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   2016岩国行動に決起しよう

   
   戦争法廃止、改憲阻止、反基地闘争を担う

         労働者反戦闘争の前進をかちとろう

  

 ふたたびの侵略戦争に直接手を染めるのか、もしくは、帝国主義の戦争と貧困を打ち破り、新しい世界を切り拓く主体へと成長するのか。日本の階級闘争は、その歴史的岐路に立っている。戦争法廃止、改憲阻止、米軍再編反対を掲げ、どちらに進むのかをめぐって奮戦する全国の先進的労働者・労働組合に、反基地運動現場をつなぎ、2016岩国行動に決起することを呼びかける。

 ●1章 戦争でしか生き延びられない資本主義・帝国主義

 資本主義の基本性格は、資本を投下し、利潤を得て資本を自己増殖させることである。資本制的生産が巨大化するにつれ、自己増殖のためにいっそう巨大な利益を必要とし、市場や資源、権益をめぐる衝突が、紛争や戦争を引き起こしてきた。詳しく述べる紙面はないが、それは二つの大戦を見れば明らかである。資本主義の勃興以降、世界のおよそ二割弱ほどの先行資本主義諸国が、強奪や植民地支配などによって傍若無人な支配を他国におよぼし、独占的に地球上の資源を安く手に入れ、経済成長を実現してきた。たとえば一九七〇年代の半ばまでは、七大石油メジャーが世界の原油価格を支配し、石油は一バレル三ドル以内で好きなだけ購入できる仕組みだった。その仕組みに参加できない国は、成長率を上げることはできないというような事態も生み出された。
 しかしながら一九七〇年代、第四次中東戦争をターニングポイントとして、二〇世紀の後半には大きな変化が起こった。石油輸出国機構(OPEC)による原油価格形成によって七三年石油危機などを通し、資源価格を低く抑さえこむことが困難になり、自由にできる市場拡大に制限がかけられた。資本の利潤率は低下し、利潤をあげ続けるには、資本はこの突破(暴力的な、あるいは金融という別領域での)をめざし、他方で、一国経済・国民国家の内部から搾り取れるだけ搾るという道を進んできた。世界的規模での南北格差、すなわち豊かな先行資本主義国(帝国主義)と第三世界諸国の貧困に加え、二〇世紀後半以降、世界的規模で資本主義国の「中間層」と呼ばれる部分の没落が進んだ。新自由主義と呼ばれる巨大資本の利益獲得のための暴力的な政策が世界を席巻して、これを実現したのである。
 二一世紀に入って、資本の強欲は国民国家を借金漬けの破産状態に追い込み、他方で、アフガニスタン・イラク・中東諸国へと資源争奪の侵略戦争を全面開花させた。このような中で、富は極端なまでに一握りの部分に集まり、飢餓や貧困、戦争・紛争に苦しめられ、明日をもしれない膨大な民衆が生み出されている。二〇一六年一月十八日、オックスファムレポートは、世界の上位六十二人と下位三十六億人の資産は、同じ計二百六兆円(一兆七千六百億ドル)という衝撃的な報告を行った。上位グループの資産は、五年で六十兆円増え、下位半数の資産は百二十兆円失われた。世界には一日あたりの生活費が一・九ドル(=二百二十八円)未満(すなわち月七千円以下)が20%もいる一方で、上位10%の所得はさらに46%上昇という具合である。この傾向は年を追って拡大している。資本家・富裕層の強欲は衰えることなく、他方、奪い続けられる民衆の購買力は失われるばかりで、景気の回復などありえない状態が、世界的規模で進んでいる。
 日本でも同じ事態が進んでいる。詳しい経過説明は省くが、年間世帯所得の平均値は上がっているが、富裕層の所得が増えているだけで、平均人数の中央値は百五十万円近く低下、世帯所得二百万円以下が五人に一人となった。高齢者の低・無年金、非正規雇用と失業の拡大が進み、生活保護受給者は戦後最多(二〇一四年末で二百十七万人)である。
 これらは企業利益を上げるためのリストラ、下請けたたき、非正規雇用化などによって構造的に生み出されたものであり、一国内で景気回復することはありえない。失業給付や生活保護などの社会保障の対象者は増えるが、国家財政は困窮の一途を辿っている。税金も払えない貧困者が拡大する一方で、企業・富裕層は「パナマ文書」が物語るような資産隠し、税金逃れの法人税や所得税減税に躍起となっている。
 程度の差はあれ、世界的規模でこのような事態が進んでいる。巨大資本家たちや安倍政権は、この事態を充分に分かっていて、地すべりのように貧窮化していく民衆の怒りを自分たちに向けさせないように、「企業の成長が社会に豊かさをもたらす」という嘘八百を繰り返している。
 「企業(資本)の成長(=利益獲得)」の道は、暴力的な資源・市場の強奪、生存を脅かすまでの民衆への搾取・略奪しかないまでに、資本主義は熟して腐っている。これに照応し、アメリカ・ロシア・中国など覇権諸国では巨大な軍産複合体が成長し、莫大な利益をあげられる戦争産業が各国で大きな力を持っている。安倍政権・日本巨大独占資本も、これに参入しようと画策している。それらが社会を戦争と貧困の沼地に引きこむ動因となって、世界の緊張と不安定性を否応なしに拡大しているのである。

