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   ■自衛隊基地の日米出撃拠点化阻止!
       
                      九州・山口地方委員会






 〇五年一〇月、日米安全保障協議委員会(2+2)は『日米同盟:未来のための変革と再編』において、在日米軍及び関連する自衛隊の再編に関する勧告を承認した。今日に至る「在日米軍再編」の始まりである。それは「在日米軍及び関連する自衛隊の再編」とあるようにひとり在日米軍の再編のみではなく自衛隊の再編・強化と日米安保の軍事同盟としての再編成をもたらしてきているのである。
 日本の「全土基地化」とも言うべき事態が急速に進んでおり、西日本とりわけ山口、九州、沖縄、南西諸島における自衛隊とその基地の再編・強化はすさまじい勢いで進んでいる。歴史的にも朝鮮戦争、ベトナム戦争において米軍の出撃拠点となってきたこれら地域が再び、米軍と自衛隊の戦争出撃の最前線へと大きく変わろうとしている。米軍再編の現段階と現状について九州を中心としてみていくことにする。
 オバマ時代にアジアへの「リバランス戦略」を打ち出した米帝は、トランプ政権になってから共和国の核・ミサイル開発や中国の海洋進出に対抗して、アジア太平洋地域での航空・海洋攻撃能力を一層強化している。「第一列島線を二分し、北側の防衛を日本が、(南シナ海(ママ)など)南側を米国が主な責任領域とすべきだ。もちろん朝鮮半島有事などでは、米軍も北側で自衛隊を支援するので、日本単独ではなく、主に防衛の責任を持つという意味だ」。米戦略予算評価センター前所長、アンドリュー・クレピネビッチが述べるように、中国人民解放軍が想定する第一列島線にそって自衛隊を動員しつつ対中国戦略の強化を明確にしているのである。そして、そのなかで、空軍と海軍・海兵隊の統合作戦が重視され、さらに自衛隊との統合運用が強化されてきているのである。こうした再編の大きな要として山口から九州、沖縄、南西諸島へと連なる自衛隊基地の強化と再編が進行しているのだ。

 ●1章 岩国基地と空母艦載機FCLP訓練

 岩国基地(⑪、以下丸数字は地図参照)への厚木基地(⑥)からの米空母艦載機の移駐完了後約一年三カ月が経過したが、当初の予想通り戦闘機の離発着にともなう騒音が激しさを増している。一八年四月から一年間の岩国市尾津町の騒音測定回数は、移駐が始まる前の一六年度と比較して、二倍超の八六六八回にまで達している。また、広島県でも昨年度、「かなりうるさい」と感じる七〇デシベル以上を観測した回数は、県内六カ所の測定地点で四九六九回にのぼり、前の年度の一・三倍に増加し、騒音の被害地域も大きく拡大しているのである。
 そうした中、F35Bステルス戦闘機一個飛行隊一六機が新たに配備され、二一年秋までに既存の一六機(一七年に配備)と合わせて二個飛行隊三二機体制に増強される計画が明らかとなった。米海兵隊が公表した「一九海兵航空計画」によれば、現在、岩国基地に配備されている第二四二戦闘攻撃中隊のFA18D戦闘攻撃機一二機をF35B一六機と交代させるとしている。政府はこれまで山口県や岩国市に対して、F35B配備は「一六機」であり追加配備については「これ以上の説明を受けていない」としていた。しかも、政府は当初F35B配備にあたり、既存のFA18戦闘攻撃機一二機、AV8B攻撃機八機と交代するので機数は「四減になる」と説明していた。しかし、この新たな計画では「四増」となるのだ。こうした一方的かつペテン的な基地負担の押しつけが移駐完了後も続いているのだ。
 四月九日、航空自衛隊三沢基地(青森県三沢市②)所属のF35Aが青森県沖で墜落した。F35Aは昨年一月に三沢基地に初配備され、今年三月臨時飛行隊から第三〇二飛行隊として新編されたばかりだった。隊員約八〇人で今回の事故機を含むF35A一三機を配備し、今後順次増やし将来的には約二〇機体制を予定している。今後、防衛省は短距離離陸・垂直着陸ができるB型四二機を含めて計一四七機のF35を調達する計画だ。購入費用は、機体だけで総額一兆七〇〇〇億円を超え、機体維持費用も含めると六兆円を超えるとの試算もある。B型は「空母化」が予定される海自最大の護衛艦いずも型での運用が計画されているのだ。防衛相岩屋は事故後、「これまでの方針を変更するに足る具体的な情報は無く、計画を変更する考えはない」と述べているが、アメリカでもエンジントラブルや墜落事故が起こっており、米政府監査院(GAO)は一八年六月の報告書で、同年一月時点で九六六件の技術的問題が見つかったと指摘し、このうち一一一件は安全性や重要な性能を危険にさらす問題があるとしているのである。


