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多見谷判決徹底弾劾!
       




 千葉地裁第三民事部多見谷裁判長は七月二十九日、市東孝雄さんに対して「農地明け渡しと建物の収去」を決定する判決を言い渡した。全面的に成田空港会社の側に立った農地強奪決定である。極反動判決を満腔の怒りを持って弾劾する。
 市東さんと弁護団は直ちに控訴した。反対同盟はこの農地強奪判決を粉砕するたたかいを準備している。
 これは単なる民事裁判ではない。絶大な権力と財政を握った国策会社=成田空港会社が一人の農民に対して、農地強奪を目的にした「民事訴訟」を起こし、行政権力と司法権力がこれに結託するという前代未聞の攻撃なのだ。
 市東さんと反対同盟は、農地死守―実力闘争を貫いて、この農地強奪攻撃と真正面から対決してきた。多見谷裁判長は極反動判決の一方で、空港会社が請求していた「仮執行宣言」を付けることはできなかった。反対同盟を先頭にした市東さんの農地を守る全国的な大衆運動の発展は、空港会社と千葉地裁の画歴史的な反動攻勢をぎりぎりのところで押し返した。今春夏期の闘いで千葉地裁を圧倒し仮執行宣言を粉砕したことに、市東さん、萩原さんをはじめ反対同盟は手ごたえを感じている。闘って、わずかではあるが攻撃を押し返した。この反対同盟の自信は、三里塚闘争の全人民闘争としての新たなたたかいの出発点である。
 農地強奪判決を粉砕する闘いは始まっている。控訴審で市東さんの勝利をもぎとるべくたたかうと同時に、営農をもって軍事空港と対峙してきた市東さんをはじめとする反対同盟の日々の闘いに結合し、これを支え、国策を打ち砕く現地攻防を反対同盟と共にたたかいぬいていくことが改めて問われている。
 多見谷判決を徹底的に批判し、農地死守―実力闘争の原点を再確認し、10・20総決起をもって今秋期からの攻防に立ち上がっていこう。


 ●1章 7・29農地強奪判決を徹底弾劾する

 7・29農地強奪判決は、市東さんに対して農地七千二百八十四uを空港会社に明け渡せ、また、この土地上にある共同出荷場、ビニールハウス、離れ(会議室)などの建物を収去せよというものだ。
 この建物にはヤグラなど反対同盟所有の四つの物件が含まれており、別に裁判が行なわれている。しかし、判決は「本件請求は、被告市東に対して、賃貸借契約に基づく義務として……(返還義務)の履行を求めるものであるから、上記工作物を反対同盟が建設して使用・占有していたとしても、上記判断を左右するものではない」と決めつけている。同時に、市東さんが、千葉県知事の農地賃貸借解約許可処分の取り消しを求めた行政訴訟に対しては棄却した。
 判決内容は極めて不当であり、違憲違法である。反対同盟と弁護団は控訴して闘うことを直ちに表明した。
 われわれは、空港会社と千葉県が強行しようとしている「収用委員会なき強制収用」というべき農地強奪と、この権力犯罪を全面的に容認、追認、免責した千葉地裁―多見谷のデタラメ極まりない判決を徹底的に批判していかなくてはならない。
 この裁判―行政訴訟・農地法裁判の構造を、まず確認しておく。
 空港会社の前身である空港公団は一九八八年に、市東東市さん、孝雄さんには隠して、地主から農地を買収した。この土地は、市東孝雄さんの祖父が開墾した土地であり、耕作権を相続した東市さんが、戦後の農地改革で所有できたはずの農地であった。捕虜になって帰還が遅れたがゆえにかなわなかっただけである。
 空港会社は、買収の事実を十五年間隠し続け、その間は、旧地主に地代を受け取らせるという偽装を行なっていた。二〇〇三年に突然「小作権を解約して土地を明け渡せ」と、市東孝雄さんに要求してきた。空港会社は、農地法を「根拠」にして、成田市、千葉県に対して契約解除の許可を求めた。千葉県知事堂本(当時)は二〇〇六年に契約解除許可を決定した。空港会社は二〇〇八年に、この決定を根拠にして、「私人」としての立場で、市東さんを相手取って土地の明け渡しを請求する「民事訴訟」を起こした。
 したがって、この裁判では、「民事訴訟」の形式をとった「土地収用法なき強制収用」の違憲、空港公団―空港会社の違法行為、詐欺行為、そして、成田市農業委員会・千葉県農業会議・千葉県知事の手続きの違法が問われてきた。7・29判決は、詭弁と恣意的判断を積み重ねて、空港会社の農地強奪を「合憲」「適法」としている。この極反動判決をまずもって徹底批判する。