 ●2章 繰り広げられる戦争政策

 このような時代を背景に、二一世紀に入って米軍再編が本格化した。日米両政府は、二〇〇六年に在日米軍再編計画(ロードマップ)に合意、「二〇一四年完了」を目標に、@基地の再編強化、A日米の軍事一体化、を柱として進んできた。
 沖縄や岩国でのたたかいによってこれらの目標はずれ込み、他方で、米軍再編を支える米軍事戦略も変化しつつあるのが現状である。
 二〇一二年一月、米国防総省は「米国の世界的なリーダーシップの維持:二一世紀の国防における優先事項(Sustaining U.S. Global Leadership: Priorities for 21st Century Defense)と名付けられた新たな国防戦略指針を公表した。これは、イラクとアフガニスタンからの撤収、中国の台頭といった安全保障環境の変化や、国防予算削減の動きの中で、二〇二〇年に向けた次の一〇年の統合された軍のあり方を示すものとされている。その基本的な考え方は、軍事予算の削減を受け、軍の規模を縮小・スリム化し、一方で機動的で柔軟かつ先進技術を持つ軍隊をめざすとするものである。
 これをベースに、二〇一四年には、「四年毎の国防計画の見直し(QDR)」において、「アジア太平洋地域を重視し、同地域へのプレゼンスの強化」、すなわち、その土台となる同盟関係の強化、重要地域への前方展開部隊の追加配備、艦艇・航空・地上部隊等の新たな組合せという「新たなプレゼンス」を公表した。そのための柱の一つは、「第三次相殺戦略」と呼ばれているものである。「米国の軍事技術優位が中露の技術革新と米国防予算の強制削減で揺らいでいる」との認識に立ち、「中国のA2/AD(アクセス阻止/エリア拒否)を成立させないほどの革新技術への投資を通じて中国を追随させない」ことがめざされている。その一環として、二〇一四年には、京都府の経ヶ岬にTHAAD弾道ミサイル迎撃システムの一部を成すXバンドレーダー基地が建設され、今年七月には、韓国の慶尚北道・星洲(ソンジュ)でのXバンドレーダー基地建設が発表された。それは朝鮮半島のみならず中国やロシアを射程に入れた「新冷戦」とも言われる緊張を作り出している。
 アフガニスタン・イラクにおける戦争にのめり込み、市場としての安定性まで破壊した中東地域から、アジアでの市場争奪に重点を移したアメリカ帝国主義は、経済的にも軍事的にも存在感を増す中国との覇権争いへの布陣づくりに躍起となっている。そのための軍事的ネットワークとして、オーストラリア、日本、韓国、フィリピンおよびタイとの同盟、インドとの安全保障関係の深化、そしてニュージーランド、シンガポール、インドネシア、マレーシア、ベトナムおよびバングラデシュとの友好関係を挙げ、軍事技術の供与と合同軍事演習によって中国包囲網を形成しようとしている。東アジアに注目すれば、必然的に、オーストラリアと日本、そして地理的条件からフィリピンが柱になる。 とりわけ、日本に対する期待は安保法制の成立や防衛力への投資を含め大きいとされている。
 このアメリカ帝国主義と足並みをそろえ、アジア市場・権益拡大を狙い、中国への牽制を強めているのが、日帝―安倍政権にほかならない。
 安倍政権は、中国が、南西諸島を通過する海軍艦艇や航空機、あるいはそれらによる軍事演習を活発化させていることを理由に、自衛隊による第一列島線の防御態勢強化で対応するとしてきた。二〇一四年度以降の中期防衛力計画は、鹿児島から与那国島に至る島嶼(とうしょ)に七個の自衛隊基地を新設、監視部隊の配置や地対艦ミサイル、地対空ミサイルを配備するとともに、対潜水艦能力の高い海上戦力、航空阻止可能な航空戦力の整備をすると決めた。つまり、米国の「エアシーバトル概念」を南西諸島のチェーン化で補完するわけで、日米の戦略が吻合しつつあることを意味する。
