共産主義者同盟(統一委員会)






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   ■「コロナ危機」時代の労働運動の新展開

  国家統制・排外主義・戦争と対決し
    命と雇用・生活を守る社会的連帯を

          労働運動指導委員会

         
                          


 
 

 ●1章 米帝トランプの新自由主義・レイシズムに怒りの全米デモ続く

 ▼1章―1節 新型コロナ・パンデミック


 新型コロナウイルス感染症(COVID19)の世界的流行(パンデミック)は続いている。全世界の累積感染者数は、五月二五日約五五〇万人から、六月一七日約八一九万人(死者数は四四万四千人)となった。うち感染者が多いのは、米国の二一三万人(死者一一万七千人)、ブラジルの九二万人(同四万五千人)、インド三五万人(同一万二千人)、英国三〇万人(同四万二千人)となっている。さらに、中南米、南アジア、中近東、アフリカの新興国で感染が拡大している。

 ▼1章―2節 人種差別に怒りのデモ

 その中で五月二五日、米中西部ミネソタ州ミネアポリスで白人警官に殺害されたジョージ・フロイド氏の事件をきっかけに、全米で「黒人の命は大切だ(Black lives matter)」を掲げたデモや暴動決起が止まらない。欧州各国やカナダでも抗議集会デモが続いている。六月上旬には大阪・東京でも留学生の呼びかけで千人、三千人の連帯デモがおこなわれた。
 米国では六月二日の段階で、首都ワシントンやロサンゼルスなど主要四〇都市に夜間外出禁止令が出されている。六月四日までに一万人以上が逮捕され、一〇人以上が死亡している。夜間の集会・デモは全土で続いている。事件発生のミネアポリスをはじめ、ポートランドやロサンゼルスでも警察署に火が放たれ、サンフランシスコではデモ隊がベイブリッジを通行止めにした。六月六日には全米五〇州に拡大、ワシントンDCではこれまで最大規模の一万人以上が参加した。

 ▼1章―3節 コロナ危機が貧困下層を直撃

 こうした全米でのトランプと警察に対する激しい抗議デモが広がった背景には、根深い人種差別だけでなく、医療と社会保障から排除され生命と健康そして雇用を失う黒人はじめ青年層や低所得層、有色人種の怒りが渦巻いているからだ。
 ニューヨーク・タイムズ(NYT)は「新型コロナが一〇万人以上の命と数百万件の職を奪いながら生じた不安と怒りがフロイドさん事件によって噴出し、米全域を襲っている」と言う。そして、ニューズウィーク日本版(五月二五日)は、次のように言う。「黒人の死亡率が際立って高い実態が浮き彫りになった。黒人の死者の割合が二〇〇〇人に一人なのに対し、アジア系と中南米系は四三〇〇人に一人で、白人は四七〇〇人に一人。つまり黒人の死亡率は白人の約二・四倍も高い。こうした差異が生じる明確な原因はまだ不明だが、人口密集地や大家族で暮らす人が多いといった住環境、サービス業従事者が多い、有給の病気休暇が取りにくいなどの職場環境、無保険者や慢性疾患患者が多いといった健康面の課題が考えられる」と。
 イギリスの公衆衛生庁(PHE)は六月二日、新型コロナウイルスに感染した場合の致死率が黒人とアジア人でより高い、とのリポートを公表した。バングラデシュ系の人の致死率は白人の英国人の約2倍、中国、インド、パキスタンその他のアジア系、およびカリブ系などの黒人の致死率は10~50%高いとしている。
 全米各地の都市が封鎖(ロックダウン)された三、四月だけで二千万人以上が失業し、一~三月期の実質成長率は前期比年率で5・0%のマイナスとなった。雇用や生産の落ち込みは空前の規模だ。六月一九日世界銀行のマルパス総裁は、新型コロナの悪影響で二〇二〇年の世界経済の実質成長率がマイナス5%の可能性を表明した。また「途上国への悪影響は深刻だ」と強調し、世銀の緊急支援がアフリカなど一〇〇カ国に達し、「六千万人が極度の貧困に追い込まれる」と医療体制支援など約一七兆二千億円の資金を供給できるようにするした。新自由主義による貧困・格差拡大とレイシズムが、コロナ危機で下層コミュニティの被害を甚大化させているのだ。

