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   ■日米安保同盟の再編強化を許すな

         東アジアから全ての米軍基地を撤去させよう!

            海外派兵もくろむ自衛隊の強化と闘おう!


 


  ●はじめに

 九月、自民党総裁選において安倍は三選を果たし、改憲を本格化させようとしている。安保関連法を成立させ、集団的自衛権を「合憲」化した安倍は、最後的に憲法九条に自衛隊を明記・合憲化し、自衛隊の海外派兵=侵略戦争にむけた「戦争国家体制」づくりの完成をめざしている。改憲阻止の闘いと一体のものとして日米安保同盟の再編強化反対、在日米軍基地撤去(アジア全域からの米軍基地の撤去)、自衛隊の再編強化反対の闘いを強化しなければならない。
 われわれは、全国の反戦・反安保・反基地を闘う仲間とともに、日米安保同盟の再編強化=具体的には二〇〇三年から本格化した在日米軍再編協議に反対してきた。とりわけ、沖縄とならんでその協議の中で要となる岩国基地の再編・強化の動きに着目し、二〇〇六年、空母艦載機の移駐に反対して立ち上がった地元住民に連帯して岩国基地の強化反対、基地撤去にむけた取り組みを本格化させてきた。今年三月三一日、防衛省は「全ての航空機部隊の移駐が三〇日に完了した」と米側から情報提供があったとして空母艦載機の移駐完了を岩国市に伝えた。これにより、岩国基地は、自衛隊とあわせて一三〇機の航空機を擁する東アジア最大の航空基地へと変貌した。
 沖縄では、安倍政権による無法きわまりない土砂の投入を本格化させ、辺野古新基地建設を加速しようとしている。佐世保では、三月島嶼(とうしょ)防衛の専門部隊として、日本版海兵隊といわれる水陸機動団が陸上自衛隊に発足した。六月には、ミサイル防衛システム強化と称してイージス・アショア(陸の盾)の陸上自衛隊の山口県・むつみ演習場と秋田県・新屋演習場への配備を突如発表した。
 今年末、向こう一〇年間の防衛力の在り方を示す防衛計画の大綱と五年間で進める中期防衛力整備計画の改定が予定されている。安倍政権のもと日本の防衛政策は大きく転換し、自衛隊は災害救助活動の宣撫工作に隠れてすさまじい勢いで米軍と一体となった海外での戦争遂行にむけてその体制を整えようとしている。安倍政権打倒にむけた闘いには、改憲阻止の全人民的闘いの高揚を作り出すとともに、アジア全域からの米軍基地の撤去と自衛隊の海外派兵阻止にむけた反自衛隊の闘いを結びつけていくことが問われている。そして、南北首脳会談と米朝首脳会談をうけて、朝鮮戦争の休戦協定から平和協定の締結にむけた歴史的転換点の中で、在韓米軍、在日米軍を中心としたアジア全域からの米軍基地撤去の本格的闘いが問われているのだ。
 まず、米軍再編にともない主要な在日米軍基地と在韓米軍の現状を確認しておかなければならない。