 これに日本の軍事力の発動という日米帝が待ち望んだ歴史的転機となったのが、昨年九月十九日の安保関連法、いわゆる戦争法と呼ばれる集団的自衛権行使を可能とする法成立であった。この日米の軍事力と、深海や航空・宇宙を技術で制するDII(防衛情報通信基盤)、あるいは第三次相殺戦略をもって、中国やロシアに対抗していくことに、日米帝は権益保持の延命策を見出しているのである。それは同時に、これを担う軍産複合体に巨大な利益をもたらす。日本における、戦争法に反対する憲法学者たちの違憲の声、国民の六割の反対、「説明できていない」との八割の批判、そして沖縄の島ぐるみのたたかい。帝国主義者たちは、これらを押しつぶして戦争政策を実現しなければ生き延びることはできないのである。
 米軍再編は、このような戦争政策と直結し、ますます危険なものとして進められようとしている。
 関東の米軍基地では、日米軍の司令部の統合(キャンプ座間=米陸軍第一軍団前方司令部、陸上自衛隊中央即応集団司令部、横田基地=米第五空軍司令部、航空自衛隊航空総隊司令部)が進められている。青森県の車力に続き京都府の経ヶ岬にはXバンドレーダーを設置。神奈川県の横須賀には、従来よりも大型の最新原子力空母がすでに配置された。自衛隊の石垣、宮古、与那国への配備は、先述した通り。沖縄では基地の返還が進まないまま、自衛隊による共同使用(キャンプハンセン=陸上自衛隊、嘉手納基地=航空自衛隊)が進められている。米軍訓練は日本各地の自衛隊基地・演習場に移転。各地の基地には、新型機が投入され、アメリカ海兵隊は中型輸送ヘリを事故が多発する欠陥機、MV22オスプレイに転換した。すでに沖縄を中心に日本中を我が物顔で飛び回っている。横田基地には空軍型のCV22が配備される予定だ。こちらは特殊部隊用の機種でMVよりさらに事故率が高い。「負担軽減」など冗談にもならない。
 マスコミに取り上げられることも少ないが、こうした米軍再編、基地強化の要となるのが岩国基地である。岩国基地はアメリカ海兵隊の航空基地で、海上自衛隊が共同利用している。滑走路の沖合移設が、基地負担軽減を掲げた「住民の悲願」とされて進められたが、二〇〇六年の在日米軍再編計画で、基地は軽減≠ヌころか拡大≠ヨと転じた。住民による強い反対にもかかわらず、厚木からの空母艦載機部隊五十九機の移転が決定した。新しく拡張された基地は、滑走路を増設するだけでなく、空母や揚陸艦など大型艦艇が接岸できる大型岸壁(水深十三メートル、長さ三百六十メートル、二〇〇九年完成)を持つ軍港も兼ねた巨大基地となった。ここには、沖縄の普天間基地から、すでに空中給油機KC130が移転してきている。さらに最新鋭のステルス戦闘機F35の配備も計画されている。これらの再編が完結すると、岩国基地は、常時百三十機前後の戦闘機を有する嘉手納基地を超える極東最大のアメリカ軍航空基地になる。こうして岩国基地は、規模においても運用においても、朝鮮半島と中国大陸をにらむ戦闘機部隊の直接出撃基地として大幅に強化されようとしている。
 これら米軍再編に対するたたかいは、島ぐるみの沖縄でのたたかいを先頭に、岩国をはじめ各地の反基地住民によって粘り強くたたかわれている。帝国主義の全体重をかけた戦争政策と、民衆の未来はあいいれない。にもかかわらず、戦争政策に抗うことができない戦争動員の仕組みが着々と作られ、また民衆内部から排外主義と戦争を求める声が力を持ちつつある。

