共産主義者同盟(統一委員会)






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   2012岩国行動の成功をかちとろう

    米軍再編―日米軍事一体化攻撃と闘う

          労働者反戦闘争の前進を切り拓こう!
                        





  ●1章 不安定化する資本主義、岐路に立つ世界

 二十一世紀に入って、資本主義の限界があちこちに露出してきている。資本主義が登場して以降、世界中で金融危機はくり返されてきた。しかし、それらは今日の危機と根本的に違っている。二〇〇八年にリーマン・ショックを引き金とするアメリカ発の金融・経済危機が世界を揺るがしたが、それから三年も経たないうちに、ヨーロッパの財政金融危機が抜き差しならないものとして発生した。単一通貨ユーロは、欧州連合(EU)の成功の象徴と言われてきたが、持ちこたえられるかどうかの瀬戸際に立っている。それは日本の超円高に連動し、日本の資本家たちを苦境に陥れている。
 かつての過剰生産恐慌は、勝ち残った資本をより強大化させ、過剰となった生産手段や労働者を廃棄して、次の新しい生産競争の土台をつくった。すでに、それは限界の域を超えている。
 先進資本主義諸国では、巨大独占化した資本は、より一層の利益を求め、市場・資源・安い労働力を求めて海外へと侵出し、企業減税・リストラ・規制緩和と国民国家内の経済を破壊し、国内市場の購買力を縮小させてしまった。それでも激烈な資本間競争はやむことはなく、資本の利益拡大にとって、世界はあまりに狭くなってしまった。今や生産資本の拡大よりも、手っ取り早く利益を生む金融経済へと過剰資本が吸収され、また軍需産業や石油産業の資本家たちにいたっては、アフガニスタンやイラクで行われたように、暴力的な市場拡張戦争をくり広げている。金融経済は実体経済からますますかけ離れ、詐欺的な手法もいとわない金融取引が拡大している。IT技術によって、十秒間に百億円単位の投機資金が、実体経済の数十倍の規模で売買取引されて世界を駆け巡り、巨額の富を手にする一握りの投機家が生み出される一方で、債権の紙切れしか残らなかったマネーゲームの敗者の群れがつくり出されている。
 もはや現代世界、資本主義諸国は、これをコントロールできない。世界は極めて不安定で危機的な状態に置かれている。国債の売買を含むマネーゲームのなかで、くり返される金融危機に対し、国家は莫大な資金を注入して金融機関や大企業を救済し、アメリカからギリシャに至るまで、国家的な財政危機をひきおこしている。これらは資本主義の末期的な様相を示している。危機を反革命的に打開しようと、大国主義・覇権主義・排外主義が増幅している。もはや、資本主義システムの枠内では、これらへの、いかなる処方箋も存在していない。
 ヨーロッパにおいては、ギリシャ、スペイン、イタリアへと財政危機は広がり、「緊縮財政」という名で、そのツケは、福祉切り捨て・年金カット・労働者の権利剥奪など、民衆へとおしつけられ、激しい階級間対立を引き起こしている。アメリカにおいても、住宅バブル崩壊のツケを払ったのは、相対的下層労働者や移民労働者などであり、また国家的資金で支援された倒産企業(GMなど)の経営者たちのかたわらで、圧倒的多数の労働者は、職を奪われ、賃金や年金をカットされた。大量の失業、貧富の格差はとどまることがなく、「ウォール街を占拠せよ」という運動が、アメリカ全土そして、世界に広がっている。
 いまや世界は岐路に立っている。資本主義の末期症状は、時代が新しい社会に向かう移行期にあることを示している。資本家や投機家、帝国主義者たちは、そのことをよく知っている。二〇〇一年9・11事件をきっかけにしたアメリカの戦争戦略の変化、先制的攻撃や非対称的戦争などは、は、この時代に対応したものであり、米軍再編もその下で進行している。


