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   ■7・21参議院選の結果と日本階級闘争の課題

                              高城誠一


 

 七月二一日の参議院選挙は、日本社会における貧困と格差の拡大、深まる階級矛盾のもとでの選挙であった。欧米諸国の選挙ではこの数年、多くの国でこれまでの支配政党であった中道右派政党・中道左派政党の主流派が後退し、左右両極への分解が進行してきた。その根拠は、新自由主義政策のもとでこれまで中道右派・中道左派の基盤であった中間層が分解してきたことにあり、欧米諸国における趨勢となってきた。近年の日本社会もまた、貧困と格差の拡大、階級矛盾の深まりという点では、欧米諸国と共通する事態が進行してきた。しかし、日本においては左右両極への分解は欧米諸国と同じような形では顕在化してこなかった。中道右派的性格が強かった自民党は、第二次安倍政権の成立を転機として右翼政党へと変貌したが、それに対抗する左派勢力が欧米のようには形成されず、次の激動に至る過渡期と言える状況にある。参議院選挙を通して、この過渡期における状況を分析し、階級闘争の課題を整理していきたい。

 ●1章 参議院選挙の結果をどう捉えるのか

 自民党は参議院選挙の公約として安保・外交問題をおしだし、憲法改定に向けた議論の推進を掲げた。また経済・社会の領域では、アベノミクスの継続と「生産性革命」「働き方改革」を掲げ、消費税の10%への増税による「全世代型社会保障」の実現などを主張した。これに対して、立憲民主党・国民民主党・日本共産党・社民党などの野党は三二の一人区で候補者を一本化し、野党共闘をもって対抗しようとした。また、山本太郎が立ち上げたれいわ新選組、NHKから国民を守る党などが参議院選挙に参加した。
 参議院選挙の投票率は、史上二番目の低さの48・8%であった。実に有権者の過半数が棄権したということだ。棄権=政権批判・政治不信と一概に見ることはできない。政治の現状を肯定していて投票に行かない、安倍政権に対する魅力的な対抗勢力が無いなど、さまざまな要素の結果であろう。
 参議院選挙の結果の特徴は、第一に自公両党で改選数一二四議席の過半数を超える七一議席を獲得し、安倍政権が維持されたことにある。これほど貧困と格差が拡大し、階級矛盾が深まっているにもかかわらず安倍政権への支持はいまだ根強い。自己責任論が浸透し、貧困と格差に苦しむ労働者であってもなかなか政権批判に向かわず、「就職氷河期」をもたらしたような最悪の状況には戻りたくないという意識から安倍政権を支持する層が存在していること。また、「北朝鮮や中国の脅威」を強調する排外主義煽動の浸透、徴用工裁判や日本軍「慰安婦」制度問題をめぐる反韓意識の拡大などが、安倍政権の支持基盤となってきたことも明らかである。そして、二〇歳代・三〇歳代の若者層において、自民党がなお相対的に高い支持率を維持していることがあらためて示された。
 他方で、自民党は前回(二〇一六年)参議院選挙とくらべて六七議席から五七議席へと一〇議席減らし、政党の力が直接反映する比例区では得票数で約二五〇万票、得票率で2・83%減らした。公明党は一一議席から一四議席へと三議席増やしたが、比例区では約百万票、得票率で0・47%減らした。その結果、自民党は選挙区において公明党による全面的な支援をうけたにもかかわらず、比例区での全有権者に対する絶対得票率は約17%にとどまり、全改選議席の単独過半数、参議院での単独過半数を割り込んだ。安倍政権は維持されたが、それは自民党の勝利と言えるものではなかった。その背景には、安倍政権を支えてきた自公共闘の揺らぎがある。沖縄での自公共闘候補の連敗、安倍の改憲へののめりこみと強硬な対外政策に対して、公明党の支持基盤である創価学会内での離反が進行してきた。安倍政権の基盤は、確実に弱化してきている。
 第二には、改憲勢力による参議院の三分の二の議席の獲得をいったん阻止したことである。参議院において改憲勢力の非改選議席は七九議席(自民五六、公明一四、維新六、無所属三)で、三分の二を超えるには今回の選挙で八五議席の獲得が必要であったが八一議席にとどまった。公明党が三議席増、維新の会が三議席増で大阪の地域政党から全国政党化する足掛かりを築いたが、三分の二には四議席足らなった。自民党が一〇議席減らしたことがその理由であった。まさにギリギリのところで三分の二が阻止されている状況にある。
 第三に、野党共闘の意義と限界についてである。今回、立憲民主党・国民民主党・日本共産党・社民党の野党は三二の一人区すべてで野党共闘を行った。結果は、一〇勝二二敗で、ほぼ前回の参議院選挙(一一勝二一敗)なみであった。現在の野党の力量では、一人区では野党候補を一本化しなければ勝負にならない。しかし、候補者を一本化したとしても必ずしも勝てるわけではない。野党共闘が勝利したのは、沖縄、大分、愛媛、滋賀、長野、新潟、山形、秋田、宮城、岩手の一〇選挙区であった。
 これらの選挙区の多くは、大きな地域的な争点や安倍の国策に反対する大衆運動が存在する地域であった。沖縄ではわれわれも支援した高良鉄美氏が二九万八八三一票を獲得し、自民党公認の安里繁信氏に約六万四千票の大差をつけて圧勝した。「オール沖縄」勢力は昨年から県知事選挙・衆議院沖縄三区補選、沖縄県民投票、参議院選挙と四連勝し、辺野古新基地建設反対という圧倒的な民意をあらためて示した。
