共産主義者同盟(統一委員会)






■政治主張

■各地の闘争

■海外情報

■声明・論評

■主要論文

■綱領・規約

■ENGLISH

■リンク

 

□ホームへ

  
   G7伊勢志摩サミットを弾劾する

      
戦争と改憲に突き進む安倍を打倒せよ


 

 安倍晋三は五月二十六、二十七日、議長として伊勢志摩サミットを開催した。
 安倍は、G7各国首脳を伊勢神宮で迎えるという極反動パフォーマンスを強行した。G7各国首脳を宗教施設に招きいれる。それも日本の天皇制の拠点である伊勢神宮を訪問させて会議を開幕する。こんな破廉恥な行為をG7首脳に実行させるというのは、右翼反動の安倍でなければできないことである。
 そして、サミット終了直後には、オバマが原爆投下国大統領として初めて広島を訪問するという短時間のイベントを組み込み、安倍はここに同行することで「外交的成果」をあげようとした。
 G7サミットは、そもそも帝国主義各国の首領どもが一堂に会して、その利害を主張しあい、調整しあう強盗会談であるが、伊勢志摩サミット議長・安倍晋三の議事運営はあまりに無内容でデタラメであった。他帝首脳から、そしてブルジョア・マスコミ、ブルジョア経済評論家から批判の的となった。
 会議内容のていたらくゆえに、安倍の思惑としては伊勢神宮やオバマ広島訪問を最大限利用して「成果」を演出しようとしたのであろう。しかし、まさにそのことが、伊勢志摩サミットの極端な反動性を浮き彫りにした。今、労働者人民の怒り、被爆者の怒り、沖縄人民の怒り、アジア人民の怒りが、安倍右翼反動政権に向けられている。われわれは、この怒りをもって伊勢志摩サミット粉砕闘争を全国でたたかい、全国から志摩現地に結集して断固たたかいぬいた。
 伊勢志摩サミットを最大限利用して、政権を延命させ、改憲に突き進もうと構える安倍晋三を引き摺り下ろし、安倍政権を打倒しよう。

 ●第1章 サミット戒厳態勢弾劾!

 日帝―安倍政権は、伊勢志摩サミットを「対テロ」を掲げて開催した。それは、「対テロ」戦争の合意、日帝の参戦―派兵という意図と同時に、「テロへの警戒」と称して国内治安弾圧を激化させる意図をもったものであった。駅のゴミ箱・コインロッカーを封鎖し、駅構内や街頭に警察官を大動員して配置し、「対テロ」戒厳態勢を現出させた。
 サミット会場近くでは、電車の運行停止などの交通規制によって児童生徒たちが通学できなくなった。伊勢志摩地域の小中高と特別支援学校の計十七校が二十五日から二十七日までの三日間、休校せざるをえなくなった。津市などの中高と大学、計十三校も二十六日と二十七日を休校とした
 さらに安倍政権は、福島第一原発の廃炉作業を、サミット開催期間中の二十五日から二十七日まで三日間、作業休止にした。福島第一原発の作業は、中部国際空港や志摩市に及ぶ放射能を放出しているのか? それほど危険な作業であるなら、その事実はどうして日本の労働者人民に明らかにされないのか。
 五月二日、大阪府警公安三課は、米軍Xバンドレーダー基地建設反対運動、伊勢志摩サミット反対運動に対して「詐欺容疑」をでっち上げて、関西を中心に一斉家宅捜索を強行した。そして五月十九日には、同「容疑」で三名の仲間を逮捕した。五月二十四日には、「G7茨城・つくばサミットを問う会」の仲間に対して、「建造物侵入」をでっち上げて逮捕した。まさに、サミット反対闘争への事前弾圧であり、予防拘禁の強行である。
 安倍政権は、昨年強行可決した戦争法を適用して「対テロ」戦争に参戦することを狙っている。サミット戒厳態勢は、「対テロ」を掲げての弾圧そのものであると同時に、労働者人民の身近に「テロリスト」が存在するかのような状況を無理矢理作り出し、「対テロ」戦争参戦に向けた煽動に最大限利用しているのだ。

