共産主義者同盟(統一委員会)






■政治主張

■各地の闘争

■海外情報

■声明・論評

■主要論文

■綱領・規約

■ENGLISH

■リンク

 

□ホームへ

  
   08年恐慌以降の世界情勢とプロレタリア人民の任務

                                                                     
  ●1章 第一次世界大戦から百年の現在

 二〇一四年の本年、第一次世界大戦から百年が経つ。資本家階級の世界支配、帝国主義の世界支配は、この間継続し、全世界の労働者階級人民は資本主義と帝国主義の下に呻吟してきた。〇八年のリーマン・ショック以降の、危機を内包した資本主義の延命の現実の姿をみるとき、労働者階級人民の決起によるプロレタリア革命によってしか、この危機が解決されないことは一段と明らかとなっている。この百年間の人類の歴史において、まず確認するべきことは、十八世紀の後半に帝国主義段階に突入した世界資本主義は、その後、一九一四年に第一次帝国主義間戦争を引き起こし、一九二九年の世界大恐慌とこれに続く三〇年代危機を引きおこし、また第二次帝国主義間戦争を引き起こした。その歴史は、労働者人民の命と生活の犠牲によって作り出されたといって過言でない。
 現代世界を直接規定する一九四五年の第二次世界大戦の終結以降つくられた戦後世界体制においては、確かに、世界資本主義は主要産業として耐久消費財を生産するフォード・システムを世界に拡大させ、労働者には一定の賃上げや社会福祉政策を実現するなどの「変容」を見せた。しかし、基本的に資本主義体制、帝国主義体制は存立の根本を、労働者階級からの搾取および被抑圧民族、人民からの収奪においてきたのは明らかである。近年では米帝国主義はアフガニスタン、イラクに対する三十万人以上の軍隊を投入した侵略戦争を強行し、また〇八年の世界恐慌を引き起こしているのである。資本主義、帝国主義は人民を侵略戦争で虐殺し、恐慌で労働者を大量に解雇し、失業者に追い込めている。
 さらに確認すべきことは、この百年間においては、この様な資本主義、帝国主義に対抗して労働者階級人民は自らの解放のために永続的に決起してきたことである。資本家、帝国主義者に屈服、依存することを拒否して革命的に立ち上がってきた。百年前の一九一四年の大戦に際して、ロシアの労働者人民は自国政府の戦争政策に反対し、内乱の中から一七年プロレタリア革命を遂行し、自らの権力を樹立した。さらに第二次世界大戦の廃墟の中で、植民地人民は民族解放運動を拡大させ、中国、朝鮮、ベトナムなどの一連の決起によって社会主義革命政権を樹立したのであった。もちろん、しかし、まったく下らない、犯罪的なイデオロギーと集団が歴史に登場したことを忘れてはならない。労働者人民の解放を否定した、独善的な党、国家の官僚集団が搾取と弾圧によって肥大化するスターリン主義を生み出し革命は変質した。さらに現在では中国などの共産党政権も資本主義に合流するに至ってしまい、プロレタリアートの解放のための規範は多くで崩壊してしまっている。
 二十一世紀初頭の一四年に際して、共産主義者が明らかにするべきことは、@現在の資本主義、帝国主義の危機の内容であり、A全世界の労働者階級と被抑圧民族と人民が共同して資本主義と帝国主義に譲歩を迫り、また決起して打倒していく任務についてである。現在の既成の体制の危機(侵略戦争の泥沼的敗北、世界恐慌から長期不況の永続化へ)において資本家、帝国主義者は確かに、危機脱出のためにあらゆる延命策を施している。しかし、もはや、かれらには相対的に安定した時期、時代を実現することは不可能になっている。全世界の労働者階級人民の共同した強力な力があれば、支配者たちに譲歩を迫り、あるいは打倒していくことは十分可能である。労働者人民の決起が情勢を変えることのできる時代にいよいよ入ってきたのである。本文は前記@の現在の資本主義、帝国主義の危機の内容について明らかにしていくことにある。