  ●1章【空母艦載機移駐後の岩国基地】

 横須賀を母港とする原子力空母ロナルド・レーガンに塔載する在日米海軍第五空母航空団の厚木基地から岩国基地への移駐が完了した。配備された約六〇機は、次のようになる。この航空団には、最新の装備と役割を担う七個の航空隊が含まれている。まず、四個の戦闘攻撃航空隊(VFA27、VFA102、VFA115、VFA195)があり、各隊は最新鋭のFA18Eスーパーホーネット一二機で編成されている。次に電子戦用攻撃機グラウラーEA18G六機で編成されている電子攻撃航空隊VAQ141。前身であったプラウラーに比較すると敵の電波妨害源の検出能力と攻撃に優れているのみならず、電子機器の自動化が進み旧来の四名の搭乗員が二名で可能になるように効率化されている。そして、五機の早期警戒機E―2Dアドバンスド・ホークアイで編成される空母空中早期警戒航空隊VAW115。E―2Dは、回転レーダーで敵の戦闘機やミサイルを探知するとされている。新たなイージス艦(海上)やイージス・アショア(陸上)に加え、次期迎撃ミサイルであるSM6を導入することで、このE―2Dと結び「NIFC―CA(ニフカ)」という新たな弾道、巡航両ミサイルへの防衛体制を構築しようというのである。通常の地上あるいは洋上からのレーダーでは、水平線の向こうから飛来する巡航ミサイルを探知するには限界があり、上空からこのE―2Dを使って巡航ミサイルを見つけだし、イージス艦はもちろんのこと、新たに配備されたF35Bを使って迎撃しようというものである。そして、空母への兵站輸送として使われる輸送機C2Aグレイハウンド二機(C2Aは、昨年の一一月に東京・沖ノ鳥島沖で墜落事故を起こし当面は一機で運用するとしている)で編成される艦隊兵站支援航空団VRC30第五分遣隊である。これにより岩国基地は、在日米海兵隊と在日米海軍の基地として機能することになるのであり、沖縄とあわせて「本土」における在日米軍の重要戦略拠点となったのである。
 一方、厚木基地では昨年八月以降、移駐した戦闘機の再飛来が続いている。在日米海軍司令部は昨夏、「移駐後も重要な基地で訓練や給油、整備のため折に触れ使用する」と発表しており、移駐開始前より危惧されていたように、艦載機部隊は新たに岩国基地を加え厚木基地とあわせて二か所を拠点とすることとなる。さらに、岩国基地には、昨年末までに米海兵隊の次期主力ステルス戦闘機F35B一六機が配備されている。そして、移駐完了後すぐさま初の空母着艦資格取得訓練(CQ)が五月末に行われた。硫黄島(東京都)での陸上空母離着陸訓練(FCLP)が完了したことに伴う訓練で、今回から九州沖で実施されるが、拠点となる岩国基地周辺では昼夜を問わずこれまでにない騒音被害が発生している。

  ●2章【強襲揚陸艦の出撃拠点=佐世保】

 一月一四日、米海軍佐世保基地に強襲揚陸艦ワスプが第一一揚陸戦隊(COMPHIBRON―11)の旗艦として新たに配備された。配備されるワスプはAV8Bハリアー攻撃機に代わる戦闘機F35Bを運用できるよう飛行甲板の張り替えを行ってきている。米海軍佐世保基地には、強襲揚陸艦LHD―1ワスプを旗艦として、ドック型揚陸艦LPD―20グリーン・ベイなど三隻、掃海艦四隻が配備されており、昨年岩国基地に配備されたF35Bや沖縄普天間に配備されたオスプレイを搭載して、強襲揚陸作戦を行うのである。佐世保基地は米海軍の海外で唯一の強襲揚陸艦部隊の前進配備基地となっており、後にふれるように陸上自衛隊の「水陸機動団」も置かれ、日米の強襲揚陸艦部隊の出撃拠点となっているのである。また、揚陸艦に搭載するLCAC(エルキャック=世界の七割の海岸線から陸地に侵入できるエアクッション型上陸艇)七隻の唯一の海外基地でもある。オバマ政権下、「リバランス戦略」により二〇年までに海軍艦艇の60%をアジア太平洋地域に配備する方針の下、その強化が図られてきているのだ。