 ▼1章―@ 土地収用法なき強制収用の違憲

 空港会社が今強行している市東孝雄さんに対する民事訴訟の形式をとった農地強奪攻撃は「土地収用法なき強制収用」であり、現憲法の枠組みを破壊する攻撃である。7・29判決は、まさにこの「土地収用法なき強制収用」攻撃の一環であり、千葉地裁―多見谷は、日帝―国土交通省と成田空港会社の描いた農地強奪シナリオに唯々諾々と従ったのである。
 市東さんと反対同盟、弁護団は、この土地収用法なき強制収用に対して、憲法二九条(財産権)、二五条(生存権)、三一条(法廷手続きの保障)に違反して違憲であることを主張して、真っ向からたたかってきた。
 これに対して、多見谷は何と答えたのか。
 「本件許可処分自体、農地賃借権を強制的に収用するものではない」
 「同訴訟手続きは、私人たる原告空港会社が私法上の訴訟物たる賃貸借契約終了による返還請求権に基づいて提起する民事訴訟であって、被告市東は、同訴訟において、賃貸借契約の存否や本件許可処分の効力などを争うことができるから、本件許可処分及びこれに基づく明渡訴訟を、実質的な農地賃貸権(ママ)の強制収用ということはできない」
 空港公団は九三年六月に収用裁決申請を取り下げており、成田空港建設のための事業認定処分が失効している。憲法上の財産権を例外的に制限する土地収用法による強制収用ですら、その「緊急性」と「公共性」が失われた現在、不可能になっているのだ。その事態の中で、農地法を悪用して民事訴訟をもって強制収用をなそうというのがこの裁判の本質である。
 この重大な憲法違反問題を「同訴訟において」「争うことができるから」などという一言で「合憲」だというのだ。

 ▼1章―A 国策を押し立てて農地強奪を「正当化」

 7・29判決は、以下のような論法をもって「農地を農地以外のものにすることを相当とする場合」だと判断している。
 「原告空港会社は、平行滑走路西側誘導路建設等の整備を目的とした事業を行う計画を有しており、その計画は国土交通大臣の許可を受けた事業計画や予算に基づくものであること」
 これに対して「離作条件についてみても、本件許可処分においては一億八千七十一万五千三百三十五円の離作補償を給付することが条件とされ」「被告市東の農業経営及び生計への打撃を緩和する意味で社会通念上相当な額ということができる」
 「以上によれば、上記転用相当性を認めることができる」
 ここで論じられていることは、成田空港建設をめぐる裁判の中で常に使われてきた論法である。
 国交相が認めた国家事業と、一人の農民の営農・生活を比較し、国策のほうが重要と言っているのだ。しかも、「社会通念上相当な」補償をしているのだから、農地を転用してもよいと平然と判断しているのだ。
 市東さんと反対同盟がたたかってきたのは、市東さんの農業・生活を守ることであり、同時に、そのことが日本農民総体の利害としてあるからこそなのだ。
 多見谷は詭弁を押し通すために、分解したそれぞれの問題の中で、相互の矛盾を顧みることなく得手勝手な「論理」を使っている。
 「土地収用法なき強制収用」という批判をかわすためには、「私人たる原告空港会社」の「民事訴訟」だと論じる。その一方で、市東さんの営農と生活に対置して成田空港建設を置くときには「国土交通大臣の許可を受けた事業計画や予算に基づくもの」と国策であることを大上段に掲げるのだ。
 まさに空港会社が絶大な権力を握って、一人の農民―市東さんの農地を奪うために、農地法を悪意をもって読み替えて攻撃してきた極限的なSLAPP訴訟である。多見谷の論理構成は、この肥大化した行政権力の下にある国営企業=成田空港会社の言いなりになった、恥ずべき司法権力の姿をまざまざと見せるものである。