 ●第2章 「対テロ」戦争と東アジアの戦争重圧

 伊勢志摩サミット議長―安倍が中心になって作成した「サミット首脳宣言」(以下、「首脳宣言」)は、「世界経済」と「政治外交」を主要課題としてまとめられている。
 政治外交の第一に掲げられているのは「テロ・暴力的過激主義」である。
 宣言の前文においても「暴力的過激主義、テロ攻撃その他の課題は、既存のルールに基づく国際秩序、全人類に共通する価値と原則への深刻な脅威」と規定している。
 宣言本文では「テロ対策に関し、国際社会で主導的役割を発揮」するとしている。さらに、別項「中東」においては、「ジュネーブ合意に基づくシリアの政権移行」「イラクの改革と国民和解」「『イスラム国』(IS)から解放された地域の安定化支援」としている。表現は穏便だが、これらの文言の底には、シリアとイラクに帝国主義の意向に沿った政権樹立を目指し、そのためにISを軍事的に掃討するという意思一致があるということだ。
 議長国―日本は、中国、朝鮮民主主義人民共和国(以下、「共和国」)に対する非難に強くこだわった。とりわけ、共和国の「核・ミサイル開発」に関しては、安倍自身が「地域と国際社会の平和への深い脅威で、最も強い表現で非難されるべきだ」と首脳会議の中で強く主張した。
 「北朝鮮」の項においては、安倍の主張がそのまま文章化されて、「一月の核実験と、弾道ミサイル技術を用いた発射を最も強い表現で非難」した上で、「北朝鮮に、国連安全保障理事会決議や六カ国協議共同声明を順守し、今後核実験、発射その他の挑発行動をしないことを要求」「拉致問題を含む国際社会の懸念に直ちに対応するよう強く求める」とした。
 中国に対しては「海洋安全保障」の項で「国際法に基づき主張を行うこと、力や威嚇を用いないこと、紛争解決には仲裁手続きを含む平和的手段を追求すべきことを再確認」とし、この項が中国に対する主張であることを明確にするために、わざわざ「東シナ海・南シナ海(ママ)の状況を懸念」という一文を明記している。
 「気候変動、エネルギー」の項においては、「東京電力福島第一原発の廃炉、汚染水対策に関する着実な進展を歓迎」なる一文が入っている。先にも書いたように、安倍政権は、G7サミット開催のために、福島第一原発の廃炉作業を三日間停止したのだ。G7首脳が言う「原子力の利用」の「安全性、セキュリティー」とは何か? 自分たちの会議の間だけ放射能の危険を抑え込み、「テロリスト」に核を渡さない、ということでしかない。核兵器の破壊力―世界支配能力を熟知するがゆえに、核を独占し、その危険から自分たちだけは隔離されていようということだ。

 ●第3章 収縮する世界経済と帝国主義間対立

 首脳宣言の「世界経済」に関しては、その前文に「G7伊勢志摩経済イニシアチブ」なる仰々しい名称が掲げられている。議長―安倍晋三と官邸・経済産業省の官僚どもが、いかにも重大な経済政策上の一致がなされたかのような演出を盛り込んだのだ。

