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   帝国主義列強・大国による新たな分割戦の開始

    
帝国主義打倒のプロレタリア革命へ転化せよ

                         上杉信行


  


 二〇一四年の秋季の国際情勢は、全世界の各地で局地的紛争、戦争が拡大し危機的様相を示している。資本主義の基礎である資本の利潤率の絶対的な低下、膨大な過剰資本の形成、世界編成を軸となって担ってきたアメリカ帝国主義の中心国としての力の後退―喪失、この歴史的に不可逆的に進行する現実によって、世界の紛争、戦争、内戦は拡大の一途をたどっているのである。アフガニスタン戦争に続く、ウクライナ内戦、イラク、シリア、リビア内戦、エジプト、タイの軍部クーデターの発生、パレスチナへのイスラエルの軍事侵攻、中国の南中国海への拡張とフィリピン、ベトナムとの対立、釣魚諸島をめぐる日中対立の激化など、世界は一挙に軍事的緊張を強めている。またリーマンショック以降の世界経済は恐慌からの脱出の展望を失って、帝国主義政府は金融緩和―ゼロ金利政策を強め、また、財政拡大政策によって当面の危機を回避しているにすぎない。労働者階級人民に問われていることは資本主義の歴史的危機をプロレタリア革命に転化していくことであり、また戦争の危機をプロレタリア革命に転化していくことである。

