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   2017年米軍岩国基地再編完了攻撃に抗し、
    岩国市民とともに「岩国で勝つ」闘いを!

     
アジア民衆とともに基地撤去―日米安保粉砕




 安倍自公政権は、安保法制と改定PKO法を根拠に自衛隊を南スーダンへ派兵した。武力行使を伴う「駆け付け警護」「宿営地の共同防衛」の任につかせ、自衛隊を治安と敵勢力除去を目的とした侵略軍へ変貌させようとしている。
 米帝は、北東アジア地域において対中国軍事包囲と朝鮮民主主義人民共和国の体制転覆のため軍事圧力を一段と強めている。三月一日から米韓合同軍事演習が空前の規模で強行されている。同時に、日米韓三カ国の共同軍事演習・軍事統合も画策され強行されている。この動きに連動する二〇年米軍再編攻撃との攻防は激しさを増している。
 一七年岩国再編完了攻撃に抗して岩国市民、愛宕山地域住民は、一月初頭からF35Bステルス戦闘機配備反対、艦載機部隊移駐反対の抗議闘争を強めている。岩国市民全体の総決起へ向けた取り組みが開始されているのだ。現地攻防に応え、全国各地に岩国連帯行動を組織しよう。この攻防から、「岩国で勝つ」反基地・反安保闘争の全国的な高揚を創り出そう。
 同時に、辺野古・高江・伊江島に見られる沖縄への差別・軍事支配の暴力的な強化、宮古・石垣・与那国への自衛隊強行配備に猛然と抗議する沖縄民衆の抗議闘争に応え現地行動を組織するとともに、「本土」での沖縄連帯行動を大きくひろげよう。

 ●1章 岩国基地の強化と沖縄の基地再編攻撃を打ち砕こう

 二〇一一年六月二十一日、日米安保協議委員会合意「四文書」は、日米安保体制の侵略性とそのグローバルな軍事戦略という点で、一五年新ガイドライン締結と安保関連法を条件として目指す米軍再編の具体的骨格をほぼ示している。それは、同時に米軍QDR(国防計画見直し)と防衛省「防衛大綱」の内容をストレートに反映するものである。その軍事戦略は、日米軍一体化を推進軸とし、これまでの安保体制から飛躍した日米同盟路線の推進基盤を強化するという意味においても段階を画するものだ。さらに、この年、日米は東北大地震と福島原発事故において被災地への支援と称した`友達作戦aの影で、「調整メカニズム(戦争指導共同作戦司令部)」を実際に起動させていた。九七年ガイドラインで設置した「包括メカニズム」「調整メカニズム」を現実に作動させ、一五年新ガイドラインの中軸とも言える「調整メカニズム」の再設置と平時、戦時を問わず切れ目のない行動の梃子にしたということである。
 第二に、米軍再編の最大の要である沖縄と岩国の両海兵隊基地に対する再編案を再画定した。辺野古新基地の形状を二本のV字滑走路に決定。岩国では、一〇年滑走路基地沖合移設工事完了と運用を強行した。一二年度の岩国基地の軍民共用再開を飴に、実質的に岩国福田市政・山口県を再編推進側に転換させ、厚木空母艦載機部隊等の移設後の施設整備―インフラ整備に膨大な「思いやり」予算が投入された。これは、「空母艦載機の離着陸訓練の恒久的な施設」として使用する対象に鹿児島県・馬毛島を指定することとセットであった。
 これは、沖縄、岩国をはじめとする日米軍再編・基地強化をめぐる攻防をより激化させ、「ロードマップ」記載の一四年再編完了日程自体は頓挫した。安倍政権は、沖縄―「本土」各地のより激しい反対闘争に直面し、継続する反基地・反安保闘争に対する懐柔と弾圧を繰り返してきた。しかし、日米同盟路線とたたかう現場の攻防は存在し継続しているのである。岩国市民もまた、たたかいによって岩国再編完了日程の三年延長へと追いやり、その破産へと歩をすすめたのである。
 第三に、日米安全保障協議委員会は、「思いやり予算」を次の五年継続することを明け透けに記載し、確認し合う。膨大な「思いやり予算」は、米軍侵略基地建設に費やされるということに留まらない。それは、それを貪る清水建設、大成建設、五洋など大手ゼネコンの下に地元の土建業・経済界・自治体・議会との経済的・政治的・軍事的癒着構造をもはびこらせる。岩国においては、再開民間空港ターミナル建設、駐車場建設、そして米軍住宅・施設建設の利益に群がる地元土建業者の後押しをも受け、防衛省中四国防衛局、山口県、岩国市による「民間空港再開と引き換えに愛宕山開発跡地売却容認」に関する密約議事録文書さえ発覚している。これが、一一年日米安全保障協議委員会「四文書」合意の中心であり、反基地攻防のあらたな段階をもつくり出したのである。