 ▼3章―1節 「財政出動での一致」のもくろみ

 安倍は五月初旬に欧州各国を訪問し、「財政出動での一致」をとりまとめようとした。
 安倍は四月二十九日のテレビ番組で「(サミットで)『G7版三本の矢』が必要だというメッセージを出せればいい」と発言した。安倍は欧州各国で、この趣旨、とりわけ財政出動方針をG7諸国で一致させることを主張した。
 安倍はこの財政出動方針案をもって、五月一日から七日まで欧州各国とロシアを歴訪した。イタリア、フランス、ドイツ、イギリスとベルギーを訪問し、伊勢志摩サミットに向けて各国首脳と会談した。
 仏大統領オランドと伊首相レンツィが「財政出動の重要性」ということには同意したが、独首相メルケルは財政規律を重視する立場を強調し、英首相キャメロンも財政出動には慎重な姿勢を示した。日帝―安倍が主張する「G7で一致した財政出動」ということに関して、欧州歴訪では確認できなかったのだ。
 これが、安倍の欧州歴訪の実態である。しかし、安倍自身は五月五日の記者会見で、「各国首脳と一致できた」と強調した。この主観的理解で外交関係が成り立つのか? 安倍は、伊勢志摩サミット首脳会合での討議、終了後の議長会見、そして、その後の消費増税再延期の会見でも、同じ主観的主張をくり返している。
 伊勢志摩サミットに先立って五月二十、二十一日に仙台市で開催されたG7財務相・中央銀行総裁会議において、財務相・麻生は、中国経済のバブル崩壊や原油価格の急落を直接の要因としつつ、収縮し不安定化する現代資本主義に対して「世界経済の不確実性が増している」という表現で、その危機的状況を共有しようとした。G7各国が足並みをそろえて財政出動を行う方針を提示し集約しようとしたのだが、独、英は反対した。米財務長官ルーも「いまは二〇〇八年ではない」と発言している。つまり、〇八年恐慌直後にG20が財政出動で一致した状況とは違うということだ。
 そして、この不一致のまま、伊勢志摩での首脳会合が行なわれた。
 首脳宣言は、「世界経済」を第一の課題とし、「世界経済に対する下方リスクが高まっている。新たな危機を回避するため、経済の強靭性を強化しているが、この目的のため適時に全ての政策対応を行うことで現在の経済状況に対応する努力を強化する」という共通認識を確認した上で、しかし、その方針については「各国の状況に配慮しつつ……より強力で均衡ある政策の組み合わせを用いる」とした。
 安倍はアベノミクスのG7諸国への国際的拡大を目論んでいた。首脳宣言では「三本の矢」(財政、金融、構造改革)が文言として使用されてはいる。しかし、確認されたことは「各国ごとの状況に配慮」して、これらの政策を「個別に、また総合的に用いる」ということでしかない。安倍が主張した「G7版三本の矢」を全力で推進するような決定ではないし、G7で一致して財政出動を行うという決定でもない。一般的な経済政策を列挙した上で、あくまで「各国ごとの状況」に応じて適用することを確認しただけだ。
 何が「G7伊勢志摩経済イニシアチブ」だ! はっきり言えば、何も一致した方針はないということではないか。
 どうしてこのような玉虫色の文言を並べただけの宣言になったのか。それは、サミット議長の安倍が提起した「世界経済分析」が、あまりに稚拙であり、自国の利害、否むしろ自民党の選挙戦術のための作文であることが明白であったからだ。

