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   安倍右翼反動政権の戦争国家化と総対決しよう

                                                                     
 
 安倍政権は、開会中の臨時国会に、「国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案」および「特定秘密保護法案」を上程した。それはまさに、憲法改悪に至る日本の一挙的な戦争国家化の突破口となるものなのだ。参議院選に圧勝した安倍政権は、ついに大反動攻勢を開始した。安倍政権による戦争国家化と総対決し、両法案を何としても廃案に追い込もう。

 ●【1章】安倍政権による戦争国家化の概要

 安倍政権による戦争国家化の基軸は、国際的には米帝―オバマ政権による「アジア太平洋地域重視戦略」への転換と結合し、米軍再編・日米軍事一体化を徹底して推進することにある。「私は大統領として、熟慮の上に戦略的な決定を下した。太平洋国家として、米国はこの地域(アジア太平洋)とその未来の形成に向け、より長期的な役割を担っていく。……アジア太平洋におけるプレゼンスと任務を最優先事項とする」(オバマ大統領のキャンベラ演説/二〇一一年十一月十一日)。このキャンベラ演説をもって、米帝はそれまでの「二正面戦略」から「アジア太平洋重視戦略」へと転換した。台頭する中国への対抗と朝鮮民主主義人民共和国の包囲を主課題としつつ、米帝は米軍基地と米軍プレゼンスの強化へと向かってきた。オーストラリアへの米海兵隊の新たな駐留の開始、韓国での平澤米軍基地拡張や済州島海軍基地建設、フィリピンでの米軍駐留の拡大と新たなアクセス協定締結への動き、グアムでの米空軍基地の大拡張、ベトナムやシンガポールなどへの米艦船の寄港の頻繁化、そして在日米軍基地再編・日米軍事一体化である。
 安倍政権は、このような米帝の新たな戦略と結合して、日米同盟をまったく新たなレベルにまで高め上げていこうとしている。すなわち、まさに日米両軍が一個の軍隊であるかのように指揮系統を共有し、装備や軍事機密を共有し、アジア太平洋地域をはじめとする世界各地で戦争を遂行できる態勢をつくりあげていこうとしているのだ。
 この安倍政権にとって、遅滞してきた米軍再編を推進することは重大な課題である。一九九六年のSACO合意から十七年、沖縄人民の島ぐるみの闘いは辺野古新基地建設を阻止しつづけてきた。安倍政権は、仲井真知事に辺野古埋め立て申請の認可を迫り、来年一月の名護市長選挙(一月十二日告示・十九日投票)において辺野古移設推進派の市長を誕生させ、一挙に突破口を開こうとしている。また、岩国基地をめぐっても、来年中には普天間基地の空中給油機KC130十五機を移駐させ、二〇一七年に厚木基地の米艦載機五十七機の移駐や最新鋭のステルス戦闘機F35の配備を予定するなど、極東最大の空軍兵力を擁する米軍基地へと大強化しようとしている。