共産主義者同盟(統一委員会)






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■『戦旗』1657号(5月5日号)5面

   
 
強まるアジアにおける集団的安保体制の構築
 
自衛隊のフィリピン駐留策動許すな 
  

                                      国際部




 四月一〇日の米国・ワシントンでの日米首脳会談は、日米の同盟関係を「グローバルなパートナーシップ」と位置づけ、米軍と自衛隊の「指揮統制」の連携強化を打ち出した。それは日米軍事同盟を新たな段階へと押し上げるものである。その翌日の四月一一日には、日本、米国、フィリピンによる初めての三カ国首脳会談が開催され、この三カ国によるいっそうの軍事連携強化が打ち出された。
 米英豪のAUKUSや日米韓の準三国軍事同盟化に続く、日米比の軍事連携の強化は、アジア大平洋地域の軍事緊張をますます拡大させる。それはまた、自衛隊によるフィリピン駐留策動など、日本帝国主義による歴史的な攻撃をともなって進行しようとしている。
 日米軍事同盟を基軸としたアジア太平洋地域におる集団的な安保体制の構築と日本帝国主義による自衛隊のアジア派兵体制の強化を許さず、アジア太平洋地域の労働者人民の闘いに連帯して、反帝国際共同闘争の前進を勝ち取っていくことは、日本の労働者人民のますます喫緊で重要な課題となっている。


新たな段階へと進む日米軍事同盟

 四月日米首脳会談は、「未来のためのグローバル・パートナーシップ」と題する共同声明を発表した。それは「日米同盟はかつてない高みに到達した」と述べ、日米安保体制を中核とする日米の同盟関係を「インド大平洋地域の平和、安全及び繁栄の礎」であると同時に「グローバルなパートナーシップ」と位置づけた。
 この共同声明の最も大きな特徴は、「平時及び有事における自衛隊と米軍との間の相互運用性及び計画策定の強化を可能にするため、二国間でそれぞれの指揮・統制の枠組みを向上させる」として、米軍と自衛隊の「指揮統制」の連携強化を打ち出した点にある。
 日米の軍事一体化、米軍と自衛隊の相互運用性の強化はこのかん、自衛隊による集団的自衛権の発動を想定した日米共同作戦計画の策定、日米合同軍事演習の推進、基地の共同使用、米国製兵器の自衛隊への配備などとして進められてきた。今回の共同声明は、この日米軍事一体化を指揮統制のレベルでも具体化していくことを打ち出した。それは、実際の戦争を念頭に置いた日米両軍の統合司令部の創出に向けた動きであり、日米軍事同盟を新たな段階へと引き上げるものである。
 周知のように、自衛隊三軍を一元的に統括する「統合作戦司令部」の設置のための自衛隊法改悪案が現在の通常国会で審議されている。それに対応し、米軍側では在日米軍司令部の作戦や訓練に関する権限の強化などが検討されている。第二次安倍政権による自衛隊の集団的自衛権行使の「合憲化」と戦争法の制定、現在の岸田政権下での自衛隊の敵基地攻撃能力(「反撃能力」)の保有宣言など、このかんの日本帝国主義の急速な軍事態勢強化が日米軍事同盟の新たな段階への突入を促進している。
 日米首脳会談ではまた、「日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議」(DICAS)の創設が打ち出された。共同声明ではミサイルの共同開発・共同生産、横須賀港を母港とする米第七艦隊の艦船や在日米軍基地に配備された米戦闘機の日本での整備・補修などが想定されているが、その対象はさらに拡大していくことが見込まれる。それは日本の軍需産業を肥え太らすものであり、同時に米軍の即応体制を強化しようとするものである。岸田政権が昨年末に閣議決定で強行した防衛装備移転三原則とその運用指針の改悪と一体である。
 われわれは新たな段階に突入する日米軍事同盟との対決をおし進めていくと同時に、そのような状況がこのかんの日本帝国主義の急速な軍事態勢強化によって可能となり、促進されていることをしっかりと押さえつつ闘いを推進していかなくてはならない。


