドル下落、ユーロ下落、円高など基軸通貨ドルの危機を背景に一層の為替競争に落ち込んでいく可能性が高い。08年恐慌は74−75年恐慌と異なりグローバル資本主義の下における中心国アメリカによって引き起こされた。米・金融資本がシステム化した利潤獲得の構造を新たに打ち立てることができない以上、現在の信用崩壊は続いていく。また不安定な投機資本は世界経済を一層、攪乱していく。

 b)資本と労働力と技術の移動の制限がますます突き崩される段階、資本間の競争が激化し、交通と通信が一段と発展していく時代を前提に情勢は展開されていく。一旦作り出されたグローバル資本主義を前提に事態が進行していく。G7からG20への世界経済会議でのヘゲモニーの移行は、この一つの表れだ。一方では一段と貿易と投資の自由化(関税の低下)や労働力の移動の制限の撤廃の傾向が拡大し、他方ではより安定した政治経済ブロック(これは主に社会システム、階級支配の様式の一体化、法的習慣的一体化を実現することによってもたらされる)を形成する傾向が強まるという基本的構造が進行する。

 c)中心国・米帝の世界再編の政策が直接的に行き詰まり、深刻な危機をもたらしている。しかし現在、米帝以外に世界政策を展開する世界再編成を目指す国家は存在せず、帝国主義・資本主義諸国はこれに対応する政策を国家戦略とせざるを得ない。30年代型の世界分割−ブロック化とは決定的に様相を異にしている。米帝は圧倒的な軍事力を誇り、米帝のGDPは世界の四分の一を占める。異質な資本主義国家・中国が対米対抗の唯一の国家として経済力・軍事力を拡大しているが、その生産力の発展はグローバル資本主義に連結してのみ維持できるにすぎない。現在、米帝・多国籍資本の延命の道は金融業による利益獲得が軸であり、IT産業などあるものの国家的に見れば、大幅な貿易赤字、経常収支赤字の構造にある。トヨタを謀略的に叩いたものの、米自動車産業の復活の展望は無いのである。軍需産業、航空・宇宙産業、石油産業、農業−製薬資本などはもちろん依然として大きな力を持っている。しかし世界の編成力は著しく弱体化しているのは確実である。
 @米帝、多国籍資本とって、安定した金融資本の利潤の獲得の世界システムは動揺している。ドル資金は一層、過剰化して投機資本となって石油をはじめとする資源、生活必需品の食料などへ投下され、経済の不安定化は増している。現在の中東革命の一要因が食料価格の急騰にあることは明らかだ。A一つのブロック形成としてTPP路線を進めているが、日本を巻き込まない限り経済規模は小さく、また農業分野での米、オーストラリアの対立などをはらみ、東アジア経済圏の分断の争闘戦の展望は困難性を増している。B対中国政策を重視し、一方での戦略的対話−G2路線を取ってはいるが、それは他方では対中国包囲網を形成するという二面的なものであって、本質的に不安定性に満ちている。支配イデオロギーの対立による争闘戦の激化は避けられない。

 d)米帝以外の各国帝国主義、資本主義国家は世界資本主義に連結して大競争に参加し、一方では地域的な経済ブロック、政治ブロックを安定的に作り出すための政策を生き残りのために強化している。EU諸国はユーロを梃に政治経済圏を作り、米帝型の資本主義体制とは区別されたものを目指している。日本では鳩山民主党政権が、08年「東アジア共同体」を掲げてアジアの経済ブロックをアジア通貨基金の創設などを目標に踏み出そうとしたが、米帝と日本の国家官僚・独占資本とこれに連なる労働貴族の連合によって阻止され政権は崩壊した。中国はロシアとの国境確定を行い上海条約機構を固めつつ、東南アジア諸国への経済浸透、経済圏の建設に踏み出している。しかし中国の軍事的台頭は南沙・西沙諸島を巡る国境対立の激化を生み出し、外交路線は行き詰まりを見せている。過去の歴史からすれば中国軍の侵攻はあり得る。通貨元は国家管理の制約によって国際化は進んでいない。現在大幅な貿易黒字、経常黒字の国、ドル蓄積国は中国、日本、ドイツであり、製造業で独占資本が圧倒的な力を持っているところのみである。日本は大震災と原発事故で4月5月と連続で一兆円近くの貿易赤字を出しており、貿易黒字国から脱落する可能性が指摘されている。

 e)また忘れてはならないのは石油、ガス、レア・アースなど資源の獲得、農産品の争奪など帝国主義、資本主義諸国がグローバル化の時代、世界の果てまでも権益・利権を求めて抗争を繰り広げていることだ。また原発、鉄道、港湾などのインフラ輸出の競争は国家が全面に出る争闘戦の性格を強めている。『帝国主義論』に描かれている国家間の争いを見せている。

 ▼3項 情勢を規定する全世界の労働者階級人民のたたかいの特徴

 このような帝国主義や資本による政策、戦略が行き詰まりを見せている現在、労働者階級人民の運動がただちに政府や資本家階級の危機をもたらしていく傾向が拡大している。現在の情勢の最大の特徴はここにあるといっても良いだろう。

 a)一つには戦争とグローバリズムに対抗して第三世界の労働者階級人民が、この政策を砕く抵抗運動、解放運動を続け、帝国主義世界体制、資本主義体制を動揺させる決定的要因として前進したことである。もちろん戦後世界体制の成立以降も、キューバ革命やベトナム・インドチャイナ革命が帝国主義を動揺させてきた。しかし現在のたたかいと運動は新しい諸形態をとって展開されている。イラクやアフガンの人民の武装抵抗運動は米帝・侵略軍の制圧を許さず解放戦争の形態をとった。また中南米では、米帝・多国籍企業の支配(新自由主義的経済政策)に抗して反米・非米の左派政権が中南米ブロックを形成し、その動きは持続・拡大している。現在的には米帝の侵略や介入を阻止している。キューバ、ベネズエラ、ボリビアでは社会主義に向けた政策が展開されている。さらに中東−北アフリカでは旧来のイスラム主義を乗り越えて、政治的自由と貧困からの解放を求めて人民の反乱が連続的に開始された。もちろん独裁政権打倒の「革命」の後の権力の樹立をいかなるものにするのかの闘争は続いていくが、帝国主義と多国籍資本の支配が決定的に崩れたことを示している。とくにエジプト・ムバラク政権の崩壊は米帝の支配圏からのエジプトの離脱を意味しており、米帝の中東政策に打撃を与えている。これは侵略国家・イスラエルの危機とサウジなど米帝を支えるアラブ王政国家の危機に直結していく。リビア内戦にEU帝国主義が軍事介入し石油権益を確保する戦争にうって出ているが制圧できず、戦費の拡大によって疲弊し始めている。サウジ、バーレーン、オマーンなどの石油国家の王政に対する人民の反乱も強まっている。パレスチナ解放運動はイスラエルの入植・侵略に抗してたたかい続けられている。それは国連へのパレスチナ国家承認の動きに結び付いている。

 b)二つにはアメリカ、ヨーロッパ、日本の帝国主義国や中国、インド、ロシア、また韓国やASEAN諸国などでも、「戦争と恐慌」による生活危機に対して、多くの労働者階級人民が反帝国主義・反資本主義の運動に立ち上がっていることだ。政府打倒のゼネストやアメリカなど巨万の街頭デモを展開しているところもある。中南米や中東・北アフリカ諸国以外でも帝国主義と多国籍資本を制動する人民の解放運動は新しい発展の局面を迎えている。アメリカや日本では保守反動−ブルジョア政権が、一定人民の要求を取り入れるかの形で政権交替した。しかし現在、人民の要求は完全に裏切られつつある。ヨーロッパではむしろより保守的な政党になった。イギリスではキャメロン政権に交替、またフランス・サルコジ政権、ドイツ・メルケル政権は持続した。EUでは周辺国で欧州委員会とIMFによる新自由主義政策の強制、生活破壊の攻撃に労働者人民は激しく抗議している。例えばスペインの労働者人民の反乱と決起、イギリスの高校生の大規模な反政府デモ、集会の拡大など広範な人民の運動が継続・拡大しているのである。政権打倒はEUの解体へ連動する可能性を秘めている。一方では労働者人民の反乱に対抗して移民排斥を掲げる排外主義右翼の運動が強まっている。ノルウェーでは極右による労働党政権−労働党青年への爆弾と銃によるテロが発生した。革命と反革命との対立は激化している。
 また中国、インド、ロシアでも労働者人民のたたかいは拡大している。とくに中国では貧富の格差の拡大と官僚層による利権の構造の深刻化によって人民の反乱が強まっている。実際、政治的自由の剥奪によって人民の運動を圧殺してきたが、人民の運動は力を増し中国共産党独裁体制を動揺させている。ロシアでは排外主義運動が台頭し、労働者のストライキへの攻撃や反政府派政治家、報道人に対する攻撃が強められている。例えばチェチェンの人権侵害を調査したジャーナリストが国家警察・秘密警察によって暗殺されるというような事件も起こっており、こうした事態が常態化している。
 韓国、また、フィリピン、タイ、ミャンマー、インドネシアなどASEAN諸国では労働者人民の解放運動はストライキ闘争やデモ、また農地解放の武装闘争、被抑圧民族の決起、あるいは民主化要求、そして国勢選挙を巡って発展している。
 グローバル資本主義に連結し支配体制を護持しようとしても、安定した社会発展の展望はないことを、この間の「戦争と恐慌」を巡る事態は示した。中心国・アメリカ帝国主義の世界政策からの離脱は帝国主義・資本主義の危機を促進し、労働者人民に新たな社会の樹立の可能性を拡大させる。