 ●1章 列強による世界の再編、勢力圏めぐる対立の激化

 情勢の第一の特徴は、戦後体制を戦勝国として形作った国連安保理常任理事国の亀裂が拡大し、国連による国際秩序が維持できない事態が急速に進んでいることである。
 ウクライナ内戦はこの集中的な表れだ。国連安保理常任理事国のロシアの過去の勢力圏がEU―アメリカの勢力圏へと再編―分割されようとしており、この結果過去の「冷戦対立」以上のぬきさしならない対立となっている。ロシアの帝国主義としての利益がウクライナ喪失によって極度の打撃を受けるために、プーチン政権は必死に介入している。ロシアはすでにウクライナの一部であるクリミアを併合し、さらにウクライナ東部を影響下にとどめるために同国の親ロシア派に対して軍事支援に乗り出した。常任理事国内部の対立が相互不信によって一層強まっている。また東アジアでは、中国は東中国海、南中国海への進出を計り、ベトナム、フィリピン、マレーシアなどとの対立を深めている。アメリカはアジアへ関与を重視する戦略にシフトし、中国への対抗政策を進め、日本は安倍政権によって対中国包囲網の形成のために外交を強化している。もちろん米帝や西欧帝国主義(フランス、イギリス)は戦後の世界体制における最大の政治、軍事的利権、権益である国連の常任理事国体制を崩壊させようとは思っていないし、ロシア、中国も同様である。しかしながら戦後の列強、大国は米帝の相対的力の喪失、とくにイラク、アフガニスタン戦争以降の軍事力の世界展開能力の限界の著しい露呈によって、また中国の政治経済的台頭などの列強の間の力関係の変化によって、この国連の理事国体制は内部対立を強め、一層弱まっていく以外ないのである。
 ここで確認しなければならないのは次の三点である。第一に、米帝の軍事力の後退である。もちろん米帝は他を圧倒する軍事力を依然として擁している。六千億ドル越える軍事費は二位中国の二〜三倍以上あり、陸、海、空、宇宙、海兵部門で優位を誇り、また核兵器、ミサイルなど装備の数・強さの面でも群を抜いている。しかし今回のアフガニスタン、イラク戦争においてはイラクで五千人にも及ぶ戦死者が出ており、アフガニスタンではベトナム戦争の八年間を上回る十年を越える戦争を続けている。リーマンショックによる経済の打撃に加えて、国家財政の赤字が拡大し、財政危機はデフォルト寸前にまで進んでいる。オバマ政権がシリアへの軍事介入を見送ったことで、米帝の軍事力の低下の現実は世界に示された。
 第二に、中国の経済的台頭に伴う政治軍事的な台頭であり、これに伴う政策である。中国は日本を抜いて現在GDP(国内総生産)で世界第二位でありアメリカのほぼ半分である。軍事費はGDPの十パーセントといわれている。現在「海洋強国」を掲げて領土、領海、領空については国家の「核心的利益」なる概念を生み出して、非妥協的な進出を目指している。もちろん中国は領土の確定した国境線を踏んでベトナムや北朝鮮に侵略するという好戦的政策を取っているわけではない。ただ日本やASEANと接する海域において紛争を辞さない進出を計っている。ベトナム、フィリピンとは岩礁や石油掘削を巡って衝突を繰り返している。中国はウエスト・ファリア条約を楯にして「明、清時代の版図」の回復を主張し、紛争をエスカレートさせているのである。
 第三に、ロシアがソ連邦の崩壊以降、バルト三国やグルジアなどの周辺国を東欧、中欧に続いて自己の勢力圏から失い、ここからの巻き返しのために強硬な外交にでていることだ。穀倉地帯であるウクライナが親欧米の路線―EU加盟の路線を取り、ロシア圏から離脱の動きを強めるに及んで、クリミアを分離独立させロシアに併合したのであった。もちろんロシアが西欧帝国主義、資本主義圏に追い詰められた結果ではあったが、戦後国境線を変更して領土を拡大したと言う意味においては、「国際法」は、ここでは完全に踏みにじられたのである。また同国東部を巡って欧米とロシアの対立は激化し、ウクライナ内戦は、マレーシア航空機の撃墜事件を引き起こすなど一層の拡大を見せている。相互の制裁合戦はロシア経済とEU経済に徐々に打撃を与えている。そもそもロシアは資本主義国とはいっても国営企業中心の経済であり、民間中心の欧米や日本と異質な資本主義国なのである。EU(とくにドイツ、フランス)の資本がフロンティアを求めて、ロシアの周辺に接近すれば相互の対立は激化していかざるを得ない。
 もちろん現在の世界は、この二十年間に急激に進んだ経済のグローバル化の基盤の上にあり、また政治軍事上、強固な国連(常任理事国)体制の上にあるがゆえに、三〇年代型の帝国主義列強による領土の分割と再分割、独自の勢力圏―ブロックの形成を巡る戦争、軍事衝突にただちに結び付くものではない。しかし重要なことは労働者人民の抵抗運動やイスラム主義を掲げた反体制運動があるにもかかわらず、社会主義―共産主義を掲げる労働者階級、被抑圧人民の勢力の歴史的な後退によって、帝国主義ブルジョアジーが好き勝手な反動的、反人民的政策を進めていることだ。別の言い方をすればブルジョア内部の好戦的で人民抑圧的な反革命的勢力が拡大し、政治を展開していることである。ロシアや中国は過去のプロレタリア革命の根拠地から離脱し、いまでは普通の強国、大国として米、日、ドイツ、フランス、イギリスなどの帝国主義列強と肩を並べ世界の再編、分割を進めていることだ。

