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   ■コーンウォール・サミット
    帝国主義の同盟強化と中国包囲

                   香川 空               




 六月一一日から一三日、英南部コーンウォールでG7サミットが開催された。議長国首相ジョンソンが主催だったが、「G7の協調」を鮮明にして参加した米大統領バイデンが政治的に主導した会議となった。バイデンは大統領就任後初の欧州直接外交を位置付け、G7首脳会議、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席し、さらにプーチンとの会談を行った。
 昨二〇年、米国がコロナ感染拡大のただ中にあってG7サミット米国開催は頓挫した。米国での対面会議を強行しようとしたトランプに対して独首相メルケルが真っ先に欠席を表明し、帝国主義間の齟齬が鮮明になった。バイデンは本年一月の就任直後に世界保健機関(WHO)への復帰、パリ協定への復帰を表明して、前トランプ政権の独善的外交姿勢を正したことで、他の帝国主義首脳からは一定の評価をもって受け入れられた。
 バイデンはこの外交姿勢を維持しつつ、同時に中国習近平政権批判を強め、「民主主義と専制主義の対立」なる構図を描いて、米帝主導の資本主義陣営の結束を「修復」させようとした。コーンウォールG7首脳宣言は、この米帝の企図を大きく反映するものとなった。


●1章 G7首脳会議の概要

 首脳宣言の文言の順序からすれば、第一の課題となったのはコロナ・パンデミックであった。保健分野としては「最貧国へのワクチン提供」が確認され、経済・貿易の問題としても「必要な期間、経済への支援を継続」することが確認された。この課題は「途上国支援」の項とも連関し、中国のワクチン外交や一帯一路戦略と対抗しつつ、ワクチン提供と合わせて帝国主義諸国の側からインフラ投資に力を入れることを確認しているのだ。
 第二には、気候変動と生物多様性、ジェンダー平等が重視された。バイデンをはじめとする帝国主義首脳は、本年一一月開催予定のCOP26(第二六回国連気候変動枠組み条約締約国会議)での主導権をとろうとしている。気候変動問題は経済・貿易の項でも記されており、温室効果ガス削減を新たな「経済成長」の新産業技術と捉えるブルジョアジーの利害から発していることは明確である。
 第三には、「先端領域」としてサイバー空間から宇宙空間に至るまでの新技術を「民主主義的価値観」の下におくことを強調した。「政府によるインターネット遮断やネットワーク制限」を批判し、ランサムウェア(身代金要求のサイバー攻撃)に対する共同対処を確認した。
 中国との経済的競争において、先端技術の競争を位置づけている。半導体や電池、レアアースの供給網を確保することを念頭においている。さらにG7諸国は、サイバー攻撃の発信地をロシア、中国と捉えており、制裁を含む共同対処を強めようとしているのだ。
 これらの課題を確認した上で、G7の支配階級どもが主張する「価値」を共有していないとみなす国・地域について個別評価をなし、対処方針を一致させた。その各国評価の冒頭は中国であり、ロシア、北朝鮮、ミャンマー、インド太平洋、イランと列挙している。
 中国に関して、経済問題として「世界経済の公正で透明性のある作用を損なう非市場主義政策と慣行」を問題視し、人権と自由の問題として新疆ウイグル自治区と香港の問題を明記した。加えて「インド太平洋」の項において「台湾海峡の平和と安全の重要性を強調」と明記した。
 ロシアは一九九八年から二〇一三年までG8サミットを構成する一国として参加していたが、一四年のクリミア併合によって、サミットの枠組みからはずされた。一四年六月、ロシア・ソチでの開催予定から急遽ブリュッセルに変更して開催されたG7サミットは、このロシア―ウクライナ問題を主要議題とした。その経緯から、クリミアからのロシア軍の撤退が今回のG7首脳宣言にも明記されるのは当然ではあった。しかし、直後に予定されていたバイデン―プーチン会談を見すえて、「ロシアとの安定した、予測可能な関係への関心を改めて表明」なる文言で、ロシアとの「相互利益」を位置づけた。
北朝鮮に関しては、「朝鮮半島の完全な非核化」「大量破壊兵器と弾道ミサイル計画の検証可能かつ不可逆的な放棄を求める」としつつ、「北朝鮮に対し、対話に関与し、これを再開することを求める」とした。