 ●3章 戦争動員と労働者階級

 ▼3―1節 基本的人権と生存権なき社会


 貧困と格差の広がりは、荒廃と疲弊を日本社会の中に蓄積し、また沼地と化した日本資本主義(帝国主義)の危機を、侵略戦争によって暴力的に突破することに求める土壌を民衆内部に形作っている。日本社会の相対的下層においては、すでに基本的人権や生存権は奪われており、「平和と民主主義」など絵空ごと≠ニなっている。
 デフレという経済的停滞状況を引き起こしているのは、資本家たちの強欲である。典型例がトヨタである。この十数年間、毎年千億から六千億円の配当を行なってきたトヨタは、この十五年間にベースップしたのは半分に満たない七年である。円安による高業績と言われた昨年でも、賃金の1・1%に満たない四千円のベースアップである。もちろん非正規雇用の使い捨て、下請け・孫請け企業の買い叩きと使い捨てで、はかりしれない犠牲を生み出しながらである。しかもトヨタのために作らせた「外国子会社からの受取配当の益金不算入」制度や「研究開発費の税額控除」などによって、史上空前という利益を上げながら、一五年まで五年間も法人税を払わずにきているという驚きの状況である。日本中の企業が右にならえし、賃金・労働条件は下落の一途をたどり、企業の内部留保は三百兆円を突破したのである。
 資本家たちの強欲は、他方で、膨大な失業・半失業、そして、使い捨ての非正規雇用労働者の群れを生み出している。非正規雇用は四割超となり、細切れ雇用・低賃金・失業と隣合わせに生きざるをえない。正社員労働者は、半数近くに減らされ、「社畜」という言葉すら生まれるほどに長時間・過密労働を強いられている。憲法二五条・生存権は、貧困と「飢えの自由」の前に身をすくめていると言ってもいいだろう。
 貧困は、少子化や家庭崩壊を生み出し(一人親世帯の貧困率50%)、子どもに対する虐待やネグレクトなどが生み出されている。健康保険制度など日本が「誇る」皆保険制度は、下層部分ではすでに崩れ去っている。低所得者層では、国民健康保険料すら、五人に一人が払えず滞納し、その差し押さえ総額は七百億円。滞納者は、保険証を取り上げられ、病気になっても医者にかかれない。
 三割の世帯が貯金なしで、その日暮らし。最後のセーフティネット・生活保護に対する審査や管理は厳しくなり、窓口で追い返され餓死事件も起きている。介護保険制度も、すでに要支援外しが決まり、さらに続いて要介護二以下外しへと切り捨てが進み、「保険料あってサービスはなし」という国家的詐欺状態が引き起こされようとしている。
 こんな社会に向かう若年層には、不安定雇用や過密労働、奨学金ローン地獄などが立ちはだかり、食べていくための選択肢として軍隊(自衛隊)が用意されている。
 この状態にムチ打つように、東日本大震災や熊本大震災が起きた。「原発とめて!」という声を無視し、地震列島の上に原発再稼働が進んでいる。
 もはや基本的人権や生存権は、安倍政権と巨大資本家たち(多国籍独占資本)によって息の根を止められようとしている。社会的共生や連帯の土台はバラバラに壊され、弱肉強食≠竍自己責任≠フ檻に閉じ込められている民衆に対して、安倍政権は「一億総活躍」等という毒の果実≠差し出し、それを拒むことすら許されないという状況が生み出されている。腐り果てた自民党の安定多数、改憲勢力の台頭とともに、基本的人権も生存権もない社会が、すでに日本社会を蝕んでいる。