アジアにおける集団的安保体制の推進

 日米首脳会談はまた、米英豪で構成されるAUKUSが「第二の柱」とする人工知能(AI)や超音速ミサイルの共同開発、対潜水艦戦、サイバー分野などの先端軍事技術について、日本との協力を「検討」していくことを表明した。岸田はAUKUSとの協力について、「何か決まったものは現在はない」(日米首脳会談後の記者会見)と述べているが、日本とAUKUSとの間の軍事連携が深まっていくことは必至である。
 AUKUSの「第一の柱」は既定済みのオーストラリアへの米国製原子力潜水艦の配備や英豪による次世代原子力潜水艦の建造などであり、すでに二〇一〇年代にオーストラリアへの潜水艦の輸出合戦に敗北している日本政府に入り込める余地はない。そのうえで、「第二の柱」での協力によって日本と米英豪AUKUSの軍事連携を深めていこうとしている。実際にも、日豪間の軍事協力は日米間に次いで進展しており、日英間では昨年の広島サミット時に「日英広島アコード」が発表され、英空母打撃群のアジア大平洋展開を含めて、日英の軍事協力強化が打ち出されている。
 日米帝国主義はこのかん、中国への包囲・対抗を主目的に、アジア大平洋地域における集団的・重層的な安保体制の構築・強化を追求してきた。「台湾海峡有事」における韓国軍の派兵をも示唆した昨年八月の日米韓三カ国首脳による「キャンプデービッド合意」はその核心的な一部であり、今回の日本と米英豪AUKUSによる軍事協力強化は、そのような動向をいっそうおし進めるものである。
 これに今、日米比の軍事的連携体制が加わった。
 日米首脳会談を受けて、その翌日の四月一一日に開催された日米比首脳会談は、「共同ビジョンステートメント」を発表した。この共同声明は初めて開催された日米比の三カ国による首脳会談を「数十年にわたるパートナーシップの集大成」と位置づけ、今後「日米比三カ国の政府横断的な関与をいっそう拡大し、部門を超えた協力の取り組みを強化する」としている。
 この声明は、日米共同声明よりも強い表現で、「南中国海における中国の危険かつ攻撃的な行動」に関して「深刻な懸念」を表明することで、この三カ国間の軍事的連携強化を正当化しようとしている。そして、このかんの日米比の軍事協力の進展、とりわけ日比の軍事協力を積極的に評価すると同時に、今後一年以内の三カ国による海上合同訓練その他の海上活動の実施、集団的対応を強化するための日米比海洋協議の創設、三カ国共同の人道支援・災害対応訓練を立ち上げなどを打ち出した。二〇二五年には日本周辺において海上での訓練を実施するとしている。
 日米帝国主義は二〇二二年のマルコス政権の発足以降、フィリピンがいわゆる「第一列島線」上に位置し、中国との間でスプラトリー諸島(南沙諸島)をめぐる領土紛争を抱えていることを利用して、軍事協力を急速に強化してきた。とりわけ昨二〇二三年には、フィリピン国内で米軍が使用できる「軍事拠点」の計九カ所への拡大(昨年二月)、「米比二国間防衛ガイドラン」の締結(同五月)、米比首脳会談での「比日米間、比豪米間の三カ国協力の枠組みを発足させる」ことへの「期待」の表明(同五月)、日米比の安全保障担当官による初会合の開催(同六月)、岸田訪比と日比円滑化協定(RAA)の交渉開始の正式決定(同一一月)と、事態は急速に進展した。
 そのうえに、今回の三カ国首脳会談によって、日米帝国主義が主導するアジア太平洋地域における集団的・重層的な安保体制の一角を担うものとして、日米比の三カ国軍事連携が位置づけられた。それはアジア太平洋地域の軍事緊張、および、フィリピンと中国の間の領土紛争をいっそう拡大させるものとなる。米陸軍は、今年中にアジア太平洋地域に中距離弾道ミサイルの配備を計画しているが、それがフィリピンに配備される可能性もある。アジア太平洋地域における集団的安保体制の強化、日米比の軍事的連携強化を許さない反戦・反帝国主義の国際共同闘争は、日本とアジア太平洋地域の人民のますます重要な課題に押し上げられている。
 日米比の「共同ビジョンステートメント」はまた、港湾や鉄道などのインフラ整備によって外国からの投資を拡大するためのフィリピン・ルソン島のスービック湾、クラーク、マニラ、バタンガスを結ぶ「ルソン経済回廊」の整備や、半導体や重要鉱物資源の確保に向けたフィリピンへの経済協力も打ち出されている。しかし、それは日米へのフィリピン経済のいっそうの従属をもたらすだけである。また、気候変動対策を口実にして、米国からフィリピンへの小型原子炉の輸出ももくろまれており、それに対応する人材育成や訓練も打ち出された。フィリピンでの原発稼働計画に反対する反原発闘争の国際連帯もまた重要な課題だ。