 ●2章 岩国の闘いを全国へ 17年岩国再編攻撃の全貌

 ▼2章―1節 侵略基地の最前線へ変貌


 〇六年「再編実施のための日米ロードマップ」日米合意は、「厚木負担軽減」を移設目的として米海軍厚木艦載機部隊(第五空母航空団の艦載機部隊)を海兵隊岩国基地に一四年までに移駐と明記している。その移駐目的は、「米空母及び艦載機の長期にわたる前方展開の能力を確保するため」としている(〇五年米軍再編中間報告「日米同盟 未来のための変革と再編」)。
 米海兵隊岩国航空基地(部隊)は、その指揮系統からみると、第一海兵航空団(沖縄・キャンプ瑞慶覧)の指揮の下、第十二海兵航空群を形成している。米軍再編で米海軍厚木艦載機部隊と統合されると、実際は、横須賀を母港とする米海軍原子力空母(第七艦隊)の艦載機部隊と統合運用されることになる。米軍によるイラク侵略戦争、フランスによるIS空爆・シリア侵略戦争にみられるように、海軍原子力空母群を中軸に戦争遂行をおこなう現代の侵略戦争を考える時、「ならずもの部隊」と言われる海兵隊航空機部隊と海軍航空機部隊を統合運用する米軍岩国基地が、侵略戦争とより直結する戦略的基地へと変貌していることが理解できる。
 米海軍は、西太平洋に空母二隻体制で作戦行動を展開している。米軍のアジア回帰戦略によって米軍空母全体の六割をこの地域・周辺へ投入するとも言われている。イラク侵略戦争時に、米中央軍の下に、太平洋軍が編入されてきたように、この地域での侵略戦争時には、太平洋軍の下に、各軍区の米軍が編入されるであろう。すでに、対中国、対朝鮮民主主義人民共和国への軍事的脅威と対立をつくりだしている。また、実際の紛争・衝突に対応しようとしている。米国防総省・国務省の「尖閣列島は日米安保の適用の範囲」発言が繰り返されている。日本と中国の間の「領土問題」にリンクさせ、この地域での米軍―自衛隊の軍事演習・行動を正当化するものだ。それは、一五年米海軍の「航行の自由作戦」として強行されたのである。