 ●2章 パンデミック対策を怠ってきた安倍政権

 ▼2章―1節 新自由主義ゆえに感染症対策部門を削減


 日本国内のコロナ感染者累積数は、六月一八日現在で一万七七〇七人(前日から七〇人増加)で死者数九四一人(同二人増加)である。欧米の先進諸国などと比較して、感染者数・死亡者数が低水準で第二波のピークを越え、爆発的感染(オーバーシュート)を回避したといえる。
 世界からは「奇跡」「運の良さ」と言われ、山中伸弥京大教授もそのファクターXは未だ解明されていないとする。ところが首相安倍は、世界標準とすべき「日本モデル」と自画自賛し、六月一八日の新型コロナ対策本部会合で、翌一九日から国内移動を全面解禁すると拙速すぎる決定をした。また、通常国会閉会の翌六月一八日の記者会見では、「パンデミックへの備えが十分だったとは言えない。自民党は緊急事態条項を含む憲法改正のたたき台を示している」「経済を成長軌道に戻すことを優先するのは当然」と傲慢にも言い放っているのだ。
 そもそも二〇〇九年新型インフルエンザ(H1N1)発生の教訓いらい、大学教授らで構成される感染研の研究評価委員会は、二〇一〇年度報告書の中で、感染研の役割を踏まえ「国家公務員削減計画の除外対象にすべきだ」と指摘していた。一三年度には「予算上の問題で、感染症の集団発生時にタイムリーなアクションが取れなければ大問題となりうる」とし、一六年度にも「財政的・人的支援が伴わなければ全体が疲弊する」と警鐘を鳴らし続けてきた。あるいは「新型インフルエンザ等対策政府行動計画(二〇一七年九月一二日)」を策定して、「流行規模・被害想定、○発病率 全人口の約25%、○医療機関受診患者数一三〇〇人~二五〇〇万人、○死亡者数一七万人~六四万人、○従業員の欠勤最大40%程度(ピーク時の約二週間)」としていたはずだ。このように今回の新型コロナ感染症を数倍上回るようなパンデミックを想定し、感染研や保健所などの大幅な強化やPCR検査体制の拡充等を公言していたではないか。しかし実際には、感染研の予算をこの一〇年間で約二〇億円、三分の一を減額するなど、逆に感染症対策部門を削減してきたのだ。この責任を誰がどう取るのか。