  ●2章  米帝主導のグローバリゼーションの展開と破綻

  ▼2章―1節  世界恐慌と不況、侵略戦争の敗北をもたらしたもの

 現在の世界情勢の特徴は米帝・多国籍資本によって展開され、全世界を強力に巻き込み再編していった九〇年代以降のいわゆるグローバリゼーションが、〇八年から始まる世界恐慌の勃発とイラク、アフガンへの侵略戦争からの泥沼的な撤退を二大契機にして、一旦、頓挫したということにある。もちろん今後の世界は、米帝・資本による世界の編成の圧力とその結果としての世界のグローバル資本主義化の現実を前提にするものであり、諸条件を継続するものではあるが、それは「変容」した姿で現れる。
 グローバリゼーションは、大競争に勝つための手段として先進帝国主義諸国に新自由主義政策を強制し、また旧植民地諸国には労働者階級の増大を結果する急速な資本主義化をもたらした。この現象は中心国アメリカの歴史的な後退に対する巻き返し政策の結果である。この結果は、とくに、製造業の移転による産業空洞化と金融分野の質的な肥大化を特徴にしている。ソ連の崩壊によって唯一の覇権国家となった米帝は、しかし生産資本分野において、九〇年以前から、日本、ドイツの独占資本に競争力で敗北し、資本の危機を深めていた。米国ではその結果、当然にも、中流といわれた所得階層(基幹労働者)の没落を招き、格差は拡大した。米帝・資本は軍事力と金融力を駆使して資本主義的延命を進める世界政策に軸を移し、これを推進していった。そして次のような現実の特徴が結果したのである。イラク、アフガン戦争以降、〇八年からの世界恐慌以降の現実の特徴は次の点にある。

  ▼2章―2節  グローバリゼーションの破綻

 九〇年代から二〇〇〇年代以降継続してきたグローバリゼーションなる現象は〇八年世界恐慌によって一旦は破綻した。世界恐慌による企業の倒産、首切りによってヨーロッパを中心に拡大し何百万何千万人を失業者にした。資本は危機脱出のためにより労働条件を下げ、賃金を下げる攻撃を強めている。また、恐慌前の好景気は結局、アメリカの住宅、不動産の価格高騰に依存したものでしかなかったことを示している。ドル資金の世界的な循環システム、また中国、ASEAN、インドなどの第三世界・途上国の経済成長もこのアメリカのバブルに大きく依存していた。

  ▼2章―3節  政治、軍事、経済の全分野での主導権争い

 戦後世界を編成してきた米帝国主義は中心国としての力を弱め、不安定性を強めている。政治、軍事、経済の全面にわたって全世界を戦後、米国は秩序付けてきたが、戦勝国クラブである国連安保理常任理事国の五大国はそれぞれ一方で結束しつつ、他方で主導権争いを激化させている。とくに中国、ロシアは独自の動きを強めている。米帝はイラク問題において、反対したロシアや中国は軍事支援による抵抗などしない口先だけのものでしかない事を見抜き、戦争に踏み切った。しかし、昨年のシリア内戦ロシアの軍事支援の可能性を考慮して、もちろん膨大な戦費に耐えられないことを原因に、戦争に踏み込めなかったのである。
 国連やNATO、日米安保同盟、上海協力機構などの政治軍事同盟が形成され、またEUやASEAN、中南米カリブ諸国共同体などの地域ブロックも形成されている。とくに敗戦帝国主義であった日本とドイツは国連常任理事国を目指し、戦後体制を揺さぶっているが、常任理事国は連合して自らの帝国主義、資本主義国家としての拡大のための利権の防衛のために汲々としている。ドイツは原発を止め核武装を放棄する代りに、EUの一国強国としての位置を目指し、日帝は安倍政権の下に原発政策を進め核武装の道を放棄していない。
 また経済的にはIMF―世界銀行、WTOやG7―G20などの国際機関が形成され、IMFの出資比率をめぐる争いのように全機関、会議でヘゲモニー争いが強まっている。また各資本主義国の生き残りをかけた自由貿易協定(FTA)による合縦連衡が繰り広げられている。
 すなわち各国帝国主義、資本主義、多国籍資本は国連を軸とした政治軍事体制、IMFやG7―G20を前提として、この中で勝ち抜くために諸政策を強めているのだ。これは必然的に全世界の労働者階級と被抑圧民族人民に対する一層の支配の強化、抑圧の強化、搾取と収奪の強化を結果することは明らかだ。