 さらに特筆すべきは秋田である。秋田は前回の参議院選挙で東北六県において自民党が唯一勝利した県で、今回も公示前は自民党が有利とされてきた県である。しかし、イージス・アショア配備計画がこの状況を大きく突き動かした。防衛省によるデータの捏造や謝罪・説明会における防衛省職員の居眠りなどの事態によって県民の怒りが急速に広がっていき、イージス・アショア配備に反対する野党候補が劇的な逆転勝利を実現した。
 また、今回も自民党は東北六県で二勝四敗と負け越したが、それはTPPによる農産物輸入自由化、日米貿易交渉における参議院選挙後に先送りされた農産物輸入の大幅な自由化という国策の結果であった。政府は、すでにアメリカに対して農産物二五九四品目中の二一三五品目の関税撤廃を約束し、米・麦・牛肉・豚肉・乳製品などの重要品目についても関税引き下げ、輸入特別枠の設定など自由化をはかろうとしている。そのもとで、自民党に対する農民の不信はますます広がってきている。
 前回の参議院選挙以降、野党共闘は各地における総がかり行動との結びつきを強めてきた。また、安倍改憲阻止や沖縄での「オール沖縄」の闘いを背景に辺野古新基地建設中止を掲げるなど内容的にも前進し、改憲勢力による三分の二の議席の確保を阻止することができた。
 しかし、野党共闘の一〇勝二二敗という全体の結果は、現在の野党共闘の限界を示すものでもある。野党共闘は、すべての一人区で共闘を行ったがそれは政党間の調整による候補者の一本化にとどまり、統一候補の擁立からはかけ離れたものであった。また、統一公約についても作成できず、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」の野党への一三項目の要望書を受け、各党の党首がその実現のために努力することを確認するという形にしかならなかった。そして、政権構想を提起することもできず、一人区の多くでの候補者の一本化は、告示日の直前にまでずれこんだ。これらは労働者人民にとって野党共闘の安倍政権打倒に向けた本気度を疑わせるものであった。
 しかし、最大の問題はこのような選挙共闘体制の脆弱さだけにあるのではなく、市民連合の要望書にしても各政党の公約にしても、自公政権に対する明確な左派勢力としての対抗軸を提起するものではなく、民衆を引きつけるものとなっていなかったことにある。
 その主要な責任は、野党第一党の立憲民主党にある。立憲民主党は辺野古新基地建設中止を掲げたが、日米同盟を安保・外交政策の基軸にし、自衛隊を合憲と規定した上で専守防衛を主張するなど、安保・外交政策の根本的な転換とはほど遠いものであった。また、消費税についても消費税廃止ではなく、増税の凍結にとどまった。そして、朝鮮半島・東アジアの平和をめぐってはほとんど沈黙し、韓国への経済制裁の発動に対してはそれを容認するような態度を取ってきた。このような態度では、安倍の排外主義煽動にとうてい対抗することはできない。立憲民主党は、改選九議席から一七議席へと伸長したが、「枝野立て!」のコールが叫ばれた前回衆議院選挙時の勢いをほとんど失った。
 日本共産党は、一人区における候補者を最終的には率先して辞退させ、野党共闘による候補者の一本化に協力した。それは野党共闘の推進を願う人々からは評価された。しかし、共産党は選挙区では京都・東京・埼玉で議席を確保したが、比例区では前回の参議院選挙とくらべて約六〇〇万票から約四五〇万票へと一五〇万票減らし、得票率でも10・74%から8・95%へと後退した。注目すべきことは、共産党の志位委員長が野党連立政権に参画する意思を表明し、その場合には日米安保破棄・自衛隊違憲という立場を封印することを表明したことである。それはかつての村山連立政権の誕生にあたって社会党(現社民党)が日米安保容認・自衛隊合憲へと大転向したことを想起させるものであり、これまでの共産党の支持層の離反を生み出したと推測できる。また、共産党およびその支持層の高齢化の影響も進行していると言える。
 社民党は、比例区において前回の参議院選挙の約一五〇万票から約一〇〇万票(一議席)へとさらに票数を減らしたが、かろうじて2・09%の得票率となり政党要件を維持した。沖縄から比例区に立候補した仲村みお氏や大阪の左派労働運動から比例区に立候補した大椿裕子氏は奮闘したが、党勢の後退はおしとどめようもなく、政党要件を失う瀬戸際にある。
 この野党共闘は、全体として見れば資本主義の枠内での行き過ぎた新自由主義政策の是正、消費税の廃止ではなく増税の凍結、日米安保の枠内での基地負担の軽減、自衛隊合憲論を前提とした専守防衛、原発ゼロを将来目標として掲げつつ原発再稼働反対を掲げられないなど、左右の幅はあってもリベラル派と言えるものである。われわれは、国会内での安倍政権に対する抵抗勢力を維持することの必要性から、運動の現場では野党共闘の形成を一定支持してきた。しかし、欧米諸国において顕著に示されているように、このような中途半端な中道リベラル勢力は現状の根本的な変革の希望を提起していくことができず、各国で後退してきている。問われているのは、安倍政権に対する明確な対抗軸を持ち、対抗していくことができるような左派勢力の形成なのである。