 ▼1節 FCLP 馬毛島への訓練移転をめぐる動き

 〇六年五月の米軍再編ロードマップで日米両政府は厚木基地所属の米空母艦載機の岩国基地への移転を合意。〇七年には空母艦載機離発着訓練(FCLP)の訓練地として馬毛島(⑳)が移転先として浮上。一一年の2+2合意文書において馬毛島に自衛隊基地を建設し、FCLPの代替地とすると初めて明記された。FCLPを巡っては米第七艦隊の空母「ミッドウェイ」が横須賀基地(⑦)を事実上の母港とし、厚木海軍基地を艦載機の基地として利用するようになった七三年一〇月以降、訓練に伴う騒音問題が取り上げられるようになり、艦載機FA18の配備によって騒音問題はさらに深刻さを増していった。八三年からは三宅島において新規空港を建設し訓練も移転させることも検討されたが、島民の七割が反対し、反対運動の中で逮捕者が出るなどして実現しなかった。そして、九一年以降は、恒常的な訓練施設を確保するまでの間、暫定措置として硫黄島での訓練を継続している。しかし、硫黄島が悪天候の場合には、厚木基地や三沢基地で実施することにしていた。岩国への移転後、米側は、硫黄島が岩国基地から約一四〇〇キロ離れていて、厚木よりもさらに遠くなり、緊急着陸の場合には海上に着水するしかないという不満から、早期の代替地整備を求めていた。そのため防衛省は北九州空港周辺に訓練施設を整備する案も検討していたようだが、整備費は数千億円かかり、施設完成まで二〇年以上かかる見通しだったことから断念。今回の馬毛島への代替地案が浮上してきたのである。馬毛島は、岩国基地から四〇〇キロの距離にあり、途中九州各地に自衛隊基地があり、緊急時の避難着陸の拠点として使えることから馬毛島の恒久的施設としての利用を望んでいるのである。
 こうした中、今年一月九日、政府は馬毛島を一六〇億円で買い取ることで、地権者と大筋合意したと発表した。防衛省は交渉開始当初、土地の評価額として約四五億円を提示したが、地権者であるタストン・エアポート社は四〇〇億円超を求めて交渉は難航。米側が硫黄島より近い訓練地の早期整備を強く求めていたこともあり、官房長官菅が「購入価格を上積みしていい」と指示。政府は土地の評価額に加え、タストン社が島に整備した滑走路や関連施設なども評価額に加算し、一六〇億円まで価格を引き上げて合意に達したと発表したのである。しかし、タストン社内の社長交代などもあり、タストン社から五月、防衛省に対して交渉打ち切りが通告された。政府は、将来馬毛島を米軍だけでなく、自衛隊も使う施設にしたい考えをもっており、南西諸島の有事や大規模災害時の物資の集積拠点とする考えで、自衛隊によるFCLPも見込んでいる。
 馬毛島からわずか一二キロメートルに位置する種子島では、深刻な爆音被害をもたらすFCLP移転計画に対しては、この間地元住民が根強い反対運動を展開してきた。地元西之表市長も「馬毛島には(FCLP以外にも)ふさわしい活用方法がある」と表明しており、地元の合意が得られていない状況なのである。当面、硫黄島での訓練が続くこととなり、天候などを理由に岩国、厚木でも訓練が行われる状況が続くのである。
 また、厚木基地では岩国基地への空母艦載機の移駐完了後も、艦載機が再飛来を続け、岩国基地所属の海兵隊機など厚木の所属機以外の飛来が今日も続いている。さらに移駐していない艦載ヘリや米艦載機が減ったことにより自衛隊機の飛行はむしろ増えている。ヘリが朝六~七時台に長時間の旋回をくり返したり、オスプレイが民家の上空で「変換モード」で飛行するなど、一向に収まらない騒音被害に対して、一七年には周辺住民らが米軍機と自衛隊機の深夜早朝の飛行差し止めと損害賠償を国に求める第五次集団訴訟を提訴し闘い続けている。この第五次原告団は神奈川県と東京都の八市の八八七九人でこれまでで最多。差し止めを求める原告は四次の一一倍の一三九三人となっている。厚木の騒音被害が軽減されないまま、岩国でも騒音被害は拡大している。「米軍が自由に使える基地が増えた。被害の拡散だ」(大波団長)との訴えは、まったくその通りである。

