共産主義者同盟(統一委員会)






■政治主張

■各地の闘争

■海外情報

■声明・論評

■主要論文

■綱領・規約

■ENGLISH

■リンク

 

□ホームへ

  
   ■辺野古新基地建設と米軍再編・自衛隊強化

                          島貫結太郎


 ●はじめに

 安倍右翼反動政権は、頓挫している辺野古新基地建設工事強行に向け、軟弱地盤の改良工事に踏み込もうとしている。安倍政権は司法権力も建設土木業界も総動員して、本来つくれないものを形だけでも乗り越えていこうとしているのだ。
 一方、辺野古新基地建設と一体にして、米軍再編と自衛隊基地新設で機能強化・訓練強化をおこない沖縄を日米共同反革命の新たな最前線基地へ変貌させようとしている。
 辺野古新基地建設と自衛隊強化を粉砕する闘いを推し進めていくことが決定的に重要だ。この現状を捉えぬき、憲法改悪阻止・安倍政権打倒闘争の重要な環として沖縄解放闘争を闘おう。

 ●1 辺野古新基地建設阻止闘争

 ▼1―1 安倍政権に追従する反動判決


 沖縄「県」が訴えた「関与取り消し」訴訟において、福岡高裁那覇支部は一〇月二三日に却下判決を下した。門前払いの予想を超えた反動判決である。
 玉城デニー沖縄「県」知事は判決後のコメントで、第一に、公有水面埋立法において、国は一般私人とは異なる「固有の資格」において承認を受けており、沖縄防衛局長による審査請求は違法であること、第二に、国交相は、沖縄防衛局長による審査請求における審査庁ではないため、裁決もまた違法であること、第三に、国交相は、審査請求における中立な第三者としての審査庁たりえないこと、などを主張したことをあらためて述べた。
 それに対して、判決理由は、①地方自治法の規定で不服審査請求による裁決は、訴訟の対象となる「国の関与」ではない、②国を行政不服審査法の請求者である一般私人と同様の立場と認める、③埋め立て承認撤回処分を下した謝花副知事は沖縄県知事を承継しているので「都道府県知事の処分」として国交相への審査請求となる、④「裁決」に当たらないほど、国はその権限・立場を著しく濫用していない、⑤以上から、「国の関与」に当たらず、法律の規定に合わない、として訴えを却下したのである。
 そもそも、裁判所が①を理由として審理を避け門前払いの却下判決が予想されていた。一〇月一八日に開かれた第一回口頭弁論では、沖縄「県」知事が意見陳述し、それ以外の証人申請などをすべて却下し、いきなり結審していた。事実審理をせず、沖縄「県」が提訴前に審査請求した国地方係争処理委員会の決定を踏襲し、国の審査請求を一般私人と同じ、国交相による取り消し処分を認めるなど、国の無謀なやり方に司法権力の側からお墨付きを与える役割を担ったのである。国家権力を脅かすことに対してはブルジョア民主主義すらかなぐり捨て報国翼賛体制へと突き進む、安倍右翼反動政権の本性そのものである。
 沖縄「県」は即日上告しており、今年中にも最高裁での判断が出てくると言われている。
 また同時に、沖縄「県」は抗告訴訟を起こし、一一月二六日に第一回口頭弁論が開かれる。「関与取り消し」訴訟の内容に加え、埋め立て承認を撤回した理由の正当性=埋め立て工事の違法性と沖縄知事選や沖縄県民投票の結果から支持を受けて撤回していることを主張している。とくに、これまで審理が避けられてきた埋め立て承認撤回についての事実審理に踏みこませようとしているのだ。審理をしていくならば長くかかると言われているが、関与取り消し訴訟と同じように事実審理を避ける可能性はある(一一月二〇日現在)。