 ▼2章―2節 専門家会議の中間総括と第三波対策提言

 今回の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議による「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(二〇二〇年五月二九日)は次のように言う。
 「現段階の評価として、新規感染者数等の抑制に関しては一定の成果を挙げた。そして、緊急事態宣言下において多様な課題が明らかとなった」として三点を提起した。
 「①二〇〇九年の新型インフルエンザ発生以来、新型インフルエンザ等特別措置法の制定や政府行動計画の作成・運用を通じてパンデミック対策を行ってきたが、指摘された課題の改善が十分ではない点があった。②具体的には、保健所の業務過多により相談から検査までの時間がかかったこと、検体採取機関の不足・キャパシティ不足により、検査が必要な方に対して、PCR等検査が迅速に行えなかったこと、医療機関が逼迫し、受入病床・宿泊療 養施設の確保に時間を要したこと、感染者のピーク時に必要となる衛生資材(サージカルマスクなどの個人防護具、消毒用エタノール等)が早期に確保できなかったこと、感染者数が増加する中で感染症サーベイランスシステムの入力率が低下したこと、広報・リスク/クライシスコミュニケーションの体制が不十分であったことなど、多岐にわたった。③3月中旬からの国内での感染拡大のきっかけは、感染対策が十分に進んでなかったところに欧州等で感染した帰国者の流入によって、流行が拡大したことがウイルスの遺伝子解析で明らかになっている。この欧州等由来の第二波が、地域において孤発例が多発し新規感染者数が急増していく中で、四月七日緊急事態宣言による対応を余儀なくされた。今後、海外との往来の再開が、国内での再度の流行拡大のきっかけとなる可能性がある。』と。
 以上が、コロナ対策専門家会議の第三波(次の流行ピークという意味では第二波となる)対策の提言である。しかし、そのほとんどは二〇一七四年の政府行動計画の繰り返しであり、問題は今回のコロナ第一波(中国由来の一定抑制できた)の前に既に準備されていなければならなかったことばかりだ。それゆえに、「欧州由来の第二波」を抑制できずに緊急事態宣言へと至ってしまったのが、真相であろう。その責任は、安倍の「オリ・パラ延期決定」の一カ月遅れにある。二月二四日の「急速拡大の瀬戸際」判断を無視して、四兆円経済効果と福島復興切り捨て・原発事故隠蔽にこだわり続けたからだ。安倍の五月二五日宣言解除前倒しと六月一九日国内移動全面解禁の決定は、経済優先・人命軽視の政治判断であり、再度の流行拡大の起点となることを弾劾しなければならない。

 ●3章 労働者人民の生存の危機と労働運動の任務

 ▼3章―1節 世界・日本の経済と雇用危機

 ◆3章―1節―1項 世界大恐慌以来の経済危機


 また、米国では全土各地で都市封鎖された三~四月だけで二千万人が失業し、一~三月期の実質成長率は前期比年率で5・0%のマイナスを記録している。
 六月一〇日、OECD(経済協力開発機構)は、年内に新型コロナウイルス感染流行の第二波に見舞われれば、二〇二〇年の世界全体の実質経済成長率がマイナス7・6%、第二波回避ではマイナス6・0%と予測した。三月発表の前回予測2・4%を大幅下方修正して「世界経済は現在、一九三〇年代の大恐慌以来の景気後退を経験している」と指摘した。六月八日に世界経済見通しを発表した世界銀行も、新型コロナ長期化ならマイナス8%とのシナリオを示している。

 ◆3章―1節―2項 二〇〇万人失業時代

 五月二九日、総務省が発表した四月の労働力調査によると、非正規労働者は二〇一九万人で、子育て世代の女性を中心に前年同月比で九七万人減となり、全体の就業者数は八〇万人減の六六二八万人で七年四ヶ月ぶりの減少だ。営業自粛の影響などによる休業者は五九七万人と過去最多となった。この休業者が失業者や非労働力人口に移行すれば景気に影響をあたえる。また、完全失業率は2・6%と前月比0・1ポイント上昇し、二ヶ月連続で悪化した。完全失業者は前年同月比一三万人増の一九八万人で三ヶ月連続で増えた。
 六月九日、厚労省はコロナ解雇・雇止めが見込みを含めて五日時点で二万九三三人に上ったと公表した。先月二一日に一万人を越えてから二週間で倍増、雇用情勢が急速に悪化している実態が鮮明になった。非正規労働者の人数は明らかにしていないが、四半期契約の派遣労働者は六月末で契約更新を迎える場合が多く、雇止め通告を受けるケースが増えていると見られる。また、宿泊業と東京都で人数が多い。
 このように今回のコロナ危機では、二〇〇九年「リーマンショック」後の経済危機時における就業者数の減少(マイナス1・5%)を倍する約一八六万人(減少率マイナス2・8%)を大きく上回ることが予想されているのだ。