 ●3節 日本の情勢        


 ▼1項 日本資本主義、日本帝国主義の危機の深刻化


 日本帝国主義・日本独占資本の危機は、2000年台の世界体制の再編とその動揺から本質的にはもたらされている。その要因の第一は、グローバル資本主義の一層の進展、その中での大競争の激化にある。多国籍資本間の競争の一層の激化、資本間競争での敗北は国家や独占体の没落に直結する。技術革新、合理化やリストラ、生産性の向上と相対的剰余価値の形成による資本の防衛が一切を決定する。これは国家の力、国力を一方で決定的な力としている。その要因の第二は相対的に安定した経済圏を確保することによって初めて、グローバル資本主義の動揺に対する生き残りを確保できるということだ。国際的に有利な位置を確保するための争闘戦は激しくなる。日帝と日本独占資本は戦後米帝の世界編成に結合して発展・持続してきた。しかし現在、体制間対立は消滅し、米帝の世界編成能力は後退し、さらに資本主義が一層結合する段階を迎えるに至り、日帝と日本独占資本は過去の存立基盤が失われ新しい時代・条件に直面しているがゆえに、過去の政策は政治・軍事・経済の全分野において行きづまりを見せている。もちろん日帝・資本は労働者階級に対する大攻勢を強め、搾取の強化、生産費の労賃部分の削減によって生き延びようとしている、またこれとは一定のズレをもちつつ多国籍資本は海外への資本の投下の拡大による生き残り政策を強めている。
 これは日本の労働者階級人民にとって、賃金は削られ雇用形態は改悪され社会福祉は削減され、しかも職場である工場が海外へ移転するという深刻な生活・生存の危機に追い込まれることを意味する。抵抗運動の拡大を予防するための治安警察の弾圧強化、反革命右翼の連動−左翼攻撃が強まっている。また差別分断の排外主義攻撃が強まっている。

 戦後日帝の国家権力の成立基盤の動揺と危機

 日本の情勢の特徴の第一は、戦後形成された日帝国家権力の体制的支柱が基盤を失い動揺の危機を迎えていることである。日帝は戦後、日米安保体制と天皇制を支配の支柱にしてきたが、官僚−警察−軍隊が国家権力の実態を担い、議会制内閣を制御しつつ体制を防衛してきた。また長期の支配政党であった自民党が、日本のブルジョア階級や小ブルジョアの利害を代表して政権を維持してきた。独占資本(多国籍企業)、ゼネコン−地方の土建業者、農協、医師会などを政権基盤としてきたのであった。このもとで、あらゆる補助金体制を作り上げた。
 急激な資本主義のグローバル化の中で、旧来の小ブルジョア、農民、自営業者に対する保護的政策は急速に崩れたが、00年代の小泉−竹中政権は多国籍資本の防衛とその利害の貫徹の政策を徹底的に進めた。新自由主義路線の日本での貫徹である。これは中曽根が主に労働運動、人民運動に対抗した一種の反革命運動として進めたものを、全階級・全社会に押し広げたものであった。小泉政権の路線はしかも大ブルジョアの利害を一般的に進めるというものではなくして、アメリカ社会を模範とする階級支配秩序を、すなわち、人種差別社会を前提としたそれを日本に強引に持ち込もうとしたものであった。しかしこれは09年の総選挙による民主党鳩山−小沢政権の成立によって頓挫した。

 <日米安保体制の動揺>−世界戦略(対米同盟基軸)戦略の危機−
 日帝の危機の特徴の第二は日米安保体制が一段と動揺していることだ。安保体制とは沖縄米軍基地を世界最大の軍事基地として恒久化するという沖縄人民の犠牲の上に成り立つものであった。安保体制は沖縄人民の基地の撤去運動の高まりによって破綻の危機にある。また安保体制の堅持が権力の性格を決定付けており、実際には国家機構(官僚、裁判所)ブルジョア諸政党の推進勢力によって担われてきたが、ここの動揺がある。
 「体制間」対立の消滅と経済のグローバル化によって、安保は現在、対中国包囲網の形成と米国主導のFTAといえるTPPの形成の梃とされている。少なくとも米帝はこのような攻勢を掛けている。しかし現在の日本の貿易相手国は中国がアメリカを抜いており、韓国、東南アジア諸国を含めれば日本の貿易に占めるアジア諸国の割合は6〜7割にも達しているのだ。米帝の世界編成能力の後退と米帝の現安保への要求は、旧来にも増して日帝を追い詰めている。しかし現在、日帝の主流のブルジョアはあくまでも日米同盟の死守、維持強化の道に進んでいる。鳩山が掲げた「東アジア共同体」路線は中途半端なものではあったが「駐留無き安保」を内包しており、それがブルジョアジーの動揺の表れであるのは間違いない。

 <官僚、警察、軍隊の支配体制の動揺>
 日本の国家官僚、行政機構は戦後一貫して人的、制度的に継続して権力の実態を担い、人民を支配してきた。また議会制内閣は自民党、または自民、公明連合によって担われこの体制を保障した。しかし「政治主導」を掲げた民主党政権が成立しこの権力機構に一定の制限を掛けようとするや、一挙に自己防衛の反動に出た。権力内部の争いが拡大した。
 特捜部による村木氏の逮捕は、民主党の石井議員を逮捕するためのものであった。しかし検察官僚が政権党の政敵を攻撃し、これを裁判所とマスコミが煽り抹殺していく構造が今回、権力犯罪として暴露されたのである。これらの諸機構の権力の行使は腐敗を深めている。
 もちろん今後、議会制政治がどうなろうともこれらの国家権力を担う集団は反革命的に結束して、自らの意志で体制防衛の策動を強めるであろう。しかし繰り返される権力犯罪や議会制の無視(選挙結果の無視)の本質の暴露と人民の力によって、旧来の安定した権力実態は不可能となった。
 こうした支配体制の動揺と危機のなかで、自民・民主党内の右翼潮流、在特会など「草の根右翼」を含む排外主義政治勢力の動きがいっそう活発化し、在日韓国・朝鮮人や滞日外国人への攻撃も激しくなっている。さらに、大阪府知事・橋下に率いられた大阪維新の会、名古屋市長・河村が設立した減税日本など、「国の政党とは一線を画し、国の政党の枠組みにとらわれない政治団体」(維新の会・綱領)であることをうたい、既成政治の打破をかかげて労働者人民をファシズム的に組織しようとする新たなポピュリズム的政治潮流も台頭してきている。これらの動向には警戒と闘争を強めねばならない。