 ▼3章―2節 戦時体制への労働の組み込みが進む

 戦争国家をめざす安倍政権にとって、打ち上げバルーンでしかないアベノミクスや一億総活躍が破たんしようが、大した問題ではない。すでに震災に便乗して小出しにしてきたが、議会多数派となって自民党改憲草案の緊急事態条項(改憲草案九九条)を通せば、恐いものはない。ナチスの「全権委任法」と同じように憲法さえ覆せるのである。それは、内閣総理大臣が緊急事態を宣言したら、内閣は法律と同一の効力のある政令を制定できるというものである。それに基づき、財政上必要な支出をおこない、地方自治体の長に対して必要な命令をくだせる。何人も、これに従わねばならない。内閣は国会抜きに、それまでの法令を無視して政令を制定できる。行政は議会から自由に、内閣の思うままに動く。実質的な憲法停止宣言である。
 緊急事態条項が具体化すれば、昨年の戦争法さえ無視して軍事行動ができる。内閣の命令で、行政が交通・運搬・医療・製造などを戦争体制と結合させられる。他方で、戦争体制の準備として、防衛省が民間船会社の乗組員を予備自衛官補として採用する制度を導入しようとしている。戦時は海上自衛隊だけでは回らない。民間フェリーを乗組員ごと組み込む。あらゆる分野で同じことが進むだろう。
 戦争動員の基盤は、ずいぶん以前から整備されてきた。「重要影響事態安全確保法(改悪周辺事態法)」では、第九条で、「関係行政機関の長は、法令及び基本計画に従い、地方公共団体の長に対し、その有する権限の行使について必要な協力を求めることができる(関係行政機関による対応措置の実施)」。「2 前項に定めるもののほか、関係行政機関の長は、法令及び基本計画に従い、国以外の者に対し、必要な協力を依頼することができる(国以外の者による協力等)」と、行政ならびに民間企業・団体への総動員を規定している。これに逆らえば「犯罪者」となり「処罰」されるのである。
 労働者・民衆は、この戦争動員に抗えるのか? 社会的監視と支配、また職場の支配関係はますます厳しくなっている。戦争動員が発動されれば、有無を言わずその担い手とされる時代が訪れているのである。

 ▼3章―3節 反動・排外主義を煽る勢力の暗躍

 このような戦争国家への変貌のもとで、いわゆる中間層は失業・細切れ雇用、規制緩和―新自由主義、自己責任・競争激化のなかにたたき込まれ、貧困層へとズルズルと分解した。それに伴い、戦後社会が作り出していた文化、社会関係などが崩壊し、弱体化した旧い社会的紐帯から孤立化した個人が、先行き不透明な不安の中に放り出されることになった。これを土壌に、種々の排外主義グループが登場し、社会的つながりを奪われた不満・不安層への扇動や浸透が進んできた。「草の根保守」が現実政治に登場してきた。在特会のようなインターネットを通した排外主義が街頭に進出している。橋下徹を中心にした大阪維新運動などが功を奏している。
 とりわけ近年、影響力を増し、国内外で日本最大の右派運動団体として注目されているのが、一九九七年に結成された日本会議である。神社本庁、仏教系の佛所護念会など宗教団体、文化人、政財界人などが加わる大組織であり、「安倍政権の黒幕」などと言われている。この中心は、旧「生長の家」関係者であり、反動的歴史観とともに、戦争に向かおうとする時代に対応する国家・社会像をもって、精力的な活動を行なっている。
 その歴史観は戦後憲法の成立を認めず(従って改憲するまでもない)、「明治憲法の復元」をめざすものである。敗戦も存在しない、太平洋戦争に敗れたのは「偽りの日本」であり「神州日本」は敗れていない、という生長の家の創始者である谷口の持論を引き継いでいる。その主張は復古主義にとどまらない。第二次安倍政権が、武器輸出を解禁したのは記憶に新しいが、日本会議は、日本の産業力を高める策として軍需産業を提唱し、また、今の国際情勢を、戦前と同様の資源や市場をめぐる国家間の争いの時代とし、自衛隊の軍隊としての強化、専守防衛体制から敵基地先制攻撃への転換を主張している。改憲論議が本格化してきた二〇一四年以降は、「九条」「緊急事態条項」「家族保護条項」の三点を憲法改定の重要課題として掲げ、「憲法おしゃべりカフェ」などの草の根運動を精力的に展開している。
 社会的荒廃と危機を深める日本資本主義(帝国主義)の危機を、どこへ引っ張っていくのか、という民衆内部の流動を制そうと、反動・排外主義勢力が跳梁跋扈しているのである。

 ▼3章―4節 米軍再編現場で闘う労働運動潮流の強化を!