  ●2章 日米安保深化に突き進む日本の資本家階級

 アフガン・イラク侵略戦争は、「テロとの戦争」を旗じるしに、中東地域の政治地図を塗りかえた。これを通してネオコンとその関連企業が、莫大な利益を得たのは記憶に新しいが、この侵略戦争のさなかに練り上げられたのが、米軍再編である。
 米軍再編の推進力は、成長するアジア・中東地域に群がる多国籍資本・投機的金融資本・産軍複合体の権益防衛である。経済権益の軍事的略奪・防衛は、帝国主義の基本的なやり口である。つばぜり合いを行いながらも、アメリカと日本の資本家たちはアジアでの権益確保という共通項を持ち、日米安保条約を基軸にした安全保障体制の確立を不可分のものとしている。
 アメリカ帝国主義の軍事戦略の要となっているのが、日米軍事同盟の深化、すなわち日米軍事一体の戦争遂行体制である。新たな脅威として中国をターゲットにしながら、日本全土をアジア侵略戦争遂行の要塞にしようとするものである。この目的のもと、在日米軍再編の骨格は、世界一危険な普天間基地を`人質aに沖縄・辺野古に巨大な新基地建設を行ない、朝鮮半島をにらみ西日本軍事網の要衝にある岩国基地を大強化し、神奈川では米陸軍第一軍団司令部のもとに日米軍への共同指令拠点を確立する、という三つを柱としている。そして、これら沖縄―神奈川―岩国を拠点として、海の要塞と言われる原子力空母を海上で機動させるという構想なのだ。
 これら軍事的覇権は、経済権益と固く結びついているが、この権益は、資本家のみのものであり、かつての侵略戦争が明らかにするように、労働者民衆には負担と犠牲のみが強いられることを忘れてはならない。
 国内市場の縮小のなかで、日本資本はアジアへの市場拡張をめざすとともに、アジアのインフラ事業を取り込み、莫大な利益をその手にしようとしている。二〇一〇年、政府の「新成長戦略」(「`元気な日本"復活のシナリオ」)が、現在の米倉弘昌経団連会長を中心にまとめられ閣議決定された。それは「オールジャパン」体制でインフラ争奪戦に臨むことを明らかにしている。いま世界のインフラ分野での投資計画は、年間一兆六千億ドル、アジアのみで年間七千五百億ドルである。中心は、水道、原発、火力・水力発電、その発送電網、鉄道、情報通信事業、工業団地、宇宙産業など。原発一基で数千億から一兆円である。中国は百四十基、インドは数十基、ベトナムは三十基が予定されている。東芝・日立・三菱重工は、この受注のために動き、フクシマを中心とした反原発・脱原発の声を踏みにじり、昨年には、国会で一時凍結されていた原発輸出再開法を可決させた。
 インフラ事業は、原発事故ひとつとってみても明らかであるが、大きなリスクを伴う事業である。水道事業を見ても、国内においては赤字である。にもかかわらず、大阪市がベトナム、東京都がオーストラリア、北九州市は中国、横浜市はインドで、水道事業の請負を行ない、その長期的リスクは日本の公的機関(国際協力銀行、日本貿易保険、国際協力機構)が負い、短期的利益は企業(ベトナムはパナソニックが、オーストラリアは三菱商事や日揮、インドはJIF、中国は日立・東レなど)が得る、ということが進んでいる。
 巨大多国籍企業が莫大な利益を得るために、国家財政や年金などの金融資産を使って事業を請け負い、またその争奪戦や権益防衛のための軍事力を増強しようというのである。
 これと連動し、同じ二〇一〇年、防衛省は「防衛計画の大綱」を策定し、「急速な軍備増強と海洋進出を図る中国を牽制」するために、「南西諸島防衛」を強化すると同時に、日米による共同訓練を充実させ、装備面でも自衛隊独自の島嶼防衛能力を向上させる、という考えを明らかにした。今年に入っては、陸自は八月二十一日から、西部方面普通科連隊(長崎県佐世保市)が米グアム島やテニアン島などの離島を利用し、米海兵隊の第三海兵遠征軍(沖縄)と島嶼防衛の共同訓練を行なった。また二十六日に一般公開された富士総合火力演習では、敵部隊の島嶼部侵攻に対し、陸海空の三自衛隊を統合運用するシナリオを初めて導入した。これと連動し、与那国島などへの自衛隊配備が画策されている。