 ▼1章―B 違法な農地取得と詐欺行為を擁護

 空港会社の前身である空港公団は、小作権者であった市東東市さんの同意を得ることなく、地主から所有権を取得し、その後も、その事実を東市さんにも孝雄さんにも秘匿し続け、地代を前地主に受領させ続けるという、詐欺行為を続けてきた。こんな空港会社が土地所有者として突然登場して、農地法を逆手に取って、契約解除許可を申請したのだ。盗人猛々しいとは、こういう輩に使う言葉だろう。
 許しがたいことは、裁判長―多見谷が、この詐欺師集団=空港会社を徹底して防衛していることだ。
 7・29判決は「そもそも本件土地の取得にあたっては、農地法施行規則七条一一号により農地法五条一項の許可は不要であるから、小作権者の同意も不要であり、本件各土地の売買契約も有効である」と論じ、「小作権者は農地の引渡しを受けていればその賃借権を所有者に対して対抗することにより耕作を継続できること(農地法一八条一項)、上記規定は空港公団の内規に過ぎず、その違反をもって違法となるものではない」「原告空港会社は、本件各土地の所有権を有効に取得しており、これに伴って本件土地の賃貸人たる地位を継承している」と言うのだ。
 空港公団は自らの規則に違反しているが「違法となるものではない」というのだが、さすがの多見谷も地代受領の身代わりに関しては農地法違反をみとめざるを得ない。しかし、問題をすりかえて、この空港会社の犯罪行為を無きものにしてしまうのだ。
 「しかし、農地法二〇条二項二号による許可にあたっての実体的な審査事項は『農地を農地以外のものにすることを相当とする場合』といえる否かであって、許可申請者が農地法に違反した事実があるか否かはその審査に含まれるものではない以上、許可申請者が農地法に違反する行為に及んだからといって、農地法に基づく許可申請が直ちに許されなくなるものとも解されない」
 「そして、前記前提事実(4)及び弁論の全趣旨によれば、原告空港会社は、本件許可申請の時点においては、本件各土地の所有権移転登記を経由し、藤崎らに地代を受領させるなどの上記農地法違反行為には及んでいないことにも照らせば、被告市東の上記主張事情が原告空港会社の本件許可申請の適格性を失わせるものとはいえない」。
 これが裁判官の言葉であろうか!!
 多見谷の言葉を普通に言い換えれば、「犯罪行為はあるが、契約解除許可申請は別の問題だから、まあいいじゃないか」「申請をする時点には、登記を済ませたのだから、それ以前の犯罪までは気にしなくていいじゃないか」ということになる。
 こんな裁判所があるのか!
 裁判所とは思えない詭弁は、止まることを知らない。
 空港公団が市東さんの土地を取得した時点では「不在地主」であった事実に対しても、次のように言い訳を積み重ねるのだ。
 「同法六条違反の所有者も他の私人にその土地を譲渡でき、それに伴って、賃貸人たる地位も同様に承継することができると解するべきである」。
 「以上に加え、前記アのとおり、許可申請者が農地法に違反する行為に及んだからといって、農地法に基づく許可申請が直ちに許されなくなるものとも解されないし、前記前提事実(1)のとおり、原告空港会社は、本件許可申請の時点においては、本店を千葉県成田市に置いており、農地法六条一項一号違反の状態は解消しているから、被告市東の上記主張を考慮しても、原告空港会社は本件許可申請の適格を失うものではない」。
はては、次のようにまで言うのである。
 「被告市東は、原告空港会社が本件各土地の所有権取得を秘匿し、藤崎らに賃料を受領させるなどの継続的詐欺行為に及び、賃貸借契約における信頼関係を破壊したから、本件許可申請の適格を欠くと主張するが、上記行為は、原告空港会社が所有権移転登記を経由しなかった結果、賃貸人たる地位を被告市東に主張できなかったに過ぎず、それが被告市東に具体的な不利益を与えるものではないから、被告市東の主張は失当である」
 多見谷の言わんとしていることは「犯罪者にも土地を譲渡する権利はあるし、契約解除の許可申請もできる。この詐欺行為によって市東さんが被った被害は大したことはないから、そんなことで文句言うな」ということだろう。
 多見谷よ! どこまで、詐欺師どもを守り抜くのだ。