 ▼3章―2節 世界経済危機をあおり立てた安倍晋三

 サミット首脳会議においても、終了直後の記者会見においても、安倍晋三は世界経済の危機を強調した。
 「リーマン・ショック直前の洞爺湖サミットは危機を防ぐことができなかった。その轍を踏みたくない」「リーマン前と状況が似ている」「対応を誤れば、危機に陥る」と、議長・安倍は首脳会合で煽り立てた。
 安倍は、世界経済の安定を意図したのではない。目前の参院選に「勝利」するために、消費税増税をなんとか延期しようという企みだったのだ。しかし、アベノミクスが失敗したという事実は隠したい。アベノミクスのせいではない、世界経済全体のリスクが拡大しているせいだ、しかも、それはリーマン・ショックに匹敵する危機に直面している事態だ、と言いたいのだ。
 なんと狭い了見であろうか。G7サミット議長は、自分の国の、自分の党の選挙戦術のことしか考えていない。国際会議での情勢分析もすべて、その目的に引き付けて、ストーリーをでっち上げたのだ。
 「危機」を煽る安倍が、独帝メルケルに反論され、たしなめられたのは、当然のことだ。
 〇八年以降現実に起こっていることは、本当は何なのか。
 中国経済の停滞、原油など資源価格の低下、本年年頭からの株価下落など、現代資本主義経済は不安定要因を抱えている。しかし、〇八年恐慌とは別に、〇八年と似たような経済危機が再び訪れた、というようなことではない。リーマン・ブラザーズ破綻を画期とする〇八年金融恐慌は、米連邦準備制度理事会(FRB)をはじめとする各国中央銀行の二〇〇〇年代初頭の金融緩和によって無理矢理つくり出された新たな経済バブルが一挙に崩壊したものだった。
 それを洞爺湖サミットで予想できなかったことを安倍は失敗だったように主張しているが、そもそも、七四―七五年恐慌時とは、世界経済に占める帝国主義の位置が異なっている。〇八年恐慌に対しては、G8では対処することができず、結局中国・ロシアなどBRICS諸国や産油国などを召集したG20の規模での財政出動で対処せざるをえなかったのだ。
 しかし、問題は、G20の財政出動と、その後今日にまで至る帝国主義各国の金融緩和によって、恐慌に直面した現代資本主義を延命させてきたことである。金融資本、金融投機資本は、超金融緩和の下で、地球規模で大規模な投機をくり返し、拡大してきた。富の偏在はさらに大きくなり、地球規模で格差は拡大してきた。
 新自由主義政策は「構造改革」の名の下に労働者人民の権利を奪い、民営化を進めてきた。結果として、各国で雇用は不安定になり、賃金は抑えられ、民生が破壊されてきた。需要が拡大する根拠を、現代資本主義そのものが破壊してきたのだ。〇八年以降の財政出動での「景気維持」はすでに賞味期限が切れている。民生が回復して需要が拡大する根拠がない。実体経済そのものは回復していないのだ。
 アベノミクスと無関係な「世界経済のリスク」によって危機が始まっているのではない。〇八年恐慌下でさらに徹底された新自由主義こそが、金融投機資本を延命させ、〇八年以降の資本主義経済を空洞化させてきているのだ。安倍晋三とアベノミクスを推進した者たちこそ、現在の経済実態の本当の責任者ではないか。

 ▼3章―3節 日米間の対立―通貨安競争

 安倍が「アベノミクスの成果」だなどと主張してきたことは何だったのか。
 アベノミクスの一環としてなされた、日銀総裁黒田の国債買い入れを手法とする超金融緩和によって、一時的に株価が上がり、また、円安が進んだことで貿易収支が改善した。これによって、輸出産業などの独占資本の収益は一時的に上がった。
 しかし、それだけである。労働者人民総体の賃金は上がらず、格差は拡大し、増税によって、日本国内の需要は拡大してはいない。
 四月二十八日に日銀が追加緩和を見送った後、外国為替市場では1ドル=111円台から106円台に円高が進んだ。財務相・麻生は「急激な円高、円安にはいろんな手段をとる」としたのに対して、米財務省は現在の円高を「秩序だっている」と反論し、日本の円売り介入に対して警告を発している。
 一方、米国の外国為替報告書は、日本などの為替政策を監視すると明記した。この報告書は米財務省が半年に一度公表するものであり、対米貿易黒字、経常黒字、為替介入の規模の三つの基準で監視リストに入れる。日本をその監視対象にするということだ。
 五月のG7財務相・中央銀行総裁会議は、「通過安競争を避ける」ことを公式には確認した。しかし、この時に行われた日米財務相の個別会談では、米財務長官ルーが、日本が円安誘導の為替介入することを改めて批判した。これに対して、麻生は、現在の円高に対して「秩序だっているとは言えない」と反論し、決着をみなかった。
 安倍がアベノミクスの「成果」だと主張する、わずかな貿易収支の改善は、この「通過安競争」の結果なのであり、このわずかな「成果」をめぐって日米帝がせめぎ合っているのである。安倍が誇る「日米同盟」も、その実態はこのような対立の上に存在しているのだ。