また、普天間基地へのオスプレイの配備と岩国基地を運用拠点とした全国各地での低空飛行訓練、十月十六日のあいば野での日米合同軍事演習への参加も強行した。そして、京都府京丹後市経ケ岬では、Xバンドレーダーを配備する計画を推進しようとしている。これは、米軍が常駐する基地が存在しない近畿地方に新たな米軍基地を建設する攻撃だ。舞鶴軍港の強化やあいば野での日米合同軍事演習の常態化などと結合して、近畿地方北部・日本海側での戦争態勢・軍事拠点建設につながっていくものである。安倍政権は、このような米軍再編・日米軍事一体化と結合させて、いよいよ憲法改悪に至る戦争国家化の総仕上げに突き進もうとしているのだ。
 自民党は参議院選挙前の六月四日、「新『防衛計画の大綱』策定に係る提言」(「防衛をとり戻す」)を公表した。そこには、安倍政権が推進しようとしている戦争国家化の骨格が示されている。この「防衛を取り戻す」文書の具体的提言では、「基本的安全保障政策」として、@憲法改正と国防軍の設置、A国家安全保障基本法の制定と集団的自衛権行使の合憲化、B国家安全保障会議(日本版NSC)の創設、C政府としての情報機能の強化、D防衛省改革をあげている。「防衛大綱の基本的考え方」では、「強靭な機動的防衛力の拡充」が提起されている。それは現在では陸上自衛隊の米海兵隊との共同演習から、自衛隊の部隊としての海兵隊創設の論議へと具体化されてきている。
 また、「国民の生命・財産、領土・領海・領空を断固として守り抜く態勢の強化」では、@沖縄への自衛隊の増強など島嶼防衛の強化、Aミサイル防衛と敵基地先制攻撃能力などの核・弾道ミサイル攻撃への対応能力の強化、B邦人保護・在外邦人輸送能力の強化、C無人機・ロボット等の研究開発の推進などが提起されている。そして、「日米安全保障体制」については、@集団的自衛権行使の合憲化にともなう日米防衛協力のためのガイドラインの見直し、A日米の適切な役割分担の下での策源地攻撃能力の保有、B在日米軍再編事業の着実な前進などをあげている。
 その他にもこの『提言』では、オーストラリア・韓国・インド・ASEAN諸国等との戦略的安保協力、国際平和協力活動の拡大、ODA(政府開発援助)の戦略的活用、自衛隊の人員・装備・予算の大幅な拡充、武器輸出三原則のさらなる緩和などが提起されている。
 安倍政権は領土問題を口実にした「中国脅威論」、「核・ミサイル問題」を口実とした「朝鮮民主主義人民共和国脅威論」を煽動し、日米安保体制と日本の独自武装の強化をおし進めようとしている。それは集団的自衛権行使の「合憲化」と一体になって、新たな軍事戦略の確立から自衛隊の攻撃能力の増強、日本版NSC設置法や秘密保護法、国家安全保障基本法などの法整備、軍事予算の拡充に至るきわめて全面的なものである。そして、憲法改悪がそれらの総仕上げとして準備されている。消費税増税や社会保障の切り捨てによって労働者人民の生活に大打撃を与えつつ、戦争国家化へと突き進む安倍政権と総対決していかねばならない。