 ▼1章―C 行政機関の違法行為を防衛

 多見谷は空港会社を防衛するだけではない。この契約解除許可を担った行政機関の各手続きのすべてに違法はないと強弁するのである。
 土地の取得過程で違法をはたらいた空港公団を引き継ぐ成田空港会社に申請を行なう適格がないのだから、成田市農業委員会も千葉県農業会議も、この申請を不受理にすべきであった。しかし、多見谷は「行政庁は申請の受理を拒否することはできず」という理由で不受理にはできないのだとする。
 成田市農業委員会の審理、議決にいたる過程には「瑕疵は認められない」として「議決の違法をいう被告市東の主張は失当」と結論する。
 千葉県農業会議は「現地調査を行な」わず、「転用事業の有無について争う機会」を与えなかったのだが、多見谷は「被告市東に争う機会が与えられていなかったとしても、千葉県農業会議の答申を無効とするような重大な法律違反とはいえない」とし、また、「本件許可処分は不利益処分には当たらない」なる詭弁を繰り返して「被告市東の主張は失当である」とするのである。
 さらに、「成田市農業委員会において、被告市東の同意を得るべきという意見が出されているのに、かかる意見を無視した本件処分は違法であると主張するが、処分行政庁は農業委員会の意見に拘束されるものではないから」「本件許可処分の違法性を左右せず、失当である」と結論したのである。
 このような論理ならざる詭弁を積み重ねた末に、判決は「以上のとおり、本件許可処分の手続きは適法である」と結論するのだ。