 ▼3章―4節 タックス・ヘイブン 規制を回避

 サミットの前までは大きな議題のように報道されていたパナマなどの租税回避地問題が、サミットの中ではほとんど議論されなかった。
 財務相・中央銀行総裁会議においては議題とされていたのだが、独占資本や富裕層の租税流出をくいとめる根本的な方策は一致してはいない。租税回避問題は、「テロ組織への資金」規制と合わせた問題として議論され、「行動計画」をまとめたことにはなっている。しかし、規制対象とする法人の範囲や監視のための情報共有化の方法をめぐって、議論は一致していない。
 つまり、大枠では租税回避を規制するとはしながらも、独占資本や富裕層、つまり支配階級の資金の規制にさまざまな抜け道をつくるものでしかないのだ。重要なことは、国際的な資金の移動の問題が、むしろ「テロ組織への資金」の規制問題にすりかえられようとしていることだ。

 ●第4章 改憲に突き進む安倍政権を打倒せよ

 ▼4章―1節 日米同盟強化を強調した安倍


 伊勢志摩サミットでの日米首脳会談は、当初二十六日午前に開催する予定であったが、早めて二十五日夜に行われた。
 五月十九日、沖縄の女性強姦殺人事件の犯人が元米海兵隊員であることが判明し、沖縄「県」警がこの米軍属の男を逮捕した。米軍兵士・米軍属による犯罪がくり返されてきた沖縄で、決して許すことのできない残虐な殺人事件が引き起こされた。繰り返される犯罪は、米軍基地が集中するがゆえである。根本的解決には米軍基地の撤去以外にない。沖縄人民の憤怒は、辺野古新基地建設阻止、米軍総撤収として大きく沸きあがっている。
 安倍は、サミット直前に引き起こされた米軍犯罪をサミット開催前にどうにか収めてしまおうとした。
 二十五日の日米首脳会談後の記者会見で、安倍は「オバマ大統領に断固抗議した」と言い、オバマは遺憾の意を表明した。これで幕を引き、日米同盟が堅持されていることだけを確認しようとしたのである。
 何も解決などしない。本当に謝罪するなら、米軍を総撤収せよ!
 安倍もオバマも、沖縄の米軍基地そのものに触れることはなかった。翁長知事が首相に要請していた日米地位協定の改定に対しては、運用上の「目に見える改善」を行うなどとして否定した。
 オバマは、五月になって広島訪問を決定し、日米政府は原爆投下という歴史的犯罪に対する謝罪を不問にして、日米同盟関係の強化の象徴的イベントにしようとした。
 四十八分間の広島滞在と十七分間の演説が、原爆投下国の最高責任者が初めて被爆地を訪問した歴史的イベントとして、国内外で報じられた。
 オバマは長々とした演説を、言葉を駆使して装飾し、歴史的犯罪を美しい詩を詠むように語った。
 こんな演説が許されてはならない。
 オバマは決して謝罪の言葉を述べようとはしなかった。
 「七十一年前、雲一つない明るい朝、空から死が落ちてきて、世界が変わった」だと! こんな言葉を、誰がどんな立場で語っているのだ。問われていることは、誰が広島に原爆を落としたかだ。原爆を落とした責任者はだれなのかということだ。こんな言葉で、原爆を、被爆地を語ることを許してはならない。
 オバマは二〇〇九年四月のプラハ演説で「核兵器なき世界」を約束して、何も実現できていないことを総括しなければならなかったはずだ。
 演説の終わりには「世界はここで永遠に変わってしまったが、今日、この都市の子どもたちは平和の中で日々を生きていくだろう」と語った。まるで米帝国主義の歴史的犯罪が消えてしまったかのような語り口だ。そして「未来」の「道徳的な目覚め」をという言葉で結ぼうとした。
 被爆者の苦しみが消えてしまったわけではない。広島でも、長崎でも、日本各地で、韓国で、被爆者、被爆二世、被爆三世が、その健康を憂い、国家の責任を追及してたたかい、生き抜いている。
 オバマは被爆者、被爆二世・三世の声を聴け! 米帝国主義は被爆者に謝罪せよ!
 この日、被爆二世を先頭とするたたかう仲間たちは、被爆者への謝罪と補償、核兵器と原発の廃絶を掲げて広島現地に決起し、オバマ、安倍を徹底的に弾劾した。
 その上で、さらに許しがたいのは安倍の「所感」である。
 このオバマ広島訪問を、日米同盟の強化とその宣伝に最大限利用する意図だけがあからさまである。被爆地広島で、安倍は核兵器廃絶の具体的方針を語ることはなく、原発に関しては触れることもなかった。安倍は、かつて「熾烈に戦い合った敵」が今や「同盟国」になり、「日米同盟は世界に希望を生み出す同盟」になったことを強調した。日米同盟を強く確認し、日米同盟を根拠に「積極的平和主義」を掲げて世界中に派兵していく決意を広島で主張したのだ。
 この反動的政治イベントのすべてが、安倍にとっては「外交的成果」なのだ。すべてを七月参院選に利用しようと目論んでいる。

