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   川内原発の再稼働阻止闘争に
         全国から結集しよう

  


 世界最悪レベルとなった福島第一原発の事故から三年半近くが経過し、安倍は今秋、川内原発(九電)を突破口に全国の原発再稼動をおこなおうとしている。これを絶対に阻止しなければならない。再稼動問題をはじめとして避難住民の帰還強制、エネルギー基本計画の策定など政府と原子力ムラによる反動攻撃が全面化する一方で、福島住民の「政府と東電は絶対に許さない」という怒りを頂点に、大飯差し止め訴訟での勝利判決や自治体としては初めてとなる函館市による差し止め訴訟の提訴、原発避難計画のあまりの非現実性に対する全国の地元住民の怒りの拡大など脱原発を求める人民の動きは確実に拡大してきている。さらに原発停止が長期化することで老朽化した原発の廃炉も現実味を帯びてきている。今後、こうした政府と人民の攻防はますます先鋭化し、激化していかざるを得ない。情勢は、原発再稼動を許すのか否か。反原発闘争に勝利し安倍政権を打倒することができるのかどうかの情勢へと突入しているのである。
 福島第一原発では、事故収束にむけた動きどころか汚染水問題すら解決できない現実に直面している。汚染水対策の一環として、五月には地下水バイパスより原発建屋に流れ込む水を減らす工事が開始され、この六月からは「凍土壁」工事も始まったが一部で凍らない事態も発生している。一日に流入する汚染水は四百トン。五月末時点で汚染水を溜めるタンクは九百基あまりで、約四十八万トンの汚染水が溜まっている。そのうち高濃度の汚染水は、三十六万トンにも及ぶ。汚染水のリスクを下げるために昨年三月に試運転が始まった多核種除去設備ALPS(アルプス)は、故障が頻発しいまだ試運転の段階である。それどころか逆に故障の修理のために労働者が高い線量を浴びながら修復にあたっている。安倍の「原発は完全にコントロールされている」との発言とは裏腹に、汚染水対策すら十分にできない政府・東電の無能ぶりが日々あきらかとなっている。また、政府による避難地域の一部解除による住民の強制帰還が行なわれようとしている。新たな被曝を覚悟で帰還せよというのだ。住民の命と引き換えに原発の再稼動が目論まれている。全国で反原発闘争を強化し、今秋、川内原発の再稼動を突破口とする全原発の再稼動を阻止しよう。すべての原発の廃炉にむけた闘いを強化しよう。

 ●1章 再稼動に突き進む安倍政権

 政府は、四月十一日の閣議で、国のエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」を決定した。福島第一原発の収束のメドも方法もあきらかにできず、核のごみの行き場も決められないなどあらゆる課題を残したまま、原発を「重要なベースロード電源」とする方針を決定したのだ。まったく不十分ではあったが、民主党政権時に「国民的議論」を踏まえて決定した原発ゼロ方針をまったく無視し、密室論議で原発推進へと舵を戻したのである。当初より推進派の有識者で素案を策定し、一万九千件を超える「パブリック・コメント」を分析・公表もせず、計画案を作った。それは、自公の少数議員と経産省幹部による密室論議で決定したものなのだ。経産省は、「二〇三〇年に総発電量の30%を再生エネルギーにする」という目標にすら強く抵抗し、20%以上を目指すという努力目標に押し止めた。半面、大事故が起きた場合の対応は棚上げし、賠償責任については「総合的に検討する」なるまったくの国民の命と安全を無視した政府、電力資本に都合の良いだけの計画なのだ。
 また、原発の海外輸出を増やす方針を固めている安倍政権は、四月、トルコとアラブ首長国連邦との原子力協定締結を採決した。
 再稼動を促進するため、原子力規制委員会内で「慎重派」とされていた島崎委員から原発推進派の田中悟に人事のすげ替えを行い、再稼動推進にむけた体制の強化を図った。
 六月十七日には、経産省がまとめた「エネルギー白書」を閣議決定した。先に決めた「エネルギー基本計画」を前提に原発が止まって値上がりした電気料金などの課題を並びたて、原発を維持する必要性と早期の再稼動を強調した。
 また、『朝日新聞』によって内容が暴露された吉田調書をめぐって安倍は激怒し、官邸による「犯人」探しと施行後であれば特定秘密保護に違反するとして朝日新聞社などに恫喝と脅しがかけられている。
 こうした動きは、あきらかに圧倒的な再稼動反対の国民世論とその声が日増しに拡大することに安倍政権が恐れ慄(おのの)いていることの証でもある。安倍政権が進めようとする原発推進路線を真っ向から批判し、原発再稼動を阻止し、政府のエネルギー計画を完全破綻へと追い込もう。