 ▼2章―2節 軍港を持つ基地として運用

 岩国基地の滑走路沖合移設事業は、二千四百四十メートル滑走路一本の新設で終わっていない。水深十三メートル、長さ三百六十メートルの岸壁も建設された。山口県管理の岩国港への米艦船入港の際に、国内法(とくに、港湾の平和利用を謳う港湾法・港湾条例・港湾規則)の制限を受けていたが、軍港を持つことで無制限に使用でき、かつ、大型船舶を接岸できる港湾を建設したのだ。米軍は輸送拠点としての基地機能を確保した。これまでは、タイ沖、韓国沖、周防灘で演習・訓練に使用した軍需物資は、米軍が借り上げた民間船舶で、山口県管理の岩国港に積み上げ、岩国を経由し基地に運ばれたりしていた。この岸壁の運用がはじまってからオスプレイの陸揚げなど何ら制限なく接岸・搬入がおこなわれるようになったのである。場合によっては、佐世保を母港化する強襲揚陸艦なども入港・接岸が可能である。基地沖合いでの停泊も可能だ。
 この間、二度にわたるオスプレイの搬入、KC130岩国移駐に関連する物資搬入に始まり、大型艦船が基地岸壁に直接接岸したり、沖合に一か月以上停泊したりする光景を目にする。高速輸送艦ウエストバックエキスプレス、大型艦船バージ、タグ統合船ライトニングとサンダーなどが入港・接岸したり、基地沖合での停泊を頻繁におこなうようになっている。弾薬、戦車、装備、車両、コンテナの輸送のための搬入・搬出、船舶の接岸・待機場所としてフル活動できる使い勝手のよい基地としての機能、軍用機の戦時作戦行動訓練から戦争出撃基地として何でもありの基地への変貌である。沖縄の浦添軍港建設、辺野古新基地建設と軍港建設の動きに見られるように、強襲揚陸艦接岸可能な軍港施設建設は、米軍戦力の向上のため画策されている。
 それは、侵略戦争開始とともに、海軍空母打撃群(横須賀第七艦隊原子力空母、厚木第五空母艦載機部隊)と海兵遠征軍(沖縄第三海兵遠征軍第三十一海兵遠征部隊、普天間第三十六海兵航空軍、岩国第十二海兵航空軍)に加え、遠征打撃群(佐世保第七艦隊十一水陸両用戦即応隊)が編成され米軍岩国基地が軍港としても活用されるということだ。アジア、中東、北アフリカへの「殺戮と破壊」の侵略戦争とより連動して効率的遂行を可能にするものであり、沖縄、佐世保、神奈川、岩国の在日米軍の連動性を飛躍させるのである。
 実際に、〇三年イラク開戦において、第一撃の巡航ミサイル発射は空母打撃群に編入された横須賀配備のイージス巡洋艦によっておこなわれ、空母キティホーク艦載機は、クラスター爆弾を含むミサイル投下によってバグダッド市民を虐殺したのだ。続き、遠征打撃群に編入された佐世保を母港としていた強襲揚陸艦エセックス、ジュノーは、沖縄の第三十一海兵遠征部隊をイラクへ輸送し、ファルージャでの大虐殺などイラク戦争の中心部隊として展開したのである。岩国第十二海兵航空軍群所属のCH53Dヘリコプター三機も編入されていた。
 さらに、航空宇宙遠征軍に編成された三沢第三十五戦闘航空団のF16戦闘機部隊、嘉手納第十六航空団のF15戦闘機部隊などが出撃した。大量破壊兵器とアルカイダとの結合をデッチあげた大義のない戦争によってイラク民衆を虐殺しつづけたのである。
 米軍は、アジア回帰戦略の下、この地域へと兵力をスイングさせ、〇五年「中間報告」から十二年に及ぶ準備の下、米軍岩国基地の「前方展開能力の恒常的確保」の整備を強行してきたと言える。いま、この地域での戦争対応に向けて、日米軍は平時、戦時を問わず切れ目なく在沖、在「本土」の基地全体に侵略基地としての機能をもたせようとしているのだ。