●2章 NATO首脳会議、米ロ首脳会談

 NATO首脳会議は一四日、ブリュッセルで開催された。
 開催直前にバイデンは、「集団的自衛権行使を定めた北大西洋条約第五条は厳粛な義務だ」と語り、さらに「アメリカが喜んでここに戻ってきたことを知っておいてほしい」と述べて、NATO諸国との関係修復の意志を明らかにした。一方で、トランプが主張してきた欧州諸国の国防予算の増額については否定するどころか、「目標」を満たした一〇カ国を評価し、この目標が「大事なことだ」としたのである。米帝の利害を貫徹するという意味では、トランプもバイデンも米支配階級の首領なのである。
 NATO首脳会議で事務総長ストルテンベルグは「中国による軍拡や影響力増大は、われわれの安全保障への挑戦となっている」と発言した。NATOは、中国の軍事的台頭を新たな課題として位置づけており、二二年に策定予定のNATOの新たな行動計画「戦略概念」には、中国への対応強化を位置づけようとしている。
 バイデンとプーチンの米ロ首脳会談は一六日、ジュネーブで行われた。
 三時間半にわたる会談の後、「戦略的安定」と題した共同声明を発表した。本年二月の核軍縮条約―新STARTの五年延長を再確認した上で、新STARTでは対象外となっている兵器についても交渉する新軍備管理協議を開始することを明記した。サイバー攻撃問題やロシアの反体制派ナバリヌイ氏への弾圧なども論議されたが、平行線だったと報じられている。
 バイデンは「民主主義国家と専制主義国家の対決」を掲げながら、ロシアに対しては「予見可能で安定した関係」を確認することを重点とした。プーチンもこの会談を「建設的だった」と評した。バイデン政権は、米帝と同盟国の現在的な戦略の第一は中国との対決と位置付け、そのためには、ロシアとの新たな「協商」をも選択して外交全体を展開した。


●3章 米帝―バイデン政権の世界戦略

 米帝―バイデン政権、ひいては米支配階級が恐れていることは、中国の経済成長による米・中の経済上の逆転が引き起こす矛盾だ。自由競争は建前である。現代資本主義の国際秩序は、国際通貨基金(IMF)、世界貿易機関(WTO)などの世界経済の枠組みを、米帝を始めとした帝国主義諸国が支配することで成立している。IMFと財務相・中央銀行総裁会議(G7―G20)によって護持されているドル基軸通貨体制。あるいはWTO等によって合意されてきた「貿易・投資の自由」=ブロック化を回避してきた統一的世界市場。これを基底に据えて帝国主義は現代資本主義を地球規模で支配している。ゆえに新自由主義政策も地球規模で進展してきた。
 しかしながら、この世界体制を護持しているG7サミットとは、国連などには基づかない七カ国の勝手な会議である。七四―七五年恐慌に直面した帝国主義諸国がその危機乗り切りのために結束したものだ。
 三〇年代にも予想される米・中の国内総生産(GDP)の逆転が起こっても、G7諸国は現在の世界支配の体系を変更しようとはしないだろう。ただし、世界経済の矛盾と中国スターリン主義の不満は劇的に深まるだろう。
 この矛盾と対立を予想しながら、現在の米帝は一国でこの事態に対処する力はない。NATO諸国や日本などアジア太平洋の同盟国との関係を修復し再強化し、同時にこの主導権を米帝自身が握り直すことで中国に対処しようというのが、バイデン政権の世界戦略だ。そのために、共有できる課題と共同の「敵」について一致することをめざしてきた。バイデンはコーンウォール・サミットを始めとした今回の欧州歴訪で、この戦略を同盟関係に機軸として提示したのだ。
 バイデンは気候変動問題でのパリ協定復帰、コロナ・ワクチンの世界規模での供給、イラン核合意枠組みへの米国の復帰などでG7諸国との関係修復を図り、G7首脳宣言は「民主主義、自由、平等、法の支配と人権の尊重という価値」の共有を確認した。ただし、その裏面には「民主主義と専制主義の対決」を確認する意図があり、直截に中国、ロシアを批判するものだった。
 今回のG7サミットには、韓国、オーストラリア、南アフリカ、インドも招かれていた。インド首相モディはオンライン参加となったが、この四カ国を加えて「D11(民主主義一一カ国)」なる枠組みが企てられた。主催国―英首相ジョンソンが呼びかけたものだが、バイデンの「民主主義と専制主義の対決」を強く印象づける演出だった。バイデン政権はすでに日米豪印の「四カ国戦略対話(QUAD)」の枠組みを形成している。BRICSの枠組みに楔を打ち込みつつ、インド太平洋戦略と重ね合わせて、中国との対決を確認するものだった。
 バイデン政権がただちに同盟国を動員して台湾海峡で戦端を開こうとしている訳ではない。世界経済、国際政治、軍事問題を含めて、資本主義諸国と中国、ロシアとの対決の構図を明確にし、同盟国にこの枠組みをしっかり確認しておこうというのだ。ただし、米帝の世界戦略が対中国を鮮明にすることで、軍事演習の仮想敵が中国になることは必定であり、NATO諸国のインド太平洋への派遣、米軍、自衛隊との共同演習がなされることにもなる。