 ▼1章―D すべての権力機関が

 千葉県知事が行った解約許可決定は防御のための手続規定を欠き憲法二九条、三一条違反であるという市東さん側の主張に対して、7・29判決は次のように判断を示した。
 千葉県知事の許可決定は「賃貸人による有利な解約申し入れを可能にするにとどまり、それ自体が賃借権消滅という法律効果を生じさせるものではない」から「権利を制限する不利益処分には当たらないから、告知聴聞の機会を与える規定がないとしても憲法二九条、三一条に違反するものではない」。
 多見谷は、この農地強奪訴訟という一連の攻撃をバラバラに切り刻んで、そこにある権力犯罪を隠そうとしているのだ。
 知事の許可処分が「不利益処分にはあたらない」だと! 「許可決定」が即座に強制執行としての農地強奪ではないから免罪されるというのか。成田市農業委員会も千葉県農業会議も千葉県知事も、いずれもそれぞれの細かな事務手続きだけだったというのか。
 多見谷は、県知事を、農業委員会を、農業会議を防衛する立場でしか論じていないから、こんな詭弁が出てくるのだ。
 処分を受けた市東さんの身になって、一連の事態として捉えてみよ! 
 市東孝雄さんの立場でこの状況を捉えてみるならば、すべては一転する。すべて計算された手続きの一環として、成田市農業委員会も千葉県農業会議も千葉県知事も、農地賃借権強奪の役割を担っているではないか。一つひとつの処分をなした行政機関の責任を細かく分解してしまって、一つひとつの処分には問題はないという論理は根本的に間違っている。すべてつながっていることではないか。成田空港会社が「粛々と進めた」手続きは、はっきりとした一つのシナリオをもって農地強奪を「合法化」する手続きではないか。それぞれが部分的な責任しかないというのではない。逆だ。個別行政機関が担った一つひとつの手続きは連続し結託されたものだ。農地強奪の権力犯罪の共犯なのだ。
 多見谷よ! よく自分の足下を見てみよ。この農地強奪訴訟手続きの最後の仕上げを、お前自身が司法権力として担った権力犯罪の歴史的事実が、ここに刻印されてしまっているではないか。
 三里塚で憲法が停止し、空港会社の無法がまかりとってきたのは、この国策会社自体が暴力的で、千葉県警―空警隊と結託してきたからだというだけではない。司法権力が、この事態を容認し、この違憲違法な事態を支え続けてきたからにほかならない。
 7・29判決が判例として残っていくようなことがあってはならない。国策会社=空港会社と行政権力、司法権力が結託して、人民の生きる権利を踏みにじっていく。こんなことを絶対に容認してはならない。ここが日本の労働者階級人民の生命線である。この反動を許すならば、原発再稼動でも、米軍基地建設でも、同じことが繰り返されるだろう。
 労働者階級人民自らが生命と生活を権利として守りぬくたたかいを貫いて、帝国主義権力と対決する。7・29判決をめぐるたたかいは、そういう意味で反帝闘争の重要な環である。国家権力が人民を虫けらのごとく扱う「判決」に憤怒をたぎらせた人々こそが、三里塚闘争の新しいたたかいを切り拓いていくだろう。


 ●2章 反対同盟のたたかいの全人民性