 ▼4章―2節 「増税再延期」とアベノミクスの破綻

 安倍晋三はサミット終了直後の五月二十八日夜、財務相・麻生と自民党幹事長・谷垣に対して、消費増税を一九年十月まで二年半先送りする意向を明らかにした。
 サミット首脳会合において危機をわめきたてて、他帝の首脳から批判されたにもかかわらず、安倍はサミット終了時の「議長会見」において、論議内容を恣意的に捻じ曲げて「世界経済が危機に陥る大きなリスクに直面している。G7はその認識と強い危機感を共有した。この国際的合意は大変重い」と、勝手に総括してしまった。
 そして、「日本は議長国として、率先して世界経済の成長へ貢献する考えだ」とし、「あらゆる政策を総動員し、アベノミクスの三本の矢をさらに強力に進め、世界に展開していく」と主張した。
 ついでに「アベノミクスは決して失敗していない」という言い訳も忘れなかった。
 デタラメを言うな! 何が「国際的合意」だ! 上に述べたように、あくまで「各国の状況に配慮しつつ」という但し書きがついた「合意」であり、安倍の意気込みのような財政出動など合意されてはいない。むしろ、独帝、英帝は反対しているのだ。
 この安倍のデタラメなサミット議事運営と議長総括に対して、国内外のブルジョア新聞各紙、エコノミストが批判した。IMF専務理事ラガルドも、安倍の情勢認識の誤りを批判した。
 見え透いた嘘である。安倍が考えていることは七月参院選をいかに自民党に有利にたたかうか、だけだったのだ。
 アベノミクスの破綻は鮮明だ。安倍が「新三本の矢」として掲げた「二〇二〇年GDP六百兆円」は言い出して半年たつが、具体的方策などない。安倍の言う「一億総活躍社会」など、さらなる貧困の拡大でしかないことは、誰もが知っている。
 そして、昨年の戦争法成立強行で、安倍独裁に対する労働者人民の批判が集中している。安倍が企む改憲攻撃を許さないたたかいが始まっている。
 参院選を前に、何も手段がない。安倍は、増税回避に延命の道をさぐった。しかし、安倍は二〇一四年十一月の消費増税延期を決定した際に「二〇一七年四月には確実に10%へ引き上げる」と断言していた。再延期する根拠は、簡単にはでっち上げられない。
 追い詰められた安倍は、サミット首脳会合で「リーマン前と状況がよく似ている」とわめき散らした。しかし、前に見たように、首脳会合でも、議長会見に対しても、この安倍の浅はかな企みに基づく「世界情勢分析」は徹底批判された。財務官僚など政権内部でさえ、安倍批判が噴出している。
 国会会期末の六月一日、安倍は首相官邸で記者会見し、消費増税を二〇一九年十月まで二年半再延期すると表明した。リーマン・ショックと同様の事態と強弁する「根拠」は、サミットから五日間で打ち砕かれていた。拙劣な安倍のサミット運営ゆえの自滅である。厚顔無恥な安倍は、「公約違反ではないかとの批判があることも真摯に受け止めている」とし、「これまでの約束とは異なる新しい判断だ」と強弁した。
 「真摯」という言葉が空疎である。
 アベノミクスの破綻は棚上げし、「新興国や途上国の経済が落ち込んでおり、世界経済が大きなリスクに直面している」として、増税再延期の理由を「新興国と途上国」のせいにした。
 目の前の増税を回避すれば、人民は自民・公明に投票する、と考える。改憲、戦争と独裁を狙いながら、争点を消費増税にすり替える。この安倍の発想こそ、労働者人民を徹底的に侮蔑するものである。安倍右翼反動政権を必ず打倒しなければならない。