 ●2章 築城、新田原基地

 「再編実施のための日米ロードマップ」では普天間飛行場(23)代替施設に関して築城基地(⑬)と新田原基地(⑱)について触れ、「普天間飛行場の能力を代替することに関連する、航空自衛隊新田原基地及び築城基地の緊急時の使用のための施設整備は、実地調査実施の後、普天間飛行場の返還の前に、必要に応じて、行われる」としており、一三年四月に合意された「沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画」において普天間飛行場の返還条件として以下の八項目を確認している。
 (1)海兵隊飛行場関連施設等のキャンプ・シュワブへの移設
 (2)海兵隊の航空部隊・司令部機能及び関連施設のキャンプ・シュワブへの移設
 (3)普天間飛行場の能力の代替に関連する、航空自衛隊新田原基地及び築城基地の緊急時の使用のための施設整備は、必要に応じ、実施
 (4)普天間飛行場代替施設では確保されない長い滑走路を用いた活動のための緊急時における民間施設の使用の改善
 (5)地元住民の生活の質を損じかねない交通渋滞及び関連する諸問題
 (6)隣接する水域の必要な調整の実施
 (7)施設の完全な運用上の能力の取得
 (8)KC130飛行隊による岩国飛行場の本拠地化
 この合意のもとに一八年一〇月二四日の日米合同委員会において、築城基地(福岡県築上町)と新田原基地(宮崎県新富町)に関して「新田原基地および築城基地の緊急時の使用のための移設整備に関する概要」として両基地に駐機場、燃料タンク、弾薬庫、庁舎、倉庫、誘導路の改修、さらに築城基地には宿舎、滑走路の延長(三〇〇メートル)を行い、「緊急時」にそれぞれの基地に戦闘機一二機程度、輸送機一機程度、軍人二〇〇人程度の受け入れを可能とする計画が明らかにされた。その予算として新田原に一一五億円、築城に一二〇億円が日本政府の負担で行われるとしたのである。普天間の「能力代替」と言いながら普天間基地にない弾薬庫を造る理由について防衛省は「詳細は控える」と明らかにしておらず、地元への説明においても如何なる弾薬が持ち込まれるのか明らかになっていないのである。また、戦闘機も「全米軍」が使用対象でF35ステルス戦闘機やオスプレイなどの飛来も「ありうる」と防衛省は説明している。
 また、ロードマップでは、訓練移転に関して「双方は、〇七年度からの共同訓練に関する年間計画を作成する」「当分の間、嘉手納飛行場、三沢飛行場及び岩国飛行場の三つの米軍施設からの航空機が、千歳(①)、三沢、百里、小松(⑧)、築城及び新田原の自衛隊施設から行われる移転訓練に参加する。双方は、将来の共同訓練・演習のための自衛隊施設の使用拡大に向けて取り組む」とされ、この間、すでに両基地への米軍機の訓練移転が進められてきたのである。築城基地では、〇七年から日米共同訓練が強行され、続けて燃料タンク増設などの基地拡張計画が表面化するなど米軍受け入れにむけた体制づくりが沖縄の負担軽減と称して強行されてきたのである。また、「緊急着陸」と称して一六年に一回、一機。一七年にも一回、一機。一八年は七回、二九機が緊急時として築城に飛来しているが、これらは大半が岩国基地所属の戦闘機で沖縄の負担軽減とは無関係というのが実態であり、築城、新田原基地の「訓練移転、緊急時受け入れ」基地というのは、朝鮮半島有事をはじめとした「有事」=「緊急時」における出撃拠点としていくということなのである。