 ▼3章―2節 コロナ対策、第一次・第二次補正予算

(ⅰ)四月三〇日成立の二〇二〇年度第一次補正予算二五兆七千億円は、「新型コロナ対策」と銘打ってIT化促進や、海外生産拠点の国内移転対策のための事業が盛り込まれた。それはコロナ対策としては緊急性に乏しいのマスコミも批判している。国交省の「インフラ・物流分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を通じた生産性向上事業」一七八億円、環境省の「生産拠点の国内回帰も踏まえた脱炭素社会転換事業、太陽光発電や蓄電池の導入支援制度創設」五〇億円、経産省の「コロナ禍でのSNSなどの情報ツールの使われ方や信頼度などの実態調査」二億円などがある。しかし、それらの事業は、経産省が「来年三月までに個人消費や経済活動をコロナ蔓延前の水準に戻す」と意気込むように、サプライチェーンが寸断され生産と消費の絶望的な落ち込みの危機突破をかけた死活的事業と位置づけるのだ。
 今回のコロナ危機は、大局的に見れば、全世界が第二波、第三波、第四波とパンデミックに襲われ、治療薬やワクチンの開発は(貧しく虐げられた者へは行き渡らないかもしれないが)感染抑制の時間稼ぎに止まり、感染し生き残った人口の七割程度が集団免疫を獲得することでしか、パンデミックは収束しない。人為的に戦争とみたてて殲滅し終息させることはできないと心得るべきだ。
 また、集団免疫の獲得とパンデミック収束までに、労働者人民の生命と生活を犠牲にしてまでも、経済活動と資本の利益を拙速優先するのかどうかが鋭く問われる。少なくとも自粛要請ならすべて補償せよだ。アベノマスクのデタラメを始め、場当たり的な一人一〇万円の特定定額給付金や事業継続給付金は、許しがたい差別選別基準、申請煩雑で支給遅延が当たり前となっている。特定警戒に指定された道府県での生活保護申請が、四月前年比の二~五割増と爆発的に増加、ところが水際作戦で受付しない事例も多いのだ。
(ⅱ)六月一二日成立の第二次補正予算三一兆九一一四億円は、コロナ不況に経済対策と予算執行現場の支援漏れや遅れが次々と判明して安倍批判が渦巻き、失業と倒産への危機感が深まっている中での決定だった。
 もともと六月末を予定していた緊急事態宣言解除を前倒しせざるを得ない窮余の策だ。予備費一〇兆円の追加計上がその表れだ。その他に、①雇用調整助成金の日額を一万五千円に引上げ、②店舗などの家賃負担軽減へ最大六〇〇万円給付、③低所得ひとり親世帯に五万円支給、④医師や看護師らに最大二〇万円の慰労金、⑤企業の資金繰り支援を第一次補正などと合わせ一四〇兆円規模で実施、等々がある。
 安倍はコロナ対策を「世界最大」の事業規模だと自賛したが、全くのペテンだ。結局、本年度の一般会計歳出は一六〇兆三千億円で、過去最高額の一・五倍に膨らませ、うち国債額56%とは、前代未聞の借金地獄ではないか。

 ▼3章―3節 スーパーシティ構想、産業構造転換と監視社会

 ◆3章―3節―1項 「スーパーシティ法」強行可決弾劾!


 五月二七日参議院で「スーパーシティ法」(国家戦略特区法改悪)が自公・維新の賛成で可決成立された。
 スーパーシティ構想とは、「AI(人工知能)やビックデータを活用し、社会の在り方を根本から変えるような最先端の『まるごと未来都市』を、複数の規制を同時に緩和してつくろう」というものだ。これまでのスマートシティ構想の発展版だ。「便利で快適な未来生活」と引き換えに、IT企業を使った超監視社会と新たな労働支配が目論まれている。

 ◆3章―3節―2項 スーパーシティとは何か?