  ▼2章―4節 不均等発展の現在

 資本主義の不均等発展が急速に進み、世界体制を根幹から規定し揺るがしていることである。とくに生産資本、製造業においてこの歴史的な法則とでもいうべき事象が進んだ。資本主義国家において製造業は一定の関連産業を作り出すならば大量の安定的な労働者を形成し保持することができる。戦後のアメリカがそうであった。六〇、七〇年代において製造業の中心は日本や西ドイツに移動しアメリカは没落を始めた。この耐久消費財を大量生産し労働者の生活様式を変革し、一定の賃金上昇によって需要を作り出す体制はフォード・システムといわれ、資本主義の安定期を作り出す。とくに中流(中所得者)といわれる労働者の層を大量に形成する国家と資本の力は歴史的に見て大国を生み出す。現在、経済のグローバル化の急速な進展にともない、中国、ASEAN、インド、ブラジルなどの新興諸国では急速に資本主義化が進み大量の労働者が形成されてきた。確かに、現在、繊維や雑貨などの軽工業の分野の比率は大きいが、これらの諸国は日本やドイツがアメリカの技術と生産体系をキャッチアップしたように、本格的な重化学工業を生み出してきている。一方で資本蓄積や人や技術、生産システムの制約によって不連続となる可能性も指摘できる。もちろん、現在のような低賃金を手段とした資本主義化は行き詰まる。しかも、日帝や独帝の多国籍資本はあくまでも本国の指示の下に生産する工場として、また下請けとして、永遠に隷属させていくことを狙っている。また、独帝資本はユーロ圏のブロック形成と拡大、関税障壁の護持に生き残りをかけているのである。
 もちろん生産拠点の移動は、戦後の米、日、独の関係のような過去の不均等発展の歴史をなぞるものではない。資本の国際移動が自由化され、あらゆる資本が多国籍化し、低賃金労働者に群がっていくシステムが形成された。フォード・システムは国際化され、労働者の賃金競争を激化させ、資本が労働者を取り込んでいく製造業部門の労働者支配の体制が確立しつつある。IT先進国アメリカではアップル社など膨大な利益をあげているにもかかわらず、国内で雇う労働者は極めて僅かである。台湾や韓国の低賃金労働者が製品を作り出している。また日本では生産移転が本格的に開始され、本国では製造業の工場閉鎖が強引に進められ、海外生産が拡大している。

  ▼2章―5節  金融投機資本の肥大化

 金融投機資本の肥大化がすすみ、経済の不安定性が一段と強まっている。米帝・多国籍資本は製造業分野での競争で敗北し、これに代わる基軸産業として「金融業」を位置付けた。クリントン政権は金融規制を次々と廃止し金融ビッグ・バンなるものを推進し、後のブッシュ政権はこれをより強力に世界に拡大させていった。
 この金融改革で目指されたものは、いわゆる資本制社会において遊休貨幣資本の動員・融通を行う銀行資本の機能とは全く質的に異なるものであった。さらに言えば銀行資本と産業資本の融合(癒着)によって、帝国主義段階を規定してきた本来の金融資本とも異なるものである。
 生産によって価値を生み出すということに関心の欠けた、あらゆるものを投機の対象にし、証券化すること、この証券化された商品を売買することによって「差益」すなわち利潤を得ることを合法化し、これを無制限に自由にするものであった。過去において、戦後の帝国主義国では、商業銀行と投資銀行は厳格に区別され、また投資銀行は自己資本によって投資の上限を厳しく制限されていた。この制限を外した米帝の政策の結果、世界は異様な投機社会、ギャンブル経済がはびこるものになってしまった。
 会社を買って労働者の首を切り、この会社を高く売って利鞘を稼ぐ非生産的な活動が強まった。また石油や食料などの商品先物取引を利用した買い占め、買いたたきによって膨大な利益を得たり、通貨を変動させて儲ける。労働者人民に、学生にも高金利でローンを組ませ収奪するなどの反人民的な活動が蔓延している。
 そして結局、金融投棄資本が行き着いた先は特定の商品に異様なまでの信用を拡大させ(アメリカの住宅バブル)、この崩壊によって恐慌を引き起こしたのであった。
 現在のオバマ政権は確かに一定の金融規制(ボルカー規制)をおこなっている。しかし金融の取引は無税であって、実体経済の数千、数万倍に達する異様な投機資金の運動をなんら規制するものではない。IT産業の発展が投機資本の現在の活動を可能にしたが、実体経済をすりつぶす投機資本の規制は急務なのである。ドイツは「金融取引税」を課すことによる実体経済の防衛を主張している。
 確かに米帝・投資銀行の資金は世界規模の強制的な金融の自由化によって第三世界、途上国に投資、投機され、米中政府合意による米資金の中国への膨大な投資などのかたちをとって、これら第三世界の現在の資本主義化の道をもたらした。しかし投機資本の主要な活動は、過去のバブル形成とその崩壊、金融恐慌、そこからのいわゆる世界恐慌への展開という歴史を作った。現在、過剰資本が膨大に形成され利潤率は一段と低下している。公定歩合は先進国では1パーセントを割る歴史的に無い低さであり、しかも銀行貸出の量は低迷している。すなわち基軸産業の自動車、家電、重電 機械、航空宇宙、化学などの分野において資本は過剰化し一段の競争激化と利潤率の低下にあえいでいる。九〇年代IT産業が起こり、一定の基軸産業になったとはいえ、この産業は労働者の管理の著しい合理化を結果し、さらに、この産業自身が雇う労働者の数も極めて限定的であった。必然的に過剰資本は投機化していくが、この結果、社会の腐敗、荒廃は進んでいく。これが資本主義の不可避の姿なのである。現在の世界恐慌が長期の不況に転化していくのは、新たな基軸産業を形成できないための必然的結果なのである。