 ▼4章―3節 改憲攻撃を粉砕せよ

 侵略反革命戦争参戦―派兵、改憲をめざす安倍晋三は、再びその真意を押し隠し、経済政策を前面に押し出して、参院選で人民をだまそうとしている。
 しかし、伊勢志摩サミットをめぐる安倍晋三の狡猾な政治と、稚拙な情勢認識、言説の変転を見れば、安倍右翼反動政権をこれ以上延命させてはならないことは、誰の目にも明らかである。
 安倍は決して大衆増税に反対なのではない。法人税減税を強行し、消費増税を労働者人民に押し付けてきたのは安倍だ。デフレ下の参院選でばらまく政策がなくなっただけだ。独裁者ゆえに、人民の批判への恐怖で安倍は凝り固まっている。消費増税再延期でどれだけの人々をだまして得票しようというのか。こんな陳腐な政治に決してだまされてはならない。戦争と改憲に突き進む安倍政権を叩き潰すべくたたかいぬこう。
 安倍晋三は、災害と「テロ」を煽り立てながら、「緊急事態条項」の新設から改憲に手をつけようとしている。
 集団的自衛権行使の「合憲」化を戦争法成立として強行した安倍の本音は、憲法九条改悪である。しかし、戦争反対の世論が高まっている現実の中で、九条以外の条項から改憲をなそうというのが、安倍の企みである。
 とにかく改憲に手をつける。その手始めとして、東日本大震災、熊本地震を理由にし、また、フランス、ベルギーでのISの攻撃を煽り立てて、「緊急事態条項」、つまり国家緊急権を憲法に新設しようというのである。
 しかし、これは「お試し改憲」などというものではない。国家緊急権とは「戦争、内乱、恐慌、自然災害」に際して「国家の存立を維持するために、立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置をとる権限」のことである。基本的人権、三権分立ということが、緊急事態という判断によって制限・停止され、国家の権限が政府に集中される。
 安倍は、災害や「テロ」を口実にして、憲法秩序を停止できる条項を新設しようとしている。政府が全権力を掌握し、国会で立法せずに法律と同等の政令を政府が決定していく。政府が軍法会議と同等の権限を持ち、司法の独立が否定される。「国家の存立」を要件にして、表現の自由、集会・結社の自由など基本的人権を制限する。「一時停止」ということも、いったん発動してしまえば、権力を握った政府の判断によって延長が繰り返される。
 自民党の改憲案が想定している「緊急事態条項」とは、そういうことなのである。戦争法成立を強行した安倍は、本当に侵略反革命戦争に参戦していくためには、国家緊急権発動による国内総動員体制構築が必要だと考えている。
 戦争法発動阻止、派兵阻止のたたかいは、国内総動員体制構築との対決である。伊勢志摩サミット強行のために現出した「対テロ」戒厳体制こそ、安倍がなそうとする国内階級支配再編への着手である。
 「対テロ」戦争に反対し、「対テロ」治安弾圧を打ち破る、労働者階級人民の政治決起、反帝決起が今こそ問われている。安倍右翼反動政権打倒に向け、左派勢力が総結集してたたかおう。



 

当サイト掲載の文章・写真等の無断転載禁止
Copyright (C) 2006, Japan Communist League, All Rights Reserved.