 反対同盟はこの裁判闘争を単なる一つの法廷闘争と捉えたのではない。冒頭にも記したように、これは「民事訴訟」形式をとった農地強奪攻撃である。土地収用法の事業認定が失効しているがゆえに、追い詰められた空港会社が、悪意をもって農地法を読み替えて発動してきた「土地収用法なき強制収用」である。反対同盟は、空港会社が「民事訴訟」を仮装して農地強奪攻撃をかけてきているという悪辣な本質をはっきりと見抜いていた。しかも、成田市、千葉県、国土交通省などの行政権力も、千葉地裁―司法権力も、この空港会社の農地強奪攻撃の筋書きをすべて了解した上で、それぞれの役割を分担し、全面的に荷担してきた。千葉県警は、この状況を押さえた上で弾圧を強めてきた。
 この攻撃の真意をはっきりと捉えたからこそ、反対同盟は、市東さんの農地をめぐる決戦と位置づけてたたかってきた。とりわけ、今春以降は、「緊急三万人署名」を軸にした反対同盟の一斉行動、そして、千葉地裁包囲行動を連続的にたたかいぬいてきた。
 「私人たる原告空港会社」がなしたことは何なのか!
 さまざまな権力機構と結託し、あらゆる力を動員して、一人の農民―市東孝雄さんを取り囲んで、生活の根拠である農地を奪い取ろうというのだ。
 市東さん自身、そして反対同盟、全支援勢力のだれもが、この闘いの中で、七一年の大木よねさんに対するだまし討ちを思い起こしてきただろう。空港公団がよねさんを殴りつけて脱穀機から暴力的に引き剥がして、家屋も農地も奪い去った歴史的な暴挙を。そして、大木よねさんのようにたたかうことだけが、軍事空港建設を阻止し続けるのだということを。
 七一年の強制代執行に際して反対同盟は、「日本農民の名において収用を拒む」と掲げて、実力阻止闘争をたたかった。農民が、土地収用法、公共用地特措法に基づく国家暴力に対して真正面からたたかった。反対同盟農民の不屈の意思と実力闘争が、全国の労働者・学生を揺り動かした。
 三里塚農民は、軍事空港反対闘争の中で闘争主体として急激に成長した。機動隊の暴力に対して自衛武装し、農地を武器に、農地を死守すること自体を闘争戦術にまで高め上げ、国家権力と実力で対峙していった。空港建設を阻止し、開港を遅らせ、土地収用法を事業認定期限切れまで追い込んだ。
 不屈に闘いぬいた反対同盟農民は、金にも暴力にも、あらゆる嫌がらせに屈することなく、現在まで闘い続けてきた。どんな巨大な権力も、真に闘う人間の意思を押しつぶすことはできない。三里塚をともに闘い抜いてきた人々は、反対同盟農民の路線、営農と生活、そこに貫かれてきた信念にこそ、階級闘争をさらに推し進めていく希望を見い出すのである。
 このたたかいは、「日本農民」としてのたたかいであると同時に、六〇年代、七〇年代の日本の階級闘争―革命運動の実力武装闘争として発展を大きく切り拓いたたたかいであった。
 市東さんの農地を守りぬく反対同盟の現在のたたかいのなかには、この国家権力に決して屈しない四十七年の実力闘争が刻み込まれているのである。
 現在、市東さんをはじめとする反対同盟にかけられている国家権力と資本の重圧は、農地強奪裁判と農民たたき出し攻撃としてある。反対同盟の強固な意志と結びつきながら、農民の闘いと生活を守りぬく闘争支援が今ほど求められているときはない。