 ●2章 デマにまみれた原発推進政策

 福島第一原発の事故によって、原子力発電の安全、安価、安定、クリーンという四つの「神話」がデマとペテンで塗り固められていたことが次々と暴露されてきた。「原子力は絶対安全」という「安全神話」は、原発三基でのメルトスルーという世界最悪の事故によって完膚なきまでに粉砕された。最も安いとされたその発電コストにおいてもバックエンドや今回のような事故が起こると最も高いコストがかかることも満天下にあきらかにされた。そして、三年を超えても原発無しでも停電は一度も起こらなかった。政府・電力資本は今日、これらのデマとペテンに一切、口を噤(つぐ)んでいる。しかし、安倍は新たなデマとペテンで再稼動をなんとしても強行しようとしてきている。
 昨年七月に決定された「新基準」において全国十二原発の「審査申請」が行われ、川内原発の優先審査が行われているが、この間、再稼動を急ぐ安倍政権と自民党から原子力規制委員会の適合審査に「合格」さえすれば「安全」であるかのようなデマが意図的にふり撒かれている。安倍は、一月二十九日、参議院本会議で「安全基準に基づいて徹底的な安全審査を行い、これに合格した原発について再稼動を判断していく」と答弁している。しかし、日本には「安全基準」も「安全審査」なるものも存在しないのだ。審査の正式名称は「規制基準の適合性審査」であって「安全審査」ではない。ましてや何の根拠もなく「世界で一番厳しい審査」なるものを安倍は吹聴しているがまったく根拠がないのである。原子力規制委の田中委員長ですら「絶対安全かと言われるなら否定している」と「安全審査」ではないことを明言しているのだ。
 そもそも世界において原発推進派は原発のリスクを考える時、「直接死亡率」という考え方をもとにしてきた。それは一九七五年にアメリカ・マサチューセッツ工科大のノーマン・ラスムッセン教授が発表した研究がもととなっている。原発事故がおきて人が放射能によって短期間に死亡する確率を計算し、その確率を自動車事故や火災、水難といった一般的事故と比較したときに極めて低いものであるとした。試算では、その確率は五十億分の一とされ、たとえば隕石が落下し、人にあたって死亡する確率よりも低い安全なものとされのだ。そして、想定外の事故が起こるかもしれないがその可能性もほとんど考えられない、としていたのである。
 こうした考え方は、自民党の高市早苗の「原発事故で死亡した人はいない」という暴言に見られるように、原発の被害を直接被曝による死亡としてしか捉えないものである。しかし、福島の現実が示すように原発事故は、身体的被害に止まらず地域社会を破壊し様々な被害を住民にもたらすのである。「新基準」においては周辺住民の避難実行性すら義務づけられておらず、政府自らが振り撒くデマゴギーにより、新たな安全神話を再び作り上げ、なにが何でも再稼動しようというのだ。
 また、経産省は、エネルギー基本計画で全国の原子力発電所が停止し、「化石燃料の輸入が増加」したことが、貿易収支を悪化させたと強調した。これもまったくのデマである。日本の貿易収支は、二○一一年に輸入額が輸出額を上回り三十一年ぶりに赤字へと転落した。一三年の赤字幅は過去最大の十一・五兆円となった。赤字の原因については、エネルギー基本計画では化石燃料の輸入増加以外の大きな理由を記載していない。それどころか原発停止による電気料金の値上がりが企業負担を増加させ、業績悪化をもたらし「海外への生産移転などの影響が生じ始めている」としている。しかし、現実はリーマン・ショック後の急激な円高で産業の空洞化が加速化され、生産拠点が海外に移転したため輸出が減る一方で、海外からのさまざまなな製品輸入が増えたため貿易赤字が進んだのだ。さらに、アベノミクスによる円安の進行と「ジャパン・プレミア」といわれる世界一高いといわれる燃料代の購入により輸入額の増加がもたらされているのである。原発の停止による影響は四兆円弱に過ぎず、再稼動をしたところで日本の貿易赤字の大幅な解消はないのである。
 安倍政権によって進められようとしている原発推進政策は、こうしたデマとペテンで塗り固められたものである。核燃料サイクル政策も実質的に破綻しており、デマとペテンを弄してしか原発政策を推進できなくなっているのである。安倍政権による原発推進にむけたあらゆるデマとペテンを徹底して暴露・批判し、原発推進政策を最後的に粉砕しよう。