 ▼2章―3節 基地機能強化と演習の激化

 日米両政府は、米軍岩国再編完了・最終プランを強行している。一月最新鋭のステルス機能と電子戦をも遂行する垂直離発着可能なF35B戦闘機の岩国基地配備第一陣の十機の移駐を強行し、さらに八月に六機の移駐も目論んでいる。現岩国基地所属のFA18ホーネット戦闘機、AV8Bハリアー戦闘機の後継機として配備される。さらに、電子戦機プラウラーも更新される。
 垂直離発着帯(パッド)も新滑走路に設置された。もし、実際に計画通りに行われれば現状を倍加する爆音被害に岩国市民は苦しめられることになる。爆音被害のみならず、墜落の危険さえ増すことになる。二月二日新型E―2D早期警戒機五機が先行移駐を強行してきた。
 その直前、誘導路には、米軍機、自衛隊機がひしめき、次から次へと離発着訓練を繰り返す。ハリアー戦闘機は、静止状態をギリギリまで保ちつつ、パッドに降下、上昇し爆音をまき散らす。かつての、夜間離発着訓練(NLP)を想起させるとともに、今後の深刻な事態を予感させるものであった。
 すでに、「沖縄の負担軽減のため」として、日米特別行動員会最終報告(SACO合意)による普天間基地の空中給油機部隊十五機は岩国配備を完了し、新滑走路で離発着訓練を繰り返している。また、基地フェンス内では、兵舎・格納庫・整備場・駐機場・弾薬庫・燃料保管タンクの建設は完了し、その運用は活発におこなわれている。巨大な病院、贅沢な学校などのインフラ整備も急ピッチで進んでいる。昨年十二月十九日には、日米合同委員会によって、愛宕山開発跡地に建設中の米軍住宅二百六十二戸、運動場などの施設・区域も米軍提供施設として米軍に丸ごと引き渡された。現在、一日九百台に及ぶダンプの土砂搬入・搬出により周辺道路を汚し、生活環境に影響を与えつつ、基地の拡大を強行している。
 一月二十日基地内では、「F35戦闘機の地上走行と展示」とともに式典が開催された。米海兵隊トップのローレンスニコルソン中将は、F35配備について「日米同盟を支援するために大きな意味を持つ。日本とすべての同盟国に速やかな対応が可能となる」として、東アジア地域の日米同盟路線―日米軍一体化の中軸として岩国基地の前方展開能力の飛躍的強化について、その侵略的な意図を述べた。防衛大臣稲田は、「アメリカが最も現代的かつ高度な能力を我が国に配備することは日米同盟の抑止力を強化し……」と呼応した。この式典のどさくさに紛れて、岸外務省副大臣と宮沢防衛政務官は、福田岩国市長と村岡山口県知事に米海軍厚木艦載機部隊の七月からの移駐開始の通告に訪れていた。
 「部隊の機数は戦闘機など六十一機」「軍人・家族など三千八百人があらたに増える」「二月から新型の早期警戒機を(先行)配備し、三か月程度訓練飛行を行う」「早ければ七月移駐」と通告したのである。まさにこの日、安倍首相は国会での施政方針演説において「日米同盟は不変の原則である」と述べた。
 ところで、空中給油機は、一機四カ所の給油パイプがあり四機の軍用機に給油できるとされている。この間、辺野古沖でのオスプレイの墜落大破、高知沖ホーネット戦闘機の墜落など、空中給油時に重大事故を引き起こしている。一機でも二機でも空中給油時にクラスAの重大事故を引き起こす危険極まりない空中給油連携訓練である。いま、嘉手納、普天間を運用拠点に空中給油連携訓練を激化させている。
 悪辣な軍産癒着のロッキード・マーチン社製造のF35Bも、昨年十月アメリカにおいてクラスAの重大火災事故を引き起こしている。その事故原因調査もあいまいなままに、防衛大臣稲田は、福田岩国市長と村岡山口県知事に岩国配備を容認させた。そもそも、アメリカにおいてもその運用実績自体がこれからという新型機が米本土以外で初めて岩国基地に十六機配備され、岩国市、中国山地、四国山地の住民の頭上で低空飛行訓練をおこなうのだ。さらに日本海、四国土佐沖の拡大された訓練空域でも実験的に運用がなされる。その後、沖縄・伊江島の飛行場を使用し、訓練飛行を重ねるとしている。オスプレイ配備と実験飛行も然りである。二月先行配備され、三カ月間程度訓練飛行をおこなうという早期警戒機新型E―2D五機も岩国が海外で初めてとなる実験飛行を繰り返している。次に、そのすべての新型機は沖縄において訓練を激化させるという事態が常態化している。「基地共同使用」「訓練移転」として日本各地でも繰り返されている。それは、三月上旬に始まった米韓合同軍事演習に訓練・演習・戦争恫喝として活用される。三月実施の日米合同軍事演習にも、群馬、新潟の自衛隊演習場でのオスプレイの軍事演習参加とともに活用されるであろう。