 ●2章 国益を掲げる国民総動員戦争体制への動き

 情勢の第二の特徴は、帝国主義列強による戦後秩序の再編、対立と抗争の激化にともなって、各国の列強の内部において「国益」という概念を全面に打ち出して国民諸階級、諸階層、労働者階級人民を国家的利害の下に統合する動きが強まっていることだ。また国民、諸階級、層もこの統合に巻き込まれ、排外主義的、好戦的傾向が一部拡大している。支配階級は、他の列強や国力のより小さい周辺諸国への侵略や介入の動きを強め、これをてこに階級支配をより反動的、反革命的に再編する攻撃が、いま全世界に拡大している。共産主義インターの力が弱まっている現在、「国益」の名の下に政党、組合、社会集団が統合される傾向が強まっている。もちろん「国益」などというものは階級対立を隠蔽し、また国内の民族対立、人種対立を隠蔽し排外主義、差別主義、民族主義によってブルジョア階級や支配民族、支配的人種が優位な位置を維持していくための方便でしかない。また、もちろん「国益」を掲げたとしてもすべての集団が侵略戦争や軍事的衝突を是としているわけではない。戦争を目指す政治勢力に対して平和を目指す政治勢力も存在する。戦争による世界市場の分断は資本家や世界貿易によって成り立っている多くの階級、層の生存を危うくする。またプロレタリア人民は兵士として犠牲を強制される。しかし現在、国際秩序が大きく崩れつつあるがゆえに、戦争や軍事衝突をむしろ挑発的に目指す勢力が拡大しているのである。日帝―安倍政権やロシアのプーチン政権、中国の習近平政権などがそうである。もちろん「自由や人権」よりも「国益」の重視を言い出した米帝―オバマ政権も同一である。
 またここで重要なことは、過去においてロシア、中国が「労働者階級人民の解放、革命の正義」を主張し、また国際的に労働者階級人民が団結し帝国主義列強の戦争政策に対峙し、制動を加えた時代状況は基本的に大きく変化したと言う事だ。ロシアはすでに資本主義国に交代し、「国益」を掲げる列強になったし、中国は「第三世界の自主、権利」などを掲げるものの実際上は地勢学的な「国益」を展開する、普通の列強、大国になったと言う事である。労働者階級人民の国際的な戦争反対、平和擁護の力の再建によってのみこの「国益」を掲げた戦争勢力との闘争の展望は切り開けるのである。
 現在、「国益」を戦争と軍事挑発に結び付け危機を煽る政治勢力、支配階級、支配民族の一派が拡大している。また、貧困が一層深まる中より差別を強化して権力者の手先になって生き残ろうとする、卑劣かつ悪質な集団が一種の反革命、ファシズム運動を作って、労働者階級や被抑圧人民に襲いかかっている。戦争、排外主義、差別に反対するプロレタリアの国際的な連帯の運動と正面からの政治闘争、弾圧、襲撃に対する自衛武装の強化によって未来を切り開いていく共産主義者の活動の重要性が増している。

 ●3章 ゼロ金利政策の構造化と資本主義の歴史的危機

 第三の特徴は利潤率低下の極限であるゼロ金利状態が歴史的に構造化する現実が生み出されたことだ。
 今回の金融危機の克服過程としてブルジョア学者が現在の世界経済に期待し位置付けようとも、世界恐慌の危機は依然として克服されず、だらだらと続いている。ここには資本主義の自立的な恐慌の克服過程など「原理的」景気循環の構造はない。全般的な過剰資本の形成と利潤率の一層の低下という資本主義の必然が資本主義に死の重圧を加えている。この象徴がゼロ金利状態の定着である。恐慌による過剰資本の処理は歴史的与件によって全く進んでいない。もちろん、階級対立の激化を避けることも一要因だ。
 現下の世界経済の特徴は、@米国、欧州、日本の先進資本主義国における国債の利回りの低下、ゼロ金利のへの限りない接近である。欧州中央銀行ではマイナス金利の導入を始めた。国債の金利は一般的には主要な企業の平均的な利潤率に匹敵するものである。すなわちもはや資金があっても投資する先、利潤を獲得する場所が無いと言う事なのである。A米、欧、日における金融の量的緩和政策の異例の拡大とこれと連動した政府の財政拡大―財政赤字の未曾有の蓄積である。EUでは国家予算に対する財政赤字の制限ルールによって一定の規律は保たれてはいるものの、日本では政府発行の国債を中央銀行の日銀が大量購入するという過去の禁令を破ったでたらめな政策が強行されている。すでに日本では累積債務がGDPの二倍に達するという財政破綻国家の瀬戸際に追い詰められている。またアメリカでも軍事費や拡大や企業の救済、また公共事業の拡大によって政府財政赤字は拡大の一途となっている。Bさらに重要なことはこれらの先進資本主義圏ではGDPの成長率がゼロに近い事態になっている。ドイツは四月から六月にマイナス成長となっており、ユーロ圏全体で年間見通しは一パーセント前後である。また日本は同時期六・六パーセントのマイナスとなっている(もちろん消費税のアップの影響もある)。
 九〇年代から〇〇年代にかけてアメリカの住宅バブル形成とBRICSなどの資本主義化の進展によって資本主義世界経済のグローバル化が進み、一定の有機性の下にグローバル資本主義というべき世界構造が確立した。しかしこの基本構造は持続しているが実際成長しているのは七から八パーセントの中国やASEANなど一部にとどまっている。インドやブラジルは急速に成長率を鈍化させている。
 問題は現代の資本主義は依然として基軸産業といえる自動車や電機などの耐久消費財の生産において国際競争が激化し、資本はより安い労働力を求めて中国やASEANに生産拠点をシフトし、先進国の国内産業の空洞化を強めていることだ。他方の基軸産業といえるIT部門においては先端企業は労働者を大量に雇用する事なく莫大な利潤を上げている。製品部分は外注し国内生産はない。こういった構造にあっては、労働者を大量に雇用し、あるいは固定資本を拡大するための資金の必要性は一段と弱くなるのである。もちろん国家と資本は社会インフラや軍需産業において強力な競争を展開している。しかし全体を押し上げる事はできない。