 ●3章 安倍政権打倒の反帝闘争として闘おう

 今、市東さんの農地をめぐる決戦は、安倍右翼反動政権が七月参院選を経て一大反動攻撃を本格化する中で進行している。
 三里塚闘争は、農民が先頭に立って実力闘争を貫いてきたがゆえに、日本帝国主義の喉元に突きつけられた刃であり続けてきた。「国際空港建設」という国家事業が、農民の反対闘争を鎮圧することができなかった。むしろ、この農民のたたかいに共鳴し共闘する労働者、学生が続々と三里塚の地に結集してきた。
 国家独占資本たる成田空港会社と行政権力、司法権力が結託した農地強奪攻撃が、SLAPP訴訟としてなされているのは、日帝の新自由主義政策と一体のものだからである。この市東さんに対する残忍な農地強奪攻撃こそ、安倍政権の人民に対する攻撃の本質を如実に表わしている。ゆえに、7・29極反動判決を打ち破るたたかい、その陣形こそ、安倍政権そのものに対する全人民の反撃の先駆をなすものである。
 三里塚闘争が全人民闘争の焦点となることを、日帝―国家権力こそが恐れている。だからこそ、警察権力は三里塚闘争を孤立させことに躍起になってきた。国家権力が最も恐れていること、それは三里塚闘争が反基地闘争、反原発闘争をはじめとした反政府闘争との結合を強め、階級闘争の爆発的発展の起爆剤となることだ。
 昨秋10・7三里塚全国集会において、沖縄からの特別報告として発言に立った知花昌一さんは、沖縄におけるオスプレイ配備阻止の普天間基地ゲート封鎖闘争の実力攻防を報告し、その総括として「三里塚のように実力でやるしかない。三里塚こそ私たちの先生です」と述べた。日米帝国主義の暴虐と真に対決し、これを打ち破っていくには、三里塚のようにたたかおう、実力闘争に立ち上がろう、という言葉は、さらに次々と出てくるだろう。
 日帝国家権力の分断、孤立化を打ち破って、住民運動、農民運動の新たな結合の模索が開始されている。国家権力が最も恐れ嫌がることを具体化してやろうではないか。多くの住民運動、反政府闘争が分断・孤立化を大きく乗り越えて、反帝闘争として結合していくことである。
 安倍政権は、新防衛計画の大綱の策定に向けた中間報告の中で、中国および朝鮮民主主義人民共和国への敵視を強めつつ、自衛隊に海兵隊の機能を持たせることを構想している。解釈改憲で「集団的自衛権の行使」に踏み込むことを策動し、戦争のできる普通の帝国主義国への脱皮を狙っているのだ。安倍政権は攻撃的な戦争国家化をめざしており、オスプレイ自衛隊配備、敵基地攻撃能力まで論じられ始めている。それは、単に自衛隊の改編・増強という問題だけではない。安倍は、戦争のできる国家に向けて、国家安全保障会議(日本版NSC)設置法を今秋臨時国会で成立させようとしている。合わせて、内閣情報局を新設するとしている。これは秘密保全法制定の策動と連動している。戦争のできる国家、それは情報を統制し、労働者人民を侵略戦争に動員する国内体制への改編である。
 日帝支配階級は「危機管理体制」を掲げて、この戦争動員体制作りを進めようとしている。「危機」とは何か。「重大緊急事態」として「領海進入、不法上陸」「避難民の大量流入」とともに「原発関連テロ」を挙げている。何を緊急事態と捉え、何を恐れているのか。まさに、「危機管理」を口実に反基地闘争を抑え込み、「原発テロ」からの警備と称して反原発闘争を鎮圧しようとするだろう。
 安倍政権が政権に就いて何をなしたのか。アベノミクスの下で、物価は上昇し、貧困と格差は拡大し続けている。対外的にはTPP交渉参加を進め、また、消費税増税に踏み込むことで「財政再建」だと説明してきた。放漫財政の矛盾を、労働者人民、とくに貧困にあえぐ人民に全面的に押し付けようとしているではないか。
 労働者人民の叛乱があらゆるところから始まるだろう。貧困と格差の拡大で、生きていくことができないという叫びが強まる。
 放射能汚染水漏出事故は、東京電力が引き起こした新たな原発事故だ。この事態の中で、大飯原発の再稼動準備を進めようとしている。原発再稼動などとんでもない話だ! 反原発闘争の新たな発展は必至である。
 沖縄人民の反対を踏みにじって普天間基地へのオスプレイ追加配備が強行され、さらに、空軍仕様のオスプレイ配備までが計画されている。日米共同訓練に当然のごとくオスプレイが使用される。米海兵隊とともに、自衛隊を侵略戦争の突撃部隊に再編しようとする策謀の中で、住民が危険にさらされ、その声を圧殺しようというのだ。
 安倍政権の本性が日々明らかになってくる中で、徹底非妥協でたたかいぬいてきた三里塚闘争の意義を今こそしっかりと再確認するときだ。農民(人民)が農民として生きるという、まさに自然発生的な闘争から、確信を強めて反政府闘争へと自らのたたかいを昇華し、今も淡々とたたかいぬいている。この日本の反帝闘争の拠点の歴史と現在に学び、ともにたたかうときである。


 ●4章 10・20三里塚現地へ結集しよう

 反対同盟は7・29反動判決に対して弾劾声明をもってたたかう方針を鮮明にした。同時に、この市東さんの農地をめぐる決戦を大きく進めていくべく、今秋期の総決起集会として10・20全国集会を呼びかけている。
 われわれ共産同(統一委員会)は、改めて三里塚闘争を日本階級闘争の最良の拠点として確認し、反対同盟とともに闘い抜いていくことを決意している。
 われわれは、三里塚の現地闘争拠点の建て替え工事を今春完遂した。建設工事に対して、千葉県警はさまざまな妨害を策してきた。しかし、われわれは、この弾圧に決して屈することなく、建設をやり遂げた。われわれは、三里塚現闘団、統一委員会行動隊を先頭に、この新拠点をもって、三里塚闘争を責任もって担い、闘争を日々具体的に推し進めていくことを決意している。
 われわれとともに三里塚闘争を担いぬいてきた全国の労働者人民、学生、すべての仲間は、新拠点を活用して三里塚に結集してもらいたい。さまざまな闘争を担う全国の人々が総結集して、三里塚において新たな人民の結束を生み出していこうではないか。
 10・20全国集会への総結集をともに実現しよう! 新たな決意をもって、市東さんの農地をめぐる決戦をたたかいぬこう。


 

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