 スーパーシティでは、行政や企業などが持つ様々なデータを、分野横断的に収集・整理する「データ連携基盤」を整備して、例えば「自動走行」「ドローンで自動配送」「キャッシュレス決済」「行政サービスのIT化(電子政府化)」「オンライン(遠隔)診療」「遠隔教育」「エネルギー・ゴミ・水道などのスマートシステム」「防犯・安全のためのロボット監視」など多くのメニューが示され、このうち少なくとも五つの事業を組み合わせて同時に行うことが、スーパーシティの要件とされている。
 今後選定される自治体が、国や事業者と「区域会議」を設けて事業計画を策定し、「住民の合意」を得た上で国に申請し、関係省庁の検討を経て、迅速な実現につなげるという。

 ◆3章―3節―3項 個人情報の無断流用と住民自治の破壊

 スーパーシティ構想には、データ連携事業の実施者(企業または自治体)は、国や自治体にデータの提供を求めることができるとされている。個人情報は、法令上は、国・自治体、企業のそれぞれで適切管理が定められおり、それを勝手に提供し合うことはできない。しかし、政府答弁は、本人の同意無くデータが提供されるかどうかは各「区域会議」での判断によって例外的に情報提供できるとした。このようにプライバシーが本人同意なく侵害され、またデータ連携基盤を管理・監視するチェック体制も明らかでないために、特定民間企業による個人情報流用の恐れが大きい。この「区域会議」には自治体の首長が参加するが、議会や住民の意見が反映できる仕組みは無い。有識者懇談会座長の竹中平蔵は、自治体トップが規制緩和と事業運営について強い権限を持つという意味でスーパーシティを「ミニ独立政府」とうそぶく始末だ。

 ◆3章―3節―4項 今後の闘い

 スーパーシティ計画は、今後、自治体レベルでいかに現実化するのかの段階に入る。すでに名乗りを上げた自治体は五四にものぼり、今秋以降に五箇所ほどを選定するという。
 諸外国での先行事例として、カナダのトロント市では、グーグル関連企業が自動運転車やゴミ回収のために、人々の移動データ収集のため数百のセンサー設置を目指していたが、住民提訴で「グーグルの実験用マウスではない」との批判があがり、コロナ感染と経済不安もあり本年五月計画取り止めとなっている。国会審議では、成功例として中国の杭州市を審議官が視察したと答弁した。二千台以上のサーバーと四千台以上のカメラによって交通渋滞管理と救急車両通行の円滑化などに運行実績があるという。しかし、巨大IT企業の情報独占と反人民的監視体制の強化は容認できない。
 スーパーシティ法案をめぐり、担当の北村誠吾地方創生相は五月一九日の記者会見で、新型コロナの感染拡大で政府が接触機会の削減を訴えていることを踏まえ、「一層、デジタル社会の大切さを感じている。成立を果たさなければならない」と意気込んだ。コロナ危機に便乗して、産業構造の強行転換と労働者保護制度の解体をはかる「スーパーシティ法(国家戦略特区改悪法)」の実体化攻撃を許すな!