 ▼2章―4節 東アジア最大の航空機部隊の基地

 加えて、一三年には、再編のためのロードマップ(〇六年五月)に記載されていた「海上自衛隊岩国航空基地所属の航空機の米海軍厚木基地への移駐」はなくなり、岩国基地の航空機数は、自衛隊航空機と合わせ百六十機を超える。基地滑走路の一キロ沖合への移設事業による騒音・墜落の危険の改善による基地被害の軽減という`市民の悲願aは完全に裏切られた。厚木爆音訴訟において、東京高裁判決では将来分の爆音被害を認め(その後、最高裁は、将来分被害補償を否認する決定を下した)、その時期を一六年暮れまでとした。一七年移駐を後押しする国家意志を体現する判断と言わざるを得ない。
 難航していた訓練空域、岩国レーダー進入管制空域(岩国ラプコン)決定も続く。
 米軍は、陸上部分だけでなく、提供水域、訓練空域を自由に使用している。提供水域は、基地東側水域約二十・二平方キロメートルが地位協定に伴う地域で、船舶の航行禁止区域、漁船操業禁止区域に指定されている。空域は独占的に確保してきたが、厚木艦載機部隊が移駐すれば倍加する訓練空域・レーダー進入管制空域が必要となる。米軍、海自、民間空港で空域の取り合いになっていた。加えて、国・防衛省は、一月岩国市長選の最中に現福田市長を後押しする飴として東京便・沖縄便それぞれの往復便就航のおねだりを認めってしまったのである(その後、沖縄便は、乗客率30%そこそこへと激減し、全日空は廃止を決定した。そして再び復活へ)。
 難航を重ねた訓練空域も昨年九月に決定された。山口県北部の日本海と土佐沖の既設訓練空域を拡大した訓練空域を設定したのである。それは、一度は廃止したはずの、岩国市周東町祖生通信所の再開と刷新をも伴なった。訓練空域の広がりに併せた通信所の工事も急ピッチにすすめられ運用されようとしている。
 さらに、水面下の動きも表面化した。愛宕山を守る市民協議会(岡村寛代表)は、中国四国防衛局に継続した抗議要請を取り組んできた。環境アセス逃れの米軍住宅・施設建設が、いかに自然環境、市民の生活環境を破壊し続けているのかを糺してきた。同時に、再編全般に関しても問うている。
 @空母艦載機離のFCLP(陸上離発着訓練)の恒常的な施設の選定状況、A厚木基地訓練空域及び岩国レーダー進入管制空域の調整状況、B厚木基地に残される機能をめぐって――(a)「日本飛行機のFA18整備工場は、厚木基地に残しますか」(b)「空母艦載機部隊の移転に伴い、現在ある厚木の米軍住宅は返還されますか」等である。これに対して中国四国防衛局は、「米軍に問い合わせ中」「調整中」として回答を避けてきた。しかし、この抗議要請を無視し、秘密裡に交渉をすすめていたのである。
 〇六年「ロードマップ」では、厚木基地から岩国基地への空母艦載機の移駐とセットで、艦載機部隊のFCLPの恒久的施設設置を明記していた。一一年日米共同発表文書「より進化し、拡大する日米同盟に向けて」では、「あらたな自衛隊施設のため、馬毛島が検討対象になると地元に説明。大規模災害などの際の活動を支援するとともに米軍の空母艦載機離着陸の恒久的施設として使用」と鹿児島県・馬毛島を指定した。開発会社との五年間の交渉を経て、貸借ではなく用地買収のメドがたち最終段階にきていることも発覚した。併せて、米軍普天間飛行場の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの訓練にも活用する動きも強まっているのだ。まさに、馬毛島を買い取り「恒久的施設」に使用しようとしているのである。それは、岩国基地とセットであり、さらに離発着訓練から軍事演習の激化をもたらす新たな基地建設として進行しているのだ。