 社会システムとして破たんを深め、世界を戦争と貧困に引きずり込む以外、延命の道を知らない資本主義・帝国主義に対し、全世界で、労働運動をはじめ、この世界を変えようとする労働者・民衆のたたかいは、絶えることなく新たな挑戦と試行錯誤を続けている。とりわけ労働運動は、労働組合やその全国組織など階級としての団結を歴史的にたたかい取り、労働者・民衆の現実的利益を防衛するとともに、破たんした資本主義に代わって、労働者・民衆が真の主体となる社会を切り拓く勢力へと成長していく可能性を持っている。生き延びるために凶暴性を増した支配者階級達は、労働運動からこの階級的性格を剥ぎ取り、飼いならされた御用組合、経済的利益だけの組合主義への封じ込めを進めようとしてきた。これに屈する部分とたたかう部分の間の熾烈な攻防が、歴史を彩ってきた。
 日本においても、敗戦を転機として、戦争責任追及と飢餓状態脱却から始まった戦後労働運動の歴史を、再びの帝国主義の侵略戦争の前に潰えさせてしまうのか否かの歴史的分岐が、この数十年進んできた。これら全体の動きと評価に触れる紙面はないので、機会があればLANN(労働運動活動家全国ネットワーク)の冊子などを見て欲しい。ここでは、迫り来る戦争動員とたたかう労働者反戦闘争について述べる。
 日本の労働(組合)運動にとって、反基地闘争を含む広義の労働者反戦闘争は、きわめて重要な意味を持つものである。それは、戦争責任に対する日本労働者階級の立場を示すものであり、戦後の「経済成長」の土台であった日帝ブルジョアジーのアジア支配に対する態度を国際連帯と結合して示すものであり、何よりも個々の経済的利益にとどまらない社会方向・社会連帯を実現するものとして営々とたたかわれてきた。
 日本は、アジア唯一の帝国主義国として、朝鮮半島・中国・アジア諸国への侵略戦争をおこない、戦前、日本の労働運動はこれとたたかいきれずに、組織的抵抗を崩壊させて敗戦を迎えている。強制連行された中国人炭鉱労働者の暴動決起から戦後労働運動は始まった。飢餓状態の中でも、戦争責任追及をかかげ爆発的に再生された。朝鮮戦争への動員阻止、六〇年安保闘争、三井三池闘争などを支えた大きな社会的勢力として成長した。後には、アジア侵略反革命戦争にのめり込む米帝への批判とともに、米帝の兵站拠点として利益を貪る日帝のアジア侵略加担阻止、国際連帯を掲げて、労働者反戦闘争を継続させた。
 しかし状況は変化していく。敗戦からの社会復興、米帝のアジア侵略の兵站拠点化などによって、日本における生産資本が拡大し、右肩上がりの経済成長が続く中、戦争体験の風化、アジアで継続している侵略戦争との切断、労働者大衆意識の変容、後には低成長期の到来による雇用・労働条件の悪化と生活保守意識の台頭などが、労働者反戦闘争の土台を切り崩していった。一九九〇年代以降は、労働運動の従来の経済闘争の土台が、終身雇用・年功序列システムの解体によって崩され、非正規雇用化しアトム化していく労働者大衆の貧窮化に有効に対応できず、労働組合そのものが困難に直面していく。
 労働者反戦闘争を苦々しく思い、真っ向から対立してきた右派労働運動指導部は、「労働者の利益を守るのは経済成長」を掲げ、連合結成時には、「体制間対立の時代は終わった」と、労働運動から反戦闘争を消し去ろうとした。旧総評系の自治労・日教組・私鉄総連等が中心となって、一九九九年に平和フォーラム(正式名称:フォーラム平和・人権・環境)を結成し、かつての総評の平和運動を継続させたが、その社会的力はかつてと比べ物にならない。