 ●3章 福島住民の棄民化、被曝強制を許すな

 安倍政権によるデマ宣伝の流布とペテンによる原発推進と平行して福島避難住民をはじめとする全避難住民の切り捨てと棄民化、新たな被曝強制がおこなわれようとしている。
 今なお、福島を離れて避難生活を続ける住民は約十四万人。震災関連による犠牲者は千七百人におよんでいる。そして、三年を超える避難生活の中で過酷な現実が次々とあきらかとなってきている。四月、福島県は大震災と福島第一原発事故による県内外に避難する県民(自主避難を含む)を対象とした初の意向調査の結果を発表した。避難後に心身の不調を訴える人がいる世帯は67・5%を占めた。「何事も楽しくない」「よく眠れない」「疲れやすくなった」といった回答が目立ち、「持病の悪化」や「飲酒・喫煙が増えた」などの回答も多かった。あきらかに避難生活の長期化が原因であり、将来の先行きのみえないことも大きく影響しているといえる。また、自主避難住民にとっては、長期化する避難生活により貯蓄を取り崩したり、避難地での生活が安定しないなどの経済上の負担が重くのしかかってきているのである。また、避難生活者の48・9%が二ヵ所以上に別れて住む分離生活を余儀なくされており、こうした二重、三重生活が一層の経済的負担を重くしている。避難住民の生活はすでに限界に達しているのだ。
 こうした過酷な避難生活を強制しておきながら、政府と東電は福島避難住民の切り捨て、棄民化を本格化させてきている。福島第一原発から二十キロ圏内にある福島県田村市都路(みやこじ)地区について、政府は四月一日に避難指示を解除する方針を決めた。原発事故後、国の避難指示区域で初の解除となるが、他の福島の六市町村も今後二年ほどの間に解除を検討し、都路地区を含む計約三万人が帰還するかどうかの判断を迫られる。政府は、全員帰還を約束していたにも関わらず昨年十二月に決めた福島復興の新指針で避難者全員の帰還を断念している。都路地区には国の掲げる除染の長期目標(年一ミリシーベルト)を上回るところもある。しかし、住民が望む地区内一律の再除染は認めず、不安を持つ住民ごとに個別対応することで帰還を促そうとしているのである。政府は、IAEAの「年間一〜二十ミリシーベルトの被曝を許容しうる」との見解をもとに帰還事業を進めており、避難住民の新たな被曝の強制のもとで帰還がおこなわれようとしているのである。
 また、東電は、福島の住民が提訴した廃炉と除染を求める裁判の口頭弁論において「除染には莫大な費用がかかるため、一企業において実現することは不可能」と完全に開き直った。また、「原発による福島県民の被曝線量は多くが年間二十ミリシーベルト以下であり、喫煙や肥満、野菜不足より発ガンリスクは低いとして「住民の法的権利が侵害されたと評価することは困難だ」という耳を疑う主張を行ない避難住民に対する敵対を公然と開始したのだ。東電にとって避難が解除されれば一人月十万円の損害賠償を打ち切りることができ、除染費用と賠償負担を減らすことができるからだ。
 こうした政府、東電による避難住民の切り捨て、棄民化を絶対に許してはならない。そして、原賠法による「無過失の賠償責任」ではなく、東電の過失責任にもとづく徹底した責任追及と賠償を行なわせなければならないのだ。