  ●3章【在韓米軍】

 米太平洋軍(約三八万人)傘下で、主要部隊である在韓米軍の再編状況も簡単に触れておこう。在韓米軍は、一〇年五月に再編後も約二万八五〇〇人規模の兵力を維持することが決定されている。内訳は、陸軍二万人、空軍八千人、海軍三〇〇人、海兵隊一〇〇人、特殊作戦軍一〇〇人。在韓米軍の再編は、韓国各地に点在する米軍基地を統廃合する事業で、〇三年の米韓首脳会談の合意に基づき推進されてきた。中隊・大隊級部隊の移転は一三年から始まり、地上軍戦力の主力である米第八軍司令部は昨年七月、龍山(ヨンサン)から平沢(ピョンテク)に移転した。そして、一九五七年以来置かれてきた在韓米軍司令部を平沢に移転(今年六月二九日)したことで、在韓米軍の平沢移転は完了した。平沢のキャンプ・ハンフリーは面積は外国にある米軍基地のうち単一基地としては最大規模。揺れ動く朝鮮半島情勢とともに存在意義を問われる中、在韓米軍は「歴史的節目」(ブルックス司令官)を迎えたのだ。
 司令部移転を済ませた主力部隊の陸軍第八軍を含め、約四〇の部隊が移りつつある。住宅や学校のほか、ショッピングモールやゴルフコースも備え、将来は三万人を超える米兵やその家族らが居住する見通しだ。五七年に約七万人だった在韓米軍の兵力は、長期的には減少傾向にあり、最近ではブッシュ(子)政権と韓国政府による再編合意に基づき二万八五〇〇人前後まで削減され、以降この水準で推移している。
 韓国への配備が遅れていた米軍の高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)の残る発射台四基などが昨年九月、南部・星州(ソンジュ)の用地に搬入され、予定していた六基の暫定配備が完了した。大統領就任前にはその配備に慎重な立場を表明していた文在寅(ムンジェイン)だが、態度を翻し強行配備をおこなったのだ。THAADは、共和国の弾道ミサイルに対抗し、日米韓の防衛協力を強化する手段であるとされているが、中国は激しく反発している。THAADシステムは、自走またはトレーラーによる移動式であり、一〇連装ミサイル発射機とXバンドレーダーからなる。Xバンドレーダーは一〇〇〇キロメートル以上の探知距離を持ち、飛来する弾道ミサイルの追跡、迎撃ミサイルの中間誘導も合わせて行う。射程三〇〇〇キロメートル以下の中・短距離弾道ミサイルを高度四〇~一五〇キロメートルの空中で迎撃するとしている。
 このXバンドレーダーのみを、ミサイル防衛用の地上レーダーとしてアメリカ国外へ前方展開することが検討され、日本ではその最初の一台が〇六年六月青森県の車力分屯基地に配備された。そして、一四年一二月、京都府のアメリカ軍経ヶ岬通信所に二台目が配備されたのだ。日本、韓国にXバンド・レーダーとTHAADを導入することにより、米主導の新たなミサイル防衛システムが構築されつつあるのだ。

  ●4章【アジア・リバランス戦略と安倍政権】

 米帝は、オバマ政権時代に安全保障、外交、経済の重点をアジア太平洋地域に置く「アジア・リバランス(再均衡)」政策を掲げ、日本、韓国、豪州など同盟国との新たな関係強化に乗り出した。オバマが、アジア太平洋重視を初めて明言したのは、一一年一一月のオーストラリア連邦議会での演説とされる。オバマは、米国を「太平洋国家」と位置づけ、「同盟国・友好国と連携し、この地域の未来のため、より大きく長期的な役割を果たしていくことを戦略的に決断した」と宣言したのだ。つまり、日韓豪や東南アジア諸国連合(ASEAN)と連携し、アジア太平洋での米国の存在感を維持する。それにより、中国を軍事的にけん制しながら、同時に外交的に関与を続け、国際秩序に取り込んでいく。アジア太平洋の秩序づくりに米国が主導的に関わることで、地域の成長を米国の成長につなげるという戦略であった。
 だが、南中国海での人工島造成など中国の一方的な海洋進出を止めることはできず、朝鮮民主主義人民共和国(以下、共和国)の核開発の進展には打つ手がなかった。さらに経済分野の柱である環太平洋パートナーシップ協定(TPP)は米議会の承認を得られず、一三年に「米国は世界の警察官ではない」と表明したことで、軍事力の行使をためらう政権とのイメージが定着し、中国、ロシア、共和国から足元を見られたという国内での指摘も強まっていたのであり、こうした背景があってトランプ政権は誕生してきた。
 すでにアフガニスタン、イラクでの戦争を経験したアメリカでは、厭戦ムードが広がるとともに、軍事予算が大幅に削減されている。一方、経済成長著しい中国がGDP世界第二位の経済大国へと変貌し、軍事力を急速に増強。海洋進出を強め、南中国海でフィリピンとベトナム、東中国海で日本との関係が不安定化するという事態に直面することになった。アジア重視を掲げたオバマ政権は、同地域に軍事力を傾斜配分するリバランス戦略を打ち出したものの、実際には、クリミア半島や中東の問題に追われ、前方展開の兵力を大幅に増やすことは困難な情勢であった。
 そうした中で中国の台頭をけん制するため、米国は主要な同盟国に負担増を求めるとともに、同盟国同士の関係も強めようとしたのだ。日本の防衛相経験者によると、日本はその戦略を支える重要な同盟国のひとつで、ほかにオーストラリア、インド、韓国が役割を期待されている。「明文化された覚書があるわけではないが、南シナ海では米国と日本、オーストラリアが一緒になって、東南アジア諸国を支援する。これが三カ国の基本的な安全保障政策だ」。こうしたアジア・リバランス戦略を背景に一五年四月ガイドラインの改定が行われ、その九月に安保法制が強行成立させられだのである。