 ●【2章】国家安全保障会議設置法案・秘密保護法案を廃案へ

 安倍政権が臨時国会に上程した国家安全保障会議設置法案と特定秘密保護法案は、このような包括的で全面的な戦争国家化の突破口となるものである。国家安全保障会議設置法案は、アメリカの国家安全保障会議(NSC)にならって、日本においても国家安全保障会議(NSC)を設置するというものである。上程された法案によれば、日本版NSCは首相・官房長官・外相・防衛相の四大臣によって構成され、そのもとに約五十人のスタッフを編成したNSCの事務局となる国家安全保障局を設置する。この国家安全保障局は、外務省、防衛省(内局)、防衛省(自衛隊)、警察庁から出向した約五十人で編成し、制服の自衛官も十数人参加する。また、首相に直属する国家安全保障担当補佐官を設置するというものである。
 この日本版NSCはアメリカのNSCとほぼ同じ構造である。NSCは、アメリカの外交を含む「安全保障の司令塔」とされてきたもので、大きくは三つの機能を持つ。第一には大統領への政策の助言、第二には「国家安全保障戦略」を起草することなど中長期的な安保政策の立案、第三には戦略にもとづいて、外交・軍事・情報・経済・文化などの各省庁・機関を一斉に動かすための調整である。アメリカは、このようなNSCをまさに司令塔として、ベトナム戦争やイラク戦争など幾多の侵略戦争を推進してきたのである。
 日本版NSCを設置することは、日本における侵略戦争の司令塔を設置することである。同時に、この日本版NSCの設置はアメリカの強い要求でもあった。アフガニスタン戦争に始まる「対テロ戦争」のもとで、日米軍事一体化は一挙に進行した。とりわけ、二〇〇五年十月二十九日に日米間で合意された「日米同盟 未来のための変革と再編」は、大きな転機となるものであった。アメリカは、日本にNSCのような「安全保障の司令塔」が存在しないことに不満を募らせ、アメリカのNSCと一体化した日本版NSCを設置することで、戦略から戦術・部隊運用、軍事機密の共有など、日米同盟を日常的に推進する統合司令部構造の編成を要求してきたのである。安倍政権による日本版NSC設置法案の上程は、このようなアメリカの要求に応え、日米同盟をさらに強化するものであり、同時に日本の侵略戦争の司令塔、戦争国家化の司令塔を設置するものなのだ。
 安倍政権は、日本版NSC設置法案と特定秘密保護法案は一体のものだと強調してきた。日本における新たな秘密保護法の制定は、日米同盟の強化と日米軍事一体化の過程で、アメリカが強く要求してきたものであった。二〇〇五年の「日米同盟 未来のための変革と再編」において、日米両国政府は「双方は、良く連携がとれた協力のためには共通の情勢認識が鍵であることを認識しつつ、部隊戦術レベルから国家戦略レベルに至るまで情報共有及び情報協力をあらゆる範囲で向上させる。この相互活動を円滑化するため、双方は、関連当局の間でより幅広い情報共有が促進されるよう、共有された秘密情報を保護するために必要な追加的措置をとる」ことに合意した。日本における秘密保護法制定の動きは、ここから本格化したと見ることができる。日米同盟と日米軍事一体化が進行すればするだけ、日米間で共有する機密が拡大し、戦争の遂行にとって決定的な機密まで共有することになる。アメリカは、日本側から機密情報が漏えいすることを深く危惧し、日本政府に対して秘密保護のための法制度の整備を要求し続けてきた。日米両国は、二〇〇七年八月十日に「軍事秘密包括保護協定」を締結した。そして、これに対応した国内法として、特定秘密保護法の制定がもくろまれてきたのだ。その意味で、秘密保護法は日米同盟・日米軍事一体化のためのものであり、日米両国が共同で戦争を行なうためのものなのである。
 同時に、特定秘密保護法は、日本自身の戦争国家化にとって不可欠な新たな治安弾圧法にほかならない。第二次大戦前の日本では、治安維持法を頂点とする徹底した治安弾圧体制がしきつめられた。戦前の秘密保護法制は、御前会議や閣議の内容などの政治的な機密の保護を目的とした国防保安法、軍事施設・装備や作戦・用兵などの軍事機密の保護を目的とした軍機保護法以外にも、軍用資源秘密保護法、要塞地帯法、軍港要港規則、陸軍刑法、海軍刑法などいくつもの法制度から成り立っていた。これらの法制度によって人民の知る権利をはく奪し、言論・表現・報道の自由を抑圧し、戦争へと総動員していったのである。上程された特定秘密保護法案は、これらの戦前の秘密保護法制の多くに対応する包括的な法案として提出されている。
 特定秘密保護法案は、政府が持つぼう大な情報の中から「行政機関の長」が特定秘密を指定し、それを漏らした公務員などや聞きだそうとした者に最高で懲役十年という厳罰を科すものである。現在においても、秘密保護のための法制度はいくつか存在している。一般職国家公務員については国家公務員法、一般職地方公務員については地方公務員法、外交官については外務公務員法、自衛官については自衛隊法によって守秘義務が規定されてきた。とりわけ自衛隊法では、一般的な守秘義務にとどまらず、防衛相が「防衛秘密」を指定し、「防衛秘密」を取り扱うことを業務とする者を対象として、秘密の漏えいや未遂について罰則を設けている。特定秘密保護法案は、この「防衛秘密」の保護についてのシステムを基礎にした包括的な秘密保護法制であり、罰則をこれまでの懲役五年以下から懲役十年以下にまで重罰化し、特定秘密を取り扱う者への「適性評価」の実施など秘密の漏えいを最大限抑止すること、また特定秘密を取得したり、秘密の漏えいをそそのかした者についても、懲役十年以下の重罰を科すものである。