 日米安保同盟のもとで、日本の資本家たちは経済成長を果たし、多国籍化した現在、その権益防衛の利益にあずかっている。しかし他方、日本の労働者民衆は、多くの不利益を被ってきた。幾つかの例を述べよう。
 一つは、原発政策である。九月十三日野田首相は、原発ゼロの声に押され、選挙対策もあってか「二〇三〇年代に原発稼働ゼロ」方針を明らかにした。翌十四日、米エネルギー省のポネマン副長官や、マセ駐日仏大使から`懸念の意"が寄せられ、先進各国が見直しを迫った。米国では、核燃料の再処理は原則止めている。再処理技術(核兵器の原料となるプルトニウムを生産する技術)は、同盟国の日本が肩代わりして、技術共有している。『日経新聞』(九月十三日)によると、「日本が核燃料サイクルの一環として、核兵器の原料にも使えるプルトニウム生産を認められてきたのは、日米原子力協定が後ろ盾となった」と述べている。日本の原発政策は、一九五四年に中曽根康弘らが改憲・再軍備とともに持ちだした核武装化の野望のもとに、国策として進められてきたのだが、同時に、このような日米関係に根拠を持っていた。米戦略国際問題研究所(CSIS)のジョン・ハレム所長は、「日本が原発を放棄し、中国が世界最大の原子力国家になったら、日本は核不拡散に関する技術基準を要求する能力も失ってしまう」として、「日本は『原子力国家』であり続けることが責務だ」と強い懸念を表明した。米帝の核戦略のために、原発はつくられ、その維持と事故のために、多くの労働者が被曝し、フクシマでは故郷も生活も破壊され、そして今なお、巨万の民衆の反原発・脱原発の声を踏みにじって、「原子力国家であり続けよ」と、日米安保同盟は要求するのである。
 そしてオスプレイである。「空飛ぶ棺桶」という異名を持つオスプレイは、開発段階から多くの墜落事故を引き起こしてきた。海兵隊集計によると、二〇〇六年から二〇一一年十二月の間に、クラスA〜Cの事故が三十件に及ぶと報告されている。二〇一〇年、実戦配備されたアフガニスタンでの不時着事故で四人が死亡。今年に入って、四月にモロッコで墜落、六月には、フロリダで訓練中に墜落した欠陥機である。オスプレイの使用については、米軍内部でさえも異論が出ている。二〇〇三年には、米国防総省の国防分析研究所が、オスプレイの危険性に触れた八ページの意見書をまとめた。二〇〇七年には、海兵隊将校が、オスプレイの航行能力を疑問視し、「総合的に判断し、海兵隊が必要とする中規模輸送機として最良の選択ではない」と結論づけている。米国内では住民の反対で飛行訓練は停止、ハワイでも住民意見によって訓練計画は中止となった。しかし、アメリカの軍需産業・産軍複合体にとって、「冷戦」後に急速に減少した兵器需要に代わるものとして、高機能・高価な兵器の大量使用への転換モデルとしてオスプレイは無くてはならないものである。その「安全性」を証明するために、沖縄に配備され、岩国を拠点として日本全土七ルートでデモンストレーション飛行を行なうというのである。日米安保同盟の名のもとに、日本はこれを拒否するどころか、いつ・どこで・どのように飛行訓練するのか、さえも知らされていない。
 日米安保同盟は、日本の民衆を守らないばかりか、危険にさらし、愚弄するもの以外の何ものでもない。
 日米の資本家たちは、危険な原発やオスプレイを売りさばきながら、中東・アジア・太平洋地域での軍事演習という名の圧力を顕示し、この地域に深刻な政治的軍事的緊張を引き起こしている。反原発・脱原発闘争にとっても、オスプレイ配備反対闘争にとっても、米軍再編―日米安保同盟深化との対決は避けて通ることはできない。