  ●5章【国家安全保障戦略】

 「我が国は、平和国家としての歩みを引き続き堅持し、国際政治経済の主要プレーヤーとして、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、我が国の安全及びアジア太平洋地域の平和と安定を実現しつつ、国際社会の平和と安定及び繁栄の確保に、これまで以上に積極的に寄与していく。これこそが、我が国が掲げるべき国家安全保障の基本理念である」これは、第二次安倍政権が誕生した翌一三年に明らかにされた「国家安全保障戦略」に謳われた安倍ドクトリンとでもいうべき安保(軍事)戦略である。
 建前上は「専守防衛」を掲げつつ、「国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場からこれまで以上に積極的に寄与していく」。ここに軸足を完全に移すことを宣言したのであり、これを実現するために一五年のガイドラインの改定と安保法制が成立させられ、軍隊としての自衛隊の再編・強化にむけた動きが強められてきたのである。次に、こうした安倍政権による国家安全保障戦略のもと急速にすすむ日帝の軍事大国化と戦争国家化、さらに日米軍事一体化と自衛隊の再編・強化についてみておきたい。

  ●6章【防衛費】

 一八年度当初予算は、五兆一九一一億円(米軍再編関係経費などを含む)で、概算要求段階で二千億円超の増額となる。第二次安倍政権成立以降、防衛費は六年連続で増え、来年度も過去最大更新は確実となっている。共和国や中国の軍備増強に備えるとの狙いだが、米朝が対話に進んでも路線を変更しない政権の姿勢があきらかとなった。安倍政権は今年六月に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)でも「防衛力を大幅に強化する」と明記しており、この方針が反映された形だ。共和国の弾道ミサイルに対応するとしているイージス・アショアの取得に向けた経費も盛り込まれている。本体の取得経費は二基で約二六七九億円とされている。一八年度に六機の取得費計七八五億円を計上したF35Aも一九年度予算で追加購入する予定だ。防衛費膨張の背景には、高額な装備品を複数年度に分けて支払う「後年度負担」の累積があるが、トランプによる「バイ・アメリカン(米国製品を買おう)」が今後拍車をかける可能性もある。しかし、より本質的には、「専守防衛」の枠を超え、「抑止力を高める」として敵攻撃力を増強しようという安倍の防衛戦略の転換により、当然にも装備費用が高騰していくことは避けられないのである。

  ●7章【オスプレイ】

 八月二二日、政府は、米軍横田基地へのオスプレイ五機の正式配備が一〇月一日となることを発表した。今後、段階的に計一〇機のCV22と空軍特殊作戦部隊約四五〇人が横田基地に配備される 米国防総省は昨年三月オスプレイ配備を、いったん当初予定の昨年後半から、一九年一〇月以降に延期すると発表していた。しかし、「本土」では初めてとなる首都圏への配備が突然、前倒しされたのだ。
 また今年三月、防衛省は、陸上自衛隊が今年秋に導入するオスプレイ五機を陸自木更津駐屯地(千葉県木更津市)に暫定配備する方向で最終調整に入っている。佐賀空港(佐賀市)への配備を計画していたが、地元漁協の反対が強く、さらに二月には陸自ヘリが佐賀空港近くの民家に墜落。大破した家にいた少女が怪我をするという重大事故をおこし、当面、佐賀空港への配備は困難になったと判断し、木更津への暫定配備に踏み切ったのだ。木更津駐屯地は日米のオスプレイの定期整備拠点であり、敷地が広く、地元の理解も得られやすいとの判断だ。
 八月二四日、佐賀県知事山口祥美は、防衛相小野寺との協議の結果、オスプレイ着陸料年五億円、二〇年間で一〇〇億円で配備を合意したと突如発表した。安倍政権は危険極まりないオスプレイ佐賀空港配備を金で決着しようとしている。
 防衛省は三月末に発足した離島防衛の専門部隊「水陸機動団」の移動手段として、新年度分五機を含むオスプレイ計一七機を二一年度までに導入しようとしている。そして、機動団の拠点となる陸自相浦(あいのうら)駐屯地(長崎県佐世保市)に近い佐賀空港への配備を目指していた。防衛省は当初、佐賀空港の西側に駐機場や格納庫などを整備し、空港そばの目達原(めたばる)駐屯地から移駐する約五〇機のヘリコプターと新規に取得する一七機のオスプレイと合わせて約七〇機の航空機を配備することを想定していた。