 <自民党の政権基盤の崩壊と民主党の基盤再編>
 旧来の自民党の基盤は、独占企業(金融業資本、製造業資本)を基軸に、建設−ゼネコンと地方の土建業者、中小企業の資本家あるいは農協を通した農民、さらには医師会を通した医師など自営業者などであり、多くは利益配分の構造によって形成されていた。しかし現在では多国籍資本−独占体以外の利益を代表できなくなっている。経済のグローバル化によって地方の土木建築業(公共投資)は激減し、食管法は廃止され、医療の自由化が進められようとしている。基本的には大独占資本以外は切り捨てて行く性格を強めている。現在ではTPP路線、米国社会に結び付く社会再編によって独占資本以外は切り捨て的に再編していこうとする方向にある。しかしこれは日本の労働者人民はもとより、他の農民や自営業者などの一層の零落をもたらすのは必然であり、人民の支持を集められない。
 民主党は支持基盤が不安定であり、明確には労働運動の「連合」だけである。09年の総選挙での民主党の勝利は、農民や自営業者、中小企業関連などの人々が大量に民主党に流れた結果であった。その後、民主党は急速に二大保守政党下の「もう一つのブルジョア政党」としての性格を強めた。民主党内にはイデオロギーの違う諸グループが存在している。新自由主義の傾向の強いグループは、多国籍資本の擁護と日米安保絶対護持−TPP路線推進を目指している。小沢グループは旧来の自民党が基盤とした各層を抱え込む「国民の生活第一」の主張である。また連合内の旧同盟(民社)グループはこの間の民主党を規定する最大の勢力であった。実際各選挙で大量の票を集め議員数も拡大させている。このグループは「武器輸出三原則見直し」「原発推進」などを掲げる日本の独占資本の利益を労働運動の側から主張する部分であり、非正規労働者の積極的活用を主張する犯罪的役割を果たしている。現在の民主党政権は新自由主義グループと旧民社グループによって支えられている。
 今回の福島原発事故を巡っては、連合内部で原発「推進」(旧民社)と「凍結」(旧社会)の対立が激化する可能性がある。

 <日帝・多国籍資本と労働者人民への搾取と収奪の強化>
 日本の独占資本は一挙に国際化を進め、現在では主要な企業の生産の半分以上は海外生産となっている。また製品の8割、9割を海外の市場で販売する企業も多い。またこの間大震災のサプライ・チェーンの崩壊によって生産が急減し月一兆円にも及ぶ貿易赤字となったが、経常収支は黒字を保ったのである。すなわち海外への証券投資などによって一兆円以上の利潤が獲得されているのである。このように日本は完全に債券国家になっているのである。もちろんこの大独占資本の利潤が労働者人民に回ってくるわけではない。これは再投資に回されている。問題なのは労働者階級にとっては雇用形態の柔軟化(非正規化、有期化)を進め社会福祉を総体として削減し、生活と生存の危機を平気で強制してくることにある。ワーキング・プアの拡大、貧困層の拡大である。

 ▼2項 「3・11」以降情勢

 3・11の東日本大震災とそれに伴う福島第一原発の大事故は、日本の階級社会、権力構造の腐敗した本質を露骨に現した。
大津波によって、死者1万5844人、行方不明者3393人(2012年1月18日時点)を出した。また、原発の爆発によって多くの人々が放射能被曝し、今なお約15万人が避難を強制されている。政府による救援と救済の政策は遅々として進まず、民主−自民は抗争に明け暮れている。被災現地では労働者の大量の解雇が発生し、避難所の改善、住宅の建設は進んでいない。原発の事故現場周辺では高濃度のセシウムやヨウ素がまき散らされ、放射能漏れの防止対策も進んでいない。現場作業は下請けに丸投げされ、不安定雇用・低賃金労働者が深刻な被曝にさらされているのである。しかしこの間、現地の労働者、市民、住民、農民、漁民に対する救援、支援運動が全国の労働者人民によって取り組まれ、また原発事故の早期収束と原発廃止を求める全国運動が高揚してきた。
 この間の政府、資本階級の態度には、労働者階級人民を「安全に生活させる」という公権力の最低の義務を捨て去り、情報隠蔽やねじまげ、後出しによって人民の現実の被害を放置する本質が現れている。もはや統治能力を完全に失っている姿が現れた。
 大震災被害と原発被害とくに原発の被害に関して、この原因究明と責任者の処罰が一切不問にされている。「国策」として推進されてきたのだから事故は国民全体の責任であり、政府権力のみの責任ではないというペテンである。ここには既成の政治権力の防衛と社会体制の防衛への露骨な利益が貫徹されている。
 大震災−津波被害をここまで拡大させたのは、明らかに津波の研究成果を無視した中途半端な防波堤(壁)依存と住民の自主的避難力の弱体化にあった。「平成の大合併」といわれる市、町、村の廃止統合−行政機能の弱化、住民自治の弱体化、また公立病院の廃止などの地域施設の解体などが被害を拡大させたのである。これは大資本優先の政治、大店法の改悪による地域商店街の解体や企業の解体、農村・漁村の解体の政策の結果なのである。原発の受け入れもこのような地方の疲弊の結果でもある。
 また原発事故は「安全神話」とはかけ離れて、事故はあらゆる原発で多発していた。核分裂制御の不可能性は明らかであり、プルトニウムなどの猛毒の核分裂生成物、核廃棄物の処理の不可能性があるにもかかわらず、「電力の安定供給」の名のもとに原発政策は強行されてきた。日帝は核武装のために当初的には原発を導入したといわれている。しかし実際は「安価な電力源」として国策化され、補助金の簿外化や安全対策の放棄によって名目的な低価格を実現してきたのである。ここで重要なことはこの日本のエネルギー政策の根幹をなす原発政策において、地域独占体である電力資本が国家−政府と結び付いて独特の権力構造を確立したことである。このため今回の原発事故にもかかわらず、この権力構造は一切責任を取らず温存され持続していく可能性が強いことだ。経済産業省−原子力安全・保安院、原子力安全委員会、電力資本、電力労組、既成マスコミ、御用学者、そして地元原発依存勢力などが強固に結びつき反対派を圧殺してきたのである。ここに極端な腐敗がある。
一方、日本帝国主義はこの原発事故を軍事作戦に全面的に利用したのである。自衛隊十万数千人が東北地方全域に配置された。米軍は「トモダチ作戦」と称して海兵隊を派遣し展開した。兵士には被曝を強制しながら、核戦争下の軍事訓練を行なった。被災地を戦場とみたてた日米統合軍事訓練を、私たちは絶対に許すことはできない。
 新たな階級闘争の時代、権力を巡るたたかいを労働者人民が作り出すことによってしか事態は改善されない。戦前の軍部のように原発の第二・第三の爆発と「日本の崩壊」まで原発勢力は引きずり込んでいく。
 被災地の労働者人民、農漁民、住民の切り捨て、棄民化と並行して、大資本の導入による再建(いわゆる特区構想)、農民、漁民の賃金労働者化−大資本の利潤獲得の政策が、宮城県を中心に目論まれている。しかし他方では住民の自治、自立の農業、漁業の再建の取り組みも始まっている。
 国家・政府、既成の全組織、勢力を挙げて「原発被害」の隠蔽が行われている。とくに「放射能は少なければ体に良い」などと述べて恥じない御用学者の犯罪的な動きがある。また経団連の会長などは「とにかく原発推進」−被害があっても関知しないという腐敗しきった姿を露にしている。情報操作、情報の隠蔽を打ち破り、全原発の廃炉・廃止を求める人民の爆発的な決起が事態を前進させる。プロレタリア派はその先頭でたたかわなければならない。


 ●4節 現在の情勢分析の視角 


 ▼1項 戦後世界体制の再編と国連常任理事国体制の位置、
   また、NATO・日米安保軍事同盟、上海条約機構の実態的役割

 中心国米帝の世界編成能力の後退、とくに90年代から00年代と続いた「戦争とグローバリズム」の展開と現在の破綻という事態の中で、国際的な政治秩序、世界体制は大きく動揺している。戦前、戦間期、世界秩序の体制として「国際連盟」があった。しかし1930年代には常任理事国であったドイツと日本が脱退し、国際的な政治機関は実質的に崩壊し再分割戦争−第二次世界大戦へと結果した。21世紀の現在、戦後世界で政治・経済・軍事の全領域で世界を編成した国家、米帝国主義が力を後退させている。
 現在、資本主義のグローバル化、統一的世界市場の拡大と緊密化という経済的根拠が大きな規定力となっているが、戦後の世界体制を形成してきた国際的な政治体制として「国連体制」、その中でも国連常任理事国体制が極めて重要な位置を占めてきたことは明らかであり、21世紀の情勢分析の要因として大きな意味を持っているといえる。もちろん国連常任理事国体制、国際機関が超帝国主義的に生み出された世界政治を司る政治権力を形成しているなどととらえることはできない(ネグリの帝国論の誤り)。実際上は米帝とEU諸国とのNATO(北大西洋条約機構)と日米安保同盟そして中国・ロシア、中央アジア諸国の連携を規定した上海条約機構などの地域機関の国家間同盟や協定によって政治と軍事は担われている。とくにソ連崩壊以降は、中心国米帝以外は基本的に世界的に軍事展開しておらず、自らの国境の周辺国への軍事行動をとるにすぎない。ユーゴへの制裁、空爆は米帝主体のNATO軍によって展開され、また今年のリビアへの軍事介入は英、仏帝主体のNATO軍によって展開された。またアジアでは沖縄を最大の軍事拠点として日米安保を梃にして、米軍のイラク、アフガン軍事侵攻あるいは対中国、対共和国軍事的封じ込めの政策が展開された。上海条約機構は中央アジアのイスラム人民の解放闘争を圧殺する反革命同盟であるが、中・ロ国境確定と東アジアでの両国の軍事活動の相互擁護の根拠を作り出している。
 これらとは区別された次元で国連体制−常任理事が現在新しい意味を持って展開されている。米帝のアフガンへの軍事侵攻は「安保理決議」国体制でなされた。またイラク侵攻は「安保理決議」を回避し、有志連合でなされた。また今回「パレスチナの国家承認」の決議には米帝が拒否権を行使すると表明している(国連参加は常任理事国すべての承認もしくは棄権が必要)。