  ▼2章―6節  情勢を決定する労働者階級人民の力

 全世界の労働者階級、被抑圧民族、人民が資本主義と帝国主義のあまりにもひどい政策、未来に何等の希望も持てない社会のあり様に対して、団結し決起して、歴史を新たに作ろうとしている。アメリカではイラク反戦闘争に続く、ウォール街占拠運動の一連のたたかいの高揚。欧州での工場ストライキ、失業者の何十万、何百万のデモ。東南アジア諸国では、労働者が賃上げ闘争に立ち上がり、政権を揺り動している。タイの政治的流動化やカンボジアの労働者を支持する野党勢力への政権側の攻撃は内戦化の可能性を秘めている。また韓国、中国の労働者階級の決起も拡大している。またブラジルでは、ワールドカップに使う金を労働者人民の生活、福祉に使うべきというデモが何十万の単位で巻き起こっている。さらに中東―北アフリカでは反独裁の「アラブの春」の革命を勝ち取った。だがここでは、反動と反革命の策動によって困難を極めている。しかし、労働者人民のたたかいは継続している。日本では反原発運動の高揚、沖縄反基地闘争の永続化、また非正規労働者、若者のたたかいが開始された。この様な諸運動の形成こそ世界情勢を構成する重要な要素になってきている。
 資本主義や帝国主義は新自由主義政策による労働者人民からの搾取や収奪の強化による延命しか策はなくなっている。また第三世界への侵略戦争による権益獲得しか策がなくなっている。中心国―米帝と資本はイラク侵略戦争からの敗北的撤退、〇八年の金融恐慌から始まった世界恐慌の事態に追い込まれている。また北アフリカでは仏帝・オランド政権をはじめとする帝国主義国政府が侵略を開始した。日本では安倍政権が日米安保の強化と改憲を主張し戦争国家化を急速にすすめており、韓国、中国への第二第三の侵略策動を開始した。
 全世界の労働者階級と被抑圧人民が、今現在ある自らのたたかい、運動、活動を保持して、資本主義、帝国主義の新自由主義政策と新たな侵略政策に反対する、強固な連帯と団結を作り出すならば、勝利を獲得できるのである。全世界の人民には国境を越えた人民の力の形成が求められている。