 ●4章 極反動政権として登場した安倍政権を打倒せよ

 もちろん今日の世界情勢の危機を規定しているものではないが、この危機をより拡大し促進する要因として日帝―安倍政権の登場と運動がある。第四の特徴といって良いだろう。
 第二次安倍政権が成立し、東アジアは急速な軍事的緊張を強めてる。安倍は平和に対して攻撃し戦争を煽る、極めて危険な政権である。日帝・安倍は「日米安保の強化」「日米同盟の強化」を掲げつつ戦争が可能な国家建設へとひた走っている。東アジアで戦争を引き起こす極反動の国家が日本で作られようとしている。安倍は安保強化を叫んでいるが、これは単にアメリカ帝国主義の支持の下に戦争に出るなどということを目指しているわけではない。安倍は明治以来の日本帝国主義―日本資本主義の正当性、また支配階級、支配政策の正当性を内外に示し、帝国主義の復権をかけて極反動の政策を強めている。「積極的平和主義」などという欺瞞的なスローガンを掲げ集団的自衛権「合憲」を閣議決定し、また憲法九条の廃止を目指した改憲運動を強めている。とくに重要なことは中国、韓国を敵視し、釣漁諸島、独島などの領土問題を、また日本軍「慰安婦」制度を認めた河野談話を反古にする策動などを挑発的にすすめ、ここに日本の「国民」を動員して戦争体制を作る攻撃を強めている。右翼―『産経新聞』などのマスコミを手先に「岩波」や「朝日」を攻撃し、日本の侵略戦争の歴史を正当化する歴史の偽造の動きを強めているのだ。反中国、反韓国の排外主義を煽り立て、第二、第三の「朝鮮征伐」「中国侵略」にむけた国民意識の統合を目指しているのである。ヘイト・スピーチを繰り広げる「在特会」などの悪質なファシスト達を野放しにし、利用して戦争意識を煽り立てているのである。
 安倍政権による中国を敵視した対中国包囲網の形成の策動は、東アジアの戦争の要因を作り、拡大していくものであり、決して許してはならない。粉砕していくべきなのである。
 もちろん安倍はアジア人民に対して敵対しているばかりではない。日本における労働者階級人民に対して、ブルジョア階級、金持ち集団、有産階級、また原発や医療の権力と連動する利権、権益集団擁護、護持の観点から、徹底した抑圧、搾取の政策をとっている。残業代ゼロまた労働者派遣法の改悪攻撃、トヨタなどの多国籍資本を守るために日本の農業―医療体制を崩壊させるTPPの推進などである。また消費税率のアップ―大衆収奪の強化と企業減税の促進などである。
 福島での原発の大事故による放射能の大量飛散、大量の被曝被害にもかかわらず電力資本、学者、労組、地元利権集団という総じて体制擁護の利益集団の防衛のために、原発再稼働に突き進んでいる。また沖縄への基地負担の押しつけに対する沖縄人民の反対にもかかわらず辺野古新基地建設の攻撃を開始した。
 世界の戦争を煽る要因となっている安倍政権、東アジアでの軍事的対立を煽る安倍政権、本質的にアジア人民、日本の労働者階級人民に敵対的である安倍政権を広範な人民と連帯して打倒していくことは、現在極めて重要である。


 

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