 ●2章 れいわ新選組の躍進について

 このような中で、参議院選挙の直前に山本太郎候補が設立したれいわ新選組が比例区において約二二八万票(得票率4・55%/二議席)を獲得し、比例特定枠を活用して難病の筋萎縮性側索硬化症の舩後靖彦と重度身体障害者の木村英子氏とを当選させた。今回の参議院選挙において、れいわ新選組が野党共闘や既存の野党にあきたらない層の受け皿となったことは明らかである。山本太郎は次の総選挙には一〇〇人を立候補させ、政権をめざすと公言している。れいわ新選組をどのように評価するのか、またそこに安倍政権と対抗する左派勢力の形成を期待できるのか。参議院選挙総括の重要なポイントと言える。
 れいわ新選組は、「自己責任論」を強く批判して、次のような選挙公約を掲げた。①消費税の廃止、②安い公営住宅の建設、③奨学金徳政令、④全国一律最低賃金一五〇〇円を政府の保障で実現、⑤公務員の増員、⑥一次産業への個別所得補償、⑦一人ずつへの月三万円の支給、⑧財源としての新規国債の発行、法人税への累進性の導入、⑨真の独立国家をめざす、日米地位協定の改定、普天間即時運用中止、辺野古新基地建設中止、これまでの米軍の駐留経費と同額を日本側で負担することを前提に米政府と交渉、⑩「トンデモ法」の一括見直し・廃止、⑪原発即時禁止・エネルギーの主力は火力へ、⑫障がい者への合理的配慮、⑬DV・虐待のない社会の実現などである。これらの選挙公約は玉石混淆で、整合性のとれていないものもある。しかし、この公約は野党共闘や既存の野党とくらべて、相対的に新自由主義に徹底して対抗していくという内容をはらんでおり、貧困化し生きづらいと感じている人々の共感を得やすいものであった。このようなれいわ新選組が躍進したことは、現社会のより徹底した変革を願う人々が決して少なくないことを示した。
 これらの選挙公約の重点は、欧米の伸長する左派勢力と共通する反緊縮政策、消費税廃止などの減税と累進税の強化、財政出動によって景気を引き上げ、国家による富の再分配を実現することに置かれている。しかし、そのような国家による富の再分配が、進行する貧困や格差の拡大に対する根本的な解決策になるわけではない。拡大する貧困や生きづらさは、非正規雇用の急速な増大や労働者の分断などの新自由主義政策の結果であり、資本主義というシステムそのものが生みだしてきたものである。れいわ新選組には、反資本主義という視点が存在していない。
 このことは、現社会の変革の主体と原動力を何に求めるのかということと関連していく。われわれは、変革の主体はプロレタリアート、すなわち労働者階級と被抑圧人民・被差別大衆であり、変革の原動力はこれらのプロレタリアートの階級闘争だと確信してきた。しかし、れいわ新選組にとって、変革の主体は富を再分配する国家であり、原動力は議会選挙によって多数をとって国家を掌握することにある。プロレタリアートの階級闘争や階級的団結を形成することはその視野の中には無い。このような政党は、国家主義に傾斜し、ポピュリズム(大衆迎合主義)的性格を持つ危険性がある。その政党がポピュリズム政党であるかどうかは、個々の政策の問題ではなく、プロレタリアートの階級闘争や階級的団結の推進を措定しているかどうかにある。れいわ新選組の躍進とは、日本における階級矛盾の深まりの反映であるとともに、議会選挙に対応できていないことをも含めてプロレタリアートの階級闘争と階級的団結を推進する左派勢力の弱さの結果でもあるのだ。
 れいわ新選組について、さらに以下の点を指摘しておきたい。れいわ新選組は、その安保・外交政策を体系的に提示していないが、日米安保の廃棄を掲げず、日米同盟を維持することを前提としている。これまでの米軍の駐留経費と同額を日本側で負担することを前提に米政府と交渉するという選挙公約は、そのことを示すものである。米軍基地の撤去は、日米安保条約の廃棄を通告すれば無条件で実現できることであって、日米同盟を維持するという立場に立たなければ駐留経費と同額を負担する必要などないのだ。
 また、れいわ新選組の天皇制に対するスタンスも、きわめて危うい。そもそも天皇が時間をも支配するという元号に対する批判を欠落し、「れいわ」を政党名とすることなど論外のことである。二〇一三年一〇月、山本太郎は福島原発事故との関係で、労働者や子供を被曝から救ってほしいという趣旨の天皇への直訴を行おうとした。このような行為が憲法で禁止された天皇の政治利用にあたることは言うまでもない。そして、天皇の権威を利用して政治を規定しようという発想は、戦前の血盟団などの天皇主義右翼と一脈通じる危険な発想となりかねないものである。れいわ新選組が、日本における本格的な左派ポピュリズム政党に成長するかどうかはわからないが、注視していかねばならない。