  ●3章 労働者の階級的反撃戦を築きあげよう

 このような中で、日本階級闘争、とりわけ労働運動は正念場に立っているといってよい。
 日本では、九〇年代のバブル崩壊以降、日本資本の多国籍化や新自由主義政策―構造改革路線の導入が進んできた。経営者団体(ブルジョアジー)の「新時代の日本的経営」戦略(九五年)は、戦後日本労働運動の骨格であった企業内労組を、非正規雇用という流動的労働力の導入によって下から崩し、労働者全体から隔絶した「正社員クラブ」へと孤立させた。個別企業(雇い主)との闘争の総和であった戦後の経済闘争が、企業をまたいで流動する雇用を前に、大きな困難に置かれることになった。日本労働運動は、全くといっていいほど闘いえず、正社員労働者と非正社員労働者との対立も、この中から生み出された。当然、資本に対する闘争力も、かつてとは比べものにならないほど削がれてしまった。ブルジョアジーの戦略は成功をおさめることになったのである。
 それは労働者の非正規雇用化、失業・半失業の拡大をもたらし、労働者の貧困化を深めた。厚生労働省は九月十四日、二〇一二年版の「労働経済の分析」(労働経済白書)を発表したが、非正規労働者は前年比四十六万人増の千八百二万人で、雇用者全体の35・1%(前年比0・7ポイント増)となった。
 九七年をピークに、労働者の賃金は下がり続け、この十五年で百十四万円も減少した。公務員制度改革で、公務労働者の人員削減と賃金引き下げも進んだ。完全失業率は、4%半ばで一進一退しているが、〇八年リーマンショック時の派遣切りで知られたように、企業ニーズで使い捨てされる不安定な職場に、非正規雇用労働者は、出たり入ったりしている状況である。若年労働者の就業状態は、劣悪・最悪である。
 昨年の東日本大震災とフクシマ原発事故は、これにさらに打撃を与えた。生活保護受給者は、敗戦直後(一九五一年)の二百四万六千人を超え、二百六万以上となった(二〇一一年十一月、厚生労働省)。ワーキングプアを始め、それ以下で暮らしている人は、一千万人にも及んでいる。
 「格差社会」「ワーキングプア」「無縁社会」など、様々に呼ばれる社会の貧困化や荒廃が進んだが、それをフォローする社会福祉や社会保障の財源は、大企業優遇策という日本経済の構造的変化によって大幅に減少し、明日をもしれないものとなっている。国家財政のうち、法人税は、多国籍化と減税によって、この二十年で半減した(企業所得課税は九〇年6・5%→二〇〇九年3・2%)。大規模な社会的生産が海外で行われ、莫大な剰余価値は、日本社会には還流しない。そればかりではない。一方で、累進課税のフラット化が進んで、金持ちは減税され、多国籍企業化による産業空洞化がもたらした、国内企業の倒産、失業者の増大、就職難などが、個人所得課税を減少させ続けている(同上、8・1%→5・4%)。また過剰資金は、金融投機にまわされ、タックスヘイブン(租税回避地)へと預金される。
 もはや、国家財政にとって残るのは、貧乏人からむしりとる消費税だけだ、と政府や資本家は叫び立てているが、それでも社会福祉は悪化するばかりである。