 <国連常任理事国の占める位置の変遷>
 米ソ分割支配体制として出発した戦後体制は、基本的に戦勝国による敗戦帝国主義制圧の体制であった。重要なことはここではアメリカ、ソ連、仏、英、中国の五カ国の常任理事国が拒否権を持ち、世界政治を左右できることであった。この五カ国の特権的な国際的位置は核武装や軍事外交で極めて有利な位置を持つことを意味した。一種の国際的同盟なのである。もちろん戦後政治は米帝とソ連スターリン主義の「冷戦」−「東西対立」を激化させたのであったが、結局「国連」の枠組みと常任理事国の位置は変化しなかったのであった。1970年米帝の「中国承認」によって中国共産党政権が承認されたが、ここでも国連の位置は変化しなかった。もちろんこの「国連常任理事国」体制は、ヤルタ会談−ジュネーブ条約体制と同一であり、帝国主義とスターリン主義による民族解放闘争の圧殺と全世界の労働者階級の解放闘争を押しとどめていくものであった。
 1991年にソ連が崩壊しロシアがその地位を継承するが、ロシアは世界政治を展開する力を喪失しもはや「資源国」に脱落していった。
 中国は00年代に入るとグローバル資本主義に連結し、また自らもグローバル資本主義を促進する国家として登場した。もちろん中国は、他の帝国主義諸国(ロシアを除く)と統治形態において異質な共産党官僚−これに連携する社会集団、階層が支配する政治的自由の欠けた独裁国家であり、経緯からして対米同盟を形成したものではなかった。しかし現在、ソ連崩壊以降「体制間」対立の構造が消滅し、日米安保、NATOの性格が変化し、中国の資本主義化の進行によって、国際帝国主義、国際的な資本主義国家による世界支配の確立、世界体制の確立の動力が強まっている。すなわち米帝は常任理事国としての中国の位置を前提とした世界戦略の枠組みの再構築を目指しており、中国もこの特権的な位置を前提に世界戦略を展開する形となっている。日帝や独帝がいかに常任理事国を目指そうともこの五大国家よって、その要求は当然にも否定されているのだ。

 ▼2項 戦後資本主義の国際通貨体制と統一的世界市場

 戦後の米帝を中心国とした世界編成は、資本主義圏と「社会主義」圏の体制間対立を一つの条件としながらも、資本主義世界を政治経済的に安定して編成しようとするものであった。
  戦後の資本主義を規定したブレトンウッズ会議は、資本主義圏の戦災からの復興と、国際通貨体制、統一的世界市場の再建−維持を主要目的としてなされた。ブレトンウッズ体制は、政治、軍事、経済全般にわたる圧倒的力をもった米帝が主導した世界体制であった。戦後の国際通貨体制は、金との交換を米帝が保証したドルを国際通貨とし、各国通貨はドルとの固定相場を保つという「金−ドル基軸通貨体制」であった。この固定相場制を維持するための国際機関として、国際通貨基金(IMF)が設立された。国際収支の不均衡に際してIMFが融資をして、各国通貨とドルとの為替相場を維持してきた。この「金−ドル基軸通貨体制」を維持するIMFと、国際復興開発銀行(後の世界銀行)、GATT(貿易と関税に関する一般協定)によって、戦間期のような通貨ブロック形成を阻止した。「復興・開発」という名目で全世界にドルが撒布され、世界貿易の拡大が進められた。米帝の圧倒的な力の下で、ドルを基軸通貨とした統一的世界市場が実現されていったのであった。
 しかし、71年ニクソン声明による金−ドル兌換停止、第四次中東戦争を直接の要因とする原油価格の高騰(石油危機)、そして、73年「パリ協定」から75年サイゴン解放へといたるベトナム民族解放革命戦争の勝利=米帝の敗戦−軍事的失墜、という事態の中で、資本主義世界は74−75年恐慌に突入した。金−ドルを基軸にした固定相場制の瓦解は、戦後資本主義の統一的世界市場を不安定にする重大な事態だった。73年以降、帝国主義国間では、変動相場制に移行した。
そして、73年からの蔵相・中央銀行総裁会議(G5、のちのG7)、75年ランブイエ会議から定例化されたサミット首脳会議によって、変動相場制の下であってもドルを「基軸通貨」とし、統一的世界市場を維持していく帝国主義間の合意が積み重ねられてきた。
  この70年代の世界経済の激変の中から成立した「為替相場の自由」「国際的資本移動の自由」が、新たな資本主義=グローバリゼーションを産み出してきたと言いうるだろう。IMFは70年代後半に変動相場制を容認しつつ、発展途上国、新興国の国際収支赤字、財政赤字に対して短期資金融資を行なう「国際的金融機関」に変質した。帝国主義の金融機関(銀行)のグローバルな融資を世界規模で最後的に保証する役割を担うようになった。IMFによる短期資金融資、世銀による中長期の融資は「コンディショナリティ」なる融資条件が付いている。それは、途上国、新興国の経済政策総体を新自由主義的に改編するものである。まさに、「ワシントン・コンセンサス」=新自由主義を地球規模で強制していく役割を担ったのである。
  レーニン帝国主義論の中で明らかにされた「資本の輸出」は、貿易障壁と資本移動の制限が打ち壊されていく現代世界にあっても、莫大な規模で拡大している。帝国主義をはじめとする各国の多国籍資本は、直接投資をもって他国の労働者を直接搾取している。
  多国籍資本は、実体経済において資本輸出を無制限に拡張して、世界規模での生産体系を構築していくばかりではない。金融機関(銀行)、そしてヘッジファンドのごとき金融投機資本が、世界規模での投機を拡大している。資源、食料、土地、生産手段(資本)、通貨(為替)、あらゆるものを投機対象として、価格変動を引き起こし、その差益から莫大な収益をあげていく。結局は、全世界で生産される価値の一部を、「投機」によって収奪しているのだ。実体経済の世界的な拡張を土台にして、金融投機資本が国境を越えて駆け巡り、実体経済の利潤の多くを奪い去っていく。
  グローバリゼーションが進む現代世界における、この残虐な資本の展開こそ、地球規模での搾取強化、労働者人民の貧困化を引き起こしている最大の要因である。そればかりではない。08年金融恐慌、そして、現在の欧州金融危機にはっきりと表れたように、資本主義そのものを不安定化させ、破壊的作用をもたらすのである。
  90年を画期として、ソ連邦−コメコン体制の崩壊、中国の資本主義への移行が進む中で、資本主義の拡張は地球規模で進んだ。95年の世界貿易機関(WTO)の成立は、貿易と投資の自由を世界基準として打ち出し、帝国主義資本の多国籍化は一層進むこととなった。中国、ロシアなどがIMFに出資し、WTOには中国が2001年に加盟し、ロシアも加盟審査中になっている。資本主義化した中国、ロシアは、ドルを国際通貨として承認し、貿易・投資の自由を原則的に認めてきたのである。
  現代資本主義世界は、ブレトンウッズ協定が崩れ、かつての体制間対立ゆえの危機意識も喪失している。日々為替が変動し、国境を越えて莫大な資本が移動し、金融投機が横行する。しかし、この不安定な現代世界にあってなお、世界資本主義は、G7、G20の国際協議、あるいはWTO、IMF、世銀といった国際機関を通して、ドルを唯一の基軸通貨として承認し、統一的世界市場を護持し続けていくしかない。対立をはらみながらも、統一的世界市場を維持・拡大することこそが、現代帝国主義が延命していく道なのである。
  現代資本主義が統一的世界市場を維持している下で、その矛盾と対立はいかに発現しているのか。
  「貿易・投資の自由」を掲げたWTOは確かに全世界を網羅する規模で成立している。しかし、全く利害が異なる膨大な諸国が参加しているがゆえに、現実には貿易・投資の完全な自由をWTO全加盟国で確認することは簡単にはできない。自国の利害に適った「自由化」を進めようとする諸国は現在、二国間FTA、EPA、あるいは、地域経済圏(自由貿易圏)の形成を進めている。EU、ASEAN、NAFTA、メルコスルなどである。そして、韓国−EU、韓国−インド、あるいは、中国−ASEAN、日本−ASEANでのFTA締結などという形でも進んでいる。一歩でも二歩でも自国資本に有利なように、FTA・EPAの条件をめぐる駆け引きが激化している。各国資本にとって、この二国間、地域間の経済圏の確立は、国際貿易・投資の主導権をめぐる死活的な課題となっている。その交渉内容は、自国の支配様式を相手国に強制し、社会再編して従属的に取り込んでいこうとするものである。資本主義が世界規模で不安定化していく時代にあって、現代の争闘戦がこのような形で進展するのは不可避なのである。