 ●3章 改憲阻止―安倍政権打倒の大闘争へ

 参議院選挙の翌日の七月二二日、安倍は記者会見においてあらためて憲法改悪に向けた決意を明らかにした。安倍は、自公が改選過半数を獲得したことをもって、「少なくとも(改憲についての)議論を行うべきだ。それが国民の審判だ」と述べ、与野党に幅広い改憲論議を呼びかけ、改憲発議に向けて「衆参両院の第一党として強いリーダーシップを発揮する決意だ」と宣言した。安倍の自民党総裁としての任期は二〇二一年九月まで、そして現衆議院議員の任期は二〇二一年一〇月までである。総選挙がいつ行われるかは予測できないが、安倍の任期中に改憲のための国民投票を実施するためには二〇二一年の通常国会が改憲発議のタイムリミットになる。
 安倍にとって改憲発議に向けた第一のハードルは、改憲勢力の参議院における三分の二の議席を回復し、衆議院における三分の二の議席を維持することにある。安倍は、「国民民主党の中には(改憲について)議論すべきだと考える方々がたくさんいる」と述べ、国民民主党またはその一部を改憲勢力へと切り崩していく意図を明らかにした。これに呼応するかのように、国民民主党の玉木代表は七月二五日、「私、生まれ変わりました。われわれも改憲議論は進めるし、安倍晋三首相にもぶつける」と述べ、「最終的には党首と党首として話をさせてもらいたい」と踏み込んだ。国民民主党が憲法審査会での改憲案の議論に引き込まれ、改憲勢力へと切り崩されていく可能性は大きい。国民民主党の支持基盤は連合内の民間大労組であり、安倍の四項目の改憲案を容認する議員も少なくない。また、国民民主党内には改憲勢力の日本維新の会との統一会派結成を要求する声まで存在している。国民民主党またはその一部を改憲勢力へと切り崩せたならば、安倍は憲法審査会での改憲案の議論を推進し、改憲発議の強行へと向かうであろう。
 安倍にとっての第二のハードルは、具体的な改憲案についての合意を改憲勢力内で形成することにある。安倍は前述の記者会見において、「与野党の枠を超えて三分の二の賛同を得られる案を練り上げたい」と述べた。すなわち、改憲勢力の衆参両院での三分の二の形成を優先させ、必ずしも安倍の四項目改憲案にはこだわらないという表明であった。そもそも安倍の四項目改憲案は、安倍にとって公明党の合意を得るための妥協であったが、国民民主党を改憲勢力へと切り崩していくために安倍はさらに妥協することも厭わない構えである。しかし、自民党は国防軍の創設や天皇の元首化などを盛り込んだ、二〇一二年の「自民党改憲草案」を撤回していない。安倍は改憲勢力内での合意が可能な改憲案を作成することを優先し、そこから憲法改悪の突破口をつくろうとしているが、その最終目標はあくまでも「自民党改憲草案」の実現にある。
 以上から明らかなように、改憲勢力が参議院の三分の二を割り込んだにもかかわらず、改憲への動きが停止したわけではまったくない。国民民主党からわずか数人の議員が改憲派に移行するだけで、改憲勢力は三分の二の議席を衆参両院で確保する。この局面において、国会内での野党の抵抗によって憲法審査会での論議を引き延ばしているだけでは改憲阻止の展望は切りひらけない。
 改憲阻止に向けた闘いの基軸は、第一に改憲阻止・安倍政権打倒に向けた全人民的政治闘争を全力で推進することにある。首相官邸・国会を包囲する数十万、数百万の労働者人民の決起、各地方での広範な決起がなければ安倍政権による改憲発議を阻止し、安倍政権を打倒することはできない。議会内の安倍改憲に反対する抵抗勢力が後退する可能性もあるなかで、ますますこのことが問われている。街頭における直接民主主義の復権、この基礎の上にしか闘いの展望はありえない。