  ●3章  世界恐慌から長期の不況へ、蓄積する経済危機

 〇八年のリーマン・ショックに端を発した金融危機は、米国の銀行の危機のみならず、その後欧州の銀行危機に転化した。デカップリング論(新興国経済は、連動してないため、恐慌の影響を受けない、という主張)などの楽観的なブルジョア評論家の予想とは裏腹に、この金融危機は実体経済を直撃し、世界恐慌をもたらした。米国では製造業の基軸をなす自動車大手のG・Mが経営破綻し政府の救済を受け、EUではギリシャ、スペインなどユーロ圏の周辺国の国債は暴落し、信用崩壊と財政削減によって大量の失業者が生み出された。世界恐慌が進んだのであった。日本ではデフレが進行し深化し、多くの中小企業は破綻した。また新興国も大幅な景気後退に入った。一四年の現在、極端な企業倒産や大量の失業者の発生を押さえつつある。もちろんEU諸国では平均で10パーセント以上の失業率であり、ギリシャ、スペインでは青年の半数以上が失業という危機的状態にあるが、米国の銀行資本の利益は回復しG・Mは再建された。また中国は7パーセント以上、ASEANは5パーセント前後の経済成長が予測されている。
 しかしこれらの表面的な経済指標の回復は「グローバル資本主義」が〇八年以前の、一定にシステム化された構造、安定的な循還、発展を決してもたらすことを意味するものではない。それは〇八年以降、各国資本主義、帝国主義政府によって実行された危機脱出の政策によって、むりやり、景気刺激策をとっているからに他ならない。現在、その矛盾は、蓄積された国家財政危機となっている。
 各国帝国主義、資本主義国の恐慌への対応は基本的に以下の諸点で共通している。

  ▼3章―1節  金融政策、財政政策の徹底的な拡大

 金融はゼロ金利政策に上乗せして量的緩和をすすめること、また国債を上限を外して中央銀行が国債を買うことである。これによって通貨は減価しインフレが加速する。財政では国―地方の予算を拡大し公共投資を増やし景気を刺激する対策である。日本、アメリカ、ユーロは金利をゼロから1パーセント前後とし、日本ではこの超金融緩和をアベノミクスなどと呼称しているが、この資金が土地や株に流れ込んでいるだけである。また財政では〇八年恐慌の以前からの政府借金はさらに借金が上乗せされ、財政危機は拡大の一途をたどっている。米国は銀行と大企業への支援を強化し、日本では公共投資を拡大した。中国はインフラ建設投資をメインにしている。その結果、日本の財政赤字はGDPの二倍の千兆円を超え、中国では四兆元(六十九兆円)の対策によって、国家の借金はGDPの50%を越える三十兆元に達している。
 返済の見通しの無い借金は、その国の通貨、国債の暴落を結果する。それは、急激なインフレを生み出し、労働者人民の生活を破壊する。なおインフレとは年金や貯蓄を減価していく政策であり、労働者人民の将来を破壊する。

  ▼3章―2節  反労働者政策、新自由主義の徹底化による国際競争

 グローバル資本主義の展開によって各国政府、あるいは多国籍資本は労働者をより安く使うために全力を上げている。労働者に対して労働時間の変形、残業代の不払い、あるいは派遣、非正規への置き換え、首切りや福利厚生の解体などあらゆる手段を使っている。また他方では、資本のために法人税減税攻撃が強まっている。すなわち現在、先進国では資本への優遇、資本家・金持ちの優遇政策が強まる一方、労働者人民にはあらゆる手段を使った低賃金化、基本的権利の剥奪の攻撃が激化している。新自由主義の徹底化による社会の作り替えの攻撃だ。もちろん新興国諸国ではプロタリアートの大量の形成に伴って労働者の賃上げが趨勢となっている。しかしこれら諸国では劣悪な労働条件と極端な低賃金なのであって、新自由主義の枠にある。この激化する資本間の競争は、もちろん製造業分野で激しいが、金融や知的財産権、あるいはサービス業においても強まっている。

  ▼3章―3節  相対的なブロック形成

 相対的なブロックの形成、政治や軍事がともなったとしても何よりも経済的ブロックの形成による、恐慌的危機からの脱出である。〇八年恐慌以降、ユーロ圏は解体の危機におちいったが、現在ではバルト諸国を巻き込んだ拡大の動きすらある。帝国主義国・多国籍資本はあくまで統一的世界市場にリンクし、この中での勝ち残りを目指すが、同時に燐国などとの自由貿易協定を結び地域的な安定した市場の拡大を目指す。この経済的ブロックは地域の統合、例えばユーロ圏、EU、ASEAN、中南米カリブ諸国共同体、旧ソ連圏などの空間の形を取るとき、すでに政治的事的性格を帯びる。ドイツは現在、ユーロ圏にあって資本の一人勝ち状態にあり、国家のこの地域の支配力を急速に強めている。もちろんIMFや世銀、WTOを維持、推進していくスタンスを保持している。結局、農業問題やサービス・保険などの分野で大きく対立する。ここでは生活様式、言語までもが、優劣の対象となり、国家や民族の優劣が容易に決められる。地域の経済ブロックの形成はすでに先んじて、この課題に対応している。米帝・多国籍資本によって開始され、今、日帝・資本が参加を表明したTPPも、一種の地域統合の動きと見ることができる。