 
自衛隊のフィリピン駐留策動許すな

 三カ国の軍事的連携の強化の一角として、日本とフィリピンによる軍事協力、自衛隊のフィリピン展開の強化がおし進められている。それはいまや自衛隊のフィリピン駐留が具体化されるか否かの段階にまで至っている。これを阻止することは、日本の労働者人民の差し迫る極めて重要な課題である。
 日本とフィリピンの軍事協力は、とりわけ第二次安倍政権以降に進展した。日本はこのかん円借款による海上保安庁の巡視艇のフィリピンへの供与、海上自衛隊の練習機や陸上自衛隊のヘリコプター部品の無償譲渡を進めてきた。昨年一一月の日比首脳会談においては、同年に創設された「政府安全保障協力支援」(ОSA)の最初の案件として、フィリピンへの沿岸監視レーダーシステムの供与が決定された。大型巡視艇五隻の追加供与も確認されている。
 同時に、「人道支援」や「災害救援」を口実にした日比海軍間の二国間軍事演習が定例化され、米比合同軍事演習への自衛隊の参加や多国間合同軍事演習への日比両軍の参加が進められ、強化されている。四月六日~七日には南中国海において日本としては初めての参加となる日米豪比の合同軍事訓練が実施された。四月二二日から始まった合同軍事演習「バリカタン2025」(五月一〇日まで)には、自衛隊がこれまでのオブザーバーの範囲を超えて本格的に参加した。
 さらに、日比円滑化協定(RAA)の締結交渉がおし進められている。それは日米地位協定や米比訪問軍協定(VFA)と同様に、訪問・駐留する外国軍の地位・権限に関する協定である。それはフィリピンへの自衛隊の派兵・駐留策動を背景にしたものである。実際、日米比首脳会談に先立つ四月三日、フィリピンのロアムデス駐米大使はオンライン記者会見で、日比両政府が自衛隊のフィリピンへのローテーション派兵を検討していることを明らかにした。われわれはこれまで、日本帝国主義がフィリピンを自衛隊のアジア軍事展開の橋頭保にしようとしていることを様々な場面で指摘してきたが、それはいまや極めて差し迫った問題になろうとしている(日本政府はまた、自衛隊のオーストラリアへのローテーション派兵も策動している)。
 日本帝国主義はかつて一九四二年から四五年までフィリピンを占領し、フィリピン人民を虐殺し、日本軍性奴隷制度被害者をはじめ多くの被害者を生み出した。フィリピン人民の不屈の抵抗と日帝の敗戦によるその撤退から八〇年近くを経て、「ローテーション展開」という形で日本軍が再びフィリピンに舞い戻ろうとしているのだ。この歴史的な攻撃と闘うことは日本の労働者人民の国際主義的な責務だ。
 日米帝国主義によるアジア太平洋地域における安保体制の強化策動と対決し、反帝国際共同闘争の前進を勝ち取ろう。日米比の軍事的連携強化を許さず、自衛隊のフィリピン駐留策動を粉砕しよう。

 



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