 ▼1―2 大浦湾側の埋め立て強行阻止へ

 安倍右翼反動政権は、来年にも辺野古新基地建設の主だった埋め立て予定地である大浦湾側の埋め立てに突入しようとしている。
 この間、ひた隠しにしてきた軟弱地盤が追及され、軟弱地盤の改良工事の設計変更を沖縄「県」から承認を得ないと埋め立て工事は進めない状況に陥っていた。そこで、政府・防衛省が有識者による「技術検討会」なるものを始めた。
 九月六日の初会合で明るみとなったことは、出席者の半数が政府関係者で、環境専門家はおらず、土木工事専門家だけだった。委員長自身が、ケーソン工事を受注している子会社の取締り役を担っているのだ。会合自体も、建設計画そのものへの反対意見がないことが確認され、わざわざ長時間にわたって各委員から発言させたのだ。まさに環境影響を無視し改良工事が出来ることだけを内外に示すことで、設計変更申請にお墨付きを与える「検討」会だ。
 そのような翼賛会議であありながら、「下がしっかりしていないと舗装はもたない」「(供用期間)五〇年の間に何回もメンテナンスをする必要が出てくる」「エプロン(駐機場)の下に軟弱地盤がたまっており、沈下が起きる可能性がある」と複数の委員が指摘していたことが議事録から明らかになっている。さらに、辺野古の土が関空や羽田空港と違ってサンゴが混じった破砕性のある「この地域の特殊な土」であるため、沈下量がより大きくなると述べた委員もいた。この軟弱地盤の調査自体に都合の良いデータだけを採用しているように、いくら委員が指摘しても、結局は「改良工事は可能」と結論づけることは明らかだ。高江ヘリパッド建設工事と同じように、どんな問題があろうと工事の手順を次へ次へと進め「完成させた」を強行する、つくってしまえば後でどうにかなる、というデタラメなやり方で突き進んでいるのだ。
 この間もダンプ・トラックに積んでいる土砂の量が減っていることがドローンで暴露された。土砂の量を量らずに台数で計算しているのではないかと追及されている。その他にも、毎回の着岸、離岸のたびに必要な岸壁使用許可申請を一ヵ月単位で出していること、琉球セメント安和桟橋の目的外使用、使用している安和の旧桟橋の老朽化、と辺野古新基地に反対する多くの人民大衆の包囲網で次々と問題点が指摘されている。
 沖縄人民は現地闘争を軸にオール沖縄で沖縄「県」を支え、闘いぬいている。辺野古ゲート前、安和桟橋、本部港での座り込み、安和桟橋での海上搬送に対する海上行動と、日々粘り強く展開している。絶え間なく、全国から、全世界から支援が駆けつけている。工事を止めさせるために違法な工事を徹底追及し、工事の強行と警察の介入に対しては体を張ってたたかっている。一二月三日には海上大行動がおこなわれる。
 「本土」においても、現地闘争への結集を軸に各地で、職場で、あらゆるやり方を駆使してアピールし、支持・支援を拡大している。この間、国会包囲などの大規模行動を主催してきている「止めよう!辺野古埋立て」国会包囲実行委員会は、抗告訴訟に対して、裁判所へ実質審理を求める団体署名とハガキ運動を呼びかけてきた。
 一一月現在、座り込みでの監視では今までに運ばれた土砂の総量が埋め立て全体土量の1・4%にすぎないと報告されている。沖縄防衛局の当初の埋立承認願書では、辺野古側の埋め立ては六ヵ月で終了するとしていたが、埋め立て開始から一〇ヵ月経過している。
 一一月に入って、本部港(塩川地区)の沖合には土砂運搬船がずらりと待機している様子も見られた。以前にはなかった土曜日の土砂搬送も強行されるようになった。防衛局は遅れを取り戻そうと、土砂搬送に躍起になっている。来年にもおこなう設計変更申請―軟弱地盤の改良工事の強行へと突き進もうとしているのだ。
オール沖縄とともに全国の結集で埋め立てを阻止しよう。

 ●2 基地強化と沖縄人民の闘い

 辺野古新基地建設は、粘り強い沖縄人民の闘いをはじめ全国、全世界の支援を受けて遅々として進めない状況にある。
 しかし一方、日米両政府は米軍再編―自衛隊強化を辺野古新基地建設とリンクさせて進めてきている。

