共産主義者同盟(統一委員会)






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■『戦旗』1676号(3月20日)3面

  
 
公的介護制度の危機突破のため
 
介護業種別・産別労働運動の建設を
          
             
   
                          
土肥 耕作



介護崩壊は人手不足から

 介護の人手不足が深刻だ。図1は二〇二二年までの介護職員の有効求人倍率を示したものだ。最新の二〇二三年の統計では施設介護三・二四倍、訪問介護一四・一四倍と二〇二二年よりは若干落ち着いたものの、二〇一九年以降訪問介護の有効求人倍率が一五倍を前後して高止まりしていることが分かるだろう。一方このグラフでは訪問介護に比べて施設介護の状況がましに見えてしまうが、二〇二三年の全産業平均は一三・一倍であり、全社会的に人手不足が言われている中でも、施設と言えど二・五倍も状況が悪い。
 人手不足は介護現場の状況を悪化させている。介護はどれだけ手をかけられるかでサービスの質が変わる。当然、人手不足は質の低下をもたらす。また、オムツを変えるといった手技的なものにとどまらず、利用者とのコミュニケーション、変化を感じ取り介護内容に反映させていくといった介護のスキルは、教科書や試験で身につくものではなく、現場で先輩や利用者自身から学んでいくことだが、これも人手不足で継承困難となっている。こうして介護現場は『あれて』いく。荒れた介護現場では虐待、パワハラ、セクハラが横行し、心ある介護労働者がますます現場を離れていく動機になる。これは悪循環だ。
 介護現場の人手不足は二〇二三年、広範な労働者、事業者、利用者とその家族などの間で問題となり、介護報酬増額改定の大合唱となった。ところがである。




まさかの減額改定!

 ふたを開ければ、介護報酬改定は全体で1・59%の増額改定と微増にとどまった。三年間の改定期間の間に物価は一割も上がったのに、である。何より問題だったのは有効求人倍率が一五倍を前後する訪問介護サービスが基本報酬で2~3%の減額改定になってしまったことだ。
 財務省や厚生労働省の言い分は訪問介護事業全体で黒字が出ていたというものだが、これは統計のマジックだ。図2は厚労省の資料から赤旗が作成したものだが、全体の四割の事業所は改定前から赤字なのである。黒字になった事業所はサービスつき高齢者住宅に付属する訪問介護事業所で移動時間、待機時間(制度上無報酬)がほとんどないとか、遠隔地やサービス困難な利用者を排除したりしている大手である。反対に必要なサービスを届けるために無理をする中小や社会福祉協議会経営の事業所が赤字営業を強いられているのである。




ヘルパーはまだか…

 その結果はどうなったか? 老人福祉・介護事業の倒産件数は過去最多となった。図3(NHK二〇二四年一〇月一日)にみられるとおり、倒産件数は八月までで一一四件となり過去最多。その半分くらいは訪問介護事業だ。この統計には倒産に至らない事業閉鎖などは入っていないので、退場した事業所は実際にはもっと多いだろう。先ほど書いたように赤字になっている事業所こそが、切実に介護を必要としている人たちの生活を支えている。必要な時に介護サービスを得られない、そういう状況は既に始まっている。




介護の危機突破へ! 課題は

 二〇二四年報酬改定を受けて「もうやっていられるか!!」の声はさらに高まっている。家族やヘルパー、研究者、かつて介護保険を推進した女性運動の活動家たちなど、潮流や思惑に違いはあれど、このままでは公的介護は崩壊するという点では一致がある。では、この危機をどのように突破したらよいのか。キーワードは再公営化と利用者の権利確立、地方自治の強化だ。
 介護は社会のインフラだ。そもそも、それ自体として富を生み出すものではない。これを新自由主義的な改革で民営化したことに無理がある。利潤の追求に任せれば、利用者の権利や労働者の待遇がおざなりにされるのは道理だ。いま世界では新自由主義の半世紀に吹き荒れた民営化の嵐に対して再公営化の闘いが進められているが、日本の公的介護でもそのような声が上がり始めている。
 一方、再公営化を実現しても、それが利用者の権利保障に資するものにならなければ意味がない。制度の内容から運営に至るまで、利用者の参加によって権利の確立が図られなければならない。
 そして、こうした改革の実現には地方自治の強化が欠かせない。現状、多くの地方自治体は国が定めた制度の枠内で支給決定をしているだけの「自動機械」的な役割しか果たしていない。しかし、ともに住民であるところの利用者の権利確立と労働者の待遇改善は、本来的に地方自治が果たさなければならないところだ。そのためには権限と財源、そしてそれを人権確立のためにふるう政治意志と知恵を、地方自治体は持たないとならない。

介護労働者は危機突破のために団結しよう!!

 以上述べたような改革を実現するためには闘いが必要となる。利用者の人権確立を結節点とした利用者、労働者、良心的事業者の共闘が公的介護制度の危機突破には欠かせない。介護労働運動はそのような志向をもって業種別労働運動、産別労働運動の建設に向かう必要がある。

 


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