 ▼3項 多国籍資本の性格と現在

 多国籍資本がグローバル資本主義の促進の要因として明確になってきているが、世界市場と国家との関係において、現在的な性格がより明らかになってきた。
 その一は、あくまで世界市場で大競争に勝つために、労働者階級のリストラ、雇用形態の非正規化を進め、また低賃金を求めて生産拠点の国外移転を進める傾向が一段と加速していることだ。現在、自動車、電機あるいは鉄鋼や機械の産業分野において、世界で10位以内に入らなければ安定した利潤は獲得されないといわれている。つまり生産技術の向上や労賃部分の削減だけでなく生産規模の拡大が不可欠なのである。もちろん米国のアップルやマイクロ・ソフト、グーグルのようなソフト販売会社は、本国・本社でのみ完成品を制作する場合もある。しかしこの場合もソフト開発の大部分はインドなどの企業に外注化されている。すなわち現在の多国籍資本は大競争に打ち勝つために、国内では極端な労働者の搾取を進めつつ、国境を越えた資本展開を普遍的な形とし、商品の売上が半分以上、外国市場であることはもとより、生産額も外国の方が上回っているのである。それだけ安定した世界市場と安定した外国の資本の投下先を求めている。これは逆にいえば、本国の生産にこだわらず、簡単に国外へ生産移転してくという意味を持つ。
 その二は現在の多国籍資本は、一とは逆に国家との結び付きを強め、国家を自己の資本に有利なように使っていくのである。この傾向がグローバル化の現在、強まっていることだ。多国籍資本が国家や社会にこだわらず、平板に資本の移転を進めていくことはあり得ない。そもそも最初にグローバル化した米多国籍資本は米帝の政治軍事戦略と結び付き、そのことによって利潤を獲得した。石油資本(メジャー)や食料・農業(農薬)資本などとは異なり、保護のなかった自動車(ビッグ・スリー)資本は進出に基本的に失敗した。
 現在問題となっていることは、単に安価で使いやすい商品が世界市場を席巻するわけではないということである。世界標準(例えば自動車の公害規制やEV車の電圧基準、電源仕様など)を巡る争闘やソフトの使用言語や思考スタイルの標準化−そうでないところは少数派として排除淘汰されている、こういう傾向が強まっているのである。もちろん原発の輸出や鉄道、水道などのインフラの輸出は国家の規定力に大きく作用する。またEUの排他的不正競争に関する制裁金の強制やアメリカのトヨタ叩きのような、経済外的強制もある。現在TPPで問題となっているように、米国の社会秩序(例えば国民皆保険制度が憲法違反とされるような文化)が外国、日本に強制的に持ち込まれることを意味する。米国の保険資本は日本の公的保険制度を解体して進出しようとする。農業や医療などの全社会的再編を巡る争闘戦なのである。多国籍資本はそれゆえ、本国の力、国力による争闘と結び付き、この争闘を煽る形で資本展開を進めるのである。



 
■第三章 方針

 21世紀初頭の日本のプロレタリア革命に向けたわが同盟の基本方針

  〜三回大会で確立すべき路線・組織・綱領について


 われわれは、三回大会においてこれまでの七年間の同盟実践を総括し教訓をあげ、次の展望を打ち立てて行くべきであるが、これは単に過去の実践の延長には設定されないのは明らかだ。その理由は、一つにはこの間の階級情勢が大きく変化しているからであり、これに対するわが同盟の対応が新たに必要であること、二つにはわが同盟建設において一定の組織建設の基盤が確立されたからである。
 わが同盟の実践、路線―組織―綱領の物質化についてわれわれは三回大会で、〇四年の確認である一つの体系を再検討し、主体的・客体的な条件に踏まえた飛躍を成し遂げなければならない。すなわち二十一世紀の一〇年代全体を見据えた、激動する日本―世界の情勢を見据えた新しい路線の確立、新しい組織の建設、新しい綱領を創造することを求められている。確かに今までの路線、組織、綱領は何ら否定的に総括されるべきではないし、あくまでも継承・継続されていく。諸実践も蓄積され継続されていく。ただこの再確認では三回大会は決定的に不十分であるということだ。


 ●1節 路線に関して

 客観的情勢は、米帝の「戦争とグローバリゼーション」の吹き荒れる時代から、この破産が明確になった時代へと移行した。もちろん中国、インドなどの諸国を強力に資本主義化していく傾向は継続している。また米帝の一元的な世界支配の後退は明確だが、米帝が相対的強者であることは間違いない。いわゆる新自由主義政策―公的部門の民営化と労働者の非正規化の支配の政策をはじめとする攻撃は、全般的に過剰資本の蓄積と利潤率の低下の圧力を根拠とするものであって、この政府、資本の攻勢は弱まるものではない。しかし、現在では全世界的に見て、この米帝・多国籍資本の世界編成の動向から離脱する政治ブロックが形成され、また政治権力を獲得していないとはいえ、労働者階級人民の反撃と反乱が対抗的に強力に生み出されてきている。この破綻した〇〇年代の帝国主義、資本主義が延命を継続するか否かは、闘争の結果による。階級闘争が帝国主義・多国籍資本の延命か否かを規定する大きな要素となってきている。この時代情勢に対応するわが同盟の「総路線」の確立が要請されている。
 また主体的に見た場合、わが同盟は「〇四年路線」(日本革命に向けた当面の総路線)について、この七年間で基本的な体系を確立したと評価できる。この路線の実現はわが同盟組織の全力をあげた活動によってもたらされたものであるが、ここに安住してはならない。この基盤、地平を踏まえて「日本革命のための更なる飛躍、路線の拡大」が求められる。もちろん〇四年路線のそれぞれにおいて未だ不十分な点は多々あるし、初期の目的からしてもっと大規模化してやるべき所は多い。しかしわが同盟の現在的力量では十分に成果を出しているといえるだろう。より以上の路線の拡大が要請されている。