  ●8章【島嶼防衛と水陸機動団】

 三月、島嶼防衛の専門部隊として、陸上自衛隊に新設された水陸機動団が長崎県佐世保市の陸自相浦駐屯地に発足した。水陸機動団は、中国の海洋進出などを背景に発足し、約二一〇〇人規模。さらに、陸上自衛隊の水陸機動団は五月八日、海上自衛隊の掃海隊群と初の演習を始めた。防衛省によると、九州西方沖や種子島周辺で離島奪回作戦などを念頭に陸海の連携を深めるという。種子島や周辺海域では海自の護衛艦「ひゅうが」などと連携し、エアクッション型揚陸艇(LCAC)やヘリコプターを使用した上陸訓練を、九州西方沖では、輸送艦「しもきた」からの水陸両用車発進、収容訓練などを行った。
 また、米カリフォルニア州の米軍射撃訓練場では、陸自と米海兵隊など六〇〇人以上が参加した今年二月の日米共同訓練「アイアン・フィスト(鉄拳)」において、離島に見立てた敵地を奪還するため、オスプレイで部隊を送り込むなどの日米一体となった訓練がおこなわれている。この訓練は〇六年に始まり、今年で一三回目であるが、陸自からは「水陸機動団」の母体となった西部方面普通科連隊を中心に参加し、訓練は発足前の総仕上げと位置づけられた。
 現在の防衛計画の大綱が策定された一三年の時点で、南西諸島地域で陸上自衛隊が配備されていたのは沖縄本島だけだった。現在の大綱と中期防衛力整備計画(中期防)に基づき、一六年三月には日本最西端の与那国島に陸自の沿岸監視部隊(約一五〇人)が発足。一八年年度末までに奄美大島に陸自部隊五五〇人。一八年度以降に宮古島に陸自部隊七〇〇~八〇〇人。そして一九年度以降に同様に五〇〇~六〇〇人の地対艦、地対空ミサイル部隊などの配備が計画されている。
 水陸機動団の発足と合わせて陸上自衛隊は、全国に五つある方面隊を一元的に指揮する司令部として「陸上総隊」を朝霞駐屯地(東京都練馬区など)に発足させた。一三年に策定された「中期防」で決定されていたもので「水陸機動団」を陸上総隊の直轄に置く。陸自は一九五四年の創隊以来、最大の組織改編と位置づけている。陸上総隊は約一八〇人態勢で発足。このうち約二〇人は、在日米陸軍司令部(神奈川県)と同じ敷地内にある座間駐屯地で日米間の調整を担う。現在の自衛隊の兵力は、昨年三月時点の陸自隊員は約一三万五〇〇〇人で、海自、約四万二〇〇〇人や空自、約四万二〇〇〇人となっている。

  ●9章【ミサイル防衛システム】

 一三年、米国防総省は新たなミサイル防衛システムとして「統合ミサイル防衛(IAMD)」構想を発表し、二〇年を目標に「敵のミサイル攻撃阻止のため、防衛的、攻撃的能力をすべて包括的に結集させる」との方針を明らかにした。「統合ミサイル防衛(IAMD)」構想とは、弾道ミサイルのみならず、巡航ミサイルや誘導ロケット、無人機など実に多様なミサイルが開発されるなかで、これまでと異なる技術が使われており、その対応が複雑化し、これに対応しようというものだ。「極超音速滑空ミサイル」というハイブリッド兵器は、弾道ミサイルから打ち出され、非常に高速で加速する滑空ミサイルで、これは弾道ミサイルのような単純な(放物線の)軌道ではなく、遠隔操作できる。つまり、迂回経路をとる可能性もあり、どこから発射され、どこを狙ったものか予測が非常に困難とされている。中国がこのミサイル開発に力を注ぎ、驚くべきペースで試験を繰り返しているとアメリカは警戒しているのだ。新ミサイル防衛システムへの移行は、こうした最新のミサイルの脅威に対応するためだという。