 ▼2章―5節 訓練激化で中四国に甚大な被害

 際限のない基地機能強化と低空飛行訓練の激化は、中国四国地域に深刻な基地被害を拡大した。
 沖縄海兵隊―普天間基地大型輸送機MV22オスプレイ配備強行と沖縄・伊江島での訓練倍化。それと結びついた米軍岩国基地―キャンプ富士(静岡県)を運用拠点とした日本全土での低空飛行訓練。米海軍佐世保基地の強襲揚陸艦エセックスからオスプレイの運用認証を取得しているボノム・リシャールへの交代配備。FCLP訓練基地として鹿児島県・馬毛島を指定と確保へ。NLP訓練(戦闘機の夜間離発着訓練)の岩国基地使用について旧防衛庁(防衛省)と山口県の密約。厚木所属輸送連絡機のC2の後継機は、その改良型でなくオスプレイに決定、など基地機能の飛躍的な強化が続いている。
 普天間所属のオスプレイは、岩国を中継し、キャンプ富士、横田、厚木、和歌山などで飛行訓練を繰り返している。また、厚木、横田を経由し、北海道へも飛来し、往復し岩国を中継する。ホーネット戦闘機、ハリアー戦闘機、電子戦機プラウラーなど岩国所属戦闘機は、中国山地(ブラウンルート)、四国山地(オレンジルート)の訓練ルート、エリア567(島根県西部)において、地域住民に深刻な爆音被害をもたらしている。地元岩国市と隣接する柳井市へも爆音被害を拡大させた。市民から苦情が殺到し、騒音測定器一基から三基体制で監視と抗議を強める事態に至っている。
 一五年四月二十八日、岩国基地海上自衛隊所属の救難飛行艇US―2(9905号機)が足摺岬沖で事故を起こし、海底に水没。海上自衛隊の墜落事故であるが、四国では、頻繁に米軍戦闘機、軍事ヘリが墜落事故、緊急着陸事故を引き起こしている。必ずしも、飛行ルートでない場所でも墜落事故や緊急着陸事故を起こす。伊方原発の直近やその周辺に飛行事故が目立つ。しかも、軍用機の所属基地名、軍用機の種類、飛行訓練ルートとその幅、訓練の目的、各箇所の飛行到達時間の事前連絡さえもない。突然飛行してきて事故を引き起こす。
 いま、各地の管轄防衛局へ抗議すること、自治体へ問い合わせすること、目撃情報を共有し、監視と抗議行動を行うネットワークが当該自治体との連携も含めて形成されてきている。
 岩国基地では、編隊飛行が横行している。二機、四機、六機の編隊飛行もある。滑走路北方向に離陸し、南方向から着陸する。岩国日米協議会合意では、編隊飛行をおこなわないことになっているが合意の形骸化は著しい。離陸の際、基地北側旭町の工場、住宅地帯を海側へ旋回し、猛烈な爆音をまき散らす。
 一五年一月十三日〜十五日、五月二十一日市街地上空で飛行訓練が終日くりかえされた。一月には、百二十六件の苦情、五月は一日で百二十件の苦情が寄せられた。
 田村順玄岩国市議は、この飛行訓練に参加していたFA18ホーネット戦闘攻撃機の機体はターゲテイング・ポッドと呼ばれるカメラ装置を装着して訓練していた事実を突き止めた。同様の飛行訓練が〇七年五月、戦地イラクへ向かうF16戦闘機が三沢基地や三沢市街地上空で実施されていた。
 星条旗新聞〇七年五月十日付は、「三沢の部隊がキャンプ・レッドクラウドの管制官ティームを組む」「イラク地上戦、高空から偵察と地上部隊の連携訓練」と報じている。
 これは、三沢基地の中に司令車がいて、上空のF16がターゲット・ポッドで映した映像をリアルタイムで受けて、地上部隊に指示。建物の影の狙撃兵を発見し、対処する連携訓練であった。上空旋回訓練はそのカメラ操作の習熟を目的にするものであった。それは、戦時作戦行動前の米軍訓練の必須科目であり、岩国海兵隊航空隊においても同様の訓練がなされていたのである。
 昨年十二月七日、 高知県の室戸岬南およそ九十キロの海上に米海兵隊岩国基地所属のFA―18戦闘攻撃機が墜落した。高知県沖では、九九年にも、FA18が上空で空中給油の訓練をしている際に別の機体に接触して墜落するという事故があった。また、九月には沖縄本島の東約百五十キロの海上で、ハリアー攻撃機が墜落している。原因の究明も対策も明らかにされず演習は激化するばかりである。そして、原因をパイロットの操作技術の練度に解消させ、より深刻な事故を引き起こしているのだ。
 横須賀基地に配備されている原子力空母の艦載機もすでに、岩国基地を中継し、訓練と軍事演習に参加している。
 一四年十一月八日〜十九日、日米共同訓練では、米軍岩国基地海兵隊と海上自衛隊岩国航空基地所属の航空機も参加した。海自から岩国市へ深夜・早朝の飛行訓練の可能性が連絡されている。〇一四年に市民から寄せられた苦情は二千四百件あまりと過去最多である。 軍事演習は戦争のための演習であり、基地周辺住民の被害を増大させるのである。