 このような状況は、労働者民衆の中に、将来に対する不安や閉塞感を広げている。そして、これにつけ込むかのように、差別排外主義的な扇動が行われ、弱者への攻撃によって優越感を得ようとする風潮が生まれている。橋下や石原などの右翼排外主義者は、こうした労働者の気分をさらに増幅させ、かつて歩んだ`見せかけの貧困の出口a=侵略戦争と帝国主義的覇権へと労働者民衆を誘い込もうとしている。公務員や正社員労働者と失業・不安定雇用労働者の分断を利用して労働組合攻撃を行ない、アジア民衆への差別排外主義を煽り、侵略戦争に対する反戦意識をたたき潰すことをめざし、教育基本条例や職員基本条例が制定された。戦後の労働者民衆が闘いとってきた諸権利や伝統を、地方自治の現場で右から一掃しようとしている。この局地戦に勝って、「政治を変え、憲法を変え、TPPなどによって経済体制を変える」ための国政へと攻め上ろうというわけだ。
 しかし、台頭しているのは、右からの動きだけではない。これとせめぎ合うように、労働者民衆の闘いも大きなうねりを開始している。資本と労働者民衆の利益対立は激化しており、また、フクシマ原発事故に見られるように、核や資本利益と人類は共存できないことが、あらわとなりつつある。労働者民衆は、東日本大震災によって引き起こされた原発事故やオスプレイの配備において、`命よりも経済や軍事力の増強が大切だaと、事実を隠し嘘をつく資本家や政治家たちへの怒りに立ち上がり始めている。今年に入って、脱原発を求める声は広がり、大飯原発再稼働阻止を求めて、毎週、首相官邸前の数万人を皮切りに、関西電力各社、大飯現地など持続的な抗議行動が全国に広がっており、七月十六日の「さようなら原発十万人集会」には、十七万人が結集するという流れが生まれた。オスプレイ配備に対しても、七月二十三日の岩国での陸揚げ阻止、九月九日の沖縄での十万一千人を結集した「県民大会」を中心に、低空飛行訓練ルートにある全国での抗議・反対闘争がわき起こっている。
 住民・市民たちの立ち上がりの中、労働者の団結を基盤にした社会勢力である労働(組合)運動が、反原発闘争や反戦反基地などの諸社会運動にどう力を発揮していくかで、今後が大きく変わってくる情勢が訪れている。
 いま反原発闘争の中で、電力労組に対して、水俣労組の「恥宣言」に学べ、という批判が上がっている。新日窒労働組合は、「何もしてこなかったことを恥とし水俣病とたたかう」という大会宣言文(六八年八月三十日)を決議し、企業弾圧と闘いながら、裁判(六九年)に踏み切った水俣病患者に連帯し、裁判証言や日本初の反公害ストライキを行ない、労働組合としての社会的責任を果たした。電力労組は、産業防衛・雇用維持のため、原発推進に走り、3・11フクシマ原発事故以降も、その社会的責任を果たしていない。
 社会的生産と分業が発達し、あらゆる産業がからみ合い、労働者の社会生活に影響を与えている現代社会において、労働組合が個別資本・雇主との企業別闘争だけにとどまっていれば、労働運動は自分の首を絞めることになるだろう。この二十年余の経験は、前述したように、気がつけば労働者階級全体の地位が低下し、社会的荒廃が進んでいたことを思い知らせている。資本―労働が全社会的にもたらす結果に対し、闘いの手を及ばせていく回路が労働運動には必要である。開始された反戦反基地闘争や反原発闘争の高まりを、右翼排外主義者から防衛し、資本家たちに対する階級的反撃へと編みあげていくことが必要である。いま労働運動は、戦争・貧困・原発(核)で大きく社会が流動する中、労働者をどちらの方向に向かわせるのかという、労働者全体の未来を決する局面にいるといっても過言ではない。かつて戦争へと動員され、アジア侵略の加害者となり、戦争災禍の被害者となった日本の労働者は、二度とその道を歩まない未来を、全力で切り拓くことが必要である。