築城の現在の滑走路(二四〇〇メートル)を普天間と同等の二七〇〇メートルとし、米軍の弾薬庫を新たに設置しようとすることはその証左である。築城基地は、戦闘機の離発着の経路と国道一〇号線が交差し、一〇号線を通行する車からは戦闘機が頭の上をかすめるかのように飛来する。そのため爆音もすさまじい。また、今年二月には築城基地所属のF2戦闘機が、山口県沖の日本海に墜落する事故も起きている。
 築城では八九年四月二日、F15配備に反対して二五〇〇名の「人間の鎖」で基地を包囲し、六月二日から毎月「二の日の行動」として基地前での抗議の座り込みが開始され、この六月でちょうど三〇年を迎えた。正月も雨の日も休むことなく「平和といのちを見つめる会」を先頭に地元住民、労働者、九州各地の支援者によって三〇年間抗議が続けられてきたのである。そして、この六月二日には、築城基地の米軍基地化に反対する集会が一五〇〇名の結集で闘い抜かれ、築城基地の撤去にむけて三一年目の新たな闘いが開始されているのである。
 新田原は、F15戦闘機の基本ライセンスを取得するための飛行教育航空隊がある。対領空侵犯にスクランブル発進する精鋭といわれる第三〇五飛行隊を有しており、共同訓練も継続して行われている。そして、先述したように築城同様の緊急時施設の建設が計画されているのである、
 さらに、今後、馬毛島へFCLP訓練が移転した場合、岩国基地と馬毛島を結ぶ経路の途中にこの新田原は位置し、「緊急時」の着陸拠点として位置づけられているのである。当然にも「緊急時」と称した米軍機の飛来が増加することは目に見えており、地元住民からの反発も大きくなっている。地元では一七年一二月、飛行の一部差し止めと騒音被害による損害賠償を国に求める訴訟を宮崎地裁に起こしている。全国の爆音訴訟の中でも自衛隊のみの基地に関する騒音訴訟は初めてである。
 原告は、航空機の騒音基準を表す「うるささ指数」が七五以上ある区域の住民で、新富町と隣の西都市の計一二二人。防衛省の調査によっても一六年度の新田原基地東にある観測点での騒音発生回数は約一万八千回にのぼっている。

 ●3章 日出生台演習場

 九六年一二月、沖縄に関する特別行動委員会(SACO)最終報告では、訓練及び運用の方法の調整として、米海兵隊による県道一〇四号線越え実弾射撃訓練の「本土」への移転が示され、矢臼別、王城寺原、東富士、北富士及び日出生台(⑭)において訓練が行われている。九州では日出生台において九八年度に初めて実施されてからこれまで一三回行われている。また、昨年一一月には日本国内で初めての米軍機からの自衛隊員のパラシュート降下訓練が実施されている。訓練を実施したのは習志野駐屯地(千葉県)の陸自第一空挺団で、全国各地で実施されている日米共同統合演習「キーン・ソード」の一環である。米軍C130輸送機三機と空自の同型機一機から、二二回にわたって合計二〇〇人を超える降下が確認されている。防衛省統合幕僚監部によると、米軍機は横田基地(⑤)を発着し、横田と築城基地から隊員を乗せ、空自機は海自下総(しもふさ)基地から隊員を乗せ、日出生台で降下させている。また、一二月には日米共同訓練のためオスプレイが同演習場を初めて飛行し、陸自の輸送ヘリコプターとともに日米の隊員を搬送している。