 ▼2章―6節 東アジアで展開される日米軍事同盟路線

 北東アジアにおける米軍再編では、日米同盟と軍事一体化、韓米同盟と軍事一体化から日米韓軍事一体化のための日米韓三軍の軍事統合が画策されてきた
 米帝は、この地域での軍事支配と資本の巻き返し戦略として、TPPによる経済圏をめぐる争闘と対中国軍事包囲を両面として展開してきた。また、九四年第二次朝鮮戦争危機を転機として、より強力な政治・軍事支配へと踏み出した。米帝は、軍事的脅威をでっち上げ、戦争行為を繰り返してきた。しかし、北東アジア地域での実際の戦争は国家間戦争なのである。その戦争策源は、「アメリカは長期戦に入った国家である」(「〇六年QDR」)と自らを位置付け、長期の戦争準備に入った米国・米軍そのものである。
 それに追随し、日米同盟路線の下、戦争をする国家へと国家改造を推進してきたのが安倍自公政権なのである。それは、日本の民衆にとっても、国家による侵略戦争を許すのか、阻止するのかを問う事態として受け止めるべきことでもある。戦争をできる社会・国家構造への改変を許すことこそが、解釈改憲や明文改憲を許す根拠でもあると言えるのである。
 その物理的根拠として、米帝は、在韓米軍基地を在日米軍基地と同様の最上位の侵略前線基地に押し上げ、中国軍事包囲政策と朝鮮民主義人民共和国への侵略戦争恫喝を繰り返してきた。同時に、岩国海兵隊基地を、嘉手納空軍基地とともにその要として位置付けた。そして、日米軍の「基地共同使用」「訓練移転」の実施によって、日本各地の基地機能強化が図られてきた。沖縄においては、嘉手納以北に基地機能が強化・再編されていく。
 韓国においては、平澤(ピョンテク)、群山(クンサン)、済州島(チェジュド)の基地を中心に新たな基地拡大が強行されてきた。いま、米韓両政府は、THAAD(陸上配備型高高度迎撃ミサイル)システム配備・配備地を決定し、対中国、対共和国の軍事包囲をより強化する態勢へ突き進んでいる。中国は、「国交准断絶」の措置を韓国政府・社会に突き付けるという事態をも創り出している。
 そして、史上最大の規模と言われた米韓合同軍事演習「チームスピリット」、それを引き継ぐ米韓合同軍事演習「キー・リゾルブ」「フォール・イーグル」は、朝鮮民主主義人民共和国に対して「演習しながら戦争し、戦争しながら演習する」と言うべき戦争挑発と脅威を長期にわたり与え続けている。

 ●3章 日米韓軍事統合阻止を掲げた日韓共同の反戦平和運動を!