  ●4章 労働者反戦闘争の新たな動きと先進的労働者の任務

 このような中で、戦後第三波とでもいうべき労働者反戦闘争が登場しつつある。(戦後反戦闘争の歴史は『戦旗』第一三六〇号(二〇一〇年十一月五日)三面論文「12・4―5 2010岩国行動に全国から総結集を/労働者反戦闘争の階級的再生を実現しよう」を参照)
 第三波の反戦運動は、八九年連合結成を前後して各地の地区労が解散させられ、それまで総評を軸にし反戦運動機能が後退していく状況下、これを打開しようとする先進的労働者・労働組合の呼びかけで登場してきた。連合による「体制間対立の時代が終わり反戦闘争も終わった」という方針に抗し、日米安保や戦争遂行を支える米軍基地への労働運動の闘いは、沖縄連帯闘争を軸に持続してきた。二〇〇五年、日米政府が「日米同盟:未来のための変革と再編」で合意、在日米軍基地と日米同盟が、米軍世界戦略の下で大きく変貌を遂げることが明らかとなった。岩国でも「基地被害軽減のための沖合移設」から一転し、神奈川から艦載機部隊を移転させ、「極東最大の米軍基地」となることが明らかとなった。翌年には、これをめぐる住民投票が行なわれ、岩国住民たちは「基地強化NO」の民意を明らかにした。それまで沖縄連帯闘争を担ってきた労働者、労働組合の先進的部分は、米軍再編の骨格である沖縄―岩国―神奈川における反基地闘争連帯と全国結集へと踏み出し、〇七年に岩国・労働者反戦交流集会実行委運動(以下、労働者反戦実と略)が、現場一日共闘として誕生する。
 この労働者反戦実運動を、「戦後第三波」と呼ぶのは、今までにないいくつかの特徴を持っているからである。一つは、これに結集した労働者・労働組合は、いずれも、企業内組合主義を批判し、流動的労働力である非正規雇用労働者の組織化をめざす産別労組や一般労組、地域ユニオンであったことである。二つは、この運動の最初の呼びかけは、住民投票の〇六年の秋、岩国住民連帯をうたって開催された国際集会(アジア共同行動主催)に参加した部分によって行なわれたこともあって、韓国、フィリピン、台湾・アメリカなどの反帝・国際連帯を掲げる反戦反基地勢力と結びついていることである。三つは、現在を戦争動員の時代と見、それと闘う労働運動を切り拓く志向性を持っていることである。
 この六年間、「住民投票」の民意を実現するか、これを潰して国策を通すのか、をめぐる攻防が、岩国ではくり広げられてきた。政府や山口県は、岩国市庁舎建設費用の凍結や、市予算の不採択など、貧しい地方財政を締めあげ、住民投票を行った井原市長を放逐。福田市長は就任後、すみやかに岩国市庁舎建設費を得、基地再編交付金で子ども医療費無料化や市民福祉施設の建設、国立病院の誘致を行なうなど、基地容認派として種々の経済的利益を政府から取り付けてきた。強い地場産業もなく、地域不況の真っただ中で雇用もなく、その上に、詐欺まがいの`愛宕山ニュータウン開発aによって莫大な借金を負わされた岩国市民の困難につけ込み、「米軍基地さえ我慢したら」と誘導したのである。民意など、札束でどうにでもなるというやり口である。これは岩国に始まったことではない。沖縄においても、地方財政の困窮にあえぐ原発立地県でも、同じことが行なわれてきた。
 そして今年三月二十三日、山口県と岩国市は愛宕山開発跡地の売却を決定し、防衛省が「米軍住宅建設」予算で愛宕山跡地を購入した。ヤマ場を越したとばかり、政府―防衛省が持ちだしたのが、オスプレイ沖縄配備の露払いである陸揚げ・テスト飛行であり、後に低空飛行訓練全国七ルートの運用拠点となることが明らかになった。岩国米軍基地強化をめぐる攻防は、住民投票以来の民意をめぐる県・市当局との闘いを主とした局面から、日米安保・米軍再編政策をめぐる政府との闘いの性格をいっそう強める新たな局面へと突入した。
 この新たな局面に対応し、沖縄―岩国やアジア反基地闘争に連帯し、米軍再編・日米安保と闘う労働者反戦闘争の大きな流れを、日本全土で作り出していくことが、いま問われている。
 第一に、米軍再編の要である沖縄・岩国・神奈川での住民の闘いを孤立させず、政府・防衛省や基地推進派との日常的な攻防をともに闘いぬくことである。岩国においては、現在も「住民投票の成果を活かす岩国市民の会」「愛宕山を守る会」「岩国爆音訴訟の会」などが粘り強い闘いを続けている。住民民意を押さえこみ、極東最大の米軍基地となった岩国には、「ハキダメ」のごとく危険で受け入れがたい米軍要求が吹き寄せられてくる。反オスプレイ闘争に見られるように、これら住民団体は、この喉元に突き刺さり、闘いの受け皿として大きな役割を発揮している。これを全国に伝え、連帯を組織することである。
 第二に、岩国や原発立地地域にみられるような、地方経済の疲弊と労働者の雇用・生活破壊。これらに対する反撃戦を引き起こし、反米軍基地闘争と結合させていくことである。これは長期反撃体制の構築とも言うべき大きな課題である。しかし沖縄では、基地交付金のバラマキと誘致派の台頭に対し、孤立してでも闘いを貫く一時代を通して、島ぐるみの米軍基地反対闘争が形成されてきた。名護・稲嶺市政に対し、政府は、米軍再編交付金十億のうち六億円を止めるという脅しをしたが、「もう箱モノは要らない」という地元建設業者、「交付金なしでやっていける市政を」という名護住民の声によって、脅しは全く効力を発揮しなかった。上関闘争においては、祝島島民たちが、中部電力による漁業補償を拒否し、闘う主体が生きられる自立体制を構築してきた歴史を持つ。反基地闘争や反原発闘争に立ちはだかる経済的壁を、労働運動や社会運動の力で突破していかなければならない。
 第三に、排外主義と戦争への掛け声が、声高く叫ばれる今こそ、反戦反基地反安保の旗を高々と掲げることである。民族間の憎しみや戦争・軍隊によっては、現代世界の抱える問題は何一つも解決しないことは、二〇世紀、二一世紀の戦争の歴史を見るまでもなく明らかである。国境を超えた労働者の国際的な連帯と団結こそが、不正義と強欲、不安定と危機に満ちた、この帝国主義世界が抱える問題を解決する土台となるのである。「アジアからの米軍総撤収」を掲げ、反帝国際共同行動のたゆまない歩みを、また一歩、前進させよう。
 これらを実現するために、戦後第三波の反戦運動に立ち上がる労働者反戦実をはじめとする労働運動の先進的部分の闘いに、断固として連帯し、あらゆる支援を惜しまず闘おう。オスプレイ抗議行動を闘いぬき、十一月二十三―二十四日、二〇一二岩国行動の成功を、ともに切り拓こう!



 

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