  ●10章【イージス・アショア】

 イージス・アショアは、陸上配備型迎撃ミサイルシステムで、一基一千億円強。二基設置する方針(山口県むつみ演習場と秋田県新屋演習場)だ。そして、防衛省は、イージス・アショアに米ロッキード・マーチン社製の最新鋭レーダー「SSR」を搭載する方針を固めた。SSRの探知範囲は、一千キロメートル以上とみられ、海自イージス艦が搭載するレーダーの倍以上の性能を持つとされる。イージス・アショアは、共和国を念頭に日本に飛来するミサイルを撃ち落とすため、昨年一二月に政府が導入を決定し、二三年度の運用開始をめざしている。イージス・アショアは迎撃ミサイル八発を擁する発射装置三基で構成され、レーダーSPYを搭載し、二四時間、全方位の監視が可能だ。ルーマニアのデゼベル基地にイランのミサイルに対抗する形で配備され、運用が行われている。ポーラントのレジコボ基地においても配備にむけた準備が行われている。
 安倍政権は、今年末の防衛計画の大綱に、新たな防空構想を盛り込む方針だ。米軍が進める「統合ミサイル防衛(IAMD)」構想に、日本も連携して実現しようというのである。この「統合ミサイル防衛(IAMD)」システムにイージス・アショアが必要なのである。そして、IAMDの中核を担うのが次期迎撃ミサイル「SM6」である。SM6は、巡航ミサイルや航空機を迎撃でき、技術的にはトマホークも発射できるとされている。現在、日本の迎撃ミサイルは、移動式のPAC3ならびに洋上のイージス艦からのミサイル発射のみとなっているが、地上配備のイージス・アショアが設置されれば、迎撃とは名ばかりのトマホークやSM6による本格的な地上配備のミサイル発射基地となるのである。

  ●11章【空母】

 昨年末、政府は、海上自衛隊最大級の護衛艦「いずも」を、戦闘機の離着艦が可能となる空母に改修する方向で検討に入った。自衛隊初の空母保有となり、二〇年代初頭の運用開始を目指す。防衛省は表向き、「空母化を具体的に検討していることはない」(小野寺五典防衛相の国会答弁)との立場を表明し、離島防衛用の補給拠点など防御目的で活用するとしているが、「いずも」はF35B戦闘機の運用を想定しており、まぎれもない「攻撃型空母」である。日米連携を強化することで共和国や中国の脅威に備えるとする。「いずも」は、広い甲板を持つ空母に似た形状の護衛艦で、全長二四八メートル、満載排水量約二万六〇〇〇トン。ヘリコプター一四機が搭載可能とされる。空母化すれば、F35Bを約一〇機搭載できる見通しだ。防衛省は海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦で運用することも視野に、短距離で離陸できるF35B戦闘機の導入を本格的に検討しており、既に導入を決めた空軍仕様のF35A計四二機の一部をB型に変更する案、あるいは別に追加購入する案があり、今年後半に見直す「防衛計画の大綱」に盛り込むことも想定している。
 政府関係者は「日本の有事に限らず存立危機事態や重要影響事態での米軍支援のためにいずも型を活用できないかという問題意識を背景に、空母化を検討したもの」と指摘している。安全保障関連法と同法に連動して改悪された日米間の協定によって、自衛隊による米軍への後方支援は、他国への攻撃で日本の存立を脅かす明白な危険がある「存立危機事態」や、放置したら日本が攻撃される恐れがある「重要影響事態」でもできるように拡充されており、「米軍岩国基地にF35Bが配備されており、今後の日米共同訓練やトラブル時などにいずも型に着艦する可能性がある」ことなどを想定したものだと説明している。いずれにせよ「攻撃型空母」を想定したものであり、実際にこれまで米軍の輸送機オスプレイなど他国の回転翼機が着艦した実績があるのだ。