 偶数年に大規模な米韓合同軍事演習は開催され、昨年の演習は三十万人を超える韓米の兵力によって強行された。だがしかし、米トランプ政権は、一七年三月一日に始まる米韓合同軍事演習では、規模においても、内容においても空前の演習を企てている。この演習は、「キー・リゾルブ」(米韓の指揮命令系統を確認する図上訓練)と「フォール・イーグル」(米韓両軍の上陸訓練などの野外実践訓練)を約二カ月間実施する。この演習は、米国の朝鮮民主主義人民共和国に対する核先制攻撃・体制崩壊計画である「作戦計画五〇一五」に基づいておこなわれている。
 また、この訓練は、夏の乙支(ウルチ)フリーダム・ガーディアン(UFG)韓米連合演習と同様に、共和国が核とミサイルを使用する兆候をみせれば先制攻撃をする4D作戦を含む作戦計画の演習とも重なり合い、共和国への戦争恫喝と挑発なのだ。この4Dは、抑制(Detect)―攪乱(Disrupt)―破壊(Destroy)―防衛(Defense)が一つに繋がった先制攻撃概念であり、それを実際に訓練するというのだ。さらに、「北朝鮮心理攪乱作戦」(作戦計画5030)と呼ばれる攪乱訓練には、ステルス戦闘機F―22や今回配備された岩国基地所属新型F―35Bステルス戦闘機も早速、参加が予定さているのだ。海外初の実践訓練である。共和国平譲上空を飛行する可能性さえいわれている。そして、今回、ロナルドレーガン(第七艦隊)、カールビンソン(第三艦隊)の原子力空母二隻が投入される。ロナルドレーガンは、釜山海軍基地でバックアップ体制をとり、カールビンソンは、済州(チェジュ)海域で、作戦を遂行する。
 佐世保からは、最新鋭上陸輸送艦(LPD)グリーンベイが上陸訓練に参加する。とりわけ、キー・リゾルブ演習にはTHAADやSM―3(海上発射型迎撃ミサイル)の配備・展開(4D)を想定した指揮所図上訓練も含まれている。すでに、韓国国防省は二月十四日、「北朝鮮の核・ミサイルへの対応や報復攻撃能力を備えるために演習を強化する」と述べ、戦略爆撃機や米原子力潜水艦もこの訓練に連動させるため米軍との協議に入っているとしている。
 今回の米韓合同軍事演習は、THAADミサイル配備との連動をも含むものであり、共和国のみならず、中国、ロシアにも軍事的な衝撃を与えている。この地域の軍事的緊張と対立を一段と高めるものである。
 私たちは、二月十八日、韓米軍事演習反対! 韓米日軍事同盟―軍事統合阻止の日韓共同行動を取り組んだ。さらなる広がりをつくろう。朝鮮民主主義人民共和国への排外主義言動が蔓延する今だからこそ、朝米、南北の対話を求めよう。核軍拡競争には朝鮮半島の非核化と平和協定締結を対峙しよう! 日朝国交回復交渉の再開を求めよう。戦争と貧困を強制する安倍自公政権打倒闘争の前進を!
 「岩国は負けない」とたたかう岩国市民に繋がり、「岩国で勝つ」全国運動をつくろう!
 こうした状況に抗して、一六年一月、岩国市長選挙において姫野候補を擁してたたかった意義は大きい。「基地経済からの脱却を求め、岩国は自立できる」と岩国市民全体に訴えた。原発反対、反TPP、基地強化反対を明確に掲げた選挙戦でもあった。有権者十一万四千四百五十九人、投票率47・49%。投票総数五万四千三百五十七人(内無効数四百六十三人)で有効投票数の内、姫野候補は一万四千八百二十票(27・5%)を獲得したのだ。安倍自公政権の命と生活を軽視する政治、それに癒着する福田市政への批判に共感した一万四千八百二十人の有権者を獲得できたのだ。この民意は、昨年十一月二十日の市民大集会にも引き継がれ、一七年の再編完了を絶対に許さない新たなたたかいを生み出している。岩国市民、愛宕山地域住民の「岩国は負けない」たたかいに繋がり、「岩国で勝つ」たたかいを全国へ発信しよう。


 

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