 ●4章 大飯差止判決を武器に再稼働を阻止しよう

 関西電力大飯原発三号機・四号機の運転差し止め訴訟で、福井地裁・樋口英明裁判長は五月二十一日、「三、四号機を運転してはならない」との判決を下した。福島原発事故がもたらした莫大な放射能汚染と事故の収束すら見えない中で、反原発運動に立ち上がってきた無数の人びとの決起と反原発の世論が、司法権力をも動かしたのだ。まさに、原告団をはじめとした全国の反原発闘争がもたらした勝利判決である。
 判決では、まず大飯原発から二百五十キロ圏内に居住する原告百六十六人に対する関係で運転の差し止めを命じている。これは、全国の原発において二百五十キロ圏内の住民による差し止め権利を認めることであり、現在全国十二原発が再稼動申請をおこなっているが、これら原発を基点に二百五十キロ圏内の円を描けば日本列島全体が収まることになる。全国民が「人格権を侵害される具体的危険性があり」、当事者となりうるということである。
 次に、「個人の生命、身体、精神及び生活に関する利益は、その総体が人格権である」とした上で、「その人格権の根幹部分に対する具体的な侵害のおそれがあるときは、侵害行為の差し止めを請求できる」として、人格権による請求権の正当性を根拠づけている。
 さらに、福島原発事故がもたらした事実、原子力発電技術の危険性、起こりうる地震の規模の検討、事故に際して放射性物質を閉じ込められないという危険について、科学的に検討した上で、「本件原発の安全技術及び設備は、確たる証拠のない楽観的な見通しのもとに初めて成り立ちうる脆弱なものと認めざるを得ない」と大飯原発の本質的危険性を指弾している。
 そして、「当裁判所は、多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等を並べて論じるような議論に加わったり、その議論の当否を判断すること自体、法的に許されないと考える」「たとえ本件原発の運転停止で多額の貿易赤字が出るとしても、国富の流失や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻せなくなることが国富の喪失だと考える」「二酸化炭素排出削減に資する」なる論議に対しても、「福島原発事故こそは我が国始まって以来最大の公害、環境汚染であることに照らすと、環境問題を原発の運転根拠とするのは甚だしい筋違いだ」と結論し、被告―関西電力の反論を全く認めなかったのだ。
 この判決に恥知らずにも、関電は直に控訴した。原子力規制委員会委員長・田中俊一は「われわれはわれわれの考え方で」「審査していく」とし、官房長官・菅は、原発再稼動の政府方針は「全く変わりません」と傲慢な発言を行なっている。また、『読売新聞』は「あまりに不合理な判決」「科学的知見にも乏しい、非現実的な考え方」と政府の御用新聞社ぶりを発揮し、相変わらずの無見識さを露呈している。
 こうした政府、規制委員会、原子力ムラによる敵対を粉砕し、大飯判決を武器に再稼動阻止闘争の高揚をかちとろう。