●4章 帝国主義各国の利害と中国スターリン主義

 英国コーンウォールで行われていたG7サミットに対して在英中国大使館報道官は談話を発表した。「新疆ウイグル自治区、香港、台湾などの問題で事実をねじ曲げ、中国にひどい内政干渉を加えている」と批判し、「強烈な不満と断固たる反対」を表明した。
 習近平政権は、そもそもG7に関しては「小サークルによるグループ政治」として認めない姿勢を明らかにしている。欧州各国帝に対しては、米帝と一枚岩ではないと捉えて、切り崩そうと構えている。G7首脳宣言では中国批判が明記されたが、それは、中国スターリン主義の新疆ウイグル自治区での民族排外主義的弾圧、香港での言論封殺の事実があり、これに対する批判はだれも否定するものではないからだ。しかし、仏大統領マクロンは「G7は中国を敵視する会合ではない」と語り、伊首相ドラギは「中国に強硬姿勢はとらない」と語っている。
 バイデンは米帝の世界支配戦略の利害から、中国批判と中国包囲を同盟国とともに確認しようとした。
 一二年前、〇八年恐慌直後に大統領に就任したオバマは、G7諸国の緊急会合では世界金融恐慌を食い止められないと判断し、中国などBRICs(当時)諸国や産油国を含めた二〇カ国を招集した。その後、この枠組みをG20としてきたのであり、財務相・中央銀行総裁会議も正式にはG20の枠組みで開催されており、G7は非公式会合なのである。〇八年恐慌に直面したオバマ政権は中国、ロシアとも「協力」する以外になかったが、同じ民主党のバイデン政権はその世界戦略のためにG7の結束と中国敵視を強める。中国スターリン主義からすれば、この米帝のご都合主義を認めることはできないだろう。
 しかしこれは、どちらも大国主義の利害対立である。中国の人権弾圧、言論封殺は「G7のグループ政治」を批判したからといって正当化できるものでは決してない。一方で、この中国の強権弾圧政治に対するバイデン政権の批判も、真に民族解放を意図したものではなく、同盟国との関係修復を企図したものなのである。


●5章 オリンピックと排外主義に終始した日帝―菅

 最後に、日帝―菅は何をしていたのか?
 四月の日米首脳共同声明に続きG7首脳宣言に台湾問題が明記されたことに関して、首相菅は自らの成果のように語っている。菅はG7閉会後の記者会見で、中国問題―台湾海峡明記は、菅とバイデンが断続的に協議を行なっていたことの結果であると誇らしげに語った。バイデンの指示の下に欧州諸国首脳を説得したことが、菅の第一の「成果」だったのだ。
 そして、東京オリンピック・パラリンピックについて、首脳宣言の最後に「支持」の確認が記された。日本国内では六月、コロナ感染拡大がさらに進んでいる。世論調査では、オリンピックの中止、延期が圧倒的多数となっている。人民の意思と全くかけ離れたところで菅は「東京オリンピック開催」を強行しようとしている。絶対に許すことはできない。
 この一方で、今回会議に招待されていた韓国首相文在寅との日韓首脳会談の準備が進められていたが、菅は直前にこれをキャンセルした。
 菅は、米帝と結託した対中国包囲を土台に改憲、戦争準備を進め、労働者人民の命と生活、権利を踏みにじって東京五輪開催に固執する。さらに、韓国批判の排外主義を煽り立てる。日本国内の政局と自らの支持率だけを念頭に政治を動かそうとする日帝―菅政権を、これ以上延命させてはならない。菅政権打倒を闘おう。


 



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