 ●4章 佐世保

 海上自衛隊は九三年、ミサイル迎撃能力に優れたイージス艦の第一号「こんごう」を佐世保(⑰)に配備。現在はイージス艦三隻を含む国内最多一五隻の護衛艦が佐世保にいる。
 陸上自衛隊は一八年三月、相浦駐屯地に、離島防衛を主任務とする「水陸機動団」を発足させている。水陸機動団は同年一〇月、フィリピンで米海兵隊、米海軍第七艦隊とともに訓練を行うなど、米軍との共同訓練を積み重ねている。
 そして、今年一月、米海軍佐世保基地では一九年中に現在配備中の「ワスプ」に代わり新たに大型強襲揚陸艦「アメリカ」を配備することが明らかにされた。「アメリカ」は甲板が広く、「ワスプ」より航空機用の格納庫などが充実しているといわれ、配備されれば岩国基地所属のF35B戦闘機やMV22オスプレイを艦載し、沖縄に駐留する米海兵隊と一体的な運用を行う計画とされている。

 ●5章 鹿屋

 ロードマップには「KC130飛行隊は、司令部、整備支援施設及び家族支援施設とともに、岩国飛行場を拠点とする。航空機は、訓練及び運用のため、海上自衛隊鹿屋基地及びグアムに定期的にローテーションで展開する。KC130航空機の展開を支援するため、鹿屋基地において必要な施設が整備される」とされている。この計画にそってKC130飛行隊は、一四年八月に岩国への部隊移駐を完了させている。そして、訓練及び運用のため鹿屋基地(⑲)が位置づけられているのである。鹿屋基地は、太平洋戦争末期に旧海軍鹿屋航空基地として知覧とともに特攻の出撃拠点として機能し、特攻隊員九〇八名が命を亡くしているのである。

 ●6章 佐賀空港

 陸上自衛隊が導入予定のオスプレイを一七機(総額三七〇〇億円)の配備先として政府が一四年に決定したのが佐賀空港(⑯)であった。空港西側約三三ヘクタールに新たな駐機場や格納庫を建設して配備しようとの計画だが、地権者の反対は強く、防衛省はこの五月、陸自木更津駐屯地に暫定的に配備する方針を木更津市側に伝え、来年三月の配備にむけた動きを本格化させた。暫定とはいえ、少なくとも数年間は拠点となる見通しで、地元は恒久化を懸念している。
 防衛省は、そもそもオスプレイを離島防衛の専門部隊である「水陸機動団」(長崎県佐世保市の陸自相浦駐屯地)の輸送手段して活用し、さらに近接する目達原駐屯地の攻撃ヘリならびに離島奪還の主力が乗り込む水陸両用車「AAV7」の事故による大規模な修理や高度な整備などを目達原駐屯地内に完成した工場で行なうことにしており、水陸起動団の配備先である佐世保から地理的に最適である佐賀県への集中的配備を狙っていたのである。
 しかし、佐賀空港の建設に際して九〇年三月、県が地元漁協や川副町(現・佐賀市)と締結した「公害防止協定」がある。空港建設が持ち上がった七〇年代、有明海では水銀問題や筑後大堰、南部総合開発(現在の諫早湾干拓事業)など漁場環境の悪化をもたらす問題が相次ぎ、漁業者の間には公共事業や行政への不信が大きくなっていた。協定には排水などの細かい環境基準が盛り込まれた。そして、漁業者が懸念したのが自衛隊との共用だった。赤字になれば自衛隊に身売りして基地化するのではないか。当時の県担当者が残した資料には「漁業者が最も心配している自衛隊基地化」と記されている。当時の漁協幹部の中には戦争体験者もおり、将来、自衛隊との共用あるいは自衛隊基地そのものになるのではないかという強い危惧であった。こうした思いは現在の漁協にも引き継がれ、子孫に豊かな有明海を残していこうと断固とした反対の姿勢を貫き通しているのである。さらに、一七年二月には目達原所属のAH64D戦闘ヘリが民家に墜落し、隊員二名が死亡した。民家には少女がおり奇跡的に軽傷で済んだが墜落・炎上という重大事故を起こしており、地元住民は自衛隊、県によるオスプレイ導入の策動を阻止しているのである。