 ▼2―1 伊江島の基地機能強化

 伊江島では昨年完成させた強襲揚陸艦の甲板を模した着陸帯「LHDデッキ」を使用した最新鋭ステルス戦闘機F35Bの訓練が増え、騒音被害が激化している。
 今年の六月二四日には米海兵隊の第31海兵遠征隊(MEU)が最新鋭の高機動ロケット砲システム(HIMARS)を展開する訓練を伊江島補助飛行場など沖縄で初めて実施していた。HIMARSシステムとは、敵船を沈没させたり、地上目標を破壊したりするために極めて重要な訓練だという。米の新戦闘構想「遠征前方基地作戦(EABO)」に基づくもので、前方展開拠点として沖縄の基地の機能が強化されている。EABOは、遠隔地に給油地点や、海空戦力の基盤となる前方基地を一時的に確保し、攻撃拠点とする開発中のアジア戦略構想。
 訓練の実態はわからないが、三月一一日から一四日まで試験的に実施された訓練では飛行場を奪取して燃料補給地点を確保し、ロケット砲を展開して攻撃拠点を確保するとの想定。31MEUや空軍の第353特殊作戦部隊と海兵隊第一大隊、第一特殊部隊などが参加し、パラシュート降下訓練も実施した。最新鋭ステルス戦闘機F35Bや垂直離着陸型輸送機MV22オスプレイ、空中給油機KC130なども参加。輸送機C130が米空軍嘉手納基地からHIMARSを伊江島まで輸送して、目標を破壊するために展開する訓練が実施された。
 米海兵隊は、二〇一七年に北海道で行われた陸上自衛隊との日米共同演習でHIMARSを導入。今後、米海兵隊と自衛隊が沖縄周辺で共同演習を実施する可能性もある。

 ▼2―2 パラシュート降下訓練の強行

 米軍のパラシュート降下訓練が嘉手納基地で常態化している。
 嘉手納基地では一〇月二九日、約三千メートルの高度から二〇人以上の兵士が降下した。日米特別行動委員会(SACO)合意後、最多となる年間四回目の訓練だ。
 そもそも降下訓練の基本合意は、一九九六年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告で伊江島補助飛行場に集約するというものだ。だが、条件が整いにくい上、兵士が二日連続で基地外に着地するなど問題が多い。
 海に囲まれた伊江島での訓練は、兵士が風に流されて地上の目標地点から外れ海上に着水した場合を想定し、救助艇を配置する。訓練できるかどうかは気象、海象に左右される。滞ると兵士は練度を維持できないのだ。
 こうした状況から日米合同委は、〇七年に例外規定を合意した。例外規定とは「自然条件などの制約によって伊江島補助飛行場の使用が困難な例外的場合、定期的でない小規模の訓練は嘉手納基地を使用できる」としたもので、そもそもが米軍のための抜け穴だ。この例外規定は地元の理解も得ず、説明すらされない「密約」だった。国会での審議も経ていない。日本政府が遺憾を表明しても、在日米軍司令部が「嘉手納での訓練は日米で合意している」とツイッターで発表したように、米軍に都合良く利用されている。
 最近も米軍は嘉手納基地での降下訓練の前に、伊江島で降下訓練を実施した。その際に兵士二人が提供区域を外れ伊江島空港や田畑に落下。一〇月三〇日も同空港の敷地内に兵士一人が落下する事故があった。住民は不安を募らせている。
 伊江島は前記のように機能強化され、一段と大規模で激しい訓練が頻繁におこなわれている。伊江島だろうが嘉手納基地だろうが、米軍の都合に応じて使おうとしていることは明らかだ。日本政府は、これを止めさせようとしていないのだ。
 九月一七日、在沖米海兵隊は伊江島でのパラシュート降下訓練に使う大型の救助用ゴムボートを本部港から出港させようとした。しかし、反対する市民と全港湾沖縄地方本部の港湾労働者ら一〇〇名がゲート前で一〇時間におよび抗議して港内への搬入を阻止した。この民間港の使用に対して、沖縄「県」は米海兵隊と日本政府に申し入れた。しかし、河野防衛相は、「このボートがあれば、今まで以上に嘉手納ではやらず伊江島でやることができる」と強調。沖縄防衛局も「米軍艦船は地位協定で日本の港湾の出入りが認められている」として、自粛は申し入れていない。またもや住民を命と生活を守らない軍事優先の日本政府の姿に、沖縄人民は怒りをあらわにしている。