 ▼1節―1項
 全人民的政治闘争、全人民的政治闘争潮流の建設、
 政治諸勢力の政治的統合の計画的推進


 二〇一二年の第三回大会で確立するべき総路線の基軸は第一に、流動化する階級情勢を見据え、日本帝国主義―資本家階級とたたかう日本の労働者人民の全人民的政治闘争潮流を十年以上の展望を持って作り出していくことである。「〇八年恐慌」や「3・11原発事故」に見られるように、日帝―支配階級の危機は深刻である。またさまざまな運動、闘争がこれに伴って形成されている。しかしこれらの人民の運動が力強く拡大していかない限り、帝国主義―資本家階級は危機を乗り切っていく。人民に犠牲を押しつけて資本主義体制を再編してくのである。決して自動崩壊はしない。問題は広範な労働者階級と被抑圧人民が反帝国主義・反資本主義の旗の下に結集し、既成の階級秩序を揺るがし打ち破っていくことである。そのような階級情勢、階級構造、運動と組織の構造を確立していくことが革命党派・労働者党にとって路線の目的となる。
 わが同盟は一つの政治党派として、ブントという歴史的な役割を持つ存在として、この広範な人民の結集構造の創造のために努力しなければならない。もちろん〇四年路線においてもこのような内容を否定したことはない。実際上は反戦闘争実行委の政治共闘やAWCの政治的な共闘、沖縄や三里塚の政治枠、あるいは労働戦線内部での共同、新しくは岩国闘争を巡る政治的統一戦線の形成、また二〇一〇年の横浜APEC粉砕闘争での共闘の拡大、二〇〇八年洞爺湖サミット粉砕闘争の共闘などの活動を継続し、また新しく作ってきた。問題はこのレベルを越えて、二〇一〇年代の一時期に、より広範な安定した全人民の政治闘争、運動の体系を確立していくことである。
 わが同盟は〇四年の総路線においてAWC運動、階級的労働運動、反戦闘争―反帝拠点の防衛を体系化し、この目指すところが「新たな階級闘争構造の創出」であることを明確化してきた。いわゆる六〇年代〜七〇年代の階級的な高揚の構造と、これと連関したブント、新左翼の党派の運動の存在構造を解明し、当時は革命的・戦闘的にたたかいえていたものが歴史の転換によって決定的に変化し困難となったこと、たたかい方が無力化したことを明らかにし、党派による一からの粘り強い「階級闘争の構造建設」が何よりも重要であることを明示した。ただそれは決して路線の軸の三つの内容による主体的な路線の推進、もっといえば主体的な陣形構築に結論を求めたものでは一切ない。むしろ過去の新左翼―ブントのたたかいが、社会党や共産党の平和と民主主義擁護の運動や労働者の賃上げや合理化反対の広範な運動が基盤にあったがゆえに有効なものであったが、過去の総評と全学連の連関による社会、全人民に対する切り込みのヘゲモニー形成を、現在は、現代的な仕方で、わが同盟が新たな内容で創造していくことを確認したものであった。すなわち総評に代わる左派労働運動―左派労働組合の階級的基盤をもって、またさまざまなたたかう人民、党派、政治勢力の政治的突出をもってこの構造的連関を形成し、日本の新しい階級闘争の形成、日本帝国主義―日本資本主義を動揺させる、また労働者人民に希望と展望を与えうる状況を作り出していこうとしたものに他ならない。一九六〇〜七〇年代に代わる新たな大衆運動の時代、権力闘争の時代を切り開いていこうとしたものに他ならない。
 現在的に問題となるのは「新しい政治」「新しい政治勢力の形成」のために、いままでの路線展開で勝ち取ったさまざまな共闘関係、党派関係を積極的に生かし、できる限りの潮流形成に踏み込んでいくことである。絞り込んで現在的な政治共闘、党派共闘を作っていくべきなのである。六〇年〜七〇年代、総評の下の反戦青年委員会―この下での左翼反対派の連合と連携、三派全学連の再建から始まる五派共同声明、八派共闘の意識的な形成、これが新しい時代を過去において作り出したのである。現在、積極的な現場共闘―他の潮流との交流、沖縄などの戦線におけるより以上の政治の枠組みの拡大、労働戦線の左派党派、グループ、勢力との積極的な交流と連携、政治的展望の一致など努力するべき課題は多い。現在の交流をより積極的に全人民的政治の形成の観点から推進していくべきなのである。もちろんわれわれは過去の六〇〜七〇年代、第二次ブントの政治の建設を一般的に理想化するものではないし、またこの時代を理想化するものではない。しかしブントが実現した左翼諸勢力の統合、全人民的政治闘争、左派統一戦線の形成、帝国主義、社会排外主義に対抗する潮流建設などの労働者階級、被抑圧人民の運動の広範な発展と前進の構造を目的意識的に作り出していったこと、そのなかでの革命党派、労働者党としての役割、党派性をしっかりと評価し、現在の時代情勢の中でそれらを積極的に生かしていくことが重要なのである。全国政治、反戦闘争の全国化、全戦線化、全人民化ための革命党派による努力は現在極めて重要であるということだ。
 階級闘争構造の指摘と共にもう一つ重要なことは、一定の必然性があったとはいえ、過去の三派共闘や八派共闘、党派間統一戦線が安保―沖縄闘争の過程で崩壊し、また最終的には八三年の3・8分裂をもって新左翼という枠組みの共闘は崩壊したということである。その後は確かに、部分的に共闘は出来ても全体を規定するものにはなっていない。もちろん三里塚の分裂や日和見主義党派との傾向的対立などはその立場において変わらないものだとしても、実際の場面では多くの連関構造がある。重要なことはこのような過去の分裂と対立をその直接の中身においては継続するものの、新しい階級闘争構造の確立、その一環としての政治的統一戦線の形成のためには、過去の事柄を踏み絵的に取り上げ対立を煽っていくのではなく、現在的な左派、戦闘的な部分を軸にして、信頼と信義の政治をしっかりと作り上げていくことだ。時代の要請と時代の動きを見据えて、要請に応え時代に対応していくことが重要なのである。
 その際、新たな政治、新たな勢力の共闘、統一を目指すに際して過去の総括から言えることは、日本的な宗派運動との関わりである。結論からいえば彼らは日本のソビエト運動、ソビエトを目指す政治運動―その一環としての共闘、統一戦線とは基本的に外れており、外部からの破壊運動にいつ転化するかわからない本質を持っている。現象的な言辞をもって評価するのは適切ではない。これが一つの六〇〜七〇年の総括である。左派、また部分的な傾向があったとしても宗派以外は大きな運動的統一の対象として見、柔軟なコンタクトが必要である。