 ▼2章―1節 労働者人民の権利剥奪、その制約なき拡大

 特定秘密保護法の危険性は、第一に労働者人民の「知る権利」を大きく制限することにある。法案では、特定秘密の対象として「防衛」「外交」「特定有害活動(いわゆるスパイ行為)の防止」「テロ活動の防止」の四領域において、「その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与える恐れがあるため、特に秘匿する必要があるもの」としている。
 しかし、その範囲はきわめてあいまいで、「行政機関の長」の恣意的な判断によっていくらでも拡大することができるものである。法案の「別表」によれば、「防衛に関する事項」で特定秘密の対象となるものとして、「自衛隊の運用又はこれに関する見積り若しくは計画若しくは研究」「防衛に関し収集した電波情報、画像情報その他の重要な情報」「防衛力の整備に関する見積り若しくは計画又は研究」「武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物の種類および数量」「防衛の用に供する通信網の構成または通信の方法」「武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物又はこれらの物の研究開発段階のものの仕様、性能または使用方法」などを列挙している。これでは、すでに公表されている情報以外のほとんどを特定秘密に指定することができる。また「外交に関する事項」でも、「外国の政府又は国際機関との交渉又は協力の方針又は内容のうち、国民の生命及び身体の保護、領域の保全その他の安全保障に関する重要なもの」などをあげている。まさに外交交渉のほとんどすべてを特定秘密に指定することができるようなあいまいな規定である。
 政府は、秘密保護法が成立した場合、特定秘密に指定する件数は約四十万件になると公表した。すさまじい件数の情報が特定秘密として秘匿され、情報公開を請求しても明らかにされなくなる。まさに人民の「知る権利」をはく奪するもので、政府にとって都合の悪い情報は何も知らせないということなのだ。

 ▼2章―2節 言論・表現・報道の自由を抑圧

 特定秘密保護法案の危険性の第二は、言論・表現・報道の自由を抑圧することにある。法案では、特定秘密の取り扱いの業務に従事する者で特定秘密を漏らした者だけではなく、「特定秘密を保有する者の管理を害する行為により、特定秘密を取得した者」に対しても十年以下の懲役という厳罰を科している。たとえば報道機関や市民運動が国家公務員などに働きかけて、外交や安保に関する公表されていない情報を取得したとき、それが特定秘密に指定された情報であった場合には十年以下の懲役になるのだ。そして、この特定秘密の取得に対する処罰は、未遂や共謀、教唆、煽動した者にまで適用される。これまで政府は、核兵器の日本への持ち込み、日米地位協定の運用、沖縄返還協定などをめぐって、アメリカ政府と幾多の密約をかわしてきた。そのうちのいくつかはすでに明らかになっているが、それは良心的な報道関係者や密約の公表を要求する大衆運動の努力によってかちとられたものであった。秘密保護法が制定されるならば、これらの努力は犯罪として処罰されることになる。
 安倍政権は、「出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとする」(第二十一条二項)によって、報道の自由を侵害するものにはならないと強弁している。しかし、「公益を図る目的」にもとづくものなのかどうか、「法令違反又は著しく不当な方法」によるものなのかどうか、基準は明確ではなく、警察・検察の恣意的な判断にゆだねられることになる。そもそも、この法案によれば何が特定秘密に指定されたのかを政府は公表しない。報道機関による取材活動は、入手しようとした情報が実際には特定秘密に指定されており、それを入手・報道することが処罰されるという危険性と常に背中あわせになる。そのことが報道機関を萎縮させ、ますます自主規制を強いる結果になることは明らかである。さらに、この第二十一条の規定を適用されるのは「出版又は報道の業務に従事する者の取材行為」だけであり、それ以外の市民運動など人民の活動に対しては適用されないのだ。