 ●7章 沖縄 普天間、伊江島

 オスプレイやヘリ五八機が所属する海兵隊普天間基地では、外来機の離着陸が激増している。防衛省沖縄防衛局の計測によれば、一七年の一年間で四一八回、一八年では一七五六回の離着陸を記録している。それにともない市への一八年度の苦情件数は、前年度の一・五倍となっている。騒音の激しいF35B、やFA18Dを含む、岩国飛行場所属の航空機が訓練で飛来するのが主な理由とみられている。一二月には、夜八時半過ぎに飛行機のエンジン付近(一二〇デシベル)を上回る一二三・七デシベルの昨年度の最高値を測定している。一~五分程度の間隔でヘリが飛び立っては旋回し「毎日こんな感じ。米軍はやりたい放題。まさに傍若無人」と地元住民は怒りを新たにしている。「世界一危険」とされる普天間基地は、負担軽減どころかますます危険と騒音被害が拡大しているのである。
 また、普天間返還をめぐっては、八項目の返還条件の第四項にある「普天間飛行場代替施設では確保されない長い滑走路を用いた活動のための緊急時における民間施設の使用の改善」の条りである。これは一八〇〇メートルの滑走路二本の計画である辺野古では確保されない長い滑走路を持つ民間施設、つまり那覇空港のことを明らかに指しており、増設が進む那覇空港の利用も目論んでいるのである。
 また、伊江島では一六年八月に始まった米軍伊江島補助飛行場(?)での強襲揚陸艦の甲板を模した着陸帯=LHDデッキの拡張工事が完了し、F35Bの離発着訓練が開始され、MV22オスプレイによるパラシュート降下訓練が米軍や防衛局からの事前通知もなしに強行されているのである。夜間の訓練も増え訓練提供施設では民間住宅上空を低空飛行するなど、まったく住民を無視した訓練が行われているのである。
 島嶼防衛と中国の海洋進出阻止をかかげた南西諸島への自衛隊配備が強行されている。さらに一七年には国内全八九の民間空港に計三二四回米軍機が離発着している。特に、福岡空港では九四回で二年連続で全国最多となっている。福岡空港は民間空港では唯一米軍専用区域が存在し、米軍施設として「板付飛行場」となっている。朝鮮戦争当時、岩国基地とならんで出撃拠点として機能した福岡空港は、「九州の輸送総拠点。返還は困難」として米軍は、福岡市などの返還要求を拒否し続けている。「専用区域があれば(緊急事態などの)理由なく、空港を離着陸できる」ことから九州の自衛隊基地の強化と合わせて維持、活用の余地を保持しているのである。
 このように米軍再編にともなう自衛隊基地の再編・強化は九州、沖縄を中心に今後、全国の民間空港の利用も射程に入れて、まさに「全土基地化」として目論まれている。全国の米軍、自衛隊基地に反対する地元住民との連帯を強化し、反戦・反基地闘争の全国的結合を強め自衛隊の実践部隊化、戦争出撃を阻止していこうではないか。


 

 

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