 ●5章 川内原発の再稼動許すな

 今年三月十三日、原子力規制委員会は、川内原発一・二号機の「優先審査」を決定した。そして、九電は六月二十四日、審査で求められていた追加書類を原子力規制委員会に提出し、これを受けて規制委は七月上旬にも審査書案を公表するものと思われる。その後、三十日間の意見募集を経て審査書を正式決定する。今後、事故時の手順などの別の審査手続きと設備検査、さらに地元の同意を得て再稼動が九月ごろに目論まれている。政府は、規制委員会の審査に「合格」したものから順次、再稼動すると明言しており、川内原発を突破口に今秋以降、再稼動の動きが本格化する。
 そもそも、なぜ川内原発の再稼動が優先的に決められたのか。それは、鹿児島県知事である伊藤と圧倒的に保守が支配する県議会、さらに地元薩摩川内市長・岩切が原発容認であり、積極的推進者であるからだ。さらに川内原発を擁する九電は、他の電力会社に比して地元経済界や政界に対する影響力や支配力が強いことが理由であることは想像に固くない。最も早期の再稼動が見込めるものとして川内原発が狙われたのである。
 九州電力川内原発は、鹿児島県薩摩川内市に一号機(出力五十五・九万キロワット。加圧水型軽水炉)が一九八四年、二号機(同)が一九八五年にそれぞれ運転を開始している。そして、世界最大級となる三号機(百五十九万キロワット)が計画されている。しかし、川内原発は、これまで他の原発同様に多くの故障・トラブルを起こしている。一号機は、@試運転中の自動停止、A一次冷却材ポンプ変流翼取付ボルトのひび割れ、B蒸気発生器細管の摩耗減肉、C蒸気発生器の細管損傷等があり、二号機も一次冷却材ポンプ変流翼取付ボルトのひび割れや蒸気発生器細管の摩耗減肉などが報告されている。
 こうした故障やトラブルにとどまらず川内原発が立地的にも極めて危険な原発であり、九電の経営責任のつけにより再稼動が狙われているが、直ちに廃炉とすべき代物であるということを確認しておかなければならない。
 第一は、活断層の問題である。日本全土には確認されているだけで二千を超える活断層がある。つまり全国至るところに活断層があり、そもそも原発を建設すること自体が間違っているわけだが、とりわけ川内原発は、日本最大の断層である中央構造線の末端で沖縄トラフへとつながる地域にあり、そこには多くの断層が存在する。政府の地震調査研究推進本部は、昨年二月に川内原発周辺の活断層を大幅に見直して、九電の断層評価を酷評した。@甑(こしき)断層(F・A、F・B断層)について九州電力側が「連続しない」と主張していたものが「連続する」になり、A甑海峡中央断層(F・C断層)は十六キロメートル(M6・8)が三十八キロメートル(M7・5)に再評価された。B五反田断層についても十九キロメートル(M6・9)が二十五キロメートル(M7・2)へと再評価され、「F・A断層やF・C断層が川内原発方向へ延びる可能性」についても言及している。川内原発直下でも国内最大級の内陸型地震を起こす可能性も指摘されているのだ。
 第二は、原子力規制委員会は、原発から半径百六十キロ内に活火山がある場合、「火砕流や溶岩流が発生する可能性が十分小さいと評価できない」なら、「立地不適」との判断基準を示している。ところが気象庁のランク付けで、「特に活動度が高い火山」(Aランク)に指定されている桜島、薩摩硫黄島、雲仙岳、そして阿蘇山が百六十キ口内に存在している。「3・11」直前に爆発した新燃岳(宮崎県)も直線距離で約五十キロほどで、舞い上がる噴煙の映像は記憶に新しい。しかも、川内原発から約三キロメートルに位置する寄田小学校付近には、火砕流堆積物の露頭がある。これは、大規模噴火が発生した場合に火砕流が原発近くまで到達する可能性を示している。そして、火山研究者二十九人中、噴火リスクがある原発として川内を挙げた人が十八人と最多であり、十三人は再稼動に反対と回答している。
 第三には、玄海原発もそうだが放射能被害が日本全土へと及ぶ可能性が極めて高いということだ。原発としては日本最西端に位置し、もし重大事故が起これば放射性物質が偏西風に乗って九州・四国全域から日本全土を汚染する可能性が極めて高いということだ。