 ▼2章―3節 新たな治安弾圧

 秘密保護法の危険性の第三は、この法案が新たな治安弾圧法であって、「国益」のもとに基本的人権に大きな制約を加え、憲法に規定された「主権在民」の原則を破壊するものだということにある。人民の「知る権利」、また言論・表現・報道の自由は、労働者人民が圧政との長い闘いの歴史を通してかちとってきたものである。そして、それは現在にあっても、政府・国家権力と人民が闘うために絶対に譲ることができない権利である。「国益」のもとにこのような人民の権利に大きな制限を加える法案は、その本質において労働者人民の闘いをおしつぶす治安弾圧法である。
 そればかりではない。この法案では特定秘密を取り扱う者に対する「適性評価」の実施を義務付けている。「適性評価」の項目としてまずあげられているのは、「特定有害活動」および「テロリズム」に関わっていないかどうかということである。政府は、この法案において初めて「特定有害活動」および「テロリズム」の概念を規定している。「特定有害活動」とは、「外国の利益を図る目的で行なわれ、かつ、我が国及び国民の安全を著しく害し、また害するおそれのあるもの」で、テロリズム」とは「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動」だとしている。きわめてあいまいな規定で、労働者人民の抵抗闘争、大衆的な実力闘争にまで広く適用される可能性をもった規定である。
 これらの活動に関わっていないかどうかの調査とは、思想調査にほかならない。そして、この思想調査は本人だけではなく、配偶者(事実婚も含むとわざわざ条文で規定)、父母、子及び兄弟姉妹、配偶者の父母・子、さらに家族以外の同居人までが調査の対象とされている。本人については、犯罪や懲戒の経歴、薬物の濫用、精神疾患、飲酒の節度、信用状態その他の経済的状況などが「適性評価」の項目としてあげられている。秘密保護を理由として、大規模な思想調査・個人調査が実施され、不適性と評価されればその職場・業務から排除されることになる。いったんこのような思想調査・個人調査が許されるならば、それは特定秘密を取り扱う者にとどまらず、他の公務員や民間の労働者にまで拡大していくことは必至である。

 ▼2章―4節 改憲の先取り攻撃

 このような秘密保護法は、自民党の改憲草案を先取りしたものと言える。自民党の改憲草案は、憲法九条改悪にとどまらず、主権在民・立憲主義を破壊し、「公益及び公の秩序」と表現された「国益」のために基本的人権に大きな制約を加えようとするものである。現憲法二十一条は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」という表現の自由を規定した条項である。改憲草案はこの二十一条に、「前項の規定にかかわらず、公益および公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」という項を付け加えた。「公益及び公の秩序」とは、いくらでも広く解釈できる。この条項は、まちがいなく政治的権利と自由を決定的に侵害するものとなる。現社会の根本的変革をめざす闘いはいうまでもなく、戦争の準備や原発の推進などの「国益」を理由とした政府の政策に反対する闘いなど、さまざまな抵抗運動・反政府運動を広範に抑圧する憲法上の根拠となるものである。特定秘密保護法は、秘密保護という「公益及び公の秩序」のために、「知る権利」や言論・表現・報道の自由に制約を加えようとするもので、ここにおいて自民党改憲草案の先取りであることは明らかなのだ。
 これに関連して、特定秘密保護法によって衆参両院の国政調査権や国会議員の活動までが制約されることを最後に指摘しておかねばならない。特定秘密に指定された情報について扱う国会の審議は完全に非公開のものとなり、そこで明らかになった情報が公開されることはない。そして、国会議員ですら非公開の審議の内容を漏らせば、十年以下の懲役となる。このような状態で、国会でのまっとうな審議などできるはずもなく、秘密保護法を成立させることは国会にとって自殺行為に等しいものなのである。
 安倍政権による戦争国家化の突破口、日本版NSC設置法案と特定秘密保護法案を廃案に追い込むために闘おう。秘密保護法に関するパブリック・コメントには、わずか二週間で約九万通が寄せられ、そのうち八割が反対意見で、賛成意見は一割にすぎなかった。そして、日本弁護士連合会など多くの団体が反対声明を公表し、秘密保護法反対運動は急速に広がりつつある。全力でこの闘いに取り組もう。