 ▼2―3 基地強化=被害拡大を追及する反戦地主

 米軍機による深夜早朝の激しい爆音、悪臭や環境汚染問題など、嘉手納基地周辺住民は厳しい環境下での生活を余儀なくされている。
 また、沖縄市字大工廻・白川あたりに大規模な「知花工業団地」を新設することが明るみに出てきた。二〇一三年四月に合意した、いわゆる「嘉手納以南の返還」で、そのなかの牧港補給基地(キャンプ・キンザー)やキャンプ瑞慶覧(キャンプ・フォスター)の返還に伴って、嘉手納弾薬庫の敷地内に倉庫群などを「移設」という名目で新設をするということだ。すでにその一帯の黙認耕作地へ立ち入ることが禁止され、農作業ができなくなってしまっている。
 このように沖縄では米軍再編による新たな基地建設・機能強化が進められ、基地被害が増えている現実に対し、米軍の横暴と日本政府の対応に一番ビビットに抗議しているのが反戦地主であり、契約拒否地主だ。
 一〇月に結審した、主だった反戦地主を対象とした新たな強制使用手続きの公開審理では、自らの土地で脅かされている権利と財産について政府・沖縄防衛局を追及してきた。
 「日米同盟はアジア太平洋地域、さらには世界全体の安定と繁栄のための公共財として機能している」との裁決申請等理由に対して、嘉手納基地の地主であり反戦地主会会長の照屋秀伝さんは、日米安保体制が日本の安全および平和の維持に寄与しているというのなら、それは沖縄の平和と安全の維持にも寄与しているという趣旨か、沖縄にも平和と安全があるということかという主旨の求釈明した。
 伊江島の平安山良尚さんは、(LHDデッキの完成によって)オスプレイによる騒音被害、家畜も流産をする、早産をする、というようなことなどが起きています。それで、そのオスプレイの後に、またF35が訓練されていると。それも本当に最新鋭の訓練をするというような状況で、本当にもう私たちはどこに怒りをぶつけていいのかわからないんですよ」と意見陳述した。
 また、新たな契約拒否地主が続出しており、それぞれ公開審理の場で意見を述べている。この新たな契約拒否地主が続出しているのは、少なくとも権利と財産が侵害されていることへの不満・怒りの表れであり、今や主張しようという地主が増えているということだ。
 これに対して、公開審理を開いて使用期間や損失補償金の裁決をおこなう沖縄「県」収用委員会は、今回、反戦地主との事前協議をほとんどおこなっていなかった。一坪反戦地主を対象とした公開審理を分離し始めた。新たな契約拒否地主にも「時間がない」ことを名目に一人一回の公開審理で終わらせている。現状は、使用期間が切れ「暫定使用」で強制使用し続け、それから公開審理を始めている事態におちいっており、地主一人一人への対応も丁寧にしなくなって、破綻しているのだ。
 反戦地主の闘いは、今もって沖縄の米軍基地の存在=日米軍事同盟の根幹を脅かし、その現実を暴露し追及している。反戦地主の闘いが新たな契約拒否地主を生み出し、辺野古新基地建設阻止闘争をはじめ沖縄の反戦・反基地闘争につながっているのだ。反戦地主とともに米軍基地撤去―安保粉砕の闘いに邁進しよう。