 こうした危険極まりない立地条件の上に、今回の再稼動を前提とした住民避難計画のでたらめさがあきらかとなってきている。再稼動を前提に全国の原発周辺自治体には「要援護者避難計画」の策定が要請されているが、避難計画とは、そもそも「事故が起きる」ことを前提としているということであり、絶対に認めることなどできない。おまけに避難計画が実効的かどうかは審査の対象となっていないのだ。川内原発の三十キロ圏には約二十二万人の住民が暮らしているが、地元の薩摩川内でもPAZ(予防的防護措置を準備する区域・原発から五キロ圏)内の病院・福祉七施設で策定されただけで、UPZ(緊急時防護措置を準備する区域・原発から五〜三十キロ圏)の九市町内の二百三十三施設、約一万人については避難計画策定のメドもたっていない(三月時点)。地元の反原発団体による各自治体に対する質問・調査の回答でも、避難車両は確保できているか、避難にどのくらいの時間がかかるのか、放射性物質のチェックは誰がどこでおこなうのかなど、明確に答えられた自治体は皆無であった。そして、あろうことか知事の伊藤は五月の記者会見で「十キロ圏の要援護者計画は七月にはできる。そこまでできたらパーフェクトだ」「三十キロ圏の要援護者計画を作らないと再稼動できないというなら、全部の原発は動かない」と絶対に許すことのできない暴言を吐いている。そして、六月議会において「(原発から)十キロまでで十分だと思っている。(三十キロまでは)作らない」と述べ、「三十キロ圏までの要援護者の避難計画は現実的ではなく、実際問題、機能しないと思う」と本音で答えている。住民の命と安全・安心などまったく考えていないのだ。住民を犠牲にしてでも原発の再稼動を行おうというのだ。
 第四には、九電の経営責任をめぐる問題である。九電は、関西電力に次いで原発依存度が高く、関西電力は48%であり、九電は41%である。設備の比率としては23%であるが、ベース電源という位置づけのもと他の発電を止めてでも優先して発電してきたために、発電量において41%を占めている。こうした中で原発が止まっていても人員の配置や維持管理のための費用がかかり、同時に他の発電施設を動かさなくてはならないため、電気料金の値上げをせざるを得ない状況へと追い込まれたのだ。ここに経営悪化の原因があるのだ。事実、関西電力と九州電力がまっさきに値上げを行なったのである。こうしたこれまでの原発に依存しすぎた経営責任を返り見ることも変更もすることなく、原発依存の経営を続けるために再稼動が執拗に狙われているのである。
 こうした動きに鹿児島県内の世論調査でも川内原発の再稼動反対の割合が59%(南日本新聞 五月)を占め、特に再稼動が全国に先駆けて狙われていることがあきらかになって以降、急速に関心と反対の声が県内に広がってきている。また、地元薩摩川内では八割を越える住民が反対しており、こうした圧倒的反対の声にもかかわらず伊藤は、再稼動容認を強行しようとしているのだ。
 地元の薩摩川内市では、一、二号機運転開始の十数年前から反対運動が続いてきた。さらに、二〇〇九年に九電が県と薩摩川内市に対し、三号機の増設を正式に申し入れたのを契機に、翌年にかけて住民の反対運動が高まってきた。市議会に四十件以上の反対の陳情が提出されたほか、増設の可否を問う市民投票条例を求める署名活動なども展開された。また、「3・11」以降も県内各地で脱原発講座や署名活動、中心街での情宣活動や「金曜行動」、九電鹿児島支社への抗議行動など様々な闘いが地元の市民を中心に粘り強く行われてきた。昨年の三月には、「さよなら原発!かごしまパレード」が二千五百人の参加によって鹿児島市で取り組まれ、今年の3・16集会には六千人が結集し、再稼動反対を訴えた。そして、再稼動が迫る中、六月鹿児島県議会に対する闘いが全国からの一千名の結集で闘いぬかれた。六月二十八日には東京でも川内原発再稼動反対集会が行われ、約五千五百人が参加した。
 こうした中で、いよいよ一、二号機の再稼働を阻止する闘いは本番を迎えようとしている。
 台湾では、台湾電力が建設を進めている第四原発に対する五万人を超える大規模なデモと幹線道路を占拠する実力闘争がおこなわれ、馬英九政権は、住民投票での賛成が得られるまでの建設凍結へと追い込まれた。日本でも再稼動阻止と全原発の廃炉を闘いとる実力闘争が問われている。巨万人民の決起があればそれはまったく可能なのだ。全国から闘争の体制を強化し、今秋、川内原発の再稼動を絶対に阻止しよう。


 

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