  ●12章【自衛隊基地の使用拡大】

 現在、在日米軍が使用する施設は、①在日米軍が専用で利用している施設、②日米地位協定2―4―(a) に基づいて日米で共同使用している施設、③日米地位協定2―4―(b)に基づいて米軍が一時的に利用可能な施設となっている。防衛白書によれば、本年三月末現在「在日米軍施設・区域」は三一都道府県に、「在日米軍施設・区域(専用施設)」に限ると一四都道府県に置かれている。自衛隊との共用施設も含めると全国で七八施設・区域におよんでいる。そして、日米地位協定第二条第一項(a)に基づき米軍が使用している施設・区域(米側が管理。同協定第二条第四項(a)に基づき、自衛隊等も使用するものを含む)及び日米地位協定第二条第四項(b)に基づき米軍が使用している施設・区域(日本側が管理)は、本土で九七施設と区域。沖縄に三三施設と区域。全国で合計一三〇施設となっている。こうした中、一時利用施設である航空自衛隊築城基地(福岡県)の滑走路を約三〇〇メートル延長して約二七〇〇メートルとすることが明らかにされた。沖縄の米軍普天間飛行場返還に伴う施設整備の一環だとして緊急時に航空機受け入れ能力を持つ築城基地の周防灘に突き出す滑走路を、埋め立てによりさらに海側に延ばす計画で、早ければ来年度の着工を目指すとしている。今年四月には、岩国基地所属のF35Bが緊急着陸をおこなっているが原因は明らかにされていない。日米両政府が〇六年五月に合意した在日米軍再編のロードマップでは、普天間飛行場の移設に伴い、緊急時に航空機を受け入れる能力を受け持つ築城基地と、空自新田原基地(宮崎県)の施設整備を「必要に応じて行う」としていた。普天間飛行場の滑走路が約二七〇〇メートルであり、築城基地も同じ長さに延長してほしいと、米側から日本政府に要請があったという。沖縄の基地負担の軽減を名目として、米軍が一時的に可能な施設をも訓練などで常時使用することを狙ったものであることは明白である。今後、新田原基地でも同様の滑走路の延長と常時使用にむけた動きが強まってくることは確実である。また、現在日本の民間空港の中で唯一、福岡空港の滑走路だけが米軍との「共用」施設となっている(米側では板付飛行場)。昨年には、米軍機が九四回飛来しており(国土交通省)、空港敷地内には米軍専用施設が今も残り、空港関係者でも米軍の許可なしには、建物(倉庫)にも近づけない。また、米軍によるとこうした施設の返還計画はないとしており、福岡空港の軍事利用が一層強化される可能性もあるのだ。

  ●13章【沖縄】

 米軍再編に伴う深刻な問題が明らかとなってきている。沖縄北部に広がる「やんばるの森」は、国内最大級の亜熱帯照葉樹林だが、長年「米軍北部訓練場」として使われてきた。一六年にその過半が返還された際、日米両政府は「復帰後最大規模の土地の返還」「沖縄の負担軽減」と強調した。しかし、森のあちらこちらから、照明弾、ペイント弾、タイヤ、バッテリーの一部といった廃棄物が続々と出てきたのだ。沖縄では、米軍から返還された土地の汚染が次々に発覚している。軍用地の返還は、日本政府が強調するような「負担軽減」ではない。沖縄の土地を汚染し、沖縄人民の健康と命を蝕む可能性が高いのだ。沖縄防衛局によると、一九七二年の「本土復帰」以降、三五〇回に分けて米軍用地が返還されたが、このうち土壌調査が実施されたのはわずか一九件しかなく、ほとんどの土地が地中に埋もれた廃棄物や土壌の有害物質について調査されることなく返還されていた。そして、日米地位協定四条一項では米軍の原状回復義務を免除している。つまり、米軍は土地を汚したまま返しても責任を負わないことになっているのだ。辺野古新基地建設は沖縄人民にとって「負担軽減」どころか、命と生活を脅かす新たな負担として襲いかかっているのである。
 安倍政権は、米軍事戦略と一体化して、専守防衛体制から大きく舵を切った。米軍を後方支援するとして踏み切った集団的自衛権の「合憲」化と安保関連法の強行採決は、米軍と一体となった自衛隊の侵略軍隊化である。〇三年以降の米軍再編協議がひとり米軍再編のみにとどまらず、自衛隊の再編・強化をもくろんだものであることは明白である。ましてや沖縄の負担軽減を目指したものでないことは、先にみた自衛隊の増強ぶりや沖縄の現実を見れば一目瞭然である。安倍は、自民党総裁選で三選を果たしたのち、いよいよ改憲に踏み出すことを明言している。改憲阻止の闘いは、こうした在日米軍と自衛隊の再編強化と闘うことなくして勝利することはできない。日米安保同盟の軍事同盟としての再編強化に抗して、アジア人民との連帯のもとアジア全域からの米軍の撤去と反自衛隊闘争の強化をもって、反動安倍政権の改憲策動を粉砕しよう。



 

 

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