 ●3 米軍再編強化と一体の自衛隊配備

 在沖米軍基地の再編は、質量とも「沖縄の負担軽減」にはまったくなっていない。沖縄が日米同盟による新たな最前線基地として生まれ変わってきていることをさらけ出している。
 この間政府は、米軍再編にともない、すでに米軍が使用しておらず、今後利用しない部分を返還することで、全国の米軍基地における沖縄での占有率が75%から70%になったことを宣伝している。しかし、北部訓練場の大幅な返還としながらの高江ヘリパッド建設、前述した嘉手納以南の基地返還においても、牧港補給基地から嘉手納弾薬庫敷地内の新たな巨大倉庫群への移設、那覇軍港から浦添新軍港への移設、つまり、機能強化された新たな基地として次々とつくりかえているのだ。さらに、伊江島をはじめとした新たな機能に応じた実戦訓練も凄まじく、被害も拡大している。
 そして、それと一体的に与那国から奄美まで琉球弧全域での自衛隊強化が進められているのだ。
 二〇一六年三月二八日には与那国で新基地が建設され陸上自衛隊・沿岸監視隊一六〇人が配備されている。昨年三月二六日には宮古島でも新基地建設を強行し初動対応を担う警備部隊を主力とする三八〇人程度が配備された。本年以降に地対艦誘導弾・地対空誘導弾部隊の配備も計画されており、最終的には七〇〇~八〇〇人規模となる。奄美でも宮古島と同じ日に新基地を完成させ、警備部隊と航空機や、巡航ミサイルを迎撃する地対空ミサイル部隊、約三五〇人が配備されている。
 さらに、宮古島では昨年一〇月七日、居住地域から二〇〇メートルしか離れていないところに弾薬庫の建設工事を強行している。
 そもそも「弾薬庫ではなく、小銃などの保管庫」と説明したまま、迫撃砲弾や中距離多目的誘導弾などを島内に保管していたことが発覚し、戦時中に弾薬庫の爆発事故を経験している住民が猛反発したことで、自衛隊は島外に撤去していた。しかし、新たな弾薬庫によって再び保管されることになるだろう。与那国でも保管倉庫と報告されていたのが弾薬庫であったことが建設してから明らかとなっている(自衛隊は秘密保護を理由に認めていないが)。
 石垣島(石垣市)も宮古島と同様、警備部隊とミサイル部隊で五〇〇~六〇〇人を配備する計画で、昨年三月一日に新基地建設工事に着手している。予定地の約半分を占める市有地は未取得である。反対している地区との話し合いの最中の強行は、年度内に着工すれば、二〇ヘクタール以上の土地造成を伴う事業が対象となる沖縄「県」の改正アセス条例の適用外となることからだと指摘されている。
 予定地の平得大俣(ひらえおおまた)地域は、住民が飲み水や農業用水として使う水源の川にほど近く、大雨が降ると雨水は川に流れ込み下流へと運ばれることから、環境への影響を懸念する声が強い。陸自配備計画の賛否を問う住民投票を求める署名数は有権者の四割超にも上った。
 しかし、同市議会では「尖閣諸島は平和な状況ではない。自衛隊は必要だ」として市民の声に応えない与党(自民党や幸福実現党!)の議員多数で昨年二月、住民投票条例案を否決。六月にも議員提案したが、再び否決された。
 今、市民は市長に対して市の自治基本条例にもとづき住民投票を行なうよう求める訴訟を起こしている。市の自治基本条例では「有権者の四分の一以上の連署をもって、市長に対して住民投票の実施を請求できる」「市長は請求があったときは所定の手続きを経て住民投票を実施しなければならない」と定めているからだ。この市の自治基本条例に対しても、訴訟中にもかかわらず与党議員が議会へ廃止の提案をしたが、一票差で否決された。
 このような事態に、玉城デニー知事は防衛省へ工事の中断を申し入れた。「住民の同意もなく、地域に賛成・反対の分断を持ち込むような自衛隊のスケジュールありきの強行は認められない。現状は住民に住民合意が得られているとは言い難い」「政府に対しては地元の理解と協力が得られるよう十分な情報開示を行うなど、よりいっそう丁寧に説明を行うとともに、配備スケジュールありきで物事を進めることがないよう、これからも求めていきたい」と述べている。
 陸自配備計画は、住民を分断し、反対する声を無視することで強行されてきている。
 すでに沖縄島では、米軍基地の使用や共同訓練を常態化させ、とくに北部訓練場やキャンプハンセンでの訓練で自衛隊を実戦部隊化させてきている。沖縄を日米軍事同盟による最前線基地として再編強化してきており、その中に辺野古新基地建設や自衛隊強化があることを捉えらておくことが重要である。それに対して沖縄人民が生命と人権を守るため、あらゆる場で闘いぬいており、「本土」労働者階級人民が応え結合した反基地闘争を推し進めなければならない。