 現在の選挙制度のもとでは、衆議院であれ参議院であれ、小選挙区(一人区)では野党の選挙共闘は避けられない。われわれは、そのような立場から野党共闘を支持し、条件のある地方では野党共闘を推進しようとする努力に関与してきた。ここにおいて重要なことは、野党の選挙共闘に労働者人民の直接民主主義にもとづく闘いを従属させてはならないということである。野党共闘の枠を越えて、全人民的政治闘争の発展を切りひらいていくことこそ重大な課題なのだ。
 闘いの基軸の第二は、改憲阻止・安倍政権打倒に向けた闘いの全人民性を発展させていくことにある。安倍改憲阻止の一点での共闘では、広範な労働者人民の変革を求めるエネルギーを総結集させることはできない。韓国の「ろうそく革命」が「積弊清算」を掲げてさまざまな民衆の変革への願いを結集させ、朴槿恵(パククネ)政権打倒を結節点として民衆の闘いが大合流していったことに学ばねばならない。改憲阻止・安倍政権打倒を結節点として現社会の根本的変革に向けて民衆のさまざまな闘いの大合流をつくりだすことである。そのことは、闘いの中における民主主義の再建と一体の課題だと言える。改憲阻止・安倍政権打倒に向けて闘うすべての労働組合・市民団体・活動家組織・個人に開かれた、全人民的政治闘争のための統一戦線が全国・各地方において形成されねばならない。そのような協議と決定の場がつくられていかねば、全国・各地方を貫いた全人民的政治闘争の発展をつくりだしていくことはできない。
 闘いの基軸の第三は、反帝国際主義にもとづく排外主義との闘いをおし広げ、左派勢力が中心となって闘いをけん引するための左派共闘を建設していくことにある。現在の改憲阻止・安倍政権打倒に向けた全人民的政治闘争の大きな限界は、排外主義との闘いの弱さにある。「中国・北朝鮮脅威論」の浸透だけではない。FNNの世論調査(八月五日)では韓国への経済制裁の発動をめぐって、67・6%が安倍政権の対応を支持、不支持は19・4%にとどまった。安倍政権への不支持層においても、55・2%が安倍政権の対応を支持している。それは、立憲民主党など主要な野党が韓国への経済制裁を容認しているという現状の結果でもある。れいわ新選組は経済制裁に反対しているが、その主理由は韓国が日本にとって約六兆円の輸出先であり、それを失うことはまずいという国益論からである。
 このような排外主義の浸透、反韓・嫌韓意識の拡大に抗して、反帝国際主義をもって全人民的政治闘争を変革していくことが問われている。さまざまな闘いのなかに排外主義との対決を持ち込み、躊躇することなく論戦を組織し、国際主義に立脚した闘いへと変革していかねばならない。そして、現社会の根本的変革に向けて労働者階級と被抑圧人民・被差別大衆の団結を発展させ、全国・各地方において新たな階級闘争構造を建設していかねばならない。すでに述べたように、参議院選挙におけるれいわ新選組の躍進は、日本における階級矛盾の深まりの反映であるとともに、階級闘争の推進をもって安倍政権を打倒しようとする左派勢力の弱さの結果でもある。このような現状を変革し、反帝国際主義派を中心とした左派勢力が闘いをけん引していくために奮闘していかねばならない。

 

 

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