  ▼3章―4節  民族排外主義への動員と国民統合の強化

 恐慌や敗戦、あるいは国際競争力における敗北などによって労働者階級人民の生活は危機的状況に追い込まれている。ブルジョアまでもが一部を除いて多くの部分が没落の危機を迎えている。ここでは危機の打開のために排外主義や差別主義が国民統合のための最も重要な手段として支配階級によって煽り立てられている。また追い詰められた社会階層が容易に下からの排外主義運動を形成する。「グローバリゼーションの進展によって主権国家は解体に向かい国境や民族の垣根はどんどん低くなる」などというネグリの主張が余りにも一面的であることが明らかとなった。日帝―安倍政権は「文句をつける中国、韓国には毅然とした態度で臨む」などと言い放ち、両国に対して敵意をあらわにし排外主義的な国民動員を繰り返している。戦争挑発を繰り返している。これに呼応して在特会や田母神グループなどのファシスト、極右集団が街頭、地域で韓国・朝鮮人、中国人に攻撃を加えている。新自由主義と民族排外主義が親和的であることを示している。米国、ヨーロッパでも同じ現象がある。米国ではイスラム勢力、イスラム人への安易な敵対意識が国民を覆っている。また「ティー・パーティー」などが低所得層への国家予算の配分に反対して差別主義に貫かれた腐敗した運動を大規模に展開している。あらゆる国家で「国益」を主張すれば支配に有利になる事態が進んでいる。
 しかし他方では労働者階級、被抑圧人民の排外主義に反対し、帝国主義や資本に対抗する運動は、全世界で拡大している。また、ブルジョア階級にあっても、他国への侵略戦争や他民族への襲撃、より抑圧された社会集団への襲撃を是としない部分は多数存在する。国際主義と排外主義をめぐるたたかいは一種の決戦の性格を持っている。

  ▼3章―5節  貧困の固定化と労働者階級下層の再生産

 帝国主義、ブルジョア階級は労働者下層の社会集団を意図的に作り出し、社会のしずめとして固定化させ、ここからの搾取、収奪によって延命しようとしている。米国はもともと移民国家としてイギリス系白人が自らを頂点にして階層社会を作り出してきた。そして現在、国民の半数を占める黒人やヒスパニック系を下層の社会集団として固定化し、これを踏み台、搾取の対象にして成立している。ヨーロッパでも、移民労働者が国民の一割を超え、二割、三割を構成するところもある。この人々を安価な労働力として使い、また差別分断のターゲットにした支配を貫徹している。新自由主義政策と国家主義政策が結合し、労働者階級、人民を分解させ、多くの部分をこの下層に位置付け拡大させる攻撃が、現在激化しているのである。非正規労働者の拡大は支配階級が生き延びるために重要な手段であり、この社会階層を国民の多数部分にする意図的な攻撃がある。
 日本では年収二百万円以下の人が一千万人をすでに超えており、ブルジョア政府はこの人民の貧困を解決するのではなく、積極的に拡大しようとしているのだ。派遣法の改悪はこの表れだ。戦前日本では寄生地主制を強固な権力基盤として天皇制国家権力が作られていた。小作農を慢性的な過剰人口として固定化し、都市に安価な労働力を確保し、兵員に軍費をかけない軍隊を確保する梃にしていたのである。財閥や天皇家に連なる連中が一部の特権的支配集団を構成し、労働者、農民などの人民は貧困と差別に苦しめられていた。まさに形態を異にした格差と分断の社会建設が日本で本格的に始まったのである。
 いずれにしても帝国主義・多国籍資本の恐慌克服、危機脱出政策は、労働者階級人民に犠牲を徹底的に強い、格差と反動の時代を作っていくもの以外ではない。プロレタリア人民は何等の希望のない現実の社会を見据え、ブルジョア権力を打倒して未来を切り拓いていこう。



 

当サイト掲載の文章・写真等の無断転載禁止
Copyright (C) 2006, Japan Communist League, All Rights Reserved.