 ●4 玉城「県」政への締め付け

 闘いぬく沖縄人民に対して、安倍政権は玉城「県」政への締め付けを強めている。
 二〇年度の沖縄関係予算は三年連続三〇一〇億円となった。内訳では交付対象を国が決めたり、使途が限定されたりする予算を増やしている。とくに国が市町村に直接交付する「沖縄振興特定事業推進費」や「沖縄関係防災力強化支援事業」など、一括交付金の対象となるものが、別事業化された事業が多い。これは、かつて新基地反対の稲嶺名護市政に対抗して、地方自治体の頭越しに久辺三区への特別交付事業を行ったことを踏襲した「県」と市町村との新たな分断策である。
 また、辺野古新基地建設、自衛隊強化関係の予算の維持、増額も行なわれている。宮古島では弾薬庫建設工事関係で一八億円を盛り込んでいる。石垣島の陸自配備計画には本年度倍増の一九一億円を計上。南西警備部隊関連でも二二八億円を新たに計上している。
 一方、沖縄「県」の使途の自由度が高い一括交付金はかつて沖縄関係予算の半分を占めていたが、三分の一に近い一〇一四億円にまで減っている。翁長「県」政以降、六年連続の減額だ。市町村からハード事業への遅れも懸念され強い増額要望が寄せられ、「県」の政府への増額要求はまったく無視された形だ。
沖縄関係予算は総額としては前年度と同額であったが、その内訳は年を重ねるごとに政府の介入を強める割合になっているのだ。

 ●5 設計変更申請許さず「県」議選勝利へ

 昨年一二月二五日に行なわれた辺野古新基地建設の第三回技術検討会は、沖縄防衛局が示した大幅な修正案を了承し、「お墨付き」を与えていた。
 政府は、辺野古新基地建設の工期一二年、最大九三〇〇億円と再試算結果を示した。工期一三年、二兆五五〇〇億円という沖縄「県」の試算を否定し、工期が短く金額が低いと印象づけようとしているが、政府でさえ当初の試算と比較すれば工期が倍、総工費が約3倍近くになっているのだ。辺野古新基地の第一義的な名目である「普天間基地の危険除去」は破綻したのである。
 また、埋立土砂はほとんど沖縄から調達すること、地盤改良工事の砂杭数を大幅に削減などした。工期と費用に合わせるかのようにしているが、埋め立て土砂のほとんどを沖縄から調達することが可能なのか(可能であったとしても環境や土木建設などの被害が発生)。そもそもサンゴ混じりの特殊な軟弱地盤で想定が難しいと指摘されているところに砂杭数を大幅に減らすこと自体ありえないことだ。
こんなデタラメな工事において工事受注業者から金銭「奨学寄附金」を受け取っていたことがスクープ(一月三日『東京新聞』)された。ひも付きの委員(三人)であろうが「お墨付き」で乗り切ろうとしている。まさしく森友・加計、関西電力、IRと続く金にまみれた政治手法で強引に押し進めることが安倍政権の本性なのだ。
 設計変更申請を早く行なうことで、玉城知事の不受理を想定して裁判に訴え、玉城知事に屈服を迫ろうとしている。二〇年度予算での沖縄「県」への批判を強め、六月の「県」議選で野党過半数を獲得することでオール沖縄勢力を瓦解させ、次期「県」知事を狙っているのだ。
 現地闘争を軸に、沖縄「県」の裁判闘争を支援し、設計変更申請を許さない沖縄―「本土」貫く広範なたたかいをつくり出そう。「県」議会選挙に勝利しよう。
 琉球弧の自衛隊強化反対闘争と結合し、反戦・反基地闘争を推し進めよう。安倍政権を打倒し、日米安保体制を粉砕していこう!


 

 

当サイト掲載の文章・写真等の無断転載禁止
Copyright (C) 2006, Japan Communist League, All Rights Reserved.