 このような中で、全国各地の反基地闘争は、困難なたたかいを強いられることになった。いや、沖縄を一緒くたにはできないだろう。戦後、米軍施政下に置かれ、アジア侵略の直接出撃基地として過酷な状況を強いられてきた沖縄では、島を挙げてのたたかいによって「復帰」を果たしたものの、差別軍事支配は変わらず(米軍支配から日米支配)、屈することなくたたかいが続けられてきた。一九七七年から平和行進が始まり、沖縄の反米軍基地闘争と「本土」労働運動の結びつきが生み出されてくる。二〇〇五年の日米政府の米軍再編計画は、沖縄の基地負担軽減≠ニいう名目であった一九九六年SACO合意が、まったくインチキであり、日米共同戦争体制へと在日米軍・自衛隊を再編成するものであることを明らかにした。
 これ以降、労働者反戦闘争の新しい波が開始されていった。われわれは、これを戦後第三波の労働者反戦闘争と名付け(『戦旗』第一三六〇号 二〇一〇年十一月五日)、この成長を全力で推し進める必要を明らかにしてきた。それは、かつての総評や反戦青年委員会の政治闘争からの質的転換をめざすものである。具体的には、@労働組合の基盤となるアトム化した流動労働力をも組織できる社会的力を持つ労働組合・ユニオン運動の再生を内包し、A日米軍事再編を通した戦争国家化・戦争動員との全体的たたかいの推進力となることをめざし、B理念ではない国際連帯・アジア労働者民衆との結合を志向する等である。労働組合運動の困難局面を引き受けつつ、米軍再編現場や合同軍事演習とたたかう労働(組合)運動の交流や連携が各地で登場してきたのである。その形は様々であり、ゆっくりと、しかし力強く、たたかいが生まれ成長している。沖縄への連帯運動の中から、日韓連帯運動の中から、地域の反基地運動の中から、意見広告や反戦連絡会など様々な形を取りながら……。
 十二月十日―十一日に山口県岩国市で行なわれる岩国行動の責任団体である岩国・労働者反戦交流集会実行委も、その一つである。二〇〇六年米軍再編による、岩国基地への艦載機移転をめぐって、岩国では住民投票が行なわれ、「基地強化NO!」の民意をはっきりと示した。同年秋、この岩国住民の声に連帯し、海外からは韓国・フィリピン・台湾・アメリカなど、また国内からは沖縄・神奈川の反戦反基地活動家、また反戦反基地・沖縄連帯のたたかいを担ってきた先進的部分が、アジア共同行動日本連絡会議主催の「アジアから米軍総撤収を!」を掲げる岩国連帯・国際集会に結集した。ここに参加した労働者・労働組合が、沖縄連帯に続く米軍再編とのたたかいを労働者反戦闘争として組織することを呼びかけ、翌二〇〇七年から岩国・労働者反戦交流集会実行委運動が開始された。これは一日現地共闘ではあるが、毎年、呼びかけ・賛同人が立ち、全国の労働者・労働組合に呼びかけ、政府・防衛省とタッグを組んだ保守王国・山口県による封じ込めを打ち破り、岩国住民のたたかいを全国に伝え、支援を組織してきた。それは、今年で十年目となる。
 来年二〇一七年は、岩国での米軍再編計画が完成するとされている。いま愛宕山二百七十戸、基地内七百九十戸の米軍住宅建設が急ピッチで進められ、岩国は米軍一万人の街になろうとしている。日米戦争体制の中で、岩国をめぐる攻防は、依然として沖縄と並ぶ米軍再編とのたたかいの要としての位置を占め続けている。
 全国の先進的労働者・労働組合は、戦争法廃案を始めとする戦争国家化とのたたかいを担い、沖縄で、神奈川で、横田で、また新設された京都Xバンドレーダー基地をめぐっても、たたかいを作り出してきた。それらを引っさげて、二〇一七年攻防を担う労働運動の隊列を、今年の岩国行動において登場させよう。そして、この行動を通し、労働者反戦闘争・反基地住民闘争の全国的連携のより強固な構築を推し進めていこう。日米帝国主義の戦争動員攻撃とたたかいぬく階級的陣形を作り出していこう。




 

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