 ▼1節―2項
 〇四年の総路線の深化と補強、そのための課題
 階級的労働運動を強化せよ 青年戦線の新たな確立を

 三回大会の路線確立の第二の基軸は、〇四年大会路線をより一層、大規模に強力に推進していくことであり、また青年戦線の確立などの新しい分野にも積極的に乗り出していくことである。特に重要なことは、路線の体系やそれぞれの路線が基本的にスローガン倒れに終わることなく、組織の活動、組織の建設と一体化してより具体的で路線推進的な内容で満たされて確認され実行に移されていくことだ。特に階級的労働運動路線の推進は全人民の運動の全体的発展にとっての基盤・基礎を成すものであって、一歩でも二歩でもこれを前進させることが絶対的課題である。AWC運動の発展―国際的反帝共同行動の推進、反戦反基地運動―岩国、沖縄、三里塚などの政治闘争、現地闘争の推進、さらに学生運動、被抑圧・被差別大衆の解放運動の形成、そして青年運動の開始などの全体的な路線的推進を体系的に実行していくことだ。単に〇四年路線の再確認のレベルに止まることがあってはならない。この七年間の実践の経験が生きていくものにすべきである。
 三回大会では特に次の事柄を路線推進の主体的な軸として確立していくべきであるだろう。
 a)階級的労働運動の建設
 わが同盟は三回大会において、あくまでも〇四年路線を継続してこの階級的労働運動の建設に全力をあげることを確認しなければならない。少なくともこの七年間のこの分野での活動によって一定の労働戦線の現状把握と有効な方針、手段、活動軸に関して明確にしてきている。左派労働運動の内部での活動を強化し、この内部で労組拠点を建設し、労働運動の潮流を再編していくことである。また階級実態的には非正規労働者、あるいは、民間中小、零細の労働者を積極的に基盤にして活動を進める。例えば介護労働者産別、運輸労働者産別などの全国的な展望を打ち出していく。あくまでも職場―地域の労働組合活動を積極的にわが同盟が担い、組合員と共に資本や行政と闘っていかなければならない。またこの中で同盟の一層の積極的な活動の分野として次の事柄がある。まずわが同盟が中心になって左派労組活動家のネットワーク機関誌を強化し、わが同盟の労働運動の立脚点を一層充実・強化していくことである。あわせて内外の労組活動家の主体形成の前進と一層のネットワークの拡大を進めることである。また現在取り組んでいる岩国闘争の階級的な意義を積極的に確認し、主体的なわが労組系の労組においてここにより以上の参加の構造を作り上げること、また一層の左派労組との共闘信頼を基礎に統一戦線的意味をもっての共同行動の場にしていくべきである。
 現在日本の労働運動は連合労働運動、労働貴族の指導部に支配された潮流が圧倒的な部分を占めている。また日共系全労連はセクト化している。もちろんこれらの中でも旧総評の流れを受け継ぐ左派系部分も一定存在している。しかし総じて連合運動は「武器輸出の推進」「原発建設推進」を掲げる反共労働運動、旧民社系、旧同盟・JC系によって支配されている。こういった資本主義の擁護、国益―企業防衛を一義とする労組官僚の支配とその運動に対決し、ここを打ち破っていく労働運動の形成が課題である。多くの民間中小、あるいは公務の労働者を基礎に、また非正規労働者をより一層の基盤とする左派系労働運動の統一と統合を進め、連合系や全労連系に打ち勝っていかなければならない。
 組織的には学生や青年の戦線から労働戦線への移行を確実に実行し、構造的に階級的労働運動を実現するわが同盟の主体的な根拠を拡大していくことである。三回大会では組織体制と結合した労働戦線の確立を成し遂げることを全員で確認することが重要だ。
 b)青年戦線の建設
 わが同盟は二回大会5CCにおいて「青年戦線」を学生戦線と並ぶ組織化上の路線として採用することを決定した。三回大会において、この青年戦線の建設の路線を〇四年大会路線に付け加えるものとして提案する。その理由は、現在の日本の青年、あるいは青年労働者を取り巻く情勢が急速に変化し、この層への新たな階級矛盾の集中がもたらされているからである。すなわち失業や雇用の非正規化が一挙に進められ、人生の設計も出来ない事態に追い込められている。青年層の現状変革性や現実の悲惨な支配への反逆の可能性を持つところの、反帝・反資本主義の青年運動建設の根拠は拡大している。この解放へのエネルギーを引き出すものとして学生戦線と並び青年層の組織化、青年運動の展開を積極的に位置付けていく。
 実際には、青年サークル建設、青年労組―ユニオン建設、その中間など、活動の方法はさまざまあるが、全国的な路線として実施する。青年戦線の指導部を全国的に確立していく。わが同盟にとって重要なことは、この青年戦線が学生戦線と並ぶ力と実態を持ち、次世代の担い手としての青年、若手が政治や左翼の運動に大量に参加してくることである。三回大会を契機にして、当面する革命の総路線の中に、一つの路線的体系を持った青年戦線の確立を目指していくということである。
 現在の左翼、左派、新左翼は、五十〜六十歳台の世代が、日共系などは六十〜七十歳台が年齢的に数的に活動家的の中心となっている。もちろんそれは労働者階級人民が過去において作り出した階級闘争、革命運動の形成の結果であることは間違いないとしても、団塊の世代や歌声喫茶の世代では世の中の革新、左翼の高揚はもたらすことはできない。現実の労働者、それも若手の部分の自由な運動と組織の建設、展開、現実に合った運動スタイルの形成によって、初めて現体制の打倒に迫るたたかいは可能となる。ロス・ジェネ世代、それ以降の世代の運動への参加が必要である。大胆に青年部分が活躍できる路線を確立していくことが重要である。
 c)政治路線について
 二〇一〇年代の世界情勢は〇四年段階とは明らかに異なっている。米帝の「戦争とグローバリゼーション」は一時代を画したが、二〇一〇年、一一年の中東―アラブ人民の決起や〇八年恐慌によって破綻の危機にある。中心国米帝の相対的な世界編成能力が著しく後退している。しかし総じて現在の帝国主義列強・多国籍資本、中国、インドなどの支配階級はさまざまな軋轢にもかかわらず、資本主義の防衛と拡大の一点において結合し、労働者階級人民の犠牲によって生き残ろうとしている。また二〇一〇年代は国際的な戦後の政治経済秩序―国連常任理事国体制とIMF国際通貨体制を防衛しつつも、この枠の中で壮絶な再編を巡る抗争が激化していく趨勢にある。それゆえに各国の支配階級、ブルジョア政府はその国家の政策を巡り、動揺と手直しに進まざるを得ない。もちろんこれは全世界の支配階級、支配集団による現体制の維持、資本主義の防衛の枠内にあるがゆえに、常に労働者支配の強化―新自由主義政策の強化の方向をとる。問題は労働者階級と全世界の人民がいかにこの既存の世界体制の動揺を自らの解放運動の強化に転化していくかである。人民の抵抗が拡大しない限り、悲惨な現実が強制されるのである。
 日本にあっても民主党政権は鳩山―小沢の一定のアジア外交の自由を掲げた路線は、既存の国家を担う主軸部分によって粉砕された。日帝―多国籍資本の利益の全面擁護、また支配集団としての官僚―警察―軍隊の独裁化、マスコミ資本や大学の御用学者、あるいは連合労働運動幹部を動員した体制擁護、こういった戦後の支配の集団、権益の集団が体制の危機で前面に出ているのである。民主党政権は日本帝国主義の戦後支配体制の支柱である日米安保と天皇制を護持し強化することによって危機の突破をはかる性格を明確に打ち出した。日米軍事再編や今回の原発の爆発事故においてはこの政権の階級的本質がより露になっている。また、多国籍資本を擁護するという点において、民主党政権は、結局、労働者階級の非正規化、低賃金化や消費税の増税などの大衆収奪を一層進める政策を露骨に進めることになっている。しかしこの民主党政権の安保護持―天皇制擁護―多国籍資本擁護の政策は決して展望のあるものではない。次回の選挙では自民党―公明党連合が政権を取る可能性が強いが、これも現在の政権以上の反人民的、反労働者的な性格を持つことになる。このような政権のたらい回しによって延命を策する他に無い。危機の中で民主、自民の大連立の構想も現実性を増している。その目的は資本防衛、多国籍資本の防衛、資本家の防衛と全有産階級の防衛である。
 問題はかかる明確な事態に対してプロレタリア派、革命派がいかなるたたかい、運動を組織していくかである。危機をつのらせる右翼、反共集団、排外主義集団は、暴力で人民の運動や組織を破壊し、差別分断の支配秩序を強化しようとしている。
 民主党―連合指導部、日共勢力、宗派の集団は一切事態を切り開けない。帝国主義に迎合するか、人民の運動を分断するかである。
 わが同盟は三回大会において、基本的には日米安保強化―日米軍事再編に反対し、これを通したアジア侵略の外交に反対する。労働者階級人民に対する新自由主義政策、搾取の強化と分断に反対する。排外主義的な国民統合、治安弾圧による支配強化に反対する。さらに全世界の労働者階級、被抑圧人民の決起と運動に応えてプロレタリア国際主義の実践を追求する。このような日帝の、また多国籍資本の総路線に対抗し広範な労働者階級人民の反撃と運動の拡大と統合を果たしていく。AWC運動、階級的労働運動、反戦闘争―拠点防衛を中心とする〇四年の政治路線、総路線を堅持していく。
 d)組織路線に関して
 組織路線は基本的には〇四年の組織路線をしっかりと継続し、これに加えて青年戦線の組織建設を新たに作り出していく。
 わが同盟の現在的な組織路線は、@階級的労働運動の構築のために、全国的な労働運動活動家集団を建設していく、A反帝学生運動の建設のために学生運動活動家集団を建設していく、BAWC運動の強化のためにAWCを担う活動家集団を全国に作り出していく、C反帝闘争、拠点防衛のために三里塚現地闘争本部―統一委行動隊の建設をあくまでも進めていく、というものだ。わが同盟はこの組織路線を路線推進の主体的、組織的根拠とするべく全力で推進し、一定の成果を勝ち取った。これらの組織路線は三回大会以降も確実に実行していく。
 そしてDとして、青年戦線―青年運動を担うための活動家の育成を一個の組織路線として採用していく。もちろんこれらの活動家集団建設の任務・課題が、現在われわれの力量に比して多すぎ煩雑になるということもあるが、あくまでも青年の組織化を独自に担う組織体、グループの建設と活動家集団の建設、その蓄積が必要である。