 ▼3章―4節 コロナ危機時代における新たな労働運動を闘おう

 ◆3章―4節―1項 20春闘とコロナ危機


 今20春闘は、「生活できる賃金・最低賃金大幅アップ」「健康な生活を確保する労働時間規制」「貧困格差を克服する同一賃金・均等待遇」「職場のハラスメント防止・労働者の人権擁護」を掲げて闘われようとした。
 しかし、コロナ危機の発生から四月六日「緊急事態宣言」発令前の三月段階では、中小民間職場での取組みは、パート・有期労働契約法の四月施行を背景に非正規差別を許さない「均等・均衡待遇」実現をめざした。そして、一時金支給・休暇改善など一定の成果をかちとった。しかし、賃上げについては、三月中旬の連合トヨタはじめ大手民間の賃上げ交渉が、成果主義賃金・査定の積極的受入れや妥結金額非公表として、闘いを組織しないまま低水準で収束した。それは、コロナ危機の中で上からの自粛に全面服従し、全労働者が一体となって社会的に生活向上・権利拡大に取組んできた「春闘」の歴史的清算そして消滅でしかない。
 この情況に抗して、わが一般運動は、コロナ危機による自粛要請・三密回避のなか、団交開催そのものが困難を極めながらも各職場闘争を工夫しつつ、昨年並み賃上げと安全衛生措置や特別休暇・休業補償・特別手当等をかちとった。タクシー会社の破産・解雇争議や出版社の便乗倒産・解雇撤回闘争などの争議を闘い抜いている。コロナ全国一斉電話相談や単組個別労働相談を精力的に取り組み、これから相談の本番を迎えている。団交が書面のやり取りや人数制限があり、労働委員会や裁判所の期日が軒並み延期されたりして苦闘している。それでも、職場アンケートでコロナに伴う賃金・労働条件や職場環境の不利益変更が無いか、持続化給付金や雇用調整助成金の申請如何を確認してきた。また春闘集会を各地区・職場で工夫しながら開催し、またメーデーを全国各地と中央でその開催を貫徹した。こうして闘う団結を確認・堅持できていることの意義は極めて重大だ。まさに今20春闘は、「春闘の終焉」を越えて労働組合そのものの死が突きつけられ、これに抗して闘い抜いたといえる。

 ◆3章―4節―2項 コロナ危機におけるわれわれの闘い

 第一にそもそも、わが労働組合の基本的立場とは、労働者は団結する、上からの自粛に服従することなく自主自立・自己決定による助け合いで行動し生活する、連帯と共生をめざすものである。コロナ危機に際して、帝国主義国家による統制監視・分断服従・排外主義の攻撃に対して、労働者階級は自由人権・自己決定・支援連帯で団結しなければならないということだ。これを綱領的確信として改めて確認しなけばならない。
 第二に労働組合としての基本的闘い方とは、「命を守る、雇用と生活を守る、社会連帯の中軸となる」ことだ。コロナ危機とは、新自由主義・グローバリゼーションがもたらした新感染症のパンデミックであり、さらにグローバル・サプライチェーンの寸断による経済・社会活動の停滞・停止によって、その矛盾が集中されて膨大な犠牲を強いられる貧困格差と差別分断の現実とその深刻さを際立たせた。それゆえに労働者階級と労働組合がこれと対決し得るかどうか問われたことに、危機の深刻さがある。労働組合は、雇用・労働条件の切り捨てに対抗する職場要求をまとめ、その実現に取り組まねばならない。緊急の生活保障や、休業・失業政策の拡大、職場の安全衛生の徹底は優先課題だ。さらに産業構造の転換とサプライチェーンの再編による強収奪・強搾取と反動的労働政策に反対していかなければならない。こうした実践的闘いを、口先の安倍批判に止めるわけにはいかない。
 またコロナ危機の中で、エッセンシャルワーカーと呼ばれる医療介護やライフラインを維持する現場労働の大切さが全社会的に再認識ができた。「労働とは何か」を捉え返して命と生活を守るための労働者の「社会連帯」を創りだしていかねばならない。
 第三に、二一世紀に入り新感染症の地域的・世界的流行の頻発が不可避となったこと、また地球環境問題やエネルギー問題が全人類的課題であること、そして新自由主義がその元凶であることが、改めてわれわれ全ての者に強く自覚されるものとなってきている。そしてコロナ・パンデミックの中で、米国では「Black Lives Matter」を掲げた全人民の実力決起が続いている。韓国では民主労総のパンフレット「コロナ19、こう対応しましょう! ―有給休暇、休業給付などQ&A」等による社会連帯の闘いも頑強に取り組まれている。困難を抱える中南米・アフリカ諸国人民の苦闘が増大している。われわれは、帝国主義グローバリゼーションあるいは自国第一主義とブロック化さらには戦争の危機に対しても、国際連帯で闘う。安倍政権の沖縄・辺野古新基地建設強行や緊急事態条項を改憲突破口とねらう自国政府を打倒する闘いに決起していかなくてはならない。このようにコロナ危機の時代における新たな労働運動路線の観点を明確にして闘いぬこう。




 

 

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