 ●【3】章 安全保障基本法制定・憲法改悪を阻止しよう

 安倍政権は、「積極的平和主義」なるものを唱えて、来年には集団的自衛権行使を可能とする国家安全保障基本法の制定に向かい、戦争国家化の総仕上げともいうべき憲法改悪に向けた攻撃を全面化していくであろう。歴代の政府は、日本は集団的自衛権を保有しているが、その行使は憲法九条によって禁止されているとしてきた。安倍政権はこの憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を「合憲化」しようとしている。それが実現されるならば、日本は海外での武力行使が可能となり、世界のどこにおいてもアメリカとともに戦争を行なうことが可能になる。
 集団的自衛権とは、自国が攻撃されていなくとも、同盟国などからの支援の要請があれば参戦・武力行使ができるという権利だとされている。集団的自衛権は、一九四五年に発効した国連憲章の第五十一条において初めて明文化されたものであった。「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない」(国連憲章第五十一条)。
 アメリカなど帝国主義諸国は、この集団的自衛権を国際法上の根拠として、他国に対する侵略反革命戦争や武力介入をくり返してきた。アメリカによるベトナム侵略反革命戦争は、同盟関係にある南ベトナム政府からの支援要請にもとづく集団的自衛権の行使として正当化された。アフガニスタン侵略戦争は、9・11事件に対するアメリカの個別的自衛権の発動として開始され、アメリカと同盟関係にあるNATO諸国などが集団的自衛権の行使として参戦したものであった。イラク侵略戦争は、国際法上何ら正当化する根拠のない戦争として開始されたが、カルザイ政権の成立後はその支援要請にもとづく集団的自衛権の行使として正当化されてきた。アフガニスタン侵略戦争やイラク侵略戦争の開始時に、日本において集団的自衛権の行使が「合憲化」されていたならば、日本はこれらの侵略戦争に全面的に参戦することが可能だったのである。
 安倍政権による集団的自衛権行使の「合憲化」の目的は、アジア太平洋地域をはじめ全世界において米軍と自衛隊が共同で戦争を行なうことを可能にすることであり、また日本帝国主義が自らの海外権益を自らの軍事力で防衛できる帝国主義へと飛躍することである。安倍政権は、国家安全保障基本法の制定をもって集団的自衛権行使の「合憲化」を実行しようとしてきた。第一次安倍政権の時期、二〇〇七年に首相の私的諮問機関として発足した「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」において、国家安全保障基本法の制定に向けた議論が積み重ねられてきた。第一次安倍政権の段階では、集団的自衛権行使の合憲化は、@公海上での米艦防護、A米国に向かう可能性のある弾道ミサイル迎撃、B国連平和維持活動(PKO)に参加中、攻撃された外国部隊への駆けつけ警護、CPKOに参加している他国軍の後方支援という四類型を中心に検討された。しかし、九月十七日に開催された同懇談会においては、集団的自衛権行使や国連決議にもとづく集団安全保障・平和維持活動への参加について、四類型にこだわらず全面的に解禁していく方向が打ち出された。自民党は、昨年七月四日に「国家安全保障基本法案(概要)」を公表しており、同懇談会が年内または来年の早い時期に答申を行なえば、それを受けて次期通常国会に国家安全保障基本法案を上程しようとしている。
 こうして集団的自衛権行使や国連の集団安全保障・平和維持活動への全面的な参加が可能となるならば、日本帝国主義はもはや憲法上の制約を何も受けることなしに、海外での武力行使・侵略戦争の発動が可能となる。まさにそれは、憲法九条改悪の全面的な先取りである。こんなことを絶対に許すことはできない。国家安全保障基本法制定・憲法九条改悪と総対決し、安倍政権打倒に向けた全人民政治闘争を全力で組織していかねばならない。反帝国際主義派こそがその最先頭に立ち、闘いを牽引していこう。


 

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