 ●2節 組織建設について

 われわれが組織建設について、いわゆる党組織の建設に関して三回大会で確認するべきことは、基本的にわが同盟組織を実態的な組織体として確実に建設していくことである。階級への運動的指導や思想・理論的な指導の内容の充実という事柄一般には解消できない組織の実態を一個の実力として作り出すこと、「ヘゲモニーの党」や「運動の党」への同盟組織の解消傾向とたたかい、一個の党という実態を作り出すことである。もちろんわが同盟はその〇四年再建―統合大会においてかかる観点は確認してきたし、わが同盟の綱領と規約にこのなすべき観点はしっかりと確定されている。しかし七年間の同盟実践では十分に成功してきたとは言い難い。
 三回大会の組織に関する確認点として次の二点を提起する。
 a)会議建設を重視し同盟の組織力を高めていくこと
 その第一は、組織を確実に作り出すために、会議―同盟の組織会議を徹底的に重視し、ここでの論議と一致を強力に推進していくことである。全同盟を貫いて、各級機関、各段階を貫いて組織を建設することを目的に会議への密集、会議の定期的開催、一致と団結形成、信頼関係の形成を進めていくことだ。もちろんこういった会議の建設の重視ということは掛け声的には常にいわれてきた。しかし十分に成功していない。ややもすると大衆運動の方針分析や理論・思想の内容に流れて、肝腎の組織の一致の在り方やそのための努力が欠けているところがあった。構成員が討論し一致し結束していくというスタイルを十分に作りだしていけない構造にあった。こういう組織それ自身の運営と在り方を創造していく力を重視し作り出してかなくてはならない。もちろん各構成員、各同盟員の会議、組織の建設に対する主体的自覚が前提的に要求されている。しかもここにとどまっていてはならない。会議で中身を討論し一致し団結する基本的な在り方を確実に作り上げていかなければならないのだ。とくに三回大会以降、重要となるのは複数による(基本的には三人以上の)委員会建設、集団的指導部の建設である。同盟員、組織員の形成、確立のために、また同盟員、組織員の解体と崩壊を打破していくために会議をしっかりと作り出していこう。
 ここでは党組織論の基礎的なとらえ方が重要な支えとなる。すなわち労働者党、革命的労働者党の建設は労働者階級が自己解放のために必要な、避けて通れない手段であるということである。労働者は自らを階級へと形成すると共に自らを政党へと組織する。労働者階級にとって党とは必要不可欠な一つの団結体であって、それ自身は一つの自己目的である。それは実態として形成される。例え党が階級の自己解放運動を推進する目的において成立し、その目的の達成の暁には自己は解消されるべきものではあっても、階級社会においては労働者階級を指導するべき存在として形成されねばならず、ここを欠いた階級の解放運動は本来的な勝利の展望を持ち得ない。この党は階級組織と区別され、独自に確立される。労働者階級の解放を目指す共産主義者は、この党の内的な在り方を創造しなければならず、独自の結束の在り方、意思統一の在り方、団結の在り方を不断にとらえ返し、独特に作り出していく必要がある。規約といわれるものは本来こういった意味を持つ。党の独自の建設の必要性を認めただけでは不十分である。党は階級の解放の基盤の上に成立し、独自の団結を持つ。ここを共産主義者が党建設のために解明し、内容を作り出していく必要があるのだ。共産主義者の組織的結集体というだけでは不十分であり、結集の在り方が独自の内容で作り出されなければならない。
 会議の重視、複数による委員会の建設、組織的な一致と団結の形成、またこの在り方の解明と蓄積、各構成員の訓練、こういったものを徹底的に重視し党組織を確実に安定的に拡大させていくことが重要である。
 b)組織建設の四大政策を確定しボルシェビキ党的実態を作り出していくこと
 第二の確認は、基本的に〇四年大会と以降の中央委員会で確認された組織建設の方針、政策をしっかりと実現していくことである。またこの七年間の同盟活動で一定の成果を出したところと、今後より重視して成果を出していくべきところを確認していくことである。同盟の組織の実態の確立を強力に進めていくことだ。全国党、単一党、職革党を目指して粘り強く前進していくことである。
 三回大会では大きくいって次の四つの政策の柱を確立し実行してく。
 その第一は同盟の書記局の強化である。中央委員会の強化、政治局の建設、あるいは各専門委員会を引き続き強化していくが、ここではとくに書記局の強化が政策的に追求されるべきだ。労対、学対など各専門部をこの間作り出し、これがわが同盟を牽引してきたのは明らかである。これに踏まえて日常的に全同盟を指導する恒常的な機関として書記局を安定的に確実に作り出していくことが重要だ。(以下略)
 第二は同盟の組織実態建設のために地方委員会を全面的に強化していくことである。首都圏、関西、九州―山口を三大地方委員会として確立し、全国党派として明確な位置を確立していくことである。地方の全組織を束ねた地方委員会を実態的に建設していくことは、組織の拡大と安定化にとって極めて重要である。労働者、学生、青年、被抑圧人民の運動を統合し、地方の実情に踏まえた一個の地方の党組織、地方の指導部を建設することによって初めて本来の党派、同盟の力は備わる。ここの組織としての力の拡大と基盤の拡大が、わが同盟の展望を切り開くことは間違いない。労対、学対系列の一定の前進に踏まえ、これとの有機的な連結構造を作り出していくのも今後の課題だ。
 第三は中央委員会―政治局―編集局を同盟の指導部、指導機関としてしっかりと作り出していくことである。中央委、政治局建設はこの間大きく前進した。思想・理論的指導部として編集局を一定の水準で作ることが課題だ。中央委は大会から大会までの間の最高意思決定機関としてある。これにふさわしい内容の確立が必要だ。政治局は実質的な日常的な党運営の基軸をなしている。この地平を固めて次の前進を目指す。
 第四は、わが同盟の指導部、組織的中軸部分の若手への世代交代を確実に進めることである。もちろんブルジョア社会秩序と異なり、われわれ左翼の世界では一般的な定年制などはない。年を取っても左翼の現役として労働者階級人民の解放のために活動するものである。しかしいつまでも古い層、現在的には団塊の世代が固着的に支配しているのでは現在の若い革命運動の息吹、センスが組織の内部に持ち込まれない。これはやはり事実である。若いカードルの同盟の指導中枢への進出はわが同盟の若返りを意味し、大きく前進するチャンス、条件を拡大するのは間違いない。この意味で三回大会を世代交代のターニング・ポイントにするべきである。


 ●3節 綱領の深化と創造について

 ブントの思想、理論を現代世界において普遍的にプロレタリア解放綱領として深化し創造していくことは、わが同盟の重要な使命である。少なくともブントの綱領的党派性が二十一世紀の現代資本主義世界の根本的変革のすべての思想、理論ではないにしても、世界のプロレタリア革命運動の内にあって、一重要基軸であることは確かである。この作業はしかし、わが同盟の綱領の深化・創造の絶え間ない努力によってはじめて可能となる。ブントの思想、理論、党派性を現代世界の変革の一基軸として創造していく決意こそ、この綱領の確立・再確立の活動の前提的立場であることは言を待たない。
 〇四年の大会以降、綱領の深化と創造はわが同盟の活動の重要な軸を占めてきた。綱領―路線―組織の体系的推進はわが同盟の〇四年大会の確定の地平であって、これを綱領分野においても粘り強く推し進めてきたのである。しかし総括でも明らかにしたように、路線と組織の分野に比べてこの綱領の創造の分野での活動は、限定的であり不十分であったといえる。それは路線の推進にわが同盟組織の圧倒的活動部分が投入されていたことと関連がある。
 激動の二〇一〇年代を見据えるならば、現在さまざまな労働者階級、被抑圧民族、人民の解放のイデオロギーが生れ、また共産主義の枠組みにおいても、新見解が現れている。われわれは社会民主主義、スターリン主義あるいはイスラム主義などを根本的に乗り越えていく現代のマルクス主義をこそ確立・深化していかなければならないのである。帝国主義論、資本主義批判、階級論、階級形成論、唯物史観、共産主義論、価値論、国家論、権力論、さらには革命的労働者党論、組織論などすでに課題を設定し、この間一定進めてきた作業を踏まえ、次の段階へと前進していかなければならない。三回大会はこのための一つの画期にするべきなのである。
 三回大会以降は、一般的に綱領や理論、思想の重要性を再確認するだけではなく、この作業を一個の組織体として確実に進めることが必要である。実践的な活動で終始するのではなく理論的活動を意識的に展開するべきことを提起したのはマルクスやレーニンである。独自に実態を持った理論的指導部の建設の意義を確認して、活動を開始する。(以下略)
 レーニンは革命党建設に当たって、思想的、理論的指導部の確立の意義を明らかにし、一つの組織論として提起している。もちろんわが同盟はいままでも、この面で一定の組織実態を作ってきたが、結果として不十分であったことは間違いない。実際それほどこの共産主義の「綱領」―理論、思想の創造と言うのは目的意識性が必要であるということだ。〇四年綱領の発展、とりわけ綱領の原則的部分の二十一世紀的深化・創造は三回大会の大きなテーマである。ブントとしての理論的な発展の段階をここ十年の展望をもって作り出していかなければならないだろう。実践的任務は非常に過酷に、さまざまにある。しかしやはり素朴実践集団でない以上、われわれはわが同盟のマルクス主義的深化を放棄してはならないし、現在性に見合って深めるべきところは大胆に、理論的に挑戦していかなければならない。一定の組織体制、活動領域的重視の政策、理論的―思想的指導部の建設を過去からの延長ではないかたちで追求するべきである。全同盟員の積極的参加が求められる。



 

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